説明

水性アミノ樹脂及びそれを含む水性熱硬化性樹脂組成物

【解決手段】酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)の縮合物であって、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)の構造中に含まれる酸官能基を除く炭素数が5〜20であり、該化合物(b)由来の酸官能基が塩基性化合物(e)で中和された水性アミノ樹脂。
【効果】PO水分散体を含む熱硬化性のコート材が分離現象を起こすことなくそのまま使用することができ、塗膜を形成した後も相分離することなく、均一で機械強度、耐水性、塗膜平滑度が共に優れた水性熱硬化性組成物を提供出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶解または微分散可能なアミノ樹脂(以降水性アミノ樹脂)でありながらポリオレフィンに対する親和性を持つアミノ樹脂であり、耐水性、加工性、硬度、塗膜平滑性等の諸物性に優れた塗膜の形成が可能な塗料に適用することができる水性アミノホルムアルデヒド樹脂及びそれを含む水性熱硬化性樹脂組成物に関する。該水性熱硬化性樹脂組成物は主として家電、自動車、缶等に塗装またはコーティングされる塗料またはコーティング材として利用可能である。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性塗料組成物として、従来、アミノホルムアルデヒド樹脂(以下アミノ樹脂と略称する)を架橋剤(硬化剤)として用いる樹脂組成物が知られている。このような樹脂組成物からなる塗料は、有機溶剤で希釈して用いられる。近年、大気汚染、環境保護の観点から塗膜乾燥、焼付け時に放出される有機溶剤の削減を目的に、水で希釈可能な熱硬化性塗料組成物の研究が盛んになってきている。
【0003】
一般にアミノ樹脂を架橋剤(硬化剤)として用いる水性化された熱硬化性塗料組成物として、メタノールやブタノールでアルキルエーテル化したアミノ樹脂と、アミノ樹脂と架橋反応する水可溶性もしくは水分散性を有する樹脂(以下主剤と略称する。)とを組み合わせた熱硬化性塗料組成物がある。これは必要とされる塗膜外観や機械物性など用途により使い分けをされている。とくにブタノールでアルキルエーテル化したアミノ樹脂(以下ブチル化アミノ樹脂)はその重量平均分子量やブチルエーテルの持つ疎水性などの特徴から優れた硬化剤として広く使用されてきた。近年塗料の水性化が進むに従い、本来水性塗料にはその塗料安定性やハンドリング性などの観点から不向きとされてきたブチル化アミノ樹脂を水性塗料用に改良する技術が開発されている。(特許文献1,2)
一方、上記熱硬化性組成物では達成が困難な外力による塗膜の変形、物の衝突による塗膜の割れや剥離ならびに腐食の抑制が要求されている。また、基剤としてポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが選択された場合には、一般的なアミノ樹脂を硬化剤として用いる熱硬化性の塗膜では密着が不足するという欠点が存在した。これらの問題を解決する為にポリオレフィン(PO)水分散体を組成に持つ水性熱可塑性または熱硬化性塗料組成物によるコーティングが使用されてきた。しかし、塗料の安定性や作業性、重ね塗りされる塗料との層間密着性などの問題があった。また、PO水分散体がもつ比重とその溶解性により、層内で他の成分との分離が生じて均一な塗膜になりにくく、塗膜平滑度などの外観が著しく損なわれるだけでなく、目的とした機械物性が発現しないという問題もあった。
【0004】
さらには従来の水性熱硬化性塗料組成物とPO水分散体を組成に持つコーティングに共通の問題として、組成物の水分散性を向上するための分散剤として界面活性剤を使用する必要があり、この分散剤の使用も塗膜外観(平滑度)低下、機械物性の低下ならびに耐水性低下の原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−21673号公報
【特許文献2】特開平3−24170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は上記問題点を改良したもので、特にブチル化アミノ樹脂に相反する特性である、水希釈性とPO水分散体との親和性を同時に付与することで、水性アミノ樹脂及びそれを含む水性熱硬化性樹脂組成物に、オレフィン素材への親和性向上させ、水性硬化物に含有されるPO水分散体特有の性能を発現させることにある。
【0007】
また本発明は、アミノ樹脂自身の自己架橋を抑制して官能基導入前後の分子量変化の少ない、目的の分子量の水性アミノ樹脂を容易に得ることができる水性アミノ樹脂の製造方法及びそのような製造方法により製造された水性アミノ樹脂を提供することを目的としている。
【0008】
更に本発明は、貯蔵安定性が良好で硬化性に優れ、得られる塗膜の平滑性、耐水性、耐候性、機械物性、リコート性、重ね塗り性が従来の有機溶剤系の塗料と比較して遜色のない塗料に適用することができる水性熱硬化性樹脂組成物を提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の水分散体が上記記載の課題達成のために極めて優れることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の水分散体は、
[1] 酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)の縮合物であって、該化合物(b)由来の酸官能基が塩基性化合物(e)で中和された水性アミノ樹脂。
[2] 酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)の構造中に含まれる酸官能基を除く炭素数が5〜20であることを特徴とする[1]に記載の水性アミノ樹脂。
[3] 水性アミノ樹脂のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が1200〜10000であることを特徴とする[1]に記載の水性アミノ樹脂。
[4] 酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有する酸官能基以外の炭素数がC5〜C20であるアミノ化合物または酸官能基を有する酸官能基とアミド基以外の炭素数がC5〜C20であるアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を、水(g)の存在下で縮合させ、該縮合により得られた生成物(I)における前記化合物(b)由来の酸官能基を塩基性化合物(e)で中和することを特徴とする[2]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[5] 前記生成物(I)が、前記化合物(a)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を縮合させ、該縮合により得られた生成物(II)を前記化合物(b)と、水(g)の存在下で縮合させることにより得られることを特徴とする[4]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[6] 前記生成物(II)と前記化合物(b)との縮合が、アルコール(f)および水(g)の存在下で、かつ反応温度50〜60℃で行われることを特徴とする[5]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[7] 酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)を塩基性化合物(e)で中和して得られた化合物(h)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を、水(g)の存在下で縮合させることを特徴とする[1]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[8] 酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を縮合させ、該縮合により得られた生成物(III)を、酸官能基を有する酸官能基以外の炭素数がC5〜C20であるアミノ化合物または酸官能基を有する酸官能基とアミド基以外の炭素数がC5〜C20であるアミド化合物(b)を塩基性化合物(e)で中和して得られた化合物(h)と、水(g)の存在下で縮合させることを特徴とする[2]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[9] 前記生成物(III)と化合物(h)との縮合が、アルコール(f)および水(g)の存在下で、かつ反応温度50〜60℃で行われることを特徴とする[8]に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
[10] [1]に記載の水性アミノ樹脂を含む水性熱硬化性樹脂組成物。
[11] [10]に記載の水性熱硬化性樹脂組成物を含む塗料またはコーティング材
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PO水分散体を含む熱硬化性のコート材が分離現象を起こすことなくそのまま使用することができ、塗膜を形成した後も相分離することなく、均一で機械強度、耐水性、塗膜平滑度が共に優れた水性熱硬化性組成物を提供することが出来る。また、PO水分散体を含む熱硬化性のコート剤であるので、一般的な鋼板、電着された鋼板、PPを主成分とした基剤との密着性にもすぐれ、さらにはリコートと他の組成を持つ熱硬化性の水性塗料あるいは有機溶剤で希釈された塗料の重ね塗りしたときの相間付着性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0012】
[水性アミノ樹脂]
本発明の水性アミノ樹脂は、酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)の縮合物であって、該化合物(b)由来の酸官能基が塩基性化合物(e)で中和された水性アミノ樹脂である。なお本発明において「水性」とは、水可溶性あるいは水分散性を有することを意味する。
【0013】
<酸官能基を有さないアミノ化合物(a)>
酸官能基を有さないアミノ化合物(a)(以下、単に化合物(a)ともいう。)は、酸官能基を有さず、かつアミノ基を有する化合物であり、一般にアミノ樹脂の原料として使用される、トリアジン核を有する化合物や尿素などが化合物(a)として使用可能である。酸官能基としてはたとえばカルボン酸基およびスルホン酸基などが挙げられる。
化合物(a)のアミノ基の数は、本発明の水性アミノ樹脂の架橋度を高くするためには2個以上であることが好ましく、化合物(a)がトリアジン核を有する化合物であることがより好ましい。
前記トリアジン核を有する化合物としてはメラミン、ベンゾグアナミンなどが挙げられ、本発明の水性アミノ樹脂の架橋度を高くする観点からはメラミンが好ましい。
【0014】
<酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)>
酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)は、本発明のアミノ樹脂に水性特性を付与するとともに、PO親和性を付与する為に使用される。酸官能基とアミド基以外に構造中に含まれる炭素数が5から20のアルキル基を持つことでPOとの親和性を発現することが可能となる。このアルキル基は直鎖状、分岐状あるいは環状でも良く、その構造中に不飽和結合やカルボニル基、エステル基、ウレタン基、アミド基などが含まれていても良い。
【0015】
化合物(b)の具体例としては、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、15−アミノペンタデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、17−アミノヘプタデカン酸、18−アミノオクタデカン酸、19−アミノノナデカン酸、20−アミノエイコ酸などの直鎖アミノアルキルカルボン酸、あるいはヘプタン2酸モノアミド、オクタン2酸モノアミド、ノナン2酸モノアミド、デカン2酸モノアミド、ウンデカン2酸モノアミド、ドデカン2酸モノアミド、トリデカン2酸モノアミド、テトラデカン2酸モノアミド、ペンタデカン2酸モノアミド、ヘキサデカン2酸モノアミド、ヘプタデカン2酸モノアミド、オクタデカン2酸モノアミド、ノナデカン2酸モノアミド、エイコサン2酸モノアミド等のアミドアルキルカルボン酸、あるいは5−アミノペンタンスルホン酸、6−アミノヘキサンスルホン酸、7−アミノヘプタンスルホン酸、8−アミノオクタンスルホン酸、9−アミノノナンスルホン酸、10−アミノデカンスルホン酸、11−アミノウンデカンスルホン酸、12−アミノドデカンスルホン酸、13−アミノトリデカンスルホン酸、14−アミノテトラデカンスルホン酸、15−アミノペンタデカンスルホン酸、16−アミノヘキサデカンスルホン酸、17−アミノヘプタデカンスルホン酸、18−アミノオクタデカンスルホン酸、19−アミノノナデカンスルホン酸、20−アミノエイコスルホン酸などの直鎖アミノアルキルスルホン酸またはそれらの構造異性体が挙げられる。
【0016】
<ホルムアルデヒド(c)>
本発明に使用するホルムアルデヒド(c)は水溶液でも固形のパラホルムアルデヒドでもよい。経済性の観点から80%以上の不揮発分を持つパラホルムアルデヒドが望ましい。
【0017】
<アルコール(d)>
本発明における水性アミノ樹脂の原料であるアルコール(d)としては通常式Cn2n+1OH(nは1〜8の整数)で示されるものが用いられ、その構造は直鎖状でも分岐を有する構造でもよい。
【0018】
nが9以上のアルコールを使用する場合には、水性アミノ樹脂の製造工程中、後述する脱反応溶媒工程における加熱により水性アミノ樹脂の自己架橋が進行する可能性がある。経済性、塗膜性能の観点からnは1〜4の整数であることが好ましい。さらに、得られる水性アミノ樹脂の親水性を向上させるためにはnの値は小さいことが望ましく、反対に疎水性を向上させるためにはnの値は大きい事が望ましい。このnの値は本発明の水性熱硬化性樹脂組成物が使用される塗料形態、水性アミノ樹脂の主剤との目的とする相溶性によって選択される。
本発明に使用されるアルコール(d)としては、例えばメタノール、n−ブタノール、イソブタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどが挙げられ、これらの混合物であっても構わない。アルコール(d)として好ましいのはn-ブタノールである。
【0019】
<塩基性化合物(e)>
本発明の水性アミノ樹脂の製造工程においてアルコール(d)と化合物(b)を縮合させた直後は、得られたアミノ樹脂は化合物(b)由来の酸官能基を持っているため、その液性は酸性の状態である。
【0020】
アミノ樹脂は酸性条件下で自己架橋反応が進行し、自己架橋したアミノ樹脂は貯蔵安定性が低いので、酸性状態のアミノ樹脂、より詳しくは酸性状態のアミノ樹脂の化合物(b)由来の酸官能基を塩基性化合物(e)によって中和する必要がある。本発明において「中和」とは、通常の「酸と塩基がその性質を相互に打ち消しあう化学過程」を意味する。また前記の「化合物(b)由来の酸官能基を塩基性化合物(e)によって中和する」とは、必ずしも化合物(b)由来のすべての酸官能基を中和することを意味せず、前記自己架橋反応が進行しない程度に酸官能基が中和されていればよい。
塩基性化合物(e)で酸官能基を中和することにより、アミノ樹脂の自己架橋反応を防ぐことができるだけでなくアミノ樹脂の水性特性が向上するため、塩基性化合物(e)による中和は本発明の水性アミノ樹脂の極性コントロールに大きく寄与している。
【0021】
塩基性化合物(e)としては無機塩基および有機塩基のいずれも使用することができる。無機塩基として具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やアンモニアなどを挙げることができ、有機塩基として具体的にはモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等を始めとするアルカノールアミン類、アミンモルホリン等のアミン類などが挙げられる。
【0022】
[水性アミノ樹脂の製造方法]
本発明の水性アミノ樹脂の製造方法は以下の通りである。化合物(a)、ホルムアルデヒド(c)、アルコール(d)を反応容器に仕込み、反応溶媒の還流温度まで加熱してこれらを溶解した後、酸を触媒として前記3成分の縮合反応を行い、アミノ樹脂を得る。
前記反応溶媒としてはアミノ樹脂の製造に用いられる一般的な反応溶媒が挙げられ、たとえばメタノール、n−ブタノール、イソブタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどである。必要に応じてこの反応溶媒は、前記アミノ樹脂の合成反応の後、蒸留操作によって反応溶液から除去することも出来る。
前記酸としては有機酸および無機酸のいずれも用いることができ、有機酸としては蟻酸、蓚酸などが、無機酸としては燐酸などが挙げられる。
前記縮合反応の後に反応溶液を好ましくは50〜60℃まで冷却し、その反応溶液に化合物(b)、アルコール(f)および水(g)を加えてアミノ樹脂との縮合反応を行う。
【0023】
硬化剤としての性能を発現させるため、アミノ樹脂骨格にアルキル基を導入するために使用するアルコール(d)とは別にアルコール(f)を使用することで、化合物(b)を効率的にアミノ樹脂と反応させることが出来る。この場合、アルコール(f)は化合物(b)をアミノ樹脂反応溶液に加える前、あるいは化合物(b)と同時に添加することが出来る。この場合の「同時に添加する」とは、個々の原料を同じ時に別々に加える場合と、個々の原料を混ぜて溶液やスラリー状態として加える場合の両方を指す。
アルコール(f)は、本発明の水性アミノ樹脂の製造において、アルコール(d)とは別の工程で使用されるものであり、前記反応溶液にアルコール(d)とは別に新たに加えられる化合物である。アルコール(d)とアルコール(f)とは同じ化合物であっても異なる化合物であってもよい。
【0024】
このアルコール(f)を使用することにより、極性を持った化合物(b)がアミノ樹脂と相溶しやすくなり反応が効率よく進行する。 アルコール(f)としては水との親和性が高いメタノール、エタノール、1-プロパノール、iso-プロパノールなどの低分子アルキルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエチレングリコールモルアルキルエーテル類、メチルカルビトール、エチルカルビトール等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類などが挙げられる。アルコール(f)として好ましいのはエタノールである。
【0025】
次に前記水(g)について、本発明の水性アミノ樹脂の製造工程において化合物(b)または後述する化合物(h)は、固体の状態で存在するため前記アミノ樹脂と反応しにくい。化合物(b)または化合物(h)は水溶性を示すことが多いので、前述のアミノ樹脂を含む反応溶液に水(g)を添加することにより、化合物(b)または化合物(h)を溶解させて反応効率を向上させることができる。
【0026】
アルコール(f)は使用しなくとも化合物(b)または化合物(h)とアミノ樹脂との反応が可能ではあるが、その場合、反応にかかる時間が長くなる等の影響がある。一方、水(g)は化合物(b)やその中和塩である化合物(h)を溶解させる働きがあるために必須の成分である。
【0027】
前述のようにアミノ樹脂を生成させるための縮合反応の後には反応溶液を好ましくは50〜60℃まで冷却し、その反応溶液に化合物(b)、アルコール(f)および水(g)を加えるが、その際の反応温度が50〜60℃の範囲にあると、十分に縮合反応が進行して酸官能基をアミノ樹脂に取り込むことができ、かつ得られる水性アミノ樹脂の自己縮合が抑制可能である。
【0028】
従って本発明の水性アミノ樹脂の製造方法によれば目的の分子量の水性アミノ樹脂を得ることができ、水性アミノ樹脂の分子量が低すぎることにより、水性アミノ樹脂を含む水性熱硬化性樹脂組成物を含む塗料から形成される塗膜の機械物性が不足したり、分子量が高すぎるために塗料の粘性が高くなって塗装作業性が低下したり、塗膜の平滑性が低下して塗膜の外観が損なわれる、といった不都合が非常に起こりにくい。
【0029】
前記化合物(a)、化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を縮合させる際のそれぞれの成分のモル比は、化合物(a)を1.0としたときに、
化合物(b)が通常0.1〜4.0、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.2〜1.0、ホルムアルデヒド(c)が通常3.0〜7.0、好ましくは4.0〜7.0、より好ましくは4.0〜6.5、アルコール(d)が通常4.0〜10.0、好ましくは5.0〜9.0、より好ましくは5.0〜7.0である。
【0030】
このような反応比でこれら4成分を縮合させ、その後の中和を行うことにより、耐水性、耐候性、機械物性に優れた塗膜を与えることができる水性熱硬化性樹脂組成物に適用可能な水性アミノ樹脂を得ることができる。
【0031】
また前記アルコール(f)および水(g)の使用量(化合物(a)に対するモル比)は、化合物(a)を1.0としたときに、アルコール(f)が通常1.0〜3.0、好ましくは1.5〜2.7、より好ましくは1.8〜2.4、水(g)が通常1.0〜6.0、好ましくは1.0〜5.8、より好ましくは1.0〜5.6である。
【0032】
前記のアミノ樹脂と化合物(b)との縮合反応の後、さらに塩基性化合物(e)で中和操作を行い、過剰に残ったアルコールと水を減圧蒸留操作により一部除去して不揮発分を調整することによって水性特性を付与したアミノ樹脂、すなわち水性アミノ樹脂を得ることが出来る。
【0033】
塩基性化合物(e)の使用量は、アミノ樹脂に含まれる酸官能基のモル比を1.0としたときに、得られる水性アミノ樹脂の水分散性とその安定性の点から0.8〜1.2であることが望ましい。より好ましくは0.9〜1.1である。
【0034】
また化合物(b)は、あらかじめ塩基性化合物(e)で中和して、酸官能基が中和された化合物(h)としてからアミノ樹脂と縮合させることも可能である。この場合の塩基性化合物(e)の使用量は、化合物(b)の酸官能基のモル比を1.0としたときに、0.8〜1.2であることが望ましい。より好ましくは0.9〜1.1である。
【0035】
水性アミノ樹脂の分子量やアルコール(d)によるアルキルエーテル化度を調整する為に、化合物(b)を反応容器に添加する工程をアルキルエーテル化工程中にすることも出来る。
【0036】
本発明の水性アミノ樹脂のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は通常1200〜10000、好ましくは1500〜7000である。重量平均分子量が低すぎると本発明の水性アミノ樹脂を含む水性熱硬化性樹脂組成物を含む塗料を硬化させて得られた塗膜の機械物性が不足することがあり、大きすぎると塗膜内での架橋点が少なくなるとともに、水性アミノ樹脂の粘度が高くなるために塗料配合時と塗装時の作業性が低下し、塗膜の平滑性が低下して塗膜の外観が損なわれることがある。
【0037】
[水性アミノ樹脂を含む水性熱硬化性樹脂組成物]
本発明の水性熱硬化性樹脂組成物は、本発明の水性アミノ樹脂を硬化剤の主成分として含む組成物であり、通常硬化剤、主剤成分とからなり、好ましくはPO水分散体成分を使用する。
硬化剤は本発明の水性アミノ樹脂を主成分とし、他に顔料、染料、レベリング剤、塗料安定性向上剤、発泡抑制剤、耐候性向上剤、ワキ防止剤および酸化防止剤などを含有してもよい。
【0038】
主剤は、水性アミノ樹脂と架橋反応する水可溶性あるいは水分散性を有する樹脂であり、主剤としてポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂などの単独成分またはこれらの樹脂からなる混合・複合化された樹脂などが挙げられる。
PO水分散体成分はそれ自身が水性化能をもつかあるいは分散剤などによって水性化されたものが好ましいが、本発明の水性アミノ樹脂自身を分散剤として使用することによって水性化させたものを使用しても良い。
【0039】
[水性熱硬化性樹脂組成物を含む塗料]
本発明の塗料は本発明の水性熱硬化性樹脂組成物を含み、また本発明の水性熱硬化性樹脂組成物そのものを塗料として使用することもできる。また本発明の塗料に対しては、塗膜表面の平滑性の改良あるいは発泡防止等の目的で各種の添加剤を添加するなど、任意の公知の塗装作業性及び塗膜改良方法を適用することができる。
【0040】
そのような方法として例えば、平滑性の改良目的ではBYK-Chemie社のBYK-380・BYK-381(アクリルポリマー系添加剤)、BYK-348(シリコン系樹脂)などを添加する方法が、発泡防止目的ではBYK-Chemie社のBYK-020(変性ポリシロキサン共重合物)、BYK-022(シリコン系樹脂)などを添加する方法が挙げられる。
【0041】
また、本発明の塗料は水に溶解あるいは分散した形で使用されるが、有機溶剤に溶解あるいは分散させても何等問題はない。ただし、該塗料に含まれる本発明の水性アミノ樹脂の溶解性、塗料の塗装方法及び環境、また塗膜の乾燥条件等を考慮して有機溶剤の種類、添加量等を決定することが望ましい。
【0042】
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の水可溶性のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリャールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート等のエチレングリコール及び水可溶性のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモキメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び水可溶なそれぞれのグリコールの誘導体;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリメチレングリコール、グリセリン、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテート等の水に可溶な多価アルコール類及びその誘導体などが挙げられる。
またその他の有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アセトン、ジアセトンアルコール、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル2−ピロリドン等が挙げられる。
【0043】
[水性熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材]
本発明の水性熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材としては、本発明の水性熱硬化性樹脂組成物を含む接着材、モールディング材等が挙げられる。コーティング材の用途に応じて本発明の水性熱硬化性樹脂組成物に各種の添加剤、例えば、上記の発泡防止剤、平滑性改良剤等の添加剤や顔料さらには光安定剤等をコーティング材に含有させることができる。また、必要に応じて上記の有機溶剤を添加しても何等問題はない。基剤に塗装後熱硬化させた塗膜は本発明のアミノ樹脂により、PO水分散体成分との親和性と既存の水性塗料への親和性を同時にもっているのでリコートや、別の組成の水性塗料あるいは有機溶剤で希釈された塗料を重ね塗りしても塗膜平滑性と付着性に優れている。
【0044】
[水性熱硬化性樹脂を含むコーティング剤が塗装される基剤]
基剤はその用途に応じて選択することが出来る。既存の水性熱硬化性塗料と同じく、表面処理された鋼板に塗装することも出来るし、塗料中にPO水分散体成分を含むため基剤としてPE、PP等を主成分とした基剤にも塗装することが出来る。
【実施例】
【0045】
以下に本発明をより具体的に説明するため、実施例、比較例および参考例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚「%」、「部」で示したものの単位は特記しない限り重量基準である。
【0046】
以下の製造例で、得られた樹脂の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であり、不揮発分はJIS K5407−4−3−1により求めた。
【0047】
<製造例1(主剤水性アクリル樹脂A)>
スチレン53部、メチルメタアクリレート13部、エチルアクリレート20部、β−ヒドロキシメチルアクリレート7部、メタアクリル酸7部とベンゾイルパーオキサイド0.5部を、100℃に加熱された溶剤であるエチレングリコールモノイソプロピルエーテル67部中へ4時間かけて滴下し、さらに同じ温度で3時間保ってビニル共重合樹脂を得た。得られた樹脂の加熱残分は60%で樹脂酸価は40であった。
【0048】
<製造例2(PO水分散体)B>
熱可塑性エラストマー
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、817mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン50gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)2,7−ジ−t−ブチルフルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、11.5gで、ブテン含有量は16.9モル%、ポリマーの融点が86.3℃であり、極限粘度[η]が2.11dl/g、分子量分布Mw/Mnは2.09であった。
【0049】
熱可塑性エラストマーの水系樹脂組成物
製造した熱可塑性エラストマー100g、酸変性ポリプロピレンワックス(三井化学株式会社製、ハイワックスNP0555A:酸グラフト量 3重量%)10gおよびオレイン酸カリウム3gとを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウムの20%水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出された樹脂混合物は、同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却され、さらに80℃の温水中に投入され得た。得られた水系樹脂組成物は、固形分濃度45%、pH11であった。
【0050】
<製造例3(POに親和的な水性アミノ樹脂)C1>
6−アミノヘキサン酸を使用した反応による水性アミノ樹脂の製造例を示す。温度計、攪拌機、還流冷却管及び溶剤副生成物回収装置を備えた反応器にパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド92%含有)196部、メラミン126部、n−ブタノール481部を加え、還流温度条件下まで加熱し攪拌を行いながら溶解させた。
【0051】
次いで、燐酸の10%水溶液を加え、反応液のPHを5.0に調整した後、反応液の還流温度条件下で4時間反応を継続した後、減圧蒸留操作を行い不揮発分が80%となるまで濃縮後50℃迄冷却しエタノール100部を加えた。反応液に6−アミノヘキサン酸26部と水100部を加え、50℃で3時間攪拌し、アミノ樹脂への酸官能基導入を行った。
得られた酸官能基が導入されたアミノ樹脂をジメチルエタノールアミン18部により中和してから、減圧下で系内の温度を50℃以下に保ちながら水性アミノ樹脂の不揮発分が60%になるように過剰の水とn−ブタノールを系外へ除去した。得られた水性アミノ樹脂の重量平均分子量は3,700であった。
【0052】
<製造例4(POに親和的な水性アミノ樹脂)C2>
12−アミノドデカン酸を使用した反応による水性アミノ樹脂の製造例を示す。温度計、攪拌機、還流冷却管及び溶剤副生成物回収装置を備えた反応器にパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド92%含有)196部、メラミン126部、n−ブタノール481部を加え、還流温度条件下まで加熱し攪拌を行いながら溶解させた。
【0053】
次いで、燐酸の10%水溶液を加え、反応液のPHを5.0に調整した後、反応液の還流温度条件下で4時間反応を継続した後、減圧蒸留操作を行い不揮発分が80%となるまで濃縮後50℃迄冷却しエタノール100部を加えた。反応液に12−アミノドデカン酸43部と水100部を加え、50℃で3時間攪拌し、アミノ樹脂への酸官能基導入を行った。
得られた酸官能基が導入されたアミノ樹脂をジメチルエタノールアミン18部により中和してから、減圧下で系内の温度を50℃以下に保ちながら水性アミノ樹脂の不揮発分が60%になるように過剰の水とn−ブタノールを系外へ除去した。得られた水性アミノ樹脂の重量平均分子量は3,600であった。
【0054】
<製造例5(水性アミノ樹脂)C3>
グリシンを使用した反応による水性アミノ樹脂の製造例を示す。温度計、攪拌機、還流冷却管及び溶剤副生成物回収装置を備えた反応器にパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド92%含有)196部、メラミン126部、n−ブタノール481部を加え、還流温度条件下まで加熱し攪拌を行いながら溶解させた。
【0055】
次いで、燐酸の10%水溶液を加え、反応液のPHを5.0に調整した後、反応液の還流温度条件下で4時間反応を継続した後、減圧蒸留操作を行い不揮発分が80%となるまで濃縮後50℃迄冷却しエタノール100部を加えた。反応液にグリシン15部と水100部を加え、50℃で3時間攪拌し、アミノ樹脂への酸官能基導入を行った。
得られた酸官能基が導入されたアミノ樹脂をジメチルエタノールアミン18部により中和してから、減圧下で系内の温度を50℃以下に保ちながら水性アミノ樹脂の不揮発分が60%になるように過剰の水とn−ブタノールを系外へ除去した。得られた水性アミノ樹脂の重量平均分子量は3,900であった。
【0056】
<製造例6(ブチル化アミノ樹脂C4)>
比較例及び参考例で使用するアミノ樹脂の、メラミンとn−ブタノールとの反応による製造例を示す。温度計、攪拌機、還流冷却管及び溶剤副生成物回収装置を備えた反応器にパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド92%含有)196部、メラミン126部、n−ブタノール481部を加え、攪拌を行いながら燐酸の10%水溶液を加え、反応液のPHを5.0に調整した。
【0057】
その後、加熱し反応液の還流温度条件下で4時間反応を継続した後70℃迄冷却し、水酸化ナトリウムの10%水溶液を加え系内のPHを7.0に調整した。更に、減圧下で系内の温度を70℃以下に保ちながらアミノ樹脂の不揮発分が60%になるように過剰のブタノールを系外へ除去した。得られたアミノ樹脂の重量平均分子量は3,500であった
製造例で得られたアミノ樹脂の物性等を表1に示す。
【0058】
なお、水希釈性及び気泡粘度(アミノ樹脂の規格の管理項目の一つ)は以下のようにして評価又は測定した。
水希釈性:25℃の条件下で試料1gを100mlのビーカーに取り、水50gを加えてマグネチックスターラーにより200rpmにて攪拌を実施後、2分間静置したときの水とサンプルの状態を目視で判断。
【0059】
○ 均一に分散または溶解
△ 二相分離
× 沈殿を伴った2相分離
気泡粘度:JIS K5400−4−5−1により測定
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例、比較例]
製造例1,2および製造例3〜6で得られた樹脂を使用して表2に示す樹脂不揮発分に基づく配合比に従って水性熱硬化性樹脂組成物を作成した。なお、日本サイテックインダストリーズ(株)製「サイメル325」(メチル化メラミン、重量平均分子量1000)をアミノ樹脂C−5とし、低分子量アミノ樹脂の代表例とした。
【0062】
【表2】

【0063】
次に実施例、比較例、参考例で得られた水性熱硬化性樹脂組成物を水により希釈し、粘度測定用フォード・カップ試験で、25℃において溶液がカップの穴より全量落下するまでの秒数を25秒になるように調整して塗料を得た。なお、フォード・カップ粘度測定はJIS K5400−4−5−4に準じて行った。
【0064】
その後、スプレーにてイソプロピルアルコールで表面を拭いた燐酸亜鉛処理鋼板、イソプロピルアルコールで表面を拭いた電着塗装鋼板(高値の電着エポキシ塗料により表面処理(厚さ薬20μm)を施した鋼板の電着塗料表面)ならびにイソプロピルアルコールで表面を拭いたポリプロピレン製((株)プライムポリマー製、製品名:X708)の角板に焼付後の塗膜厚みが30μmになるように塗料を塗装し、温度125℃、焼付け時間30分間で加熱して塗装板を形成させた。形成された塗膜ならびに塗料の物性評価結果を表3、4に示す。
【0065】
なお、物性評価は以下のようにして行った。
【0066】
外観:目視により判断。
◎: 平滑性も光沢も問題なし
○: 少量のワキと低光沢
△: 多量のワキ
×: 光沢が無く、クラックあるいは相分離の外観。
【0067】
耐溶剤性:ガーゼにメチルエチルケトンを浸したものでこすり、50回往復させたときの塗膜変化を示した。
【0068】
(判定基準)
◎ 変化なし
○ 僅かに傷がついた
△ 塗膜に多量の傷がついた
× 塗膜の下地まで見えた。
【0069】
エリクセン:JIS K−5400−8−2
デュポン:JIS K5400−8−3 デュポン式に準じ、300g荷重で先端1/2inchRの打付具を使用し測定した。
【0070】
鉛筆硬度 :JIS K5400−8−4
耐温水性 :60℃の温水中に塗布板を50時間浸漬し、後の塗膜変化を観察した。
【0071】
(判定基準)
◎ 塗布面にはブリスターは全く見られない
○ 塗布面には1〜2個のブリスターが見られるが実用上問題はない
△ 塗布面にはブリスターがところどころ見られ使用しにくい
× 塗布面にはブリスターが全面に見られる。
【0072】
安定性:塗料を50mlのガラス管に30g取り、40℃で60時間放置後の分子量変化または外観変化を評価。
【0073】
(判定基準:塗料)
○ 変化なし
× 分離、沈降。
【0074】
碁盤目密着:JIS K5400−8−5−2によりテープ剥離後の密着部位の個数で評価。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
また、同様に燐酸亜鉛処理鋼板に実施例1、2、3と比較例1、2の塗料を30μmの膜厚で塗装し60℃の条件下で10分予備乾燥した後に実施例4の塗料を膜厚20μmで塗装して、140℃の条件下で30分焼付けを実施した。評価結果を表5に示す。
【0078】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0079】
一般的な鋼板、電着された鋼板、PPを主成分とした基剤との密着性にもすぐれ、さらにはリコートと他の組成を持つ熱硬化性の水性塗料あるいは有機溶剤で希釈された塗料の重ね塗りしたときの相間付着性にも優れているため、各種塗料、コーティング材分野に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)の縮合物であって、該化合物(b)由来の酸官能基が塩基性化合物(e)で中和された水性アミノ樹脂。
【請求項2】
酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)の構造中に含まれる酸官能基を除く炭素数が5〜20であることを特徴とする請求項1に記載の水性アミノ樹脂。
【請求項3】
水性アミノ樹脂のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が1200〜10000であることを特徴とする請求項1に記載の水性アミノ樹脂。
【請求項4】
酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有する酸官能基以外の炭素数がC5〜C20であるアミノ化合物または酸官能基を有する酸官能基とアミド基以外の炭素数がC5〜C20であるアミド化合物(b)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を、水(g)の存在下で縮合させ、該縮合により得られた生成物(I)における前記化合物(b)由来の酸官能基を塩基性化合物(e)で中和することを特徴とする請求項2に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記生成物(I)が、前記化合物(a)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を縮合させ、該縮合により得られた生成物(II)を前記化合物(b)と、水(g)の存在下で縮合させることにより得られることを特徴とする請求項4に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記生成物(II)と前記化合物(b)との縮合が、アルコール(f)および水(g)の存在下で、かつ反応温度50〜60℃で行われることを特徴とする請求項5に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項7】
酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、酸官能基を有するアミノ化合物または酸官能基を有するアミド化合物(b)を塩基性化合物(e)で中和して得られた化合物(h)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を、水(g)の存在下で縮合させることを特徴とする請求項1に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項8】
酸官能基を有さないアミノ化合物(a)、ホルムアルデヒド(c)およびアルコール(d)を縮合させ、該縮合により得られた生成物(III)を、酸官能基を有する酸官能基以外の炭素数がC5〜C20であるアミノ化合物または酸官能基を有する酸官能基とアミド基以外の炭素数がC5〜C20であるアミド化合物(b)を塩基性化合物(e)で中和して得られた化合物(h)と、水(g)の存在下で縮合させることを特徴とする請求項2に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記生成物(III)と化合物(h)との縮合が、アルコール(f)および水(g)の存在下で、かつ反応温度50〜60℃で行われることを特徴とする請求項8に記載の水性アミノ樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の水性アミノ樹脂を含む水性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の水性熱硬化性樹脂組成物を含む塗料。
【請求項12】
請求項10に記載の水性熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材。

【公開番号】特開2009−256649(P2009−256649A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72274(P2009−72274)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】