説明

水性インク

【課題】良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する堅牢性に優れたインクを提供する。
【解決手段】分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する色素を少なくとも2種含有し、その色素の少なくとも1種が分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表されるアゾ色素である水性インク。


式中、A及びBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の1価の芳香族基又は置換若しくは無置換の1価の複素環基を表す。R1は、水素原子、置換若又は窒素原子を表し、Xが−CR2=である場合のR2は、水素原子又は置換基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な色相を有し、堅牢性、印字濃度が高い水性インク、及びそのインクジェット記録用インクとしての使用、並びにインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。これらのインクのうち、製造・取り扱い性・臭気・安全性等の点から水性インクが主流となっている。
【0003】
このようなインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
【0004】
色相の良好なアゾ色素として、特許文献1(特開2003−306623号公報)に開示された色素が知られているが、分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する色素を2種以上含有することについて具体的な組合せの開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−306623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する堅牢性に優れ、印字濃度が高い着色画像や着色材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する堅牢性に優れ、かつ印字濃度の高い色素を目指して各種色素化合物誘導体を詳細に検討したところ、2種以上の色素を含有し、その色素の少なくとも1種が下記一般式(1)のアゾ色素である水性インクによって上記問題点を解決可能であることを見出した。
1.分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する色素を少なくとも2種含有し、その色素の少なくとも1種が分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表されるアゾ色素であることを特徴とする水性インク。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、A及びBは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の芳香族基又は置換若しくは無置換の1価の複素環基を表す。
1は、水素原子、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。
Xは、−CR2=又は窒素原子を表し、Xが−CR2=である場合のR2は、水素原子又は置換基を表す。
2.一般式(1)のBが、置換又は無置換の複素環基であることを特徴とする上記1に記載の水性インク。
3.一般式(1)で表されるアゾ色素が、下記一般式(2)で表される色素であることを特徴とする上記1又は2に記載の水性インク。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、A、R1、Xは一般式(1)におけるA、R1、Xと同義であり、B1及びB2は、それぞれ=CR5−及び−CR6=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR5−又は−CR6=を表す。G、R3 、R4、R5、R6は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。好ましくはG、R3、R4の少なくとも1つは少なくとも1つのイオン性親水性基を有する。
4.一般式(2)におけるG、R5、R6が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基及びアリール基及び複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、複素環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、又はスルホ基を表し、R3及びR4が、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル又はアリールスルホニル基又はスルファモイル基(但し、R3及びR4が同時に水素原子であることはない。また、R5とR6、R5とR3あるいはR3とR4が結合して5又は6員環を形成しても良い。)を表すことを特徴とする上記3に記載の水性インク。
5.分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する前記一般式(2)で表される色素を2種以上含有することを特徴とする水性インク。
6.上記1から5のいずれかに記載の水性インクを使用することを特徴とするインクジェット記録用インク。
7.支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有する受像材料上に、上記5に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水溶性インクは、良好な色相を有し、堅牢性に優れ、かつ印字濃度が高い着色画像や着色材料を与えることができる。特に、本発明の水性インクを用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法は、良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する堅牢性が高く、かつ印字濃度が高い黒色画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本発明における上記一般式(1)、その下位概念である一般式(2)で表されるアゾ色素について詳細に説明する。まず、これら一般式の基や置換基について説明する。
【0014】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0015】
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基(アラルキル基及び置換アラルキル基を含む)、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基を意味する。脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。
脂肪族基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜16であることが更に好ましい。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分はフェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。脂肪族基の例には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、及びアリル基を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、1価の芳香族基はアリール基及び置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。1価の芳香族基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6から16が更に好ましい。1価の芳香族基の例には、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基が含まれる。2価の芳香族基は、これらの1価の芳香族基を2価にしたものであり、その例にはとしてフェニレン基、p−トリレン基、p−メトキシフェニレン基、o−クロロフェニレン基及びm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニレン基、ナフチレン基などが含まれる。
【0017】
複素環基には、置換基を有する複素環基及び無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員又は6員環の複素環基が好ましく、複素環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。上記置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基などが含まれる。複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基及び2−フリル基が含まれる。
【0018】
カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基及び無置換のカルバモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0019】
アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
【0020】
アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基及び無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0021】
複素環オキシカルボニル基には、置換基を有する複素環オキシカボニル基及び無置換の複素環オキシカルボニル基が含まれる。複素環オキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記複素環オキシカルボニル基の例には、2−ピリジルオキシカルボニル基が含まれる。
【0022】
アシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。前記アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましい。上記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。上記アシル基の例には、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
【0023】
アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基及び無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基、及びイオン性親水性基が含まれる。上記アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0024】
アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基及び無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルコキシ基及びイオン性親水性基が含まれる。上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基及びo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0025】
複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基及び無置換の複素環オキシ基が含まれる。上記複素環オキシ基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、及びイオン性親水性基が含まれる。上記複素環オキシ基の例には、3−ピリジルオキシ基、3−チエニルオキシ基が含まれる。
【0026】
シリルオキシ基としては、炭素原子数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基が含まれる。
【0027】
アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基及び無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。
前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0028】
カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基及び無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0029】
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基及び無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0030】
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基及び無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0031】
アミノ基には、アルキル基、アリール基又は複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基及び複素環基は更に置換基を有していてもよい。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基及びジエチルアミノ基が含まれる。アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基及び無置換のアリールアミノ基、更にはアニリノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、フェニルアミノ基及び2−クロロフェニルアミノ基が含まれる。複素環アミノ基には、置換基を有する複素環アミノ基及び無置換の複素環アミノ基が含まれる。複素環アミノ基としては、炭素数2〜20個の複素環アミノ基が好ましい。置換基の例としては、アルキル基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。
【0032】
アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基及び無置換基のアシルアミノ基が含まれる。前記アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N-フェニルアセチルアミノ及び3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
【0033】
ウレイド基には、置換基を有するウレイド基及び無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基及びアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基及び3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0034】
スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基及び無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N, N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0035】
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基及び無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0036】
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカボニルアミノ基及び無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0037】
アルキル及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、及び無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のスルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。これらスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、N-フェニル-メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、及び3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ基が含まれる。
【0038】
複素環スルホニルアミノ基には、置換基を有する複素環スルホニルアミノ基及び無置換の複素環スルホニルアミノ基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12の複素環スルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基の例には、2−チオフェンスルホニルアミノ基、3−ピリジンスルホニルアミノ基が含まれる。
【0039】
複素環スルホニル基には、置換基を有する複素環スルホニル基及び無置換の複素環スルホニル基が含まれる。複素環スルホニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルホニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニル基の例には、2−チオフェンスルホニル基、3−ピリジンスルホニル基が含まれる。
【0040】
複素環スルフィニル基には、置換基を有する複素環スルフィニル基及び無置換の複素環スルフィニル基が含まれる。複素環スルフィニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルフィニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルフィニル基の例には、4−ピリジンスルフィニル基が含まれる。
【0041】
アルキル、アリール及び複素環チオ基には、置換基を有するアルキル、アリール及び複素環チオ基と無置換のアルキル、アリール及び複素環チオ基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基としては、炭素原子数が1から20のものが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基の例には、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0042】
アルキル及びアリールスルホニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニル基、無置換のアルキル及びアリールスルホニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニル基の例としては、それぞれメチルスルホニル基及びフェニルスルホニル基を挙げることができる。
【0043】
アルキル及びアリールスルフィニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルフィニル基、無置換のアルキル及びアリールスルフィニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルフィニル基の例としては、それぞれメチルスルフィニル基及びフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
【0044】
スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基及び無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基及びジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0045】
次に、一般式(1)及び一般式(2)について説明する。以下の説明において、基、置換基は、既に説明したことが適用される。
【0046】
一般式(1)において、R1は水素原子、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。R1として好ましくは、置換フェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換の複素環基(例えばピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピリジン環又はピリダジン環)であり、特に好ましくは、置換フェニル基(特にパラ位置換のフェニル基)、置換又は無置換のβ−ナフチル基、ピリジン環又はチアゾール環である。置換基としては、前述の置換基が挙げられる。
【0047】
一般式(1)においてXは、−CR2=又は窒素原子を表し、Xが−CR2 =である場合のR2は、水素原子又は置換基を表す。R2で挙げられる置換基として好ましくは電子求引性基である。電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、σp値が大きい置換基である。例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホン基、トリフルオロメチル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキル及びアリールスルホニル基などが挙げられる。ハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるため、1935年にL.P.Hammettより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編“Lange痴 Handbook of Chemistry”第12版、1979年(Mc Graw-Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。R2の電子求引性基として特に好ましくはシアノ基である。
【0048】
一般式(1)において、A及びBは、それぞれ独立して、置換されていてもよい1価の芳香族基(例えばアリール基)又は置換されていてもよい1価の複素環基を表す。芳香族環の例としては、ベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O及びSをあげることができる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。置換基としてはアリールアゾ基又は複素環アゾ基であってもよい。
A、Bの少なくとも1つは、好ましくは複素環であり、特にBが複素環であることが好ましい。Aの好ましい基は、芳香族環、ピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、特に好ましくは、芳香族環又はピラゾール環である。
【0049】
Bの好ましい複素環基として、下記一般式(3)で表される芳香族含窒素6員複素環基があげられる。Bが下記一般式(3)で表される芳香族含窒素6員複素環基である場合は、一般式(1)は一般式(2)に相当する。
一般式(3)
【0050】
【化3】

【0051】
一般式(2)及び一般式(3)において、B1及びB2は、それぞれ=CR5−及び−CR6=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子で他方が=CR5−又は−CR6=を表すが、それぞれ=CR5−、−CR6=を表すものがより好ましい。
【0052】
3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル又はアリールスルホニル基、スルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していても良い。R3、R4で表される好ましい置換基は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基を挙げることができる。更に好ましくは、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキル又はアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。各基は更に置換基を有していても良い。但し、R3、R4が同時に水素原子であることはない。
【0053】
G、R5、R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基及びアリール基及び複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、複素環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基を表し、各基は更に置換されていても良い。
【0054】
Gで表される好ましい置換基は、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、複素環オキシ基、アルキル基及びアリール基及び複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールチオ基、又は複素環チオ基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基及びアリール基及び複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくは、水素原子、アニリノ基、アシルアミノ基である。各基は更に置換基を有していても良い。
【0055】
5、R6で表される好ましい置換基は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していても良い。R5とR6、R3とR5あるいはR3とR4が結合して5又は6員環を形成しても良い。
【0056】
一般式(2)及び一般式(3)において、A、R3、R4、R5、R6、Gで表される各置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記G、R5、R6で挙げた置換基を挙げることができる。また、A、R3、R4、R5、R6、Gのいずれかに置換基として更にイオン性親水性基を有することが好ましい。
置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基又はスルホ基が好ましい。
カルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
【0057】
Bの特に好ましい複素環基は、ピリジン環であり、一般式(2)は好ましくは下記一般式(4)で表される。
一般式(4)
【0058】
【化4】

【0059】
一般式(4)中、A、R1、X、R3 、R4、R5、R6は一般式(2)におけるA、R1、X、R3、R4、R5、R6と同義であり、R7 及びR8は、一般式(4)のR3及びR4と同義である。
一般式(4)おいて、R3、R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、更に好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。ただし、R3及びR4が共に水素原子であることは無い。
【0060】
本発明において、一般式(4)で表されるものの中で、特に好ましい構造は、下記一般式(5)で表されるものである。
一般式(5)
【0061】
【化5】

【0062】
式中、A、R1、X、R5、R6は一般式(4)におけるA、R1、X、R5、R6と同義であり、Q1、Q2はイオン性親水性基を表し、特に好ましくは、スルホ基又はカルボキシル基であり、m及びnは1〜3の整数を表す。好ましくは、Aは、1価の芳香族環を表し、特に好ましくはフェニル基又はナフチル基である。Xが−CR2=を表す場合のR2は電子求引性基であり、特に好ましいR2はシアノ基である。R5 、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基を表す。
一般式(5)で説明した各基は更に置換基を有していても良い。これらの各基が更に置換基を有する場合、該置換基としては、一般式(2)及び一般式(3)で説明した置換基、G、R5、R6で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
【0063】
前記一般式(1)で表されるアゾ色素の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ色素は、下記の例に限定されるものではなく、またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
前記一般式(1)、(2)、(4)、(5)で表される色素は、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができる(特開2003−306623号公報等を参照)。
【0071】
本発明のインクジェット記録用インクは、前記一般式(1)で表されるアゾ色素と他の色素を併用するか、又は前記一般式(1)で表されるアゾ色素を複数併用することで、所望の効果を発現する。一般式(1)で表されるアゾ色素を2種以上含有するインクジェット記録用インクが好ましいが、一般式(1)で表されるアゾ色素と他の色素を併用する場合の他の色素としては、いずれの色素でもよいが、好ましくは、λmaxが500nmから700nmにあり、吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅が100nm以上である色素であり、例としては、一般式(7)〜一般式(10)を挙げることができる。
【0072】
【化6】

【0073】
一般式(7)中、Y1及びZ1は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表し(Y1は1価の基であり、Z1は2価の基である)、W1及びW2は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。
【0074】
【化7】

【0075】
一般式(8)中、Y2及びZ2は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表し(Y2は1価の基であり、Z2は2価の基である)、W3及びW4は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。
【0076】
【化8】

【0077】
一般式(9)中、Y3及びZ3は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す(Y3、Z3は、いずれも1価の基である)。
【0078】
【化9】

【0079】
一般式(10)中、Vは−OH又は−NH2を表し、Y4及びZ4は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す(Y4、Z4は、いずれも1価の基である)。
【0080】
次に、一般式(7)、(8)、(9)及び(10)について説明する。
【0081】
一般式(7)中、Y1及びZ1は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基(Y1は、1価の芳香族基、例えばアリール基;Z1は、2価の芳香族基、例えばアリーレン基)又は置換若しくは無置換の複素環基(Y1は1価の複素環基であり、Z1は2価の複素環基である)を表す。芳香族環の例としては、ベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Y1及びZ1の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基、アリールアゾ基又は複素環アゾ基であってもよい。
1 及びW2 は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。W1及びW2 の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基を挙げることができる。
【0082】
一般式(8)中、Y2 及びZ2 は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基(Y2は、1価の芳香族基、例えばアリール基;Z2 は、2価の芳香族基、例えばアリーレン基)又は置換若しくは無置換の複素環基(Y2は1価の複素環基であり、Z2は2価の複素環基である)を表す。芳香族環の例としては、ベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。
複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Y2 及びZ2 の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基、アリールアゾ基又は複素環アゾ基であってもよい。
3 及びW4 は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。W3及びW4 の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基を挙げることができる。
【0083】
一般式(9)中、Y3 及びZ3 は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基(Y3及びZ3 は、1価の芳香族基、例えばアリール基)又は置換若しくは無置換の複素環基(Y3 及びZ3は1価の複素環基)を表す。芳香族環の例としては、ベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Y3及びZ3 の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基、アリールアゾ基又は複素環アゾ基であってもよい。
【0084】
一般式(10)中、Vは−OH又は−NH2を表し、Y4 及びZ4 は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換の芳香族基(Y4 及びZ4は、1価の芳香族基、例えばアリール基)又は置換若しくは無置換の複素環基(Y4及びZ4は1価の複素環基)を表す。芳香族環の例としては、ベンゼン環やナフタレン環をあげることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O、及びSをあげることができる。複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Y4及びZ4 の置換基としては、一般式(2)のGで挙げた置換基、アリールアゾ基又は複素環アゾ基であってもよい。
【0085】
また、一般式(7)〜一般式(10)中のカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。また、一般式(7)〜(10)で表されるアゾ色素が、金属とキレート錯体を形成していてもよい。
【0086】
前記一般式(7)〜(10)で表されるアゾ色素の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ色素は、下記の例に限定されるものではない。
【0087】
【化10】

【0088】
なお、一般式(1)で表されるアゾ色素と併用する色素の混合比は、任意であり特に限定されないが、好ましくはモル比で1/100〜100/1、より好ましくは1/10〜10/1である。
本発明の水性インクは水性媒体中に前記アゾ染料を溶解及び/又は分散したインクであり、好ましくは水性媒体中に前記アゾ染料を溶解したインクである。水性媒体については下記のインクジェット記録用インクの項を参照できる。
【0089】
〔インクジェット記録用インク〕
インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に前記アゾ染料を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載のものが適用できる)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0090】
本発明のインク100質量部中は、前記アゾ染料を0.2質量部以上30質量部以下含有するのが好ましい。また、本発明のインクジェット記録用インクには、前記アゾ染料とともに、他の着色剤(染料及び/又は顔料、特開2003−306623号公報に記載)を併用してもよい。2種類以上の着色剤を併用する場合は、着色剤の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0091】
本発明のインクジェット記録用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができる。
【0092】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインクを用いたインクジェット記録方法は、特開2003−306623号公報に記載の方法が適用できる。
【0093】
[実施例]
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0094】
下記の成分に超純水(抵抗値18MΩ以上)、塩基を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してブラックインク液 Bk-101を調製した。
【0095】
〔ブラックインク Bk-101処方〕
(固形分)
本発明のブラック色素(D−1)+(D−41) 60g/l
プロキセル 5g/l
尿素 20g/l
ベンゾトリアゾール 3g/l
(液体成分)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGB) 100g/l
グリセリン(GR) 125g/l
ジエチレングリコール(DEG) 100g/l
2-ピロリドン(PRD) 30g/l
トリエタノールアミン(TEA) 5g/l
サーフィノールSTG(SW) 10g/l
【0096】
次に、インク処方を表7の色素、塩基にした以外は、Bk-101と同じ組成のブラックインクBk-102〜Bk110をそれぞれ作製した。色素を変更する場合は、色素の添加量がインク液Bk-101に対して等モルとなるように使用した。色素を2種以上併用する場合は等モルずつ使用した。
【0097】
【表7】

【0098】
それぞれのインクをEPSON社製インクジェットプリンターPM-980Cのブラックインクのカートリッジに装填し、グレーの階段状に濃度が変化した画像パターンを印字させた。
受像シートは富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」に画像を印刷し、色相、耐水性並びに画像堅牢性の評価を行った。
(評価実験)
1)色相については、λmaxが590nm付近のブロードな色相を目視にて最良、良好及び不良の3段階で評価した。評価結果を下記表に示す。下記表中、Aは色相が最良、Bは良好であったことを示し、Cは色相が不良であったことを示す。
2)印字濃度については、印字直後の濃度をX-rite 310濃度測定機にて測定した。印字濃度が2.5以上のものをA、印字濃度が2.3-2.5ものをB、印字濃度が2.3以下ものをCとして、三段階で評価した。
2)ブラック色素の画像保存性については、グレー印字サンプルを用いて、以下の評価を行った。画像保存性の評価は、グレー階段状パターンの濃度を、ステータスAフィルターを搭載したX-rite 310濃度測定機を用いて測定し、Dvis=1.0付近の点を基準点として、そこの濃度変化を測定することにより行った。
光堅牢性は、印字直後のパターンSの濃度(Dvis)Ciを測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を14日照射した。その後再びパターンSの濃度Cfを測定し色素残存率Cf/Ci×100を求め評価を行った。色素残像率が80%以上の場合をA、70〜80%の場合をB、70%未満の場合をCとした。
熱堅牢性については、80℃70%RHの条件下に21日間、試料を保存する前後でのパターンSの濃度をX-rite 310にて測定し、色素残存率を求め評価した。色素残像率が90%以上の場合をA、80〜90%の場合をB、80%未満の場合をCとした。
耐オゾン性(O3堅牢性)については、オゾンガス濃度が5ppmに設定されたボックス内に試料を96時間放置し、オゾンガス下放置前後のパターンSの濃度をX-rite 310にて測定し、色素残存率を求め評価した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。色素残像率が80%以上の場合をA、70〜80%の場合をB、70%未満の場合をCとした。
得られた結果を表8に示す。
【0099】
【表8】

【0100】
【化11】

【0101】
表8の結果に示されるように、本発明のインク液から得られた画像(色相)は、比較インク液から得られた画像よりも鮮明であった。また、本発明のインクを用いて得られた画像は、印字濃度、光堅牢性、熱堅牢性、耐オゾンガス性が優れていた。
【0102】
更に、インク液Bk-101〜Bk-110を用いて、インクジェットプリンター(PM-980C、セイコーエプソン(株)製)により、スーパーファイン専用光沢紙(MJA4S3P、セイコーエプソン(株)製)に画像を記録した。得られた画像の色相、印字濃度及び堅牢性を評価したところ、いずれも表9と同様の結果が得られた。
【実施例2】
【0103】
実施例1で作製した同じインクを用いて、実施例1の同機にて画像を富士写真フイルム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【実施例3】
【0104】
実施例1で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する色素を少なくとも2種含有し、その色素の少なくとも1種が分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する下記一般式(1)で表されるアゾ色素であることを特徴とする水性インク。
【化1】

式中、A及びBは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の1価の芳香族基又は置換若しくは無置換の1価の複素環基を表す。R1は、水素原子、置換若しくは無置換の芳香族基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。Xは、−CR2=又は窒素原子を表し、Xが−CR2=である場合のR2は、水素原子又は置換基を表す。
【請求項2】
一般式(1)のBが、置換又は無置換の複素環基であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク。
【請求項3】
一般式(1)で表されるアゾ色素が、下記一般式(2)で表される色素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インク。
【化2】

式中、
A、R1、Xは一般式(1)におけるA、R1、Xと同義であり、B1及びB2は、それぞれ=CR5−及び−CR6=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR5−又は−CR6=を表す。G、R3 、R4、R5、R6は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
【請求項4】
分子中に少なくとも1つのイオン性親水性基を有する前記一般式(2)で表される色素を2種以上含有することを特徴とする水性インク。

【公開番号】特開2011−80070(P2011−80070A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253312(P2010−253312)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【分割の表示】特願2004−243269(P2004−243269)の分割
【原出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】