説明

水性クリアーワニス組成物

【課題】高速塗装条件においても、金属印刷用インキを金属素材に印刷した直後にウェット・オン・ウェット方式で塗装した場合に、インキの発色を保持したままで熱硬化後も色相が変化することなく、長距離・長時間輸送時の耐傷つき性にも優れる塗膜を形成し得る、缶の外面被覆に好適な水性クリアーワニス組成物を提供すること。
【解決手段】長鎖アルキル基含有不飽和モノマー、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸及びそれらと共重合可能なモノマーから得られる水溶性アクリル樹脂(A)、炭素数の合計が3以上となるアルキル分岐構造を有するジオール類を用いてなる水溶性ポリエステル樹脂(B)、アミノ樹脂(C)、沸点200〜300℃の有機溶剤(D)及び水を含有してなる水性クリアーワニス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性クリアーワニス組成物に関するものである。詳しくは、金属板に金属用インキを印刷した上にウェット・オン・ウェットにて塗装し加熱硬化する過程で、印刷インキの色相が変わることなく、かつ、耐傷付き性や耐レトルト性等に優れる塗膜を形成し得る水性クリアーワニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料、食品等を包装する金属缶の外面は、防錆、内容物の表示、美装等の目的で有機皮膜により被覆されている。その被覆は、アンダーコート層/インキ層/トップコート層により構成される。即ち、缶素材の上に無色又は白色のアンダーコート層が形成され、その上に印刷インキにより文字、図柄等が印刷され、更にこの印刷面上に透明なトップコート層が設けられるのが一般的な仕様である。
【0003】
ところで、このような缶外面の被覆工程に於いては、塗装コスト低減の観点から、印刷インキの乾燥工程を省略して、未乾燥インキの上に透明なトップコート剤を塗装し、インキ層とトップコート剤とを同時に加熱硬化せしめる、所謂、ツーコート・ワンベーク方式の塗装・乾燥工程が広く一般に採用されている。
ここに、未乾燥、すなわちウェット状のインキの上にトップコート剤が塗装されることから、上記の態様を「ウェット・オン・ウェット」とも称す。
【0004】
また、缶外面用として使用されてきた透明なトップコート剤としては、従来アルキッド系、エポキシエステル系、熱硬化型アクリル系樹脂等を有機溶剤中に溶解させてなる、所謂、溶剤型塗料が使用されてきたが、近年、塗装・乾燥の際排出される有機溶剤量による大気汚染が問題視されるようになり、その一つの解決策として、塗料の水性化が検討されている。ところが、未乾燥の油性印刷インキ上に従来の水性塗料を塗装した場合、塗料のハジキの発生、インキの凝集による色相の変化、或いは塗膜光沢の著しい低下等の問題が発生する。また、上記の問題を解決するための水性塗料の改良に際しては、硬化塗膜の硬さ、耐臭気吸着性、耐黄変性などの従来トップコート剤として要求されている塗膜物性も考慮されなければならない。
【0005】
水性クリアーワニスとして印刷インキ上にウェット・オン・ウェット方式で塗装することを目的として、長鎖アルキル基含有反応性アクリルモノマーを共重合してなるアクリル樹脂を使用した水性クリアーワニスが発明されているが、印刷インキ適性は良好なものの、得られる硬化塗膜が軟らかい性質であるため、熱時軟化が促進される結果、長距離輸送時に塗膜が剥離する。また、飲料缶の熱保管時に臭気が吸着しやすい結果となり、トラブルが発生しやすい(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に開示される水性クリアーワニスから得られる塗膜の塗膜硬度を補う発明として、特定のアクリルモノマー組成の共重合体(詳しくはアクリルアミド系モノマーと、水酸基含有モノマーと、カルボン酸含有モノマーと、ガラス転移温度が高い重合体が得られるアクリルモノマーとを主体としてなる共重合体)を含有する、耐傷付性に優れる塗料組成物が発明された。しかし、濃色(例えば、草・藍・墨色)印刷インキを用いて高速条件でウェット・オン・ウェット方式でインキを印刷し、さらに発明された塗料組成物を塗装した場合、熱硬化前の時点においてインキの凝集が目立ち、本来の色が発現できない傾向が見られ、更なる改善が必要とされる(特許文献2参照)。
【0007】
水性塗料組成物として、例えばグリシジル(メタ)アクリレートと(不)飽和脂肪酸とのエステル化反応生成物をオリゴマーとして用いてなるアクリル共重合物と、アミノ樹脂とを含む水性塗料組成物が発明されている(特許文献3参照)。同様に、(メタ)アクリル酸とモノエポキシ化合物との付加オリゴマーと、アクリル酸ω−ヒドロキシアルキルエステルモノマーとを必須成分として共重合してなるアクリル樹脂と、ガラス転移温度が0℃以下のアクリル樹脂を含有する水性塗料組成物が発明されている(特許文献4参照)。これらの発明の効果として乾燥後の塗膜観察結果では良好であるが、ウェットインキ上に当該水性塗料組成物がウェットで接触した時に、塗料組成物が高沸点溶剤を含有していないため、水性塗料組成物がインキに馴染まずにインキの凝集が起こり易い可能性が考えられる。
【0008】
アクリル系水溶性共重合体を含有する水溶性塗料組成物として、高分子量のアクリル樹脂であって、水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマー、そして長鎖アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーを必須としてなるアクリル共重合物を含有する塗料組成物が提案されている。このアクリル樹脂中の水酸基とアミノ樹脂とが加熱時に架橋反応するが、印刷インキは自己架橋を行なえず、本塗料組成物の硬化性が乏しいため、短時間焼付け工程では物性の不十分な塗膜しか得られない(特許文献5参照)。
【0009】
ポリエステル樹脂として、樹脂を構成するアルコール成分中に分岐したプロパンジオール類等を必須成分としてなるポリエステル樹脂と、アミノ樹脂とから構成される缶外面塗料が提案されている。分岐した直鎖官能基数によるインキ適性向上効果は認められるが、水性樹脂としては十分に検討がなされておらず、ポリエステル樹脂以外の、架橋性に優位なアクリル樹脂が用いられていないため、近年の短時間焼付型塗料には不向きである(特許文献6参照)。
【0010】
また、特許文献2から5に至っては、各特徴的なアクリル樹脂と一般的なアミノ樹脂とを含む組成物であり、特許文献6においては水性塗料としての設定では無く、本発明である塗膜に対する耐傷付性に効果的な水性ポリエステル樹脂を用いることには全く触れていない。
【特許文献1】特公平01−25348号公報
【特許文献2】特許第3870682号公報
【特許文献3】特開平09−249846号公報
【特許文献4】特許第3229688号公報
【特許文献5】特開2001−240624号公報
【特許文献6】特開平9−194794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高速塗装条件においても、金属印刷用インキを金属素材に印刷した直後にウェット・オン・ウェット方式で塗装した場合に、インキの発色を保持したままで熱硬化後も色相が変化することなく、長距離・長時間輸送時の耐傷つき性にも優れる塗膜を形成し得る、缶の外面被覆に好適な水性クリアーワニス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のモノマー組成からなるアクリル樹脂とポリエステル樹脂とを含有し、且つ高沸点溶剤を必須成分として含有する水性クリアーワニス組成物が、高速塗装条件でウェット・オン・ウェット方式で塗装された場合でも、ウェット時にインキ層に対し相溶化しやすく、熱硬化工程時も、比較的緩やかに揮発する溶剤により相溶化を維持しながら乾燥塗膜を形成しやすくなることでインキ色相を焼付前後で同一に保つことが可能であるとともに、近年更に厳しく要求される耐傷付き性をも満足する硬化塗膜を形成し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、第1の発明は、モノマーの合計100重量%中、
一般式(I)で示されるモノマー(a)5〜30重量%;
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド(b)20〜50重量%;
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(c)1〜10重量%;
及び(a),(b),(c)と共重合可能なその他のラジカル重合性モノマー(d)10〜74重量%を共重合し、塩基性化合物で中和してなる水溶性アクリル樹脂(A)、一般式(II)で示されるジオール類を用いてなる水溶性ポリエステル樹脂(B)、アミノ樹脂(C)、沸点200〜300℃の有機溶剤(D)及び水を含有してなる水性クリアーワニス組成物であって、
(A)〜(C)の樹脂固形分の合計100重量%中、
前記水性クリアーワニス組成物100重量%中、
水溶性アクリル樹脂(A):30〜50重量%、
水溶性ポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、
アミノ樹脂(C):10〜60重量%、であり、かつ、
水性クリアーワニス組成物100重量%中、有機溶剤(D)の割合が14〜39重量%であることを特徴とする水性クリアーワニス組成物に関する。
【0014】
【化1】

【0015】
(ただし、式中Xは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数10ないし15の直鎖または
分岐アルキル基を表す。)
【0016】
【化2】

【0017】
(ただし、式中R、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、かつR、R、Rの炭素数の合計は3以上である。)
【0018】
また、第2の発明は、水溶性ポリエステル樹脂(B)を得るために用いられる多価アルコール100モル%中、一般式(II)で示されるジオール類が10〜50モル%であり、かつ、水溶性ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量が1,000〜3,000、酸価が20〜50mgKOH/gであることを特徴とする第1の発明の水性クリアーワニス組成物に関する。
【0019】
さらに、第3の発明は、沸点200〜300℃の有機溶剤(D)が、グリコール系溶剤もしくはアルコール系溶剤であることを特徴とする第1または第2の発明の水性クリアーワニス組成物に関する。
【0020】
さらにまた、第4の発明は、アミノ樹脂(C)が、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする第1ないし第3いずれかの発明の水性クリアーワニス組成物に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高速塗装条件においても、金属印刷用インキを金属素材に印刷した直後にウェット・オン・ウェット方式で塗装した場合に、インキの発色を保持したままで熱硬化後も色相が変化することなく、長距離・長時間輸送時の耐傷つき性にも優れる塗膜を形成し得る、缶の外面被覆に好適な水性クリアーワニス組成物を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、本発明で用いられる水溶性アクリル樹脂(A)について説明する。
水溶性アクリル樹脂(A)は、それを構成するモノマーとして、一般式(I)で示されるモノマー(a)〔以下、単に「モノマー(a)」とも称す。〕、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド(b)〔以下、「モノマー(b)」とも称す。〕、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(c)〔以下、「モノマー(c)」とも称す。〕及び(a),(b),(c)と共重合可能なその他のラジカル重合性モノマー(d)〔以下、単に「モノマー(d)」とも称す。〕からなるものである。
【0023】
【化3】

【0024】
(ただし、式中Xは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数10ないし15の直鎖または
分岐アルキル基を表す。)
【0025】
第1の共重合成分である、一般式(I)で示されるモノマー(a)としては、例えば、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを挙げることができる。モノマー(a)は通常上記から選ばれた1種類が用いられるが、2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0026】
モノマー(a)の使用量は、水溶性アクリル樹脂(A)を得るために用いられるモノマー、すなわちモノマー(a)〜(d)の合計100重量%中、5〜30重量%である。5重量%未満の共重合量では、ウェットインキ上での発色が十分に発現出来ない。また、30重量%を超えると得られる塗膜の塗膜硬度が低下し、耐傷付性を確保することが困難となる。
【0027】
第2の共重合成分であるN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド(b)としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのうち、好ましくはN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミドである。
【0028】
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド(b)の使用量は、モノマー(a)〜(d)の合計100重量%中、20〜50重量%である。20重量%未満の共重合量では、塗膜の架橋密度が低下し、その結果得られる塗膜の耐傷付性、耐レトルト性、硬度が低下する。また、50重量%を超えると、塗膜の加工性が低下する。
【0029】
第3の共重合成分であるα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(c)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらのうち、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0030】
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(c)の使用量は、モノマー(a)〜(d)の合計100重量%中、1〜10重量%である。1重量%未満では、共重合物を水溶化することも水性媒体に分散させることも困難である。また、10重量%を超えると、得られる塗膜の耐レトルト性を低下させる傾向にある。
【0031】
第4の共重合成分である、前記モノマー(a),(b),(c)と共重合可能なその他のラジカル重合性モノマー(d)は、塗膜に要求される諸々の物性のバランスをとる為に必要な成分である。
本発明に使用できるラジカル重合性モノマー(d)として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル等の、炭素数10未満のアルキル基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸低級アルキルエステル類;
または(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の水酸基もしくはグリシジル基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸エステル類;
あるいはスチレン、ビニルトルエン、2メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン誘導体及びアクリロニトリル、などがある。
モノマー(d)の使用量は、モノマー(a)〜(d)の合計100重量%中、10〜74重量%である。
10重量%未満では、得られる樹脂の柔軟性や反応性が過大となり、耐傷付性の低下と合成反応中のゲル化が促進される。一方、74重量%を超えると、モノマー(a),(b)の構成比が必然的に減少することにより、本発明の特徴であるウェットインキ適性が低下するという不都合を生じる。
【0032】
本発明の水溶性アクリル樹脂(A)は、例えば、次の方法で合成することができる。即ち、上記モノマー群より適時選択したモノマー(a)〜(d)の混合物を水混和性有機溶剤の中で重合開始剤の存在下に共重合することにより得ることができるが、共重合した後、必要に応じて余剰の有機溶剤を減圧溜去した後、塩基性化合物で中和し、水で希釈することにより得られる溶液の態様で用いることが好ましい。
【0033】
この方法に於ける水混和性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
エチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられる。
【0034】
また、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の如きアゾ系化合物を挙げることが出来る。
【0035】
中和に用いる塩基性化合物としては、(モノ、ジ、トリ)メチルアミン、(モノ、ジ、トリ)エチルアミン、(モノ、ジ、トリ)プロピルアミン等のアルキルアミン;
(モノ、ジ)エタノールアミン、(モノ、ジ)イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロパノール、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の多価アミン等の有機アミン及びアンモニアを挙げることが出来る。
これらの中でも、揮発性のものが好ましく用いられる。
【0036】
本発明に於ける水溶性ポリエステル樹脂(B)は、多塩基酸及び/またはその無水物と多価アルコールとの重縮合反応(エステル化反応)により合成することが出来る。この反応は常圧下、減圧下の何れで行なってもよく、又分子量の調整は多塩基酸及び/またはその無水物と多価アルコールとの仕込み比率(過剰率:酸基に対する水酸基の当量比)によって行なうことが出来る。
【0037】
水溶性ポリエステル樹脂(B)の合成に使用できる多塩基酸及び/またはその無水物としては、二塩基酸及び/またはその無水物が好ましく用いられ、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族二塩基酸及びその無水物類、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸及びその無水物類、又(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等の脂肪族二塩基酸及びその無水物類が挙げられ、得られる塗膜の硬度と加工性を勘案してこれらの中から適宜選択して使用することが出来る。
【0038】
また、多価アルコールとしては、ジオールもしくはトリオールが好ましく用いられるが、本発明においては、一般式(II)で示されるジオール類を使用することが重要である。
【0039】
【化4】

【0040】
(ただし、式中R、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、かつR、R、Rの炭素数の合計は3以上である。)
【0041】
一般式(II)で示されるジオール類としては、例えば、オクタンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール 、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。
その他のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどを使用することができる。また、トリオールとしては、トリメチロールプロパンなどを使用することができ、得られる塗膜の硬度と加工性を勘案してこれらの中から適時選択して使用することが出来る。
【0042】
一般式(II)で表されるジオール類の使用量は、水溶性ポリエステル樹脂(B)を得るために用いられる多価アルコールの合計100モル%中、10〜50モル%が好ましく、より好ましくは25〜40モル%の範囲である。10モル%未満の場合には、ウェットインキ適性向上作用が小さく、又50モル%を超える場合には塗膜硬度が低下する傾向が見られる。
【0043】
本発明の水溶性ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は、1,000乃至3,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が1,000未満の場合には、十分な塗膜性能を与えることが出来ず、又3,000を超える場合には、分子末端の架橋性官能基量が十分ではないため、短時間焼付けに於ける塗膜硬度の低下を招く恐れがある。
【0044】
本発明の水溶性ポリエステル樹脂(B)の酸価は、20乃至50mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満の場合には、水溶性樹脂として水溶化することは困難である。又酸価が50mgKOH/gを越えると、過剰の酸成分が塗膜に残存することにより、塗膜の耐レトルト性を低下させる傾向にある。
【0045】
上記重縮合反応で得られたポリエステル樹脂は、溶剤に溶解した溶液の形で本発明の水性クリアーワニスの調製に供されることが好ましい。この溶剤としては、ポリエステル樹脂を希釈可能なもので、且つ水混和性有機溶剤であるものが好ましく使用できる。
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
エチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられる。
【0046】
本発明に於けるアミノ樹脂(C)は、上記水溶性アクリル樹脂(A)及び水溶性ポリエステル樹脂(B)との架橋剤として機能し、強靭な塗膜を形成させる作用を有するものであり、従来公知のものを使用することが出来るが、本発明においては、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかを使用することが好ましい。これらは、ベンゾグアナミン、メラミンもしくは尿素にホルムアルデヒドが付加してなる樹脂であり、それぞれが自己縮合していてもよく、さらには、低級アルコールによってエーテル化されていてもよい。縮合度やエーテル化度は、所望する硬化塗膜の物性や、ウェットインキ上での塗装適性等を勘案して、適宜選択することができる。
【0047】
本発明に於ける沸点200〜300℃の有機溶剤(D)は、上記水溶性アクリル樹脂(A)、水溶性ポリエステル樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を溶解するための溶媒であり、ウェットインキ層の上に本発明の水性クリアーワニス組成物を塗布した時に、乾燥前にインキ層に浸透しやすい効果を得るのに好適である。また、有機溶剤(d)は、水と任意の割合で混和するもの、あるいは水に対して少なくとも部分的に混和する溶剤が選ばれるが、グリコール系溶剤もしくはアルコール系溶剤が好ましく用いられる。
例えば、グリコールエーテル類ではエチレングリコール−モノ−ヘキシルエーテル(沸点208℃)、エチレングリコール−モノ−2−エチルヘキシルエーテル(沸点225℃)、エチレングリコール−モノ−フェニルエーテル(沸点245℃)、ジエチレングリコール−モノ−プロピルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコール−モノ−イソプロピルエーテル(沸点207℃)、ジエチレングリコール−モノ−イソブチルエーテル(沸点220℃)、ジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテル(沸点230℃)、ジエチレングリコール−モノ−ヘキシルエーテル(沸点259℃)、ジエチレングリコール−モノ−2−エチルヘキシルエーテル(沸点270℃)、トリエチレングリコール−モノ−メチルエーテル(沸点249℃)、トリエチレングリコール−モノ−ブチルエーテル(沸点271℃)、ジプロピレングリコール−モノープロピルエーテル(沸点208℃)、ジプロピレングリコール−モノ−ブチルエーテル(沸点214℃)、プロピレングリコール−モノ−フェニルエーテル(沸点242℃)等が挙げられるが、水溶性の観点から、より好ましくはメチルエーテルやブチルエーテルやプロピルエーテルである。
アルコール類では、n−デシルアルコール(沸点231℃)、n−ウンデシルアルコール(沸点243℃)、ベンジルアルコール(沸点205℃)等が挙げられる。
これらの有機溶剤(D)は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0048】
上記有機溶剤(D)と共に、本発明の効果を損なわない範囲において、沸点200℃未満の水溶性有機溶剤も使用することができる。
沸点200℃未満の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール−モノ−メチルエーテル、エチレングリコール−モノ−エチルエーテル、エチレングリコール−モノ−プロピルエーテル、エチレングリコール−モノ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−メチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテル、エチレングリコール−モノ−メチル−アセテート、エチレングリコール−モノ−エチル−アセテート、ダイアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0049】
本発明の水性クリアーワニス組成物は、水溶性アクリル樹脂(A)、水溶性ポリエステル樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)の樹脂固形分の合計100重量%中、水溶性アクリル樹脂(A):30〜50重量%、水溶性ポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、及びアミノ樹脂(C):10〜60重量%の割合でそれぞれを含有することが重要である。これらの割合にて各樹脂が存在する場合に、本発明の優れた効果が発現する。
また、水性クリアーワニス組成物100重量%中、樹脂成分の割合は40〜55重量%であることが好ましい。
【0050】
また、水性クリアーワニス組成物100重量%中、沸点200〜300℃の有機溶剤(D)の割合は14〜39重量%であることが重要である。14重量%未満ではウェットインキ上に塗装した場合の色再現性向上効果が不十分であり、一方、39重量%を超えると、乾燥塗膜中に高沸点溶剤が残存し、殺菌処理等の後工程において溶出する恐れがある。
【0051】
さらに、本発明の水性クリアーワニス組成物は、液状媒体としての水を必須として含有する。水の含有量は、水性クリアーワニス組成物100重量%中、5〜45重量%であることが好ましい。
【0052】
本発明の水性クリアーワニス組成物は、必要に応じて、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、リン酸エステル等の酸触媒、又は前記酸触媒をアミンブロック化してなるブロック体を0.01〜1重量%含有していてもよい。
【0053】
本発明の水性クリアーワニス組成物は、その他の樹脂成分として、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、又はリン酸などの無機酸もしくは有機酸をグリシジル基に付加し末端がエステル化された酸変性エポキシ樹脂等を含有していてもよい。
【0054】
本発明の水性クリアーワニス組成物は、各種基材、例えば金属板、プラスチックフィルム、又は金属板にプラスチックフィルムを積層してなる基材等に、ロールコート、スプレー、刷け塗り等公知の手段により塗装することが出来る。金属板としては、電気メッキ錫鋼板、アルミニウム鋼板、ステンレス鋼板が挙げられ、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のプラスチックのフィルムが挙げられる。
特に、缶外面の被覆用として好適である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ示す。
【0056】
製造例1 アクリル系共重合体(A1)の合成
温度計、撹拌機、還流冷却器、滴下槽、窒素ガス吹込管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル34部とジエチレングリコールモノブチルエーテル66部を仕込み、窒素ガスを導入しながら120℃に保ち、滴下槽からメタクリル酸ラウリル 15部、n−イソブトキシアクリルアミド 30部、アクリル酸 5部、メタクリル酸メチル 40部、アクリル酸エチル 10部の混合物に過酸化ベンゾイル 5部を溶解させたものを2時間にわたって滴下した。その後120℃に保ち1時間反応させた後、過酸化ベンゾイル1.5部を添加し、さらに1時間反応させて、重量平均分子量10000、酸価33mgKOH/gの共重合体の溶液を得た。次いで、減圧下80℃にて不揮発分が60%になるまで、前記共重合体の溶液からエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを留去した後、ジメチルエタノールアミン 5部、イオン交換水29部を加え、不揮発分50%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有率33%の透明で粘調なアクリル系共重合体(A1)の溶液を得た。
【0057】
製造例2〜6(アクリル系共重合体(A2)〜(A3)、及び(B1)〜(B3)の合成)
製造例1と同様にして表1の組成で、アクリル系共重合体(A2)〜(A3)及び(B1)〜(B3)の溶液を得た。
【0058】
製造例7 ポリエステル樹脂(C1)の合成
温度計、撹拌機、精流管、コンデンサー、デカンター、窒素ガス吹込管を備えた1リットの四つ口フラスコに、無水フタル酸 56部、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸13部、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 13部、ジエチレングリコール 6部、1,4−ブタンジオール 7部、トリメチロールプロパン 5部を仕込み、160℃まで加熱して内容物を溶融させた。同温度より、縮合により発生する水を系外に溜去しながら、3時間を要して230℃まで昇温した。同温度で2時間縮合反応せしめた後、反応物の酸価が50〜55mgKOH/gに達したことを確認した時点で、180℃まで冷却し、ブチルセロソルブを40部加え、ポリエステル樹脂(C1)溶液を得た。このポリエステル樹脂(C1)溶液の不揮発分は70%、粘度(ガードナー気泡粘度/25℃)はY−Z、樹脂の酸価は49mgKOH/g、数平均分子量は2,200であった。
【0059】
製造例8〜11(ポリエステル樹脂(C2)〜(C4)、及び(D1)の合成)
製造例7と同様にして、表2の組成で、ポリエステル樹脂(C2)〜(C4)及び
(D1)溶液を得た。
【0060】
実施例1
製造例1で得たアクリル共重合体(A1)溶液34重量部、製造例7で得たポリエステル樹脂(C1)溶液12.5重量部、マイコート106(日本サイテック社製商品、ベンゾグアナミン樹脂溶液、不揮発分77%)23重量部、酸変性エポキシ樹脂溶液(不揮発分71%)2重量部、ジメチルエタノールアミンを0.5重量部、イオン交換水を16重量部、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を0.2重量部、濡れ剤としてシリコンKF353(信越シリコン社製商品)を1.0重量部、滑り剤としてミクロフラットCR−26(興洋化学社製商品)1.0重量部を混合し、これにジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)を12重量部添加混合し、不揮発分45%、沸点200℃以上の有機溶剤の含有率が23%の水性クリアーワニス組成物を得た。
板厚0.26mmのアルミ板に乾性油アルキッド樹脂をビヒクルの主成分とするインキを2μmの厚みで印刷し、その上に上記で得られた水性クリアーワニス組成物を乾燥後塗膜厚が5μmになるようにロールコート塗装し、雰囲気温度200℃のガスオーブンで5分間焼き付け、塗装板を作製した。硬化塗膜の物性については、上記インキ印刷システムで得た塗装板を用いて、後述する方法で各種特性を評価した。結果を表4に示す。
【0061】
実施例2〜8、比較例1〜6
製造例1で得られたアクリル共重合体(A1)溶液に加えて製造例2〜6で得たアクリル共重合体(A2)〜(A3)溶液及び(B1)〜(B3)溶液を用い、また、製造例7で得られたポリエステル樹脂(C1)溶液に加えて製造例8〜11で得たポリエステル樹脂(C2)〜(C4)、(D1)溶液を用い、表3に示す配合例に基づき実施例1と同様にして水性クリアーワニス組成物を得、同様にして試験を行った。結果を表4に示す。
【0062】
耐傷付性試験(1)[引っ掻き値]
新東科学(株)製「トライボギアHEIDON−22H型」を使用して、サファイア針にかける荷重を変化させながら塗膜上を滑らせ、傷が発生しない最大の荷重を求めた。
測定条件 : 連続荷重方式
引っ掻き速度 : 300mm/分
引っ掻き針 : サファイア 100μm
測定温度 : 25℃
【0063】
耐傷付性試験(2)[塗膜傷付性]
同一の水性クリアーワニス組成物から得た塗装板6枚を70℃−10分間温水処理後、市販の350mLの飲料缶の周囲にそれぞれ貼り付け、6缶を束ねて固定し、「GVcat」振動試験機(GAVARTI ASSOCIATES,LTD.社製)を用いて10分間振動させ、振動後の塗膜に生じた傷の長さと数から塗膜の耐傷付性を評価した。
評価基準:長さ3mm以上の傷(大):3点、長さ1mm以上〜3mm未満の傷(中):2点、長さ1mm未満の傷(小):1点とし、各評点に傷の数を乗じてその合計値で塗膜の傷付性を評価。点数の低い方が良好であり、20点以下が実用レベルである。
【0064】
耐レトルト性試験
蒸気雰囲気中で125℃−30分間レトルト処理した後の塗膜の白化程度を目視で評価する。
評価基準:(良好)5点−1点(全面白化)。4点以上が実用域レベルである。
【0065】
密着性試験
蒸気雰囲気中で130℃−30分間レトルト処理した塗膜にカッターを使用して碁盤目上に切れ込みを入れ、セロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離する際に剥離した塗膜面積で密着性を評価した。
評価基準:剥離面積(%)で表記。数値0が最も良好(剥離無し)であり、碁盤目が全く剥離しないことを示す。
【0066】
耐衝撃性試験
デュポン衝撃試験機を用いて、下記条件にて耐衝撃性試験を行い、衝撃部の塗膜の剥離状態を目視で評価した。
撃芯径 :1/2インチ
荷重 :300g
落下高さ:30cm
評価基準:(剥離無し)5点−1点(衝撃部全て剥離)。4点以上が実用レベル。
【0067】
加工性試験
JIS Z−2247に準じ、エリクセン試験機を用い、下地の金属が割れはじめるところまで押し出し加工した後、塗膜の状態を目視で評価した。
評価基準:(剥離なし)5点−1点(全て剥離)。4点以上が実用レベル。
【0068】
湯中硬度
塗装板を80℃の湯中に浸漬し、湯中での鉛筆硬度を測定した。
評価基準:塗膜に傷が付かない最も硬い硬度で表示。H以上が実用レベル。
【0069】
インキ適性試験
板厚0.26mmのアルミ板に乾性油アルキッド樹脂をビヒクルの主成分とする墨インキを2μm厚みで印刷し、その上に実施例、比較例で得られた各水性クリアーワニス組成物を、乾燥後塗膜厚が5μmになるようにロールコート塗装し、焼付前後のインキ層の凝集の程度を目視で評価した。
評価基準:(凝集なし)5点−1点(凝集し下地が露出)。4点以上が実用レベル。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
表4に示すように、実施例1〜8では、良好な耐傷付性を有しながら、インキ適性(塗装直後と乾燥焼き付け後)は実用域の性能を示した。
比較例2,3,4,5では、アクリル樹脂中の一般式(I)で示されるモノマー(a)の含有量、ポリエステル樹脂を形成する多価アルコール中における一般式(II)で示されるジオール類の含有量、及び高沸点の有機溶剤量が不足すると、特に塗装直後でのインキ適性試験でインキ凝集が見られる傾向であった。
また、アクリル樹脂中の一般式(I)で示されるモノマー(a)の含有量が過剰である比較例1,6では、耐傷付性試験(2)で実用域以下の性能しか得られない傾向を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーの合計100重量%中、
一般式(I)で示されるモノマー(a)5〜30重量%;
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド(b)20〜50重量%;
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(c)1〜10重量%;
及び(a),(b),(c)と共重合可能なその他のラジカル重合性モノマー(d)10〜74重量%を共重合し、塩基性化合物で中和してなる水溶性アクリル樹脂(A)、一般式(II)で示されるジオール類を用いてなる水溶性ポリエステル樹脂(B)、アミノ樹脂(C)、沸点200〜300℃の有機溶剤(D)及び水を含有してなる水性クリアーワニス組成物であって、
(A)〜(C)の樹脂固形分の合計100重量%中、
水溶性アクリル樹脂(A):30〜50重量%、
水溶性ポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、
アミノ樹脂(C):10〜60重量%、であり、かつ、
水性クリアーワニス組成物100重量%中、有機溶剤(D)の割合が14〜39重量%であることを特徴とする水性クリアーワニス組成物。
【化1】

(ただし、式中Xは水素原子またはメチル基を、Rは炭素数10ないし15の直鎖または
分岐アルキル基を表す。)
【化2】

(ただし、式中R、R、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、かつR、R、Rの炭素数の合計は3以上である。)
【請求項2】
水溶性ポリエステル樹脂(B)を得るために用いられる多価アルコール100モル%中、一般式(II)で示されるジオール類が10〜50モル%であり、かつ、水溶性ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量が1,000〜3,000、酸価が20〜50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1記載の水性クリアーワニス組成物。
【請求項3】
沸点200〜300℃の有機溶剤(D)が、グリコール系溶剤もしくはアルコール系溶剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性クリアーワニス組成物。
【請求項4】
アミノ樹脂(C)が、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の水性クリアーワニス組成物。

【公開番号】特開2008−222752(P2008−222752A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59329(P2007−59329)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】