説明

水性コーティング組成物

【課題】イオン性架橋剤としてカルシウムまたはマグネシウムを使用する水性コーティング組成物を提供する。
【解決手段】ポリマーを含む水性コーティング組成物であって;前記ポリマーが(a)カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの少なくとも1種;並びに(b)(i)カルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数0.3〜4を有する少なくとも1種のモノマー0.5〜7重量%;(ii)メタクリル酸5〜15重量%;および(iii)少なくとも1種の架橋剤0.2〜3重量%の重合残基を含み;前記ポリマーが50〜110℃のTgを有する;水性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に床用仕上げ剤として有用な水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
床および他の表面上に使用される水性コーティング組成物は伝統的に、架橋を付与するために遷移金属イオン、例えば、亜鉛を使用してきた。より最近の試みは、環境的により許容されうる金属イオン、例えば、カルシウムおよびマグネシウムをイオン性架橋剤として使用することに向けられてきた。例えば、米国特許出願公開第2007/0254108号はカルシウムを使用する組成物を開示する。しかし、カルシウムまたはマグネシウムを使用するこの先行技術のどの組成物も商業的な必要性を満足するであろう特性の組み合わせを提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0254108号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、イオン性架橋剤としてカルシウムまたはマグネシウムを使用する水性コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリマーを含む水性コーティング組成物であって;当該ポリマーが(a)カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの少なくとも1種;並びに(b)(i)カルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数0.3〜4を有する少なくとも1種のモノマー0.5〜7重量%;(ii)メタクリル酸5〜15重量%;および(iii)少なくとも1種の架橋剤0.2〜3重量%の重合残基を含み;当該ポリマーが50〜110℃のTgを有する;水性コーティング組成物を提供する。
本発明は、さらに、基体に当該水性コーティング組成物を適用することによって基体をコーティングする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
他に特定されない限りは、パーセンテージは重量パーセンテージ(重量%)であり、温度は℃単位であり、安定度定数は周囲温度(典型的には20〜25℃)で測定される。モノマーの重量パーセンテージは重合混合物中のモノマーの全重量を基準にする。全てのポリマーTg値は、1分あたり10℃の加熱割合を用いて示差走査熱量測定(DSC)によって測定され、Tgは遷移の中点を採用する。
【0007】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルをいい、「(メタ)アクリラート」とはアクリラートまたはメタクリラートをいう。用語「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミド(AM)またはメタクリルアミド(MAM)をいう。「アクリル系モノマー」には、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、AAおよびMAAのエステル、イタコン酸(IA)、クロトン酸(CA)、アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド(MAM)、並びにAMおよびMAMの誘導体、例えば、アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。AAおよびMAAのエステルには、これに限定されないが、アルキル、ヒドロキシアルキル、ホスホアルキルおよびスルホアルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸イソブチル(iBMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸エチルヘキシル(EHA)およびメタクリル酸ホスホエチル(PAM)が挙げられる。用語「ビニルモノマー」とは、窒素または酸素のようなヘテロ原子に結合されている炭素−炭素二重結合を含むモノマーをいう。ビニルモノマーの例には、これに限定されないが、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、並びに長鎖アルカン酸ビニル、例えば、ネオデカン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルが挙げられる。用語「芳香族−アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマーとビニル芳香族モノマーまたはビニルシクロヘキシルモノマーとのポリマーをいう。ビニル芳香族モノマーは1分子あたり1つのエチレン性不飽和基を有する。ビニル芳香族モノマーの例には、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、およびアクリル酸ベンジルが挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーには、ビニルピリジン、スチレン(Sty)および4−メチルスチレン(ビニルトルエン)が挙げられる。用語「スチレン−アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマー、スチレンおよびビニルトルエンを少なくとも50%含むコポリマー並びにアクリル系モノマーのポリマーをいう。好ましくは、スチレン−アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラートまたはスチレンに由来する少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%のモノマー残基を有する。好ましくは、残りのモノマー単位はビニルモノマーに由来する。
【0008】
本発明の目的のために、アルキル基は直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、アルアルキルもしくはアルキル炭素環式基、例えば、アルキルフェニル基である。本発明のある実施形態においては、アルキル基は合成物由来のものであり、ある範囲の鎖長を含むことができる。本発明のある実施形態においては、アルキル基は直鎖または分岐鎖非環式アルキル基である。
【0009】
水性コーティング組成物はカルシウム、マグネシウムまたはこれらの組み合わせのイオンを含む。本発明のある実施形態においては、この組成物は遷移金属イオンを実質的に含まず、例えば、それは0.5%未満、あるいは0.2%未満、あるいは0.1%未満、あるいは0.05%未満しか含まない。本発明のある実施形態においては、この組成物は、ポリマー中の酸の当量あたり、少なくとも0.1当量、あるいは少なくとも0.15当量、あるいは少なくとも0.2当量、あるいは少なくとも0.23当量のカルシウムおよび/またはマグネシウムを含み;ある実施形態においては、この組成物はポリマー中の酸の当量あたり、0.7当量以下、あるいは0.6当量以下、あるいは0.5当量以下、あるいは0.4当量以下、あるいは0.35当量以下のカルシウムおよび/またはマグネシウムを含む。ポリマー中の酸の当量は、カルボン酸基、ホスホナート基などを含むポリマーの合計酸含量から計算される。本発明のある実施形態においては、この組成物はカルシウムを含む。
【0010】
本発明のある実施形態においては、ポリマーはさらに、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルのモノマー残基を含む。本発明のある実施形態においては、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルはメタクリル酸アルキルおよびアクリル酸アルキル、あるいはメタクリル酸C−Cアルキル(MMAまたはEMA)およびアクリル酸C−Cアルキル(例えば、BAまたはEHA)、あるいはMMAおよびアクリル酸C−Cアルキル、あるいはMMAおよびBAを含む。本発明のある実施形態においては、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルモノマー残基の合計量は34%〜70%である。ある実施形態においては、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルモノマー残基の合計量は少なくとも36%、あるいは少なくとも38%、あるいは少なくとも40%、あるいは少なくとも42%、あるいは少なくとも44%、あるいは少なくとも46%、あるいは少なくとも48%である。ある実施形態においては、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルモノマー残基の合計量は、68%以下、あるいは66%以下、あるいは64%以下、あるいは62%以下、あるいは60%以下である。本発明のある実施形態においては、ポリマーは少なくとも55℃、あるいは少なくとも60℃、あるいは少なくとも65℃、あるいは少なくとも70℃、あるいは少なくとも75℃、あるいは少なくとも80℃のTgを有し;ある実施形態においては、このTgは105℃以下、あるいは100℃以下、あるいは95℃以下、あるいは90℃以下、あるいは85℃以下である。当業者は所望のTg値に到達するためにモノマーを選択することができる。Tgが上記範囲にある限りは、個々のモノマーの種類および量は重要ではない。
【0011】
本発明のある実施形態においては、ポリマーは、少なくとも0.4、あるいは少なくとも0.5のカルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数を有する少なくとも1種のモノマーを含む。本発明のある実施形態においては、カルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数は3.5以下、あるいは3以下、あるいは2.5以下、あるいは2以下、あるいは1.5以下である。本発明のある実施形態においては、モノマーは、上記限度内にある、カルシウムに対する対数安定度定数を有する。本発明のある実施形態においては、ポリマーは先に示した限度内のカルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数を有する少なくとも1種のモノマー(錯形成性モノマー)の重合残基を少なくとも0.7%、あるいは少なくとも0.9%、あるいは少なくとも1.1%、あるいは少なくとも1.3%、あるいは少なくとも1.5%、あるいは少なくとも1.6%、あるいは少なくとも1.7%含み;ある実施形態においては、ポリマーは、少なくとも1種の錯形成性モノマーの重合残基を6.5%以下、あるいは6%以下、あるいは5.5%以下、あるいは5%以下、あるいは4.5%以下、あるいは4%以下、あるいは3.5%以下、あるいは3%以下、あるいは2.5%以下含む。本発明のある実施形態においては、錯形成性モノマーはアクリル酸、イタコン酸またはこれらの組み合わせである。
【0012】
本発明のある実施形態においては、ポリマーはメタクリル酸の重合残基を少なくとも6%、あるいは少なくとも7%、あるいは少なくとも8%、あるいは少なくとも9%含み;ある実施形態においては、ポリマーはメタクリル酸の重合残基を14%以下、あるいは13%以下、あるいは12%以下含む。
【0013】
本発明のある実施形態においては、ポリマーは少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを25〜50重量%含む。ある実施形態においては、ポリマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーの重合残基を少なくとも28%、あるいは少なくとも30%、あるいは少なくとも32%含み;ある実施形態においては、ポリマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーの重合残基を45%以下、あるいは42%以下、あるいは40%以下、あるいは38%以下含む。本発明のある実施形態においては、ポリマーはスチレンの残基を含む。
【0014】
架橋剤は2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーであり、例えば、ジビニル芳香族化合物、ジ−、トリ−およびテトラ−(メタ)アクリラートエステル、ジ−、トリ−およびテトラ−アリルエーテルもしくはエステル化合物、並びに(メタ)アクリル酸アリルが挙げられうる。このようなモノマーの好ましい例には、ジビニルベンゼン(DVB)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、ビスフェノールAジアリルエーテル、アリルスクロール、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアクリラート、メタクリル酸アリル(ALMA)エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA)、ヘキサン−1,6−ジオールジアクリラート(HDDA)およびブチレングリコールジメタクリラート(BGDMA)が挙げられる。特に好ましい架橋剤には、DVB、ALMA、EGDMA、HDDAおよびBGDMAが挙げられる。本発明のある実施形態においては、ポリマー中の架橋剤重合残基の量は、少なくとも0.3%、あるいは少なくとも0.4%、あるいは少なくとも0.5%、あるいは少なくとも0.6%、あるいは少なくとも0.7%、あるいは少なくとも0.8%、あるいは少なくとも0.9%、あるいは少なくとも1%、あるいは少なくとも1.1%である。本発明のある実施形態においては、ポリマー中の架橋剤残基の量は2.7%以下、あるいは2.4%以下、あるいは2.1%以下、あるいは1.8%以下、あるいは1.5%以下である。本発明のある実施形態においては、架橋剤残基の量は0.7%〜3%、あるいは0.9%〜2.8%、あるいは1.2%〜2.7%であり;これらの実施形態においては、架橋剤の分子量は180〜330、あるいは200〜300である。本発明のある実施形態においては、架橋剤はジエチレン性不飽和、例えば、DVB、ALMAまたはジオールのジ(メタ)アクリラートエステルである。ある実施形態においては、ポリマーは、分子量が100〜250、あるいは110〜230、あるいは110〜200、あるいは115〜160のジエチレン性不飽和架橋剤を含む。本発明のある実施形態においては、架橋剤はトリエチレン性不飽和である。本発明のある実施形態においては、トリエチレン性不飽和架橋剤とジエチレン性不飽和架橋剤との双方が存在する。本発明のある実施形態においては、架橋剤の重量%は因子:(重量%×官能価/2)/(MW/130)が0.2に等しくなる値から、この因子が1.7に等しくなる値までを変動し、ここでの官能価はこの架橋剤におけるエチレン性不飽和単位の数であり、MWはその分子量である。この因子は、(同じ官能価につき)より高いMWを有する架橋剤がより多い量で使用され、(同じMWにつき)2を超える官能価を有する架橋剤がより少ない量で使用されるという事実の説明となる。ある実施形態においては、この因子は少なくとも0.3、あるいは少なくとも0.4、あるいは少なくとも0.5、あるいは少なくとも0.6、あるいは少なくとも0.7、あるいは少なくとも0.8、あるいは少なくとも0.9、あるいは少なくとも1である。ある実施形態においては、この因子は1.6以下、あるいは1.5以下である。
【0015】
本発明のある実施形態においては、水性コーティング組成物は10%〜25%、あるいは11%〜20%、あるいは12%〜18%、あるいは13%〜16%のポリマーを含む。パーセンテージは、コーティング組成物の全重量中のポリマー固形分の量に基づいて計算される。ある実施形態においては、本発明に従った1種より多いポリマーが存在することができ、ポリマーの合計量は上記特定された量の範囲内である。
【0016】
本発明のある実施形態においては、本発明において使用されるポリマーは周知の乳化重合プロセス、および当該技術分野において知られている何らかの他の好適なプロセスを用いて、例えば、過酸素(peroxygen)化合物もしくはジアゾ化合物のようなフリーラジカル開始剤、および場合によっては連鎖移動剤を用いて、モノマーを共重合することにより製造される。一次ポリマー鎖の長さは典型的には、架橋剤が除かれていた場合には、分子量(M)が約50,000〜10,000,000、あるいは100,000〜5,000,000、あるいは200,000〜2,000,000の範囲であるような長さである。
【0017】
好ましくは本発明のポリマーは芳香族−アクリル系ポリマーであり、より好ましくは、スチレン−アクリル系ポリマーである。好ましくは、水性コーティング組成物は水を少なくとも45%、あるいは少なくとも50%、あるいは少なくとも5%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも65%有する。好ましくは、水性組成物は、有機溶媒を10%以下、あるいは8%以下、あるいは6%以下含む。ある実施形態においては、組成物は有機溶媒を少なくとも2%、あるいは少なくとも4%、あるいは少なくとも4.5%含む。
【0018】
本発明の組成物は、場合によっては、他の成分、例えば、ワックス、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤、湿潤剤、消泡剤、可溶性もしくは分散された殺生物剤、ポリウレタン分散物、シリケートなどを含むことができる。本発明のアルカリ可溶性樹脂は、0%〜10%、より好ましくは2%〜7%の範囲である。ワックスは、5%〜20%、より好ましくは7%〜15%の範囲で使用される。
【0019】
本発明の方法において、水性組成物は表面、例えば、床、壁、カウンタートップ、屋根などに適用される。組成物が適用されうる物質には、石、コンクリート、アスファルト、屋根葺き物質、リノリウム、タイル、木材、パーティクルもしくはファイバーボード、ガラス、皮革、紙および厚紙が挙げられる。本発明のある実施形態においては、組成物は床に適用される。好ましくは、組成物は外部加熱、換気もしくは湿度制御を行うことなく(これらは必要な場合には使用されうるが)周囲条件下で硬化される。
【0020】
フロアポリッシュコーティングの性能評価
ポリッシュビヒクルにおける使用が意図されるエマルションポリマーの性能を適切に評価するために、ポリマーがポリッシュとして配合されることが必要である。本発明のエマルションポリマーの配合は一般的でかつ当業者に充分に理解されている方法で行われる。使用される材料およびその特性並びに添加の方法は、従来技術のエマルションポリマーで一般的に行われているのと同じである。配合されたフロアポリッシュに使用される材料は、エマルションポリマー、ワックスエマルション、アルカリ可溶性樹脂(ASR)、膜形成助剤、レベリング剤、および湿潤剤からなる。ポリッシュ配合物に使用される造膜溶媒、可塑化溶媒およびレベリング剤の量は、エマルションポリマー(ポリマーの全組成)と選択される溶媒および添加剤との適合性、並びにエマルションポリマーの最低造膜温度によって影響される。本明細書において列挙されている例のエマルションポリマーについては、造膜助剤、可塑剤および添加剤の量は配合物において詳細に示される通りであったが、それぞれのポリマー例が光沢ある明らかなコヒーレント膜を形成するのを確実にするのに適切であるようにわずかな調節がなされた。
【0021】
試験方法:
本発明における除去可能なフロアポリッシュ(またはフロアコーティング)のようなエマルションポリマービヒクルの性能を評価するために様々な試験が使用された。表面コーティングは光沢、レベリング、タックフリー(tack−free)時間、光沢保持、土壌耐性、ブラックヒールマーク(black heel mark)およびスカッフ耐性について評価された。本発明の表面コーティングの評価に使用される試験方法は当業者に十分に理解されている標準試験である。さらなる試験が加速摩耗試験器(AWT)においても行われた。AWTは米国特許出願公開第2008/0000285号に開示されている。AWTは、典型的なフロアコーティングが曝露される摩耗およびメンテナンスを、加速されたやり方で模倣する。試験方法は、典型的なフロアポリッシュがフィールドにおいて曝露される摩耗およびメンテナンス条件と相関するAWTにおいて拡張された。AWTは光沢および色を測定し記録する装置を有する。本発明の主題であるエマルションポリマービヒクルの性能を評価するために以下の試験方法が使用された。
【0022】
水性フロアコーティング組成物のベンチ特性を評価するためのコーティング適用:
試験目的でフロアポリッシュコーティングを基体に適用する方法は「Annual Book of ASTM Standards(ASTM標準の年報)」セクション15、第15.04巻、試験手順ASTM D1436(200)試験方法Bに記載されている。フロアポリッシュは、表(6、13、17、20、23、26、32、35、38、41、46)中の配合に基づいて、以下で報告される試験によって特定されるようなポリッシュの2〜5つのコーティングとして、コンポジションビニルタイルまたはビニルタイルに適用された。フロアコーティングは、コーティングどうしが約30〜60分の乾燥時間で、または各試験において特定されるように適用され、コーティングされたパネルは周囲条件で24時間、または試験によって特定されるように硬化させられた。
【0023】
レイダウン(lay down)光沢試験方法:
この試験は黒色コンポジションビニルタイル(BVCT)上で行われる。光沢を決定するために使用された方法は「Annual Book of ASTM Standards」セクション15、第15.04巻、試験手順ASTM D1455に記載されている。20度光沢および60度光沢を記録するために、ガードナービクマイクロトリグロスメーター(Gardner Byk Micro−triGloss meter)が使用された。この測定された光沢は場合によっては、定量的光沢と称される。この光沢評価は4〜5つのコーティング仕上げ物について行われ、対照の仕上げ物と比較される。それぞれの適用されたコーティングが乾燥した後であって、かつフロアポリッシュの次のコーティングの適用前に、光沢が測定される。光沢は次の日(最後のコーティングが適用されてから16〜24時間後)においても測定される。光沢値は表形式で報告される。このコーティングされたタイルは、目視によっても評価され;これは場合によっては定性的光沢と称される。光沢は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪;2=良;3=優;4=かなり優;5=秀。
【0024】
レベリング試験方法:
この試験は黒色ビニルタイル(BVT)および/または(BVCT)上で行われる。フロアポリッシュをタイル上に広げた直後に、試験領域の隅から隅へ対角線上にガーゼパッドアプリケータを引きずることにより「X」が湿潤ポリッシュ表面に描かれる。試験領域が床試験である場合には、これはモップを用いて行われることもできる。膜が乾燥させられた後で、コーティングは目視で検討され、「X」の消失の程度を決定する。レベリングは次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、「X」の隆起輪郭および明らかなデウェッティング(dewetting)が存在する;2=良、「X」の簡素な輪郭および隆起が検出可能;3=優、「X」の簡素な輪郭が検出可能であるが、隆起はない;4=かなり優、「X」のかすかな輪郭が検出可能であるが、隆起はない;5=秀、検出可能な「X」がない。
【0025】
タックフリー時間試験方法:
ザポン(Zapon)タック試験器を使用して表面コーティングタックフリー時間が決定される。タック試験器は、1/16インチ(1.6mm)厚のアルミニウムシート金属の1インチ幅の湾曲片から造られた。それは、表面上に1インチ(2.54cm)の区域が平坦で残る様なサイズである。それは、アルミニウムストリップの中央に5グラムのおもりが配置される場合に、それが直立するような重さである。5グラム未満のおもりがアルミニウムストリップの中央に配置される場合には、それは倒れる。試験器の上に500グラムのおもりが配置されているタック試験器が膜の表面上に配置される。このおもりは試験器の上に5秒間保持されて、次いで除かれる。試験器が5秒以内に倒れる場合には、コーティングはタックフリーであると見なされる。コーティングが適用された時点からタックフリー時間までに経過した時間が、次のように1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、45分を超えるザポンタックフリー時間;2=良、39〜45分のザポンタックフリー時間;3=優、32〜39分のザポンタックフリー時間;4=かなり優、25〜32分のザポンタックフリー時間;5=秀、18〜25分のザポンタックフリー時間。
【0026】
1時間耐水性試験:
この試験は、少なくとも3つのコーティングの試験仕上げ物でコーティングされたBVCT上で行われる。このコーティングはこの試験を行う前に16〜24時間乾燥させられる。チャイナマーカーを用いて乾燥コーティングに円(直径ほぼ1インチ(2.54cm))が描かれる。3〜5つのコーティングの仕上げ物のいずれかに接触している円を、清浄な水のスポットが満たす。この水のスポットは周囲温度で60分間そのままにさせられる。この60分の終わりに、乾燥したティッシュペーパーによるこの領域での吸い取りにより、水のスポットは除去される。膜に対する何らかの変色または損傷についてその円を評価する。
1時間耐水性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、膜の25パーセント超が除去された;2=良、膜の16〜25パーセントが除去された;3=優、膜の6〜15パーセントが除去された;4=かなり優、わずかな光沢の低減および/または膜の5パーセント未満;5=秀、水によるしるしまたは損傷なし。
【0027】
翌日耐水性試験方法:
この試験は1時間耐水性試験に類似する。唯一の違いは、水のスポットがBVCTに適用される前に、フロアコーティングが16〜24時間乾燥させられることである。翌日耐水性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、膜の16パーセント超が除去された;2=良、膜の11〜15パーセントが除去された;3=優、膜の6〜10パーセントが除去された;4=かなり優、わずかな光沢の低減および/または膜の5パーセント未満;5=秀、水によるしるしまたは損傷なし。
【0028】
アルカリ性洗浄剤耐性試験方法:
BVCTは少なくとも3つのコーティングの試験仕上げ物でコーティングされた。このコーティングは、この試験を行う前に、16〜24時間乾燥させられる。チャイナマーカーを用いて乾燥コーティングに円(直径ほぼ1インチ(2.54cm))が描かれる。3〜5つのコーティングの仕上げ物のいずれかに接触している円を、希釈されたアルカリ性床クリーナー(ジョンソンダイバーシー(Johnson Diversey)からのGP FORWARD)のスポットが満たす。この洗浄剤のスポットは周囲温度で30分間そのままにさせられる。この30分の終わりに、乾燥したティッシュペーパーによるこの領域での吸い取りにより、スポットは除去される。膜に対する何らかの変色または損傷についてその円を評価する。
アルカリ性洗浄剤耐性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、膜の50パーセント超が除去された;2=良、膜の25〜50パーセントが除去された;3=優、膜の10〜25パーセントが除去された;4=かなり優、わずかな光沢の低減および/または膜の10パーセント未満;5=秀、水によるしるしまたは損傷なし。
【0029】
1時間中性洗浄剤耐性試験方法:
BVCTは少なくとも3つのコーティングの試験仕上げ物でコーティングされた。仕上げ物の最後のコーティングが適用された後で1時間、このコーティングが乾燥させられたときに、この試験が行われる。チャイナマーカーを用いて乾燥コーティングに円(直径ほぼ1インチ(2.54cm))が描かれる。2〜5つのコーティングの仕上げ物のいずれかに接触している円を、希釈された中性床クリーナー(ジョンソンダイバーシーからの STRIDE)のスポットが満たす。この洗浄剤のスポットは周囲温度で30分間そのままにさせられる。この時間の終わりに、乾燥したティッシュペーパーによるこの領域での吸い取りにより、スポットは除去される。膜に対する何らかの変色または損傷についてその円を評価する。
中性洗浄剤耐性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、膜の50パーセント超が除去された;2=良、膜の25〜50パーセントが除去された;3=優、膜の10〜25パーセントが除去された;4=かなり優、わずかな光沢の低減および/または膜の10パーセント未満;5=秀、水によるしるしまたは損傷なし。
【0030】
翌日中性洗浄剤耐性試験方法
この試験は、少なくとも3つのコーティングの試験仕上げ物でコーティングされたBVCT上で行われる。この試験を行う前に、このコーティングは16〜24時間乾燥させられる。チャイナマーカーを用いて乾燥コーティングに円(直径ほぼ1インチ)が描かれる。3〜5つのコーティングの仕上げ物のいずれかに接触している円を、希釈された中性床クリーナー(ジョンソンダイバーシーからの STRIDE)のスポットが満たす。この洗浄剤のスポットは周囲温度で30分間そのままにさせられる。この30分間の終わりに、乾燥したティッシュペーパーによるこの領域での吸い取りにより、スポットは除去される。膜に対する何らかの変色または損傷についてその円を評価する。
中性洗浄剤耐性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、膜の50パーセント超が除去された;2=良、膜の25〜50パーセントが除去された;3=優、膜の10〜25パーセントが除去された;4=かなり優、わずかな光沢の低減および/または膜の10パーセント未満;5=秀、水によるしるしまたは損傷なし。
【0031】
ブラックヒールマークおよびスカッフ耐性試験方法:
2つのコーティングの仕上げ物が、CTR(75°F(77℃)、湿度50%)中の12”(30.5cm)×12”タイルに適用される。試験を行う前に、タイルはCTR中で24時間老化させられる。各方向(前後)に10分間、50rpmで動かされる6つの黒色ゴムヒールを収容するスネルカプセル(Snell Capsule)においてマークが発生させられる。タイルは取りはずされ、対照タイル上の対照仕上げ物と比較される。目視でタイルを評価する。
ブラックヒールマークおよびスカッフ耐性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、多くのマークの散在;2=良、中程度から多くのマークの散在;3=優、中程度のマークの散在;4=かなり優、わずかから中程度のマークの散在;5=秀、わずかなマークの散在。
【0032】
マー(mar)耐性試験方法:
この試験は、コーティングに浅い角度で固い物質を打ち付けることをベースにする;提供される実施例においては、この物質は試験の実施者の指の爪であった。この試験は、コーティングが傷つけにどの程度耐えるかの指標を与え、この傷つけはコーティングの光沢の低減を導く。コーティングが基体に適用され、硬化された後で、コーティングされた基体はテーブルトップのような固い表面上に置かれ、操作者の指の爪が打ちつけられる。操作者の指の爪は、コーティングされた表面に対して平行に保持され、衝突角は表面の法線から45°より大きく、コーティングをマーキングする可能性を増大させる。コーティングを比較する場合に、同じ操作者が試験を行うことが重要である。この試験は相対的な差を区別するために設計された。マー耐性は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、目に見える非常に深いひっかき傷が存在する;3=優、目に見えるひっかき傷が存在する;5=秀、しるしはほとんど知覚できない。
【0033】
加速摩耗試験器(AWT)を使用する光沢保持試験方法:
試験目的のために基体にフロアポリッシュコーティングを適用する方法は「Annual Book of ASTM Standards(ASTM標準の年報)」セクション15、第15.04巻、試験手順ASTM D1436(200)試験方法Bに記載されている。4つのコーティングの仕上げ物が基体に適用され、コーティング間の乾燥時間は約30〜60分であった。このコーティングは75°F±5°Fおよび相対湿度50%±5%に維持される恒温室中で適用された。光沢保持試験に好適な基体はBVCTであった。評価の鍵となる特性は光沢保持であった。第4番目のコーティングが適用された後で、AWTにおける何らかの試験の前に、このコーティングは約16〜24時間準備を整えられた。AWTルーチン測定の制御プログラムを通じて、コーティングされた基体の光沢を測定し記録する「ロボット」アームに前述の光沢計が取り付けられた。
【0034】
米国特許出願公開第2008/0000285号に開示されるようなAWTセッティングが使用されて、試験されるコーティング上に摩耗を与えた。表1に報告される以下の工程のシークエンスが各サイクル順に行われた。工程12の完了後に、このサイクルは完了した。次いで、このサイクルが繰り返され、一連の摩耗およびメンテナンス工程を構築した。当初光沢データは、何らかの処理またはメンテナンスの前の光沢測定値に対応する。光沢は典型的には5サイクルごとの測定であった。これは我々が、サイクル数(サイクル数は時間に相関する)に対する性能をプロットするのを可能にする。表1に示される以下の複数工程摩耗プロファイルが行われた。この実験は50〜150サイクル行われた。少なくとも、最終サイクルが完了した後で、最終光沢測定が存在する。
【0035】
【表1】

【0036】
光沢測定:
測定され記録された光沢値は6〜8つの光沢測定値(20°光沢および60°光沢)の平均である。AWTは光沢値を測定しおよび記録する。摩耗工程が行われる前に、当初光沢測定値(サイクル0)がAWTによって記録された。それは翌日光沢値と良く相関するべきである。この光沢保持は、当初光沢値と比較される、試験の終わりでの測定された定量的光沢値および目視定性的光沢を評価することにより決定される。これらの結果は、次いで、同じ高メンテナンス摩耗プロファイルの下で試験される対照の仕上げ物と比較される。
光沢保持は次の1〜5のスケールで評定された:
1=劣悪、完全な膜除去、最終光沢は実質的に当初光沢未満;2=良、中程度の膜除去、最終光沢は当初光沢より低い;3=優、部分的な膜除去、最終光沢は当初光沢に類似する;4=かなり優、無視できる膜除去、最終光沢は当初光沢より良好;5=秀、留まっている膜、最終光沢は当初光沢よりも実質的に良好。
【0037】
AWT試験方法を使用する土壌耐性:
この試験は、白色コンポジションビニルタイル(WVCT)を使用して行われ、コーティング適用手順は上述されている。フロアコーティングの4つのコーティングがCTR(75°F±5°Fおよび湿度50%±5%)内で適用され、コーティングはAWTを行う前に16〜24時間準備を整えられた。評価の鍵となる特性は色の変化であった。このAWT摩耗プロファイルにおいては、表2に示される一連の工程が順に行われる。このサイクルは工程11の完了後に完了した。このサイクルは次いで繰り返され、一連の摩耗およびメンテナンス工程を構築する。色はサイクルごとに測定される。これは、時間に相関するサイクル数に対する性能を我々がプロットするのを可能にする。以下の表2に示される複数工程摩耗プロファイルが行われた。実験は10〜40サイクル行われた。
【0038】
【表2】

【0039】
色測定:
AWT色の結果はL色空間で報告される。色は、「ロボット」アームに取り付けられたX−rite IncからのVeriColor Spectro VS410非接触分光光度計を用いて測定された。非接触分光光度計および「ロボット」アームはAWT制御プログラムで制御される。それぞれのフロア仕上げ物の色は、コーティングされたWVCタイル上の12〜16の異なる位置で、AWTによって測定され記録される。色の変化を決定するために、これらL値の平均が使用される。デルタE色変化の結果は式1によって決定され、その式においては、最終測定色が当初測定色と比較される。サイクル0での測定色が当初色データであると定義される。この色は翌日の色と一致する。最終サイクル後の最終色測定値は、最終色測定値として定義される。
【数1】

【0040】
食料品店での床試験におけるフロアポリッシュ性能:
床試験領域は、残っているポリッシュが剥ぎ取られ、次いで、以下の典型的な清掃業務手順で再ポリッシュされた:床はダストモップがけされて遊離のほこりを除去し、4リットルの水溶液あたり1リットルの市販の剥離剤溶液(ジョンソンダイバーシーIncからの FREEDOM)が、1ガロンあたり約1,000平方フィートの割合で、ストリングモップによって適用され、5分間の浸透期間後、その床はプロパン剥離機(AZTEC IncからのSIDEWINDER)を用いて磨かれ、その床は清浄な水を含んだモップがけによって完全にすすがれ、次いで、その床はブルークリーニングパッド(3MカンパニーからのBlue Cleaner Pad5300)を使用するオートスクラバー(Pioneer Eclipse incからのPE−1700オートスクラバー)で洗浄され、次いで、その床はもう一回清浄な水ですすがれ、乾燥させられた。この剥ぎ取り処理された床は、床の交通の流れの正常な方向に対して垂直な区画に区分された。この区画のそれぞれに、試験される配合物の4つのコーティングが、1ガロンあたり約2,000平方フィートの割合で仕上げモップを用いて適用された。それぞれのコーティングは、次のコーティングが適用される前に30〜60分間乾燥させられた。コーティング(4つのコーティング)は、均一なコンポジションビニルタイルからなる床に適用され、周囲温度で硬化させられた。
【0041】
コーティングが周囲条件で硬化した後、その床は歩行者の往来に開放された。この床試験領域は歩行者の交通(1週間あたり約25,000人)並びにショッピングカート、メンテナンスカート、仕入れカート、サンプルトレイなどからの車輪の交通に曝露された。交通への充分な曝露の後で5〜10日ごとに、20および60度光沢が測定され、中性床洗浄剤溶液を用いる機械式オートスクラビングおよびつや出しメンテナンスが、次のような典型的な清掃業務方式で、試験床上で行われた:床はダストモップがけされて遊離のほこりを除去し;その床は、3M Red Cleaner Pad5200を備えたPioneer Eclipse PE−1700オートマチックスクラバーで機械磨きされた。Pioneer Eclipse PE−1700オートマチックスクラバーに装填された洗浄液は、ジョンソンダイバーシーからの、その推奨される希釈率でのStride中性床洗浄剤であった。使用された2,000rpmのプロパンつや出し機は、ノースカロライナ州、スパルタのPioneer EclipseからのSpeedStar Pioneer ST21K WAであった。このSpeedStarプロパンつや出し機は21インチの3M 3200 TopLine Speed Burnish Padを備えていた。この試験床は、オートスクラバーおよびつや出し機の2回の通過に、1週間あたり3〜5回、15週間の期間にわたってかけられた。
【実施例】
【0042】
実施例1:ラテックスポリマーの製造
温度計、凝縮器および攪拌機を備えた好適な反応容器中で、25.90グラムの23%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(POLYSTEP A−16−22、Stepan Company)、13.74グラムのイタコン酸および700.1グラムの脱イオン水の溶液が85℃に加熱された。表3に記載されたモノマーエマルションの14.43グラムの部分が全て一度に反応容器に添加され、温度が80〜85℃に調節され、次いで、14.00グラムの水に溶解された3.15gの過硫酸アンモニウム(APS)触媒溶液のケトルチャージを添加した。2分以内に、3℃〜5℃の温度上昇および反応混合物の外観(色および不透明性)の変化によって、重合の開始が示された。発熱がおさまったときに、残りのモノマー混合物およびコフィード触媒溶液(100.00グラムの脱イオン水中0.61gAPS)が、約85℃の温度で、90分間にわたって、徐々に反応容器に添加された。(90〜120分の添加時間が好ましい)供給が完了してから15分後に、このケトルは60℃に冷却され、5gの水中の1.48gの0.15%硫酸鉄(II)、8.6gの水に溶解された0.61gの70%t−ブチルヒドロペルオキシド、および8.6gの水に溶解された0.30gのイソアスコルビン酸を添加することによりチェイスさせられた。15分後の第2のチェイスは、8.60gの水に溶解された0.61gの70%t−ブチルヒドロペルオキシドおよび8.6gの水に溶解された0.30gのイソアスコルビン酸からなっていた。25分後に、このラテックスは39℃に冷却された。このラテックスに35.6gの水に溶解された17.00gの70%ポリオキシエチレンラウリルアルコール(Thorcowet TDA−40、Thornley Company)がラテックスに添加され、10分間にわたって攪拌された。次いで、30.0gの10%水酸化アンモニウムが15分間にわたって添加され、そのラテックスのpHを6.7に調節した。5分間保持した後で、22.7gの水中の9.73gの水酸化カルシウムのスラリー、および5gのすすぎ水がケトルに添加され、1時間、39℃で攪拌され、0.270当量のカルシウムを得た。多価金属イオンの量は、ポリマーのカルボン酸官能基含量の関数である。ラテックスは次いで冷却されろ過され、0.27当量のカルシウムで修飾されたラテックスを生じさせた。このラテックスは83℃の測定Tgを有する、23.5BA/30.1MMA/34.2スチレン/9.0MAA/1.9IA/1.3DVB/0.27当量のCaのポリマーを含んでいた。次いで、水が添加され、38パーセントの固形分量とされた。
【0043】
【表3】

【0044】
例2−5
先行技術文献の米国特許第6586516号および米国特許出願公開第2007/0254108A1号は、本発明と類似のしかし同一ではないポリマー組成物を開示する。この先行技術はアクリル系ポリマー組成物中の共有およびイオン性架橋の使用を開示するが、それはカルシウムおよび/またはマグネシウムと共に許容できる性能をもたらす好適なポリマー配合物を開示していない。例1〜5は、米国特許第6586516号および米国特許出願公開第2007/0254108A1号に開示される先行技術と本発明との対比を示す。
【0045】
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表4に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載される従来の漸次添加方式で製造された。例2〜5のラテックス組成物は比較例であり、先行技術文献の米国特許第6586516号および米国特許出願公開第2007/0254108A1号に開示される手順に従って製造された。前述のようなDSCによって測定される場合の、典型的なポリマーのTgが表5に報告される。先行技術からの比較例2〜4のTgは−37℃〜75℃の範囲である。実施例1の第1および第2の加熱の平均Tgは83℃である。
【0046】
フロアコーティング組成物:
以下の全ての性能試験は配合されたコーティング組成物に対して行われた。コーティング組成物を配合するために使用された成分は表6に報告される。性能の結果は以下の表に示される。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
コーティング光沢の評価:
20および60度光沢測定値が表7に記録される。配合物1Aは、20度光沢および60度光沢の双方について最も良い翌日光沢を有していた。
タックフリー時間:
タックフリー時間はザポン試験を用いて決定され、この試験方法はすでに記載されている。表7に記録される結果はザポン試験に合格するのに必要とされる分数である。実施例1、例4および5は許容できるタックフリー時間を有していた。例2および3は48時間後であってさえ、タックフリーにはならなかった。
翌日耐水性試験:
上述の翌日耐水性試験を用いて、水に対する損傷に耐性の表面コーティングが決定された。この試験された結果は表7に報告される。
【0051】
【表7】

【0052】
AWTを使用する光沢保持:
表面コーティング光沢保持はAWTを用いて決定された。20度光沢保持の結果は表10に含まれる。表面コーティングの60度光沢保持の結果は表11に報告される。配合物1Aは、AWTでの試験の終わりにおいて非常に良好な光沢保持を有していたが、比較の対照配合物2A、4Aおよび5Aはこの試験に不合格であった。
【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
実施例1および例6
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が実施例1に記載されるような従来の漸次添加方式で、表12に示される割合のモノマーを含むモノマーエマルションから製造された。例6はDVBを含まない比較対照である。例6のコーティング組成物は光沢について試験され、実施例1のコーティング組成物と比較された。充分に配合されたフロアポリッシュにこのラテックスを配合するために使用された成分は表13に記載される。
【0056】
性能試験は充分に配合されたコーティング組成物について行われ、表13に報告され、現実世界の条件下で、床が規則的な機械メンテナンスを受ける食料品店に適用された。この床においては、毎晩(一週間に7日)乾燥モップがけされ、中性床洗浄剤およびレッドクリーニングパッドを用いたオートスクラバーを用い、次いで3200つや出しパッドでプロパンつや出しすることにより機械的に維持(一週間に4〜5回)された。光沢測定値は、表14および15に示されるポリッシュについて、15週間定期的に記録された。
【0057】
20度光沢測定値の結果が表14に報告される。フィールド試験からの60度光沢値は表15に報告される。比較の配合物1B〜配合物6Aは改良された光沢保持を示し、これは共有結合性架橋剤であるDVBがエマルションポリマー中に含まれていた場合に達成された。配合物1Bはフィールド試験中、その20度光沢を維持したが、配合物6Aは20度光沢を減らした。このフィールド試験における双方の例は15週間試験の期間にわたって、60度光沢を減らした。配合物1Bは配合物6Aよりも60度光沢を少なく低下させたことに留意されたい。
【0058】
【表10】

【0059】
【表11】

【0060】
【表12】

【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【0063】
例7および実施例8〜10
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。この一連の例および実施例においては、メタクリル酸ホスホエチルが追加の錯形成性モノマーとして使用され、試験された具体的なモノマーはエチルメタクリラートホスファート(SIPOMER PAM4000(PAM)、RHODIA Inc,ニュージャージー州)であった。
【0064】
充分に配合されたフロアポリッシュの成分は表17に示される。フロアポリッシュ7Aは比較対照であり、亜鉛架橋を含むエマルションポリマーである。配合物7A、8A、9Aおよび10Aの性能が試験され、結果が表18に報告される。充分に配合されたポリマーである配合物8A、9Aおよび10Aは、亜鉛を含む比較対照の配合物7Aと本質的に同じ性能を有する。
【0065】
【表15】

【0066】
【表16】

【0067】
実施例11〜13
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。例7は比較対照であり、亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。
【0068】
充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、そのフロアポリッシュの成分は表20に示され、結果は表21に報告される。実施例13をベースにするフロアポリッシュの性能は亜鉛含有対照例7よりも良好であった。実施例13における共有架橋の量は1.7重量パーセントであった。他の2つの試験仕上げ物である実施例11および12は、亜鉛対照仕上げ物例7と本質的に匹敵する結果を有していた。
【0069】
【表17】

【0070】
【表18】

【0071】
実施例14〜20
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。例7は比較対照であり、亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。
【0072】
充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュ例の成分は表23に示される。試験結果は表24に示される。配合物16Aは最良の翌日光沢を有していたが、他の配合物よりも長いタックフリー時間を有していた。配合物17Aは、亜鉛含有対照配合物7Aに本質的に匹敵する性能を有していた。
【0073】
【表19】

【0074】
【表20】

【0075】
例21〜23および実施例24〜28
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。例21、22および23は比較エマルションポリマーである。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、配合物の成分は表26に示される。フロアポリッシュは標準ベンチテストに加えて、AWTにおいて試験された。ベンチおよびAWT試験の結果は表27に報告される。配合物26A、27Aおよび28AはAWTによって決定される場合、本質的に匹敵する光沢保持を有していた。比較対照配合物22Bは、AWTによって測定される場合、一連の最良の光沢保持を有していた。AWT試験方法を用いる土壌耐性によって測定される土壌耐性について、配合物25B、26A、27A、28Aはは比較配合物21A、22Bおよび23Aより優れた性能を有していた。
【0076】
【表21】

【0077】
【表22】

【0078】
実施例32〜36
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。比較対照ラテックスは例29であり、それは亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュ例の成分は表32に示される。試験結果は表33に報告される。実施例32におけるエマルションポリマーは実施例31および30よりも良好な性能を有していた。一連の実験において評価される(可変の)因子はCaの量である。カルシウム含量は、全ての酸性モノマー含量を基準にして0.28当量〜0.58当量まで変化させられる。カルシウム含量の増大は、架橋密度を増大させ、スクラッチ、マーおよびスカッフ耐性を向上させ、その耐久性を向上させる。
【0079】
【表23】

【0080】
【表24】

【0081】
実施例37〜41
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。比較対照ラテックスは例29であり、それは亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュの成分は表35に示される。試験結果は表36に報告される。
【0082】
【表25】

【0083】
【表26】

【0084】
実施例42〜44
一連のスチレン−アクリル系ポリマー分散物が、表12に示される比率のモノマーを含むモノマーエマルションから、実施例1に記載されるような従来の漸次添加方法で製造された。比較対照ラテックスは例29であり、それは亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュの成分は表38に示される。試験結果は表39に報告される。
【0085】
Caの量は、全ての酸を基準にして0.58当量Caに設定された。このシリーズでの可変項目には:ポリマーのTgおよび酸性モノマー含量が挙げられる。このシリーズで評価される酸性モノマーには、MAA、IAおよびAA(アクリル酸)が挙げられる。全てのアシディティーは14重量%に維持された。MAAはIA、AAまたはIAとAAとのブレンドで置き換えられた。ポリマーのTgはポリマーのBA/MAA含量を変化させることにより調節された。
【0086】
【表27】

【0087】
【表28】

【0088】
実施例45
実施例45についてのモノマーの種類および量が表12に報告される。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュの成分は表41に示される。試験結果は表42に報告される。実施例45の組成物はマグネシウム(全ての酸性モノマーを基準にして0.28当量)を含む。
【0089】
【表29】

【0090】
【表30】

【0091】
実施例46
実施例46についてのラテックスの製造手順は、モノマーの種類および量が表12に報告されるのを除いて実施例1に記載された。比較対照ラテックスは例29であり、それは亜鉛架橋されたエマルションポリマーである。充分に配合されたフロアポリッシュについて性能試験が行われ、フロアポリッシュ例の成分は表43に示される。試験結果は表44に報告される。実施例46の組成物はCa(全ての酸性モノマーを基準にして0.28当量)およびBGDMAで架橋されている。
【0092】
【表31】

【0093】
【表32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを含む水性コーティング組成物であって;
前記ポリマーが(a)カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの少なくとも1種;並びに(b)(i)カルシウムまたはマグネシウムに対する対数安定度定数0.3〜4を有する少なくとも1種のモノマー0.5〜7重量%;(ii)メタクリル酸5〜15重量%;および(iii)少なくとも1種の架橋剤0.2〜3重量%の重合残基を含み;
前記ポリマーが50〜110℃のTgを有する;
水性コーティング組成物。
【請求項2】
カルシウムイオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが(i)アクリル酸、イタコン酸およびメタクリル酸ホスホエチルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー1〜6重量%;(ii)メタクリル酸6〜13重量%;(iii)少なくとも1種の架橋剤0.5〜2.7重量%;および(iv)少なくとも1種のビニル芳香族モノマー25〜45重量%の重合残基を含み;
前記ポリマーが60〜100℃のTgを有する;
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーがジエチレン性不飽和架橋剤の重合残基を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
錯形成性モノマーがアクリル酸およびイタコン酸からなる群から選択され、前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが(メタ)アクリル酸C−Cアルキルの重合残基38〜64重量%をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ジエチレン性不飽和架橋剤が100〜250の分子量を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーがジエチレン性不飽和架橋剤の重合残基を0.8〜1.8重量%含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが酸モノマーの当量あたり0.2〜0.6当量のカルシウムを含み;かつ
前記ポリマーが、(i)アクリル酸およびイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー1.3〜4重量%;(ii)メタクリル酸7〜12重量%;(iii)ジエチレン性不飽和架橋剤0.8〜2.4重量%;(iv)スチレン30〜40重量%;および(v)(メタ)アクリル酸C−Cアルキル44〜62重量%の重合残基を含む;
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(メタ)アクリル酸C−Cアルキルがメタクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルを含む、請求項9に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−105930(P2011−105930A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−230626(P2010−230626)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】