説明

水性ポリイソシアネート組成物及びそれを含む水性塗料組成物

【課題】本発明は、水分散性に優れ、かつ優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現する水性ポリイソシアネート組成物、及びこれを硬化剤とした水性塗料組成物を提出することを目的とする。
【解決手段】下記条件1)〜3)をすべて満たすことを特徴とする、水に溶解または分散しうる水性ポリイソシアネート組成物。1)下記構造式で示され、イソシアネート基平均数nが2.5〜20、A−R−(NCO)n、A:親水基、R:脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシネート、ポリオールのそれぞれから少なくとも1種以上選ばれた化合物群から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基。2)イソシアネート基濃度:2〜21質量%。3)25℃における粘度が5〜1500Pa・s

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリイソシアネート組成物、及びこれを硬化剤とした水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを硬化剤とする2液ウレタン系塗料組成物はその塗膜の耐薬品性、かとう性などが優れている。特に、脂肪族、脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネートを使用した場合、更に耐候性に優れるため、その使用は常温硬化、熱硬化性のぞれぞれの形態で、自動車、建築、家電等の塗料として広く用いられている。
一方、近年、地球環境、安全、衛生などの観点から水性塗料が注目されている。建築外装から産業製品、例えば食缶用、コイルコーティング用等の工業塗料に使用されるようになってきた。ポリイソシアネートを硬化剤とした提案も多く、例えば、特許文献1,2には疎水性ポリイソシアネートを主剤である水系ポリオールの水性化能を利用して、水分散し、水性塗料を形成している。また、特許文献3、4ではポリイソシアネートの水分散性を向上させるために、カルボキシル基(特許文献3)あるいは、ノニオン系親水性基であるポリエチレングリコール(特許文献4)をポリイオシアネートに組み込むことを提案している。これらに使用されている原料ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は、溶剤系2液ウレタンと同様に約3であった。
【0003】
ポリイソシアネートを硬化剤とした水性塗料は媒体中の水とイソシアネート基の反応が避けられない。従って、特許文献4の実施例ではポリイソシアネートのイソシアネート基と主剤ポリオールの水酸基との当量比を1.5:1とし、イソシアネート基を過剰にして、媒体である水との反応による消費を見込んで配合している。しかし、イソシアネート基を過剰に配合し、架橋に関与するイソシアネート基量を確保しても、イソシアネート基平均数の低下による物性低下を防げない場合があった。
更に、イソシアネート基平均数は、ポリイソシアネートの水分散性を向上させるために組み込まれたカルボキシル基やノニオン基等により消費される。このようなイソシアネート基平均数の低いポリイソシアネートから得られる塗膜物性は、従来の溶剤系2液ウレタン塗料から得られる塗膜物性に比べ劣っていた。
【0004】
上記課題を解決するために、原料ポリイソシアネートとしてイソシアネート基平均数が高いものを使用した例が示されている。(特許文献5、6)しかし、これらを硬化剤として使用した場合、塗膜硬度が不足する場合があった。
塗膜硬度を高めるため、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとイソホロンジイソシアネートのポリイソシアネートの一部を親水化したものの混合物が提案されているが、イソホロンジイソシアネートのポリイソシアネートの反応性が低いため、架橋性が充分でない場合があった。(特許文献7)そのため、優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現する水性ポリイソシアネートが切望されていた。
【特許文献1】特開昭62−41270号公報
【特許文献2】特開平2−105879号公報
【特許文献3】特開平4−211418号公報
【特許文献4】特開平5−222150号公報
【特許文献5】特開平10−060073号公報
【特許文献6】特開平11−100426号公報
【特許文献7】特表2005−535775号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水分散性に優れ、かつ優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現する水性ポリイソシアネート組成物、及びこれを硬化剤とした水性塗料組成物を提出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、驚くべきことに、親水性基を有する水性2液ウレタン用硬化剤のポリイソシアネートとしてイソシアネート基平均数が高く、かつ特定の骨格を有するポリイソシアネートを使用することにより、水分散性に優れ、かつ優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現するという知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
1、下記条件をすべて満たすことを特徴とする、水に溶解または分散しうる水性ポリイソシアネート組成物。
1)下記構造式で示され、イソシアネート基平均数nが2.5〜20
A−R−(NCO)
A:親水基
R:脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシネート、ポリオールのそれぞれから少なくとも1種以上選ばれた化合物群から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基
2)イソシアネート基濃度:2〜21質量%
3)25℃における粘度が5〜1500Pa・s
2、イソシアネート基平均数nが3.0〜20であることを特徴とする前記の1記載の水性ポリイソシアネート組成物。
3、25℃における粘度が15〜1500Pa・sであることを特徴とする前記の1または2いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
4、Rが脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシネート、ポリオールのそれぞれから少なくとも1種以上選ばれた化合物群から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールがアロファネート結合および/またはウレタン結合を介して結合されており、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=95/5〜50/50(質量比)であることを特徴とする前記の1、2または3いずれか1項記載のポリイソシアネート組成物。
5、Rが、水酸基平均数2〜8のポリオールから誘導されることを特徴とする前記の1、2、3または4いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
6、Rが、イソシアヌレート基を有することを特徴とする前記の1、2、3、4または5いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
7、前記の1、2、3、4、5または6いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物。
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は水分散性に優れ、かつ優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現する塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の水性とは、親水基を分子内に有することを意味し、ポリイソシアネート組成物とは、分子量が異なる複数のポリイソシアネートの混合物を意味する。従って、ヘキサメチレンジイソシアネート単体は本発明におけるポリイソシアネート組成物に該当しない。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数nは2.5〜20であり、好ましくは3.0〜20、より好ましくは3.5〜10である。前記値が2.5未満の場合は、これを用いて得られる水性ポリイソシアネート組成物の硬化性が低下する場合があり、20を超えると、得られる塗膜の伸びが低下する場合がある。
イソシソシアネート基平均数は以下の式(1)により求められる。
「数1」
(数平均分子量)×(イソシアネート基質量%)
───────────────────── =イソシアネート基平均数・・・(1)
イソシアネートの式量(42)×100
【0009】
本発明水性ポリイソシアネート組成物に用いる脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、炭素数4から30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと言う)2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどがあり、なかでも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。
本発明水性ポリイソシアネート組成物に用いる脂環族ジイソシアネートモノマーとしては炭素数8から30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと言う)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどがある。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さからIPDIが好ましい。
【0010】
本発明水性ポリイソシアネート組成物に用いるポリオールとしては、分子量500未満の低分子ポリオールと分子量500以上の高分子ポリオールがある。低分子ポリオールとしてはジオール類、トリオール類、テトラオール類などがある。ジオール類としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチルー1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルー2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルー2,3−ブタンジオール、2−エチルーヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチルー1,3−プロパンジオールなどがあり、トリオール類としては、例えばグルセリン、トリメチロールプロパンなどがあり、テトラオール類としては、例えばペンタエリトリトールなどがある。この中でトリオール類が好ましく、その中でもトリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0011】
高分子ポリオールとしてはアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどがある。
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル等、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル等の群から選ばれた単独または混合物とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル等の群から選ばれた単独または混合物とを必須成分とし、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル等、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル等、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下、あるいは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
【0012】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール及び例えばε−カプロラクトンを多価アルコールに開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0013】
前記多価ヒドロキシ化合物としては
(1)例えばジクリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど
(2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等糖アルコール系化合物
(3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
(4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオースなどの二糖類、
(5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトースなどの三糖類
(6)たとえはスタキオースなどの四糖類
などがある。
【0014】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンなどが挙げられる。
ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下水酸基平均数)は2〜8であり、2〜5であることが好ましく、3〜4であることがさらに好ましい。水酸基平均数が2未満であると、本発明構成要件であるnの範囲が得られない場合があり、硬化性が低下する。また、8を超えると、得られたポリイソシアネートの粘度が非常に高くなる場合がある。
ポリオールの数平均分子量は、100〜10000であることが好ましく、100〜5000であることがより好ましく、100〜1000であることがさらに好ましい。ポリオールの分子量が10000を超える場合、得られたポリイソシアネートを用いて形成した塗膜の硬度が低下する場合がある。
【0015】
高分子ポリオールの中では、前記の低分子量ポリオールにε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールが好ましい。低分子ポリオール、特にトリオールは高い塗膜硬度を得るために好ましい。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートとポリオールから誘導される。
また、本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基からウレタン基を形成するウレタン化反応及び、場合によりウレタン基ともう1分子のイソシアネート基から形成するアロファネート基を形成するアロファネート化反応及び、イソシアネート基3個から構成されるイソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応により成り立つ。本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ウレタン基またはアロファネート基とイソシアヌレート基をともに有することが好ましく、アロファネート基とイソシヌレート基をともに有することがより好ましい。
【0016】
本発明水性ポリイソシアネート組成物は脂肪族ジイソシアネート成分と脂環族ジイソシアネート成分の両成分が存在し、脂肪族ジイソシアネート成分と脂環族ジイソシアネート成分の質量比率が95:5〜50:50であることが好ましく、より好ましくは90:10〜50:50である。50:50を超えた場合、ポリイソシアネートの粘度が高くなりすぎる場合がある。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の親水基は特に制限されることはなく、アニオン性基、及び、ノニオン性基が挙げられる。アニオン性基には、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などがある。ノニオン性基には、例えば、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型などがある。親水基としては、ノニオン基またはカルボン酸基、スルホン酸基が好ましい。
【0017】
本発明の水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は、2〜21質量%であり、好ましくは5〜21質量%、より好ましくは8〜20質量%、最も好ましくは10〜18%である。2質量%未満の場合、形成された塗膜中のウレタン結合濃度が低下しやすく、かとう性が低下する場合があり、21質量%を超える場合、イソシアネート基平均数が増加し難く、硬化性が劣る場合がある。
本発明水性ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は5〜1500Pa・sであり、好ましくは15〜1000Pa・s、より好ましくは20〜800Pa・s、最も好ましくは30〜500Pa.sである。5Pa・s未満の場合、イソシアネート基平均数が低下する場合があり、1500Pa・sを超える場合は得られる塗膜外観が低下する場合がある。
【0018】
本発明水性ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は700〜4000であり、好ましくは800〜3000、より好ましくは1000〜2000である。700未満ではイソシアネート基平均数が低下しやすく、4000を超えるとイソシアネート基濃度が低下しやすい。
驚くべきことに、本発明における水性ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートの2種以上のジイソシアネートとポリオールから誘導されるポリイソシアネート組成物を前駆体とし、親水基を導入することで、水分散性良好で、かつ架橋性に優れるとともに、これを硬化剤として得られる塗膜は高硬度を有している。
【0019】
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の製造方法は、前駆体製造工程と親水基導入工程からなる。
前駆体は、例えば、以下の工程により製造する。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物前駆体は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートとポリオールを反応させることを特徴として誘導される。本発明の水性ポリイソシアネート組成物の前駆体は、ウレタン基またはアロファネート基とイソシアヌレート基をともに有することが好ましく、アロファネート基とイソシヌレート基をともに有することがより好ましい。合成方法としては、イソシアヌレート化反応後、前記ポリオールを添加し、ウレタン化反応を行うこともできるが、好ましくはウレタン化反応後、イソシアヌレート化反応を行うことが、イソシアネート基平均数を高めるために好ましい。イソシアヌレート化反応により、その前に形成されたウレタン基の一部またはすべてはアロファネート基となる。イソシアヌレート化反応を行わず、ウレタン化反応あるいはそれに続くアロファネート化反応を行った場合もある程度の性能を得ることができるものの、得られるポリイソシネート組成物のイソシアネート基平均数、これを硬化剤とした塗膜で高い塗膜硬度を得ることが難しい場合がある。
【0020】
前記のジイソシアネートとポリオールを反応させる場合のジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比は、イソシアネート基/水酸基5〜50、より好ましくは5〜20である。5未満であると、得られるポリイソシアネート組成物の粘度が高くなりやすく、50を超えると、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数の増加が難しい場合がある。反応温度は、50〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。50℃未満では、反応が進み難く、200℃を超えると製品の着色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
水酸基の1部またはすべてが反応した後または反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行う。このイソシアヌレート化反応を行わない場合、これにより得られたポリイソシアネートを使用して得られる塗膜の塗膜硬度が低下する場合がある。イソシアヌレート化反応の反応温度は、50〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。50℃未満では、反応が進み難く、200℃を超えると製品の直色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
【0021】
この際に使用するイソシアヌレート化触媒としては、例えば一般に塩基性を有するものが好ましく、(1)例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(2)例えばトリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩、(4)例えばナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(5)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(6)マンニッヒ塩基類、(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(8)例えばトリブチルホスフィン等の燐系化合物等がある。この中で4級アンモニウムの有機弱酸塩が好ましく、さらにテトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩がさらに好ましい。
【0022】
イソシアヌレート化反応を停止するために用いたイソシアヌレート化触媒を失活する。その失活方法としては例えば、リン酸、酸性リン酸エステルなどの酸性物質による中和、熱分解、化学分解等がある。
本発明水性ポリイソシアネート組成物前駆体の収率は10〜70質量%の範囲から選択される。高い収率で得られる該前駆体の粘度は高くなる。
前駆体の収率は、以下の式(2)により求められる。
「数2」
(未反応ジイソシアネートモノマー除去後の質量)× 100=収率・・・・(2)
───────────────────────
(原料HDI質量+IPDI質量+ポリオール質量)

反応終了後、未反応ジイソシアネートモノマーは薄蒸留缶、抽出などにより、除去される。該前駆体中のジイソシアネート濃度としては3質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。未反応ジイソシアネートが3質量%を超えると、これを用いて得られる水性ポリイソシアネート組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0023】
本発明水性ポリイソシアネート組成物の前駆体のイソシアネート基平均数nは3.3〜20であり、好ましくは3.5〜20であり、より好ましくは4〜10である。前記値が3.3未満の場合は、これを用いて得られる水性ポリイソシアネート組成物の硬化性が低下する場合があり、20を超えると、得られる塗膜の伸びが低下する場合がある。4以上だとより優れた硬化性を得ることができる。
本発明水性ポリイソシアネート組成物前駆体のイソシアネート基濃度は、3〜22質量%である。3質量%未満の場合は、形成された塗膜中のウレタン結合濃度が低下しやすく、かとう性が低下する場合があり、22質量%を超える場合、イソシアネート基平均数が増加し難く、これを用いて得られる水性ポリイソシアネート組成物の硬化性が劣る場合がある。
【0024】
また、本発明水性ポリイソシアネート組成物前駆体の数平均分子量は700〜3000であり、好ましくは800〜2000、より好ましくは800〜1500である。700未満ではイソシアネート基平均数が低下しやすく、3000を超えるとイソシアネート基濃度が低下しやすい。
本発明水性ポリイソシアネート組成物前駆体の25℃における粘度は5〜1000Pa・sであり、15〜1000であることが好ましく、100〜1000Pa・sであることがより好ましい。5Pa・s未満の場合は、結果的にイソシアネート基平均数が低下しやすく、1000Pa・sを超える場合は得られる塗膜外観が低下する場合がある。
本発明水性ポリイソシアネート組成物前駆体のポリオール成分濃度は1〜50質量%である。1質量%未満であると、イソシアネート基平均数が低下しやすく、50質量%を超えると、イソシアネート基濃度が低下しやすい。
以下、親水基導入工程について説明する。
【0025】
上記に例示した親水基をポリイソシアネートに導入するためには親水基及び活性水素基をともに有する親水基導入化合物を用いる。活性水素基とは、イソシアネート基と反応する官能基であり、例えば、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基などがある。アニオン性基と活性水素基をともに有する化合物としては、水酸基とカルボン酸基をともに有する、オキシ酸があり、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンなどが挙げられる。水酸基とスルホン酸基をともに有する化合物としては、例えばイセチオン酸などがある。活性水素基としメルカプト基とカルボン酸基をともに有する化合物としては、メルカプトカルボン酸であるメルカプト酢酸などがある。ノニオン性基と活性水素基をともに有する化合物としては、ポリエチレンオキサイドがある。ポリエチレンオキサイドは、例えばメタノール、エタノール、ブタノール等のモノアルコールにエチレンオキサイドを付加して得られ、プロピレンオキサイドを含んでも良い。
【0026】
活性水素基としては水酸基が好ましい。親水基がアニオン性の場合、アニオン性基を、有機アミン、無機塩基で中和することが好ましい。この中和は水性ポリイソシアネート組成物に水分散性、水溶性を付与する。
上記の具体的な有機アミン化合物の例としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基を分子内に有する水酸基含有アミンなどを挙げることができる。無機塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0027】
これらの有機アミン化合物、無機塩基はカルボキシル基に対して0.5〜1.5当量の範囲で用いられる。0.5未満の場合は、水性ポリイソシアネート組成物の水分散性、水溶性が低下する場合があり、1.5を越える場合は、水性ポリイソシアネート溶液のpHが高くなり、これを用いた塗料の安定性が低下する場合がある。
また、水性ポリイソシアネート組成物前駆体のイソシアネート基のモル数をX、親水基導入化合物活性水素基のモル数をYとした場合のY/Xの値は、0.02〜0.40であり、好ましくは0.02〜0.30であり、より好ましくは0.04〜0.20、最も好ましくは0.05〜0.10である。0.02未満の場合、水分散性が不足する場合があり、0.40を超える場合、架橋性が低下する場合がある。
【0028】
上記付加反応は、一般に−20から150℃で行うことが出来るが、好ましくは30から100℃である。150℃を越える温度では副反応を起こす可能性があり、−20℃未満になると反応速度が小さくなり不利である。
また、この反応には、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、及び、3級アミン系化合物、ナトリウムなどのアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
更に水分散性の向上などの目的に応じて、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。具体的な前記界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤がある。
【0029】
上記前駆体の製造前、製造中、製造後のいずれの段階においても上記に例示した活性水素導入化合物を付加することにより、本発明の水性ポリイソシアネート組成物が得られるが、前駆体の製造後に親水基導入化合物を付加させることが好ましい。
得られた水性ポリイソシアネート組成物に親水基が付加されていないポリイソシアネートを混合することもできる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物には、溶剤を含有することができる。上記の具体的な有機溶剤の例としては、例えば、1−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリットなどを挙げることができ、2種以上を併用できる。有機溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましい。水への溶解度が5質量%未満の有機溶剤を用いると、水性ポリイソシアネート組成物の水分散性が低下する場合がある。また、沸点が100℃以上のものが好ましく、沸点が100℃未満の有機溶剤を用いると、塗膜形成時に有機溶剤の揮発が速くなり、塗膜表面外観に影響を及ぼす場合がある。溶剤の使用量は、水性ポリイソシアネート組成物の0〜20質量%である。20質量%を超えると、塗料として使用する場合に、揮発する溶剤が多くなり、環境上好ましくない。
【0030】
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ポリオールとともに水性塗料の主成分を構成する。水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基はこのポリオールの水酸基と反応して、架橋塗膜を形成することができる。
本発明の水性塗料組成物に使用するポリオールとしては、通常、水性塗料用に用いるものであれば特に制限なく使用可能である。具体例としては、前記の高分子ポリオール以外に、エポキシポリオール、フッ素ポリオールがある。
エポキシポリオールとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂をアミン変性、または、アミノアルコール変性したものが挙げられる。
【0031】
フッ素ポリオールとしては、フッ素化エチレンと共重合可能なモノマーからなる樹脂が挙げられる。
好ましいポリオールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールである。
前記のポリオールは水に乳化、分散あるいは溶解することが必須となる。そのために、ポリオールに含まれるカルボキシル基、スルホン基などを中和する事ができる。
カルボキシル基、スルホン基などを中和するための化合物としては、有機アミン、無機塩基が挙げられる。有機アミンとしては、例えばアンモニア、水溶性アミノ化合物である例えばモノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリンなどから選択される1種以上を用いることができる。無機塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを用いることができる。好ましくは、第3級アミンであるトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどが好ましい。
【0032】
前記ポリオールの樹脂分当たりの水酸基価は20から300mgKOH/gが好ましく、酸価は20から100mgKOH/gが好ましい。
ポリオールの水酸基価が20mgKOH/g未満の場合、イソシアネート基との反応による架橋性が劣る場合があり、水酸基価が300mgKOH/gを超えると、逆に架橋密度が増大し、塗膜の伸び等の物性が低下する場合がある。また、酸価が20mgKOH/g未満の場合、水分散性が低下する場合があり、100mgKOH/gを超える場合、得られた塗膜の耐水性等の物性が低下する場合がある。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物と上記ポリオールの配合比率は、水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比が0.3から1.5の範囲で、必要に応じて選択される。
【0033】
必要に応じて、本発明の塗料組成物にメラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。
上記のメラミン系硬化剤としては、例えばアルキルエーテル化メラミン樹脂である。その製法としては、例えば尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリルなどをアルカリ条件下アルコール中でホルムアルデヒドを付加し、メチロール化を行い、その後メチロール基の少なくとも1部はアルキルエーテル化される。アルキル基の種類としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどあり、2種以上を用いても良い。好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルである。イミノ基を有しても良い。
【0034】
メラミン系硬化剤を用いる場合、本発明の水性ポリイソシアネート組成物とメラミン系硬化剤の混合質量比率は10/1から1/10であり、好ましくは5/1から1/5である。前記比率が1/10未満であると塗膜のかとう性が低下する場合がある。10/1を越えると、メラミン系硬化剤を添加する目的である、例えば塗膜硬度向上を達成することが難しい。
本発明は硬化促進剤として酸性化合物、塩基性化合物を含む事ができる。特にメラミン系硬化剤を併用する場合は酸性化合物の添加が有効である。
前記酸性化合物の具体例としては、例えば、カルボン酸類として例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸などがあり、スルホン酸類としては、例えばパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などがあり、リン酸エステル類としては、例えばジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル、例えばジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイトなどがある。
【0035】
これらの酸性化合物はアミン化合物と反応させ、貯蔵安定性を向上させることができる。そのアミン化合物としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−ブチルアミン、ジ−1−ブチルアミンなどのアルキルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどがある。
塩基性化合物の具体例としては、例えばトリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロオクタンなどのアミン化合物、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛金属カルボン酸塩などがある。
硬化促進剤の添加量は配合される塗料樹脂分に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0036】
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、例えば、アルミ等の金属粉顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、溶剤等を添加してもよい。
通常は、水性ポリイソシアネート組成物、ポリオール、添加剤等を混合し、水を主成分とする媒体を添加し、塗装方法に応じた塗料粘度に調整することにより水性塗料組成物となる。
このように調製した水性塗料組成物の被塗装材質としては、金属、プラスチック、無機等が挙げられる。
また、用途としては、上中塗り、下塗り用として、建築外装塗料、バンパー等のプラスチック部品用塗料、自動車補修用塗料、プレコートメタル等の有機被覆用塗料等として有用である。
塗装方法としては、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は塗料以外にインキ、接着剤、繊維・フィルム・セラミック等の無機材料・紙・木材・樹脂等の改質剤または表面処理剤としても有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−8120GPC
カラム:東ソー(株)TSKgel superH1000×1本
TSKgel superH2000×1本
TSKgel superH3000×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
(未反応ジシソシアネートモノマー濃度)
前記GPC測定で得られる未反応ジイソシアネート相当の分子量(例えばHDIであれば168)のピーク面積%をその質量濃度として表した。
【0038】
(粘度の測定)
E型粘度計(東機産業株式会社製RE−80U)を用いて、25℃で測定した。
(水性ポリイソシアネート組成物の水分散性)
水性ポリイソシアネート組成物と純水を質量比2:10で混合し、その後の溶液状態を肉眼で観察した。混合液が均一で沈降物のない状態を〇とし、沈降物がある場合を×とした。結果を表2に示した。
(ゲル分率)
硬化塗膜を、アセトン中に20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する割合を計算し、70質量%未満の場合を×、70質量%以上の場合を〇で表した。結果を表3に示した。
【0039】
(塗膜硬度)
ケーニッヒ硬度計(BYK Garder社のPendulum hardness tester(商品名))を用いて、測定温度20℃、塗膜膜厚40μmで測定した。塗膜硬度が40以上を〇、40未満を×とした。結果を表3に示した。
(ウレタン結合量、アロファネート結合量、イソシアヌレート結合量の測定)
ウレタン結合量、アロファネート結合量、イソシアヌレート結合量は水性ポリイソシアネート組成物の1H−NMR測定で求めた。
装置:日本電子社製 JNM−LA400
溶剤:重クロロホルム
【0040】
(製造例1)(水性ポリイソシアネート組成物前駆体の製造)
攪拌器,温度計,還流例客観,窒素吹き込み缶,滴下ローとを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 700部、IPDI 300部、3価アルコールであるポリカプロラクトンポリオール系ポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学の商品名 分子量300)30部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、反応液の屈折率を測定し、HDIとIPDIとポリオールの合計質量を100とした時の収率44質量%に相当する時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液を濾過した後、薄膜蒸留缶を用いて未反応HDI、IPDIを除去した。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
【0041】
(製造例2〜3)
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
【0042】
(比較製造例1)
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
【0043】
(比較製造例2)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600部を仕込み、60℃、2Hr保持した。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、イソシアヌレート化反応を行い、4時間後、収率が20%になった時点で、リン酸を添加して反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去した。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
【0044】
(実施例1)(水性ポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を100部、分子量550のメトキシポリエチレングリコール(日本油脂の商品名「ユニオックスM550」)25部(水性ポリイソシアネート組成物前駆体の全イソシアネート基の10%と反応する)を仕込み、80℃で6時間保持した。得られた水性ポリイソシアネート組成物の物性及び水分散性評価結果を表2に示す。
【0045】
(実施例2−5)(水性ポリイソシアネート組成物の製造)
表2に示す以外は製造例5と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物の物性を表2に示す。
【0046】
(比較例1)
比較製造例1で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を用い、表2に示したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0047】
(比較例2)
比較製造例2で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を用い、表2に示したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0048】
(実施例6−10)(水性塗料組成物の調整)
ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比1.0で中和された水分散性アクリルポリオール(アクゾノーベル社の商品名「SETALUX6512」、樹脂分濃度42質量%、水酸基価69mgKOH/樹脂g、酸価16mgKOH/樹脂g)と実施例1−5で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いて、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で混合した。更に水を添加し塗料粘度が、フォードカップNo.4で30秒になるように調整した。この塗料をアプリケーター塗装し、80℃、30分で硬化させた。塗膜評価結果を表3に示す。
【0049】
(比較例3−4)
比較例1−2で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例6と同様に行った。結果を表3に示す。
【0050】
(実施例11−15)(水性塗料組成物の調整)
ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比1.0で中和された水溶性アクリルポリオール(アクゾノーベル社の商品名「SETALUX6306」、樹脂分濃度60質量%、水酸基価89mgKOH/樹脂g、酸価42mgKOH/樹脂g)と実施例1−5で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いて、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で混合した。更に水を添加し塗料粘度が、フォードカップNo.4で30秒になるように調整した。この塗料をアプリケーター塗装し、80℃、30分で硬化させた。塗膜評価結果を表3に示す。
【0051】
(比較例5−6)
比較例1−2で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例11と同様に行った。結果を表3に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の組成物は、水性塗料の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件をすべて満たすことを特徴とする、水に溶解または分散しうる水性ポリイソシアネート組成物。
1)下記構造式で示され、イソシアネート基平均数nが2.5〜20
A−R−(NCO)
A:親水基
R:脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシネート、ポリオールのそれぞれから少なくとも1種以上選ばれた化合物群から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基
2)イソシアネート基濃度:2〜21質量%
3)25℃における粘度が5〜1500Pa・s
【請求項2】
イソシアネート基平均数nが3.0〜20であることを特徴とする請求項1記載の水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が15〜1500Pa・sであることを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
Rが脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシネート、ポリオールのそれぞれから少なくとも1種以上選ばれた化合物群から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールがアロファネート結合および/またはウレタン結合を介して結合されており、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=95/5〜50/50(質量比)であることを特徴とする請求項1、2または3いずれか1項記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
Rが、水酸基平均数2〜8のポリオールから誘導されることを特徴とする請求項1、2、3または4いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
Rが、イソシアヌレート基を有することを特徴とする請求項1、2、3、4または5いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6いずれか1項記載の水性ポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物。

【公開番号】特開2007−224241(P2007−224241A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50039(P2006−50039)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】