説明

水性分散系

下記成分を含むことを特徴とする水性分散系:1)少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)及び2)下記成分を含む少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1):a)少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)を有する少なくとも1つのモノマー単位(m1)、及びb)スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来の、コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当するモノマー単位(m2):CH2=CR2R3(R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は-OH基、-O-R5基(R5は任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基及び全部で2〜10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR4は-NR6R7基からも選択され、R6及びR7は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、水性分散系、該水性分散系の製造方法、その金属又はポリマー表面のコーティングにおける使用及び前記水性分散系を用いる該表面のコーティング方法に関する。
本発明は、塩化ビニリデンポリマーの用途、特に金属又はポリマー表面のコーティングにおける新しい適用分野を探す状況に入る。
この状況において、特許出願WO 2005/028557は、塩化ビニリデンポリマーと、このポリマーの主モノマー由来のモノマー単位と必ず同一(従って塩化ビニリデン由来)のモノマー単位及び少なくとも1つの官能基を有するエチレン性不飽和モノマー由来のモノマー単位を含むコオリゴマーである少なくとも1つの添加成分とを含んでなるポリマー組成物を開示している。これらの添加成分は、それらが役に立つ(ポリマー/空気表面、ポリマー/金属界面など)ところに優先的に移行する特性を示し、かつ塩化ビニリデンポリマーとの十分な適合性を示す。従って、得られる組成物はコーティングの接着特性及び表面特性の点で必要な特性に貢献する。
それにもかかわらず、前記組成物に含まれるコオリゴマーは、塩化ビニリデンから得る限り、すなわちそれらを製造するために使用する必要のあるプロセスを高圧下(通常4〜10バールのオーダー)で行わなければならないことを意味し、合成が複雑、ひいては費用がかかるという大きな欠点を示す。これらのコポリマーには、製造が困難なブロック構造を特徴とするという欠点を示すものもある。
従って、上述した組成物の利点を維持しながらその欠点を示さない塩化ビニリデンポリマー組成物を見出すことが要望されている。
【0002】
塩化ビニリデンポリマーに基づいた水性分散系に関する本発明はこの状況に入る。
この目的を達成するため、本発明は、下記成分を含んでなる水性分散系に関する:
1)少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)、及び
2)下記成分を含む少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1):
a)少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)を有する少なくとも1つのモノマー単位(m1)、及び
b)スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来の、前記コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当するモノマー単位(m2):
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基、-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基及び全部で2〜10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR4は-NR6R7基からも選択され、R6及びR7は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。
【0003】
用語“水性分散系”又は“ラテックス”も水中の個々のポリマー粒子の安定した分散系を表すことを意図する。用語“ポリマー”は、ホモポリマーとコポリマーを表すことを意図する。
本発明の水性分散系中に存在する個々のポリマー粒子は、有利には50〜5000nm、好ましくは50〜500nm、特に好ましくは90〜350nmの大きさによって特徴づけられる。
いずれの既知技術によっても個々のポリマー粒子の大きさを測定でき;好ましくはMalvern Zetamaster装置を用いて希釈分散系の光散乱によって粒子の大きさを測定する。
用語“少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)”は、本発明の水性分散系が少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)を含まなければならないが、複数の塩化ビニリデンポリマー(P1)を含みうることを表す意である。好ましくは、ちょうど1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)を含む。
用語“塩化ビニリデンポリマー(P1)”は、塩化ビニリデンホモポリマー及びコポリマーを表すことを意図する。
塩化ビニリデンポリマーのうち、塩化ビニリデンコポリマーが好ましい。用語“塩化ビニリデンコポリマー”は、主モノマーである塩化ビニリデンの、該塩化ビニリデンと共重合できる1つ以上のモノマーとのコポリマーを表すことを意図する。従って、塩化ビニリデンは、有利には、結果として生じるコポリマー中に少なくとも50質量%の比率で存在する。
塩化ビニリデンと共重合できるモノマーのうち、限定するものではないが、塩化ビニル、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、ブタジエン、オレフィン、例えば、エチレンやプロピレン、イタコン酸及び無水マレイン酸が挙げられるが、共重合可能な界面活性剤、例えば2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)又はその塩の1つ、例えばナトリウム塩、及び酸2-スルホエチルメタクリレート(2-SEM)又はその塩の1つ、例えばナトリウム塩も挙げられる。
特に好ましい塩化ビニリデンコポリマーは、少なくとも50質量%の比率の塩化ビニリデンと、共重合可能なモノマーとして、塩化ビニル及び/又は無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマーを含んでなる当該コポリマーである:
CH2=CR8R9
(式中、R8は水素及びメチル基から選択され、R9は-CN基及び-CO-R10基から選択され、R10は、-OH基、-O-R11基(R11は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基及び全部で2〜10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR10は-NR12R13基からも選択され、R12及びR13は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。
非常に特に好ましい塩化ビニリデンコポリマーは、共重合可能なモノマーとして、塩化ビニル及び/又は無水マレイン酸、イタコン酸及び(メタ)アクリルモノマー(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリレートグリシジル、アクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド及びN-メチロールアクリルアミド)から選択される少なくとも1つのモノマーを含んでなる塩化ビニリデンコポリマーである。
有利には、塩化ビニリデンコポリマー中の塩化ビニリデンの量は、50〜95質量%、好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜95質量%で変わる。
有利には、塩化ビニリデンコポリマー中の塩化ビニルの量は、0.5〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、特に好ましくは0.5〜30質量%で変わる。
有利には、塩化ビニリデンコポリマー中のイタコン酸及び/又は(メタ)アクリルモノマーの量は、1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは2〜30質量%で変わる。
【0004】
本発明の塩化ビニリデンポリマー(P1)は、有利には、30,000以上の数平均分子量(例えば、立体排除クロマトグラフィー又は元素分析によって決定される)によって特徴づけられる。ポリマー(P1)の数平均分子量は、有利には2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは500,000以下、非常に特に好ましくは250,000以下である。
また、ポリマー(P1)は、有利には、立体排除クロマトグラフィーで決定されるような多分散指数(数平均分子量に対する重量平均分子量の比率)が1以上である。ポリマー(P1)は、有利には、4以下の多分散指数で特徴づけられる。
本発明の水性分散系に含まれる塩化ビニリデンポリマー(P1)は、有利には水性分散系ラジカル重合法で調製される。
用語“水性分散系ラジカル重合”は、水性エマルジョンラジカル重合及び水性マイクロサスペンションラジカル重合を表すことを意図する。
ポリマー(P1)の合成のための用語“水性エマルジョンラジカル重合”は、水に可溶性の乳化剤とラジカルイニシエーターの存在下、水性媒体中で行われるいずれのラジカル重合法(常法)をも表すことを意図する。
用語“水性マイクロサスペンション重合”は“均質化水性分散系重合”又は“ミニエマルジョン水性分散系重合”としても知られ、脂溶性イニシエーターを使用し、かつ強力な機械的撹拌及び乳化剤の存在によってモノマー液滴のエマルジョンが生成される、いずれのラジカル重合法をも表すことを意図する。
本発明の水性分散系に含まれる塩化ビニリデンポリマー(P1)は、好ましくは水性分散系又はラテックスの形成をもたらす水性エマルジョンラジカル重合法によって調製される。
従って、ポリマー(P1)は、有利には水性分散系又はラテックスの形態であり、好ましくは本発明の水性分散系の調製ではこの形態で使用される。
用語“少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)”は、本発明の水性分散系は少なくとも1つのコポリマー(C1)を含まなければならないが、複数のコポリマー(C1)を含みうることを表す意である。好ましくは、ちょうど1つだけ含む。
用語“コポリマー(C1)”は、共重合の結果生じる生成物、すなわち、任意に微細構造が異なるコポリマー(C1)のブレンドでもよいことを表す意である。従って、本発明の意味内のコポリマー(C1)は、有利には重合の結果生じる生成物を意味する。
結果として、本発明の水性分散系は、好ましくはちょうど1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)及びちょうど1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)を含む。
本発明のコポリマー(C1)は、有利には100以上、好ましくは1000以上、特に好ましくは10,000、非常に特に好ましくは15,000以上、真に非常に特に好ましくは18,000以上の数平均分子量(例えば立体排除クロマトグラフィー又は元素分析によって決定される)によって特徴づけられる。コポリマー(C1)の数平均分子量は、有利には2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは750,000以下、非常に特に好ましくは300,000以下、真に非常に特に好ましくは50,000以下である。良い結果は、数平均分子量が30,000以下のコポリマー(C1)から得られた。
また、コポリマー(C1)は、有利には、1以上の、例えば立体排除クロマトグラフィーによって決定されるような多分散指数(数平均分子量に対する重量平均分子量の比率)によっても特徴づけられる。コポリマー(C1)は、有利には、4以下、好ましくは3.5以下、特に好ましくは3以下、非常に特に好ましくは2.5以下の多分散指数によって特徴づけられる。
【0005】
コポリマー(C1)中のモノマー単位の連鎖は、ランダム、交互又はグラジエント型、好ましくはランダム又はグラジエント型、特に好ましくはランダム型である。コポリマー(C1)は、有利には、モノマー単位の連鎖がブロック型のコポリマーでない。
用語“ランダム構造で配列したコポリマー”は、鎖に沿ったモノマーの分布がすべてランダムであり、かつその比率が鎖に沿ってすべて統計的に同じであるコポリマーを表すことを意図する。例として、以下のスキームは、とりわけモノマーA及びBを含むこのようなコポリマーの代表を示す:AABAAABBABBBAAB。
用語“交互構造で配列したコポリマー”は、該コポリマーを構成するモノマーが鎖に沿ってすべて交互に結合しているコポリマーを表すことを意図する。例として、以下のスキームは、とりわけモノマーA及びBを含むこのようなコポリマーの代表を示す:ABABABABABABAB。
用語“ブロック構造で配列したコポリマー”は、同じ1つ以上のモノマーで形成された多少長い配列の連鎖が観察されるコポリマーを表すことを意図する。例として、以下のスキームは、とりわけモノマーA及びBを含むこのようなコポリマーの代表を示す:AAAAAAAABBBBBBBB。
用語“グラジエント構造で配列したコポリマー”は、あるモノマーの他のモノマーに対する相対的な比率が鎖に沿ってすべて増加又は減少する、少なくとも2つのモノマーで構成されたコポリマーを表すことを意図する。例として、以下のスキームは、とりわけモノマーA及びBを含むこのようなコポリマーの代表を示す:AAABAABBABBBBB。
コポリマー(C1)はいずれの構造を有することもできるが、好ましくは構造は本質的に線形である。用語“本質的に線形”は、コポリマー(C1)の構造が、例えば、小さい分岐のため、その線形性に少数の不規則性を示しうることを表す意である。
コポリマー(C1)は有利には、ランダム又はグラジエント型のモノマー単位の連鎖を有する本質的に線形構造によって、好ましくはランダム型のモノマー単位の連鎖を有する本質的に線形構造によって特徴づけられる。
コポリマー(C1)は少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)を有する少なくとも1つのモノマー単位(m1)を含む。
用語“ホスホネート基-PO(OH)(OR1)”は、炭素原子に結合した-PO(OH)(OR1)基を表し、ホスフェート基-O-P(O)(OR)2(Rは水素原子又はアルキル基であり、該リン原子は酸素原子に結合する)でないことを意図する。
少なくとも1つのホスホネート基を有するモノマー単位(m1)は少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)を有するエチレン性不飽和モノマー(M1)自体のみならず、少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一又は異なり、1〜11個の炭素原子を含むアルキル基を表し、すべて又は一部の切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)をもたらす)を有するエチレン性不飽和モノマー(M1')由来でよい。
用語“切断”は、ホスホネート基-PO(OH)(OR1)を得ることのできるいずれの反応をも意味するものと解釈する。切断の好ましいケースは加水分解反応である。
エチレン性不飽和モノマー(M1')のすべて(R1が水素原子の場合)又は一部の切断、特に半加水分解(R1が1〜11個の炭素原子を含むアルキル基の場合)は、それぞれC. Brondino, B. Boutevin, Y. Hervaud, N. Pelaprat & A. Manseri, J. Fluorine Chem., 1996, 76, 193、及びB. Boutevin, Y. Hervaud, T. Jeanmaire, A. Boulahna, M. Elasri, Phosph. Sulfur and Silicon, 2001, 174, 1に記載されているように行われる。
すべて又は一部の切断は、有利にはコポリマー(C1)の合成中、好ましくはモノマー(M1')からコポリマー(C1)合成が開始したらすぐに起こる。
少なくとも1つのホスホネート基を有するモノマー単位(m1)が少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するエチレン性不飽和モノマー(M1)自体に由来し、従って少なくとも1つのモノマー(M1)から出発してコポリマー(C1)が合成される場合、任意に、コポリマー(C1)の合成前に対応モノマー(M1')のすべて又は一部を切断してコポリマー(C1)を得ることができる。
コポリマー(C1)は、少なくとも1つのモノマー単位(m1)を含む。好ましくは、コポリマー(C1)のモノマー単位(m1)は、コポリマー(C1)のモノマー単位の総質量に対して、少なくとも0.5質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、非常に特に好ましくは少なくとも2質量%に相当する。
有利には、モノマー単位(m1)は、コポリマー(C1)のモノマー単位の総質量に対して、最高50質量%、好ましくは最高45質量%、特に好ましくは最高40質量%、非常に特に好ましくは最高30質量%に相当する。
コポリマー(C1)のモノマー単位の総質量に対して、モノマー単位(m1)が少なくとも0.5質量%及び最高50質量%に相当するコポリマー(C1)が非常に特に有利である。
【0006】
有利には、少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するモノマー単位(m1)は、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来である:
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基)
CH2=CR14-CO-O-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CR14-C6H4-C(CH3)2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
オルトとパラの混合である芳香核の置換を含むCH2=CH-C6H4-CH2-PO(OH)(OR1)()、
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一又は異なり、1〜11個の炭素原子を含むアルキル基を表し、すべて又は一部の切断(特に半加水分解)後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
上記式中、iは有利には1〜20、好ましくは1〜11、特に好ましくは1〜3である。
少なくとも1つの-PO(OH)(OR1)基を有するモノマー単位(m1)中、R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基である。
R1がアルキル基の場合、R1は、有利には1〜11個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、特に好ましくは1〜5個の炭素原子を含む。R1がメチル基又はエチル基である場合が非常に特に好ましい。
【0007】
好ましくは、少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するモノマー単位(m1)は、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来である:
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基)
CH2=CR14-CO-O-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一又は異なり、1〜11個の炭素原子を含むアルキル基を表し、すべて又は一部の切断(特に半加水分解)後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
i及びR1について上述した好ましいものは、この好ましい形態でも適用しうる。
【0008】
特に好ましくは、少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するモノマー単位(m1)は、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来である:
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CR14-CO-O-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一又は異なり、1〜11個の炭素原子を含むアルキル基を表し、すべて又は一部の切断(特に半加水分解)後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
i及びR1について上述した好ましいものは、この特に好ましい形態でも適用しうる。
【0009】
非常に特に好ましくは、少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するモノマー単位(m1)は、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来である:CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1若しくは2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
【0010】
真に非常に特に好ましくは、少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有するモノマー単位(m1)は、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来である:
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1若しくは2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
最後に挙げた当該モノマーのうち、CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1若しくは2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')には、それらが商業的に入手可能なため、特に興味が示される。
【0011】
コポリマー(C1)は、スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基、-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基及び全部で2〜10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR4は-NR6R7基からも選択され、R6及びR7は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。
【0012】
好ましくは、コポリマー(C1)は、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基及び-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基及び2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR4は-NR6R7基からも選択され、R6及びR7は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。
【0013】
特に好ましくは、コポリマー(C1)は、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基及び-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基及び2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基から選択される)から選択される)。
非常に特に好ましくは、コポリマー(C1)は、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基及び-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基及び2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基から選択される)から選択される)。
真に非常に特に好ましくは、コポリマー(C1)は、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基及び-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基及び2〜5個の炭素原子を含むエポキシアルキル基から選択される)から選択される)。
【0014】
特に好ましい変形によれば、コポリマー(C1)は、無水マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸及びアクリル酸から選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当する)を含む。
用語“少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)”は、モノマー単位(m2)が、同じモノマー(M2)又は複数の異なるモノマー(M2)から誘導されうることを表す意である。例えば、この最後の場合、モノマー単位(m2)は2つ又はそれより多くの異なるモノマー(M2)から誘導されうる。従って、モノマー単位(m2)は、上記モノマー(M2)のあらゆる組合せから誘導されうる。とりわけ、いくつかの例はメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチル由来又はメタクリル酸メチルとアクリル酸2-エチルヘキシル由来のモノマー単位(m2)である。
モノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)は、コポリマー(C1)の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも55質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、非常に特に好ましくは少なくとも70質量%に相当する。
有利には、モノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)は、コポリマー(C1)の最高99.5質量%、好ましくは最高99質量%、特に好ましくは最高98質量%に相当する。
モノマー単位(m2)がコポリマー(C1)の少なくとも50質量%及び最高99.5質量%に相当するコポリマー(C1)が非常に特に好ましい。
【0015】
下記成分:
a)少なくとも1つのモノマー単位(m1)(上で詳述したモノマー単位(m1)の性質について及び/又はその量についての選択は何であれ)、及び
b)少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(上で詳述したモノマー単位(m2)の性質について及び/又はその量についての選択は何であれ)
を含むいずれのコポリマー(C1)も本発明の分散系に対する多大な利点に貢献する。
すなわち、コポリマー(C1)のモノマー単位(m1)並びにモノマー単位(m2)の性質及び/又はその量について上述した選択のいずれの組合せも本発明の分散系にとって有利である。 下記成分:
a)少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有し、かつ以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来のモノマー単位(m1)(コポリマー(C1)の少なくとも0.5質量%及び最高50質量%の比率):
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1若しくは2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1');及び
b)無水マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸及びアクリル酸から選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来のモノマー単位(m2)(コポリマー(C1)の少なくとも50質量%及び最高99.5質量%の比率);
を含むコポリマー(C1)は、本発明の水性分散系にとって好ましい。
モノマー単位(m1)及び(m2)に加え、コポリマー(C1)は、任意に、モノマー単位(m1)及び(m2)並びに塩化ビニリデン由来のモノマー単位と異なるさらに他のモノマー単位を含みうる(前述したいくつかの欠点を示す塩化ビニリデンから得られるコポリマーのように)。好ましくは、コポリマー(C1)はモノマー単位(m1)及び(m2)から成る。従って、コポリマー(C1)は、好ましくはモノマー単位(m1)及び(m2)以外のモノマー単位を含まない。
【0016】
いずれのラジカル重合法によっても本発明の水性分散系に含まれるコポリマー(C1)を調製することができる。好ましくは、水性エマルジョンラジカル重合法又は溶媒中の溶液ラジカル重合法によって調製される。
コポリマー(C1)の重合のための用語“水性エマルジョンラジカル重合”は、水溶性の乳化剤とラジカルイニシエーターの存在下、水性媒体中で行われるいずれのラジカル重合法、すなわち従来の水性エマルジョンラジカル重合法のみならず、いずれの制御された水性エマルジョンラジカル重合法(特にITP(ヨウ素移動重合(Iodine Transfer Polymerization)法)をも表すことを意図する。
本発明の水性分散系に含まれるコポリマー(C1)を水性エマルジョンラジカル重合法で調製すると、水性分散系又はラテックスが有利に得られる。
この場合、コポリマー(C1)は有利には水性分散系の形態であり、好ましくは、本発明の水性分散系の調製ではこの形態で使用される。
用語“溶媒中の溶液ラジカル重合”は、例えば、トルエン、キシレン、ジオキサン、メチルエチルケトン、アルコール(例えばブタノール)、及びアセトン等の有機溶媒中の均一ラジカル重合(該溶媒に可溶性のコポリマー)又は不均一ラジカル重合(該溶媒に不溶性のコポリマー)を表すことを意図する。
本発明の水性分散系に含まれるコポリマー(C1)を溶媒中の均一ラジカル重合法で調製すると、コポリマー(C1)は有利には均一溶液の形態で得られ、好ましくは引き続き乳化剤の存在下で水中で乳化させて水性分散系又はラテックスの形成をもたらす。コポリマー(C1)の精製が必要なことが判っているか又はコポリマー(C1)の加水分解が重合溶媒からコポリマー(C1)を抽出することを要する場合、有利には、固体形態でコポリマーを単離し、かつ精製後、好ましくはそれを前記溶媒に溶かしてから水中で乳化させて水性分散系又はラテックスを生じさせることができる。
【0017】
本発明の水性分散系に含まれるコポリマー(C1)を溶媒中の不均一ラジカル重合法で調製すると、コポリマー(C1)は、有利には固体の形態で得られ、好ましくは引き続き溶媒に溶かしてから水中で乳化させて水性分散系又はラテックスの形成をもたらす。
この場合、コポリマー(C1)は有利には水性分散系又はラテックスの形態であり、好ましくはこの形態で本発明の水性分散系の調製で使用される。
【0018】
本発明の水性分散系は、ポリマー(P1)とコポリマー(C1)の総質量に対して、有利には少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、非常に特に好ましくは少なくとも65質量%、実に非常に特に好ましくは少なくとも70質量%のポリマー(P1)を含む。少なくとも80質量%、実になお少なくとも90質量%のポリマー(P1)を含む水性分散系が特に有利に経済的である。
本発明の水性分散系は、さらに標準的な添加剤、例えば染料、安定化剤、充填剤、融合(coalescence)剤、消泡剤、ワックス、難燃性を改善するための添加剤、無機若しくは有機染色添加剤及びこの用途に好適な当業者に周知の他のいずれの添加剤をも含みうる。
引き続き、本発明の主題は、本発明の水性分散系の製造方法である。
この目的のため、本発明は本発明の水性分散系の製造方法であって、少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)の水性分散系及び上述したとおりの少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)の水性分散系の混合工程を含む方法に関する。
好ましくは、少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)の水性分散系及び上述したとおりの少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)の水性分散系の混合物を含む水性分散系にも関する。
さらに、本発明の主題は、本発明の水性分散系の使用である。
この目的のため、本発明は、金属又はポリマー表面のコーティング、好ましくは金属表面のコーティングにおける本発明の水性分散系の使用に関する。
用語“金属表面”は、金属ベース材料の表面を表すことを意図する。
用語“金属”は、高い電気伝導性と高い熱伝導性(この伝導性は温度の上昇と共に低減する)によって、また光に対するその高い反射性(該材料に特徴的な金属光沢を与える)によって他の非金属表面と区別されるいずれの物質をも表すことを意図する。
好ましい金属ベース材料として、アルミニウム、亜鉛、スズ、銅、銅合金(例えば青銅又は黄銅)、鉄、鋼(任意にステンレスでよい)、亜鉛メッキ鋼又は銀が挙げられ、非常に特に好ましくはアルミニウム、鋼(しばしばステンレス)、及び亜鉛メッキ鋼である。 ポリマー表面として、ポリ(エチレンテレフタレート)、二配向性(bioriented)ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリアミド及びEVA(エチレンと、部分的に加水分解した酢酸ビニルとのコポリマー)が挙げられる。
【0019】
本発明の別の主題は本発明の水性分散系を用いる上記表面のコーティング方法である。 この目的のため、本発明は、本発明の水性分散系を用いる、金属又はポリマー表面、好ましくは金属表面のコーティング方法であって、該水性分散系を前記表面上にコーティングすることによる方法に関する。
水性分散系は、有利にはいずれの通常のコーティング又はスプレーコーティング法によっても、又は水性分散系中における表面の浸漬によって前記表面上に有利にコーティングされる。コーティング段階の後、好ましくは水の蒸発段階が続く。
【0020】
本発明の水性分散系には多くの利点がある。従って、水性分散系は、表面、特に金属表面へのポリマーコーティングの接着を改善することができる。さらに、本発明の水性分散系は、その構造のみならず、その合成法においても単純なので、塩化ビニリデンベースコポリマー又はブロック型コポリマーに反して全体的に許容しうるコストを有するコポリマーに頼るという大きな利点を示す。
従って、本発明の水性分散系は、水相中の耐食被覆剤及びペンキの分野で有利だろう。
ペンキは流動製剤(液状、糊状又は粉状)であり、支持体上に薄層でコーティング後、薄い膜、不透明かつ接着性の保護及び/又は装飾を与える。希釈のため水を使用する場合、水相中のペンキを意味する。
溶媒(有機溶媒)ベースのペンキに比し、水相中のペンキは、揮発性有機化合物の使用率を減じ、ひいては最近有効な欧州法規に従うという利点を示す。
本発明の水性分散系について定義したような少なくとも1つのポリマー(P1)及び少なくとも1つのコポリマー(C1)を含む、溶媒ベースのペンキに比し、本発明の水性分散系が、内因的にその成分の有機溶媒中より良くない均一性によって特徴づけられるとしても、本発明の水性分散系は、予想外に、表面、特に金属表面へのポリマーコーティングの非常に良い接着をもたらす。
【実施例】
【0021】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するが、本発明の範囲を制限しない。
〔接着試験〕
ISO規格2409から導かれるプロトコルに準拠して接着試験を行った。周囲温度及び湿度条件下で試験を行った。
100ミクロンの穴を有するアプリケーターを用いて水性分散系を沈着させて金属表面上に膜を形成した。金属表面は接着試験用の標準化鋼板である(Qパネルと称する)。引き続き、膜を周囲温度(PVDCの膜形成温度より高い)で乾燥させる間に水が蒸発した。
得られた膜を、該規格で推奨されるとおりに、均一な格子パターンを形成する切り込みを得るように1mm間隔で6枚の刃を含む標準化カッターを用いて切り込んだ。1片の標準化接着剤(幅25mm,接着力10N+/-1)を切断面に適用し、手で接着剤を引き剥がした後、コーティングを軟らかいブラシで塗り、塩化ビニリデンポリマーコーティングの外観を検査して接着の質を評価した。切り込みに沿ったポリマー膜中の光沢のある領域(数、大きさ)の存在のため、接着の質を数量化できる。
接着を0〜5の尺度で評定した;値0は完全な接着に相当し(切り込みに沿って光沢のある領域が完全に存在しない)、値5はゼロ接着に相当する(切り込まれた部分は、実に周辺のコーティングでさえ、完全に引き剥がされている)。
【0022】
〔実施例1(本発明に従う)−-P(O)(OH)(OCH3)官能基を有するモノマー(M1)由来の4質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.625gのホモポリスチレン種、0.004gのDowfax(登録商標)2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び29.4gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
10分間(t0+10)の反応後、28gの水中22gのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OCH3)に相当する1gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを3時間にわたって滴加した。
このようにして得られた水性分散系は、23.8%の固体レベルと、165nmの個々のポリマー粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0023】
〔実施例2(本発明に従う)−-P(O)(OH)(OCH3)官能基を有するモノマー(M1)由来の8質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.625gのホモポリスチレン種、0.004gのDowfax 2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び29.4gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
10分間(t0+10)の反応後、28gの水中21gのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OCH3)に相当する2gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを3時間にわたって滴加した。
このようにして得られた水性分散系は、22.6%の固体レベルと、190nmの個々のポリマー粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0024】
〔実施例3(本発明に従う)−-P(O)(OH)(OCH3)官能基を有するモノマー(M1)由来の12質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.625gのホモポリスチレン種、0.004gのDowfax 2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び29.4gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
10分間(t0+10)の反応後、28gの水中20gのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OCH3)に相当する3gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを2時間にわたって滴加した。
このようにして得られた水性分散系は、22.6%の固体レベルと、200nmの個々のポリマー粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0025】
〔実施例4(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の4質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.625gのホモポリスチレン種、0.004gのDowfax 2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び29.4gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
10分間(t0+10)の反応後、28gの水中22gのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)2に相当する1gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを2時間にわたって滴加した。
このようにして得られた水性分散系は、23%の固体レベルと、160nmの個々のポリマー粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0026】
実施例5(比較)−塩化ビニリデンポリマー(P1)を含むが、コポリマー(C1)を含まない水性分散系の、金属表面のコーティングにおける使用〕
スロットアプリケーターを用いて市販の塩化ビニリデンポリマーDiofan(登録商標)A602の水性分散系を金属支持体上に沈着させた。特に熱処理せずに水性分散系を周囲温度で乾燥させた。分散系の低い膜形成温度のため、透明の粘着膜が得られる。
上記に従って乾燥3時間後と24時間後に行った接着試験から、塩化ビニリデンポリマーは全く金属支持体に接着しなかった(接着>5)ことが分かる(下表I参照)。切断表面は完全に接着剤によって周辺部分さえ除去された。
乾燥48時間後に行った同じ試験は、接着にわずかな改善を示した(切断領域だけが除去された)。
【0027】
〔実施例6〜11(本発明に従う)−塩化ビニリデンポリマー(P1)と、-P(O)(OH)(OCH3)官能基を有するモノマー(M1)由来の4、8又は12質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)とを含む水性分散系の調製並びにその金属表面のコーティングにおける使用〕
実施例5で用いた塩化ビニリデンポリマーを含む水性分散系を、
a)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が水性分散系中のポリマーの総質量に対して5、10、20及び30質量%であるように、実施例1で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例6〜9)と、
b)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が水性分散系中のポリマーの総質量に対して5質量%であるように、実施例2で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例10)と、及び
c)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が水性分散系中のポリマーの総質量に対して5質量%であるように実施例3で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例11)と
混合した。
得られた水性分散系を実施例5で述べたとおりに金属支持体上に沈着させた。
上記に従って、乾燥3、24及び48時間後の接着試験の遂行中に観察された結果を下表Iに示す。
【0028】
〔実施例12(本発明に従う)−塩化ビニリデンポリマー(P1)と、-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の4質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)とを含む水性分散系の調製並びにその金属表面のコーティングにおける使用〕
実施例5で用いた塩化ビニリデンポリマーを含む水性分散系を、最終分散系中のコポリマー(C1)の%が水性分散系中のポリマーの総質量に対して5質量%であるように、実施例4で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系と混合した。
得られた水性分散系を実施例5で述べたとおりに金属支持体上に沈着させた。
上記に従って、乾燥3、24及び48時間後の接着試験の遂行中に観察された結果を下表Iに示す。
【0029】







表I

【0030】
表Iに示される結果から、金属表面への塩化ビニリデンポリマーの接着の有意な改善は、本発明の水性分散系中に存在するコポリマー(C1)において、それがP(O)(OH)(OCH3)又は-P(O)(OH)2官能基のいずれを有していても観察された(時間の関数としての接着の好ましい変化、48時間後に特に有利な結果)。
【0031】
〔実施例13(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の11質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
23gの脱塩水、1.76gの水酸化ナトリウムNaOH、1.7gのDisponil(登録商標)FES 32界面活性剤、12gのメタクリル酸メチル、11gのアクリル酸ブチル及び式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)2に相当する3gのモノマーから撹拌しながら丸底フラスコでプレエマルジョンを調製した。
0.82gのDisponil FES 32界面活性剤、10%のプレエマルジョン及び15gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから1.25mlの過硫酸アンモニウム溶液(26g/l)を導入した。
15分間(t0+15)の反応後、40%のプレエマルジョンを45分間にわたって滴加した。
t0+1hに、1.75mlの26g/lの過硫酸アンモニウム溶液を2時間かけて一滴ずつ導入した。
t0+3hに、残りの50%のプレエマルジョンを45分間かけて一滴ずつ導入した。
4時間の反応の最後に、さらに2時間、温度を85℃に上げた。
このようにして得られた水性分散系は、25.2%の固体レベルと80nmの個々のポリマーの粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0032】
〔実施例14(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の16質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.004gのDowfax 2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び30gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
15分間(t0+15)の反応後、28gの水中の20gのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)2に相当する4gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを1時間20分にわたって滴加した。
t0+1h40に、0.25mlの125g/lの過硫酸アンモニウム溶液を導入してから再びt0+2h20及びt0+2h40に導入した。
t0+2h15に、2.5mlの50g/lのDowfax溶液を導入した。
このようにして得られた水性分散系は、22.2%の固体レベルと220nmの個々のポリマーの粒径によって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0033】
実施例15(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1')由来の23.6質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
a)重合
50質量%のトルエン、0.0366モルのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OCH3)2に相当する0.0045モルのモノマー及び0.00041モルのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら反応器に導入した。引き続き媒体を14時間70℃とした。その後、非溶媒を添加してポリマーを沈殿させた。
得られたポリマーは19,000g.モル-1の数平均分子量Mn及び1.96の多分散指数Ip(数平均分子量に対する重量平均分子量の比率)で特徴づけられた。Watersポンプ2×300mmのPL-Gel 5μmの混合-Cカラム(Polymer Laboratories)を備えたシステムの乾燥サンプルについての立体排除クロマトグラフィーによって数平均分子量と多分散指数Ipを決定した。溶出液としてテトラヒドロフラン(1ml.分-1)を用いた。Polymer Laboratoriesに由来するポリスチレン標準物質を用いてキャリブレーションを行った。
ポリマーを乾燥後、ポリマーを再びジクロロメタンに溶かして周囲温度で12時間ブロモトリメチルシランの作用に供し、かつメタノールの作用に供して-PO(OCH3)2基を切断(加水分解)して-PO(OH)2基を得た。
b)乳化
段階a)で得られたポリマー6gをドデシルベンゼンスルホン酸の存在下で70mlのクロロホルムに溶かした。引き続きこの溶液に、予め0.09gのアニオン性乳化剤(アルキルスルホネート)を溶かした140mlの水を加えた。混ぜ合わせた混合物を20,500回転/分で30分間乳化させてから真空下でクロロホルムを蒸発させると、水性分散系の形態のコポリマー(C1)を得ることができる(固体レベル6.3%及び個々のポリマーの粒径200nm)。
【0034】
〔実施例16(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1')由来の19質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
a)重合
50質量%のメチルエチルケトン、0.25モルのメタクリル酸メチル、式CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OCH3)に相当する0.0335モルのモノマー及び0.00278モルのAIBNを、窒素雰囲気下で撹拌しながら反応器に導入した。媒体を14時間70℃とした。引き続き、非溶媒を添加してポリマーを沈殿させた。
得られたポリマーは21,200g.モル-1の数平均分子量Mn及び2.2の多分散指数Ipを有する。
ポリマーを乾燥後、ポリマーを再びジクロロメタンに溶かして周囲温度で12時間ブロモトリメチルシランの作用に供してからメタノールの作用に供して-PO(OCH3)2基を切断(加水分解)して-PO(OH)2基を得た。
b)乳化
6gのポリマーをドデシルベンゼンスルホン酸の存在下で70mlのクロロホルムに溶かした。引き続きこの溶液に、予め0.09gのアニオン性乳化剤(アルキルスルホネート)を溶かした140mlの水を加えた。混ぜ合わせた混合物を20,500回転/分で30分間乳化させてから真空下でクロロホルムを蒸発させると、水性分散系の形態のコポリマー(C1)を得ることができる(固体レベル6.3%及び個々のポリマーの粒径200nm)。
【0035】
〔実施例17〜20(本発明に従う)−塩化ビニリデンポリマー(P1)と、-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)又はモノマー(M1')由来の10又は12.8質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)とを含む水性分散系の調製並びにその金属表面のコーティングにおける使用〕
実施例5で用いた塩化ビニリデンポリマーを含む水性分散系を、
a)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が該分散系中のポリマーの総質量に対して10質量%であるように、実施例13で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例17)(この混合前に、塩酸溶液(0.1モル/l)を添加してコポリマー(C1)の水性分散系のpHを酸性にした)と、
b)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が該分散系中のポリマーの総質量に対して12.8質量%であるように、実施例14で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例18)と、
c)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が該分散系中のポリマーの総質量に対して10質量%であるように、実施例15で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例19)と、及び
d)最終分散系中のコポリマー(C1)の%が該分散系中のポリマーの総質量に対して10質量%であるように、実施例16で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例20)と
混合した。
得られた水性分散系を実施例5で述べたとおりに金属支持体上に沈着させた。
上記に従って、乾燥3、24及び48時間後の接着試験の遂行中に観察された結果を下表IIに示す。
【0036】
表II

【0037】
〔実施例21(本発明に従う)−-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の4質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)の水性分散系の調製〕
0.625gのホモポリスチレン種、0.004gのDowfax 2A1界面活性剤、2gのメタクリル酸メチル及び29.4gの脱塩水を、作業容積0.25リットルを有し、撹拌してその中に窒素を通して泡立てるガラス反応器に導入した。温度を80℃にしてから0.125gの過硫酸アンモニウムを導入した。
10分間(t0+10)の反応後、28gの水中22gのメタクリル酸メチル、式CH2=CH-PO(OH)2に相当する1gのモノマー及び0.375gのDowfax 2A1界面活性剤のプレエマルジョンを2時間にわたって滴加した。
得られた水性分散系は、24.7%の固体レベルによって特徴づけられる。
得られた分散系を他に精製せずに使用した。
【0038】
〔実施例22〜24(本発明に従う)−塩化ビニリデンポリマー(P1)と、-P(O)(OH)2官能基を有するモノマー(M1)由来の4質量%のモノマー単位(m1)で構成されるコポリマー(C1)とを含む水性分散系の調製並びにその金属表面のコーティングにおける使用〕
実施例5で用いた塩化ビニリデンポリマーを含む水性分散系を、最終分散系中のコポリマー(C1)の%が該分散系中のポリマーの総質量に対して5、10及び20質量%であるように、実施例21で調製したコポリマー(C1)を含む水性分散系(実施例22〜24)と混合した。
得られた水性分散系を実施例5で述べたとおりに金属支持体上に沈着させた。
上記に従って、乾燥3及び72時間後の接着試験の遂行中に観察された結果を下表IIIに示す。
【0039】






表III


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含むことを特徴とする水性分散系:
1)少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)、及び
2)下記成分を含む少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1):
a)少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)を有する少なくとも1つのモノマー単位(m1)、及び
b)スチレン、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来の、前記コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当するモノマー単位(m2):
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基、-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基及び全部で2〜10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基から選択される)から選択され、かつ最後にR4は-NR6R7基からも選択され、R6及びR7は同一又は異なり、水素及び任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)。
【請求項2】
ちょうど1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)と、ちょうど1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の水性分散系。
【請求項3】
前記塩化ビニリデンポリマー(P1)が、水性エマルジョンラジカル重合法で調製されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性分散系。
【請求項4】
少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有する前記モノマー単位(m1)が、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性分散系:
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CR14-CO-O-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)i-O-CO-(CH2)10-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
CH2=CR14-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2(R14は水素原子又はメチル基)、
CH2=CR14-C6H4-C(CH3)2-NH-CO-O-(CH2)i-PO(OH)(OR1)(R14は水素原子又はメチル基、iは1〜20)、
オルトとパラの混合である芳香核の置換を含むCH2=CH-C6H4-CH2-PO(OH)(OR1)、
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一又は異なり、1〜11個の炭素原子を含むアルキル基を表し、すべて又は一部の切断(特に半加水分解)後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1〜11個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
【請求項5】
少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有する前記モノマー単位(m1)が、以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性分散系:
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-(CH2)5-N(CH2-PO(OH)(OR1))2
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2'は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1又は2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1')。
【請求項6】
前記コポリマー(C1)の前記モノマー単位(m1)が、前記コポリマー(C1)中のモノマー単位の総質量に対して、少なくとも0.5質量%及び最高50質量%に相当することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性分散系。
【請求項7】
前記コポリマー(C1)が、無水マレイン酸、イタコン酸及び下記一般式に対応する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来の、前記コポリマー(C1)の少なくとも50質量%に相当するモノマー単位(m2)を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散系:
CH2=CR2R3
(式中、R2は水素及びメチル基から選択され、R3は-CN基及び-CO-R4基から選択され、R4は、-OH基及び-O-R5基(R5は、任意に1つ以上の-OH基を有しうる1〜18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基及び2〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキル基から選択される)から選択される)。
【請求項8】
前記コポリマー(C1)の前記モノマー単位(m2)が、前記コポリマー(C1)の最高99.5質量%に相当することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散系。
【請求項9】
前記コポリマー(C1)が下記成分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性分散系:
a)少なくとも1つのホスホネート基-PO(OH)(OR1)を有し、かつ以下のモノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマー(M1)由来の、前記コポリマー(C1)の少なくとも0.5質量%及び最高50質量%の比率のモノマー単位(m1):
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-C(CH3)(OH)-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-NH-CO-O-(CH2)2-PO(OH)(OR1)
CH2=C(CH3)-CO-O-CH2-CH2-N(C-(CH3)3)-CH2-PO(OH)(OR1)
CH2=CH-PO(OH)(OR1)、及び
少なくとも1つの-PO(OR1')(OR2')基(R1'及びR2は同一であり、1又は2個の炭素原子を含むアルキル基を表し、切断後にホスホネート基-PO(OH)(OR1)(R1は水素原子又は1若しくは2個の炭素原子を含むアルキル基)をもたらす)を有する対応モノマー(M1');及び
b)無水マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸及びアクリル酸から選択される少なくとも1つのモノマー(M2)由来の、前記コポリマー(C1)の少なくとも50質量%及び最高99.5質量%の比率のモノマー単位(m2)。
【請求項10】
前記コポリマー(C1)が、水性エマルジョンラジカル重合法又は溶媒中の溶液ラジカル重合法によって調製されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性分散系。
【請求項11】
ポリマー(P1)とコポリマー(C1)の総質量に対して、少なくとも65質量%のポリマー(P1)を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性分散系。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性分散系の製造方法であって、少なくとも1つの塩化ビニリデンポリマー(P1)の水性分散系及び少なくとも1つのランダム、交互又はグラジエントコポリマー(C1)の水性分散系の混合工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性分散系の、金属又はポリマー表面のコーティングにおける使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性分散系を用いる、金属又はポリマー表面のコーティング方法であって、前記表面上に前記水性分散系をコーティングすることによる方法。

【公表番号】特表2009−511654(P2009−511654A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534013(P2008−534013)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067041
【国際公開番号】WO2007/039626
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】