説明

水性塗料の塗装方法

【課題】塗装性に優れながら水性塗料をスプレー塗装することができ、なおかつ、極めて薄い塗膜を形成することができるスプレー塗装による水性塗料の塗装方法を提供する。
【解決手段】無機質造膜剤、アルコール、及び水を含んだ水性塗料をスプレー塗装して基材の表面に無機塗膜を形成する水性塗料の塗装方法であって、水に対する接触角を20°以下にした基材の親水性表面に、アルコールが飽和溶解度の80%以上の量で溶解した水性塗料をスプレー塗装することを特徴とする水性塗料の塗装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水性塗料をスプレー塗装して基材の表面に無機塗膜を形成する水性塗料の塗装方法に関し、特に、基材の表面に極めて薄い塗膜を形成するのに好適な水性塗料の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電車等の車体をはじめ、建築物、家電製品、電子部品等の工業用製品から日用品等の各種家庭用製品に至るまで、耐食性、耐候性、防汚性、意匠性等の機能を付与する目的で塗装が行われている。塗装は、塗膜を形成する造膜剤を含んだ塗料を被塗装物に塗布することによってなされ、塗料を塗布する際にはスプレー塗装、ロールコート、ディップコート、刷毛塗り、スピンコート等の手段が一般的に用いられる。このうち、スプレー塗装は、塗装ガン等を用いて塗料を吹き付けて行うため、平らな面だけではなく曲面を有した塗装面に対しても均一に塗膜を形成することができる。ロールコートは、塗膜の表面の仕上がり状態がより平坦性に優れ、かつ、必要な塗膜の厚みの制御が比較的容易であるといった利点を有する。これらの塗料を塗布する際の手段については、被塗装物の形状や形成する塗膜に求められる機能、用途等に応じて使い分けられる。
【0003】
一方、塗料については、近年の地球環境問題への意識の高まりや、作業環境下における安全性の観点から、溶媒として主に水を使用した水性塗料が注目されている。この水性塗料は、被塗装物に付着しなかった塗料を水性溶剤で回収して再利用することも可能であることから、省資源化の面からも有利である。しかしながら、一般的に、水性塗料は有機溶剤系塗料と比べて塗装性に劣る点で問題があるとされ、いわゆる液だれや塗膜表面の肌不良といった問題や、被塗装物が水性塗料をはじいてしまうといった現象も起こり易い。
【0004】
これらのような水性塗料の塗装性については、塗料自体の問題と共に塗料を塗布する環境も大きく影響するものと考えられる。そこで、例えば特開2001−172574号公報(特許文献1)では、水性塗料の表面張力を所定値以下にせしめると共に被塗装物である金属表面に存在する水の量を低減させて、所定の温度及び相対湿度からなる環境下で塗布する水性塗料の塗装方法が提案されている。また、特開2002−233812号公報(特許文献2)では、水性塗料をスプレー塗装する際、スプレー塗装に使用される塗装ガンの温度を制御して、スプレー塗装時の周辺条件(温度及び湿度)に応じて塗料温度を最適化させて行う塗装方法が提案されている。
【0005】
ところで、塗料を塗布して形成される塗膜については、塗膜に求められる性能を満足できる範囲で可及的に薄くすることが要求される場合がある。例えば光学的干渉作用による製品の外観変化や色むら等を防ぐために塗膜の薄膜化が要求され、なかには100nm以下の極めて薄い塗膜の形成が求められることもある。また、防汚性を付与する目的で塗膜に酸化チタンに代表される光触媒活性を有する金属化合物(光触媒)を含める場合、光触媒による作用は少なくとも塗膜の表面において発現すればよいことから、製造コストの低減と併せて塗膜の薄膜化が求められる。塗膜を薄くするためには塗料の塗布量を減らすことが考えられるが、塗布量が少なくなると液膜中に気泡が巻き込まれてしまったり、被塗装物である基材の表面に均一な塗膜が形成されなくなるおそれがあって、塗布量を減らすことには限界がある。一方では、塗料に含まれる造膜剤等の固形分の量を減らすことで得られる塗膜の厚みを薄くすることも考えられるが、粘度の低い塗料では液だれが生じ易くなってしまう。これらの問題は、特に溶媒の主成分が水である水性塗料をスプレー塗装する場合に顕著であり、これまで水性塗料を用いたスプレー塗装によって薄い塗膜を形成させることについては十分に検討されていない。
【特許文献1】特開2001−172574号公報
【特許文献2】特開2002−233812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、曲面や複雑な形状を有した基材や既設の基材の表面であっても塗装が可能であるなどの利点を有するスプレー塗装によって水性塗料を塗布する方法において、水性塗料が抱える塗装性の問題を解決すると共に、極めて薄い塗膜を形成することができる塗装方法について鋭意検討を行った。その結果、驚くべくことには、所定の接触角を有する基材の表面に飽和溶解度に近い量のアルコールを含んだ水性塗料を塗布すると、水性塗料が極めて良好にぬれ拡がり、界面化学における「拡張ぬれ」では全てを説明できないような現象を発現するという知見を得た。そして、この現象を利用することによって、水性塗料における従来の塗装性の問題を解決しながら、塗膜の薄膜化が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って、本発明の目的は、塗装性に優れながら水性塗料をスプレー塗装することができ、なおかつ、極めて薄い塗膜を形成することができるスプレー塗装による水性塗料の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、無機質造膜剤、アルコール、及び水を含んだ水性塗料をスプレー塗装して基材の表面に無機塗膜を形成する水性塗料の塗装方法であって、水に対する接触角を20°以下にした基材の親水性表面に、アルコールが飽和溶解度の80%以上の量で溶解した水性塗料をスプレー塗装する水性塗料の塗装方法である。
【0009】
本発明の塗装方法において、基材とは、塗膜を形成する塗装の対象となるものであればよく、その材質や形状、大きさ等については特に制限はない。一例を挙げるとすれば、自動車、電車、航空機等の車体、家電製品、電機・電子製品等の工業製品、各種家庭用製品、ビル、建物、道路標識等の建築・建造物をはじめ、鋼鉄材、アルミニウム材、半導体基板、ガラス基板、回路基板、フレキシブルプリント基板等の材料や部材をその対象とすることができる。
【0010】
また、スプレー塗装とは、一般に、液滴ないし液体を噴霧ないし噴水して行う塗装方法であるが、本発明においては、上記液滴が1滴からなる場合についてもスプレー塗装として含めるものとする。スプレー塗装に用いる装置(用具)については特に制限はなく、通常用いられるものを使用することができる。
【0011】
本発明において、水性塗料については、アルコールが飽和溶解度の80%以上、好ましくは90%以上の量で溶解して含まれている必要がある。水性塗料が上記のようにアルコールを溶解した状態で含有すると、基材の親水性表面に塗布した際に水性塗料が極めて良好にぬれ拡がる現象を発現し、基材の表面に極めて薄い塗膜を形成することができる。アルコールの含有量が溶解度の80%未満の量であると、基材の表面で水性塗料が塗れ拡がる現象が発現し難くなり、基材の表面に水性塗料を塗布した際に水性塗料がはじかれて液膜が形成されなかったり、液膜が形成されたとしても液だれやムラを生じて塗装性が不十分になるおそれがある。なお、アルコールの含有量の上限については、水性塗料に対する飽和濃度(飽和溶解度の100%)とするのがよい。
【0012】
上記アルコールについては、水に可溶であって、かつ、水に対する有限な飽和溶解度を持つもの、すなわち所定の温度において水に対する飽和濃度を有するものであればよく、例えばn-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、及び2-メチル-1-ブタノール等の1価のアルコールを挙げることができる。
【0013】
水性塗料に含まれるアルコールの量を決めるに際しては、具体的には次のようにすればよい。例えば20℃の環境下で水性塗料を塗布する場合、n-ブチルアルコールの20℃における水に対する飽和溶解度は6.4wt%であるため、この値を基準にして上記範囲となるように水性塗料に含まれるアルコールの量を決めればよい。また、無機質造膜剤をはじめ水性塗料に含まれる他の成分がアルコールの溶解度に影響を及ぼす場合には、実際に水性塗料に対するそのアルコールの溶解度を確認して、アルコールの量を決めるようにすればよい。なお、水性塗料に溶解するアルコールは2種以上であってもよいが、その場合には、少なくとも1種のアルコールがその飽和溶解度の80%以上の量で溶解していればよい。
【0014】
ところで、水に対する有限な飽和溶解度を持たないアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の1価のアルコールであっても本発明と同様の効果を奏することができる。このようなアルコールを使用する場合、水性塗料における水100重量部に対して5重量部以上、好ましくは5〜20重量部の割合で水性塗料に溶解しているのがよい。5重量部以上含まれていれば基材の親水性表面に水性塗料を塗布した際に極めて良好にぬれ拡がる現象が発現する。多量に添加した場合には、その効果が飽和すると共に、水性塗料の固形分が変質したり凝集したりするおそれがあるため、その上限は20重量部とするのがよい。なお、水に対する有限な飽和溶解度を持たないアルコールは2種以上溶解されていてもよいが、その場合には、少なくとも1種のアルコールが水100重量部に対して上記範囲で溶解していればよい。
【0015】
本発明において、水性塗料に含まれる水については、塗料としての取扱い性等に応じて適宜調製すればよいが、アルコール添加後の水性塗料における固形分率を0.1〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%となるように水性塗料中の水分量を調整するのがよい。固形分率が5wt%を超えるとスプレー塗装によって薄い塗膜を形成させることが困難になり、反対に0.1wt%未満では正常な塗膜を形成できないおそれがある。なお、無機質造膜剤や下記で説明する添加剤が水に可溶のアルコールとの混合物としての原料で供給される場合には、これらの原料中に含まれるアルコールはそのまま水性塗料中に溶解した状態で含まれるアルコールとみなす。
【0016】
また、本発明における無機質造膜剤については、水性塗料を基材の表面に塗布して無機塗膜を形成でき、塗料へのアルコールの添加によって凝集や変質等を生じないものであればよい。このような無機質造膜剤としては、例えばリン酸塩系造膜剤、アルカリ金属ケイ酸塩系造膜剤、コロイドゾル系造膜剤等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明において、水性塗料には、得られる塗膜の用途や付与せしめる機能等に応じて、酸化チタンや酸化亜鉛といった光触媒材料、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、チタンイエロー等の無機顔料を添加剤として添加することができる。この必要に応じて添加される添加剤と無機質造膜剤とは、それぞれ固形分に相当するため、水性塗料中に含まれる合計量(添加剤を含まない場合は無機質造膜剤のみの量)については、上述した固形分率(0.1〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%)となるようにするのがよい。この範囲内で、得られる塗膜の機能、用途、目的等に応じて、無機質造膜剤の含有量と添加剤の含有量とを適宜調整するのがよい。
【0018】
また、本発明においては、水性塗料を塗布する基材の表面を水に対する接触角が20°以下、好ましくは15°以下の親水性表面にする。上記水性塗料をこのような接触角を有する基材の親水性表面に塗布することで、水性塗料が極めて良好にぬれ拡がる現象を発現する。一般に、液体を固体の上に滴下した場合、液体の表面張力が小さくなるほど固体表面上での液体の広がりは大きくなり、この現象は界面化学において液体の表面張力、固体の表面張力、液体固体間の界面張力、及びこれらの関係を用いて説明される。ところが、本発明においては、所定の接触角を有する基材の親水性表面に水性塗料を塗布した際に生じる濡れ広がり現象は、この「液体の表面張力、固体の表面張力、液体固体間の界面張力、及びこれらの関係」を用いて説明することができない。すなわち、上記基材の親水性表面にアルコールが飽和溶解度の80%以上の量で溶解した水性塗料を塗布した場合の水性塗料のぬれ拡がりは、水より表面張力の小さいアルコール100wt%を塗布した場合の拡がりよりも大きくなる。そこで、本発明においては、このような現象を利用し、塗料性を良好に保ったまま基材の親水性表面に極めて薄い塗膜を形成する。基材の表面の水の接触角が20°より大きい場合には水性塗料の塗れ拡がりの程度が劣り、場合によっては水性塗料がはじかれて液膜が形成されなかったり、或いは液膜が形成されたとしても液だれやムラを生じて塗装性が不十分になるおそれがある。
【0019】
基材に上記のような親水性表面を付与する手段については特に制限されず、一般的な親水性処理方法を採用することができるが、処理の簡便さやコスト性の観点から、好ましくはケイ素酸化物に由来の親水性表面を形成するのがよい。ケイ素酸化物に由来の親水性表面を形成する方法としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩を含有する脱脂剤で基材を表面処理して親水性表面を形成する方法や、アルコキシシラン縮合物又はその加水分解物と珪素酸化物とを含有する下地塗料を基材に塗布することで、親水性表面を備えた下地塗膜層を基材に形成する方法等を挙げることができる。なお、基材の表面が予め接触角20°以下の親水性表面を備えている場合には、直接水性塗料を塗布してもよく、また、基材の最表面が親水性表面を有したものであれば、基材に対して通常行われる処理、例えばプレコート処理やエッチング処理等が別途施されたものであってもよい。
【0020】
アルコキシシラン縮合物又はその加水分解物と珪素酸化物とを含有する下地塗料を基材に塗布して下地塗膜層を形成する場合には、少なくとも下地塗料の塗装を終了した時点から、得られた下地塗膜層に水性塗料の塗装を開始する時点までの間を相対湿度60%以下、好ましくは相対湿度50%以下の環境に維持するようにするのがよい。上記のように基材に下地塗料を塗布した後から水性塗料を塗布するまでの間が相対湿度60%を超えた環境に晒されると、水性塗料を塗布して無機塗膜を形成しようとした際に液膜の形成が不十分となったり、あるいは液膜が形成されたとしても液だれやムラを生じて塗装性が不十分になるおそれがある。
【0021】
基材の親水性表面に塗布した水性塗料については、無機質造膜剤の最適硬化条件に沿ってその乾燥温度、相対湿度、乾燥時間等を決定すればよい。また、本発明によって得られた無機塗膜に対しては、必要に応じて別途塗膜を塗り重ねるような処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0022】
水に対する接触角を20°以下にした基材の親水性表面に、アルコールが飽和溶解度の80%以上の量で溶解した水性塗料をスプレー塗装することによって、基材の表面で水性塗料が極めて良好にぬれ拡がる現象を発現するため、液だれやムラ等の問題を生じることなく塗装性を優れた状態にしながら、極めて薄い塗膜を形成することが可能となる。具体的には、本発明によれば、基材の表面に単位面積当たり塗膜重量0.5g/m2以下の無機塗膜を形成することが可能であり、例えば光触媒材料を含んだ水性塗料を極めて薄い塗膜に仕上げることができる。また、塗膜の薄膜化によって基材の色調や質感をそのまま活かすことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
【0024】
[水性塗料の調製]
アルカリ金属ケイ酸塩系造膜剤を含む市販の無機塗料(昭和ゴム社製商品名MS-92)3.3gに水、及びn-ブチルアルコールを加えて表1に示す水性塗料を調製した。この無機塗料は、無機質造膜剤(固形分)が20wt%であって残部は水であり、この水と別途添加した水との合計量が表中に示された値である。また、n-ブチルアルコールの水に対する飽和溶解度は20℃において6.4wt%であるため、上記水性塗料におけるn-ブチルアルコールの飽和溶解度(飽和濃度)に相当する量は(100−3.3×0.2)×0.064≒6.4gであり、この量(6.4g)に対して実際に加えられたn-ブチルアルコールの量の割合を「飽和溶解度に対するアルコール添加割合(%)」とした。
【0025】
【表1】

【0026】
[実施例1、2及び比較例1〜3]
基材として100mm×150mm×厚さ0.2mmのアルミニウム板(JIS A1100P)を用意し、60℃のケイ酸塩を含む脱脂剤(日本ペイント社製商品名サーフクリーナ155)2%溶液中に上記基材を1分間浸漬した後、水洗処理を施し、その後基材を常温にて乾燥させた。得られた基材の表面には水に対する接触角が5°の親水性表面が形成された。尚、接触角の測定には協和界面科学株式会社製 固液界面解析システム Drop Master 700を用い、20℃、60%RHの条件で測定を行った(以降の実施例等でも同様)。
【0027】
次いで、上記で得られた基材の表面に対し、表1に示した水性塗料を、アネスト岩田株式会社製 低圧スプレーガンLPH-100-LVGを用いて単位面積当たり3g/m2の塗布量となるようにスプレー塗装し、室温(15〜25℃)にて24時間乾燥燥させ、表1に示す塗膜重量(0.02g/m2)の無機塗膜を形成させた。この際、スプレー塗装性(はじき等を発生することなく、液膜が形成できているかどうか)と成膜性(得られた塗膜の状態が良好かどうか)をそれぞれ目視にて確認し、○:いずれも良好な場合、×:少なくともいずれか一方が良好ではない場合、の2段階で総合評価した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
[実施例3〜6、及び比較例4、5]
基材として、予め前処理としてポリエステルプレコートが施された100mm×150mm×厚さ0.2mmのアルミニウム合金板(JIS A5052P)を用意した。また、アルコキシシラン縮合物又はその加水分解物としてコルコート社製商品名コルコートN-103Xを100重量部、ケイ素酸化物として日産化学工業社製商品名IPA-STを3重量部用意し、これらを混合して下地塗料を調製した。そして、上記基材の表面にこの下地塗料を塗布し、この基材を空調機器によって湿度制御された室内に入れ、水性塗料を塗布するまでの間を表1中に示した相対湿度となるようにした保持した。この時点で基材の表面における水の接触角がそれぞれ表1に示す値となるようにした。尚、実施例3及び4と実施例5及び6とにおいて基材の水に対する接触角に違いが生じた理由は、保管中の相対湿度の差によるものと推定される。
【0030】
次いで、上記で得られた基材の表面に対し、表1に示した水性塗料を、前出の低圧スプレーガンLPH-100-LVGを用いて単位面積当たり3g/m2の塗布量となるようにスプレー塗装し、室温(15〜25℃)にて24時間乾燥燥させ、表1に示す塗膜重量(0.02g/m2)の無機塗膜を得た。この際の塗装性等の評価については、[実施例1、2及び比較例1〜3]の場合と同様にして行った。結果を表2に示す。
【0031】
[比較例6〜10]
[実施例1、2及び比較例1〜3]と同じ基材を用意し、ケイ酸塩を含んだ脱脂剤による表面処理を行わずに、表1に示した水性塗料を、前出の低圧スプレーガンLPH-100-LVGを用いて単位面積当たり3g/m2の塗布量となるようにスプレー塗装し、室温(15〜25℃)にて24時間乾燥燥させ、表1に示す塗膜重量(0.02g/m2)の無機塗膜を得た。塗装性等の評価については[実施例1、2及び比較例1〜3]の場合と同様にして行った。結果を表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明における水性塗料の塗装方法は、自動車、電車、航空機等の車体、家電製品、電機・電子製品等の工業製品や、ビル、建物、道路標識等の建築・建造物をはじめ、鉄鋼材やアルミニウム材から、回路基板、半導体基板、フレキシブルプリント基板等の半導体材料等の電子材料に至るまで、耐食性、耐候性、防汚性、意匠性等の機能を付与する目的で塗装が求められる種々の基材に対して適用することができる。特に、光触媒や防汚塗料を使用して防汚性を付与する場合など、薄い塗膜にてその機能を発現させる場合において、好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質造膜剤、アルコール、及び水を含んだ水性塗料をスプレー塗装して基材の表面に無機塗膜を形成する水性塗料の塗装方法であって、水に対する接触角を20°以下にした基材の親水性表面に、アルコールが飽和溶解度の80%以上の量で溶解した水性塗料をスプレー塗装することを特徴とする水性塗料の塗装方法。
【請求項2】
アルコールが、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、及び2-メチル-1-ブタノールから選ばれたいずれかである請求項1に記載の水性塗料の塗装方法。
【請求項3】
アルコキシシラン縮合物又はその加水分解物と珪素酸化物とを含んだ下地塗料を基材に塗布して、親水性表面を備えた下地塗膜層を基材に形成する請求項1又は2に記載の水性塗料の塗装方法。
【請求項4】
少なくとも基材に下地塗料を塗布した後から水性塗料を塗布するまでの間を相対湿度60%以下の環境に維持する請求項3に記載の水性塗料の塗装方法。

【公開番号】特開2008−672(P2008−672A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172122(P2006−172122)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】