説明

水性塗料組成物及びその塗装物品

【課題】本発明が解決しようとする課題は、既存の水性塗料の問題点である各種の要求性能、防食性、耐水性、初期乾燥性を十分に満足し、さらに素地密着性、平滑性、上塗り適正、塗装作業性にも優れる水性塗料組成物及びその塗装物品を提供することである。
【解決手段】
エポキシ樹脂に有機酸を反応させ、さらにビニル変性させて得られる、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)100重量部、オキサゾリン基含有樹脂(B)5〜40重量部からなることを特徴とする水性塗料組成物により上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に防食性、耐水性、初期乾燥性に優れる水性塗料組成物及びその塗装物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界的に地球環境の保全が叫ばれ、大気汚染防止を含め需要になってきている中、環境省が「大気汚染防止法」の改正によりVOC排出規制を行うこととなった。VOC排出規制がなされると、塗装設備の排出口での排出濃度の制限が義務化されることから、塗料の水性化や環境配慮形塗料が求められている。
【0003】
塗料の水性化は、既に行われているが、耐水性、防食性、初期乾燥性、VOC排出規制を満たしていない。上記の問題点を解決するために提案された従来技術としては、下記が挙げられるがいずれもいまだ不十分である。これらの問題点を解決するために、例えば、特許文献1においてはビスフェノール型エポキシ樹脂と脂肪酸のエステルの存在下でアクリル単量体を重合させて得られた水希釈可能なアクリル変性エポキシエステル樹脂がある。耐水性、耐食性は良好であるが、乾燥が遅いといった欠点があった。また、特許文献2記載の樹脂では、アニオン系、ノニオン系の乳化剤を使用し、水希釈性改良の試みがなされているが、乳化剤が表面に局在化しやすくなるため耐水性が低下するといった欠点があった。特許文献3記載の塗料組成物では、エポキシエステルに多塩基酸又はそれらの酸無水物を反応させた後、アクリル変性しているため耐食性に優れるものの塗料安定性、乾燥性が悪いとった欠点を持っていた。
【0004】
乾燥性を改良するために、アクリル変性エポキシエステル樹脂のエポキシ樹脂を高分子量化し、Tgを上げ乾燥性を上げようとすると、塗膜の柔軟性がなくなり基材との密着性が低下し耐食性、耐水性が低下する。また、造膜しにくくなるという問題を生じる。さらに、エポキシ樹脂にアミンを変性し、アクリルモノマーを反応させ水性化した水分散型アクリル変性エポキシエステル樹脂では、耐食性、耐水性を低下させずある程度の乾燥性を向上させることができるが、いまだ乾燥性は不十分であった。一方アクリルエマルションをブレンドすることにより乾燥性は、向上するが、耐食性の低下や樹脂安定性に問題があった。またメラミン樹脂を添加することにより乾燥性は向上するが、この場合ホルムアルデヒドが塗膜より発生する問題があった。また特許文献4記載の樹脂では、ポリエステル、ポリウレタン等にオキサゾリン基含有樹脂を添加することにより、乾燥性や耐水性が向上するが、防食性が充分でない問題があった。以上のように塗料の乾燥が早く、また、耐水性及び防食性に優れた塗料は、いまだないといった状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−6726号公報
【特許文献2】特公昭54−30249号公報
【特許文献3】特許第3000487号公報
【特許文献4】特公平6−39548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の水性塗料の問題点である各種の要求性能、防食性、耐水性、初期乾燥性を十分に満足し、さらに素地密着性、平滑性、上塗り適正、塗装作業性にも優れる水性塗料組成物及びその塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、
(1)ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)100重量部、オキサゾリン基含有樹脂(B)5〜40重量部からなることを特徴とする水性塗料組成物であり、
(2)またビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の酸価が10〜70(mgKOH/g)であることが好ましく、
(3)またビニル変性エポキシエステル樹脂(A)のエステル化に用いられる酸が不飽和脂肪酸を含むことが更に好ましく、
(4)またビニル変性エポキシエステル樹脂(A)がエポキシエステル樹脂の存在下に、ビニル化合物を重合させて得られることが更に好ましく、
(5)また上記(1)〜(4)記載の水性塗料組成物が塗装された塗装物品も含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性塗料組成物を適用することにより、各種の要求性能、例えば防食性、耐水性、初期乾燥性、素地密着性、平滑性、上塗り適正、塗装作業性に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の水性塗料組成物について更に詳細に説明する。
【0010】
[ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)]
本発明のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、エポキシ樹脂のエポキシ基が有機酸でエステル化されたエポキシエステル樹脂をビニル変性することによって得られる。
【0011】
本発明に使用するエポキシ樹脂は、平均して1分子当り2個のエポキシ基を有する。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0012】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられ、なかでもビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが、防食性に優れる塗膜を形成する観点から最も好ましい。
【0013】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート1001、エピコート1004、エピコート1007(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社社製)、エピクロン850、1050、3050、4050、7050、HM−091、HM−101(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、DER−661、DER−664(以上、いずれもダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン830(大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、造膜性に優れる水性塗料を得る観点から250〜2500(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが好ましく、400〜1000(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することがより好ましく、400〜800(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが更に好ましく、400〜600(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが最も好ましい。
【0015】
エポキシ樹脂のエステル化においては通常有機酸を使用する。例示すれば、オクチル酸、ウラリル酸、ステアリン酸等や、水添ヤシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の飽和脂肪酸や、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸〔日立化成化学工業(株)の登録商標〕、水添(無水)トリメリット酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オクテン酸、イソノナン酸、安息香酸、p−tert−安息香酸、イソオクタン酸、イソデカン酸、シクロヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リシノール酸等や、桐油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、米糠油脂肪酸等の脂肪酸などが挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。なかでも、酸化硬化性を付与するためには、ヨウ素価120〜200の大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、米糠油脂肪酸などの半乾性油脂肪酸、あるいは乾性油脂肪酸を使用するこがより好ましい。
【0016】
エポキシ樹脂のエステル化は、エポキシ樹脂と有機酸を、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、50〜250℃に加熱して、エステル化反応させることで製造できる。エステル化触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミンなどを用いることが好ましい。
【0017】
ビニル変性に使用する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリオキシエチレン鎖を有するビニル化合物等などが挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。
【0018】
エポキシエステル樹脂の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いてビニル化合物を重合させることにより、ビニル変性エポキシエステル樹脂を得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジ−t―ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエートなどのパーオキサイド化合物、アゾビスイソブチルニトリル、およびジメチルアゾブチレートなどのアゾ化合物などが挙げられる。
【0019】
本発明のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の酸基含有化合物を共重合し、その酸価が、10〜70(mgKOH/g)にするのがより好ましく、20〜50(mgKOH/g)がさらに好ましい。かかる範囲に調整することで耐水性、防食性、貯蔵安定性に優れた水性塗料組成物が得られる。
【0020】
ビニル変性エポキシエステル樹脂を水中に分散するために用いる塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。これら塩基性化合物は、アンモニア水等のように水溶液として使用することもできる。また、前記塩基性化合物としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)を含有する水性塗料が塗膜を形成した際に揮発して塗膜中に残留せず、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成ができることから、揮発性の塩基性化合物やその水溶液、例えばアンモニア水、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール等が好ましい。
【0021】
[オキサゾリン基含有樹脂(B)]
オキサゾリン基含有樹脂(B)としては、オキサゾリン基量は1.0〜10.0mmol/g−樹脂固形分が好ましい。また耐水性、貯蔵安定性の観点から、水溶性タイプよりもエマルションタイプの方が好ましい。
【0022】
オキサゾリン基含有樹脂(B)としては、例えば、エポクロスK2010E、エポクロスK2020E、エポクロスK2030E(以上、何れも日本触媒株式会社製)等が挙げられる。その他のオキサゾリン基含樹脂(B)としては、エポクロスWS−500、WS−700(以上、何れも日本触媒株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
オキザゾリン基含有樹脂(B)は、アクリル変性エポキシエステル樹脂(A)100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、10〜30重量部であることがより好ましい。かかる範囲に調整することで、乾燥性、耐水性、防食性に優れた水性塗料組成物が得られる。
【0024】
本発明の水性塗料組成物には防錆顔料を含有させることが好ましい。防錆顔料については、鉛系あるいはクロム系も使用可能ではあるが、リン酸亜鉛系、モリブデン酸亜鉛系、モリブデン酸カルシウム系、リンモリブデン酸アルミニウム系、リン酸カルシウム系、リン酸アルミニウム系、リンモリブデン酸亜鉛系、亜リン酸亜鉛系、ホウ酸塩系、メタホウ酸バリウム系、メタホウ酸バリウム系、ニトロ化合物系、タングステン酸塩系等の低公害型がより好ましい。
【0025】
また、本発明の水性塗料組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化などのために、別途充填材を添加・分散させることもできる。このような充填材としては、例えば、非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状のセラミックス、金属あるいは合金、ならびにこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などを挙げることができる。
【0026】
上記充填材の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、顔料用酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛、亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。これらの充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。充填材の使用量は、水性塗料用樹脂組成物の全固形分100重量部に対して、通常、300重量部以下である。
【0027】
さらに、本発明の組成物には、所望により、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコール等の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料等の他の添加剤を配合することもできる。特に、耐候性、耐久密着性を向上させる目的で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を配合してもよい。紫外線吸収剤としては、ZnO2 、TiO2 (光触媒機能を示さないもの)、CeO2 等の無機系半導体、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線安定剤としては、いわゆるHALSと呼ばれるピペリジン系等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の水性塗料組成物のコーティング性をより向上させるためにレベリング剤を配合することができる。このようなレベリング剤のうち、シリコン系のレベリング剤が特に好ましい。このようなレベリング剤を配合することにより、塗膜の仕上がり外観が改善され、薄膜としても均一に塗布することができる。レベリング剤の使用量は、全組成物に対して、好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%である。
【0029】
レベリング剤を配合する方法としては、組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階で組成物に配合してもよく、さらには組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
【0030】
また、組成物の酸化硬化性を充分に発揮させる為にドライヤーを配合することができる。このようなドライヤーのうち、水分散タイプが特に好ましい。例えば、DICNATE3111、DICNATE1000W(以上、何れもDIC株式会社製)、ハイキュアMIX(東栄化工株式会社製)等が挙げられる。このようなドライヤーを配合することにより、酸化硬化性が充分に発揮される。ドライヤーの使用量は、全組成物に対して、好ましくは、0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜2重量%である。
【0031】
ドライヤーを配合する方法としては、組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階で組成物に配合してもよく、さらには組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
【0032】
本発明の塗料は、建築物、構築物、金属パネル、プラスチックボード、タイル、ガラス、フィルム、モルタル板、電着パネル、木材、紙、布、繊維等あらゆる物品に塗装が可能である。また塗装方法は、塗装物品に応じ、ロール、刷毛、吹き付け、浸漬等、従来のあらゆる塗装方法が適応できる。
【0033】
次に、本発明について実施例を挙げ更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお下記における配合量等の数字は特別な記載のない限り、重量部、重量%を表す。
【0034】
[ビニル変性エポキシエステル樹脂の合成]
(合成例1)
撹拌器、温度計、冷却管を備えた反応容器にエピコート1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂)36重量部、亜麻仁油脂肪酸16.8重量部、脱水ひまし油脂肪酸7.2重量部仕込み、撹拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で10時間保持した後、100℃まで冷却した。内温を100℃に調整しつつ、スチレン31重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル5重量部、アクリル酸4部、カヤエステル0(化薬アクゾ株式会社製のt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート)2重量部の混合液を5時間かけて流入した。流入終了後、トリエチルアミン6重量部を仕込み、保持後、水142重量部を流入した後冷却し、ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−1)を得た。固形分は40%であった。
【0035】
(合成例2)
撹拌器、温度計、冷却管を備えた反応容器にエピコート1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂)30重量部、亜麻仁油脂肪酸14重量部、脱水ひまし油脂肪酸6重量部仕込み、撹拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で10時間保持した後、100℃まで冷却した。内温を100℃に調整しつつ、スチレン40重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル6重量部、アクリル酸4部、カヤエステル0(化薬アクゾ株式会社製のt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート)2重量部の混合液を5時間かけて流入した。流入終了後、トリエチルアミン6重量部を仕込み、保持後、水142重量部を流入した後冷却し、ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−2)を得た。固形分は40%であった。
【0036】
(合成例3)
撹拌器、温度計、冷却管を備えた反応容器にエピコート1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂)30重量部、ステアリン酸20重量部仕込み、撹拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で10時間保持した後、100℃まで冷却した。内温を100℃に調整しつつ、スチレン40重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル6重量部、アクリル酸4部、カヤエステル0(化薬アクゾ株式会社製のt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート)2重量部の混合液を5時間かけて流入した。流入終了後、トリエチルアミン6重量部を仕込み、保持後、水142重量部を流入した後冷却し、ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−3)を得た。固形分は40%であった。
【実施例】
【0037】
〔実施例1〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−1)45重量部、エポクロスK2010E(日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有樹脂)5重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料)2重量部、DICNATE3111(DIC株式会社製水分散ドライヤー)1重量部、水19重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物をダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0038】
[試験評価方法]
(1)引っかき硬度 JIS K5600−5−4に準じて行った。
(2)耐塩水性 JIS K5621 3種に準じて行った。
評価は JIS K5600−8−3に準じて行った。
Ri0:錆面積0%
Ri1:錆面積0.05%
Ri2:錆面積0.5%
Ri3:錆面積1%
Ri4:錆面積8%
Ri5:錆面積40〜50%
(3)耐ブロッキング性 乾燥後に50℃まで冷えた試験板2枚を塗装面同士重ね合わせて、20kg/cmの加重を30分間かける。評価は試験後に塗膜面の付着の有無で判断する。
○:まったく付着しない。
△:付着がみられるが、手で外すことができる。
×:強固に付着しており、外すと塗膜剥離が見られる。
【0039】
〔実施例2〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−1)40重量部、エポクロスK2010E(日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有樹脂)10重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料予)2重量部、DICNATE3111(DIC株式会社製水分散ドライヤー)1重量部、水19重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物を同じくダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0040】
〔実施例3〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−2)45重量部、エポクロスK2010E(日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有樹脂)5重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料)2重量部、DICNATE3111(DIC株式会社製水分散ドライヤー)1重量部、水19重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物を同じくダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0041】
〔実施例4〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−3)45重量部、エポクロスK2010E(日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有樹脂)5重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料)2重量部、水20重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物を同じくダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0042】
〔比較例1〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−1)50重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料)2重量部、DICNATE3111(DIC株式会社製水分散ドライヤー)1重量部、水19重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物を同じくダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0043】
〔比較例2〕
ビニル変性エポキシエステル樹脂(R−1)25重量部、エポクロスK2010E(日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有樹脂)25重量部にスーパーS(丸尾カルシウム株式会社製の炭酸カルシウム)18重量部、弁柄200R(戸田工業株式会社製の着色顔料)10重量部、LF防錆ZP−DL(キクチカラー株式会社製の防錆顔料)2重量部、DICNATE3111(DIC株式会社製水分散ドライヤー)1重量部、水19重量部を混合して水性塗料組成物を得た。この水性塗料組成物を同じくダル鋼板に塗布し、100℃で5分乾燥により作製した塗膜の耐引っかき硬度、耐塩水性、耐ブロッキング性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の水性塗料組成物を適用することにより、各種の要求性能、例えば防食性、耐水性、初期乾燥性、素地密着性、平滑性、上塗り適正、塗装作業性に対応することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)100重量部、オキサゾリン基含有樹脂(B)5〜40重量部からなることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)の酸価が10〜70(mgKOH/g)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項3】
請求項1〜2に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)のエステル化に用いられる酸が不飽和脂肪酸を含むことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂(A)がエポキシエステル樹脂の存在下に、ビニル化合物を重合させて得られることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の水性塗料組成物が塗装された塗装物品。


【公開番号】特開2011−32437(P2011−32437A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182621(P2009−182621)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000192844)神東塗料株式会社 (48)
【Fターム(参考)】