説明

水性塗料

【課題】多層構造型エマルションを結合材とする水性塗料において、その造膜安定性を高める。
【解決手段】コア部及びシェル部を有し、当該コア部及びシェル部はいずれも、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体からなり、炭素数4以上のアルキル基を有し、そのホモポリマーのTgが−30℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率が、シェル部よりもコア部において高くなるように設定され、コア部のTgが−80〜20℃、シェル部のTgが0〜100℃であり、コア部のTgよりもシェル部のTgが高い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、水への溶解度が10g/100g以上、沸点200℃以上の親水性溶剤(B)、及び水への溶解度が10g/100g未満、沸点200℃以上の疎水性溶剤(C)を必須成分する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した造膜性能を有する水性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料分野においては、芳香族炭化水素等の有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料が主流であったが、近年、環境問題、省資源、労働安全衛生等の見地より、水を媒体とする水性塗料への切替が進んでいる。
水性塗料における結合材としては、合成樹脂エマルションが多く使用されている。一般に合成樹脂エマルションは、媒体である水の揮発に伴い、エマルション粒子どうしが融着することによって、連続膜を形成するものである。そのため、造膜性を確保するには合成樹脂エマルションのTgをある程度低めに設定する必要があるが、Tgが低くなれば、その分、形成塗膜に粘着性が発現しやすく、汚れも付着しやすくなる。
このような問題点に対し、水性塗料において、造膜性と耐粘着性(耐汚染性)を両立させる手法として、高Tgシェル部と低Tgコア部からなる多層構造型エマルションを使用することが知られている(特許文献1等)。このような多層構造型エマルションを含む塗料における造膜助剤としては、一般に高沸点溶剤が使用される。特許文献1では、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等の高沸点溶剤を造膜助剤として用いることが記載されている。
しかし、このような成分からなる水性塗料は、塗付時の環境条件によっては、造膜安定性に欠く場合がある。とりわけ高湿度下で塗膜化する場合には、造膜安定性を確保することが困難となる傾向がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−104010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、多層構造型エマルションを結合材とする水性塗料において、その造膜安定性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、多層構造型エマルションを結合材とする水性塗料において、特定の親水性溶剤と疎水性溶剤を併用することに想到し、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0007】
1.コア部及びシェル部を有し、当該コア部及びシェル部はいずれも、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体からなり、
炭素数4以上のアルキル基を有し、そのホモポリマーのガラス転移温度(以下「Tg」という)が−30℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率が、シェル部よりもコア部において高くなるように設定され、
コア部のTgが−80〜20℃、シェル部のTgが0〜100℃であり、コア部のTgよりもシェル部のTgが高い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、
水への溶解度が10g/100g以上、沸点200℃以上の親水性溶剤(B)、及び
水への溶解度が10g/100g未満、沸点200℃以上の疎水性溶剤(C)を必須成分とし、
前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記親水性溶剤(B)と前記疎水性溶剤(C)が合計で1〜50重量部含まれ、前記親水性溶剤(B)と前記疎水性溶剤(C)との重量比率が95:5〜5:95であることを特徴とする水性塗料。
2.前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)は、その樹脂固形分においてシェル部を50重量%以上含み、コア部のTgはシェル部のTgよりも40℃以上低いことを特徴とする1.記載の水性塗料。
3.前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)の平均粒子径が120nm以下であることを特徴とする1.または2.記載の水性塗料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性塗料は、耐粘着性、耐汚染性等の物性を確保しつつ、造膜性において安定した性能を発揮することができるものである。特に、高湿度環境下で塗装を行った場合であっても、十分な造膜性を発揮することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明における多層構造型合成樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」という)は、コア部及びシェル部を有し、当該コア部及びシェル部はいずれも、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体からなるものである。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、樹脂骨格の主成分となるものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
【0011】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0012】
本発明の(A)成分は、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルのうち、炭素数4以上のアルキル基を有し、そのホモポリマーのTgが−30℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)(以下「(a)成分」という)を必須成分とするものである。(a)成分としては、例えば、n−ブチルアクリレート(ホモポリマーTg:−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーTg:−85℃)、ドデシルメタクリレート(ホモポリマーTg:−65℃)等が挙げられる。このような(a)成分の構成比率は、シェル部よりもコア部において高くなるように設定されていればよく、シェル部は(a)成分を含まないものであってもよい。
【0013】
(A)成分では、コア部のTgを−80〜20℃、シェル部のTgを0〜100℃とし、コア部のTgよりもシェル部のTgが高くなるように設定する。本発明では、(A)成分を構成する成分として上述の(a)成分を使用し、さらに各層のTgをこのような条件で設定することにより、造膜性と耐粘着性をある程度両立することが可能となる。(A)成分の樹脂固形分においてシェル部を50重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上)含み、コア部のTgがシェル部のTgよりも40℃以上(好ましくは50℃以上)低くなるように設定すれば、造膜性と耐粘着性両立の点で、より好適である。なお、(A)成分のTgは、Foxの計算式により求めることができる。
【0014】
(A)成分を構成するモノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率は、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.8重量%以下、好ましくは99.5重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率がかかる範囲内であれば、耐候性、耐水性、耐薬品性等において良好な物性を確保することができる。
【0015】
(A)成分は、必要に応じ上記以外の重合性モノマーを構成成分とするものであってもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。
モノマー群におけるかかる重合性モノマーの構成比率は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0016】
(A)成分は、上記重合性モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては、公知の方法を採用すればよい。重合時には、開始剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤等を適宜使用することができる。
(A)成分の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、造膜性と耐粘着性両立の点では120nm以下とすることが望ましい。なお、(A)成分の平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0017】
本発明では、上記(A)成分に対し、水への溶解度が10g/100g以上、沸点200℃以上の親水性溶剤(B)(以下「(B)成分」という)、及び水への溶解度が10g/100g未満、沸点200℃以上の疎水性溶剤(C)(以下「(C)成分」という)を混合する。本発明では、水への溶解特性が異なるこれら2成分を併用することによって、造膜安定性において優れた効果を得ることができる。
【0018】
高Tgシェル部と低Tgコア部からなる多層構造型エマルションでは、コア部のほうが、比較的疎水性となりやすい。このような多層構造型エマルションに対し、造膜助剤として疎水性溶剤のみを添加すると、疎水性溶剤がコア部に偏在してしまい、シェル部での可塑化効果が不十分となり、造膜不良を引き起こすおそれがある。特に高湿度環境下では、疎水性溶剤のコア部への偏在が顕著となり、造膜不良の問題が生じやすくなる。
これに対し、本発明では、造膜助剤として(B)成分と(C)成分を併用することにより、エマルション粒子内の可塑化状態において一定の水準が保たれ、造膜時の環境が変化した場合であっても所定の造膜性能を発揮することができるものである。
【0019】
(B)成分としては、上述の条件を満たすものが使用できる。(B)成分として使用可能な具体的な化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、N−メチルピロリドン等が挙げられる。(B)成分の水への溶解度は10g/100g以上であるが、好ましくは20g/100g以上、より好ましくは∞である。
【0020】
(C)成分としては、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、オクチレングリコール、2−エチルヘキシレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。(C)成分の水への溶解度は10g/100g未満であるが、好ましくは5g/100g未満、より好ましくは2g/100g未満である。
【0021】
(B)成分と(C)成分との重量比率は、通常95:5〜5:95であり、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80、さらに好ましくは70:30〜30:70である。本発明では、かかる比率で両成分を併用することによって、優れた造膜安定化効果を得ることができる。
【0022】
(B)成分と(C)成分の合計量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部となるように調製する。これら成分の混合比率が小さすぎる場合は、十分な可塑化効果が得られず、造膜時に割れ等が生じやすくなる。混合比率が大きすぎる場合は、塗膜の乾燥に必要以上に時間を要したり、塗膜表面に粘着性が出てくる等の不具合が生じるおそれがある。
【0023】
本発明の水性塗料には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、顔料、骨材、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。本発明の水性塗料は、これら成分を常法にて均一に混合することで製造できる。
【0024】
このうち顔料としては、一般的に塗料に配合可能な着色顔料、体質顔料等が使用できる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、陶土、チャイナクレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、珪藻土、樹脂ビーズ等が挙げられる。本発明では、このような顔料を混合する場合、その顔料容積濃度が10%、さらには15%以上であっても安定した造膜性を発揮することができる。
【0025】
本発明水性塗料は、公知の方法により塗装することができる。塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等を採用することができる。塗装時の塗付量は、塗料の形態や所望の仕上外観等に応じ適宜設定することができるが、通常は0.1〜3kg/m程度である。塗装時には、水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。
本発明塗料の塗装及び乾燥は通常、常温(5〜40℃程度)で行えばよいが、必要に応じ高温下で行うこともできる。本発明塗料は、相対湿度80%以上(さらには90%以上)の環境下で塗装を行っても、安定した造膜性を発揮することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、実施例の水性塗料の製造においては、以下の原料を使用した。
【0027】
・多層構造型合成樹脂エマルション1(コア部モノマー成分:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=61/38/1、シェル部モノマー成分:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=79/20/1、コア部Tg:0℃、シェル部Tg:42℃、コア・シェル重量比:50/50、固形分50重量%、平均粒子径130nm)
【0028】
・多層構造型合成樹脂エマルション2(コア部モノマー成分:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=49/50/1、シェル部モノマー成分:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸=79/20/1、コア部Tg:−22℃、シェル部Tg:42℃、コア・シェル重量比:30/70、固形分50重量%、平均粒子径110nm)
【0029】
・溶剤1:トリエチレングリコールモノエチルエーテル(水への溶解度∞、沸点256℃)
・溶剤2:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞、沸点242℃)
・溶剤3:ジエチレングリコールジブチルエーテル(水への溶解度0.3g/100g、沸点255℃)
・溶剤4:2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(水への溶解度0.9g/100g、沸点244℃)
・顔料(酸化チタン、平均粒子径0.2μm、比重4.2)
・分散剤:ポリカルボン酸系分散剤(固形分30重量%)
・増粘剤:ポリウレタン系増粘剤(固形分30重量%)
・消泡剤:シリコン系消泡剤(固形分50重量%)
【0030】
(実施例1)
多層構造型合成樹脂エマルション1を200重量部、溶剤1を6重量部、溶剤3を6重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料1(顔料容積濃度17%)を製造した。
次に、温度23℃・相対湿度50%環境下で、水性塗料1を塗付量0.3kg/mでスレート板にスプレー塗装し、48時間乾燥養生した。以上の方法で形成された塗膜の造膜状態を目視にて確認した(試験1)。評価基準は、全く異常が認められないものを「◎」、ほとんど異常が認められないものを「○」、一部に異常が認められるものを「△」、明らかに異常が認められるものを「×」とした。また、温度30℃・相対湿度90%環境下においても、同様の方法で塗装を行い、造膜状態を確認した(試験2)。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
多層構造型合成樹脂エマルション2を200重量部、溶剤1を6重量部、溶剤3を6重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料2(顔料容積濃度17%)を製造した。
この水性塗料2につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
多層構造型合成樹脂エマルション2を200重量部、溶剤2を6重量部、溶剤4を6重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料3(顔料容積濃度17%)を製造した。
この水性塗料3につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
多層構造型合成樹脂エマルション1を200重量部、溶剤1を12重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料4(顔料容積濃度17%)を製造した。
この水性塗料4につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
多層構造型合成樹脂エマルション1を200重量部、溶剤3を12重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料5(顔料容積濃度17%)を製造した。
この水性塗料5につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
多層構造型合成樹脂エマルション1を200重量部、顔料を85重量部、分散剤を3重量部、増粘剤を1重量部、消泡剤を1重量部均一に混合することにより、水性塗料6(顔料容積濃度17%)を製造した。
この水性塗料6につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部及びシェル部を有し、当該コア部及びシェル部はいずれも、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体からなり、
炭素数4以上のアルキル基を有し、そのホモポリマーのガラス転移温度(以下「Tg」という)が−30℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率が、シェル部よりもコア部において高くなるように設定され、
コア部のTgが−80〜20℃、シェル部のTgが0〜100℃であり、コア部のTgよりもシェル部のTgが高い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、
水への溶解度が10g/100g以上、沸点200℃以上の親水性溶剤(B)、及び
水への溶解度が10g/100g未満、沸点200℃以上の疎水性溶剤(C)を必須成分とし、
前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記親水性溶剤(B)と前記疎水性溶剤(C)が合計で1〜50重量部含まれ、前記親水性溶剤(B)と前記疎水性溶剤(C)との重量比率が95:5〜5:95であることを特徴とする水性塗料。
【請求項2】
前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)は、その樹脂固形分においてシェル部を50重量%以上含み、コア部のTgはシェル部のTgよりも40℃以上低いことを特徴とする請求項1記載の水性塗料。
【請求項3】
前記多層構造型合成樹脂エマルション(A)の平均粒子径が120nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の水性塗料。

【公開番号】特開2008−101140(P2008−101140A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285435(P2006−285435)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】