説明

水性媒体中の微生物含有量の測定方法及びシステム

水性媒体中の総微生物含有量の測定方法は、水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程を含む。総微生物含有量の測定システム、バイオフィルムの測定方法、背景ノイズについて調節する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中の微生物含有量の定量方法及びシステムに関し、特に総微生物含有量を測定する蛍光アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
公共水道システムに微生物活動が存在すると、健康リスクを生じかねない。さらに、かかる微生物の存在はシステムの腐食、付着、汚損の大きな原因となり、システムの運転コストに直接影響するので、工業システム中の微生物の検出及び制御は様々な事業に不可欠である。工業システム及び公共水道システムにおける微生物濃度のモニタリング、並びに殺生物剤の導入などによるこれらのシステムの処理は、システムを維持する上で重要である。
【0003】
微生物検出のための従来のモニタリングシステムでは、培養法や生化学発光法を用いている。いずれの方法も微生物数を定量するが、これらの方法いずれにも固有の短所や欠陥が併存している。培養法は、長いインキュベーション時間を必要とし、培養培地の組成のため微生物数が実際より過小評価されることが多い。生化学発光法は迅速ではあるが、精度に劣り、偽陽性又は偽陰性の結果が得られることが多々ある。
【0004】
バイオフィルム(生物膜)は、微生物濃度のモニタリングに関する懸念事項を追加する。バイオフィルムは、複雑な凝集体へと増殖し不活性表面又は生物表面に付着する微生物群である。バイオフィルム中の細胞は、菌体外多糖類、リポ多糖類、糖タンパク質などの高分子化合物のマトリックスで互いにしっかりと保持される。上述の汚損・腐食の問題及び健康上の懸念に加えて、バイオフィルムは工業的冷却水システムにおける熱伝達及び水圧を減少させ、水射出ジェットを閉塞し、水フィルターを詰まらせるおそれがあり、また微生物の作用による腐食をもたらすおそれがある。バイオフィルムは菌体外高分子化合物の層で保護されており、殺菌剤その他の殺生物剤に対する耐性が非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/196884号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオフィルム含有量の定量も含めて、水性媒体中の微生物含有量を定量するための高感度で高精度の迅速なシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、水性媒体中の総微生物含有量の測定方法は、水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む。
【0008】
別の実施形態では、水性媒体中の総微生物含有量の測定システムは、水性媒体に蛍光染料を添加し、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得、次いで微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる。システムは、次に、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る。次にシステムは、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する。
【0009】
別の実施形態では、水性媒体中の総微生物含有量の測定システムは、水性媒体に蛍光染料を添加するように構成されたサンプル調製モジュールと、微生物の細胞内容物を水性媒体に放出する溶解モジュールとを含む。システムはまた、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得るとともに、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体のサンプル中の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る、光学的測定ユニットを有する検出モジュールを含む。システムはまた、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得、正味の蛍光信号を水性媒体の微生物含有量に換算する制御モジュールを含む。
【発明の効果】
【0010】
様々な実施形態が提供する水性媒体中の総微生物含有量を測定する優れた方法とシステムは、使用が容易で、安価、正確、高感度であり、短期間内に完了できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】オートクレーブ処理したリン酸緩衝食塩水(PBS)に希釈したシュードモナス・フルオレッセンスについてlogΔRLUをlog細胞濃度(cfu/ml)に対して回帰プロットしたグラフである。
【図2】濾過した冷却塔水に希釈したシュードモナス・フルオレッセンスについてlogΔRLUをlog細胞濃度(cfu/ml)に対して回帰プロットしたグラフである。
【図3】オートクレーブ処理したリン酸緩衝食塩水(PBS)に希釈したシュードモナス・フルオレッセンスについて総微生物含有量及び平板計数に基づく細胞濃度(cfu/ml)及びATP生物発光のアッセイ読取り値を細胞希釈度に対してプロットしたグラフである。
【図4】濾過した冷却塔水に希釈したシュードモナス・フルオレッセンスについて総微生物アッセイ及び平板計数に基づく細胞濃度(cfu/ml)及びATP生物発光のアッセイ読取り値を細胞希釈度に対してプロットしたグラフである。
【図5】オートクレーブ処理した冷却塔水に希釈したシュードモナス・フルオレッセンスについてlogΔRLUをlog細胞濃度(cfu/ml)に対して回帰プロットしたグラフである。
【図6】0.85%食塩水緩衝液に懸濁した緑膿菌バイオフィルムについてlogΔRLUをlog細胞濃度(cfu/ml)に対して回帰プロットしたグラフである。
【図7】本発明の一実施形態による水性媒体中の総微生物含有量をモニタするシステムの線図である。
【図8】図7の総微生物含有量モニタリングシステムの光学的測定ユニットの線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も含む。同じ特性に関するすべての範囲の上下限点はそれぞれ独立に組合せ可能で、また表記した上下限点を含む。すべての特許文献は本明細書に先行技術として援用する。
【0013】
量に関連して用いる修飾語「約」は、表示値を含み、その文脈で規定される意味をもつ(例えば、特定の量の測定に伴う誤差範囲を含む)。
【0014】
「任意の」又は「所望に応じて」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合あるいは物質が存在する場合と、事象が起こらなかった場合あるいは物質が存在しない場合両方を包含する。
【0015】
一実施形態では、水性媒体中の総微生物含有量の測定方法は、水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線(ベースライン)蛍光信号を得る工程と、微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む。
【0016】
本方法は、水性媒体中の総微生物含有量を測定する。微生物は、細菌などの微生物とすることができる。細菌の例には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens、単に蛍光菌ともいう。)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、デスルホビブリオ・デスルフリカンス(Desulfovibrio desulfuricans)、クレブシエラ(Klebsiella)、コマモナス・テリゲナ(Comamonas terrigena)、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)、ニトロバクター・ブルガリス(Nitrobacter vulgaris)、スフェロチルス・ナタンス(Sphaerotilus natans)、ガリオネラ(Gallionella species)、マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、フラボバクテリウム・ブレーベ(Flavobacterium breve)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)、バチルス・ アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)胞子、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及び大腸菌(Ecsherichia coli)があるが、これらに限らない。
【0017】
水性媒体は、微生物を含有しうるならばどのようなタイプの水性媒体でもよく、バイオフィルム微生物を除去又は分散させた水性媒体を含む。一実施形態では、水性媒体は水である。一実施形態では、水は、公営水道水又は工業用水、例えば冷却塔水とすることができる。別の実施形態では、水性媒体は、香粧品製造用、又は食品、飲料又は医薬品加工用の水溶液とすることができる。一実施形態では、水性媒体は食塩水とすることができる。別の実施形態では、水性媒体はリン酸緩衝液とすることができる。
【0018】
蛍光染料を水性媒体に添加する。蛍光染料は、微生物の存在下でその蛍光信号を変化させるものであればどのようなタイプの染料でもよい。一実施形態では、蛍光染料は蛍光色素(フルオロクローム)、即ち生物学的細胞成分、例えば核酸、タンパク質、細胞質成分及び細胞膜成分と結合する微生物染色染料である、蛍光色素である。
【0019】
蛍光色素の例には、アクリジンオレンジ、エチジウムブロミド、ヘキスト33258、ヘキスト33342、プロピジウムヨージド、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、及び市販の核酸染料、例えばPicoGreen(登録商標)、SYTO(登録商標)16、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、SYBR(登録商標)Gold、YOYO(登録商標)、TOTO(登録商標)、TO−PRO(登録商標)、YO−PRO(登録商標)、Texas Red(登録商標)、Redmond Red(登録商標)、Bodipy(登録商標)Dyes 、Oregon Green(登録商標)などがあるが、これらに限らない。蛍光色素は、Molecular Probes社(米国オレゴン州ユージーン)、Sigma Chemical社(米国ミズーリ州セントルイス)、Amersham社(米国イリノイ州アーリントンハイツ)、Callbiochem−Novabiochem社(米国カリフォルニア州ラホーヤ)、Synthetic Genetics社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)などから商業経路で入手できる。別の実施形態では、蛍光色素染料は、シアニン染料とすることができ、これはPicoGreen(登録商標)、TOTO(登録商標)、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、SYBR(登録商標)Gold、SYBR(登録商標)Green Iなどとして市販されている。別の実施形態では、蛍光色素染料はSYBR(登録商標)Green Iなどの非対称シアニン染料である。
【0020】
蛍光染料を水性媒体に、水性媒体中の微生物を蛍光性にするのに適した量で添加する。一実施形態では、蛍光染料を水性媒体に、水性媒体1L当たり約0.5mg〜約100mgの蛍光染料の量で添加する。別の実施形態では、蛍光染料を、水性媒体1L当たり約0.5mg〜約10mgの量で添加する。別の実施形態では、蛍光染料を、水性媒体1L当たり約0.5mg〜約1.0mgの量で添加する。
【0021】
一実施形態では、水性媒体の一部をテスト用に採取する。水性媒体の一部を手動で除去しても、オンライン試験装置により計画的に除去してもよい。蛍光染料を水性媒体に添加し、混合により分散させる。別の実施形態では、蛍光染料の溶液を水性媒体サンプルに注入し、配合する。
【0022】
蛍光色素を用いる場合、水性媒体のpHは、染料の蛍光を最適化するのに適当な範囲に維持する。一実施形態では、水性媒体のpHは約4.0〜約9.5の範囲に維持する。別の実施形態では、水性媒体のpHは約7.0〜約8.0の範囲に維持する。
【0023】
一実施形態では、緩衝液を水性媒体に添加して水性媒体のpHを適当な範囲内に維持する。緩衝液は、微生物にも水性媒体中の蛍光測定にも影響しなければどのようなタイプの緩衝液でもよい。一実施形態では、緩衝液は無機緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水又はホウ酸緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は有機緩衝液、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸又はこれらの混合物である。一実施形態では、緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとエチレンジアミン四酢酸とのブレンドである。別の実施形態では、濃度約1mol/L〜約30mmol/Lの範囲のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと濃度約100mmol/L〜約3mmol/Lの範囲のエチレンジアミン四酢酸とのブレンドがモル比約10:1にある。
【0024】
緩衝液の添加は、蛍光色素を水性媒体に添加する前でも後でもよい。一実施形態では、蛍光色素と緩衝液を予め混合し、一緒に水性媒体に添加する。
【0025】
一実施形態では、緩衝液を水性媒体に、水性媒体の体積に基づいて約1体積%〜約30体積%の量で添加する。別の実施形態では、緩衝液を水性媒体に、水性媒体の体積に基づいて約1体積%〜約15体積%の量で添加する。別の実施形態では、緩衝液を水性媒体に、水性媒体の体積に基づいて約5体積%〜約10体積%の量で添加する。
【0026】
蛍光染料を有する水性媒体の蛍光を測定することにより、基線蛍光信号を得る。ここで用いる「蛍光」は、比較的短い波長の光で励起されたとき化合物が光を発することを意味する。励起波長及び発光波長は、選択した蛍光染料に依存する。一実施形態では、励起波長は約350nm〜約600nmの範囲にあり、発光波長は約450nm〜約650nmの範囲にある。
【0027】
蛍光はどのようなタイプの蛍光検出器で測定してもよい。一実施形態では、蛍光分光分析、蛍光顕微鏡法、蛍光ダイオードアレイ検出、マイクロプレート蛍光読取り、又はフローサイトメトリーにより蛍光信号を測定する。一実施形態では、蛍光検出器は携帯型蛍光検出装置であるか、蛍光分光分析に基づくオンライン水状態モニタリング計器である。一実施形態では、携帯型蛍光検出装置はLED励起光及びPMT発光検出器を有する。一実施形態では、携帯型蛍光検出装置はLED励起光及びホトダイオード発光検出器を有する。
【0028】
測定は迅速に行い、数個の測定値をとり、平均することができる。微生物は、試験前の濃縮プロセスを必要とせずに、試験する水性媒体1mL当たり104コロニー形成単位(cfu)のように低い濃度で検出することができる。
【0029】
基線測定値を手動で記録するか、オンラインモニタリング計器で測定し記憶することができる。
【0030】
蛍光染料は微生物の細胞成分を染色するが、微生物細胞の無傷の細胞膜を透過することができない。総微生物含有量を測定するために、微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させ、そうすればそこで細胞内容物に蛍光染料を接触させることができる。一実施形態では、微生物の細胞を溶解(溶菌)、つまり細胞膜を破壊することにより、微生物の細胞内容物を放出させる。溶解は、機械的、化学的、物理的、電気的、超音波又はマイクロ波方法あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。
【0031】
機械的溶解は細胞壁を物理的に、例えば剪断、振動もしくは力により破壊する。機械的方法の例には、流体チャンネル内のフィルター状構造もしくは小形バーを通して細胞を圧力駆動により流す、低イオン強度水の迅速な拡散的混合を伴って細胞に浸透ストレスを付加する、鋭い小規模構造を有する特殊領域に入るところで細胞に剪断力を付加する、細胞壁をミニビーズビータもしくはビーズミルで破壊する、水性媒体中の菌体に超音波エネルギーを加えるなどがあるが、これらに限らない。
【0032】
化学的溶解が起こるのは、化学薬品を用いて細胞壁を破壊し、細胞内容物を放出させる場合である。細胞壁を破壊できるならばどのような薬品を用いてもよい。一実施形態では、界面活性剤、酵素、抽出溶剤又は溶菌性緩衝液を用いる。界面活性剤には、硫酸ドデシル、3−[(3−コルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート、TWEEN(登録商標)20界面活性剤、TRITON(登録商標)X系界面活性剤、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、塩化グアニジニウムなどがあるが、これらに限らない。酵素としては、特に限定されないが、リゾチーム、ムタノリシン、ラビアーゼ、リゾスタフィン、リチカーゼ、プロテイナーゼK、エンドリシン、アクロモペプチダーゼなどがあるが、これらに限らない。抽出溶剤には、ポリビニルポリピロリドン、フェノール、トリクロロトリフルオロエタン、又はフェノールとグアニジニウムチオシアネートもしくはグアニジニウムクロリドとの混合物がある。溶菌性緩衝液には、塩化アンモニウム、四級アンモニウム化合物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸ナトリウム、Coulter Diagnostics社から市販の溶菌性緩衝液であるZap−o−globin(登録商標)、或いはMolecular Probes社から市販の溶菌性緩衝液であるCyQUANT(登録商標)などがあるが、これらに限らない。
【0033】
試薬は微生物を溶解するのに適当な任意の量で添加でき、過剰に添加してもよい。一実施形態では、試薬を水性媒体1L当たり約1mg〜約10000mgの量で添加する。別の実施形態では、試薬を水性媒体1L当たり約1mg〜約1000mgの量で添加する。別の実施形態では、試薬を水性媒体1L当たり約1mg〜約50mgの量で添加する。
【0034】
物理的溶解は熱的に行っても、凍結−解凍により行ってもよい。溶菌は、熱ブロックやホットプレートなどで水性媒体を加熱することにより、熱的に達成することができる。一実施形態では、水性媒体を約40℃〜約100℃の温度に加熱する。別の実施形態では、温度は約40℃〜約60℃である。一実施形態では、水性媒体を約1分〜約1時間加熱する。別の実施形態では、水性媒体を約1分〜約30分間、特に約1分〜約15分間加熱する。別の実施形態では、水性媒体を約1分〜約3分間加熱する。
【0035】
凍結−解凍の一例では、水性媒体をエタノール−ドライアイス浴などで凍結し、次いで解凍する。
【0036】
細胞は、拡散的混合、誘電泳動トラッピング又はマイクロ波照射により、一連の電気パルスで電気的に溶解することができる。溶菌にフリーラジカルも使用できる。方法としては、金属イオン、過酸化物及び水性媒体中の微生物の混合物に電界をかけて、フリーラジカルを発生させ、発生したフリーラジカルが細胞壁を攻撃する。
【0037】
微生物の細胞内容物を、水性媒体中に抽出し放出する前と後に水性媒体の蛍光信号を測定して、それぞれ基線(ベースライン)蛍光信号及び第2の蛍光信号を得る。これらの蛍光信号を手動で記録しても、オンラインモニター計器で測定し、記憶してもよい。
【0038】
第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る。
【0039】
正味の蛍光信号は総微生物含有量に等しいとみなすことができる。選択した蛍光染料について、既知の微生物濃度及び該濃度の蛍光測定値から検量曲線を作成することができる。一実施形態では、微生物の濃度を平板計数法で求める。一実施形態では、既知の総微生物含有量及び選択した蛍光染料を含有するいくつかのサンプルを測定して蛍光信号を得る。この信号の対数(log)値をグラフにプロットし、回帰分析を行って検量曲線を得、これにより総微生物含有量を蛍光信号に換算する。
【0040】
総細菌濃度は迅速に測定することができ、生物物質の菌体外含量を放出させるのに選択された方法に応じて、アッセイを5分以内に完了することができる。迅速なアッセイは、実験室用途、現場用途、オンライン自動化バッチシステム、オフラインモニタリングシステムいずれにもよく適合する。別の実施形態では、アッセイを自動化し、連続的に行うことができる。
【0041】
別の実施形態では、背景蛍光信号を得て、背景干渉を除去し、水性媒体中の微生物含有量を測定する精度を向上することができる。背景信号は、追加の有機又は非細胞成分の蛍光を測定することにより、得ることができる。一実施形態では、背景信号を正味の蛍光信号から減算する。一実施形態では、水性媒体中の総微生物含有量の測定方法は、水性媒体部分に蛍光染料を添加する工程と、背景水性媒体部分用の追加の水性媒体部分を得る工程と、背景水性媒体部分を処理して微生物を除去する工程と、処理した背景水性媒体部分に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体部分中の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、処理した背景水性媒体部分の蛍光信号を測定して背景基線蛍光信号を得る工程と、微生物を溶解することによって水性媒体部分中の微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、背景水性媒体部分中での溶解手順のシミュレーションを行う工程と、放出された微生物細胞内容物を含有する水性媒体部分中の蛍光信号を測定する工程と、シミュレーションした背景水性媒体部分中の蛍光信号を測定して第2の背景蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、第2の背景蛍光信号から背景基線蛍光信号を減算して正味の背景信号を得る工程と、正味の蛍光信号を正味の背景信号で調節し、調節した正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む。
【0042】
水性媒体は上述した。背景信号は、どのようなタイプの水性媒体についても得られるが、蛍光染料の存在下で蛍光を発する多量の有機物又は非細胞成分を有する水性媒体、例えば原油処理から生じる処理水についてがもっとも有用である。一実施形態では、水性媒体部分及び背景水性媒体部分が同じ体積を有する。
【0043】
蛍光染料を添加する工程、基線蛍光信号を得る工程、微生物の細胞内容物を放出させる工程、第2の蛍光信号を得る工程、及び正味の蛍光信号を得る工程については上述した。
【0044】
水性媒体を処理して微生物を除去することができる。背景信号を得るために水性媒体から微生物を除去するには、水性媒体を加熱するか、水性媒体を殺生物剤、例えばブリーチ、塩素、他の市販の殺生物剤又はこれらの組合せで処理すればよい。一実施形態では、塩素を約0.1ppm〜約30ppmの量使用する。別の実施形態では、塩素を約0.1ppm〜約20ppm、特に約0.1ppm〜約10ppmの量使用する。殺生物剤を約1ppm〜約200ppmの量使用することができる。別の実施形態では、殺生物剤を約1ppm〜約100ppm、特に約1ppm〜約50ppmの量使用する。塩素を用いる場合、背景微生物効果を最小化した後、該塩素を中和する必要があることがある。一実施形態では、メタ重亜硫酸ナトリウムを用いて塩素を中和する。一実施形態では、メタ重亜硫酸ナトリウムを水性媒体に約1ppm〜約500ppmの量で添加する。別の実施形態では、メタ重亜硫酸ナトリウムを水性媒体に約1ppm〜約300ppm、特に約1ppm〜約200ppmの量で添加する。
【0045】
別の実施形態では、水性媒体を、熱ブロック、ホットプレートなどで加熱することにより、微生物成分を除去することができる。一実施形態では、水性媒体を約40℃〜約100℃の温度に加熱する。別の実施形態では、温度は約40℃〜約70℃である。別の実施形態では、温度は約40℃〜約60℃である。一実施形態では、水性媒体を約1分〜約1時間加熱する。別の実施形態では、水性媒体を約1分〜約30分間、特に約1分〜約15分間加熱する。別の実施形態では、水性媒体を約1分〜約3分間加熱する。
【0046】
処理して微生物を除去した水性媒体部分の蛍光を測定することにより、背景基線蛍光信号を得ることができる。励起波長及び発光波長は、選択した蛍光染料に依存する。一実施形態では、励起波長は約350nm〜約600nmで、発光波長は約450nm〜約650nmである。蛍光は、上述の蛍光検出器で測定できる。背景基線信号を手動で記録しても、オンラインモニター計器で測定し、記憶してもよい。
【0047】
溶解手順は、処理済み背景水性媒体部分中でシミュレーションすることができる。一実施形態では、微生物の細胞内容物を水性媒体部分中に放出する工程を、微生物が除去された背景水性媒体部分中で繰り返す。上述の通り、溶解は、機械的、化学的、物理的、電気的、超音波又はマイクロ波方法又はこれらの組合せを用いて行うことができる。
【0048】
シミュレーションした背景水性媒体の蛍光を測定することにより、第2の背景蛍光信号を得ることができる。励起波長及び発光波長は、選択した蛍光染料に依存する。一実施形態では、励起波長は約350nm〜約600nmで、発光波長は約450nm〜約650nmである。蛍光は、上述の蛍光検出器で測定できる。第2の背景蛍光信号を手動で記録しても、オンラインモニター計器で測定し、記憶してもよい。
【0049】
第2の背景蛍光信号から背景基線蛍光信号を減算して正味の背景信号を得る。正味の蛍光信号を調節するには、正味の蛍光信号から正味の背景信号を減算して、調節した正味の蛍光信号を得ることができる。
【0050】
調節した正味の蛍光信号を総微生物含有量に換算することができる。選択した蛍光染料について、既知の微生物濃度及び蛍光測定値から検量曲線を作成することができる。一実施形態では、既知の総微生物含有量及び選択した蛍光染料を含有するいくつかのサンプルを測定して蛍光信号を得る。これらの信号の対数(log)値をグラフにプロットし、回帰分析を行って検量曲線を得、これにより総微生物含有量を蛍光信号に換算する。
【0051】
水性媒体の一部を手動で取り出しても、オンライン試験装置により計画的に取り出してもよい。
【0052】
別の実施形態では、バイオフィルムの濃度を定量することができる。バイオフィルムはガラス、プラスチック、金属、塗料などの表面にくっつき、これを該表面から取り除いて、水性媒体に分散させて、バイオフィルムの総微生物含有量を測定することができる。一実施形態では、水性媒体中のバイオフィルム含有量の測定方法は、バイオフィルムを水性媒体中に分散し、水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む。
【0053】
バイオフィルムの微生物濃度を定量するためには、バイオフィルム又は固着性の微生物を表面から脱離し、水性媒体に分散させなければならない。水性媒体は、バイオフィルム微生物を取り除くか分散することができるものであればどのようなタイプの水性媒体でもよい。一実施形態では、バイオフィルムを食塩水に分散させる。別の実施形態では、バイオフィルムを緩衝食塩水に分散させる。別の実施形態では、水性媒体をリン酸緩衝液とすることができる。別の実施形態では、水性媒体が水である。別の実施形態では、水は公営水道水とするか、冷却塔水のような工業用水とすることができる。
【0054】
微生物細胞を増殖表面からはがすか取り除いて、個別の細胞構造を破壊しない適当なやり方で水性媒体に分散し、このことは、物理的方法、機械的方法、化学的方法、又はこれらの組合せにより達成することができる。バイオフィルム細胞をはがし、分散する物理的方法の例には、撹拌、渦流、振盪及び強い剪断応力での洗浄などがあるが、これらに限らない。一実施形態では、バイオフィルムをボルテックスにより分散させる。一実施形態では、バイオフィルムクーポンを液体に浸漬し、サイクロンにおけるように、迅速に渦巻くか回転運動する流体の流れを、細胞を凝集体から解放するのに適当な時間生成することにより、クーポンから細胞を取り除く。一実施形態では、バイオフィルムを約5秒〜約5分間渦巻かせる。別の実施形態では、バイオフィルムを約10秒〜約3分間渦巻かせる。別の実施形態では、バイオフィルムを約15秒〜約1分間渦巻かせる。別の実施形態では、バイオフィルムを約30秒間渦巻かせる。
【0055】
バイオフィルム細胞をはがし、分散させる機械的方法の例には、超音波浴又は電流の使用があるが、これらに限らない。
【0056】
バイオフィルム細胞をはがし、分散させる化学的方法の例には、界面活性剤、分散剤又は消化酵素の添加があるが、これらに限らない。界面活性剤の例には、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド(EO/PO)共重合体、ジメチルアミドポリマー、Ultra−Kleen(登録商標)殺生物剤(Sterilex社(米国メリーランド州オーウィングズミルズ)から市販)、オクタンスルホン酸ナトリウム、又はアルキルポリグリコシドがあるが、これらに限らない。酵素の例には、セルラーゼ、α−アミラーゼ及びプロテアーゼのブレンドがあるが、これらに限らない。一実施形態では、分散剤はポリエチレンイミンとすることができる。
【0057】
バイオフィルムを取り除いて、水性媒体中に分散させた後、総微生物アッセイを行う。蛍光染料を水性媒体に添加する工程、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程、微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出する工程、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程、正味の蛍光信号を得る工程、及び正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程は上述した。
【0058】
別の実施形態では、濃度に、バイオフィルムを移送した水性媒体の既知の体積を掛けることにより、微生物の総量(cfu)を得ることができる。別の実施形態では、微生物の量を、バイオフィルムが付着していた表面の単位面積で割ることにより、単位表面積当たりの微生物の量(cfu/cm2)を得ることができる。
【0059】
既知の寸法の選択システム表面からバイオフィルムをサンプリングすることによりバイオフィルムを直接測定することができる。或いはまた、クーポンを用いて増殖させ、バイオフィルムを増殖させるシステムの傾向を測定することができる。水システムの区域によっては実際のサンプリングにアクセス不能な区域があり、クーポン試験により、システムがバイオフィルムを増殖させる傾向の目途が得られる。この方法はまた、処理プログラムにより処理システムがバイオフィルムを増殖させる傾向をうまく低減できることの証拠となる。
【0060】
別の実施形態では、背景蛍光信号を得て、背景の干渉を取り除き、水性媒体中のバイオフィルム含有量を測定する精度を向上させることができる。
【実施例】
【0061】
当業者が本発明を適切に実施できるように、以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0062】
実施例1
リン酸緩衝食塩水(PBS)における検量曲線
シュードモナス・フルオレッセンスを液体培地で一晩増殖させ、10mlのPBSに添加して初期サンプルを形成した。初期サンプルから一連の希釈液を調製した。0.1mlの初期サンプルを9.9mlのPBSに添加して1%(10-2)溶液を作製した。1mlの1%溶液を9mlのPBSに添加して0.1%(10-3)溶液を作製した。1mlの0.1%溶液を9mlのPBSに添加して0.01%(10-4)溶液を作製した。1mlの0.01%溶液を9mlのPBSに添加して0.001%(10-5)溶液を作製した。10mlのPBSを細胞を含有しないブランクとして用いた。
【0063】
希釈サンプル及び無細胞ブランクのそれぞれから170μlのサンプルをとり、各サンプルを20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料及び10μlの20X CyQUANT(登録商標)溶菌緩衝液(Molecular Probes社から市販)と混合した。各サンプル(無細胞ブランク、10-2、10-3、10-4及び10-5)につきLS55蛍光分光計(Perkin Elmer社製)により励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光強度I信号を得た。
【0064】
サンプルを60℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。各希釈サンプル(10-2、10-3、10-4及び10-5)につき、励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光強度II信号を得た。
【0065】
蛍光強度II信号から蛍光強度I信号を減算することにより蛍光強度差(Δ)を得た。
【0066】
標準平板計数法を用いて各サンプル(無細胞ブランク、10-2、10-3、10-4及び10-5)につきシュードモナス・フルオレッセンスの総細菌濃度を得た。
【0067】
蛍光強度差(相対光単位RLU=relative light unit)の対数値と平板計数(cfu/ml)の対数値との間の回帰分析を行って、図1に示すような検量曲線を得た。回帰方程式はy=−1.37+0.855x(R−Sq=97.6%)である。
【0068】
実施例2
検量曲線
PBSの変わりに冷却塔からの濾過水を用いた以外は実施例1と同様に検量曲線を作製した。
【0069】
冷却塔からの約50mlの水をPVDFフィルター(Millipore SLGV033RB)にて濾過し、残留する微生物を除去した。無細胞ブランク用に10mlの濾過水を使用した。
【0070】
平板計数法を用いて各サンプル(無細胞ブランク、10-2、10-3、10-4及び10-5)につきシュードモナス・フルオレッセンスの総細菌濃度を得た。
【0071】
蛍光強度差(RLU)の対数値と平板計数(cfu/ml)の対数値との間の回帰分析を行って、図2に示すような検量曲線を得た。回帰方程式はy=0.383+0.576x(R−Sq=90.7%)である。
【0072】
実施例3
シュードモナス・フルオレッセンスを培養平板にて一晩増殖させ、リン酸緩衝食塩水の170μlサンプル(複数)に添加した。各サンプルを20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料(Molecular Probes社から市販)及び10μlの20X CyQUANT(登録商標)溶菌緩衝液と混合した。
【0073】
各サンプルにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光基線信号を得た。
【0074】
サンプルを60℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。各サンプルにつき、励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して第2の蛍光信号を得た。
【0075】
第2の蛍光信号から蛍光基線信号を減算することにより蛍光強度差(Δ)を得た。実施例1で作製した検量曲線から、蛍光強度差測定値の対数値を細胞濃度(cfu/ml)と同等とみなし、図3にサンプル1として示す。図3は、細胞濃度(cfu/ml)及びATP生物発光についてのアッセイ読取り値を、シュードモナス・フルオレッセンスをリン酸緩衝食塩水(PBS)に希釈した細胞希釈度に対してプロットしたグラフである。
【0076】
また、各サンプルにつき、平板計数法及びBioscan(登録商標)ATPにより比較試験を作製した。各試験につき4回の測定を行い、平均し、図3に示した。平板計数及びサンプル1の結果を対数濃度で報告し、ATPの結果を元々の濃度で報告する。ATPの結果は同一基準について1〜logばらつきをもち、結果はノイズが多すぎて定量的比較に用いることができなかった。
【0077】
サンプル1は5分以内に行い、104cfu/mlのように低い濃度を高い精度で測定できる。これは同様のばらつき(標準偏差/平均)、並びに通常の培養による方法との良好な相関をもち、工業的なBioscan(登録商標)ATP法と比較して、はるかに良好な検出限界とより小さなばらつきとを有する。
【0078】
実施例4
シュードモナス・フルオレッセンスを培養平板にて一晩増殖させ、オートクレーブ処理して残留微生物を除去した現場水の170μlサンプル(複数)に添加した。
【0079】
各サンプルを20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料(Molecular Probes社から市販)及び10μlの20X CyQUANT(登録商標)溶菌緩衝液と混合した。
【0080】
各サンプルにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光基線信号を得た。
【0081】
サンプルを60℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。各サンプルにつき、励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して第2の蛍光信号を得た。
【0082】
第2の蛍光信号から蛍光基線信号を減算することにより蛍光強度差(Δ)を得た。実施例2で作製した検量曲線から、蛍光強度差測定値の対数値を細胞濃度(cfu/ml)と同等とみなし、図4にサンプル2として示す。図4は、細胞濃度(cfu/ml)及びATP生物発光についてのアッセイ読取り値を、シュードモナス・フルオレッセンスを現場水に希釈した細胞希釈度に対してプロットしたグラフである。
【0083】
また、各サンプルにつき、平板計数法及びBioscan(登録商標)ATPにより比較試験を作製した。各試験につき4回の測定を行い、平均し、図4に示した。平板計数及びサンプル2の結果を対数濃度で報告し、ATPの結果を元々の濃度で報告する。ATPの結果は同一基準について1〜logばらつきをもち、結果はノイズが多すぎて定量的比較に用いることができなかった。
【0084】
サンプル2は5分以内に行い、104cfu/mlのように低い濃度を高い精度で測定できる。これは同様のばらつき(標準偏差/平均)、並びに通常の培養による方法との良好な相関をもち、工業的なBioscan(登録商標)ATP法と比較して、はるかに良好な検出限界とより小さなばらつきとを有する。
【0085】
実施例5
冷却塔水中及びリン酸緩衝食塩水(PBS)中のシュードモナス・フルオレッセンス細菌について検量曲線を作製した。冷却塔からの約50mlの水をオートクレーブ処理して残留微生物を除去した。
【0086】
シュードモナス・フルオレッセンスを液体培地で一晩増殖させ、10mlのオートクレーブ処理した冷却塔水に添加して、初期サンプルを作製した。初期サンプルから一連の希釈液を調製した。0.1mlの初期サンプルを9.9mlのオートクレーブ処理した冷却塔水に添加して1%(10-2)溶液を作製した。1mlの1%溶液を9mlのオートクレーブ処理した冷却塔水に添加して0.1%(10-3)溶液を作製した。1mlの0.1%溶液を9mlのオートクレーブ処理した冷却塔水に添加して0.01%(10-4)溶液を作製した。1mlの0.01%溶液を9mlのオートクレーブ処理した冷却塔水に添加して0.001%(10-5)溶液を作製した。10mlのオートクレーブ処理した冷却塔水をブランクとして用いた。
【0087】
シュードモナス・フルオレッセンスを10mlのPBSに添加して初期サンプルを形成した。冷却塔水の場合と同様に、初期サンプルから一連の希釈液を調製し、10-2、10-3、10-4及び10-5のPBS溶液を作製した。10mlのPBSをブランクとして用いた。
【0088】
一連の水及びPBS希釈液それぞれからのサンプルを、水サンプル中の背景ノイズを測定するために取っておいた。各背景サンプルを1ppmの塩素及び20ppmのBellacide(登録商標)350からなる殺生物剤で30分間処理した。200ppmの重亜硫酸ナトリウムを添加して残留塩素を中和した。
【0089】
希釈した冷却塔水及びPBSサンプル及び背景サンプルのそれぞれから170μlのサンプルをとった。各サンプルを20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料(Molecular Probes社から市販)及び10μlの20X CyQUANT(登録商標)溶菌緩衝液と混合した。
【0090】
冷却塔水及びPBSサンプルのそれぞれにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光I信号を得た。背景冷却塔水サンプルのそれぞれにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して背景蛍光I信号を得た。
【0091】
サンプルを60℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。冷却塔水及びPBSサンプルのそれぞれにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光II信号を得た。背景冷却塔水サンプルのそれぞれにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して背景蛍光II信号を得た。蛍光II信号から蛍光I信号を減算することにより正味の蛍光強度を得た。正味の蛍光測定値は冷却塔水及びPBSサンプルそれぞれについて得た。
【0092】
背景蛍光強度II信号から背景蛍光強度I信号を減算することにより正味の背景蛍光強度を得た。背景サンプルそれぞれについて正味の背景蛍光測定値を得た。
【0093】
各サンプルにつき正味の蛍光信号から正味の背景蛍光信号を減算することにより、調節した正味の蛍光信号を得た。
【0094】
標準平板計数法を用いて、冷却塔水及びPBSサンプルそれぞれについてシュードモナス・フルオレッセンスの総細菌濃度を得た。
【0095】
調節した正味の蛍光信号(RLU)の対数値と平板計数(cfu/ml)の対数値との間で回帰分析を行い、図5に示すような、冷却塔水及びPBSについての検量曲線を得た。PBS検量曲線についての回帰方程式はy=−1.47+0.847x(R−Sq=92.2%)である。冷却塔水についての回帰方程式はy=−1.29+0.741x(R−Sq=73.7%)である。165個のデータ点のうち3つの外れ値を削除した。
【0096】
実施例6
細菌を緑膿菌とし、これをトリプシン大豆培養液(TSB)液体培地で一晩増殖させ、10mlの0.85%食塩水緩衝液に添加して初期サンプルを形成したこと以外は、実施例1と同様にして検量曲線を作製した。
【0097】
初期サンプルから一連の希釈液を調製した。0.1mlの初期サンプルを9.9mlの0.85%食塩水緩衝液に添加して1%(10-2)溶液を作製した。1mlの1%溶液を9mlの0.85%食塩水緩衝液に添加して0.1%(10-3)溶液を作製した。1mlの0.1%溶液を9mlの0.85%食塩水緩衝液に添加して0.01%(10-4)溶液を作製した。1mlの0.01%溶液を9mlの0.85%食塩水緩衝液に添加して0.001%(10-5)溶液を作製した。10mlの0.85%食塩水緩衝液を細胞を含有しないブランクとして用いた。
【0098】
希釈したサンプル及び無細胞ブランクのそれぞれから180μlのサンプルをとり、各サンプルを20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料と混合した。各サンプル(無細胞ブランク、10-2、10-3、10-4及び10-5)につきLS55蛍光分光計(Perkin Elmer社製)により励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して基線蛍光測定値を得た。
【0099】
サンプルを90℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定して蛍光強度II測定値を得た。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光強度II測定値を得た。
【0100】
蛍光強度II信号から基線蛍光信号を減算することにより蛍光強度差(Δ)を得た。
【0101】
標準平板計数法を用いて各サンプル(無細胞ブランク、10-2、10-3、10-4及び10-5)につき緑膿菌の総細菌濃度を得た。
【0102】
蛍光強度差(RLU)の対数値と平板計数(cfu/ml)の対数値との間の回帰分析を行って、図6に示すような検量曲線を得た。回帰方程式はy=−1.0185+0.7381x(R−Sq=98.97%)である。
【0103】
緑膿菌バイオフィルム細胞を316ステンレス鋼チューブ内面上で一晩増殖させた。このために、液体増殖培地、即ち1%細菌接種物を有する30%TSB培地の再循環流を再循環回路内のチューブに135ml/minの流量で供給した。
【0104】
316ステンレス鋼チューブのセグメントを所望の時間間隔後に流れシステムから除去した。316ステンレス鋼チューブのセグメントを10mlの0.85%食塩水緩衝液に浸漬し、最高速度で2分間渦巻かせることにより、バイオフィルム付着物を取り除いた。
【0105】
ボルテックス処理サンプルの180μlのアリコート(複数)を20μlの10X SYBR(登録商標)GreenI染料と混合した。各サンプルにつき励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して基線蛍光測定値を得た。
【0106】
サンプルを90℃に2分間加熱し、次いで室温まで冷却した。各サンプルにつき、励起波長497nm及び発光波長520nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルにつき蛍光を4回測定し、平均して蛍光強度II測定値を得た。
【0107】
蛍光強度II信号から蛍光基線信号を減算することにより蛍光強度差(Δ)を計算した。蛍光強度差測定値(RLU)の対数値を、図6の検量曲線に沿って、サンプル3のデータ点としてプロットした。各サンプルにつき蛍光強度差測定値の対数値を、図6の検量曲線から、細胞濃度(cfu/ml)に換算することができる。
【0108】
図6から、緑膿菌バイオフィルム細胞(サンプル3)からのデータ点はすべてプランクトン緑膿菌細胞懸濁液から得られる検量曲線とよく一致していることが分かる。これは、このアッセイが固体表面からバイオフィルムを分散させた後のバイオフィルムの定量に適当であることを示している。
【0109】
ここで図7を参照すると、上述の方法による水システムの水性媒体中の総細菌含量をモニターするシステムが図示されており、参照符号100で総称されている。図7に示す実施形態は、水性媒体が循環ループ104に流れる、通常の開放型冷却塔水再循環システム102を示す。当業界で周知のように、循環ポンプ106により水性媒体を循環ループ104に流すことができる。弁108は水性媒体を循環ループ104から総細菌モニタリングシステム100に取り出すのを可能にする。総細菌モニタリングシステム100はオンラインの分析機として機能し、水システム102の水性媒体中の細菌濃度をモニターする。当業者に明らかなように、総細菌モニタリングシステム100を用いて、公営もしくは工業用水システム又は加工システム102における総細菌の測定を通して総生存細菌の迅速な検出を可能にすることができる。したがって、水システム102をこれ以上詳しく説明する必要はない。
【0110】
総細菌モニタリングシステム100に入る水性媒体は、最初にフィルターーモジュール110を通過する。望ましくは、フィルターーモジュール110は孔径約5〜約50μmのフィルターー112を含み、そのため比較的大きな不純物は水性媒体から除去されるが、細菌含有物は通過して濾液中にある。一実施形態では、フィルターーモジュール110は、フィルターー孔径10μmのフリップフロップ型フィルターーシステム、例えば、本出願人に譲渡された米国特許出願第12/193198号(2008年8月18日出願)「インライン濾過システム」に開示されたシステムである。しかし、フィルターーモジュール110は、本発明の要旨から逸脱することなく、他の濾過構成配置を含むことができる。
【0111】
総細菌モニタリングシステム100は、制御モジュール120、サンプル調製モジュール130、溶菌モジュール140及び検出モジュール150を含む。制御モジュール120はプログラミング可能な論理コントローラ(PLC)122もしくは同様の装置と、他のモジュール130、140、150の機能を制御するための電子ユニット124とを含み、また後述するように総細菌濃度を計算する。
【0112】
サンプル調製モジュール130は、レベル切換サンプルカップ132と、サンプルカップ132への濾過水性媒体の流れを制御するためのソレノイド弁133とからなる。一実施形態では、レベル切換サンプルカップ132は1対のリードワイヤを備える。サンプルカップ132が充満状態であるか、所定の高レベルにあるとき、2本のワイヤが電子的に接続され、ソレノイド弁133の遮断を促す。サンプルカップ132が空であるか、所定の低レベルにあるとき、2本のワイヤが断続され、ソレノイド弁133の開放を促す。これらの2つの状態の間の不感帯は約1.5mlであるのが望ましい。サンプル調製モジュール130は、水性媒体の圧力を循環ループ104内のヘッダ圧力から大気圧に下げる。望ましくは、サンプルカップ132は大気に開放されており、水性媒体中の気泡がサンプルからベント134に逃げ出せるようにしている。当業者であれば理解できるように、水性媒体中の気泡は、検出モジュール150に用いる光学的測定装置からの望ましくないピーク出現の原因となるおそれがある。
【0113】
サンプルポンプ135、例えば容積移送式マイクロポンプは、水性媒体をサンプルカップ132から引き抜く。サンプルポンプ135は僅かに約5psigの定格とする場合があるので、圧力を下げることにより、サンプルポンプ135を保護する。サンプルポンプ135を用いて、サンプル調製モジュール130を通る水性媒体の流量を制御する。プログラミング可能な論理コントローラ(PLC)122はサンプルポンプ135の行程頻度を設定して流量を正確に制御する。水性媒体の流量は約100μL〜約250μLの間とするのが望ましく、約150μL〜約200μLの間とするのが特に望ましい。一実施形態では、サンプルポンプ135はポンプモデル150SP−S2(Beion Medical Technology社製)である。しかし、少量の水性媒体を正確に供給できる公知のポンプのいずれを使用してもよい。
【0114】
図示の実施形態では、蛍光色素試薬及び緩衝液を予め混合し、試薬供給部136から水性媒体に一緒に添加する。或いはまた、当業者に明らかなように、緩衝液の添加は、蛍光色素を水性媒体に添加する前でも後でもよい。試薬供給部136は試薬供給ポンプ137により蛍光色素及び緩衝液を供給する。試薬供給ポンプ137も容積移送式マイクロポンプであるのが望ましく、プログラミング可能な論理コントローラ(PLC)122はポンプの行程頻度を設定して流量を正確に制御する。試薬供給ポンプ137は蛍光色素を、水性媒体1L当たり約0.5mg〜約100mgの蛍光色素の量で添加する。緩衝液を水性媒体に添加して、水性媒体のpHを約2〜約10に維持する。一実施形態では、試薬ポンプはポンプモデル120SP−S2(Beion Medical Technology社製)である。
【0115】
サンプルポンプ135が供給する水性媒体と試薬供給ポンプ137が供給する試薬とは、混合用T字管138で合流、広義には乱流流路を構成して水性媒体と蛍光色素試薬及び緩衝液との混合を促進する混合装置で合流する。本発明の要旨から逸脱することなく、他の混合装置、例えば混合用クロスやインペラーを使用してもよい。
【0116】
図示の実施形態では、溶解モジュール140は水性媒体を加熱することにより溶菌を達成する。制御モジュール120により制御される三方弁141を用いて、サンプル調製モジュール130からの水性媒体を溶解モジュール140に差し向けてもよいし、まっ直ぐ検出モジュール150に差し向け、溶解モジュール140をバイパスしてもよい。一実施形態では、溶解モジュール140は、細胞を溶解し、微生物の細胞内容物を放出させるために水性媒体の温度を上下させる温度制御ユニット142を含む。温度制御ユニット142は、水性媒体を加熱する加熱装置144、例えば半導体プレートもしくは他の公知のヒータ素子を含む。ファンもしくは他のラジエタ146を用いて、溶菌後のサンプルの迅速な冷却を促進する。熱電対148は、加熱及び冷却期間中水性媒体の温度を測定する。制御モジュール120は、予め作製した制御プログラムを用いて、温度制御ユニット142に電力を供給し、サンプルを細胞の溶解に望ましい温度に加熱し、次いで所望の温度に達するまでサンプルを冷却するように制御する。温度制御ユニット142は、水性媒体を望ましくは約40℃〜約100℃の温度、より望ましくは約40℃〜約60℃の温度に加熱する。温度制御ユニット142は、細胞を溶解するために、水性媒体を所望の温度に、望ましくは約1分〜約1時間、より望ましくは約1分〜約3分間の期間加熱する。当業者には明らかなように、温度制御ユニット142は、水性媒体を所望通りに加熱、冷却する他の公知の手段を含んでもよい。さらに、前述の通り、本発明の要旨から逸脱することなく、溶解モジュール140は、細胞を溶解するために、他の公知の溶解方法、例えば機械的、化学的、物理的、電気的、超音波又はマイクロ波法を使用することもできる。
【0117】
次に溶菌細胞内容物を含有する水性媒体を三方弁149から検出モジュール150に送る。検出モジュール150は光学的測定ユニット152を含む。光学的測定ユニットを2つ以上用いることにより、測定の精度を高めることができる。光学的測定ユニット152は、ケイ素ガラス流れセル154及び単一波長フルオロメータ156を含む。ケイ素ガラス流れセル154は、入口流れチューブ158及び出口流れチューブ159が流れセルの底部及び頂部にそれぞれ装着されている。図8に示す線図的実施形態からよく分かるように、フルオロメータ156は、少なくとも1対の発光ダイオード(LED)160とホトダイオード発光検出器162が反応チューブ163の周囲に配置された構成である。励起波長約350nm〜約600nm、発光波長約450nm〜約650nmを有するフルオロメータにより、蛍光信号を測定するのが望ましい。フルオロメータ156はさらに、光路及び強度を制御するために、シールされた光学チューブ内に光学レンズ164及びフィルター165を含む。一実施形態では、フルオロメータ156はLS55ルミネセンススペクトロメータ(Perkin Elmer社製)である。
【0118】
3対の光学的ホト素子を用いる一実施形態では、3つのLED及び3つのホトダイオードを中心貫通孔に直交する6つの半径方向チャンネルに装備する。3つのLEDは異なる波長の入射光を発生し、対応する3つのホトダイオードは反対側でそれぞれの透過光を検出する。使用するLEDは467nmの光(青)、530nmの光(緑)及び634nmの光(赤)の3つの色、最高610nmのオレンジLED及び最高発光586nmの薄緑LEDを含む。この構成は、光学的素子の設計と保守を容易にする。3対の光学的ホト素子は、一度に3つの機能を測定する能力を与える。使用できる光学的ホト素子の対の数に上限はないが、数はモニタリングシステムの所定用途に基づく寸法上の制約により左右される。
【0119】
光学的測定ユニット152からの、サンプル水と試薬の混合物を含む流出物は、検出器モジュール150を出て、各プラントの許容要件に応じて、ドレイン又は捕集ドラムに流入する。流出物は有害でない廃水であるので、普通は流出物を重力ドレインに排出する。
【0120】
制御モジュール120は、溶解モジュール140内で微生物の細胞内容物を水性媒体中に抽出し放出する前後に、検出モジュール150により水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号と第2の蛍光信号を得るように、プログラミングされている。これらの蛍光信号は検出モジュール150で測定され、プログラミング可能な論理コントローラ122に記憶される。第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る。正味の蛍光信号は、溶解された細胞の微生物含有量の測定結果である。上述の通り検量曲線を用いて総微生物含有量を得る。上述の通り、検量曲線を作製するには、蛍光色素を含有する水性媒体中の既知の濃度の微生物について蛍光信号を測定し、各濃度ごとに正味の蛍光信号を求め、グラフ上で濃度の値を正味の蛍光信号の対数値に対してプロットし、回帰分析を行って、検量曲線を得る。上述の特徴を有するので、本システムは総細菌をオンラインにてモニターすることができる。
【0121】
以上、代表的な実施形態を具体的な説明として示したが、以上の説明は本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。したがって、当業者は、本発明の要旨から逸脱することなく、様々な変更、改変、置き換えなどを想起できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中の総微生物含有量の測定方法であって、
水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記水性媒体が水、食塩水又はリン酸緩衝溶液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記蛍光染料が蛍光色素である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光色素がアクリジンオレンジ、エチジウムブロミド、ヘキスト33258、ヘキスト33342、プロピジウムヨージド、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール又はシアニン染料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記蛍光染料が水性媒体1L当たり約0.5mg〜約100mgの蛍光染料の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記水性媒体のpHを約2〜約10に維持する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記水性媒体に緩衝液を添加してpHを維持する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝液が、リン酸緩衝食塩水、ホウ酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
蛍光信号を蛍光分光計で約350nm〜約600nmの励起波長及び約450nm〜約650nmの発光波長で測定する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記微生物を溶解試薬で化学的に溶解して細胞内物質を放出させる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記微生物を、界面活性剤、酵素、抽出溶剤又は溶解緩衝液を含む溶解試薬で溶解する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
溶解試薬を水性媒体1L当たり約1mg〜約10000mgの量で添加する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
微生物を物理的、機械的又は電気的に溶解して細胞内物質を放出させる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
水性媒体を約40℃〜約100℃の温度に約1分〜約1時間加熱して微生物の細胞を溶解する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
正味の蛍光信号を検量曲線から微生物濃度に換算する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記検量曲線を作成するのに、蛍光染料を含有する水性媒体中の微生物の既知の濃度について蛍光信号を測定し、各濃度について正味の蛍光信号を求め、グラフ上で濃度の値を正味の蛍光信号の対数値に対してプロットし、回帰分析を行って検量曲線を得る、請求項15記載の方法。
【請求項17】
微生物の既知の濃度を平板計数法で求める、請求項16記載の方法。
【請求項18】
さらに、正味の蛍光信号を背景信号で調節する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
当該方法がさらに正味の蛍光信号を背景信号で調節する工程を含み、
当該方法が、さらに、背景水性媒体部分用の追加の水性媒体部分を得る工程と、背景水性媒体部分を処理して微生物を除去する工程と、処理した背景水性媒体部分に蛍光染料を添加する工程と、処理した背景水性媒体部分中の蛍光信号を測定して背景基線蛍光信号を得る工程と、背景水性媒体部分中での溶解手順のシミュレーションを行う工程と、シミュレーションした背景水性媒体部分中の蛍光信号を測定して第2の背景蛍光信号を得る工程と、第2の背景蛍光信号から背景基線蛍光信号を減算して正味の背景信号を得る工程と、正味の蛍光信号を正味の背景信号で調節する工程と、調節した正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記背景水性媒体部分を物理的又は化学的に処理する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記背景水性媒体部分の処理を、背景水性媒体を約40℃〜約100℃の温度に約1分〜約1時間加熱することにより行う、請求項20記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記背景水性媒体に殺生物剤を添加する工程を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
水性媒体中の総微生物含有量の測定方法であって、
水性媒体部分に蛍光染料を添加する工程と、
背景水性媒体部分用の追加の水性媒体部分を得る工程と、
背景水性媒体部分を処理して微生物を除去し、
処理した背景水性媒体部分に蛍光染料を添加する工程と、
水性媒体部分中の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、
処理した背景水性媒体部分中の蛍光信号を測定して背景基線蛍光信号を得る工程と、
微生物を溶解することによって微生物の細胞内容物を水性媒体部分に放出させる工程と、
背景水性媒体部分中での溶解手順のシミュレーションを行う工程と、
放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、
シミュレーションした背景水性媒体部分中の蛍光信号を測定して第2の背景蛍光信号を得る工程と、
第2蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、
第2の背景蛍光信号から背景基線蛍光信号を減算して正味の背景信号を得る工程と、
正味の蛍光信号を正味の背景信号で調節する工程と、
調節した正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程と
を含む方法。
【請求項24】
微生物含有量がバイオフィルム含有量を含み、当該方法はさらに水性媒体中でバイオフィルムを取り除いて、分散させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
水性媒体の撹拌又はボルテックスにより前記バイオフィルムを物理的に取り除く、請求項24記載の方法。
【請求項26】
超音波処理プローブを用い、水性媒体中で振動させることにより前記バイオフィルムを機械的に取り除く、請求項24記載の方法。
【請求項27】
電界に曝露することにより前記バイオフィルムを表面から取り除く、請求項24記載の方法。
【請求項28】
界面活性剤、バイオ分散剤又はこれらの混合物を用いて前記バイオフィルムを化学的に取り除く、請求項24記載の方法。
【請求項29】
さらに、前記バイオフィルムが付着した表面の単位表面積当たりの微生物量を計算する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
さらに、正味の蛍光信号を背景蛍光信号で調節する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
水性媒体中のバイオフィルム含有量の測定方法であって、バイオフィルムを水性媒体中に分散させる工程と、水性媒体に蛍光染料を添加する工程と、水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る工程と、微生物の細胞内容物を水性媒体に放出させる工程と、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る工程と、第2の蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を微生物含有量に換算する工程とを含む方法。
【請求項32】
水性媒体に蛍光染料を添加するように構成されたサンプル調製モジュールと、
微生物の細胞内容物を水性媒体に放出する溶解モジュールと、
溶解モジュールをバイパスする水性媒体のサンプル中の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得るとともに、放出された微生物の細胞内容物を含有する溶解モジュールを通過する水性媒体のサンプル中の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る、光学的測定ユニットを有する検出モジュールと、
第2蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を水性媒体の微生物含有量に換算する制御モジュールと
を備える、水性媒体中の総微生物含有量の測定システム。
【請求項33】
蛍光染料が蛍光色素であり、これを試薬添加ポンプで水性媒体に添加し、混合装置で混合する、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
前記検出モジュールは、少なくとも1対の発光ダイオード(LED)とホトダイオード発光検出器が反応管の周囲に配置された構成で、励起波長約350nm〜約600nm及び発光波長約450nm〜約650nmを有するフルオロメータを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項35】
前記溶解モジュールが水性媒体の温度を上げる温度制御ユニットを含む、請求項32記載のシステム。
【請求項36】
温度制御ユニットが水性媒体の温度を約40℃〜約100℃の温度に上げて細胞を溶解する、請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記制御モジュールは、検量曲線を用いて正味の蛍光信号を微生物濃度に換算する、請求項32記載のシステム。
【請求項38】
水性媒体に蛍光染料を添加するように構成されたサンプル調製モジュールと、
水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得る手段と、
微生物の溶解によって微生物の細胞内容物を水性媒体中に放出させる手段と、
放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得る手段と、
第2蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を水性媒体の微生物含有量に換算する制御モジュールと
を備える、水性媒体中の総微生物含有量の測定システム。
【請求項39】
蛍光染料が蛍光色素であり、これを試薬添加ポンプで水性媒体に添加し、混合装置で混合する、請求項38記載のシステム。
【請求項40】
前記蛍光信号測定手段は、少なくとも1対の発光ダイオード(LED)とホトダイオード発光検出器が反応管の周囲に配置された構成で、励起波長約350nm〜約600nm及び発光波長約450nm〜約650nmを有するフルオロメータを含む、請求項38記載のシステム。
【請求項41】
前記微生物溶解手段が水性媒体の温度を上げる温度制御ユニットである、請求項38記載のシステム。
【請求項42】
温度制御ユニットが水性媒体の温度を約40℃〜約100℃の温度に上げて細胞を溶解する、請求項41記載のシステム。
【請求項43】
前記制御モジュールは、検量曲線を用いて正味の蛍光信号を微生物濃度に換算する、請求項38記載のシステム。
【請求項44】
水性媒体に蛍光染料を添加するように構成されたサンプル調製モジュールと、
水性媒体を約40℃〜約100℃の温度に加熱することにより微生物の細胞を溶解して、微生物の細胞内容物を水性媒体に放出する、溶解モジュール温度制御ユニットと、
水性媒体の蛍光信号を測定して基線蛍光信号を得るとともに、放出された微生物の細胞内容物を含有する水性媒体の蛍光信号を測定して第2の蛍光信号を得るフルオロメータを有する検出モジュールであって、前記フルオロメータは、少なくとも1対の発光ダイオード(LED)とホトダイオード発光検出器が反応管の周囲に配置された構成で、励起波長約350nm〜約600nm及び発光波長約450nm〜約650nmを有する、検出モジュールと、
第2蛍光信号から基線蛍光信号を減算して正味の蛍光信号を得る工程と、正味の蛍光信号を水性媒体の微生物含有量に換算する制御モジュールと
を備える、水性媒体中の総微生物含有量の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−507288(P2012−507288A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534575(P2011−534575)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059239
【国際公開番号】WO2010/062472
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】