説明

水性懸濁液からの、生体粒子の吸着に基づく分離方法

生体粒子を含有する水性懸濁液からの、生体粒子の吸着に基づく分離方法であって、その方法が、a)該水性懸濁液を、その表面上に分離される生体粒子の表面上の受容体と特異的又は非特異的に相互作用可能なリガンドを保有するマクロ多孔性のクリオゲルモノリスと接触させ、該生体粒子を該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスに吸着させること;及びb)溶出によって該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスから該生体粒子を遊離させ、ここで該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスが溶出媒体への暴露と連動して物理的変形に供されること、を含む方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体粒子を含む水性懸濁液からの、そのような生体粒子の吸着に基づく分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生態のいたるところで生じている生体粒子(細菌、細胞小器官、細胞、ウイルス)間の相互作用及び親和性に基づく分離における細胞の表面への吸着は、多価の性質を有する。多価(polyvalent)又は多価(multivalent)相互作用は、生体粒子の表面上の複数の受容体の、別の表面上の複数のリガンドへの同時の結合によって特徴付けられ、対応する一価の相互作用よりも集合的にずっと強くあり得る。
【0003】
多価の相互作用を破壊する困難性は、細胞分離の親和性技術を設計することにおける主要な問題の一つである。理論的な研究は、相互作用の数が>10である状況では、合理的な濃度の可溶性の一価の競合剤(生体特異的な溶出剤)が、結合の平衡状態を移動させ得る見込みはないことを示してきた。典型的なクロマトグラフィーの条件(cmあたり1010〜1012のリガンド及び受容体、並びに10−10〜10−8cmの接触領域)下では、特異的結合相互作用の数は、1〜10,000の間であり得る。したがって、ほとんどの場合、複数の結合を同時に破壊し、特異的に吸着した細胞を脱着させるためには、外部の力が必要である。親和性表面上での細胞の保持は、協同効果をもたらす一方で、個別の受容体−リガンド結合の親和性及び表面リガンドの濃度と相関し、付着した細胞を除去するために必要な力を減少させる競合的結合阻害剤の存在に感受性である。細胞放出のために現在用いられるアプローチにおいて、脱着力は気液界面の通過によって発生される(X. Cao, R. Eisenthal, J. Hubble, 親和性吸着細胞の脱着戦略, Enzyme. Microbial. Technol. 31 (2002) 153-160; C. Gomez- Suarez, H. J. Busscher, H. C. Van der Mei, 気液界面の通過による基層表面からの細菌脱着の解析, Appl . Environ. Microbiol. 67 (2001) 2531-2537)か、又は流動誘導性せん断力を用いることによって発生される(F. Ming, W. J. D. Whish, J. Hubble, 細胞−表面相互作用のためのパラメータの推定:最大の結合力及び脱着定数, Enzym. Microb. Technol. 22 (1998) 94-99; C. Cozens-Roberts, J. A. Quinn, D. A. Lauffenburger, 受容体媒介性細胞付着及び脱着キネティクス.II.放射状流脱着アッセイでの実験(Experimentsl)モデル研究, Biophys. J. 58 (1990) 857-872)。後者は、溶出細胞の高度の希釈をもたらし、細胞障害のリスクを含む。
【0004】
細胞表面の高い不均一性のため、親和性相互作用とともに細胞表面界面での細胞行動を制御し、細胞分離のための親和性吸着剤を設計する場合に考慮しなくてはならない他の因子(例、疎水性及び静電気的相互作用、ファンデルワールス引力)が存在し得る。最近まで、細胞接着の研究は、ポリスチレン、テフロン(登録商標)及びガラスのような堅い支持体への微生物の接着性という、表面化学及び局所分布への細胞応答に主に集中していた。生物学的な系において、細胞はしばしば柔らかい表面(例、弾性の変化を経得る組織又は細胞外基質(例、創傷治癒))と接触する。しかし、最近になってやっと、細胞接着に対する基質力学の影響の体系的な研究が行われ、表面の柔軟性及び弾性が、細胞−表面相互作用を調整する重要なパラメータであることが示された(M. T. Madigan, J. M. Martinko, J. Parker, Brock Biology of Microorganisms. 9-th ed. Upper Saddle River, NJ, USA: Prentice-Hall, Inc., 2000; R. J. Pelham, Y. L. Wang, 細胞遊走及び接着点は、基質可動性によって調節される, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997) 13661-13665; J. Y. Wong, J. B. Leach, X. Q. Brown,細胞−生体材料界面における化学、局所分布、及び力学のバランス:細胞応答に対する基質力学の役割を評価するための課題及び挑戦, Surf. Sci. 570 (2004) 119-133.)。例えば、異なる型の細胞と、ポリアクリルアミド及びアルギン酸ベースの表面の弾性との関係の調査は、基質剛性の低下に続く細胞行動におけるいくつかの共通の変化(すなわち、細胞伸展の減少及び細胞表面相互作用の減退)を明らかにした(R. J. Pelham, Y. L. Wang, 細胞遊走及び接着点は、基質可動性によって調節される, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997) 13661-13665; A. Engler, L. Bacakova, C. Newman, A. Hategan, M. Griffin, D. Discher, ゲル応答に対する細胞における基質コンプライアンス対リガンド密度, Biophys. J. 86 (2004) 617-628; N. G. Genes, J. A. Rowley, D. J. Mooney, L. J. Bonassar. 改良アルギン酸表面への軟骨細胞接着に対する基質力学の影響, Arch. Biochem. Biophys. 422 (2004) 161-167)。興味深いことに、これらの傾向は、接着性のリガンドとは独立している。吸着剤の力学に対する、細胞行動のそのような依存性の重要な意味は、細胞親和性分離における軟質材料の使用が、非特異的細胞−表面相互作用を回避する又は低下させる助けとなり得ることである。
【0005】
ポリアクリルアミドベースのクリオゲルモノリスが最近、生体分離における適用のために開発されており(V. I. Lozinsky, F. M. Plieva, I.Yu. Galaev, B. Mattiasson, 生体分離における重合体クリオゲルの潜在能力, Bioseparation 10 (2002) 163-188. I. Yu. Galaev, M. B. Dainiak, F. M. Plieva, R. Hatti-Kaul, B. Mattiasson, マイクロタイター(マルチウェル)プレート形式で超マクロ多孔性弾性モノリスを用いる微粒子含有サンプルのハイスループットスクリーニング, J. Chromatogr. A 1065 (2005) 169-175)、高い多孔率及び弾性によって特徴付けられている。孔のサイズ(10〜100μm)及び相互接続した構造並びに吸着剤との非特異的相互作用の欠如によって、細胞は親和性リガンドをもたない素のクリオゲルを自由に通過する(P. Arvidsson, F. M. Plieva, I. N. Savina, V. I. Lozinsky, S. Fexby, L. Bulow, I. Yu. Galaev, B. Mattiasson, 連続して超マクロ多孔性親和性カラム及びイオン交換カラムを用いた微生物細胞のクロマトグラフィ, J. Chromatogr. A 977 (2002) 27-38; A. Kumar, F. M. Plieva, I. Yu. Galaev, B. Mattiasson, 超マクロ多孔性モノリスクリオゲルを用いたリンパ球の親和性分取, J. Immunol. Methods 283 (2003) 185- 194)。どちらかといえば脆性な伝統的なポリアクリルアミドゲルと異なり、ポリアクリルアミドベースのクリオゲルは、機械的に損傷されることなく簡単に圧縮され得る、弾性の軟質なスポンジ様の材料である。モノリスが保持する毛管力のため、モノリス内の液体は、排液から保護される。その結果、溶出によって分離される生体粒子の表面上の受容体と特異的又は非特異的に相互作用可能なリガンドをその表面に保有するポリアクリルアミドベースのクリオゲルに吸着した材料の遊離における有効性(完全に吸着した細胞のうち回収された細胞の%として算出した)は、溶出工程の有効性を上昇させるために流動誘導性せん断力を加えた場合であっても低いことが、本発明者らによって見出された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その理由のため、本発明の目的は、マクロ多孔性のクリオゲルモノリスに吸着した生体粒子を溶出する場合に取得すべき吸着した材料の遊離において改良された有効性を可能とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の説明
本発明は、マクロ多孔性のクリオゲルモノリスに吸着した生体粒子の放出が、該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスを、溶出媒体への暴露と連動させて物理的変形に供することによって実質的に改良されるという驚くべき発見に基づく。
【0008】
したがって、本発明は、生体粒子を含む水性懸濁液からの、そのような生体粒子の吸着に基づく分離方法に関するものであり、その方法は、
a)該水性懸濁液を、その表面上に分離される生体粒子の表面上の受容体と特異的又は非特異的に相互作用可能なリガンドを保有するマクロ多孔性のクリオゲルモノリスと接触させ、該生体粒子を該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスに吸着させること;及び
b)溶出によって該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスから該生体粒子を遊離させ、ここで該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスが溶出媒体への暴露と連動して物理的変形に供されること、
を含む。好ましくは、該物理的変形は、該溶出中にマクロ多孔性のクリオゲルを圧縮することによってもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の方法において用いられ得るマクロ多孔性のクリオゲル及びそれらの製造の方法は、例えば、WO 03/041830 A2及びWO 03/031014 Al中に記載されており、モノリスの形態のマクロ多孔性のクリオゲルの製造の方法は、例えば、WO 2004/087285 Al中に記載されており、それらの参考文献の開示は全体として、参照によって本明細書中に組み込まれるものとする。
【0010】
ポリアクリルアミドベースのクリオゲルモノリスはまた、Protista Biotechnology AB,Lund,Swedenから市販されている。
【0011】
本発明の方法において用いられるべきマクロ多孔性のクリオゲルモノリスは、好ましくはその表面上にリガンドを保有するポリアクリルアミドクリオゲルモノリスである。
【0012】
クリオゲルを、そこへ1個以上のリガンドを導入することによって修飾する方法は、文献から(例、上記のWO 03/041830 A2から)公知である。
【0013】
本発明の方法と関連して用いられても良いリガンドの例としては、イオン交換基、固定化金属親和性リガンド、タンパク質リガンド(コンカナバリンA(ConA)のようなレクチン等)、免疫グロブリン結合タンパク質(プロテインAのような)、抗体、抗原、受容体、合成リガンド、修飾ペプチド又はタンパク質リガンド、核酸等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0014】
本発明によれば、本発明の方法を手段として水性懸濁液から分離される生体粒子は、哺乳類細胞、細菌、細胞小器官、ウイルス、封入体、ラテックス粒子、エアロゾル、有機もしくは無機組成物又は二者の複合物の粒子からなる群より選択されてもよく、その寸法はナノからマイクロメートルの範囲内である。
【0015】
用いられるマクロ多孔性のクリオゲルモノリスの具体的な材料に依存して、該モノリスの容積は、本発明の方法による物理的変形に供されている時に、異なる最大の程度まで減少されてもよい。原則として、マクロ多孔性のクリオゲルモノリスは、各具体的な事例において用いられる器具と関連して、可能な最大の程度まで圧縮されるべきである。一般的には、マクロ多孔性のクリオゲルモノリスは、溶出媒体の存在下において、その最初の容積の25〜30%より小さい容積、好ましくはその最初の容積の20%より小さい容積、そして最も好ましくは(実際に可能である場合)その最初の容積の1%より小さい容積に圧縮されるべきである。
【0016】
WO 91/17830 Alは、過剰な緩衝液を除去するため、そして後のクロマトグラフィーの実行においてスポンジ吸着剤から溶出緩衝液を採取するための、圧縮の利用を開示する。しかしながら、この事例において、スポンジの圧搾は、溶出効率を改良しない。圧搾は、液体の取り扱いを改良するため(すなわち、基質におけるデッドボリュームを低下させ、したがってより小さい容積の溶出された可溶性タンパク質を取得するため)に、例外的に用いられた。この従来技術の方法において、溶出剤の非存在下におけるスポンジ吸収剤の圧搾は、結合したタンパク質の溶出をもたらさない。実際には、それが、結合したタンパク質を緩めるリスクなしに、洗浄の状態で圧搾を使用することを可能とした。
【0017】
その一方で、本発明の場合、圧搾は、結合した生体粒子の溶出の主要な駆動力として用いられる。生体粒子は、溶出剤の非存在下においても、圧搾によってクリオゲルモノリスから放出され得る。しかし、溶出剤の存在下における圧搾は、結合した粒子の放出をより効率的にする。したがって、本発明の方法によれば、特異的に結合した生体粒子をもつクリオゲル吸着剤を圧搾することは、WO 91/17830 Alから予想できるように液体の取り扱いを改良したことのみならず、予測外の結合粒子の改良された溶出もまたもたらした。
【0018】
これから、本発明を幾つかの具体的な実施例によってさらに説明するが、これら実施例は、本発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。続く実施例のうち、調製例A〜Dは、本発明の方法において用いられるマクロ多孔性ハイドロゲルモノリスの製造に関するのに対し、実施例1〜4は、本発明の方法を説明する。
【実施例】
【0019】
調製例A
エポキシ含有ポリアクリルアミド(polyAAm)クリオゲルモノリスの製造
反応混合液中5及び6%の共単量体の溶液を用いて、2種類のエポキシ活性化polyAAmクリオゲルモノリスを製造した。 アクリルアミド(1.21又は1.01g)、N,N’−メチレン−ビス(アクリルアミド)(0.43又は0.36g)及びアリルグリシジルエーテル(0.170又は0.142ml)を、30mlの脱イオン水に溶解した。混合物を、10分間減圧下で脱気し、溶解した酸素を除いた。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(21又は18μl)及び過硫酸アンモニウム(APS、18又は15mg)を添加することによって、フリーラジカル重合を開始させ、反応混合物を20秒間穏やかに撹拌した(混合物は、APSの添加に15分間先立って、氷浴中で冷却した)。次いで、0.5mlの反応混合物を、シリコンキャップで底部を閉じたガラス管(39×7.1mm内径)に迅速に添加した。ガラス管は、標準的なマイクロタイタープレートのウェルの内径よりもわずかに大きな内径を有した。溶液を、30分以内にARCTEST冷却チャンバー中で、−12℃にて凍結させ、一晩−12℃にて凍結を保ち、次いで室温にて解凍した。シリコンキャップを除去し、クリオゲルモノリスを脱イオン水で徹底的に洗浄した。
【0020】
調製例B
I.固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)リガンドでのクリオゲルモノリスの調製
調製例Aにしたがって調製したエポキシ活性化クリオゲルモノリス(16プラグ) を、0.5M NaCOで洗浄し、pH10.0の1.0M NaCO中で、0.5M イミノ二酢酸(IDA)で平衡化し、30mlのこの溶液中で24時間、室温にて穏やかな振とう下でインキュベートした。IDA−クリオゲルモノリスを、各ウェルの底部にドリルで開けた穴(直径0.3cm)をもつ96ウェルプレートのウェル中へと配置し、pHが中性になるまで水で洗浄した。2mlの0.25M CuSO又はNiClそれぞれを、各ウェルを通過させることによって、Cu(II)及びNi(II)イオンを、IDA−クリオゲルモノリスへと結合させた。最後に、各ウェルを水で洗浄し、IDA−クリオゲルモノリスを、pH7.0の0.2M NaClを含む20mM HEPESで平衡化した。
II.クリオゲルモノリス上のリガンド密度の決定
固定化されたIDAの量を、結合したNi(II)イオンの量を、以下のように測定することによって決定した:2mlの25mM NiCl及び2mlの脱イオン水を、上記IからのIDAクリオゲルモノリスの中を通過させた。加えたNiCl溶液中及び流出液中のNi(II)イオンの量を、Dr.Langeキット(Dr.Bruno Lange GmbH,Germany)を用いて決定した。サンプルは、解析に先立って、脱イオン水で1:1000に希釈した。結合したNi(II)の量は、加えたNi(II)と非結合Ni(II)との量の間の差異として算出した。
【0021】
調製例C
I.ConA−クリオゲルモノリスの調製
調製例Aに従って調製したエポキシ活性化クリオゲルモノリスを、1M NaCl、1mM CaCl、1mM MgClを含むpH9.0の0.05M 炭酸バッファー中のコンカナバリンA(ConA)溶液(2mg/ml)で平衡化し、ConAの新鮮な溶液で室温にて穏やかな振とう下で24時間インキュベートした。未反応のエポキシ基を、1M NaCl、1mM CaCl、1mM MgClを含むpH9.0の0.05M 炭酸バッファー中の0.1M エタノールアミンとともに、クリオゲルモノリスを室温にて穏やかな振とう下で2時間インキュベートすることによってブロックした。ConA−クリオゲルモノリスを、各ウェルの底部にドリルで開けた直径0.3cmの穴をもつ96ウェルプレートのウェル中へと配置し、0.5M NaCl、1mM CaCl、1mM MgClを含むpH6.5の0.1M 酢酸バッファーで洗浄した。
II.クリオゲルモノリス上のリガンド密度の決定
クリオゲルモノリス上に固定化されたConAの量を、改良ビシンコニン酸アッセイ (A. Kumar, F. M. Plieva, I.Yu. Galaev, B. Mattiasson, 超マクロ多孔性モノリスクリオゲルを用いたリンパ球の親和性分取, J. Immunol. Methods 283 (2003) 185-194)によって決定した。15mgの、乾燥されかつ微細に粉砕されたConA−クリオゲルモノリスを、400μlの脱イオン水中に懸濁した。50及び100μlのConA−クリオゲル懸濁液へ、2mlのビシンコニン酸(BCA)溶液を添加し、混合物を徹底した振とう下で2時間、室温にてインキュベートした。50及び100μlの微細に粉砕した自然なクリオゲルモノリスの懸濁液(400μlの脱イオン水中、15mgの粉砕した粉末)へ、ConAへの定量的な添加を用いて、検量線を作成した。吸光度を、サンプルを遠心して、及び遠心しない両方で、562nmにて測定した。
【0022】
調製例D
プロテインA−クリオゲルモノリスの調製
調製例Aに従って調製したエポキシ活性化クリオゲルモノリスを、0.2M NaCO中の0.5M エチレンジアミンで平衡化し、この溶液の新鮮な一部で、一晩、室温にて、穏やかな振とう下でインキュベートした。水及びpH7.2の0.1M リン酸ナトリウムバッファーで洗浄した後、クリオゲルモノリスを、同一のバッファー中のグルタルアルデヒド溶液(5% v/v)で平衡化し、この溶液の新鮮な一部で、5時間、室温にて、穏やかな振とう下でインキュベートした。官能性アルデヒド基で誘導体化されたクリオゲルモノリスを、プロテインA溶液(0.1M リン酸ナトリウムバッファー中2mg/ml、pH7.2)で平衡化し、この溶液の新鮮な一部で、48時間、4℃にて、穏やかな振とうにてインキュベートした。最後に、クリオゲルモノリスを、30mlの新たに調製したNaBH溶液(炭酸ナトリウムバッファー中0.1M、pH9.2)で3時間、穏やかな振とうにてインキュベートし、タンパク質とアルデヒド含有基質との間に形成されたシッフ塩基を減少させた。
【0023】
クリオゲルモノリス上に固定化されたプロテインAの量を、改良ビシンコニン酸アッセイ(A. Kumar, F. M. Plieva, I. Yu. Galaev, B. Mattiasson, 超マクロ多孔性モノリスクリオゲルを用いたリンパ球の親和性分取, J. Immunol. Methods 283 (2003) 185-194)によって決定した。15mgの、乾燥されかつ微細に粉砕されたタンパク質プロテインA−クリオゲルモノリスを、400μlの脱イオン水中に懸濁した。50及び100μlのプロテインA−クリオゲル懸濁液へ、2mlのビシンコニン酸(BCA)溶液を添加し、混合物を徹底した振とう下で2時間、室温にてインキュベートした。50及び100μlの微細に粉砕した自然なクリオゲルモノリスの懸濁液(400μlの脱イオン水中、15mgの粉砕した粉末)へのプロテインAの定量的な添加を用いて、検量線を作成した。吸光度を、サンプルを遠心して、及び遠心しない両方で、562nmにて測定した。
【0024】
実施例1
親和性クリオゲルモノリスを用いた酵母細胞及びラテックス粒子の結合及び回収
一定分量(200μl)の酵母細胞(地元の供給業者からのパン酵母)の懸濁液(DD600=1.03)及びポリ(N−ビニルイミダゾール−co−N−イソプロピルアクリルアミド)(ポリ(VI−NIPAM))ラテックス粒子(OD450=0.674)を、pH7.4の0.1M Tris−HCl、150mM NaCl、5mM CaCl及び5mM MgCl並びにpH7.0の20mM HEPES、0.2M NaClそれぞれで平衡化したConA−クリオゲルモノリス(調製例Cに従って調製した)及びCu(II)−IDA−クリオゲルモノリス(調製例Bに従って調製した)(共単量体の6%溶液を用いて調製した0.5mlの吸着剤)に加えた。加えた粒子との異なる期間のインキュベーション後、親和性クリオゲルモノリスを、対応するランニングバッファーの12カラム容積で、流速21cm/hにて洗浄し、非結合粒子を除去した。結合した粒子の量は、加えた懸濁液中の粒子の量とフロースルー画分中の粒子の量との間の差異として算出した。
【0025】
本実験では、親和性クリオゲルモノリス(0.5ml;ロッド12.5×7.1mm直径)は、ポンプに連結したカラム(7×20mm内径)中へと配置した。新たな親和性クリオゲルモノリスを、各試験において用いた。
【0026】
下の表1によって示されるように、酵母細胞の効率的な捕獲には、ConA−クリオゲルモノリスとのインキュベーションが必要であったものの、Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスに結合したポリ(VI−NIPAM)ラテックスの量は、加えた粒子と吸着剤との接触の時間とは独立していた。ConA−又はCu(II)−IDA−クリオゲルモノリス上に加えた酵母細胞又はラテックスの量の増加は、結合の増加はもたらさず、加えた粒子の過剰分はフロースルー中にあった(データ示さず)。
【0027】
結合した粒子の放出のために2種類の異なる戦略を用いた:バッファー及び対応する溶出剤(酵母細胞の場合には1.5mlのα−D−マンノ−ピロシド(pyroside)(又はグルコース)、ラテックス粒子の場合にはEDTA(又はイミダゾール))のパルスを続けて430cm/hの速度で通過させることによってせん断力を加えること(流動誘導性脱着)、並びにクリオゲルモノリスの機械的な圧縮(圧搾)によってせん断力を加えること。流動誘導性脱着の間のバッファー及び溶出剤のパルスの持続時間を最適化し、前工程によってそれ以上の細胞が回収できなくなったときに次の脱着工程を適用した。流動誘導性脱着工程後、カラムをポンプから取り外し、モノリス性吸着剤をガラスロッドで圧縮し、新たな一部(0.5ml)の溶出剤を添加することによって再膨張させ、再び圧縮した。圧搾された液体(総容積0.70〜0.75ml)を採取し、濁度測定(600又は450nmでの吸光度)によって解析した。
【0028】
洗浄工程に先行するConA−クリオゲルモノリス内の酵母細胞の接触時間が、相互作用の強度に対して明白な効果を有し、その結果流動誘導性脱着の効率に対しても明白な効果を有した(表1)。インキュベーション工程なしで行われた試験においては、捕獲された酵母細胞の29%及び36%が、それぞれ0.3M α−D−マンノ−ピラノシドなしで及び0.3M α−D−マンノ−ピラノシド存在下で加えられた流動によって脱着した。細胞を親和性吸着剤内にて30分間インキュベートした試験においては、結合した細胞の9%のみが第一のパルスによって放出され、9%が特定の溶出剤の存在下で加えられたせん断によって放出された。結果は、親和性基質への異なる結合強度によって特徴付けられる、いくつかの画分の捕獲された酵母細胞があることを示す。高めた流速によって脱着させることのできない強力に結合した細胞の画分が、細胞と親和性吸着剤との接触時間が増加するとともに、大きくなっている。酵母細胞とConAコートされた表面との相互作用の強度に対する時間依存的な影響もまた、Lam等によって観察された(A. Lam, X. Cao, R. Eisenthal, J. Hubble, 細胞の表面への親和性媒介性吸着に対する、接触時間及び阻害剤濃度の効果, Enzym. Microb. Technol. 29 (2001))。安定化現象は、表面上の親和性リガンドによる細胞の最初のアンカリングに引き続く時間依存的な様式での結合のさらなる形成の可能性によって説明されている(J. Hubble, 親和性細胞分離:問題点及び見通し. Trends Biotechnol. 15(1997) 249-255)。細胞の集団と親和性表面との間に形成される結合の数の分布に起因して、付着強度の分布があることが観察されている(F. Ming, R. Eisenthal, W. J. D. Whish, J. Hubble, 親和性媒介性細胞−表面付着のキネティクス, Enzym. Microb. Technol. 26 (2000) 216-221)。特定の溶出剤の存在下においても、せん断力によって放出されなかった酵母細胞の画分を含むConA−クリオゲルモノリスの圧縮は、その細胞の画分の完全な回収をもたらした(表1)。
【0029】
ポリ(VI−NIPAM)ラテックスとCu(II)−IDA−クリオゲルモノリスとの相互作用のキネティクスは迅速であり、付着の強度は接触時間と独立していた:捕獲されたインキュベーション前工程あり又はなしのラテックスの12%以下が、430cm/hの速度にて加えられた0.3M イミダゾールのパルスでカラムから出てきた(表1)。捕獲されたラテックス粒子の約60%が、Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスを圧搾することによって脱着した。
【0030】
【表1】

【0031】
上記に記載されたデータは、クリオゲルモノリス吸着剤の機械的圧縮が、結合した粒子と親和性クリオゲルの表面との間の複数の結合の破壊、及び圧搾された液体の流動での脱着した粒子の回収をもたらすことを実証する。親和性クリオゲルモノリスによって捕獲された細胞は、孔の壁の素の「平らな」部分に結合しており、「デッドフロー」の帯域中に捕捉されているのではないことが、走査型電子顕微鏡の研究により、以前に実証されていた(P. Arvidsson, F. M. Plieva, I. N. Savina, V. I. Lozinsky, S. Fexby, L. Bulow, I. Yu. Galaev, B. Mattiasson, 連続して超マクロ多孔性親和性カラム及びイオン交換カラムを用いた微生物細胞のクロマトグラフィ, J. Chromatogr. A 977 (2002) 27-38)。親和性結合の破壊の考えられる理由は、機械的圧縮によって起こった素の面の変形又は/及び親和性リガンドの不活化であり得る。リガンドの不活化の可能性を、圧搾工程後に再生された親和性クリオゲルモノリスを用いた吸着試験において研究した(表2)。サイクルIにおいて、解析した粒子の懸濁物を、対応する親和性クリオゲルモノリスへと加え(酵母細胞は、吸着剤内で15分間インキュベートした)、非結合粒子を洗浄によって除去し、モノリスを溶出剤(酵母細胞及びポリ(VI−NIPAM)ラテックスそれぞれの場合に、0.3M α−D−マンノ−ピラノシド及び0.3M イミダゾール)で平衡化した。結合した粒子を、前記の圧搾工程によって放出させた。脱着工程後、12カラム容積の対応するランニングバッファーで洗浄することによってカラムを再生し、サイクルを繰り返した。表2に示される結果は、圧搾工程が、ConA−及びCu(II)−IDA−クリオゲルモノリスの結合特性及びサイクルIIにおける脱着効率に対して明白な効果を有しなかったことを実証し、サイクルIにおいて行われた機械的圧縮が、リガンドの不活化を引き起こしたのではないであろうことを示している。したがって、表面からの粒子の圧搾誘導性脱着に関与する主な機構は、おそらく親和性リガンドを保有する表面の微視的な変形による細胞の物理的な取り外し及び圧搾された液体の流動であろう。吸着剤の孔における特定の溶出剤の存在は、結合の平衡数を低下させ、脱着した粒子がカラムから抜け出る際の再配向及び再吸着を防止することによって、脱着に寄与しているかもしれない。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例2
プロテインA−クリオゲルモノリスを用いた封入体の結合及び回収
組換え大腸菌において封入体として発酵された33kDのモデルタンパク質、並びに33kD標的タンパク質のアミノ末端上の15アミノ酸及びカルボキシル末端上の17アミノ酸に対するIgG抗A15及び抗B17を、本実験において用いた。封入体スラリーを、pH7.2の50mM PBS中で8又は30倍に希釈し、0.5mlの希釈したスラリーを、40μlの抗体溶液(1.0mg ml−1)で氷上で15分間インキュベートした。混合物を、10,000gで2分間遠心し、ペレットを0.5mlの50mM PBS中に再懸濁し、もう一度2分間遠心した。ペレットを1又は4mlのpH7.2の50mM PBS中に再懸濁し、懸濁物(0.150〜0.220ml)を、pH7.2の50mM PBSで平衡化したプロテインA−クリオゲルモノリス(調製例Dにしたがって調製した)に加えた。モノリスを、処置した封入体懸濁物と15分間インキュベートし、次いで2mlのpH7.2の50mM PBSで洗浄し、非結合の材料を除去した。結合した封入体の回収は、プロテインA−クリオゲルモノリスを圧搾することによって行った。
【0034】
実施例3
I 大腸菌細胞ホモジネートの調製
ハイブリッドLamB−HisモノマーをコードするプラスミドpLH2をもつ大腸菌K12株(His−E.coli)を、本実験で用いた。述べられた大腸菌K12株及びHis−LDHを産生する大腸菌TGl株(E.coli TGl)を、30μg/ml クロラムフェニコール又は100μg/ml アンピシリンをそれぞれ追加したLuria−Bertani(LB)培地(トリプトン 10g/1、酵母エキス 5g/1、NaCl 10g/1)中で、37℃にて、振とうインキュベータ中、175rpmにて生育した。His−E.coli細胞を、対数期の中間で、5800gにて5分間遠心することによって収穫した。細胞ペレットは、氷上に保ち、吸着試験に先立って、pH7.0の20mM HEPES、200mM NaCl中に懸濁した。 細胞は、培養後1〜2日間以内に用いた。
【0035】
His−LDHの発現を、以下のように行った:E.coli TGl細胞培養液(一晩培養した培養物10mlを播種した200ml)の600nmでの吸光度が0.7に達したとき、IPTG及び別の一部のアンピシリンを、最終濃度がそれぞれ48及び100mg/lとなるように添加した。3.5時間後、細胞を収穫し(5800gで5分間)、50mlの50mM Tris−HCl(pH7.0)中に再懸濁し、超音波処理した。得られた細胞ホモジネートを小さな画分へと分割し、−20℃にて保存した。
【0036】
II Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスを用いた、His−LDHの結合及び回収
His−LDHを含む大腸菌細胞ホモジネート(0.2ml)を、バッファー(20mM HEPES、0.2M NaCl(pH7.0))で平衡化したCu(II)−IDA−クリオゲルモノリス(調製例Bにしたがって調製した)に加えた。10分間のインキュベーション後、Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスを、3.5mlの上記バッファーで洗浄し、非結合タンパク質及び細胞細片を除去した。
【0037】
結合したHis−LDHを、上記バッファー中、EDTA又はイミダゾールで溶出した。Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスの圧搾は、前記のように行った。流出液及び溶出液中のHis−LDHを、酵素特異的活性を測定することによって検出した。回収率を、精製したプール中に溶出した結合活性ユニットの割合として決定した。
【0038】
LDH活性の測定を、1.0mM ピルベート及び0.225mM β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、還元(NADH)を含む0.2M Tris−HClバッファー(pH7.3)中で、340nmでのNADHの吸光度の低下をモニタリングすることによって行った。1酵素ユニットは、1分当たり1μmolのピルベートの還元を表す。
【0039】
実施例4
上記実施例1に従って観察された親和性表面の機械的変形による細胞放出の現象を、特定の溶出剤の濃度及び性質、生体粒子の表面での結合基の密度及び親和性、粒子の異なるサイズ及び外形、並びにクリオゲル孔壁の剛性のような異なるパラメータの、圧搾工程の効率への影響を解析することによって、さらに研究した。この目的のために、種々の固定化された親和性リガンドをもつ2種類のクリオゲルモノリス(5及び6%の共単量体の溶液をそれぞれ用いて調製された、「柔らかい」及び「高密度(dense)な」モノリス)を、各セルの底部において丸い開口部(直径3mm)で改良された、96ウェルマイクロタイタープレートのオープンエンドのウェル中へと挿入した。本研究において用いたクリオゲルモノリスは、標準的な96ウェルプレートのウェル(直径7mm)中へと完璧に収まるサイズ(12.5×7.1mm直径)を有する。クリオゲルモノリスの排液防止的な性質が、それらをマルチウェル形式での適用に適させ、それが大きな数のサンプルの平行的な解析の可能性を提供する。
【0040】
実験の本セットにおいて、実施例1のモデル系に加えて2つのさらなるモデル系(すなわち実施例2及び3のモデル系)もまた研究した。
【0041】
流動誘導性脱着の戦略は、96ウェル形式には適用できなかった。したがって、結合した粒子の脱着は、従来の溶出によって(すなわち、3カラム容積の適当な溶出剤を、ウェルを通すことによって(液体は、マルチチャンネルピペットでクリオゲルの上部に加えた))、又は異なる濃度の溶出剤で平衡化された吸着剤を圧搾することによって行った。予想通り、ConA−クリオゲルモノリス上に捕獲された酵母細胞の20%及び38%以下が、グルコース及びα−D−マンノ−ピラノシドそれぞれの0.3M溶液で溶出された。捕獲されたHis−E.coli細胞の10〜20%のみが、50mM EDTAでの溶出によってNi(II)−IDA−クリオゲルモノリスから回収された一方で、ポリ(VI−NIPAM)−ラテックス粒子は、高い濃度のEDTAをもってしても、従来の溶出によってまったく脱着し得なかった。ポリ(VI−NIPAM)ラテックスがコントロールの素のクリオゲルモノリスとは相互作用しない(データ示さず)が、Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリス上に捕獲されたラテックス粒子が、Cu(II)イオンを除去するEDTA処置後に吸着剤へ結合したままであるという事実は、特異的な結合が、吸着剤へのマイクロゲル粒子の非特異的な接着をさらに促進することを示す。
【0042】
結合した細胞の40〜80%が、平衡化バッファー中、溶出剤の非存在下においても、圧搾によって脱着した。ガラスロッドでの手動の圧縮は約1〜2秒かかり、365〜375μLの液体の圧搾をもたらす。したがって、脱着した細胞は、高い速度で流動中へと入り、それによって細胞の大きな画分を再吸着から防ぐ。放出された細胞の量は、ランニングバッファー中の特定の溶出剤の濃度の上昇とともに増加した。孔壁の剛性及びクリオゲルモノリスの多孔率は、基質を圧搾することによる細胞の回収の効率に影響する別のパラメータである。圧搾の効果は、「高密度な」(6%)クリオゲルモノリスと比較してより高い多孔率及び弾性を有する「柔らかい」(5%)クリオゲルモノリスの場合に、特に明白であった。実質的に全ての結合した酵母細胞及び組換え大腸菌細胞が、「柔らかい」ConA−及びNi(II)−IDA−クリオゲルモノリスを、10mM α−D−マンノ−ピラノシド及び3mM EDTAそれぞれの存在下で圧搾することによって放出された。圧搾による酵母細胞の定量的な放出は、40〜60mM グルコースの存在下で達成された。グルコースは、ConAリガンドへのより低い親和性をもつ溶出剤であり、したがってα−D−マンノ−ピラノシドでの実験と比較して、より高い濃度が必要であった。「高密度な」ConA−クリオゲルモノリスを圧搾することによる酵母細胞の定量的な回収を、0.5M α−D−マンノ−ピラノシドで観察し、0.7M グルコースの存在下では、80%のみが回収された。圧搾によって回収された組換え大腸菌細胞は、それらの生存能を保持し、クロラムフェニコール含有寒天プレート上で生育したことに注目することが重要である。平衡化バッファー中の溶出剤の濃度が、圧搾によって放出されたマイクロゲル粒子の量に影響した。ラテックス粒子の約40%が0.3M イミダゾール又は20mM EDTAの存在下での圧搾後に、吸着剤に結合したままであった。溶出剤の濃度のさらなる上昇は、回収されたラテックスの量における増加はもたらさず、これは、上記の非特異的相互作用に起因し得る。孔壁の密度及び親和性クリオゲルモノリスの多孔率は、酵母及びHis−E.coli細胞の場合における圧搾によるマイクロゲル粒子の回収と比較して、そのような回収の効率に対し、より少ない顕著な効果を有した。圧搾に対するクリオゲルモノリスの構造の最も明白な効果は、研究された最も大きな粒子(すなわち、酵母細胞)の場合に観察された。
【0043】
プロテインAと種々の哺乳類IgG分子との間の結合は強力であり、2.0〜3.0の範囲におけるpHのような過酷な条件が、プロテインA吸着剤上に捕獲されたIgGの溶出のために一般的に用いられる。プロテインA−クリオゲルモノリス上に捕獲された、特定の抗体である抗A15又は抗B17で標識された封入体は、pH7.0での圧搾手法によって放出可能であった。抗B17で標識された封入体の場合に、より強力な結合が観察された。抗A15及び抗B17が、抗原に対して異なる親和性を有し、封入体の表面上のIgGの異なる密度をもたらしている可能性がある。最も低い回収率は、標識された封入体の場合、異なる条件下において(すなわち、より高い量のIgGの存在下において)IgGで標識された封入体の場合に観察された。これは、抗B17標識封入体の放出の効率が、粒子表面上の結合基の数を上昇させることによって負に影響されたことを示唆する。
【0044】
コントロールの実験として、Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリス上に一価の相互作用を介して捕獲された標的高分子(His−LDH)の放出に対する圧搾の効果を研究した。Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスからのタンパク質の十分な脱離が、200〜300mM イミダゾールでの従来の溶出の態様によって達成された。Cu(II)−IDA−クリオゲルモノリスの圧縮は、用いたイミダゾールのいかなる濃度においても、結合したタンパク質(His−LDH)の回収率のいかなる上昇をももたらさなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体粒子を含む水性懸濁液からの、そのような生体粒子の吸着に基づく分離方法であって、その方法が、
a)該水性懸濁液を、分離される生体粒子の表面上の受容体と特異的又は非特異的に相互作用可能なリガンドをその表面上に保有するマクロ多孔性のクリオゲルモノリスと接触させ、該生体粒子を該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスに吸着させること;及び
b)溶出によって該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスから該生体粒子を遊離させ、ここで該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスが溶出媒体への暴露と連動して物理的変形に供されること、
を含む方法。
【請求項2】
該物理的変形が、該溶出の間にマクロ多孔性のクリオゲルを圧縮することによってもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該マクロ多孔性のクリオゲルモノリスが、その表面上にリガンドを保有するポリアクリルアミドクリオゲルモノリスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該リガンドが、イオン交換基、固定化金属親和性リガンド、タンパク質リガンド、免疫グロブリン結合タンパク質、合成リガンド又は修飾ペプチド若しくはタンパク質リガンド、核酸等からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該水性懸濁液から分離される生体粒子が、哺乳類細胞、細菌、細胞小器官、ウイルス、封入体、ラテックス粒子、エアロゾル、有機若しくは無機組成物又は二者の複合物の粒子からなる群より選択され、その寸法がナノからマイクロメートルの範囲内である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
マクロ多孔性のクリオゲルモノリスが、溶出媒体の存在下において、その最初の容積の25〜30%より小さい容積、好ましくはその最初の容積の20%より小さい容積、最も好ましくはその最初の容積の1%より小さい容積に圧縮される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。


【公表番号】特表2008−545379(P2008−545379A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511085(P2008−511085)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000556
【国際公開番号】WO2006/121396
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504334049)プロティスタ バイオテクノロジー アーベー (3)
【Fターム(参考)】