説明

水性被覆材の製造方法

【課題】耐候性、耐水性、柔軟性、塗膜伸度、耐汚染性に優れた塗膜を形成できる水性被覆材を提供する
【解決手段】ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、n−ブチルアクリレートを65質量%以上含むエチレン性不飽和単量体混合物(i)を、重合開始温度75℃以下で(1)式を満足する条件で重合を行い、重合体(I)を得る工程及び、前記工程で得られた重合体(I)の存在下で、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を(2)式を満足する条件で重合する工程を含む水性塗料用エマルションを製造する方法。
0.01≦W(A)/(W(A)+W(i))≦0.45・・・(1)
0.2≦W(II)/(W(A)+W(I)+W(II))≦0.8・・・(2)
(W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。W(I):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。W(II):エチレン性不飽和単量体混合物(ii)の質量。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、耐水性、柔軟性(塗膜伸度)、及び耐汚染性に優れた塗膜を形成する水性被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全及び安全衛生の観点から、塗料の水性化が進んでいる。水性塗料の需要が高まるとともに、その用途は急速に拡大しており、これに伴って水性塗料への要求性能はより高いものとなってきている。水性塗料の代表的な要求性能として、塗膜の外観、耐候性、耐汚染性等が挙げられるが、近年では特に、低温下での性能を向上させるため、柔軟性に優れた塗膜を形成できることが求められている。
塗膜に柔軟性を付与する方法としては、水性塗料を構成する樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を下げることが考えられるが、樹脂成分のTgを下げると塗膜の耐候性、耐水性、耐汚染性の低下の原因となる。
そのため、上記問題を解決して水性塗料の性能を向上させるために、多段乳化重合によりTgの異なる単量体を重合したアクリル系エマルションの開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、特定のポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、特定のガラス転移温度範囲を規定したエチレン性不飽和単量体を2段重合して得られた水性被覆組成物が記載されている。
また、特許文献2には、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、ガラス転移温度、及び20℃における単量体の水に対する溶解度を規定した特定のエチレン性不飽和単量体を重合して得られた水性被覆材が記載されている。
特許文献3には、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、20℃における単量体の水に対する溶解度を規定した特定のエチレン性不飽和単量体を、20℃における水への溶解性を規定した特定の油溶性ラジカル重合開始剤を用いて、重合して得られた水性被覆材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137374号公報
【特許文献2】特開2005−29685号公報
【特許文献3】特開2001−131466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された水性被覆材は、n−ブチルアクリレートの共重合量が65質量%未満のため、成膜性が不十分であり、塗膜の柔軟性、耐候性、及び耐水性に課題があった。また、塗膜の耐汚染性も十分ではなかった。
特許文献2に記載された水性被覆材は、重合に供されるエチレン性不飽和単量体混合物の量に対してポリオルガノシロキサン重合体の量が多すぎるため、成膜性が不十分であり、塗膜の柔軟性、耐候性、耐水性、及び耐汚染性が十分ではなかった。
特許文献3に記載された水性被覆材は、重合開始温度が80℃と高いために得られた塗膜の成膜性は不十分であった。そのため、塗膜の柔軟性、耐候性、及び耐水性に課題があった。
そこで本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、耐候性、耐水性、柔軟性(塗膜伸度)、及び耐汚染性に優れた塗膜を形成できる水性被覆材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、n−ブチルアクリレートを65質量%以上含むエチレン性不飽和単量体混合物(i)を、重合開始温度75℃以下で(1)式を満足する条件で重合を行い、重合体(I)を得る工程及び、前記工程で得られた重合体(I)の存在下で、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を(2)式を満足する条件で重合して得られる重合体(II)を含む水性塗料用エマルションを製造する方法に関する。
0.01≦W(A)/(W(A)+W(i))≦0.45・・・(1)
0.2≦W(ii)/(W(A)+W(i)+W(ii))≦0.8・・・(2)
W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
W(ii):エチレン性不飽和単量体混合物(ii)の質量。
【発明の効果】
【0007】
本発明により得られた水性塗料用エマルションを含む水性被覆材は、耐候性、耐水性、柔軟性(塗膜伸度)、及び耐汚染性に優れた塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、n−ブチルアクリレートを65質量%以上含むエチレン性不飽和単量体混合物(i)を、重合開始温度75℃以下で(1)式を満足する条件で重合を行い、重合体(I)を得るものである。
0.01≦W(A)/(W(A)+W(i))≦0.45・・・(1)
W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
【0009】
ポリオルガノシロキサン重合体(A)
本発明で使用されるポリオルガノシロキサン重合体(A)は、オルガノシロキサン(a)とグラフト交叉剤(b)を共縮合して得られたものである。オルガノシロキサン(a)は、例えば、一般式RSiO(4−m)/2(式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を表す)で表される構造単位を有し、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有するものである。このオルガノシロキサン(a)が有するRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、及びそれらの水素原子をハロゲン原子又はシアノ基で置換した置換炭化水素基等を挙げることができる。
【0010】
オルガノシロキサン(a)の具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサン等を挙げることができる。なお、このオルガノシロキサン(a)は、あらかじめ重合されたポリオルガノシロキサンであってもよい。この場合、その分子鎖末端は水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封鎖されていてもよい。また、この他に、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性シランをポリオルガノシロキサン重合体の架橋成分として用いることができる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0011】
本発明で使用されるグラフト交叉剤(b)は、例えば、分子内に1個以上の加水分解性シリル基と、1個以上のエチレン性不飽和基又はメルカプト基を含むものを挙げることができる。加水分解性シリル基としては、重合反応性、取り扱いの容易さ等の点からアルコキシシリル基が好ましい。
【0012】
グラフト交叉剤(b)の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類や3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルシラン類等を挙げることができる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0013】
上記のグラフト交叉剤(b)は(a)成分と(b)成分の合計量に対して、0.1〜30質量%の範囲で重合するのが好ましい。これは、グラフト交叉剤(b)を0.1質量%以上用いることによってポリオルガノシロキサン重合体とエチレン性不飽和単量体成分とのグラフト重合を効率良く行うことができ、塗膜の外観や耐候性、耐水性、及び耐汚染性を向上させることができる傾向にあるからである。より好ましくは、0.5質量%以上である。また、グラフト交叉剤(b)の使用を30質量%以下とすることによって、塗膜の柔軟性が良好となる傾向にある。より好ましくは、20質量%以下である。
【0014】
本発明で使用されるポリオルガノシロキサン重合体(A)は、前記のオルガノシロキサン(a)とグラフト交叉剤(b)とをホモミキサーや圧力型ホモジナイザー等で水中に強制的に乳化分散させたものに、アルキルベンゼンスルホン酸等の酸触媒を加えて重縮合させ、重縮合後にアルカリ成分で中和することによって製造することができる。
この酸触媒の使用量は、特に規定されるものではなく、目的とするポリオルガノシロキサン重合体(A)の分子量、固形分量及び重合温度等の重合条件により任意に設定できるものであるが、オルガノシロキサン(a)成分とグラフト交叉剤(b)成分の合計100質量部に対して2〜12質量部の範囲とするのが好ましい。酸触媒の使用量を2質量部以上とすることによって、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の分散安定性が良好となり、12質量部以下とすることによって、形成される塗膜の耐水性が良好となる傾向にあるからである。
【0015】
また、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の重量平均粒子径は、5〜120nmの範囲とするのが好ましい。重量平均粒子径をこの範囲とすることによって、塗膜の外観が良好となる傾向にある。
【0016】
さらに、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量平均分子量は、10,000以上とするのが好ましい。質量平均分子量を10,000以上とすることによって、塗膜の耐候性や柔軟性が良好となる傾向にある。より好ましくは、50,000以上である。
【0017】
本発明の水性塗料用エマルションの主成分である重合体は、上記のようにして得られるポリオルガノシロキサン重合体(A)含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合して重合体(I)(重合体(I)の質量=(A)+(i))とした後、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得るものである。重合体(II)における、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の量は、0.5〜31.5質量%の範囲で重合することが好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体(A)の量が0.5質量%未満であると、塗膜の耐侯性、耐水性、及び柔軟性が低下する傾向にある。より好ましくは1質量%以上である。また、使用量が31.5質量%を超えると、塗膜の柔軟性、耐候性、耐水性、及び耐汚染性が低下する傾向にあり、好ましくない。より好ましくは、25質量%以下である。さらに好ましくは、2〜20質量%である。
【0018】
重合体(I)
エチレン性不飽和単量体混合物(i)
本発明において、エチレン性不飽和単量体混合物(i)(以下、「単量体混合物(i)」とする。)は、n−ブチルアクリレートを単量体混合物(i)中に65質量%以上含むことが必要であり、好ましくは80質量%以上である。n−ブチルアクリレートを65質量%以上含むことで、塗膜の耐汚染性が良くなり、成膜性も向上する。これにより塗膜の耐候性、耐水性、及び柔軟性も向上する。
【0019】
また、重合体(I)を構成する単量体混合物(i)とポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量比は、下記(1)式を満たすことが必要である。
0.01≦W(A)/(W(A)+W(i))≦0.45・・・(1)
この関係を満たすことにより、塗膜の耐候性、耐水性、柔軟性、及び耐汚染性が向上する。好ましくは、0.4以下である。
【0020】
単量体混合物(i)中、n−ブチルアクリレート以外の単量体としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、及び分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体を用いることで、より優れた塗膜物性を発現することができる。これらの単量体は必要に応じて2種以上を使用することができる。
【0021】
例えばヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、水性被覆材を製造する際の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性が向上する。本発明において重合に供されるポリオルガノシロキサン重合体(A)、エチレン性不飽和単量体混合物(i)、及びエチレン性不飽和単量体混合物(ii)を含む全単量体混合物中、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、0.1〜15質量%含むことが特に塗膜の耐水性及び耐候性の低下を抑制できる点から好ましい。より好ましくは0.5〜12質量%である。
【0022】
また、単量体混合物(i)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含むことによっても、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性が向上する。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、全単量体混合物中0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%〜15質量%以下であれば、特に塗膜の柔軟性、耐水性及び耐候性の低下を抑制できる。
【0023】
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有エチレン性不飽和単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0024】
また、単量体混合物(i)中に分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体を含むことで、塗膜の耐汚染性、耐水性及び耐候性が向上する。エチレン性不飽和単量体の含有量は、全単量体混合物全単量体混合物混合物中に0.1〜10質量%含むことが好ましく、0.2〜8質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、塗膜の耐汚染性、耐水性及び耐候性が向上し、10質量%以下であれば、塗膜の柔軟性の低下が抑制できる。
【0025】
分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
また、単量体混合物(i)に含まれるn−ブチルアクリレート以外の単量体としてはラジカル共重合できるものであれば特に限定されない。
【0026】
重合開始温度
ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、単量体混合物(i)を重合する際、その重合開始温度は75℃以下とする必要がある。75℃以下とすることで、成膜性が良好となり、耐侯性、耐水性、柔軟性、及び耐汚染性に優れた塗膜を得ることができる。好ましくは65℃以下であり、より好ましくは55℃以下である。本発明においては75℃以下で重合を開始することが必要であり、その後は必要に応じて75℃以上としても構わない。ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合する際重合発熱が見られる場合は、その発熱のピークを確認した後、75℃以上にすることが重合安定性の点から好ましい。
【0027】
本発明においては、低VOC、環境負荷低減の点から乳化重合法によって重合することが好ましい。乳化重合は、例えば界面活性剤の存在下、単量体混合物(i)及び単量体混合物(ii)を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合する公知の方法が使用できる。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合に使用される公知のものが使用可能であり、例えば、過硫酸塩類、水溶性アゾ化合物類、有機過酸化物類、油溶性アゾ化合物類が挙げられる。
過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
水溶性アゾ化合物類としては、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等が挙げられる。
有機過酸化物類としては、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。
油溶性アゾ化合物類としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられるが、これら油溶性アゾ化合物類を使用する場合は、重合安定性が不安定となるため、水溶性開始剤との併用が望ましい。
これらは単独で、又は2種類以上の混合物として使用できる。また、重合速度の促進、及び低温での重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いるのがよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、単量体混合物(i)100部に対して0.01〜10質量部であるが、重合の進行や反応の制御の観点から、0.05〜5質量部とするのが好ましい。
【0028】
重合体(I)の分子量を調整する場合には、重合する際に、分子量調整剤として、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類や、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。この場合、耐候性の低下を抑えるため、連鎖移動剤の使用量は単量体混合物(i)100部に対して1質量部以下であることが好ましい。
また、本発明において界面活性剤は単量体混合物(i)100質量部に対して、0.1〜10質量部の使用が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部である。0.1質量部以上使用することにより、重合安定性及び貯蔵安定性が向上する。また、10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗料化時の安定性、塗料の経時的安定性等を維持できる。
【0029】
界面活性剤としては、各種アニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、高分子乳化剤や反応性界面活性剤も使用できる。なかでも、塗膜の耐候性及び耐水性の観点から反応性界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤を2種以上併用して用いる場合、塗膜の耐候性及び耐水性を向上させるために、界面活性剤成分のうち50質量%以上が反応性界面活性剤であることが好ましい。
また、塗装後の乾燥の際に塗膜の「より」や「マッドクラック」を抑制し、平滑性の高い塗膜を得る目的で、及び得られる重合体(I)の分散液の起泡性を低くする目的から、リン酸エステル型反応性界面活性剤を併用することが好ましい。このとき、リン酸エステル型反応性界面活性剤の含有量は、全単量体量混合物100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。含有量が0.05質量部以上用いることで本効果が得られ、5質量部以下とすることで塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
リン酸エステル型反応性界面活性剤は市販のものを使用でき、例えば、東邦化学工業(株)製のサーフマーシリーズである、FP−80、FP−100、FP−120、FP−160、FP−200、FP−125、旭電化工業(株)製のアデカリアソープシリーズであるPP−70、PPE−710等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0030】
エチレン性不飽和単量体混合物(ii)
また本発明では、前記工程で得られた重合体(I)の存在下で、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を(2)式を満足する条件で重合する。
0.2≦W(ii)/(W(A)+W(i)+W(ii))≦0.8・・・(2)
W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
W(ii):エチレン性不飽和単量体混合物(ii)の質量。
(2)式の値が0.2未満であると、塗膜の耐侯性、耐水性、及び耐汚染性が低下する傾向にあるためである。また、(2)式の値が0.8を超えると、塗膜の耐水性、柔軟性、及び耐汚染性が低下する傾向にあるためである。好ましくは、0.3〜0.7である。
【0031】
単量体混合物(ii)は、単量体混合物(i)で例示したようなラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、優れた塗料物性及び塗膜物性を発現させるために、t−ブチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートの少なくとも一方、加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、耐紫外線エチレン性不飽和単量体、金属含有エチレン性不飽和単量体、及びカルボニル基及びアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体から選ばれる単量体のうち少なくとも一種を含むことができる。これらは必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0032】
単量体混合物(ii)にt−ブチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートの少なくとも一方を含むことで、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。全単量体混合物中のt−ブチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートの少なくとも一方の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。含有量が5質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、70質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
【0033】
単量体混合物(ii)に加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を含むことで、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。全単量体混合物中の加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜12質量%である。含有量が0.05質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、15質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類や、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類が挙げられる。
なかでも、ビニル重合の反応性並びに塗膜の耐汚染性、耐候性及び耐水性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類が好ましく、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシランであればさらに好ましい。また、これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
【0034】
単量体混合物(ii)にエチレン性不飽和カルボン酸を含むことにより、得られた重合体(II)の分散液の貯蔵安定性、及び顔料や添加物を入れて塗料化する際の配合安定性が向上する。全単量体混合物中、エチレン性不飽和カルボン酸の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であればエチレン性不飽和カルボン酸を加えたことによる効果が得られ、10質量%以下とすることで塗膜の耐候性及び耐水性の低下が抑制できる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0035】
単量体混合物(ii)にはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことにより、得られた重合体(II)の分散液の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体混合物中、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量を0.1質量%以上とすれば効果が充分に得られ、15質量%以下とすることで塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0036】
単量体混合物(ii)中にポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートを含むことにより、得られた重合体(II)の分散液の配合安定性や塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体混合物中のポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下であれば塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(プロピレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体や、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端封止型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0037】
単量体混合物(ii)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含むことにより、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体混合物中の自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、単量体混合物(i)の場合に挙げたものが使用でき、必要に応じてそれらの2種以上を選択して使用してもよい。
単量体混合物(ii)中に耐紫外線エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐候性が向上する。全単量体混合物中の耐紫外線エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%であるのがより好ましい。この含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、20質量%以下であれば重合安定性の低下が抑制できる。
【0038】
耐紫外線エチレン性不飽和単量体としては、例えば、光安定化作用を有する(メタ)アクリレート及び紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これら耐紫外線エチレン性不飽和単量体は必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0039】
塗膜の高い耐汚染性が要求される場合や、可塑剤のブリードアウトにより塗膜の耐汚染性が低下する場合には、全単量体混合物中に金属含有エチレン性不飽和単量体や、特定の架橋システムを含有させれば、塗膜の耐汚染性が向上する。
金属含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸マグネシウム、アクリル酸メタクリル酸マグネシウム、ジ(メタ)アクリル酸カルシウム、アクリル酸メタクリル酸カルシウム、ジ(メタ)アクリル酸鉄、アクリル酸メタクリル酸鉄、ジ(メタ)アクリル酸銅、アクリル酸メタクリル酸銅、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛、アクリル酸メタクリル酸亜鉛、ジ(メタ)アクリル酸ジルコニウム、アクリル酸メタクリル酸ジルコニウム、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸鉄(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸鉄(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸鉄(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、オクチル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸カルシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸鉄(メタ)アクリレート、オクチル酸銅(メタ)アクリレート、オクチル酸亜鉛(メタ)アクリレート、オクチル酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸カルシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸鉄(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸カルシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸鉄(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸鉄(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸鉄(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸鉄(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸鉄(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、安息香酸鉄(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸鉄(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸鉄(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸鉄(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸鉄(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸鉄(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸ジルコニウム(メタ)アクリレート、プルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸鉄(メタ)アクリレートプルビン酸銅(メタ)アクリレート、プルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プルビン酸ジルコニウム(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできるが、なかでも、亜鉛含有エチレン性不飽和単量体を用いるのが好ましい。
全単量体混合物中の金属含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で塗膜の耐汚染性が向上し、10質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0040】
単量体混合物(ii)中にカルボニル基及びアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の少なくとも一方を、水性被覆材の調製の際エマルション中に、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する有機ヒドラジン化合物(以下、「ヒドラジン化合物」とする。)を配合すれば、塗膜の耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。この効果は、塗装後の乾燥の際に、重合体中のカルボニル基と、配合されたヒドラジン化合物のヒドラジノ基との間で架橋反応が進行することに起因する。
カルボニル基及びアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の少なくとも一方としては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜7個のビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナールの他、(メタ)アクリルアミド、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトンがより好ましい。これらは、必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
全単量体混合物中のカルボニル基及びアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の少なくとも一方の含有量は、0.2〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.2質量%以上であれば、塗膜の耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び各種下地に対する密着性が向上し、10質量%以下であれば重合安定性や塗膜の耐水性の低下が抑制できる。
ヒドラジン化合物としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素数が2〜15のジカルボン酸のジヒドラジドや、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
塗膜の耐汚染性を向上させる上では、ヒダントイン骨格を有するヒドラジン化合物が好ましく、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインがより好ましい。
また、カルボニル基及びアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の少なくとも一方とヒドラジン化合物の比率は、単量体混合物中に含まれるカルボニル基及びアルデヒド基の少なくとも一方のモル数を(P)、エマルションに配合されるヒドラジン化合物のヒドラジノ基のモル数を(Q)としたとき、比率(P)/(Q)を0.1〜10とすることが好ましく、0.8〜2とするのがより好ましい。(P)/(Q)が0.1以上であれば、未反応のヒドラジン化合物による塗膜の耐水性の低下が抑制でき、(P)/(Q)が10以下であれば、重合体の架橋度が高くなり、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。
【0041】
単量体混合物(ii)を重合して得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、0〜110℃が好ましく、10〜100℃であるのがより好ましい。さらに好ましくは、20〜90℃である。Tgが0℃以上であれば、塗膜の耐候性、耐水性、耐汚染性が向上し、110℃以下であれば、塗膜の柔軟性の低下が抑制できる。
なお、本発明における重合体のガラス転移温度(Tg)は、Foxの式から求められる計算値である。
ここで、Foxの式とは、下記の関係式である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの質量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0042】
単量体混合物(ii)を重合する場合、重合体(I)の製造の場合と同様に、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤が使用できる。界面活性剤の使用量は、全単量体混合物中0.1〜10質量部となるようにするのが好ましい。
乳化重合の後、得られたエマルション、塩基性化合物の添加により、pHを6.5〜10.0の範囲とすることにより、安定性を高められる。なかでも、pHを7.0〜10.0とすれば、より優れた凍結−融解安定性を付与できるため好ましい。
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
これらの中で、VOCを含まないことが望まれる内装用途等の場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。更に、僅かな臭気が問題となる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の非揮発性塩基化合物を用いることが好ましい。
【0043】
[粒子径]
ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物(i)及び、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られた重合体(II)の重量平均粒子径としては、粒子の安定性及び塗膜性能のバランスを考慮すると30〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。30nm以上の粒子径となる重合条件であれば、重合中に凝集物が生じにくく、少量の界面活性化剤でよいことから、塗膜の耐水性を維持することができる。また300nm以下で造膜不良を生じにくく、成膜性が向上することから、塗膜のより優れた耐水性及び耐候性を発揮することができる。
【0044】
[水性被覆材]
本発明の水性被覆材は、主成分である重合体(II)及び前記界面活性剤、添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
水性被覆材は、必要に応じて各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤等を含有してもよい。また、他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。
本発明の水性被覆材を各種基材の表面に塗装する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法、フローコート法等の各種の塗装法が選択できる。また、本発明の水性被覆材は、室温乾燥又は50〜180℃の加熱乾燥で十分に造膜した塗膜が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、以下の記載において「部」は質量基準である。水性被覆材の評価は下記方法に従って実施した。
【0046】
加熱残分
アルミ皿に得られたエマルション3gを計りとり、恒温槽(70℃)内で30分間予備乾燥し、更に恒温槽(150℃)内で4時間乾燥後の重量変化より求めた。
加熱残分(質量%)=乾燥後重量(g)/乾燥前重量(g)×100
【0047】
(2)最低造膜温度
下記条件にて測定を実施した。
測定装置:最低成膜温度測定装置(高林理化(株)製)
測定方法:ASTM D2354,Wet膜厚200ミクロン
【0048】
(3)耐候性試験
タイペークCR−97(石原産業(株)社製)196.3g、OROTAN SG(ローム&ハース(株)社製、顔料分散剤)2.1g、サーフィノール DF−58(エア・プロダクツ(株)社製、消泡剤)0.08g、プロピレングリコール29.4g、脱イオン水34.3g、28%アンモニア水溶液1.8gを十分に混合した後、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、ガラスビーズ等を300メッシュナイロン紗で濾別したものを評価用のミルベースとした。ついで、水性被覆組成物(エマルション)100g(固形分45%基準)に対し、上記の評価用ミルベース40.3g、キョウワノールM(協和発酵(株)社製、造膜助剤)を最低造膜温度が0℃になるように適量加えて、十分攪拌した後、100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、耐候性試験用の白エナメル水性塗料を作成した。この水性塗料を150mm×70mmのリン酸亜鉛処理鋼板にバーコーター#40で塗装し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中で1時間乾燥を行い、耐候性試験用の塗装板を作成した。
この塗装板の塗装面以外にポリエステルテープを張り付け、耐候性試験時にかかる水滴等が塗装面以外のところへ付着することを防止した後に、ダイプラ・メタルウエザーK
U−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)社製)に評価用試験板を入れ、
試験サイクル:照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/c
、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結
露時96%RH、の条件で、360時間(45サイクル)経過後の60°グロスの保持率を耐候性の指標とし、以下の基準で判定した。
「◎」:90%以上
「○」:70%以上、90%未満
「△」:50%以上、70%未満
「×」:50%未満、もしくは塗膜の剥離・クラックが生じた。
【0049】
(4)耐水性試験
エマルション100gに造膜助剤としてキョーワノールMを最低造膜温度が0℃となるように適量添加し、十分に攪拌した後に100メッシュナイロン紗で濾過を行いクリヤー水性塗料を作成した。このクリヤー水性塗料を150mm×70mmのリン酸亜鉛処理鋼板にバーコーター#40で塗装し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中で1時間乾燥を行い耐水性試験用の塗装板を作成した。この塗装板の塗装面以外にポリエステルテープを張付け、耐水性試験時にかかる水滴等が塗装面以外のところへ付着することを防止した後に、50℃の温水中に7日間浸漬した後に、次いで常温水中に30分浸漬した後に取り出し、2時間室温乾燥後の塗膜の白化及びブリスターの有無を目視で確認し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜に温水に浸漬した部分と浸漬しなかった部分の境界が見られず、塗
膜の白化及びブリスターもない。
○:塗膜に温水に浸漬した部分と浸漬しなかった部分の境界がわずかに見ら
れるが、塗膜の白化及びブリスターはない。
△:塗膜にわずかではあるが、白化またはブリスターがある。
×:塗膜にあきらかな白化やブリスターがある。
【0050】
(5)塗膜伸び試験
上記(3)の耐候性試験の項目で作成した白エナメル水性塗料に、塗料粘度がフォードカップ#4で100秒〜140秒程度になるように、RHEOLATE 350(RHEOX株式会社製、増粘剤)と、水を加えて調整した。その後100メッシュナイロン紗で濾過を行い、白エナメル水性塗料を作成した。
得られた白エナメル水性塗料をアプリケーター(乾燥膜厚=60〜80μm)を用いて離型紙上に塗布し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中にて30分乾燥して塗膜を得た。この塗膜からJIS K 6301に規定するダンベル状2号型(幅10mm、標線間距離20mm)に打ち抜き、離型紙を取り除いたものを塗膜伸び試験サンプルとして用いた。
試験サンプルを恒温槽付きテンシロン引張試験機(RTC−1250A オリエンテック(株)製)を用いて、温度−10℃、チャック間距離30mm、引張速度200mm/min.にて測定し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜伸度50%以上
○:塗膜伸度25%以上、50%未満
△:塗膜伸度10%以上、25%未満
×:塗膜伸度10%未満
【0051】
(6)耐汚染性試験
試験板を屋外の暴露台(沖縄県糸満市)に南西45度となるように設置し、2007年4月〜2009年3月の2年間暴露したのち、塗膜の暴露前後の白さの差ΔLを色差計により測定した。暴露1年目及び2年目のΔLを耐汚染性の指標とし、以下の基準で判定した。
◎:2.5未満
○:2.5以上、5.0未満
△:5.0以上、7.5未満
×:7.5以上
【0052】
[製造例1] ポリオルガノシロキサン重合体水分散液の調製
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物(95部)と、γ−メタクリロ
イルオキシプロピルトリメトキシシラン(5部)、脱イオン水(250部)、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム(0.4部)及びドデシルベンゼンスルホン酸(0.4部)
からなる組成物を、ホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200k
g/cmの圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
ついで、水(55部)及びドデシルベンゼンスルホン酸(5部)を、攪拌機、還流冷却
管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温
を85℃に保ちながら、上記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後
、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のア
ンモニアを加えてポリオルガノシロキサン重合体水分散液(SiEm)を調製した。固
形分は20.0%であった。
【0053】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、及び滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水を33.5部、SiEmを50部(固形分10部)と、1段目(単量体混合物(i))の重合体の構成成分であるn−ブチルアクリレート(25.5部)、メチルメタクリレート(3.5部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1部)の混合物、及びパーブチルH69(日本油脂(株)製)(0.09部)を仕込んだ。フラスコの内温を48℃に昇温した後、硫酸第一鉄(0.0001部)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(0.00025部)、アスコルビン酸ナトリウム(0.02部)、及び脱イオン水(2部)からなる還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。
ついで、上記還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目(単量体混合物(ii))の重合体の構成成分である、ターシャリーブチルメタクリレート(21.1部)、メチルメタクリレート(19.4部)、2−エチルヘキシルアクリレート(16部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2部)、アクリル酸(1.5部)の混合物、脱イオン水(26部)、アデカリアソープSR−10(1.5部)予め乳化分散させたプレエマルション液と過硫酸アンモニウム(0.1部)及び脱イオン水(2部)からなる開始剤とを15分かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持した。プレエマルション液滴下終了後、プレエマルション液滴下槽を脱イオン水(2部)で洗浄し、フラスコに添加した。この添加が終了してから80℃で1時間保持した。
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.85部)を添加してエマルションを得た。
さらに前述した塗料配合により得られた水性塗料用エマルションを用いて、各種試験を実施し、それらの結果を表1に示した。
【0054】
[実施例2〜11]
初期仕込み用の脱イオン水、SiEm、アデカリアソープSR−10の添加量、「1段目(単量体混合物(i))」に示す重合体の構成成分、「2段目(単量体混合物(ii))」に示す重合体の構成成分、単量体混合物(ii)プレエマルション用の脱イオン水、アデカリアソープSR−10の添加量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてエマルションを得た。
このエマルションについて前記した塗料配合を行い、各種試験を実施、それらの結果を表1に示した。
【0055】
[比較例1〜3]
初期仕込み用の脱イオン水、SiEm、アデカリアソープSR−10の添加量、「1段目(単量体混合物(i))」に示す重合体の構成成分、「2段目(単量体混合物(ii))」に示す重合体の構成成分、単量体混合物(ii)プレエマルション用の脱イオン水、アデカリアソープSR−10の添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてエマルションを得た。
このエマルションについて前記した塗料配合を行い、各種試験を実施、それらの結果を表2に示した。
【0056】
【表1】

表中の略号は、以下の化合物を示す。
n−BA:n−ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
2−EHA:2―エチルヘキシルアクリレート
t−BMA:ターシャリーブチルメタクリレート
AA:アクリル酸
アデカリアソープSR−10(ADEKA(株)製)
【0057】
【表2】

表2中の略号は、表1と同じである。
表2に示すように、本発明の実施例1〜11の水性被覆材を用いた塗膜は、耐候性、耐水性、柔軟性、耐汚染性を兼ね備えていた。
【0058】
一方、比較例1の水性被覆材を用いた塗膜は、単量体混合物(i)中のn−BA含有率が60質量%と小さいため、塗膜の耐候性、耐水性、柔軟性、耐汚染性が劣っていた。比較例2では、W(A)/(W(A)+W(i))=0.5(W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。)と、0.45を超えるため、塗膜の耐水性、耐汚染性が劣っていた。比較例3では、重合開始温度が80℃と75℃を超えるため、重合が急速に進み、ポリオルガノシロキサン重合体(A)を均一に被覆することができず、成膜性が不十分となるため、塗膜の耐水性、柔軟性、耐汚染性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水性被覆材は、優れた耐候性、耐水性、塗膜の伸び、耐汚染性を発現することができる。そのため、建築物、土木構造物等の躯体保護を始めとする様々な被覆用途に用いることができ、工業上極めて有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン重合体(A)を含む水性分散液中で、
n−ブチルアクリレートを65質量%以上含むエチレン性不飽和単量体混合物(i)を、重合開始温度75℃以下で(1)式を満足する条件で重合を行い、重合体(I)を得る工程及び、
前記工程で得られた重合体(I)の存在下で、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を(2)式を満足する条件で重合して得られる重合体(II)を含む水性塗料用エマルションを製造する方法。
0.01≦W(A)/(W(A)+W(i))≦0.45・・・(1)
0.2≦W(ii)/(W(A)+W(i)+W(ii))≦0.8・・・(2)
W(A):ポリオルガノシロキサン重合体(A)の質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
W(ii):エチレン性不飽和単量体混合物(ii)の質量。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で得られた水性塗料用エマルション。
【請求項3】
請求項2に記載の水性塗料用エマルションを含む水性被覆材。

【公開番号】特開2011−157475(P2011−157475A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20405(P2010−20405)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】