水抜き栓付き接続具及び水栓
【課題】寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができ、ホースとの接続部分からの「水漏れ」を防止できる水抜き栓付き接続具と、水栓を提供する。
【解決手段】水抜き栓付き接続具は、デッキ部等に設置され、流体の流出管を設置部の挿通部を通じて設置部の下方に突出させる水栓本体部と、吐水ヘッドと、挿通部等に挿通されつつ設置部の下方に挿入されるホース(シャワーホース等)を具備する水栓において、流出管とホースを接続する。流出管の突端部が接続される接続口52dを上方に開口させ、水抜き栓57が着脱される着脱口52eを下方に開口させた管状本体部52と、管状本体部52の上下方向中間部から膨出して管状本体部52の管壁の一部と共に管軸を下り傾斜状等とする副管状部55を構成する膨出部54とを備える。副管状部55にはホースの他端部が接続される。
【解決手段】水抜き栓付き接続具は、デッキ部等に設置され、流体の流出管を設置部の挿通部を通じて設置部の下方に突出させる水栓本体部と、吐水ヘッドと、挿通部等に挿通されつつ設置部の下方に挿入されるホース(シャワーホース等)を具備する水栓において、流出管とホースを接続する。流出管の突端部が接続される接続口52dを上方に開口させ、水抜き栓57が着脱される着脱口52eを下方に開口させた管状本体部52と、管状本体部52の上下方向中間部から膨出して管状本体部52の管壁の一部と共に管軸を下り傾斜状等とする副管状部55を構成する膨出部54とを備える。副管状部55にはホースの他端部が接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き栓付き接続具と、この水抜き栓付き接続具を備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓本体部とシャワーヘッドとをデッキ部の上方に配設するとともに、シャワーヘッドが一端部に接続されるシャワーホースを、水栓本体部内とデッキ部の挿通孔に挿通して、デッキ部の下方に引き出し可能に収納した水栓が従来より用いられている。かかる水栓として、水栓本体部から湯水を流出させるために、水栓本体部から突出する流出管を、挿通孔を通じてデッキ部の下方に到達させるとともに、流出管の突端部とシャワーホースの他端部とを接続具を介して接続したものが開示されている(特許文献1を参照、以下、「従来例」という。)。
【0003】
かかる従来例に係る水栓は、一般地(寒冷地以外の土地を指す。)のみならず、寒冷地においても使用することができる。つまり、前述の従来例として、一般地で使用する水栓(以下、「一般地仕様の水栓」といい、特許文献1の図2を参照)の他に、寒冷地で使用する水栓(以下、「寒冷地仕様の水栓」といい、特許文献1の図3を参照)とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−286345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般地仕様の水栓100Aにおいては、図11に示すように、流出管110の突端部と、シャワーホース120の他端部とが、略直管状の接続具150Aで接続される。かかる一般地仕様の水栓100Aでは、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で、デッキ部200の上方から挿通孔201に挿通し、デッキ部200の下方で、接続具150Aを用いて、シャワーホース120と流出管110とを接続するのが一般的である。つまり、シャワーホース120と流出管110とを予め接続しない状態で、この水栓100Aをデッキ部200の上方に配設し、水栓本体100に流体の供給を行う供給管(例えば、給湯管160及び給水管170)とともに、シャワーホース120及び流出管110を、デッキ部200の挿通孔201に挿通する。そして、水栓本体100で挿通孔201を隠蔽するようにして水栓本体100をデッキ部200に設置し、供給管(例えば、給湯管160及び給水管170)と、流体の供給源(例えば、給湯用の元配管181、給水用の元配管185)とを接続する作業と、シャワーホース120と流出管110とを接続具150Aを用いて接続する作業等を行うことで、一般地仕様の水栓100Aの施工を完了することになる。
【0006】
寒冷地仕様の水栓100B(図11に括弧書で付記)においては、前述の接続具150Aとは形状が異なる接続具150B(図11に括弧書で付記)を用いるが、この寒冷地仕様の水栓100Bにおいても、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で水栓本体100をデッキ部200に設置した後、デッキ部200の下方でシャワーホース120と流出管110との接続を行うのが一般的である。
【0007】
ところで、本出願人は、何れのタイプの水栓100A、100Bにおいても、シャワーホース120と流出管110とを予め接続した状態で、デッキ部200に設置することが望ましいと考える。つまり、シャワーホース120と接続具150A、150Bとの接続は、一方に設けられる雄ネジ部と他方に設けられる雌ネジ部とを螺合して行われるのが一般的である。例えば、シャワーホース120の他端部に設けられる雄ネジを、管状部155の内壁に設けられる雌ネジ部に螺合して行うことができるが、「デッキ部200の下方の狭い空間内で、雄ネジを雌ネジ部に締め付ける締付作業」の作業性が悪いため、この締付作業が原因となり、水栓100A、100Bの施工性を低下させるおそれがある。また、現場施工による締付作業では、雄ネジの雌ネジ部に対する締付力(締付トルク)を適正値に規制することが困難であるため、水栓の使用期間の経過に伴って雄ネジと雌ネジ部との間の螺合が緩み、シャワーホース120と接続具150Bとの接続部分から「水漏れ」を生ずる可能性もからである。なお、このように、シャワーホースと流出管とを予め接続した状態で、水栓を設置部(デッキ部等)に設置することを「上面設置」という。
【0008】
しかしながら、寒冷地仕様の水栓100Bにおいては、図12に示すように、接続具150Bの形態が原因となり、「上面設置」が困難若しくは不可能となっている。つまり、この水栓100Bに適用される接続具150Bにおいては、「流出管110の突端部が接続される部分」を上方に配設するとともに、「水抜き栓157が着脱される部分」を下方に配設した管状本体部151を備える。また、この接続具150Bは、単独で筒形状を構成する管状部155を管状本体部151の外周部から水平方向に突出させ、この管状部155にシャワーホース120の他端部が接続される。
【0009】
このように、寒冷地仕様の水栓100Bに適用する接続具150Bでは、「単独で筒形状を構成する管状部155」を水平方向に突出させる分だけ、「挿通孔201の幅方向(径方向)に沿ったサイズ」が大きくなる。そして、この接続具150Bを挿通孔201に挿通すること自体が困難なため、「上面設置」が困難となる。
【0010】
しかも、この寒冷地仕様の水栓100Bでは、管状部155に接続されるシャワーホース120の存在が、この「上面設置」を更に困難なものとしている。つまり、シャワーホース120の他端部が、水平方向に突出する管状部155に接続されると、シャワーホース120の他端部寄りの部位120aは、自身の剛性のため、その軸心を水平方向に向けようとする。このため、水栓本体100の下方において、シャワーホース120が描く経路は水平方向に長軸を向けた半長円状の経路となり易い。従って、水栓本体100の下方に配設されるシャワーホース120において、挿通孔201の幅方向(図中の矢印Xの方向)への広がりが、大きくなり、このシャワーホース120を挿通孔201に挿通することが困難となるからである。なお、シャワーホース120として、アウター管(通常、金属製で略蛇腹状の螺旋管を用いて構成される管状体)と、アウター管に挿通させるインナー管(通常、樹脂製チューブによって構成される管状体)とを備える複層管を用いて構成した場合、この幅方向への広がりが、特に大きくなり、「上面設置」が更により一層困難なものとなる。
【0011】
従って、寒冷地仕様の水栓100Bにおいては、挿通孔201のサイズを、「水栓本体100の底面積」を遙かに超えるものとしない限り、「上面設置」を行うことが困難である。よって、寒冷地仕様の水栓100Bでは、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で水栓本体100をデッキ部200に設置した後、デッキ部200の下方でシャワーホース120と流出管110とを接続せざるを得ないが実情である。このため、寒冷地仕様の水栓100Bにおいて、「上面設置」を可能とし、施工性を向上させたり、シャワーホース120と流出管110との接続部分からの「水漏れ」を防止することが望まれている。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができるとともに、ホースとの接続部分からの「水漏れ」を防止できる水抜き栓付き接続具と、この水抜き栓付き接続具を備える水栓とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明の水抜き栓付き接続具(以下、「水抜き栓付き接続具」を単に「接続具」と称する)は、
吐止水の選択機構を内蔵しつつ所定の設置部に設置されるとともに、前記選択機構に施される吐水操作に応じて流出させる流体を通過させる流出管を、前記設置部を貫通する挿通部を通じて前記設置部の下方に突出させる水栓本体部と、
前記水栓本体部若しくは設置部の上方の所定の部位に設けられる支持部に着脱自在に支持される吐水ヘッドと、
一端部が前記吐水ヘッドに接続されるとともに前記水栓本体部内の通過路及び前記挿通部に挿通されつつ前記設置部の下方に引き出し可能若しくは引き出し不可能に挿入されるホースと、
を具備する水栓において、前記流出管の突端部と前記ホースの他端部とを接続する、水抜き栓付き接続具であって、
前記流出管の突端部が接続される接続口を上方に開口させ、水抜き栓が着脱される着脱口を下方に開口させた管状本体部と、
前記管状本体部の上下方向中間部から膨出して前記管状本体部の管壁の一部と共に管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とする副管状部を構成する膨出部と、
を備え、
前記副管状部の管内空間は前記管状本体部の管内空間と連通するとともに、前記副管状部に前記ホースの他端部が接続される接続口が設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明の接続具では、「ホースが接続される接続口を構成する副管状部」を単独で筒形状を構成する管状体ではなく、管状本体部の管壁の一部と膨出部とを用いて構成する。つまり、「管状本体部の管壁の一部」を「副管状部の管壁の一部(周方向に沿った一部)」としつつ、これに残部を構成する膨出部を組み合わせて略管状に構成する。しかも、副管状部の管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とされるため、副管状部の管状本体部側方への突出量が少なくなる(膨出部の膨出量に止まる。)。従って、「挿通部の幅方向(挿通部が円形孔の場合、挿通部の径方向)に沿ったサイズを抑制できるため、「上面設置」が容易となる。
【0015】
また、請求項1の発明の接続具では、副管状部の管軸が上り傾斜状若しくは下り傾斜状とされ、この副管状部にホースが接続されることで、ホースの他端部側が傾斜状とされる。このため、ホースにおける「挿通部の幅方向(挿通部が円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」を抑制できる。例えば、ホースの設置部の下方での経路を「長軸が上下若しくは傾斜方向を向く半長円状」等として、この広がり」を抑制できる。そして、この点からも、「上面設置」が容易となる。なお、各請求項の発明において、副管状部の管軸を上り傾斜状とすると、ホースの長さを短くすることができる、というメリットを生ずる。
【0016】
このように、請求項1の発明によると、現場施工でホースと流出管とを接続することが要求されないため(例えば、予め、水栓の製造メーカ等で接続すればよいため)、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができる。また、水栓の製造メーカ等において、締付トルクを適正値に規制しつつ、ホースと接続具とを接続すればよいため、ホースと接続具との接続部分からの「水漏れ」を防止することができる。
【0017】
各請求項の発明の「膨出部」としては、例えば、「リング形状、枠形状等の閉じた形状から一部を切り欠いた断面形状」を備えるもの、より具体的には、略C字状、略U字状若しくは略コの字状等の断面形状を備えるものを例示できる。例えば、断面形状が略C字状、略U字状、略コの字状等となる略樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部や、このような樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部本体を備える膨出部を例示できる。つまり、この樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部や膨出部本体においては、その経路方向とは交差する位置の開口部(経路方向に沿った端部の開口部以外の開口部)側に、「管状本体部の管壁の一部」が一体化され、この「管状本体部の管壁の一部」とともに、副管状部を構成する。
【0018】
各請求項の発明の「吐水ヘッド」としては、シャワー吐水を行うためのシャワーヘッドに限定されるものでなく、種々の態様の吐水(通常吐水、泡沫吐水等)を行うための吐水ヘッド等を例示することもできる。また、「設置部」としては、例えば、デッキ部(台部)等を例示できる。更に、「水栓本体部」は、吐止水の選択機構のみを内蔵してもよいし、吐水量の選択機構や、湯と水の混合機構(請求項4を参照)を内蔵してもよい。また、「流体」は、「湯」、「水」、若しくは、「湯と水を混合した混合水」の何れであってもよい。
【0019】
請求項2の発明の接続具は、請求項1に記載の接続具において、
前記流出管の突端部が接続される接続口の開口方向と、前記ホースの他端部が接続される接続口の開口方向とが形成する角度が、20度以下の鋭角若しくは160度以上の鈍角とされることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明では、ホースの他端部が接続される接続口の開口方向を鉛直方向により近づけるため、副管状部の管状本体部側方への突出量を少なくすることができる。
【0021】
請求項3の発明の接続具は、請求項1又は請求項2に記載の接続具において、
前記副管状部の内壁には、前記ホースの他端部を螺合固定するための雌ネジ部が設けられるとともに、
前記雌ネジ部を構成するネジ溝が、前記管状本体部の管壁と前記膨出部とを縦断することを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明では、管状本体部の管壁を雌ネジ部の形成個所として用い、ホースの他端部を管状本体部の管壁と膨出部の双方に螺合するため、ホースの他端部を接続具に対してより確実に固定できる。
【0023】
請求項4の発明の接続具は、請求項1〜3の何れかに記載の水抜き栓付き接続具において、
前記水栓本体部には湯と水を混合するための混合機構が内蔵されるとともに、
前記水栓本体部に給湯を行うための給湯管と、前記水栓本体部に給水を行うための給水管とが、前記挿通部に挿通されることを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明では、「水栓本体部に混合機構が内蔵するとともに、水栓本体部から給湯管及び給水管を突出する状態に備える水栓(湯水混合水栓)」への適用例を述べている。この水栓では、挿通部に計4本の管状体(流出管、ホース、給湯管、給水管)を挿通することが必要なため、ホースにおける「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」が大きくなると、ホースと流出管とを接続しない状態としなければ、水栓を設置部に設置する作業がより一層、困難となる。これに対して、請求項4の発明では、前述のように、接続具の「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿ったサイズや、ホースにおける「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」を抑制するため、ホースと流出管とを接続したままの状態で、しかも、挿通部に流出管及びホースのみならず、給湯管と給水管とを挿通しつつも、水栓を設置部に円滑に設置することが容易となる。
【0025】
請求項5の発明の水栓は、請求項1〜4の何れかに記載の接続具を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項5の発明の水栓では、効率な施工を行うことができるとともに、ホースと接続具の接続部分からの「水漏れ」を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、請求項1〜4の各発明の接続具によると、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができるとともに、ホースとの接続部分からの「水漏れ」を防止できる。また、請求項5の発明の水栓によると、効率な施工を行うことができるとともに、ホースと接続具の接続部分からの「水漏れ」を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】各実施例の水栓の縦断面図である。
【図2】実施例1の接続具等を示す縦断面図である。
【図3】実施例1の接続具を示す縦断面図である。
【図4】実施例1の接続具本体を示す縦断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図5】(a)は図4のa−o−a断面図(管状本体部及び膨出部を実線で示す。)、(b)は図4のa−o−a断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図6】実施例1の水栓の施工例を説明するための説明図である。
【図7】実施例1の水栓の施工例を説明するための説明図である。
【図8】(a)は従来例の寒冷地仕様の水栓と水受けトレイを示す説明図、(b)は実施例の水栓と水受けトレイを示す説明図、(c)は従来例の一般地仕様の水栓と水受けトレイを示す説明図である。
【図9】実施例2の接続具等を示す縦断面図である。
【図10】実施例2の接続具本体を示す縦断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図11】従来例の一般地仕様の水栓の施工例を示す説明図である(寒冷地仕様の水栓の施工例を括弧内に付記している。)。
【図12】従来例の寒冷地仕様の水栓において、上面設置を行う場合の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係わる「接続具」の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、接続具50の詳細な説明に先立ち、適用対象となる水栓1等の概略について、図1を用いて簡単に説明する。この水栓1は、デッキ部(台部)2に設置して使用されるデッキタイプの水栓1である。この水栓1は、デッキ部(台部)2上に設置される水栓本体10と、水栓本体10の上方に設置される操作部(操作レバー)19と、シャワーヘッド20と、シャワーホース30と、ホースガイド(図2に図示)36と、ホースストッパー38(図2に図示)とを備えている。
【0031】
デッキ部(台部)2は設置部の具体例を構成するものであり、デッキ部(台部)2の下方には下部空間3が設けられている。また、デッキ部(台部)2には、表裏面(上下面)を貫通する挿通孔2aが設けられている。尚、この水栓1(ひいては、シャワーヘッド20)を使用者が使用する空間5(以下、「使用空間5」といい、浴室内の空間、洗面所内の空間、台所内の空間等を例示できる。)は、デッキ部(台部)2の表側(上面部側)に位置している。そして、この使用空間5は、水栓本体10の内部空間(後述する通過路S)と、挿通孔2aとを通じて下部空間3に連絡されている。
【0032】
水栓本体10は、水栓本体部の具体例を構成するものであり、略円柱型の外形を備える基体部11と、基体部11の外周面においてその下方側の部位から上がり傾斜状に突出する支持部15と、を備えている。また、水栓本体10は、その下面部(但し、シール部材等を挟んだ状態である。)で挿通孔2aに蓋をするような状態でデッキ部(台部)2上に搭載されている。
【0033】
図1に示すように、水栓本体10の上方側には、弁装置18が内蔵されている。この弁装置18としては、例えば、湯と水の混合と、吐止水の選択と、吐水量の調節を行うための摺動弁を例示できる。また、操作部(操作レバー)19は、弁装置18に操作を施すために使用される。この弁装置18は、吐止水の選択機構と、吐水量の選択機構と、湯と水の混合機構とを構成している。但し、各請求項の発明では、水栓本体10に「吐止水の選択機構を構成する弁装置」を内蔵してもよし、吐止水の選択機構及び吐水量の選択機構を構成する弁装置を内蔵してもよいが、この場合、「湯と水の混合機構を構成する混合用の弁装置」を本水栓1から排除してもよいし、別途配設してもよい。そして、「混合用の弁装置」を別途配設する態様では、この「混合用の弁装置」を水栓本体10に内蔵したり、水栓本体10外に配設することができる。
【0034】
図1に示すように、水栓本体10の下面部からは、弁装置18に給湯を行うための給湯管12W(図6及び図7に図示)と、弁装置18に給水を行うための給水管12Cと、弁装置18から流出する湯水(弁装置18で所望の温度に調温された湯水、若しくは、本水栓1の1次側の調温部で、所望の温度に調温された湯水)をデッキ部(台部)2の下方に到達させるための流出管12Rとが突出している。そして、この給湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rは、挿通孔2aを通じてデッキ部(台部)2の下方に到達している。
【0035】
図1に示すように、支持部15は、略筒形状に構成されると共に、その上端部15a側の内壁面に雌型のセレーション15bが設けられている。また、支持部15の内部空間15cは、支持部15の上端部15aで、水栓本体10の外部に開放されると共に、支持部15の下端部で基体部11の内部空間13と連通している。更に、基体部11の内部空間13の下端部は、水栓本体10の下面部において下方に開放されている。このため、支持部15の内部空間15cは、基体部11の内部空間13と挿通孔2aとを介して下部空間3に連絡されている。
【0036】
シャワーヘッド20は「吐水ヘッド」の具体例を構成するものである。そして、図1に示すように、その基端部には、前述の「雌型のセレーション15b」とセレーション嵌合可能な「雄型のセレーション部21」が設けられ、支持部15の上端部に対して着脱自在となっている。
【0037】
シャワーホース30はホースの具体例を示すものであり、可撓性を備えるフレキシブルホースを用いて構成されている。そして、図2に示すように、可撓性を備えるパイプ状のホース本体31と、その外周面を包囲するメタル部32とを備えている。このメタル部32は、略蛇腹状の外形を備えると共に、凹部32aと突部32bとをシャワーホース30の軸心方向に沿って交互に配置している。尚、凹部32a及び突部32bは、何れも、ホース本体を、斜め傾斜状に旋回する経路を描いている。
【0038】
このシャワーホース30は、流出管12Rの端末部と、シャワーヘッド20の基端部とを連絡するために用いられる。つまり、図1に示すように、シャワーホース30の一端部(下流側の端部)30aはシャワーヘッド20の基端部に接続されている。また、図2に示すように、シャワーホース30の他端部(上流側の端部)30bは、後述する接続具50を介して流出管12Rの突端部121Rと接続されている。なお、シャワーホース30の他端部30b側は、接続具50との接続に関与する接続金具35によって構成されている。この接続金具35は、管状体によって構成され、外周部のうちで、シャワーホース30の他端部30b寄りに相当する位置に雄ネジ部35mを備える。
【0039】
本実施例では、図1及び図2を用いて示されるように、このシャワーホース30が、支持部15の内部空間15cと、基体部11の内部空間13と、デッキ部の挿通孔2aとを通じて、下部空間3に引き出し可能に挿入されている。尚、本実施例では、支持部15の内部空間15c及び基体部11の内部空間13によって、水栓本体10の「通過路S」の具体例を構成する。
【0040】
本実施例では、シャワーヘッド20の雄型のセレーション21を、支持部15の雌型のセレーション15bにセレーション嵌合させ、シャワーヘッド20を支持部15に支持すると、シャワーホース30は収納状態となる。つまり、シャワーホース30のうちで、シャワーヘッド20の近傍に位置する部分30aは、通過路Sと挿通孔2aに挿入された状態となり、シャワーホース30のその他の部分30Aが下部空間3に収納された状態となる。そして、デッキ部(台部)2の前方等に位置する使用者が、シャワーヘッド20を自己の方向に引き寄せると、シャワーホース30のその他の部分30Aが、シャワーヘッド20の近傍に位置する部分30aと共に、使用者の側に引き出される。
【0041】
本実施例では、図7に示すように、下部空間3において、給湯管12Wの突端部121Wが給湯配管8Wの端末部に接続され、給水管12Cの突端部121Cが給水配管8Cの端末部に接続されている。また、接続具50を用いて、流出管12Rの突端部121Rと、シャワーホース30の他端部30bとが接続されている。なお、給湯配管8Wの端末部と給水配管8Cの端末部は雌型のワンタッチジョイントによって構成され、給湯管12Wの突端部121W及び給水管12Cの突端部121Cは、雄型のワンタッチジョイントによって構成されている。また、流出管12Rの突端部121RはプラグJ5によって構成されている。
【0042】
図2に示すように、ホースガイド36は下部空間3において、流出管12Rに装着され、ホースストッパー38は下部空間3において、シャワーホース30に装着されている。このうち、ホースガイド36は、クリップ部36aと、ホース挿通部36bと、クリップ部36a及びホース挿通部36bを連結する連結部36cと、を備えている。このホースガイド36は、クリップ部36aで流出管12Rの突端部121R側を挟持することで、流出管12Rに固定されている。また、ホース挿通部36bは略円筒状の本体部361bを備え、この本体部361bの軸心は流出管12Rの突端部121R側の軸心と略平行とされている。そして、この本体部361bにはシャワーホース30が遊びを持った状態で挿通されている。
【0043】
ホースストッパー38は略筒状(詳しくは、両端が開口部とされた略樽型形状)に構成され、ホースガイド36のホース挿通部36bの配設位置よりも下方において、略円柱状の内部空間にシャワーホース30を挿入した状態でシャワーホース30に装着されている。このホースストッパー38は、シャワーホース30に対して相対移動を起こさない状態に装着されているため、シャワーホース30が引き出されようとすると、ホースストッパー38もシャワーホース30の引き出し方向に移動しようとする。但し、このホースストッパー38の外径が、本体部361bの内径よりも大きくされているため、ホースストッパー38が、ホースガイド36のホース挿通部36bの下面に当接すると、シャワーホース30をそれ以上引き出すことが不可能となる。
【0044】
次に、接続具50について詳細に説明する。この接続具50は、図3に示すように、接続具本体51と、接続具本体51の上端部に設けられたカプラー60と、接続具本体51の下端部に装着された水抜き栓57とを備える。また、接続具本体51は、管状本体部52と接続具本体51から膨出された膨出部54とを備える。なお、図3においては、接続具本体51の上端に保護キャップ50Pを装着した上端が図示されている。この保護キャップ50Pが接続具本体51の状態に装着されると、カプラー60を構成するスリーブ61(後述する。)が下方に押圧された状態となり、この保護キャップ50Pを取り外すと、スリーブ61はコイルスプリング62(後述する。)の付勢力で上昇する。
【0045】
管状本体部52は、図3及び図4に示すように、上下方向中間部にクランク状に屈曲する屈曲部52aを有する略管状体によって構成されている。つまり、屈曲部52aの上方に略直管状に構成される第1の管状部52bを配設し、屈曲部52aの下方に略直管状に構成される第2の管状部52cを配設している。また、管状本体部52では、第1の管状部52bにおいて上下方向に形成される管軸が、屈曲部52aにおいて横方向に屈曲され、第2の管状部52cにおいて再び、上下方向に向けられる。
【0046】
管状本体部52の上端(つまり、第1の管状部52bの上端)では第1の接続口52dが上方に向かって開口し、管状本体部52の下端では着脱口52eが下方に向かって開口している。この第1の接続口52dは流出管12Rの突端部121Rが接続される接続口である。そして、管状本体部52の上端側(第1の接続口52dの側)にはカプラー60が設けられており、このカプラー60に対して、流出管12Rの突端部121R側(プラグJ5)を挿入するだけで、第1の接続口52dと流出管12Rの突端部121Rとが接続可能とされている。
【0047】
なお、カプラー60は、図3に示すように、管状本体部52の上端側に装着されたスリーブ61と、このスリーブ61を上方に付勢するコイルスプリング62と、管状本体部52上端側の管壁に複数設けられた孔に装着されたボール63とを備えている。そして、コイルスプリング62の付勢力に対抗しつつスリーブ61を下方に押すと、ボール63は管状本体部52の半径外側方向に移動し(図3の状態を参照)、スリーブ61を上方に戻すと、ボール63は管状本体部52の半径内側方向に移動する(図2の状態を参照)。更に、接続具本体51の上端側内壁面にはパッキング65が配設されている。そして、スリーブ61を下方に押し下げながら、管状本体部52の上端の第1の接続口52dの内側にプラグJ5を挿入したところで、スリーブ61を上方に復帰させると、ボール63がプラグJ5の外周の凹溝J6に、はまり込むとともに、スリーブ61によって「ボール63の半径外側方向への移動」が禁止されるため、プラグJ5が管状本体部52に抜け止め固定される(図2を参照)。
【0048】
図3及び図4に示すように、管状本体部52の下端部側(つまり、第2の管状部52cの下端部側)は、内径及び外径を拡大する拡径部52gとされ、この拡径部52gの内壁面には雌ネジ部52hが設けられている。そして、水抜き栓57が、この拡径部52gを中心とする部位に上下動可能な状態に装着されている。つまり、水抜き栓57は、図3に示すように、第2の管状部52cにおいて拡径部52gよりも上方の部位(以下、「一般管状部」という。)52jに摺動状態で挿入可能な外径を備える小径部57aと、拡径部52gの雌ネジ部52hと螺合可能な雄ネジ部57cを備える中径部57bと、拡径部52dと略同一の外径を備える大径部57dとを備える。
【0049】
小径部57aの上端側の外周面の周回溝には、小径部57aと一般管状部52jとの間の水密性が確保するためのシールパッキン57gが装着されている。また、図2に示すように、小径部57aの下端側の外周面では通水孔57hが開口している。そして、水抜き栓57の軸心位置に設けられた通水路57iの上端部が、通水孔57hを用いて側方に開放され、通水路57iの下端部は抜き栓57の底面において下方に開放されている。そして、雌ネジ部52hに雄ネジ部57cを螺合させ、水抜き栓57を上方に螺進させ、シールパッキン57gによって、小径部57aと一般管状部52jとの間の水密性が確保されると(図2を参照)、第2の管状部52cからの水抜きを行うことができない。一方、水抜き栓57を下方に移動させると、小径部57aと一般管状部52jとの間のシールが解除され、第2の管状部52cからの水抜きを行うことができる(図3を参照)。
【0050】
膨出部54は、図3〜図5に示すように、軸心を斜め上下に向けた略トンネル形状に構成されている。ここで、図4及び図5(b)においては、説明上の便宜のため、管状本体部52を実線で図示し、膨出部54を破線で図示している。
【0051】
膨出部54は、一般管状部52jの上半部から側方に向かって突出している。そして、第1の管状部52bの直下において、一般管状部52jの管壁521jの一部とともに、管軸K1を下り傾斜状とする副管状部55を構成している。つまり、図5(a)及び(b)に示すように、副管状部55の管壁55aのうちの周方向に沿った一部55bは、一般管状部52jの管壁521jの一部によって構成され、管壁55aの残部は膨出部54によって構成されている。すなわち、略トンネル形状の膨出部54は、「トンネルの経路方向と直交する開口部」が、一般管状部52jの管壁521jの一部で封止された状態となり、この膨出部54と「管壁521jの一部」とが、管状体(副管状部55)を構成している。
【0052】
図3及び図4に示すように、膨出部54の基端部は第1の管状部52bの下端と一体化されるとともに、第1の管状部52bの底部が下方に向かって開放されているため、副管状部55の管内空間は管状本体部52の管内空間と連通している。また、副管状部55の管軸K1(図4に図示)と、第1の管状部52bの管軸K2(図4に図示)とがなす角度は約170度とされている。また、一般管状部52jにおいて膨出部54と対向する面522jは、管軸K1の傾斜角と略同一の傾斜角を有する傾斜面とされている。このため、副管状部55の流路断面が管軸K1方向に沿って均一化されている。
【0053】
図2〜図4に示すように、副管状部55の開口部は、シャワーホース30の他端部30bを接続具50に接続するための接続口(以下、「第2の接続口」という。)55hを構成している。この第2の接続口55hの開口方向と、第1の接続口52dの開口方向とがなす角度は約170度とされている。そして、副管状部55の開口部側の内壁面には、「シャワーホース30の他端部30b寄りの雄ネジ部35m」を螺合可能な雌ネジ部55bが設けられている。この雌ネジ部55bを構成するネジ溝は、副管状部55の管軸K1周りを螺旋状に周回しつつ、膨出部54と管状本体部52との間を縦断している。なお、本実施例では、副管状部55の管軸K1と、第1の管状部52bの管軸K2と、第2の管状部52cの管軸K3とが同一平面上に位置している。また、水抜き栓57が、第2の接続口55hよりも下方に配設されるため、水抜き栓57の操作が容易である。
【0054】
次に、本水栓1の施工例を説明する。この水栓1は、水栓1の製造メーカから出荷される前の段階で、図6に示す形態をとる。つまり、水栓本体部10の底面から給湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rと、シャワーホース30とが突出する状態となる。その際、給湯管12W、給水管12C及び流出管12Rは、水栓本体部10の底面から垂下する状態とされる。また、流出管12Rの突端部121R(プラグJ5)がカプラー60に装着され、流出管12Rの突端部121Rから接続具50が垂下する状態となる。
【0055】
更に、製造メーカから出荷される前の段階で、副管状部55の雌ネジ部55bに、シャワーホース30の雄ネジ部35m(他端部30b)が螺合される(図2の状態を参照)。このとき、所定の測定器等を用いて雄ネジ部35mの雌ネジ部55bに対する締付力(締付トルク)が適正値に規制される。
【0056】
この状態において、シャワーホース30の他端部30b側が、接続具50の軸心(鉛直方向)に対して170度の角度で形成しつつ、接続具50から突出する。つまり、シャワーホース30を接続具50に近い側から観察すると、接続具50の近傍で接続具50に沿って下降した後、略円弧に湾曲され、進路を上方に向けた状態とされる。つまり、シャワーホース30は、水栓本体部10の底面と接続具50との間で滑らかなループを描くことになる。そして、シャワーホース30は、水栓本体部10の下方で、長軸を上下に向けた半長円状の経路を描くため、シャワーホース30の挿通孔2aの径方向(図中の矢印Xの方向)への広がりが抑制される。
【0057】
本水栓1では、このように、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態であっても、シャワーホース30の広がりが抑制できるとともに、接続具50自体の「挿通孔2aの径方向(図中の矢印Xの方向)に沿ったサイズ」を抑制できるため、施工現場における施工性が向上する。つまり、水栓の施工業者は、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態で、湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rと、シャワーホース30とをデッキ部(台部)2の上方から挿通孔2aに挿通することができる。この後、水栓本体10をデッキ部(台部)2の上面に固定することで、水栓本体10の設置を完了する。
【0058】
そして、水栓の施工業者は、図7に示すように、下部空間3において、「給湯管12Wの突端部側と、給水管12Cの突端部側を湾曲させ、両突端部の間隔を、給湯配管8Wの端末部と給水配管8Cの端末部との間隔に一致させた後、給湯管12Wの突端部を給湯配管8Wの端末部に接続し、給水管12Cの突端部を給水配管8Cの端末部に接続する作業」と、「ホースガイド36を装着する作業」と、「ホースストッパー38を装着する作業」等を行うと、本水栓1の設置を完了する。なお、給湯配管8W及び給湯管12Wの接続と、給水配管8C及び給水管12Cの接続は、前者を後者に押し込むこと等によって簡単に完了する。
【0059】
以上のように、本実施例の接続具50では、第2の接続口55hを構成する副管状部55を、「単独で筒形状を構成する管状体(つまり、外周部の全周囲が開放された管状体)」ではなく、管状本体部52の管壁521jの一部と膨出部54とを用いて構成する。また、副管状部55の管軸K1が上り傾斜状とされるため、副管状部55の管状本体部52側方への突出量が少なくなる(膨出部の膨出量に止まる。)。従って、接続具50の「挿通孔2aの径方向に沿ったサイズ」を抑制できる。しかも、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態であっても、シャワーホース30の「挿通孔2aの径方向に沿った広がり」を抑制できるため、「上面設置」が容易となる。
【0060】
このように、実施例1の接続具50によると、予め、水栓の製造メーカ等でシャワーホース30と接続具50とを接続すればよいため、寒冷地仕様の水栓1の施工性を向上させることができる。また、水栓の製造メーカ等において、締付トルクを適正値に規制しつつ、シャワーホース30と接続具50とを接続すればよいため、シャワーホース30と接続具50との接続部分からの「水漏れ」を防止することができる。
【0061】
また、本実施例の接続具50を用いると、一般地仕様の水栓と寒冷地仕様の水栓とで生ずる「ホース引き出し量の相違」を少なくすることができる。つまり、前述の「寒冷地仕様の水栓100B(図12を参照)」では、図8(a)に示すように、水栓本体100の下方において、シャワーホース120が描く経路は水平方向に長軸を向けた半長円状の経路となり易い。つまり、前述の「接続具150Aを用いた一般地仕様の水栓100A(図11を参照)」において、「シャワーホース120と流出管110とが接続具150Aで接続されて描く経路{上下に長尺な略半長円状の経路であって、図8(c)を参照}に比べて、遠回りの経路を経て、デッキ部200の上方に引き回わされることになる。従って、「寒冷地仕様の水栓100B(従来例)」では、「一般地仕様の水栓100A(従来例)」に比べて、同じ長さのホース120を用いても、デッキ部200の上方への引き出し量が少なくなっていた(例えば、約10〜30mm程度)。
【0062】
一方、本実施例の接続具50を用いると、図8(b)に示すように、シャワーホース30に「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合と略同様な経路を描かせつつ、デッキ部200の上方に引き回わすことができる。従って、「一般地仕様の水栓100A(従来例)」に比べて、同じ長さのシャワーホース30を用いた場合、デッキ部200の上方への引き出し量の差を少なくできる(例えば、約5mm程度)。
【0063】
更に、本実施例の接続具50を用いると、シャワーホース30を伝わり、デッキ部2下方に到達する流体(湯、水若しくは混合水)を受ける水受けタンクや水受けトレイの設置に関しても、一般地仕様と同等の設定が可能になり、この点からも、水栓1の施工性が向上する。つまり、前述の従来例に係る「寒冷地仕様の水栓100B(従来例)」では、図8(a)に示すように、水平方向に長い経路を描くシャワーホース120に合わせて、大型の水受けトレイTを設置することが必要である。ところが、図8(b)及び(c)に示すように、本実施例の接続具50を用いる場合と、前述の「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合とにおいて、デッキ部2、200の下方でシャワーホース30、120が略同様な経路を描く。従って、本実施例の接続具50を用いる場合と、前述の図11に示す「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合とにおいて、同様なサイズの水受けトレイTを同様な設置すればよいからである。
【0064】
また、本実施例の接続具50を用いると、シャワーホース30の接続角度が自然な角度となり、シャワーホース30がデッキ部2、200の下方で自然なループを描く(一般地仕様の水栓と同様なループを描く)。このため、使用時のシャワーホース30(メタルホース)への負担が軽減され、品質的な向上(経年劣化の改善効果)を図ることができる。
【0065】
更に、本実施例の接続具50では、第2の管状部52cに水抜き栓57を配設する。つまり、通常時に使用する「第1の管状部52b及び副管状部55で構成される管状部」には水抜き栓57を配設しない。このため、「第1の管状部52b及び副管状部55で構成される管状部」の流路抵抗を、水抜き栓57によって大きくすることを防止できる。
【実施例2】
【0066】
次に、実施例2の接続具50について、図9及び図10を用いて説明する。この接続具50は、膨出部84の膨出箇所と、副管状部55の管軸K1の方向が実施例1の接続具50と異なる。つまり、実施例2の接続具50も、図9に示すように、接続具本体51と、接続具本体51の上端部に設けられたカプラー60と、接続具本体51の下端部に装着された水抜き栓57とを備え、接続具本体51は、管状本体部52と接続具本体51から膨出された膨出部84とを備える。なお、図10においては、説明上の便宜のため、管状本体部52を実線で図示し、膨出部84を破線で図示している。
【0067】
実施例2の管状本体部52も、図10に示すように、屈曲部52aの上下に第1の管状部52bと第2の管状部52cとを配設している。また、実施例2の膨出部84は、軸心を斜め上下に向けた略トンネル形状とされる膨出本体84aと、膨出本体84aの下端部から水平に延びる底部84bとを備える。この膨出部84は、一般管状部52jの下方側において側方に向かって突出している。そして、第1の管状部52bの直下において、一般管状部52jの管壁521jの一部とともに、管軸K1を上がり傾斜状とする副管状部85を構成している。つまり、この副管状部85の管壁85aのうちの周方向に沿った一部85bは、一般管状部52jの管壁521jの一部によって構成され、管壁85aの残部は膨出部84によって構成されている。
【0068】
一般管状部52jにおいて副管状部85の内側に位置する部位が、管壁521jを貫通する貫通孔521mとされているため、副管状部85の管内空間は管状本体部52の管内空間と連通している。また、副管状部85の管軸K1と、第1の管状部52bの管軸K2とがなす角度は約10度とされている。また、一般管状部52jにおいて膨出部84と対向する面522nは、管軸K1の傾斜角と略同一の傾斜角を有する傾斜面とされている。このため、副管状部85の流路断面が管軸K1方向に沿って均一化されている。
【0069】
副管状部85の開口部は、シャワーホース30の他端部30bを接続具50に接続するための接続口(つまり、第2の接続口)85hを構成している。この第2の接続口85hの開口方向と、第1の接続口52dの開口方向とがなす角度は約10度とされている。そして、副管状部85の開口部側の内壁面には、「シャワーホース30の他端部30b寄りの雄ネジ部35m」を螺合可能な雌ネジ部85bが設けられている。この雌ネジ部85bを構成するネジ溝は、副管状部85の管軸K1周りを螺旋状に周回しつつ、膨出部84と管状本体部52との間を縦断している。
【0070】
実施例2によると、実施例1の効果に加えて以下の効果を得ることができる。つまり、シャワーホース30を副管状部85に接続すると、シャワーホース30の他端部30b側が、接続具50の軸心(鉛直方向)に対して10度の角度で形成しつつ、接続具50から突出する。つまり、シャワーホース30を接続具50に近い側から観察すると、接続具50の近傍で接続具50に沿って上昇して挿通孔2aに到達させることができる。すなわち、副管状部85を起点とする「シャワーホース30の経路」を、一旦下方に向けなくても(つまり、半長円状の経路を描かなくても)、シャワーホース30を挿通孔2aに到達させることができる。このため、実施例2の接続具50を用いると、シャワーホース30の全長を短くしても、シャワーホース30の引き出し量を確保することができる。
【0071】
尚、本各発明の範囲は前記各実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。即ち、各実施例では、吐水ヘッドを着脱自在に支持する支持部を、水栓本体部に設けられる態様を例示したが、各請求項の発明では、支持部を設置部において水栓本体部と離間する位置に設けたり、設置部の周囲の壁部等に設けることもできる。また、実施例では、ホースが設置部の下方に引き出し可能となる態様を例示したが、各請求項の発明では、ホースを設置部の下方から引き出し不可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、水栓の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1;水栓、
2、200;デッキ部(設置部)、
2a;挿通孔(挿通部)、
10;水栓本体(水栓本体部)、
12W;給湯管、
12C;給水管、
12R;流出管、
15;支持部、
18;弁装置(吐止水の選択機構、吐水量の選択機構、湯と水の混合機構)、
20;シャワーヘッド(吐水ヘッド)、
30;シャワーホース(ホース)、
30a;一端部、
30b;他端部、
50、150A、150B;接続具、
51;接続具本体、
52;管状本体部、
52d;第1の接続口、
52e;着脱口、
54、84膨出部、
55、85;副管状部、
55h、85h;第2の接続口、
55b、85b;雌ネジ部、
57;水抜き栓、
S;通過路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き栓付き接続具と、この水抜き栓付き接続具を備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓本体部とシャワーヘッドとをデッキ部の上方に配設するとともに、シャワーヘッドが一端部に接続されるシャワーホースを、水栓本体部内とデッキ部の挿通孔に挿通して、デッキ部の下方に引き出し可能に収納した水栓が従来より用いられている。かかる水栓として、水栓本体部から湯水を流出させるために、水栓本体部から突出する流出管を、挿通孔を通じてデッキ部の下方に到達させるとともに、流出管の突端部とシャワーホースの他端部とを接続具を介して接続したものが開示されている(特許文献1を参照、以下、「従来例」という。)。
【0003】
かかる従来例に係る水栓は、一般地(寒冷地以外の土地を指す。)のみならず、寒冷地においても使用することができる。つまり、前述の従来例として、一般地で使用する水栓(以下、「一般地仕様の水栓」といい、特許文献1の図2を参照)の他に、寒冷地で使用する水栓(以下、「寒冷地仕様の水栓」といい、特許文献1の図3を参照)とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−286345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般地仕様の水栓100Aにおいては、図11に示すように、流出管110の突端部と、シャワーホース120の他端部とが、略直管状の接続具150Aで接続される。かかる一般地仕様の水栓100Aでは、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で、デッキ部200の上方から挿通孔201に挿通し、デッキ部200の下方で、接続具150Aを用いて、シャワーホース120と流出管110とを接続するのが一般的である。つまり、シャワーホース120と流出管110とを予め接続しない状態で、この水栓100Aをデッキ部200の上方に配設し、水栓本体100に流体の供給を行う供給管(例えば、給湯管160及び給水管170)とともに、シャワーホース120及び流出管110を、デッキ部200の挿通孔201に挿通する。そして、水栓本体100で挿通孔201を隠蔽するようにして水栓本体100をデッキ部200に設置し、供給管(例えば、給湯管160及び給水管170)と、流体の供給源(例えば、給湯用の元配管181、給水用の元配管185)とを接続する作業と、シャワーホース120と流出管110とを接続具150Aを用いて接続する作業等を行うことで、一般地仕様の水栓100Aの施工を完了することになる。
【0006】
寒冷地仕様の水栓100B(図11に括弧書で付記)においては、前述の接続具150Aとは形状が異なる接続具150B(図11に括弧書で付記)を用いるが、この寒冷地仕様の水栓100Bにおいても、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で水栓本体100をデッキ部200に設置した後、デッキ部200の下方でシャワーホース120と流出管110との接続を行うのが一般的である。
【0007】
ところで、本出願人は、何れのタイプの水栓100A、100Bにおいても、シャワーホース120と流出管110とを予め接続した状態で、デッキ部200に設置することが望ましいと考える。つまり、シャワーホース120と接続具150A、150Bとの接続は、一方に設けられる雄ネジ部と他方に設けられる雌ネジ部とを螺合して行われるのが一般的である。例えば、シャワーホース120の他端部に設けられる雄ネジを、管状部155の内壁に設けられる雌ネジ部に螺合して行うことができるが、「デッキ部200の下方の狭い空間内で、雄ネジを雌ネジ部に締め付ける締付作業」の作業性が悪いため、この締付作業が原因となり、水栓100A、100Bの施工性を低下させるおそれがある。また、現場施工による締付作業では、雄ネジの雌ネジ部に対する締付力(締付トルク)を適正値に規制することが困難であるため、水栓の使用期間の経過に伴って雄ネジと雌ネジ部との間の螺合が緩み、シャワーホース120と接続具150Bとの接続部分から「水漏れ」を生ずる可能性もからである。なお、このように、シャワーホースと流出管とを予め接続した状態で、水栓を設置部(デッキ部等)に設置することを「上面設置」という。
【0008】
しかしながら、寒冷地仕様の水栓100Bにおいては、図12に示すように、接続具150Bの形態が原因となり、「上面設置」が困難若しくは不可能となっている。つまり、この水栓100Bに適用される接続具150Bにおいては、「流出管110の突端部が接続される部分」を上方に配設するとともに、「水抜き栓157が着脱される部分」を下方に配設した管状本体部151を備える。また、この接続具150Bは、単独で筒形状を構成する管状部155を管状本体部151の外周部から水平方向に突出させ、この管状部155にシャワーホース120の他端部が接続される。
【0009】
このように、寒冷地仕様の水栓100Bに適用する接続具150Bでは、「単独で筒形状を構成する管状部155」を水平方向に突出させる分だけ、「挿通孔201の幅方向(径方向)に沿ったサイズ」が大きくなる。そして、この接続具150Bを挿通孔201に挿通すること自体が困難なため、「上面設置」が困難となる。
【0010】
しかも、この寒冷地仕様の水栓100Bでは、管状部155に接続されるシャワーホース120の存在が、この「上面設置」を更に困難なものとしている。つまり、シャワーホース120の他端部が、水平方向に突出する管状部155に接続されると、シャワーホース120の他端部寄りの部位120aは、自身の剛性のため、その軸心を水平方向に向けようとする。このため、水栓本体100の下方において、シャワーホース120が描く経路は水平方向に長軸を向けた半長円状の経路となり易い。従って、水栓本体100の下方に配設されるシャワーホース120において、挿通孔201の幅方向(図中の矢印Xの方向)への広がりが、大きくなり、このシャワーホース120を挿通孔201に挿通することが困難となるからである。なお、シャワーホース120として、アウター管(通常、金属製で略蛇腹状の螺旋管を用いて構成される管状体)と、アウター管に挿通させるインナー管(通常、樹脂製チューブによって構成される管状体)とを備える複層管を用いて構成した場合、この幅方向への広がりが、特に大きくなり、「上面設置」が更により一層困難なものとなる。
【0011】
従って、寒冷地仕様の水栓100Bにおいては、挿通孔201のサイズを、「水栓本体100の底面積」を遙かに超えるものとしない限り、「上面設置」を行うことが困難である。よって、寒冷地仕様の水栓100Bでは、シャワーホース120と流出管110とを接続しない状態で水栓本体100をデッキ部200に設置した後、デッキ部200の下方でシャワーホース120と流出管110とを接続せざるを得ないが実情である。このため、寒冷地仕様の水栓100Bにおいて、「上面設置」を可能とし、施工性を向上させたり、シャワーホース120と流出管110との接続部分からの「水漏れ」を防止することが望まれている。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができるとともに、ホースとの接続部分からの「水漏れ」を防止できる水抜き栓付き接続具と、この水抜き栓付き接続具を備える水栓とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明の水抜き栓付き接続具(以下、「水抜き栓付き接続具」を単に「接続具」と称する)は、
吐止水の選択機構を内蔵しつつ所定の設置部に設置されるとともに、前記選択機構に施される吐水操作に応じて流出させる流体を通過させる流出管を、前記設置部を貫通する挿通部を通じて前記設置部の下方に突出させる水栓本体部と、
前記水栓本体部若しくは設置部の上方の所定の部位に設けられる支持部に着脱自在に支持される吐水ヘッドと、
一端部が前記吐水ヘッドに接続されるとともに前記水栓本体部内の通過路及び前記挿通部に挿通されつつ前記設置部の下方に引き出し可能若しくは引き出し不可能に挿入されるホースと、
を具備する水栓において、前記流出管の突端部と前記ホースの他端部とを接続する、水抜き栓付き接続具であって、
前記流出管の突端部が接続される接続口を上方に開口させ、水抜き栓が着脱される着脱口を下方に開口させた管状本体部と、
前記管状本体部の上下方向中間部から膨出して前記管状本体部の管壁の一部と共に管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とする副管状部を構成する膨出部と、
を備え、
前記副管状部の管内空間は前記管状本体部の管内空間と連通するとともに、前記副管状部に前記ホースの他端部が接続される接続口が設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明の接続具では、「ホースが接続される接続口を構成する副管状部」を単独で筒形状を構成する管状体ではなく、管状本体部の管壁の一部と膨出部とを用いて構成する。つまり、「管状本体部の管壁の一部」を「副管状部の管壁の一部(周方向に沿った一部)」としつつ、これに残部を構成する膨出部を組み合わせて略管状に構成する。しかも、副管状部の管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とされるため、副管状部の管状本体部側方への突出量が少なくなる(膨出部の膨出量に止まる。)。従って、「挿通部の幅方向(挿通部が円形孔の場合、挿通部の径方向)に沿ったサイズを抑制できるため、「上面設置」が容易となる。
【0015】
また、請求項1の発明の接続具では、副管状部の管軸が上り傾斜状若しくは下り傾斜状とされ、この副管状部にホースが接続されることで、ホースの他端部側が傾斜状とされる。このため、ホースにおける「挿通部の幅方向(挿通部が円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」を抑制できる。例えば、ホースの設置部の下方での経路を「長軸が上下若しくは傾斜方向を向く半長円状」等として、この広がり」を抑制できる。そして、この点からも、「上面設置」が容易となる。なお、各請求項の発明において、副管状部の管軸を上り傾斜状とすると、ホースの長さを短くすることができる、というメリットを生ずる。
【0016】
このように、請求項1の発明によると、現場施工でホースと流出管とを接続することが要求されないため(例えば、予め、水栓の製造メーカ等で接続すればよいため)、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができる。また、水栓の製造メーカ等において、締付トルクを適正値に規制しつつ、ホースと接続具とを接続すればよいため、ホースと接続具との接続部分からの「水漏れ」を防止することができる。
【0017】
各請求項の発明の「膨出部」としては、例えば、「リング形状、枠形状等の閉じた形状から一部を切り欠いた断面形状」を備えるもの、より具体的には、略C字状、略U字状若しくは略コの字状等の断面形状を備えるものを例示できる。例えば、断面形状が略C字状、略U字状、略コの字状等となる略樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部や、このような樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部本体を備える膨出部を例示できる。つまり、この樋形状若しくは略トンネル形状の膨出部や膨出部本体においては、その経路方向とは交差する位置の開口部(経路方向に沿った端部の開口部以外の開口部)側に、「管状本体部の管壁の一部」が一体化され、この「管状本体部の管壁の一部」とともに、副管状部を構成する。
【0018】
各請求項の発明の「吐水ヘッド」としては、シャワー吐水を行うためのシャワーヘッドに限定されるものでなく、種々の態様の吐水(通常吐水、泡沫吐水等)を行うための吐水ヘッド等を例示することもできる。また、「設置部」としては、例えば、デッキ部(台部)等を例示できる。更に、「水栓本体部」は、吐止水の選択機構のみを内蔵してもよいし、吐水量の選択機構や、湯と水の混合機構(請求項4を参照)を内蔵してもよい。また、「流体」は、「湯」、「水」、若しくは、「湯と水を混合した混合水」の何れであってもよい。
【0019】
請求項2の発明の接続具は、請求項1に記載の接続具において、
前記流出管の突端部が接続される接続口の開口方向と、前記ホースの他端部が接続される接続口の開口方向とが形成する角度が、20度以下の鋭角若しくは160度以上の鈍角とされることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明では、ホースの他端部が接続される接続口の開口方向を鉛直方向により近づけるため、副管状部の管状本体部側方への突出量を少なくすることができる。
【0021】
請求項3の発明の接続具は、請求項1又は請求項2に記載の接続具において、
前記副管状部の内壁には、前記ホースの他端部を螺合固定するための雌ネジ部が設けられるとともに、
前記雌ネジ部を構成するネジ溝が、前記管状本体部の管壁と前記膨出部とを縦断することを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明では、管状本体部の管壁を雌ネジ部の形成個所として用い、ホースの他端部を管状本体部の管壁と膨出部の双方に螺合するため、ホースの他端部を接続具に対してより確実に固定できる。
【0023】
請求項4の発明の接続具は、請求項1〜3の何れかに記載の水抜き栓付き接続具において、
前記水栓本体部には湯と水を混合するための混合機構が内蔵されるとともに、
前記水栓本体部に給湯を行うための給湯管と、前記水栓本体部に給水を行うための給水管とが、前記挿通部に挿通されることを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明では、「水栓本体部に混合機構が内蔵するとともに、水栓本体部から給湯管及び給水管を突出する状態に備える水栓(湯水混合水栓)」への適用例を述べている。この水栓では、挿通部に計4本の管状体(流出管、ホース、給湯管、給水管)を挿通することが必要なため、ホースにおける「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」が大きくなると、ホースと流出管とを接続しない状態としなければ、水栓を設置部に設置する作業がより一層、困難となる。これに対して、請求項4の発明では、前述のように、接続具の「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿ったサイズや、ホースにおける「挿通部の幅方向(円形孔の場合、径方向)に沿った広がり」を抑制するため、ホースと流出管とを接続したままの状態で、しかも、挿通部に流出管及びホースのみならず、給湯管と給水管とを挿通しつつも、水栓を設置部に円滑に設置することが容易となる。
【0025】
請求項5の発明の水栓は、請求項1〜4の何れかに記載の接続具を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項5の発明の水栓では、効率な施工を行うことができるとともに、ホースと接続具の接続部分からの「水漏れ」を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、請求項1〜4の各発明の接続具によると、寒冷地仕様の水栓の施工性を向上させることができるとともに、ホースとの接続部分からの「水漏れ」を防止できる。また、請求項5の発明の水栓によると、効率な施工を行うことができるとともに、ホースと接続具の接続部分からの「水漏れ」を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】各実施例の水栓の縦断面図である。
【図2】実施例1の接続具等を示す縦断面図である。
【図3】実施例1の接続具を示す縦断面図である。
【図4】実施例1の接続具本体を示す縦断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図5】(a)は図4のa−o−a断面図(管状本体部及び膨出部を実線で示す。)、(b)は図4のa−o−a断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図6】実施例1の水栓の施工例を説明するための説明図である。
【図7】実施例1の水栓の施工例を説明するための説明図である。
【図8】(a)は従来例の寒冷地仕様の水栓と水受けトレイを示す説明図、(b)は実施例の水栓と水受けトレイを示す説明図、(c)は従来例の一般地仕様の水栓と水受けトレイを示す説明図である。
【図9】実施例2の接続具等を示す縦断面図である。
【図10】実施例2の接続具本体を示す縦断面図(管状本体部を実線で示し、膨出部を破線で示す。)である。
【図11】従来例の一般地仕様の水栓の施工例を示す説明図である(寒冷地仕様の水栓の施工例を括弧内に付記している。)。
【図12】従来例の寒冷地仕様の水栓において、上面設置を行う場合の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係わる「接続具」の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、接続具50の詳細な説明に先立ち、適用対象となる水栓1等の概略について、図1を用いて簡単に説明する。この水栓1は、デッキ部(台部)2に設置して使用されるデッキタイプの水栓1である。この水栓1は、デッキ部(台部)2上に設置される水栓本体10と、水栓本体10の上方に設置される操作部(操作レバー)19と、シャワーヘッド20と、シャワーホース30と、ホースガイド(図2に図示)36と、ホースストッパー38(図2に図示)とを備えている。
【0031】
デッキ部(台部)2は設置部の具体例を構成するものであり、デッキ部(台部)2の下方には下部空間3が設けられている。また、デッキ部(台部)2には、表裏面(上下面)を貫通する挿通孔2aが設けられている。尚、この水栓1(ひいては、シャワーヘッド20)を使用者が使用する空間5(以下、「使用空間5」といい、浴室内の空間、洗面所内の空間、台所内の空間等を例示できる。)は、デッキ部(台部)2の表側(上面部側)に位置している。そして、この使用空間5は、水栓本体10の内部空間(後述する通過路S)と、挿通孔2aとを通じて下部空間3に連絡されている。
【0032】
水栓本体10は、水栓本体部の具体例を構成するものであり、略円柱型の外形を備える基体部11と、基体部11の外周面においてその下方側の部位から上がり傾斜状に突出する支持部15と、を備えている。また、水栓本体10は、その下面部(但し、シール部材等を挟んだ状態である。)で挿通孔2aに蓋をするような状態でデッキ部(台部)2上に搭載されている。
【0033】
図1に示すように、水栓本体10の上方側には、弁装置18が内蔵されている。この弁装置18としては、例えば、湯と水の混合と、吐止水の選択と、吐水量の調節を行うための摺動弁を例示できる。また、操作部(操作レバー)19は、弁装置18に操作を施すために使用される。この弁装置18は、吐止水の選択機構と、吐水量の選択機構と、湯と水の混合機構とを構成している。但し、各請求項の発明では、水栓本体10に「吐止水の選択機構を構成する弁装置」を内蔵してもよし、吐止水の選択機構及び吐水量の選択機構を構成する弁装置を内蔵してもよいが、この場合、「湯と水の混合機構を構成する混合用の弁装置」を本水栓1から排除してもよいし、別途配設してもよい。そして、「混合用の弁装置」を別途配設する態様では、この「混合用の弁装置」を水栓本体10に内蔵したり、水栓本体10外に配設することができる。
【0034】
図1に示すように、水栓本体10の下面部からは、弁装置18に給湯を行うための給湯管12W(図6及び図7に図示)と、弁装置18に給水を行うための給水管12Cと、弁装置18から流出する湯水(弁装置18で所望の温度に調温された湯水、若しくは、本水栓1の1次側の調温部で、所望の温度に調温された湯水)をデッキ部(台部)2の下方に到達させるための流出管12Rとが突出している。そして、この給湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rは、挿通孔2aを通じてデッキ部(台部)2の下方に到達している。
【0035】
図1に示すように、支持部15は、略筒形状に構成されると共に、その上端部15a側の内壁面に雌型のセレーション15bが設けられている。また、支持部15の内部空間15cは、支持部15の上端部15aで、水栓本体10の外部に開放されると共に、支持部15の下端部で基体部11の内部空間13と連通している。更に、基体部11の内部空間13の下端部は、水栓本体10の下面部において下方に開放されている。このため、支持部15の内部空間15cは、基体部11の内部空間13と挿通孔2aとを介して下部空間3に連絡されている。
【0036】
シャワーヘッド20は「吐水ヘッド」の具体例を構成するものである。そして、図1に示すように、その基端部には、前述の「雌型のセレーション15b」とセレーション嵌合可能な「雄型のセレーション部21」が設けられ、支持部15の上端部に対して着脱自在となっている。
【0037】
シャワーホース30はホースの具体例を示すものであり、可撓性を備えるフレキシブルホースを用いて構成されている。そして、図2に示すように、可撓性を備えるパイプ状のホース本体31と、その外周面を包囲するメタル部32とを備えている。このメタル部32は、略蛇腹状の外形を備えると共に、凹部32aと突部32bとをシャワーホース30の軸心方向に沿って交互に配置している。尚、凹部32a及び突部32bは、何れも、ホース本体を、斜め傾斜状に旋回する経路を描いている。
【0038】
このシャワーホース30は、流出管12Rの端末部と、シャワーヘッド20の基端部とを連絡するために用いられる。つまり、図1に示すように、シャワーホース30の一端部(下流側の端部)30aはシャワーヘッド20の基端部に接続されている。また、図2に示すように、シャワーホース30の他端部(上流側の端部)30bは、後述する接続具50を介して流出管12Rの突端部121Rと接続されている。なお、シャワーホース30の他端部30b側は、接続具50との接続に関与する接続金具35によって構成されている。この接続金具35は、管状体によって構成され、外周部のうちで、シャワーホース30の他端部30b寄りに相当する位置に雄ネジ部35mを備える。
【0039】
本実施例では、図1及び図2を用いて示されるように、このシャワーホース30が、支持部15の内部空間15cと、基体部11の内部空間13と、デッキ部の挿通孔2aとを通じて、下部空間3に引き出し可能に挿入されている。尚、本実施例では、支持部15の内部空間15c及び基体部11の内部空間13によって、水栓本体10の「通過路S」の具体例を構成する。
【0040】
本実施例では、シャワーヘッド20の雄型のセレーション21を、支持部15の雌型のセレーション15bにセレーション嵌合させ、シャワーヘッド20を支持部15に支持すると、シャワーホース30は収納状態となる。つまり、シャワーホース30のうちで、シャワーヘッド20の近傍に位置する部分30aは、通過路Sと挿通孔2aに挿入された状態となり、シャワーホース30のその他の部分30Aが下部空間3に収納された状態となる。そして、デッキ部(台部)2の前方等に位置する使用者が、シャワーヘッド20を自己の方向に引き寄せると、シャワーホース30のその他の部分30Aが、シャワーヘッド20の近傍に位置する部分30aと共に、使用者の側に引き出される。
【0041】
本実施例では、図7に示すように、下部空間3において、給湯管12Wの突端部121Wが給湯配管8Wの端末部に接続され、給水管12Cの突端部121Cが給水配管8Cの端末部に接続されている。また、接続具50を用いて、流出管12Rの突端部121Rと、シャワーホース30の他端部30bとが接続されている。なお、給湯配管8Wの端末部と給水配管8Cの端末部は雌型のワンタッチジョイントによって構成され、給湯管12Wの突端部121W及び給水管12Cの突端部121Cは、雄型のワンタッチジョイントによって構成されている。また、流出管12Rの突端部121RはプラグJ5によって構成されている。
【0042】
図2に示すように、ホースガイド36は下部空間3において、流出管12Rに装着され、ホースストッパー38は下部空間3において、シャワーホース30に装着されている。このうち、ホースガイド36は、クリップ部36aと、ホース挿通部36bと、クリップ部36a及びホース挿通部36bを連結する連結部36cと、を備えている。このホースガイド36は、クリップ部36aで流出管12Rの突端部121R側を挟持することで、流出管12Rに固定されている。また、ホース挿通部36bは略円筒状の本体部361bを備え、この本体部361bの軸心は流出管12Rの突端部121R側の軸心と略平行とされている。そして、この本体部361bにはシャワーホース30が遊びを持った状態で挿通されている。
【0043】
ホースストッパー38は略筒状(詳しくは、両端が開口部とされた略樽型形状)に構成され、ホースガイド36のホース挿通部36bの配設位置よりも下方において、略円柱状の内部空間にシャワーホース30を挿入した状態でシャワーホース30に装着されている。このホースストッパー38は、シャワーホース30に対して相対移動を起こさない状態に装着されているため、シャワーホース30が引き出されようとすると、ホースストッパー38もシャワーホース30の引き出し方向に移動しようとする。但し、このホースストッパー38の外径が、本体部361bの内径よりも大きくされているため、ホースストッパー38が、ホースガイド36のホース挿通部36bの下面に当接すると、シャワーホース30をそれ以上引き出すことが不可能となる。
【0044】
次に、接続具50について詳細に説明する。この接続具50は、図3に示すように、接続具本体51と、接続具本体51の上端部に設けられたカプラー60と、接続具本体51の下端部に装着された水抜き栓57とを備える。また、接続具本体51は、管状本体部52と接続具本体51から膨出された膨出部54とを備える。なお、図3においては、接続具本体51の上端に保護キャップ50Pを装着した上端が図示されている。この保護キャップ50Pが接続具本体51の状態に装着されると、カプラー60を構成するスリーブ61(後述する。)が下方に押圧された状態となり、この保護キャップ50Pを取り外すと、スリーブ61はコイルスプリング62(後述する。)の付勢力で上昇する。
【0045】
管状本体部52は、図3及び図4に示すように、上下方向中間部にクランク状に屈曲する屈曲部52aを有する略管状体によって構成されている。つまり、屈曲部52aの上方に略直管状に構成される第1の管状部52bを配設し、屈曲部52aの下方に略直管状に構成される第2の管状部52cを配設している。また、管状本体部52では、第1の管状部52bにおいて上下方向に形成される管軸が、屈曲部52aにおいて横方向に屈曲され、第2の管状部52cにおいて再び、上下方向に向けられる。
【0046】
管状本体部52の上端(つまり、第1の管状部52bの上端)では第1の接続口52dが上方に向かって開口し、管状本体部52の下端では着脱口52eが下方に向かって開口している。この第1の接続口52dは流出管12Rの突端部121Rが接続される接続口である。そして、管状本体部52の上端側(第1の接続口52dの側)にはカプラー60が設けられており、このカプラー60に対して、流出管12Rの突端部121R側(プラグJ5)を挿入するだけで、第1の接続口52dと流出管12Rの突端部121Rとが接続可能とされている。
【0047】
なお、カプラー60は、図3に示すように、管状本体部52の上端側に装着されたスリーブ61と、このスリーブ61を上方に付勢するコイルスプリング62と、管状本体部52上端側の管壁に複数設けられた孔に装着されたボール63とを備えている。そして、コイルスプリング62の付勢力に対抗しつつスリーブ61を下方に押すと、ボール63は管状本体部52の半径外側方向に移動し(図3の状態を参照)、スリーブ61を上方に戻すと、ボール63は管状本体部52の半径内側方向に移動する(図2の状態を参照)。更に、接続具本体51の上端側内壁面にはパッキング65が配設されている。そして、スリーブ61を下方に押し下げながら、管状本体部52の上端の第1の接続口52dの内側にプラグJ5を挿入したところで、スリーブ61を上方に復帰させると、ボール63がプラグJ5の外周の凹溝J6に、はまり込むとともに、スリーブ61によって「ボール63の半径外側方向への移動」が禁止されるため、プラグJ5が管状本体部52に抜け止め固定される(図2を参照)。
【0048】
図3及び図4に示すように、管状本体部52の下端部側(つまり、第2の管状部52cの下端部側)は、内径及び外径を拡大する拡径部52gとされ、この拡径部52gの内壁面には雌ネジ部52hが設けられている。そして、水抜き栓57が、この拡径部52gを中心とする部位に上下動可能な状態に装着されている。つまり、水抜き栓57は、図3に示すように、第2の管状部52cにおいて拡径部52gよりも上方の部位(以下、「一般管状部」という。)52jに摺動状態で挿入可能な外径を備える小径部57aと、拡径部52gの雌ネジ部52hと螺合可能な雄ネジ部57cを備える中径部57bと、拡径部52dと略同一の外径を備える大径部57dとを備える。
【0049】
小径部57aの上端側の外周面の周回溝には、小径部57aと一般管状部52jとの間の水密性が確保するためのシールパッキン57gが装着されている。また、図2に示すように、小径部57aの下端側の外周面では通水孔57hが開口している。そして、水抜き栓57の軸心位置に設けられた通水路57iの上端部が、通水孔57hを用いて側方に開放され、通水路57iの下端部は抜き栓57の底面において下方に開放されている。そして、雌ネジ部52hに雄ネジ部57cを螺合させ、水抜き栓57を上方に螺進させ、シールパッキン57gによって、小径部57aと一般管状部52jとの間の水密性が確保されると(図2を参照)、第2の管状部52cからの水抜きを行うことができない。一方、水抜き栓57を下方に移動させると、小径部57aと一般管状部52jとの間のシールが解除され、第2の管状部52cからの水抜きを行うことができる(図3を参照)。
【0050】
膨出部54は、図3〜図5に示すように、軸心を斜め上下に向けた略トンネル形状に構成されている。ここで、図4及び図5(b)においては、説明上の便宜のため、管状本体部52を実線で図示し、膨出部54を破線で図示している。
【0051】
膨出部54は、一般管状部52jの上半部から側方に向かって突出している。そして、第1の管状部52bの直下において、一般管状部52jの管壁521jの一部とともに、管軸K1を下り傾斜状とする副管状部55を構成している。つまり、図5(a)及び(b)に示すように、副管状部55の管壁55aのうちの周方向に沿った一部55bは、一般管状部52jの管壁521jの一部によって構成され、管壁55aの残部は膨出部54によって構成されている。すなわち、略トンネル形状の膨出部54は、「トンネルの経路方向と直交する開口部」が、一般管状部52jの管壁521jの一部で封止された状態となり、この膨出部54と「管壁521jの一部」とが、管状体(副管状部55)を構成している。
【0052】
図3及び図4に示すように、膨出部54の基端部は第1の管状部52bの下端と一体化されるとともに、第1の管状部52bの底部が下方に向かって開放されているため、副管状部55の管内空間は管状本体部52の管内空間と連通している。また、副管状部55の管軸K1(図4に図示)と、第1の管状部52bの管軸K2(図4に図示)とがなす角度は約170度とされている。また、一般管状部52jにおいて膨出部54と対向する面522jは、管軸K1の傾斜角と略同一の傾斜角を有する傾斜面とされている。このため、副管状部55の流路断面が管軸K1方向に沿って均一化されている。
【0053】
図2〜図4に示すように、副管状部55の開口部は、シャワーホース30の他端部30bを接続具50に接続するための接続口(以下、「第2の接続口」という。)55hを構成している。この第2の接続口55hの開口方向と、第1の接続口52dの開口方向とがなす角度は約170度とされている。そして、副管状部55の開口部側の内壁面には、「シャワーホース30の他端部30b寄りの雄ネジ部35m」を螺合可能な雌ネジ部55bが設けられている。この雌ネジ部55bを構成するネジ溝は、副管状部55の管軸K1周りを螺旋状に周回しつつ、膨出部54と管状本体部52との間を縦断している。なお、本実施例では、副管状部55の管軸K1と、第1の管状部52bの管軸K2と、第2の管状部52cの管軸K3とが同一平面上に位置している。また、水抜き栓57が、第2の接続口55hよりも下方に配設されるため、水抜き栓57の操作が容易である。
【0054】
次に、本水栓1の施工例を説明する。この水栓1は、水栓1の製造メーカから出荷される前の段階で、図6に示す形態をとる。つまり、水栓本体部10の底面から給湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rと、シャワーホース30とが突出する状態となる。その際、給湯管12W、給水管12C及び流出管12Rは、水栓本体部10の底面から垂下する状態とされる。また、流出管12Rの突端部121R(プラグJ5)がカプラー60に装着され、流出管12Rの突端部121Rから接続具50が垂下する状態となる。
【0055】
更に、製造メーカから出荷される前の段階で、副管状部55の雌ネジ部55bに、シャワーホース30の雄ネジ部35m(他端部30b)が螺合される(図2の状態を参照)。このとき、所定の測定器等を用いて雄ネジ部35mの雌ネジ部55bに対する締付力(締付トルク)が適正値に規制される。
【0056】
この状態において、シャワーホース30の他端部30b側が、接続具50の軸心(鉛直方向)に対して170度の角度で形成しつつ、接続具50から突出する。つまり、シャワーホース30を接続具50に近い側から観察すると、接続具50の近傍で接続具50に沿って下降した後、略円弧に湾曲され、進路を上方に向けた状態とされる。つまり、シャワーホース30は、水栓本体部10の底面と接続具50との間で滑らかなループを描くことになる。そして、シャワーホース30は、水栓本体部10の下方で、長軸を上下に向けた半長円状の経路を描くため、シャワーホース30の挿通孔2aの径方向(図中の矢印Xの方向)への広がりが抑制される。
【0057】
本水栓1では、このように、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態であっても、シャワーホース30の広がりが抑制できるとともに、接続具50自体の「挿通孔2aの径方向(図中の矢印Xの方向)に沿ったサイズ」を抑制できるため、施工現場における施工性が向上する。つまり、水栓の施工業者は、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態で、湯管12Wと、給水管12Cと、流出管12Rと、シャワーホース30とをデッキ部(台部)2の上方から挿通孔2aに挿通することができる。この後、水栓本体10をデッキ部(台部)2の上面に固定することで、水栓本体10の設置を完了する。
【0058】
そして、水栓の施工業者は、図7に示すように、下部空間3において、「給湯管12Wの突端部側と、給水管12Cの突端部側を湾曲させ、両突端部の間隔を、給湯配管8Wの端末部と給水配管8Cの端末部との間隔に一致させた後、給湯管12Wの突端部を給湯配管8Wの端末部に接続し、給水管12Cの突端部を給水配管8Cの端末部に接続する作業」と、「ホースガイド36を装着する作業」と、「ホースストッパー38を装着する作業」等を行うと、本水栓1の設置を完了する。なお、給湯配管8W及び給湯管12Wの接続と、給水配管8C及び給水管12Cの接続は、前者を後者に押し込むこと等によって簡単に完了する。
【0059】
以上のように、本実施例の接続具50では、第2の接続口55hを構成する副管状部55を、「単独で筒形状を構成する管状体(つまり、外周部の全周囲が開放された管状体)」ではなく、管状本体部52の管壁521jの一部と膨出部54とを用いて構成する。また、副管状部55の管軸K1が上り傾斜状とされるため、副管状部55の管状本体部52側方への突出量が少なくなる(膨出部の膨出量に止まる。)。従って、接続具50の「挿通孔2aの径方向に沿ったサイズ」を抑制できる。しかも、流出管12Rとシャワーホース30とを予め接続した状態であっても、シャワーホース30の「挿通孔2aの径方向に沿った広がり」を抑制できるため、「上面設置」が容易となる。
【0060】
このように、実施例1の接続具50によると、予め、水栓の製造メーカ等でシャワーホース30と接続具50とを接続すればよいため、寒冷地仕様の水栓1の施工性を向上させることができる。また、水栓の製造メーカ等において、締付トルクを適正値に規制しつつ、シャワーホース30と接続具50とを接続すればよいため、シャワーホース30と接続具50との接続部分からの「水漏れ」を防止することができる。
【0061】
また、本実施例の接続具50を用いると、一般地仕様の水栓と寒冷地仕様の水栓とで生ずる「ホース引き出し量の相違」を少なくすることができる。つまり、前述の「寒冷地仕様の水栓100B(図12を参照)」では、図8(a)に示すように、水栓本体100の下方において、シャワーホース120が描く経路は水平方向に長軸を向けた半長円状の経路となり易い。つまり、前述の「接続具150Aを用いた一般地仕様の水栓100A(図11を参照)」において、「シャワーホース120と流出管110とが接続具150Aで接続されて描く経路{上下に長尺な略半長円状の経路であって、図8(c)を参照}に比べて、遠回りの経路を経て、デッキ部200の上方に引き回わされることになる。従って、「寒冷地仕様の水栓100B(従来例)」では、「一般地仕様の水栓100A(従来例)」に比べて、同じ長さのホース120を用いても、デッキ部200の上方への引き出し量が少なくなっていた(例えば、約10〜30mm程度)。
【0062】
一方、本実施例の接続具50を用いると、図8(b)に示すように、シャワーホース30に「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合と略同様な経路を描かせつつ、デッキ部200の上方に引き回わすことができる。従って、「一般地仕様の水栓100A(従来例)」に比べて、同じ長さのシャワーホース30を用いた場合、デッキ部200の上方への引き出し量の差を少なくできる(例えば、約5mm程度)。
【0063】
更に、本実施例の接続具50を用いると、シャワーホース30を伝わり、デッキ部2下方に到達する流体(湯、水若しくは混合水)を受ける水受けタンクや水受けトレイの設置に関しても、一般地仕様と同等の設定が可能になり、この点からも、水栓1の施工性が向上する。つまり、前述の従来例に係る「寒冷地仕様の水栓100B(従来例)」では、図8(a)に示すように、水平方向に長い経路を描くシャワーホース120に合わせて、大型の水受けトレイTを設置することが必要である。ところが、図8(b)及び(c)に示すように、本実施例の接続具50を用いる場合と、前述の「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合とにおいて、デッキ部2、200の下方でシャワーホース30、120が略同様な経路を描く。従って、本実施例の接続具50を用いる場合と、前述の図11に示す「一般地仕様の水栓100A(従来例)」の場合とにおいて、同様なサイズの水受けトレイTを同様な設置すればよいからである。
【0064】
また、本実施例の接続具50を用いると、シャワーホース30の接続角度が自然な角度となり、シャワーホース30がデッキ部2、200の下方で自然なループを描く(一般地仕様の水栓と同様なループを描く)。このため、使用時のシャワーホース30(メタルホース)への負担が軽減され、品質的な向上(経年劣化の改善効果)を図ることができる。
【0065】
更に、本実施例の接続具50では、第2の管状部52cに水抜き栓57を配設する。つまり、通常時に使用する「第1の管状部52b及び副管状部55で構成される管状部」には水抜き栓57を配設しない。このため、「第1の管状部52b及び副管状部55で構成される管状部」の流路抵抗を、水抜き栓57によって大きくすることを防止できる。
【実施例2】
【0066】
次に、実施例2の接続具50について、図9及び図10を用いて説明する。この接続具50は、膨出部84の膨出箇所と、副管状部55の管軸K1の方向が実施例1の接続具50と異なる。つまり、実施例2の接続具50も、図9に示すように、接続具本体51と、接続具本体51の上端部に設けられたカプラー60と、接続具本体51の下端部に装着された水抜き栓57とを備え、接続具本体51は、管状本体部52と接続具本体51から膨出された膨出部84とを備える。なお、図10においては、説明上の便宜のため、管状本体部52を実線で図示し、膨出部84を破線で図示している。
【0067】
実施例2の管状本体部52も、図10に示すように、屈曲部52aの上下に第1の管状部52bと第2の管状部52cとを配設している。また、実施例2の膨出部84は、軸心を斜め上下に向けた略トンネル形状とされる膨出本体84aと、膨出本体84aの下端部から水平に延びる底部84bとを備える。この膨出部84は、一般管状部52jの下方側において側方に向かって突出している。そして、第1の管状部52bの直下において、一般管状部52jの管壁521jの一部とともに、管軸K1を上がり傾斜状とする副管状部85を構成している。つまり、この副管状部85の管壁85aのうちの周方向に沿った一部85bは、一般管状部52jの管壁521jの一部によって構成され、管壁85aの残部は膨出部84によって構成されている。
【0068】
一般管状部52jにおいて副管状部85の内側に位置する部位が、管壁521jを貫通する貫通孔521mとされているため、副管状部85の管内空間は管状本体部52の管内空間と連通している。また、副管状部85の管軸K1と、第1の管状部52bの管軸K2とがなす角度は約10度とされている。また、一般管状部52jにおいて膨出部84と対向する面522nは、管軸K1の傾斜角と略同一の傾斜角を有する傾斜面とされている。このため、副管状部85の流路断面が管軸K1方向に沿って均一化されている。
【0069】
副管状部85の開口部は、シャワーホース30の他端部30bを接続具50に接続するための接続口(つまり、第2の接続口)85hを構成している。この第2の接続口85hの開口方向と、第1の接続口52dの開口方向とがなす角度は約10度とされている。そして、副管状部85の開口部側の内壁面には、「シャワーホース30の他端部30b寄りの雄ネジ部35m」を螺合可能な雌ネジ部85bが設けられている。この雌ネジ部85bを構成するネジ溝は、副管状部85の管軸K1周りを螺旋状に周回しつつ、膨出部84と管状本体部52との間を縦断している。
【0070】
実施例2によると、実施例1の効果に加えて以下の効果を得ることができる。つまり、シャワーホース30を副管状部85に接続すると、シャワーホース30の他端部30b側が、接続具50の軸心(鉛直方向)に対して10度の角度で形成しつつ、接続具50から突出する。つまり、シャワーホース30を接続具50に近い側から観察すると、接続具50の近傍で接続具50に沿って上昇して挿通孔2aに到達させることができる。すなわち、副管状部85を起点とする「シャワーホース30の経路」を、一旦下方に向けなくても(つまり、半長円状の経路を描かなくても)、シャワーホース30を挿通孔2aに到達させることができる。このため、実施例2の接続具50を用いると、シャワーホース30の全長を短くしても、シャワーホース30の引き出し量を確保することができる。
【0071】
尚、本各発明の範囲は前記各実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。即ち、各実施例では、吐水ヘッドを着脱自在に支持する支持部を、水栓本体部に設けられる態様を例示したが、各請求項の発明では、支持部を設置部において水栓本体部と離間する位置に設けたり、設置部の周囲の壁部等に設けることもできる。また、実施例では、ホースが設置部の下方に引き出し可能となる態様を例示したが、各請求項の発明では、ホースを設置部の下方から引き出し不可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、水栓の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1;水栓、
2、200;デッキ部(設置部)、
2a;挿通孔(挿通部)、
10;水栓本体(水栓本体部)、
12W;給湯管、
12C;給水管、
12R;流出管、
15;支持部、
18;弁装置(吐止水の選択機構、吐水量の選択機構、湯と水の混合機構)、
20;シャワーヘッド(吐水ヘッド)、
30;シャワーホース(ホース)、
30a;一端部、
30b;他端部、
50、150A、150B;接続具、
51;接続具本体、
52;管状本体部、
52d;第1の接続口、
52e;着脱口、
54、84膨出部、
55、85;副管状部、
55h、85h;第2の接続口、
55b、85b;雌ネジ部、
57;水抜き栓、
S;通過路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐止水の選択機構を内蔵しつつ所定の設置部に設置されるとともに、前記選択機構に施される吐水操作に応じて流出させる流体を通過させる流出管を、前記設置部を貫通する挿通部を通じて前記設置部の下方に突出させる水栓本体部と、
前記水栓本体部若しくは設置部の上方の所定の部位に設けられる支持部に着脱自在に支持される吐水ヘッドと、
一端部が前記吐水ヘッドに接続されるとともに前記水栓本体部内の通過路及び前記挿通部に挿通されつつ前記設置部の下方に引き出し可能若しくは引き出し不可能に挿入されるホースと、
を具備する水栓において、前記流出管の突端部と前記ホースの他端部とを接続する、水抜き栓付き接続具であって、
前記流出管の突端部が接続される接続口を上方に開口させ、水抜き栓が着脱される着脱口を下方に開口させた管状本体部と、
前記管状本体部の上下方向中間部から膨出して前記管状本体部の管壁の一部と共に管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とする副管状部を構成する膨出部と、
を備え、
前記副管状部の管内空間は前記管状本体部の管内空間と連通するとともに、前記副管状部に前記ホースの他端部が接続される接続口が設けられることを特徴とする、水抜き栓付き接続具。
【請求項2】
前記流出管の突端部が接続される接続口の開口方向と、前記ホースの他端部が接続される接続口の開口方向とが形成する角度が、20度以下の鋭角若しくは160度以上の鈍角とされることを特徴とする請求項1に記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項3】
前記副管状部の内壁には、前記ホースの他端部を螺合固定するための雌ネジ部が設けられるとともに、
前記雌ネジ部を構成するネジ溝が、前記管状本体部の管壁と前記膨出部とを縦断することを特徴とする請求項1又は2に記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項4】
前記水栓本体部には湯と水を混合するための混合機構が内蔵されるとともに、
前記水栓本体部に給湯を行うための給湯管と、前記水栓本体部に給水を行うための給水管とが、前記挿通部に挿通されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の水抜き栓付き接続具を備えることを特徴とする水栓。
【請求項1】
吐止水の選択機構を内蔵しつつ所定の設置部に設置されるとともに、前記選択機構に施される吐水操作に応じて流出させる流体を通過させる流出管を、前記設置部を貫通する挿通部を通じて前記設置部の下方に突出させる水栓本体部と、
前記水栓本体部若しくは設置部の上方の所定の部位に設けられる支持部に着脱自在に支持される吐水ヘッドと、
一端部が前記吐水ヘッドに接続されるとともに前記水栓本体部内の通過路及び前記挿通部に挿通されつつ前記設置部の下方に引き出し可能若しくは引き出し不可能に挿入されるホースと、
を具備する水栓において、前記流出管の突端部と前記ホースの他端部とを接続する、水抜き栓付き接続具であって、
前記流出管の突端部が接続される接続口を上方に開口させ、水抜き栓が着脱される着脱口を下方に開口させた管状本体部と、
前記管状本体部の上下方向中間部から膨出して前記管状本体部の管壁の一部と共に管軸を上り傾斜状若しくは下り傾斜状とする副管状部を構成する膨出部と、
を備え、
前記副管状部の管内空間は前記管状本体部の管内空間と連通するとともに、前記副管状部に前記ホースの他端部が接続される接続口が設けられることを特徴とする、水抜き栓付き接続具。
【請求項2】
前記流出管の突端部が接続される接続口の開口方向と、前記ホースの他端部が接続される接続口の開口方向とが形成する角度が、20度以下の鋭角若しくは160度以上の鈍角とされることを特徴とする請求項1に記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項3】
前記副管状部の内壁には、前記ホースの他端部を螺合固定するための雌ネジ部が設けられるとともに、
前記雌ネジ部を構成するネジ溝が、前記管状本体部の管壁と前記膨出部とを縦断することを特徴とする請求項1又は2に記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項4】
前記水栓本体部には湯と水を混合するための混合機構が内蔵されるとともに、
前記水栓本体部に給湯を行うための給湯管と、前記水栓本体部に給水を行うための給水管とが、前記挿通部に挿通されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水抜き栓付き接続具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の水抜き栓付き接続具を備えることを特徴とする水栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−21425(P2011−21425A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168959(P2009−168959)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】
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