説明

水栓パン

【課題】従来のコンクリート成形技術を利用して、独創的なデザイン形状とすることができると共に、装飾的な機能等を発揮するための凹部を有する構造を付加することができ、かつ、当該凹部からの排水を円滑に行うことができる水栓パンを提供する。
【解決手段】主空間部20の隔壁21に主空間と副空間SS1とを連通する通水孔22、25を形成する。底壁30の上面を、副空間部10の外形である正八角形の隣接する2つの頂点と排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面33,38により構成することで、傾斜底面が、副空間SS1から主空間へと向かって下方に傾斜して排水孔まで延びるようにすることで、副空間SS1の水を通水孔22、25を介して主空間に案内して排水孔に排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓柱の水栓からの水を受けて排水する水栓パンに関し、特に、水受け部分をコンクリートにより一体成形してなる水栓パンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、庭や駐車スペース等の所定の場所に散水栓を設置して手洗い等のための給水等をする際に、散水栓の高さ位置が使用者の作業が容易な位置となるよう、水栓柱を設置して水栓中の上端部等に散水栓を取り付けることがある。この場合、水栓柱の散水栓からの給水は、そのまま設置場所に落下して排水(地中に浸透等)されることになるが、かかる排水を受けて所定の排水経路に流すよう、水栓中の下側に水栓パンを配設することもある。この種の水栓パンは、「水受け」または「洗い場」とも呼ばれており、例えば、特許文献1または特許文献2にコンクリート製の洗い場が開示されている。特許文献1には、コンクリート製の洗い場の排水口の下側に別体のトラップ桝を配置した発明が開示されている(請求項1)。この洗い場は、扁平容器状であり、一側縁には蛇口の付いた水栓柱が立設され、また側縁を凹陥させて排水口を有し格子枠が被着される足洗い場が形成されている(段落0006)。なお、トラップ桝は、洗い場とは別体とされ(段落0007)、その桝本体は洗い場の底部排水口の下側に配置されている(段落0008)。そして、トラップ桝には洗い場からの水が蓋の導入管を介して流入し、また洗い場から足洗い場の排水口へオーバーフローした水は排水管を介して流入し、該水に混入している泥やゴミは濾籠内に除去蓄積され、該水は排水管から排出されるようになっている(段落0009)。また、特許文献2の発明では、コンクリート製の洗い場は略直方体で、住宅の庭、車庫、公園等の屋外に設置されており、一方の隅には湯水を排水するための排水口が設けられると共に、水栓柱が洗い場の後方から立設するようにして固定されている(段落0017)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2597970号公報
【特許文献2】特開2005−120717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、洗い場や水栓パンをコンクリート材料により一体成形する場合、セメント材料を所定の(水栓パンの形状に対応する)形状の金型に充填し、セメント材料の固化後に、当該セメントの固化物であるコンクリート製品(本発明の場合は水栓パン)を金型から型抜きして脱型するが、型抜作業等の関係で、水栓パンを複雑な形状とするには限界があることから、特許文献1や特許文献に記載のコンクリート製の洗い場は、基本的に矩形箱状の単純形状に形成されている。一方、近年の消費者の嗜好の多様化に伴い、コンクリート製の水栓パンであっても独創的なデザイン形状とすることが望ましく、また、単に従来の洗い場としての機能以外に、装飾的な機能等の他の機能を付加することができれば更に望ましい。その一方、水栓パンを独創的なデザイン形状としたり、水栓パンに対して洗い場としての機能以外に装飾的な機能等の他の機能を付加したりする場合、水栓パンの形状が一般的には複雑化するため、所望の製品形状を得るためのコンクリート成形技術について改善が必要となり、また、付加機能部分に凹部が設けられる場合、水栓中の給水栓からの水或いは雨水等がその凹部に溜まることとなり、その場合に、その凹部からの排水設計についても検討する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来のコンクリート成形技術を利用して、独創的なデザイン形状とすることができると共に、水栓パンに対して洗い場としての機能以外に装飾的な機能等を発揮するための凹部を有する構造を付加することができ、かつ、水栓中の給水栓からの水或いは雨水等が付加機能部分の凹部に溜まった場合の当該凹部からの排水を円滑に行うことができる水栓パンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る水栓パンは、コンクリート成形品からなる水栓パンであって、底壁と、前記底壁の内側に主空間を形成するよう隔壁を立設してなる主空間部と、前記底壁の外側に、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう周壁を立設してなる副空間部とを備える。前記主空間部の隔壁には、その主空間と前記副空間部の副空間とを連通する通水孔を形成している。また、前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する貫通孔としての排水孔を形成している。更に、前記底壁の上面を、前記副空間部の周壁の外形を多角形と把握した場合に、当該多角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、前記多角形に応じた個数の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記多角形に応じた個数の傾斜底面のうち、少なくともその一部が前記隔壁の通水孔を通過する傾斜底面により、前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしている。
【0007】
請求項2に係る水栓パンは、請求項1の構成において、前記隔壁の通水孔が、前記副空間側から前記主空間側へと向かって拡径するテーパー状の断面形状を有すると共に、当該通水孔の下面は、前記傾斜底面のうち当該通水孔を通過する傾斜底面の傾斜角度と同一の角度で傾斜して、当該通水孔を通過する傾斜底面の一部を構成するようにしている。
【0008】
請求項3に係る水栓パンは、請求項1または2の構成において、前記排水孔を、前記底壁の前記主空間部分の平面方向における中心位置から偏心した位置に配置している。また、前記多角形に応じた個数の傾斜底面は、それぞれ、前記平面方向に偏心した排水孔の配置位置に応じて、異なる形状の三角形状となると共に、異なる傾斜角度となるようにしている。
【0009】
請求項4に係る水栓パンは、コンクリート成形品からなる水栓パンであって、底壁、主空間部及び副空間部を備える。底壁は、所定の平面多角形状の外形を有する。また、副空間部は、前記底壁の内側に主空間を形成するよう3個以上の複数の隔壁を立設することで、当該隔壁の個数に対応する所定の平面多角形状の外形を有するよう形成される。更に、副空間部は、前記底壁の外形の多角形状の辺を構成する外側縁に、それぞれ、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう、前記底壁の外形の多角形状の辺の数と同一の複数の周壁を立設することで、前記底壁と同一の外形を有するよう形成される。そして、前記主空間部の隔壁のコーナー部と前記副空間部の周壁の対応する位置とを、それぞれ、区画壁により連結して、前記副空間部の副空間を前記区画壁により複数の副空間に区画している。また、前記主空間部の隔壁には、それぞれ、前記主空間と前記副空間部の副空間とをそれぞれ連通する通水孔を形成している。更に、前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する垂直な貫通孔としての排水孔を形成している。そして、前記底壁の上面を、前記副空間部の多角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、前記多角形に応じた個数の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記多角形に応じた個数の傾斜底面のうち、少なくともその一部が前記隔壁の通水孔を通過する傾斜底面により、前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしている。
【0010】
請求項5に係る水栓パンは、コンクリート成形品からなる水栓パンであって、底壁、主空間部及び副空間部を備える。底壁は、平面正八角形状の外形を有する。また、主空間部は、前記底壁の内側に主空間を形成するよう4個の隔壁を立設することで、平面正方形状の外形を有するよう形成される。更に、副空間部は、前記底壁の外形の正八角形の辺を構成する外側縁に、それぞれ、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう、8個の周壁を立設することで正八角形の外形を有するよう形成される。そして、前記正方形の外形の主空間部のコーナー部が前記正八角形の副空間部の8個の周壁のうちの一つ置きの周壁の周方向の中央位置に対向するよう、前記主空間部と前記副空間部との相対位置関係を設定している。また、前記主空間部の隔壁のコーナー部と前記副空間部の周壁の対向位置とを、それぞれ、区画壁により連結して、前記副空間部の副空間を前記区画壁により4個の副空間に区画している。更に、前記主空間部の4個の隔壁には、それぞれ、前記主空間と前記副空間部の副空間とをそれぞれ連通する通水孔を形成している。更にまた、前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する垂直な貫通孔としての排水孔を形成している。そして、前記底壁の上面を、前記副空間部の正八角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、8個の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記8個の傾斜底面のうちの一部の個数の傾斜底面が、少なくともその一部で前記隔壁の通水孔のいずれかを通過するようにし、当該一部の個数の傾斜底面により、前記副空間の水を前記隔壁の通水孔を介して前記主空間に案内して前記排水孔に排水する一方で、前記8個の傾斜底面のうちの残りの個数の傾斜底面は、前記隔壁部分の端縁が当該隔壁の通水孔に向かって下方に傾斜するようにして、当該隔壁部分の端縁に沿って当該隔壁の通水孔に向かって水を案内し、当該隔壁の通水孔を介して前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る水栓パンは、従来のコンクリート成形技術を利用して、独創的なデザイン形状とすることができると共に、水栓パンに対して洗い場としての機能以外に装飾的な機能等を発揮するための凹部としての副空間を有する構造を付加することができ、かつ、水栓中の給水栓からの水或いは雨水等が付加機能部分の凹部としての副空間に溜まった場合の当該副空間からの排水を円滑に行うことができるという特有の効果を発揮する。
【0012】
請求項2に係る水栓パンは、請求項1の効果に加え、隔壁の通水孔が、副空間から主空間へと向かう方向に拡径するテーパー状となるため、成形時の型抜きが容易になることに加え、更に、通水孔の下面の傾斜角度が対応する傾斜底面の傾斜角度と同一となって当該傾斜底面の一部を通水孔が形成することになるため、成形用の成形型において当該通水孔部分に別個の設計を必要とすることがなく、成形コストを削減することができ、かつ、傾斜底面と同一傾斜角度の(傾斜底面の一部を構成する)通水孔により、副空間の水を主空間へと円滑に案内することができるという特有の効果を発揮する。
【0013】
請求項3に係る水栓パンは、請求項1または2の効果に加え、底壁の排水孔を主空間の中心位置から偏心した位置に配置しているため、水栓パンの設置時に底壁の下方の地中に配設される(水栓中への給水用の)配管の配設経路と干渉しない位置に排水孔が配置されるよう、水栓パンの設置場所における設置位置(即ち、設置場所に既に配設された配管及び水栓柱に対する位置関係)を容易に設定することができる。
【0014】
請求項4に係る水栓パンは、従来のコンクリート成形技術を利用して、多角形状を基調とした独創的なデザイン形状とすることができると共に、水栓パンに対して洗い場としての機能以外に装飾的な機能等を発揮するための凹部としての副空間を有する構造を付加することができ、かつ、水栓中の給水栓からの水或いは雨水等が付加機能部分の凹部としての副空間に溜まった場合の当該副空間からの排水を円滑に行うことができるという特有の効果を発揮する。
【0015】
請求項5に係る水栓パンは、従来のコンクリート成形技術を利用して、正八角形の内側に正方形を配置するという独創的なデザイン形状とすることができると共に、水栓パンに対して洗い場としての機能以外に装飾的な機能等を発揮するための凹部としての4個の副空間を有する構造を付加することができ、かつ、水栓中の給水栓からの水或いは雨水等が付加機能部分の4個の副空間に溜まった場合の当該副空間からの排水を円滑に行うことができるという特有の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの設置状態を(水栓柱と共に)示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの平面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係る水栓パン(平面正八角形状)からグレーチングを取り外して主空間の内部構成を示す平面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの底面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの正面図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態1に係る水栓パンの側面図である。
【図8】図8は図1のA−A線断面図であり、本発明の実施の形態1に係る水栓パンの内部空間構造を示す。
【図9】図9は図1のB−B線断面図であり、本発明の実施の形態1に係る水栓パンの内部空間構造を図8と別の角度から見て示す。
【図10】図10は本発明の実施の形態2に係る水栓パン(平面正六角形状)からグレーチングを取り外して主空間の内部構成を示す平面図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態3に係る水栓パン(平面正方形状)からグレーチングを取り外して主空間の内部構成を示す平面図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態4に係る水栓パン(平面正円形状)からグレーチングを取り外して主空間の内部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0018】
実施の形態1
[全体構成]
本発明に係る水栓パンは、図1に示すように、水栓柱1の周辺に配置して使用されるものであり、「水受け」または「洗い場」とも呼ばれるものである。なお、水栓柱1は、庭園や一般家庭の駐車場等、所定の設置場所に立設して固定的に設置されるものであり、散水用の給水栓(即ち、「散水栓」)2を上端部(及び/または、下端部等の他の部位)に取付けてなるものである。また、水栓柱1の内部には、その軸方向(設置時の上下方向)に延びる通水用の配管(即ち、「通水管」)が配設されており、通水管の先端である上流端に前記散水栓2が装着されて、散水栓2を介して、通水管からの水を給水または遮水自在となっている。ここで、本発明の実施の形態1に係る水栓パンは、このような水栓柱1の散水栓2からの水を受けて、その水が水栓柱1の周囲の意図しない部位に飛散しないようにし、かつ、散水栓2からの水を所定の排水経路に円滑に排水することを主目的として、水栓柱1の近傍に配設される。そして、実施の形態1の水栓パンは、図1及び図2に示すように、副空間部10、主空間部20、及び、FRP(繊維強化プラスチック)等からなるグレーチング50を備えている。図3に示すように、副空間部10は主空間部20を完全に包囲するものであり、主空間部20の四方の周囲に凹部を配設して当該凹部による付加機能を実現するためのものである。
【0019】
[主空間部]
図1〜図3に示すように、実施の形態1の水栓パンは、底壁30に主空間部20及び副空間部10を一体形成している。詳細には、底壁30は、図3〜図5に示すように、平面視で正八角形の外形(即ち、外周縁により画定される輪郭形状)を有している。また、主空間部20は、横長長方形の平板状をなす4個の隔壁21をそれらの両端で一体的に連結して正方形枠状とし、当該正方形枠状をなす内側枠体としての内周壁を、前記底壁30の上面における内側の所定位置に立設して固定している。具体的には、隔壁21は、正八角形の底壁30の合計8個の辺のうち、一つ置きの4個の辺と第1の所定間隔をおいて平行になるよう配置されている。これにより、隔壁21は、残りの一つ置きの4個の辺と45度の角度で交差し、隣接する隔壁21間のコーナー部(角隅部)が、残りの一つ置きの4個の辺の長さ方向中央位置に第2の所定間隔(前記第1の所定間隔より小さい間隔)をおいて対向配置されている。即ち、4個の隔壁21からなる正方形枠状の内周壁は、正八角形状の底壁30の中央部の主要面積範囲を占めると共に、正方形の各辺を構成する隔壁21が、正八角形の一つ置きの辺に対して平行に配置され、かつ、各コーナー部が残りの一つ置きの辺に対して45度の角度で交差して配置されるよう、その配置態様が設定されている。そして、底壁30のうち、前記4個の隔壁21(即ち、内周壁)により囲まれる内側の正方形部分と、当該4個の隔壁21とにより、前記主空間部20が形成され、4個の隔壁21の内側面と底壁30の前記正方形部分の上面とにより、水栓柱1の散水栓2からの水を受ける水受け空間としての主空間MSが形成されている。
【0020】
前記内周壁を構成する各隔壁21は、所定高さ(底壁30の上面からの突出高さ)で所定長さ(左右方向寸法)を有する長方形板状をなし、その厚さ方向の両側にある上端縁は面取りされて面取部となっている。また、4個の隔壁21の所定位置には、それぞれ、通水孔22,23,24,25が厚さ方向に貫通して形成されている。なお、説明の便宜上、4個の隔壁21を第1〜第4の隔壁21と称し、4個の通水孔22〜25を第1〜第4の通水孔22〜25と称すると、第1〜第4の隔壁21及び第1〜第4の通水孔22〜25は、後述する排水孔の手前側の位置から時計回り方向に順に配置されている。即ち、図3及び図4に示すように、左下側の隔壁21である第1の隔壁21には第1の通水孔22が形成され、左上側の隔壁21である第2の隔壁21には第2の通水孔23が形成され、右上側の隔壁21である第3の隔壁21には第3の通水孔24が形成され、右下側の隔壁21である第4の隔壁21には第4の通水孔25が形成されている。また、第1の通水孔22は、第1の隔壁21の左端側の略半部に形成され、第2の通水孔23は、第2の隔壁21の右端側の略半部に形成され、第3の通水孔24は、第3の隔壁21の右端側の略半部に形成され、第4の通水孔25は、第4の隔壁21の左端側の略半部に形成されている。
【0021】
更に、図3及び図4に示すように、第1〜第4の通水孔22〜25は、それぞれ、平面視で、主空間部20の外方から内方(主空間MS側)に向かって所定テーパー率で拡径するテーパー状の貫通空間となっている。詳細には、第1の通水孔22は、その右端面22aが隔壁21の長さ方向と所定の傾斜角度で(直交以外の角度で)交差して延びる(即ち、厚さ方向に交差して延びる)傾斜端面状をなし、その左端面22bが隔壁21の長さ方向と直交して延びる(即ち、厚さ方向に延びる)直交端面状をなしている。また、第2の通水孔23は、その右端面23aが隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状をなし、その左端面23bが隔壁21の長さ方向と所定の傾斜角度で交差して延びる傾斜端面状となっている。また、第3の通水孔24は、第2の通水孔と同様、その右端面24aが隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状をなし、その左端面24bが隔壁21の長さ方向と所定の傾斜角度で交差して延びる傾斜端面状となっている。また、第4の通水孔25は、第1の通水孔22と同様、その右端面25aが隔壁21の長さ方向と所定の傾斜角度で交差して延びる傾斜端面状をなし、その左端面25bが隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状をなしている。このように、第1〜第4の通水孔22〜25は、隔壁21のコーナー部に近接する側の端面(左端面22b、右端面23a、右端面24a、左端面25b)が直交端面とされ、隔壁21のコーナー部から離間する側の端面(右端面22a、左端面23b、左端面24b、右端面25a)が傾斜端面とされている。
【0022】
[支持部]
図4に示すように、第1〜第4の隔壁21の内面側には、それぞれ、第1の支持部26、第2の支持部27、第3の支持部28及び第4の支持部29が一体形成されている。第1〜第4の支持部26〜29は、協働して、前記グレーチング50を下方から支持するものであるが、各々は異なる形状に形成されている。即ち、第1の支持部26は、第1の隔壁21と第2の隔壁21との間のコーナー部の内側面角部において、前記第1の通水孔22及び第2の通水孔23と干渉しない位置に配設される(小寸法の)L字状またはアングル状のブロック体である。本実施の形態では、第1の支持部26は、第1の通水孔22及び第2の通水孔23と干渉しない範囲で最大寸法となるよう(即ち、第1の通水孔22及び第2の通水孔23の直近位置まで延設されるよう)設けられている。具体的には、第1の支持部26は、右端面26aが第1の通水孔22の左端面22bと面一となるよう(即ち、左端面22bに連続して隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状となるよう)、かつ、左端面26bが第2の通水孔23の右端面23aと面一となるよう(即ち、右端面23aに連続して隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状となるよう)、その寸法並びに右端面26a及び左端面26bの端面形状が設定されている。
【0023】
第2の支持部27は、第2の隔壁21と第3の隔壁21との間のコーナー部の内側面角部において、前記第2の通水孔23及び第3の通水孔24と干渉しない位置に配設される(縦方向に延長した)L字状またはアングル状のブロック体である。本実施の形態では、第2の支持部27は、第2の通水孔23及び第3の通水孔24と干渉しない範囲で最大寸法となるよう(即ち、第2の通水孔23及び第3の通水孔24の直近位置まで延設されるよう)設けられている。具体的には、第2の支持部27は、右端面27aが第2の通水孔23の左端面23bと面一となるよう(即ち、左端面23bに連続して隔壁21の長さ方向と所定角度で交差して延びる傾斜端面状となるよう)、かつ、左端面27bが第3の通水孔24の右端面24aと面一となるよう(即ち、右端面24aに連続して隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状となるよう)、その寸法並びに右端面27a及び左端面27bの端面形状が設定されている。また、第3の支持部28は、第3の隔壁21と第4の隔壁21との間のコーナー部の内側面角部において、前記第3の通水孔24及び第4の通水孔25と干渉しない位置に配設される(大寸法の)L字状またはアングル状のブロック体である。本実施の形態では、第3の支持部28は、第3の通水孔24及び第4の通水孔25と干渉しない範囲で最大寸法となるよう(即ち、第3の通水孔24及び第4の通水孔25の直近位置まで延設されるよう)設けられている。具体的には、第3の支持部28は、右端面28aが第3の通水孔24の左端面24bと面一となるよう(即ち、左端面24bに連続して隔壁21の長さ方向と所定角度で交差して延びる傾斜端面状となるよう)、かつ、左端面28bが第4の通水孔25の右端面25aと面一となるよう(即ち、右端面25aに連続して隔壁21の長さ方向と所定角度で交差して延びる傾斜端面状となるよう)、その寸法並びに右端面28a及び左端面28bの端面形状が設定されている。
【0024】
第4の支持部29は、第4の隔壁21と第1の隔壁21との間のコーナー部の内側面角部において、前記第4の通水孔25及び第1の通水孔22と干渉しない位置に配設される(縦方向に延長した)L字状またはアングル状のブロック体であって、第2の支持部29と同様の形状である。本実施の形態では、第4の支持部29は、第4の通水孔25及び第1の通水孔22と干渉しない範囲で最大寸法となるよう(即ち、第4の通水孔25及び第1の通水孔22の直近位置まで延設されるよう)設けられている。具体的には、第4の支持部29は、右端面29aが第4の通水孔25の左端面25bと面一となるよう(即ち、左端面25bに連続して隔壁21の長さ方向と直交して延びる直交端面状となるよう)、かつ、左端面29bが第1の通水孔22の右端面22aと面一となるよう(即ち、右端面22aに連続して隔壁21の長さ方向と交差して延びる傾斜端面状となるよう)、その寸法並びに右端面29a及び左端面29bの端面形状が設定されている。
【0025】
[グレーチングとの関係]
なお、第1〜第4の支持部26〜29の幅方向両側(内周側及び外周側)の上端縁は、それぞれ面取りされて面取部となっている。また、第1〜第4の支持部26〜29の高さは全て同一に設定され、それらの上端面は、同一水平面上に面一となって配置される。具体的には、第1〜第4の支持部26〜29は、それらの上端面が前記周壁21の上端面よりも前記グレーチング50の厚さ寸法分だけ低くなる位置に来るよう、その高さが設定されている。一方、グレーチング50は、主空間部20の隔壁21により囲まれる内側面と整合する寸法の正方形状格子枠体である。そして、図4に示す状態から図3に示す状態となるように、グレーチング50を主空間部20の内側面に落とし込んで嵌合することにより、グレーチング50の下側面が前記第1〜第4の支持部26〜29の上端面により支持され、グレーチング50が主空間部20の上端開口側を覆うようになっている。そして、この状態で、主空間部20に落下した水は、グレーチング50の格子間の貫通空間から主空間部20の内部空間(主空間MS)へと通過するようになっている。
【0026】
[副空間部]
図1〜図3に示すように、副空間部10は、横長長方形の平板状をなす8個の周壁11をそれらの両端で一体的に連結して正八角形枠状とし、当該正八角形枠状をなす外側枠体としての外周壁を、前記底壁30の上面における外周縁位置に立設して固定している。具体的には、周壁11は、正八角形の底壁30の合計8個の辺上に配置され、これにより、底壁30のうち、前記8個の周壁11(外周壁)及び前記4個の隔壁21(内周壁)間の環状部分と、当該8個の周壁11及び4個の隔壁21とにより、前記副空間部10が形成され、8個の周壁11の内側面と4個の隔壁21の外側面と底壁30の前記環状部分の上面とにより、主空間部20の周囲で装飾機能等の追加機能を発揮するための副空間が形成されている。
【0027】
前記外周壁を構成する各周壁11は、所定高さ(底壁30の上面からの突出高さ)で所定長さ(左右方向寸法)を有する長方形板状をなし、その厚さ方向の両側にある上端縁は面取りされて面取部となっている。本実施の形態では、周壁11の高さは、前記隔壁21の高さと同一に設定されている。更に、副空間部10の副空間は、前記主空間部20を構成する隔壁21のコーナー部の数と同一数(即ち、本実施の形態では4個)の区画壁13により、前記隔壁の数と同一数(即ち、本実施の形態では4個)の副空間に区画または分割されている。区画壁13は、所定高さ(底壁30の上面からの突出高さ)で所定長さ(左右方向寸法)を有する長方形板状をなし、その厚さ方向の両側にある上端縁は面取りされて面取部となっている。本実施の形態では、区画壁13の高さは、前記隔壁21及び周壁11の高さと同一に設定されている。なお、説明の便宜上、8個の周壁11を第1〜第8の周壁11と称し、4個の区画壁13を第1〜第4の区画壁13と称すると、図3及び図4中の左側にある第1の周壁11は、前記第1及び第2の隔壁21間のコーナー部の頂点と対向し、当該第1の周壁11の中央位置と第1及び第2の隔壁21間のコーナー部との間を第1の区画壁13が連結している。また、左上側にある第2の周壁11は、前記第2の隔壁21と平行となる。更に、上側にある第3の周壁11は、前記第2及び第3の隔壁21間のコーナー部の頂点と対向し、当該第3の周壁11の中央位置と第2及び第3の隔壁21間のコーナー部との間を第2の区画壁13が連結している。また、右上側にある第4の周壁11は、前記第3の隔壁21と平行となる。更に、右側にある第5の周壁11は、前記第3及び第4の隔壁21間のコーナー部の頂点と対向し、当該第5の周壁11の中央位置と第3及び第4の隔壁21間のコーナー部との間を第3の区画壁13が連結している。また、右下側にある第6の周壁11は、前記第4の隔壁21と平行となる。更に、下側にある第7の周壁11は、前記第4及び第1の隔壁21間のコーナー部の頂点と対向し、当該第7の周壁11の中央位置と第4及び第1の隔壁21間のコーナー部との間を第4の区画壁13が連結している。また、左下側にある第8の周壁11は、前記第1の隔壁21と平行となる。
【0028】
[副空間部]
上記のように構成される副空間部10は、主空間部20の四方の周囲で、4個の隔壁21に並行する態様で、4個の副空間SS1〜SS4を形成している。詳細には、第1の隔壁21の側方には、第1の副空間SS1(図3及び図4中の左下側の空間)が形成され、第2の隔壁21の側方には、第2の副空間SS2(図3及び図4中の左上側の空間)が形成され、第3の隔壁21の側方には、第3の副空間SS3(図3及び図4中の右上側の空間)が形成され、第1の隔壁21の側方には、第4の副空間SS4(図3及び図4中の右下側の空間)が形成されている。なお、第1の副空間SS1は、第1の隔壁21と、第1の区画壁13及び第4の区画壁13と、第1の周壁11の半部及び第7の周壁の半部及び第8の周壁の全体とにより囲まれる空間であり、当該囲繞空間部分の底壁30の上面を底面とする空間である。また、第2の副空間SS2は、第2の隔壁21と、第1の区画壁13及び第2の区画壁13と、第1の周壁11の半部及び第2の周壁の全体及び第3の周壁の半部とにより囲まれる空間であり、当該囲繞空間部分の底壁30の上面を底面とする空間である。また、第3の副空間SS3は、第3の隔壁21と、第2の区画壁13及び第3の区画壁13と、第3の周壁11の半部及び第4の周壁の全体及び第5の周壁の半部とにより囲まれる空間であり、当該囲繞空間部分の底壁30の上面を底面とする空間である。また、第4の副空間SS4は、第4の隔壁21と、第3の区画壁13及び第4の区画壁13と、第5の周壁11の半部及び第6の周壁の全体及び第7の周壁の半部とにより囲まれる空間であり、当該囲繞空間部分の底壁30の上面を底面とする空間である。そして、前記隔壁21の第1〜第4の通水孔22〜25は、それぞれ、副空間部10の第1〜第4の副空間SS1〜SS4と主空間部20の主空間MSとを連通し、後述する底壁30の傾斜底面31〜38と協働して、第1〜第4の副空間SS1〜SS4から主空間MSへ向かう一方向のみの通水及び排水を行う(逆方向の通水及び排水は阻止する)通水手段として機能する。
【0029】
[底壁の上面及び下面]
底壁30の上面は、前記副空間部10の底面及び主空間部20の底面を構成するが、この上面は、図4に示すように、正八角形状の底壁30の外形に対応して、合計8個の傾斜底面31〜38に区画または分割されている。詳細には、底壁30の上面は、上面からみた場合の(即ち、図3及び図4における)時計回り方向に、第1の傾斜底面31、第2の傾斜底面32、第3の傾斜底面33、第4の傾斜底面34、第5の傾斜底面35、第6の傾斜底面36、第7の傾斜底面37、第8の傾斜底面38を連続的に配置する構成とされている。また、第1〜第8の傾斜底面31〜38は、副空間部10の周壁11の内側面から主空間部20の隔壁21を介して(一体成形のため隔壁21部分では構成上は遮断されているが)隔壁21の内側(主空間部20の主空間MS内部)に延びる全体構成となっている。また、第1〜第8の傾斜底面31〜38は、各々、異なる外形(輪郭)の三角形状となっている。一方、図5に示すように、底壁30の下面39は、基本的に、単純な平坦面となっている。また、底壁30の所定位置には、その厚さ方向に貫通する排水孔39aが形成され、貫通孔39aの下端が底面39の対応する所定位置で開口している。底壁30における排水孔39aの配置位置は、主空間部20の隔壁21の内側であって、水栓パンを設置したときに水栓柱1への給水用の配管と干渉しない位置に設定される。
【0030】
[底壁の排水孔]
即ち、図3に示すように、水栓パンを所定の設置場所の設置面(水平面)に設置する場合、副空間部20のいずれか一つの周壁11の長さ方向中央に水栓柱1が立設して配設されると共に、給水用の配管WPが、底壁30の下方の地中に埋設して配置される。この配管WPは、水栓柱1を配置した周壁21と180度反対側の周壁21の長さ方向中央から当該水栓中1の下端まで延びる配設され、その先端(上流端)が水栓柱1の内部の配管の下端に連結される。したがって、底壁30の排水孔39aは、この配管WPの配設経路上に配置されると、排水孔39aからの排水経路が配管WPの配設経路と干渉して不具合を生じる可能性があるため、底壁30における配管WPの配設経路以外の部位に配置される。好ましくは、排水孔39aは、底壁30の主空間MS部分において、隣接する隔壁21間のコーナー部のうち、配管WPの配設経路を外した(配設経路上にない)コーナー部の内側近傍位置(内側領域の所定範囲内)に配置される。換言すれば、水栓柱1は、通常、水栓パンの平面方向における中心線(左右中心線、上下中心線等)上であって水栓パンの外周縁近傍位置に配設されるため、底壁30に対する配管WPの配設経路は、水栓パンの当該水栓柱が配設される中心線上を通ることになる。したがって、底壁30の排水孔39aは、配管WPの配設経路となる水栓パンの当該中心線から外れた位置(中心線上にない位置)に配置され、好ましくは、これに加え、配管WPの配設経路を外した(配設経路上にない)上記コーナー部の内側近傍位置等、平面視において、水栓パンの中心位置(特に、主空間部20の主空間の中心位置)から偏心した位置に配置される。
【0031】
ここで、本実施の形態では、主空間部20の外側に副空間部10が上下方向及び左右方向(並びに、これらと45度で交差する方向にも)線対称となるような外形輪郭(正方形に対する正八角形)で配設されるため、副空間部10の中心位置は主空間部20の中心位置と一致する。また、副空間部10が水栓パン全体の外形輪郭を規定するため、水栓パンの中心位置は副空間部20の中心位置(及び主空間部10の中心位置)とも一致する。しかし、底壁30の排水孔39aの配置位置は、水栓パンの中心位置(即ち、副空間部20の中心位置及び主空間部10の中心位置)から偏心した位置とする。一方、主空間部20の外側に副空間部10が上下方向や左右方向等に線対称となるような外形輪郭で配設されず(即ち、非対称的な態様で配設され)、上下方向や左右方向(或いはその他の方向)にずれた状態で配設される場合、副空間部10の中心位置は主空間部20の中心位置と一致しない。この場合、水栓パン全体の中心位置は、副空間部の中心位置として把握されるが、水栓柱1の散水栓2からの水を受ける主空間部10が水受け空間(主空間MS)として機能することから、底壁30の排水孔39aの配置位置は、副空間部の中心位置(或いは、水栓パン全体の中心位置)ではなく、主空間部20の中心位置から偏心した位置とする。
【0032】
例えば、図3中の二点鎖線で示すように、水栓柱1が副空間部10の第2の周壁(図3中の左上側の周壁)21の側方直近位置に立設される場合、配管WPは、第6の周壁(右下側の周壁)21の長さ方向中央から第2の周壁21の長さ方向中央を超えて水栓柱1まで延びるよう配設されるため、排水孔39aは、4つある隔壁21間のコーナー部のうち、いずれの内側近傍位置にも配置することができる。一方、水栓柱1が副空間部10の第3の周壁(図3中の上側の周壁)21の側方直近位置に立設される場合、配管WPは、第7の周壁(下側の周壁)21の長さ方向中央から第3の周壁21の長さ方向中央を超えて水栓柱1まで延びるよう配設されるため、排水孔39aは、4つある隔壁21間のコーナー部のうち、第1及び第2の隔壁21間のコーナー部、及び、第3及び第4の隔壁21間のコーナー部のいずれかの内側近傍位置に配置する必要がある。本実施の形態では、排水孔39aは、第1及び第2の隔壁21間のコーナー部の内側近傍位置に配置されている。
【0033】
図4に示すように、底壁30の排水孔39aの上端は底壁30の上面で開口し、当該排水孔39aの上端開口には、配管用の目皿部材41が嵌合して装着され、排水中の大きなごみ等の異物を遮断して、当該異物が配管内に進入することを防止するようになっている。図6、図8及び図9に示すように、目皿部材41は円筒状をなし、その下端が底壁30の底面39から若干下方に突出している。また、図5に示すように、底壁30の底面39の8つの外周縁のうち、底壁30の直径方向に対向する2つの外周縁の中央部には、それぞれ、対をなすように把持凹部39bが形成されている。図7に示すように、把持凹部39bは、底壁30の底面39から周壁11の下端部まで延びる凹部である。実施の形態1では、一対の把持凹部39bは、前記周壁11のうち、図4中の左右(及び図5中の左右)にある第1の周壁11及び第5の周壁の下端中央部に形成されており、作業者が水栓パンを移動したり所定の設置場所に設置したりする際に、一対の把持凹部39bに手指を差し入れて把持等し、水栓パンの移動作業や設置作業を容易に行えるようにしている。
【0034】
[底壁の傾斜底面]
底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38の前記三角形状は、水栓パンの外形(輪郭)を構成する副空間部10の外形(輪郭)である正八角形の頂点と底壁30の排水孔39aとを結ぶ直線により形成される三角形状に設定されている。ここで、上記のとおり、底壁30の排水孔39aは、(副空間部が主空間部に対して上記非対称的な態様で配設された場合も含めて)主空間部10の中心位置に対して偏心した位置に配置されている。したがって、底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38の各々の三角形状は、かかる排水孔39aの平面方向における偏心位置に応じて高さ(周壁11から排水孔39aまでの長さ)や形状(側辺の長さや底角や頂角)が異なる三角形(即ち、それぞれ異なる形状の三角形状)となる。更に、排水孔39aの前記平面方向に偏心した配置位置に応じて、各傾斜底面31〜38から当該排水孔39aまでの距離が増減変更し、各傾斜底面31〜38の基端の辺の高さ位置と排水孔39aの上端の高さ位置との関係(高さ方向の間隔)も変わることになるため、排水孔39aの前記平面方向に偏心した配置位置に応じて、各傾斜底面31〜38の傾斜角度も変更されることにある。また、副空間部10の頂点は、隣接する周壁11間のコーナー部の頂点であるが、このコーナー部の頂点は、周壁11が所定厚み(実施の形態1では一定厚み)を有する。したがって、底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38の各三角形状の底辺の両端を規定する頂点は、当該コーナー部における外側の頂点(周壁11の外側面における頂点)または外側の頂点(周壁11の内側面における頂点)とすることができ、或いは、当該外側の頂点と内側の頂点との間の任意の位置の点とすることもできる。更に、底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38の各三角形状の頂点(斜辺の上端)を規定する頂点は、排水孔39aの中心位置とすることが好ましいが、排水孔39aの面積の範囲内(上端開口の範囲内)における(中心以外の)任意の位置とすることもできる。
【0035】
具合的には、図4に示すように、第1の傾斜底面31は、第1の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第2の傾斜底面32は、第2の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第3の傾斜底面33は、第3の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第4の傾斜底面34は、第4の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第5の傾斜底面31は、第5の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第6の傾斜底面31は、第6の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第7の傾斜底面31は、第7の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面であり、第8の傾斜底面31は、第8の周壁11の(内側面の)両端位置と排水孔39aの中心位置とを結ぶことで画定される三角形状の平坦面である。
【0036】
[底壁の傾斜底面と隔壁の通水孔]
このようにして外形(三角形)が設定された底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38は、主空間部20の第1〜第4の隔壁21及び第1〜第4の通水孔22〜25に対して、以下のような位置関係となる。即ち、第1の傾斜底面31は、その底辺側の一部が副空間部20において第1の区画壁13により左右にほぼ2分割され、その残りの部分(頂点側部分)が主空間部10の内側に配置されている。また、第1の傾斜底面31のうち、第1の区画壁13により2分割されたうちの一方は、その一部(第1の区画壁13から離間する側の部分)が第1の隔壁21の第1の通水孔22と連通して頂点側部分に連続する傾斜面を構成しており、2分割されたうちの他方は、その一部(第1の区画壁13から離間する側の部分)が第2の隔壁21の第2の通水孔23と連通して頂点側部分に連続する傾斜面を構成している。一方、第1の傾斜底面31のうち、前記第1の通水孔22及び第2の通水孔23と連通しない部位は、第1及び第2の隔壁21により遮断されることとなるが、当該遮断部位は、それぞれ、第1及び第2の隔壁21の下端縁に沿って、第1及び第2の通水孔22,23に向かって下方に傾斜して延びている。
【0037】
第2の傾斜底面32は、底辺側部分の略全体が第2の隔壁21の第2の通水孔23と連通して頂点側部分の略全体に連続する傾斜面を構成している。一方、図4の例では、第2の傾斜底面32は、その微小部分が第2の隔壁21の第2の通水孔23の左端面23b側の一部と重なるため、当該微小部分で第2の隔壁21に遮断されることになるが、当該遮断部位は、第2の隔壁21の下端縁に沿って、第2の通水孔23に向かって下方に傾斜して延びている。第3の傾斜底面33は、その底辺側の一部が副空間部20において第2の区画壁13により左右にほぼ2分割され、その残りの部分(頂点側部分)が主空間部10の内側に配置されている。また、第3の傾斜底面33のうち、第2の区画壁13により2分割されたうちの一方は、その全体が第2の隔壁21により完全に遮断されて第2の通水孔23とは連通していないが、2分割されたうちの他方は、その一部(第2の区画壁13から離間する側の部分)が第3の隔壁21の第3の通水孔24と連通して頂点側部分に連続する傾斜面を構成している。一方、第3の傾斜底面33のうち、前記第2の通水孔23及び第3の通水孔24と連通しない部位は、第2及び第3の隔壁21により遮断されることとなるが、当該遮断部位は、それぞれ、第2及び第3の隔壁21の下端縁に沿って、第2及び第3の通水孔23,24に向かって下方に傾斜して延びている。
【0038】
第4の傾斜底面34は、底辺側部分の略全体が第3の隔壁21の第3の通水孔24と連通して頂点側部分の略全体に連続する傾斜面を構成している。一方、図4の例では、第4の傾斜底面34は、その小部分が第3の隔壁21の第3の通水孔24の左端面24b側の一部と重なるため、当該小部分で第3の隔壁21に遮断されることになるが、当該遮断部位は、第3の隔壁21の下端縁に沿って、第3の通水孔24に向かって下方に傾斜して延びている。第5の傾斜底面35は、その底辺側の一部が副空間部20において第3の区画壁13により左右にほぼ2分割され、その残りの部分(頂点側部分)が主空間部10の内側に配置されている。また、第5の傾斜底面35のうち、第3の区画壁13により2分割されたうちの一方及び他方の双方とも、その全体が第3及び第4の隔壁21により完全に遮断されて第3及び第4の通水孔24,25とは連通していない。このように、第5の傾斜底面35は、前記2分割された双方ともが第3の通水孔24及び第4の通水孔25と連通しておらず、全体が第3及び第4の隔壁21により遮断されることとなるが、当該遮断部位は、それぞれ、第3及び第4の隔壁21の下端縁に沿って、第3及び第4の通水孔24,25に向かって下方に傾斜して延びている。
【0039】
第6の傾斜底面36は、底辺側部分の略全体が第4の隔壁21の第4の通水孔25と連通して頂点側部分の略全体に連続する傾斜面を構成している。一方、図4の例では、第6の傾斜底面36は、その小部分が第4の隔壁21の第4の通水孔25の右端面25a側の一部と重なるため、当該小部分で第4の隔壁21に遮断されることになるが、当該遮断部位は、第4の隔壁21の下端縁に沿って、第4の通水孔25に向かって下方に傾斜して延びている。第7の傾斜底面37は、その底辺側の一部が副空間部20において第4の区画壁13により左右にほぼ2分割され、その残りの部分(頂点側部分)が主空間部10の内側に配置されている。また、第7の傾斜底面37のうち、第4の区画壁13により2分割されたうちの一方は、その一部(第4の区画壁13から離間する側の部分)が第4の隔壁21の第4の通水孔25と連通して頂点側部分に連続する傾斜面を構成しているが、2分割されたうちの他方は、その全体が第1の隔壁21により完全に遮断されて第1の通水孔22とは連通していない。一方、第7の傾斜底面37のうち、前記第4の通水孔25及び第1の通水孔22と連通しない部位は、第4及び第1の隔壁21により遮断されることとなるが、当該遮断部位は、それぞれ、第4及び第1の隔壁21の下端縁に沿って、第4及び第1の通水孔25,22に向かって下方に傾斜して延びている。第8の傾斜底面38は、底辺側部分の略全体が第1の隔壁21の第1の通水孔22と連通して頂点側部分の略全体に連続する傾斜面を構成している。一方、図4の例では、第8の傾斜底面38は、その微小部分が第1の隔壁21の第1の通水孔22の右端面22a側の一部と重なるため、当該微小部分で第1の隔壁21に遮断されることになるが、当該遮断部位は、第1の隔壁21の下端縁に沿って、第1の通水孔22に向かって下方に傾斜して延びている。
【0040】
ここで、副空間部10を時計回り方向に見ると、第1の副空間SS1には、第7の傾斜底面37の基端部の左側部、第8の傾斜底面38の基端部の全体、第1の傾斜底面31の基端部の右側部が連続して順に配置され、第2の副空間SS2には、第1の傾斜底面37の基端部の左側部、第2の傾斜底面38の基端部の全体、第3の傾斜底面31の基端部の右側部が連続して順に配置され、第3の副空間SS3には、第3の傾斜底面33の基端部の左側部、第4の傾斜底面34の基端部の全体、第5の傾斜底面35の基端部の右側部が連続して順に配置され、第4の副空間SS4には、第5の傾斜底面35の基端部の左側部、第6の傾斜底面36の基端部の全体、第7の傾斜底面37の基端部の右側部が連続して順に配置されている。また、主空間部20の主空間MSには、第1〜第8の傾斜底面の先端部(基端部以外の部分)が時計回り方向に連続して順に配置されている。
【0041】
更に、前記底壁30の傾斜底面31〜39との関係で、図9に示すように、前記主空間部20の隔壁21の第1〜第4の通水孔22〜25は、貫通方向(隔壁21の厚さ方向)における側面の断面視においても、外側から内側に向かって所定テーパー率で拡径するテーパー状の貫通空間となっている。詳細には、第1〜第4の通水孔22〜25の下面は、第1〜第8の傾斜底面31〜38のうちの対応する傾斜底面と同一の傾斜角度で(外側から内側に向かって下方に)傾斜する傾斜面であり、一つの通水孔に複数の傾斜底面が存在する(複数の傾斜底面が通過する)場合は、通水孔の下面は、当該複数の傾斜底面に対応する複数の傾斜状の下面となる。即ち、第1〜第4の通水孔22〜25の下面は、第1〜第8の傾斜底面31〜38のうちの対応する傾斜底面の数及び傾斜角度に応じて構成となり、この意味において、第1〜第4の通水孔22〜25の下面は、第1〜第8の傾斜底面31〜38の一部(通水孔22〜25部分)を構成する。一方、第1〜第4の通水孔22〜25の上面は、いずれも、所定角度で(外側から内側に向かって上方に)傾斜する傾斜面である。なお、第1〜第4の通水孔22〜25の上面の傾斜角度は、全て同一角度としてもよく、異なる角度としてもよいが、成形金型の設計及び製造を簡単にする等の観点から、同一角度とすることが好ましい。また、第1〜第4の通水孔22〜25の下面の傾斜角度は、第1〜第8の傾斜底面31〜38の傾斜角度に依存するが、当該第1〜第8の傾斜底面31〜38の傾斜角度は、副空間部10の内周面(即ち、周壁11の内側面)から底壁30の排水孔39aまでの距離(傾斜長さ)と、周壁11の下端から排水孔39aの上端までの距離(傾斜深さ)とにより決定され、(当該傾斜深さは同一であるので)当該傾斜距離の短い傾斜底面(第1の傾斜底面31等)の方が、傾斜距離の長い傾斜底面(第5の傾斜底面35等)よりも傾斜角度は相対的に大きくなる。
【0042】
[製造装置]
実施の形態1の水栓パンは、上記各部からなる上記所定形状(図1〜図9に示す形状)となるよう、所定のセメント材料を所定の成形金型を使用してコンクリート成形技術により一体成形される。具体的には、まず、上記各部からなる上記所定形状となるよう、コンクリート成形品成形用の成形金型を製作して用意する。例えば、成形金型は、水栓パンの全体形状を構成する8個の周壁11が連続する平面視で正八角形状の外側面と、底壁30の下面39(排水孔39aに対応する凸部、及び、一対の把持凹部39bに対応する一対の凸部を含む)とからなるキャビティと、副空間部10の各副空間SS1〜SS4部分の第1のコアと、主空間部20の主空間MS部分の第2のコアとを備える構成となる。なお、キャビティにおける排水孔39a用の凸部は、抜き勾配を確保すべく、下方に向かって拡径するテーパー状の断面形状とされている。また、キャビティにおける把持凹部39b用の凸部にも抜き勾配が設けられている。ここで、本実施の形態の水栓パンは、上記した第1〜第4の通水孔22〜25部分がアンダーカットとなるため、アンダーカット処理が必要となる。そこで、例えば、少なくとも、第1〜第4の通水孔22〜25に対応する第2のコアをスライドコア(またはスライド可能な入れ子構造)として、外側(副空間部10側)から内側(主空間部20側)へとスライド自在とする。
【0043】
[主空間用の入れ子の一例]
具体的な一例を挙げると、まず、主空間MS用の第2のコアとしての入れ子であって、第1〜第8の傾斜底面31〜38のうち、第1〜第4及び第6〜第8の傾斜底面31〜34,36〜38用の入れ子として、主空間部20の主空間MSに位置する部分(支持突部26〜29部分は除く)と、第1〜第4の通水孔22〜25に位置する部分とを合体した形状の平面形状(及び下面形状)を有する合計7個の入れ子を用意する。この7個の入れ子は、通水孔22〜25を通過する傾斜底面31〜34,36〜38用の入れ子とする。そして、これらの入れ子には、その基端側(副空間部10に近接する側)に、対応する通水孔22〜25部分の形状に対応する突部(アンダーカット形成部)を形成する。当該突部は、図4において、各傾斜底面31〜34,36〜38のうち第1〜第4の通水孔22〜25部分の形状と同一の平面形状を有すると共に、図9に示す第1〜第4の通水孔22〜25部分のテーパー状の断面形状の全部(第2の傾斜底面32用の入れ子の突部のように、突部の全体が通水孔22〜25に挿着される場合)または一部(第3の傾斜底面33用の入れ子のうち、第2の通水孔23に対応する部分のように、その一部のみが通水孔22〜25に挿着される場合)に対応する断面形状を有している。即ち、この場合、各第1〜第4の通水孔22〜25には、当該通水孔22〜25に対応する傾斜底面31〜38の数に応じて、成形時に1個以上の入れ子が同時に密接状態で挿着されることになる。また、各通水孔22〜25に挿着される突部の形状は、通水孔22〜25における傾斜底面31〜34,36〜38の形状に応じて相違することになるが、通水孔22〜25内で一体化して、各通水孔22〜25と同一の凸形状を形成する。
【0044】
なお、前記第1〜4及び第6〜第8の傾斜底面31〜34,36〜38用の入れ子のうち、第1〜第4の支持部26〜29に対応する入れ子(即ち、第1,3,4,7の傾斜底面31,33,34,37用の入れ子)は、上記突部に加え、当該突部に連続して、対応する第1〜第4の支持部26〜29の平面形状に対応する平面形状の基端面形状を有している。即ち、第1の傾斜底面31用の入れ子は、平面視で、第1の支持部26の内側面のアングル形状と(隔壁21の内側面から突出する一対の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。また、第3の傾斜底面33用の入れ子は、平面視で、第2の支持部27の内側面のアングル形状と(隔壁21の内側面から突出する一対の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。また、第4の傾斜底面34用の入れ子は、平面視で、第3の支持部28の一方の端部(第3の通水孔24側の端部)における内側面部分の形状と(隔壁21の内側面から突出する一方の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。また、第6の傾斜底面36用の入れ子は、平面視で、第3の支持部28の他方の端部(第4の通水孔25側の端部)における内側面部分の形状と(隔壁21の内側面から突出する他方の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。また、第7の傾斜底面37用の入れ子は、平面視で、第4の支持部29の内側面のアングル形状と(隔壁21の内側面から突出する一対の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。
【0045】
一方、主空間MS用の入れ子であって、第1〜第8の傾斜底面31〜38のうち、第5の傾斜底面35用の入れ子としては、主空間部20の主空間MSに位置する部分(第3の支持突部28は除く)のみの平面形状(及び下面形状)を有する1個の入れ子を用意する。この入れ子は、上記突部は形成しておらず、対応する第3の支持部28の内側面のアングル形状と(隔壁21の内側面から突出する一対の端面の)端面形状とからなる基端面形状を有している。なお、第1〜第8の傾斜底面31〜38用の合計8個の入れ子の先端は、それぞれ、排水孔39aの外周縁位置まで延び、当該排水孔39aの外周縁形状(円形)に沿った湾曲形状となっている。
【0046】
ここで、主空間MS用の入れ子は、その高さ(上下方向の厚み)を前記主空間MS内における第1〜第4の支持部26〜29の高さと同一高さに設定し、主空間部20への装着時に、その上面が、第1〜第4の支持部26〜29の上端面位置と一致するようにすることができる。この場合、成形金型における主空間部20形成用のコアとして、主空間MSを画定する第1〜第4の隔壁21の上端部分、即ち、第1〜第4の支持部26〜29より上側となる所定厚み部分(図示の例では、第1〜第4の支持部と同一高さとなる通水孔22〜25の内端面の上端位置より上側となる所定厚み部分)に対応する平板形状のコアを用意する。この主空間MSの上端部用のコアは、抜き勾配を確保すべく、上方に向かって拡径するテーパー状の断面形状とする。或いは、上記各入れ子の高さを、主空間部20の隔壁21の上端位置まで延びる高さとして、平板形状のコアを省略することもできるが、成形性や成形後の仕上げ等の点からは、別箇の平板状のコアを用意することが好ましい。
【0047】
[副空間用の入れ子の一例]
一方、4個の副空間SS1〜SS4用の第1のコアとしての入れ子としては、各副空間SS1〜SS4における各傾斜底面31〜38の形状と同一の平面形状(及び下面形状)の入れ子を用意する。この場合、第1、第3、第5及び第7の傾斜底面31,33,35,37が、それぞれ、第1〜第4の区画壁13により2分割されため、第1〜第4の副空間SS1〜SS4に対して、それぞれ、3個ずつの入れ子が用意される。また、副空間SS1〜SS4用の入れ子は、その高さ(上下方向の厚み)を、副空間SS1〜SS4を画定する周壁11の高さ及び隔壁21の高さと同一高さに設定し、副空間部10への装着時に、その上面が、周壁11及び隔壁21の上端面位置と一致するようにする。なお、このとき、入れ子の対向側面(隣接する入れ子と密接状態となる側面)は垂直面とするが、これに加え、入れ子の外側面(周壁11側の側面)及び内側面(隔壁11側の側面)の形状も、図1〜図4に示すように、垂直面とすることもできる。しかし、図8及び図9に示すように、入れ子の外側面及び内側面は(及び、区画壁13と密接する側面を有する入れ子の場合は、当該区画壁13との密接側面についても)、上方に向かって拡径するテーパー状の面として、抜き勾配を設けることが好ましい。
【0048】
[製造方法]
実施の形態1の水栓パンは、上記のような成形金型のキャビティにコア(入れ子)を組み付けて成形空間を形成し、当該成形空間に所定のセメント材料を充填して養生し、所定時間放置することで固化した後、成形金型を脱型する(即ち、キャビティからコア(入れ子)を取り外す)ことにより、上記各部からなる上記所定形状(図1〜図9に示す形状)に一体成形される。この固化過程において、成形金型の第1のコアとしての副空間SS1〜SS4用の入れ子と、第2のコアとしての主空間MS用の入れ子とが、協働して、底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38を形成すると共に、第2のコアとしての主空間MS用の入れ子の前記突部が、第1〜第4の通水孔22〜25を形成する。また、脱型時には、第2のコアとしての主空間MS用の入れ子が、第1〜第4の通水孔22〜25のテーパー形状に対応するテーパー形状(アンダーカット形状)を有するため、容易に脱型作業を行うことができる。このようにして、所定形状(図1〜図9に示す形状)に一体成形したコンクリート成形品としての水栓パン(コンクリート部分)の底壁30の排水孔39aに目皿部材41を組み付けると共に、主空間MSにグレーチング50を嵌合し、第1〜第4の支持部26〜29により支持して組み付けることで、本実施の形態の最終製品としての水栓パンが完成する。
【0049】
[使用方法並びに作用及び効果]
上記水栓パンは、所定の設置場所の水平面に水平状態で設置して固定される。このとき、水栓パンは、その上端面(周壁11、区画壁13及び隔壁21の上端面)が設置場所の地面とほぼ同一高さ位置となって面一となるよう地中に埋設して設置することで、全体的な露出(特に外側面の露出)が抑制され、従来にない意匠的な効果(モダンな雰囲気等)を発揮することができる。なお、水栓パンの設置に先立ち、図3中に二点鎖線で示すように、水栓パンの設置場所の直近位置には水栓柱1が立設される。更に、水栓パンの設置場所の直下の地中には給水用の配管が埋設され、その先端(上流端)が水栓柱1内部の配管の下端に連結される。更にまた、水栓パンの設置に先立ち、水栓パンの設置場所において水栓パンの底壁30の排水孔39aに整合する位置には、排水管の基端(上流端)が上方に向けて開口するよう配設される。これにより、水栓パンを所定の設置場所に設置したときに、水栓柱1の散水栓2からの給水は、(そのまま、或いは、使用者の手洗い等により飛散して)水栓パンの主空間部20の主空間MS内にグレーチング50を介して落下する。そして、主空間MSに落下した水は、第1〜第8の傾斜底面31〜38に沿って案内され、排水孔39aに落下して、排水孔39aに連通する排水管に収容される。
【0050】
一方、水栓パンの副空間部10の副空間SS1〜SS4は、それぞれ、玉砂利や植栽等による装飾機能付加等の目的で使用可能な付加的空間または付加機能部分として機能する。例えば、使用者の嗜好に応じて、4つの副空間SS1〜SS4に異なる種類の玉砂利(例えば、白色の玉砂利と黒色の玉砂利)を交互に充填したり、4つの副空間SS1〜SS4にそれぞれ別個の種類の玉砂利を充填したりすることもできる。例えば、副空間SS1〜SS4がこの順で東西南北の各方位に向かうよう水栓パンを設置すると共に、風水で方位を司る四神であるとされている青竜、朱雀、白虎、玄武を表すべく、青色の玉砂利を東側に位置する副空間に充填し、赤色(朱色)の玉砂利を南側に位置する副空間に充填し、白色の玉砂利を西側に位置する副空間に充填し、黒色(玄色)の玉砂利を北側に位置する副空間に充填することもできる。或いは、水栓パンの副空間SS1〜SS4には、土壌を充填すると共に、植生(草花等)を植栽することもできる。
【0051】
ここで、設置した水栓パンの副空間SS1〜SS4には、雨水や水栓柱1の散水栓2殻の給水の一部が進入することがあるが、副空間SS1〜SS4に玉砂利等の隙間を介して進入した雨水等の水は、副空間SS1〜SS4部分の第1〜第8の傾斜底面31〜38に沿って隔壁21の第1〜第4の通水孔22〜25へと流動し、第1〜第4の通水孔22〜25を介して、主空間MS部分の第1〜第8の傾斜底面31〜38に沿って最終的に底壁30の排水孔39aへと案内され、排水孔39aから落下して下方の排水管に排水される。このとき、底壁30の第1〜第8の傾斜底面31〜38は、それぞれ、水栓パンの外形輪郭を画定する正八角形の頂点(即ち、周壁11の頂点部分)から排水孔39aに向かう三角形状の底面を形成しているため、副空間SS1〜SS4の水は、当該正八角形位の頂点から(対応する傾斜底面31〜38の三角形状の面に沿って)排水孔39aへと円滑に案内される。また、このとき、副空間SS1〜SS4における傾斜底面31〜38の一部は、通水孔22〜25に完全に連続しておらず、隔壁11に遮断されているが、この場合も、当該傾斜底面31〜38の一部からの水は、当該傾斜底面が対応する通水孔22〜25に向かって下方に傾斜する傾斜状態となっているため、やはり、隔壁11に沿って通水孔22〜25へと案内されて円滑に流動し、最終的に、通水孔22〜25を介して主空間MSの排水孔39aへと円滑に案内される。したがって、本実施の形態の水栓パンは、副空間SS1〜SS4の水を非常に効率的に所定の排水経路で(即ち、排水孔39aを介して排水管へと)排水することができる。
【0052】
また、一般的な水栓パンにはグレーチングは設けられていないが、本実施の形態の水栓パンは、グレーチング50を装着しているため、従来にない独特の意匠的効果を発揮することができると共に、グレーチング50がない場合のように水栓柱1の散水栓2からの放水が水栓パンの主空間MSの底面に直接衝突して使用者に跳ね返る等の事態を防止することができる。また、本実施の形態の水栓パンは、グレーチング50を取り外して一般的な水栓パンと同様の使用形態で使用することもでき、グレーチング50を装着した場合と装着しない場合とで異なる意匠的効果を発揮するようにすることもできるが、更に、グレーチングを取り外した状態で、主空間部20の主空間MSに玉砂利等の透水性材料を充填することもできる。こうすると、水栓パンの副空間SS1〜SS4に充填した玉砂利等による装飾効果に加え、主空間MSでも装飾効果等の所定の付加的機能を発揮することができる。この点でも、本実施の形態の水栓パンは、美的デザインの面からの多様性を増すことができ、その意匠性を更に向上することができる。
【0053】
更に、本実施の形態の水栓パンは、本体部分(グレーチング50以外の部分)が全てコンクリート製であるため、従来の合成樹脂製やFRP(繊維強化プラスチック)製や陶器製やステンレス製等の水栓パンと比較して、重厚感があり、かつ、モダンでクールな印象を与えると同時に、耐久性を大幅に向上することができる。加えて、本実施の形態の水栓パンは、(地中に埋設したときに視覚的に認識される)平面視で、1個の正方形(主空間部20の主空間MS)を中心として、その外周に当該正方形を四方から囲むように4個の台形(副空間部10の副空間SS1〜SS4)を配置して組み合わせた外観デザインを有し、更に、その外観デザインが、全体的には正八角形の外形輪郭を呈するため、それ自体の外観デザインも非常にユニークなものとなり、全く従来にない意匠的効果を発揮することができる。また、かかるユニークな正八角形の外観デザインと組み合わせる形で、副空間SS1〜SS4に玉砂利等による装飾的効果を付加することで、更に多種多様なデザイン性を発揮することができる。或いは、本実施の形態の水栓パンは、図3に示すように、接地面(水平面)における水栓柱1に対する姿勢を45度変更することもでき、その意匠的多様性を更に増大することもできる。
【0054】
実施の形態2
図10に示すように、実施の形態2に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の平面正方形状の主空間部20を備えており、主空間部20内に支持部26〜29を一体形成している。一方、実施の形態2に係る水栓パンは、当該主空間部20の周囲を包囲するよう配設される副空間部110の外形輪郭を正六角形としている。詳細には、水栓パンは、平面正六角形状の底壁130の外周縁(6つの外側縁)に6個の平板状の周壁111をそれぞれ立設することで、正六角形の外形輪郭を形成している。なお、図示の例の場合、主空間部20の輪郭である正方形の一つの対角線上にある一対のコーナー部(図10中の上下のコーナー部)が、副空間部110の輪郭である正六角形の一つの対角線上にある一対のコーナー部(図10中の上下のコーナー部)と対向するよう、主空間部20の周囲に副空間部110が配置されている。また、主空間部20の各コーナー部は、実施の形態1と同様にして、前記区画壁13により副空間部130に連結されている。これにより、副空間部110には4個の副区間が形成される。更に、底壁130は、正六角形状の外形輪郭を有するため、その6個の頂点から底壁130の排水孔39a(目皿部材41)に延びる三角形も6個となり、第1〜第6の傾斜底面131〜136を備えることになる。なお、各傾斜底面131〜136と主空間部20の第1〜第4の通水孔22〜25との関係は、図10のとおりであり、基本的には、実施の形態1における傾斜底面31〜38と通水孔22〜25との関係と同様である。また、主空間部20と底壁130の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係、並びに、副空間部110と底壁130の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も実施の形態1の場合と同様であり、各傾斜底面131〜136と、傾斜底面131〜136の三角形状の頂点位置にある底壁130の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も、実施の形態1の場合と同様となっている。
【0055】
実施の形態2に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の製造装置により同様の製造方法で製造され、同様の使用方法で使用されて、同様の作用効果を発揮する。
【0056】
実施の形態3
図11に示すように、実施の形態3に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の平面正方形状の主空間部20を備えており、主空間部20内に支持部26〜29を一体形成している。一方、実施の形態3に係る水栓パンは、当該主空間部20の周囲を包囲するよう配設される副空間部210の外形輪郭を正方形としている。詳細には、水栓パンは、平面正方形状の底壁230の外周縁(4つの外側縁)に4個の平板状の周壁211をそれぞれ立設することで、正方形の外形輪郭を形成している。なお、図示の例の場合、主空間部20の輪郭である正方形の各コーナー部が、副空間部210の輪郭である正方形の各辺の中央位置と対向するよう、主空間部20の周囲に副空間部210が配置されている。また、主空間部20の各コーナー部は、実施の形態1と同様にして、前記区画壁13により副空間部130に連結されている。これにより、副空間部210には4個の副区間が形成される。更に、底壁230は、正方形状の外形輪郭を有するため、その4個の頂点から底壁230の排水孔39a(目皿部材41)に延びる三角形も4個となり、第1〜第4の傾斜底面231〜234を備えることになる。なお、各傾斜底面231〜234と主空間部20の第1〜第4の通水孔22〜25との関係は、図11のとおりであり、基本的には、実施の形態1における傾斜底面31〜38と通水孔22〜25との関係と同様である。また、主空間部20と底壁230の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係、並びに、副空間部210と底壁230の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も実施の形態1の場合と同様であり、各傾斜底面231〜234と、傾斜底面231〜234の三角形状の頂点位置にある底壁230の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も、実施の形態1の場合と同様となっている。
【0057】
実施の形態3に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の製造装置により同様の製造方法で製造され、同様の使用方法で使用されて、同様の作用効果を発揮する。
【0058】
実施の形態4
図12に示すように、実施の形態4に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の平面正方形状の主空間部20を備えており、主空間部20内に支持部26〜29を一体形成している。一方、実施の形態4に係る水栓パンは、当該主空間部20の周囲を包囲するよう配設される副空間部310の外形輪郭を円形(正円形)としている。詳細には、水栓パンは、平面円形状の底壁330の外周縁を所定直径の短円筒状の周壁311により構成することで、円形の外形輪郭を形成している。ここで、図示の例の場合、副空間部310の輪郭は円形であり、底壁330もこれに対応して円形であるが、底壁330の傾斜底面331〜338の態様は、例えば実施の形態の1の底壁30の傾斜底面31〜38と同様とすることができる(実施の形態2〜3と同様とすることもできる)。具体的には、副空間部310及び底壁330の円形の外形を、所定の多角形の外形、例えば、実施の形態1の副空間部10及び底壁30の外形である正八角形で代替した態様を想定する(図12中の二点鎖線の外形)。そして、主空間部20の輪郭である正方形の各コーナー部が、副空間部310の輪郭であると想定した正八角形の一つ置きの辺の中央位置と対向するよう、主空間部20の周囲に副空間部310を配置する。また、主空間部20の各コーナー部は、実施の形態1と同様にして、前記区画壁13により副空間部310に(正八角形の副空間部10の場合と同様の位置関係で)連結されている。これにより、副空間部310には4個の副区間が形成される。また、底壁330は、想定した正八角形状の外形輪郭に応じて、その(想定した)8個の頂点から底壁330の排水孔39a(目皿部材41)に延びる三角形も8個となり、第1〜第8の傾斜底面331〜338を備えている。なお、各傾斜底面331〜338と主空間部20の第1〜第4の通水孔22〜25との関係は、図12のとおりであり、基本的には、実施の形態1における傾斜底面31〜38と通水孔22〜25との関係と同様である。また、主空間部20と底壁330の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係、並びに、副空間部310と底壁330の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も実施の形態1の場合と同様であり、各傾斜底面331〜338と、傾斜底面331〜338の三角形状の頂点位置にある底壁330の排水孔39a(目皿部材41)との相対位置関係も、実施の形態1の場合と同様となっている。
【0059】
実施の形態3に係る水栓パンは、実施の形態1の水栓パンと同様の製造装置により同様の製造方法で製造され、同様の使用方法で使用されて、同様の作用効果を発揮する。
【0060】
[その他の別例]
なお、上記各実施の形態では、周壁11,111,211,311及び区画壁13の高さは、前記隔壁21の高さと同一に設定されているが、本発明の水栓パンでは、これらの高さを相違させることも可能であり、例えば、周壁11,111,211,311の高さを隔壁21の高さより大きくして、区画壁13が周壁11,111,211,311から隔壁21に向かって高さを漸減して延びるよう構成したり、これと逆に、隔壁21の高さを周壁11,111,211,311の高さより大きくして、区画壁13が周壁11,111,211,311から隔壁21に向かって高さを漸増して延びるよう構成したりすることもでき、或いは、周壁11,111,211,311の高さと隔壁21の高さを相違させ、主空間部20と副空間部10,110,210,310とが段差状となるよう構成することもできる。しかし、いずれの場合も、底壁30,130,230,330の底面は、上記のような傾斜底面31〜38,131〜136,231〜234,331〜338とする。
【0061】
また、本発明の水栓パンでは、主空間部の形状も、正方形状とする以外に、任意の多角形状としたり、円形状等とすることもでき、また、副空間部の形状も、上記実施の形態の形状以外の多角形状としたり、楕円形状等の形状とすることもできる。いずれの場合も、水栓パンの傾斜底面は、上記のように、副空間部から主空間部へと連通する連通孔を設けると共に、副空間部の外形輪郭(及び底壁の外形輪郭)を所定の多角形状と把握した場合における、当該多角形のコーナー部の頂点と底壁の排水孔とを結ぶ線により画定される三角形状及び個数の傾斜底面となる。
【0062】
また、本発明の水栓パンでは、コンクリートとして、通常の(セメントと砂や砂利等の骨材とからなる)コンクリート以外に、樹脂と骨材とからなるレジンコンクリート、通常のコンクリート中に鉄筋を入れた鉄筋コンクリート、並びに、セメントと骨材以外に樹脂やガラス繊維等を複合した繊維補強コンクリート等、任意のコンクリート材料を使用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10:副空間部、11:周壁、13:隔壁、SS1〜SS4:副空間
20:主空間部、21:隔壁、MS:主空間
30:底壁、31〜38:傾斜底面、39a:排水孔
110:副空間部、111:周壁
130:底壁、131〜136:傾斜底面
210:副空間部、211:周壁
230:底壁、231〜234:傾斜底面
310:副空間部、311:周壁
330:底壁、331〜338:傾斜底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート成形品からなる水栓パンであって、
底壁と、
前記底壁の内側に主空間を形成するよう隔壁を立設してなる主空間部と、
前記底壁の外側に、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう周壁を立設してなる副空間部とを備え、
前記主空間部の隔壁には、その主空間と前記副空間部の副空間とを連通する通水孔を形成し、
前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する貫通孔としての排水孔を形成し、
前記底壁の上面を、前記副空間部の周壁の外形を多角形と把握した場合に、当該多角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、前記多角形に応じた個数の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記多角形に応じた個数の傾斜底面のうち、少なくともその一部が前記隔壁の通水孔を通過する傾斜底面により、前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしたことを特徴とする水栓パン。
【請求項2】
前記隔壁の通水孔は、前記副空間側から前記主空間側へと向かって拡径するテーパー状の断面形状を有すると共に、当該通水孔の下面は、前記傾斜底面のうち当該通水孔を通過する傾斜底面の傾斜角度と同一の角度で傾斜して、当該通水孔を通過する傾斜底面の一部を構成することを特徴とする請求項1の水栓パン。
【請求項3】
前記排水孔は、前記底壁の前記主空間部分の平面方向における中心位置から偏心した位置に配置され、
前記多角形に応じた個数の傾斜底面は、それぞれ、前記平面方向に偏心した排水孔の配置位置に応じて、異なる形状の三角形状となると共に、異なる傾斜角度となることを特徴とする請求項1または2記載の水栓パン。
【請求項4】
コンクリート成形品からなる水栓パンであって、
所定の平面多角形状の外形を有する底壁と、
前記底壁の内側に主空間を形成するよう3個以上の複数の隔壁を立設することで、当該隔壁の個数に対応する所定の平面多角形状の外形を有するよう形成される主空間部と、
前記底壁の外形の多角形状の辺を構成する外側縁に、それぞれ、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう、前記底壁の外形の多角形状の辺の数と同一の複数の周壁を立設することで、前記底壁と同一の外形を有するよう形成される副空間部とを備え、
前記主空間部の隔壁のコーナー部と前記副空間部の周壁の対応する位置とを、それぞれ、区画壁により連結して、前記副空間部の副空間を前記区画壁により複数の副空間に区画し、
前記主空間部の隔壁には、それぞれ、前記主空間と前記副空間部の副空間とをそれぞれ連通する通水孔を形成し、
前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する垂直な貫通孔としての排水孔を形成し、
前記底壁の上面を、前記副空間部の多角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、前記多角形に応じた個数の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記多角形に応じた個数の傾斜底面のうち、少なくともその一部が前記隔壁の通水孔を通過する傾斜底面により、前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしたことを特徴とする水栓パン。
【請求項5】
コンクリート成形品からなる水栓パンであって、
平面正八角形状の外形を有する底壁と、
前記底壁の内側に主空間を形成するよう4個の隔壁を立設することで、平面正方形状の外形を有するよう形成される主空間部と、
前記底壁の外形の正八角形の辺を構成する外側縁に、それぞれ、前記主空間を包囲する副空間を形成するよう、8個の周壁を立設することで正八角形の外形を有するよう形成される副空間部とを備え、
前記正方形の外形の主空間部のコーナー部が前記正八角形の副空間部の8個の周壁のうちの一つ置きの周壁の周方向の中央位置に対向するよう、前記主空間部と前記副空間部との相対位置関係を設定し、
前記主空間部の隔壁のコーナー部と前記副空間部の周壁の対向位置とを、それぞれ、区画壁により連結して、前記副空間部の副空間を前記区画壁により4個の副空間に区画し、
前記主空間部の4個の隔壁には、それぞれ、前記主空間と前記副空間部の副空間とをそれぞれ連通する通水孔を形成し、
前記底壁における前記主空間部分には、前記主空間部の主空間と連通する垂直な貫通孔としての排水孔を形成し、
前記底壁の上面を、前記副空間部の正八角形の隣接する2つの頂点と前記排水孔とを結ぶ直線により画定される三角形状の傾斜底面により構成することで、8個の傾斜底面が、前記副空間から前記主空間へと向かって下方に傾斜して前記排水孔まで延びるようにすると共に、前記8個の傾斜底面のうちの一部の個数の傾斜底面が、少なくともその一部で前記隔壁の通水孔のいずれかを通過するようにし、当該一部の個数の傾斜底面により、前記副空間の水を前記隔壁の通水孔を介して前記主空間に案内して前記排水孔に排水する一方で、前記8個の傾斜底面のうちの残りの個数の傾斜底面は、前記隔壁部分の端縁が当該隔壁の通水孔に向かって下方に傾斜するようにして、当該隔壁部分の端縁に沿って当該隔壁の通水孔に向かって水を案内し、当該隔壁の通水孔を介して前記副空間の水を前記主空間に案内して前記排水孔に排水するようにしたことを特徴とする水栓パン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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