説明

水洗トイレユニット

【課題】使用者の人数にかかわらず、洗浄水の不足や汚水のオーバーフローを防止すると共に、定期的なメンテナンス回数を減らす。
【解決手段】屋根部材10Dと床部材1Cと側壁部材1Bを有する箱状に形成された屋体1に、少なくとも、地面Gに載置可能又は埋め込み可能な支持体10と、水洗トイレ20が設置されたトイレ室2と、水洗トイレ20からの汚水を貯水する貯水槽30が設置された貯水室3と、貯水槽30に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレ20に洗浄水として供給する浄化設備40が設置された浄化設備室4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、公園や河川敷等に設置でき、且つ撤収可能な水洗トイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る水洗トイレユニットに関連する先行技術文献情報として、例えば、次の特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006‐257795号公報
【0003】
特許文献1では、屋体(特許文献ではハウス)内に水洗トイレと、該水洗トイレの洗浄水を貯水する清水タンク部材を備えた仮設トイレについて述べられており、清水タンク部材に洗浄水を補給する作業、及び汚水を吸引処理する作業を行なうことが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の仮設トイレは、清水タンク部材や汚水槽の内容量に限界があるため、例えば、仮設トイレの使用者が多人数であった場合、洗浄水が不足したり、汚水がオーバーフローしたりする虞がある。又、仮設トイレを使用可能な状態で設置している間は、洗浄水の残量や汚水の貯留量をチェック、及び洗浄水の補給や汚水の吸引等のメンテナンスを定期的に行なう必要があって面倒なものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、使用者の人数にかかわらず、洗浄水の不足や汚水のオーバーフローを防止すること、定期的なメンテナンス回数を減らすことが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る水洗トイレユニットは、次の構成を少なくとも具備する。
【0007】
すなわち、屋根部材と床部材と側壁部材を有する箱状に形成された屋体に、少なくとも、地面に載置可能又は埋め込み可能な支持体と、水洗トイレが設置されたトイレ室と、水洗トイレからの汚水を貯水する貯水槽が設置された貯水室と、貯水槽に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレに洗浄水として供給する浄化設備が設置された浄化設備室と、を一体に備えていることを特徴とする。
【0008】
又、屋根部材と床部材と側壁部材を有する箱状に形成された屋体に、少なくとも、地面に載置可能な支持体と、水洗トイレが設置されたトイレ室と、水洗トイレからの汚水を貯水する貯水槽が設置された貯水室と、貯水槽に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレに洗浄水として供給する浄化設備が設置された浄化設備室と、を一体に備え、貯水室は、屋体の床部材の一部又は全部を底上げして床下に確保した空間に設けられていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る水洗トイレユニットを実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7は、本発明の第1実施例を示している。
【0010】
第1実施例の水洗トイレユニットAは、地面Gに載置可能又は埋め込み可能な支持体10を床下側に一体に有してなる屋体1に、水洗トイレ20が設置されたトイレ室2と、水洗トイレ20からの汚水を貯水する貯水槽30が設置された貯水室3と、貯水槽30に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレ20に洗浄水として供給する浄化設備40が設置された浄化設備室4と、浄化設備40を動作させる動力設備400や電気設備401等が設置される機械室5と、を備えている。
【0011】
屋体1は、鉄骨部材等を適宜連結して組み上げた骨組み体1Aに、側壁部材1B、床部材1C、天井部材1D、屋根部材10D等を取り付けて箱型状に形成され、内部には、側壁部材1B及び床部材1C、並びに天井部材1Dとでトイレ室2、浄化設備室4、受配電設備室5を構成する仕切り側壁部材1Eが立設されている。これらトイレ室2、浄化設備室4、機械室5に対応する側壁部材1Bには、出入り口1Fが開口され、該出入り口1Fを開閉する開閉ドア部材1Gが備えられている。
【0012】
支持体10は、屋体1の床下側の骨組み1Aに対して一体に固定されている。具体的には、床下側の周囲を囲むように垂設された周囲壁面部10Aと、トイレ室2及び受配電設備室5の直下に容体状に形成された貯水室3とで構成されている。周囲壁面部10Aの下端10Bと貯水室3の底部の外側面3Aは、面一にされており、これら下端10Bと外側面3Aとが設置面となる。この支持体10は、鉄筋や鉄骨(図示せず)を骨組み1Aに固着し、該鉄筋や鉄骨をコンクリートで覆うようにして構成されたものである。
【0013】
すなわち、屋体1は、トイレ室2、貯水室3、浄化設備室4、機械室5の各部屋、更には、支持体10が一体となった一つの建物として構成されているため、例えば、ワイヤケーブルを屋体1に掛止し、該ワイヤケーブルを重機等に引っ掛けて、該重機等で屋体1を吊り下げることにより、屋体1ごと移動させることができる。そして、屋体1ごとトラック等に載せて運搬することができる(図示せず)。このように、ワイヤケーブルを用いるようにする場合、屋体1にワイヤケーブル掛止用の掛止部等を設けることが好ましい(図示せず)。
【0014】
トイレ室2は、多目的トイレ室200を一部屋、女性用及び大便用トイレ室210を三部屋、男性用トイレ室220を一部屋有しており、各部屋に開閉ドア部材1Gが備えられている。多目的トイレ室200は、身体障害者や乳児を連れた使用者に対して便利なように、車椅子の乗り入れが可能な広さを有しており、洋式便器2A、手すり2B、乳児ベッド2C等が備えられている。女性用及び大便用トイレ室210は、夫々、和式便器2Dが備えられている。男性用トイレ室220は、小便器2Eが備えられている。又、各トイレ室には、換気扇2F及び照明2Gが備えられている。又、各便器には、タンクT1〜5が備えられており、浄化設備40で浄化された洗浄水が供給される。又、多目的トイレ室200の床面高さを地面Gからわずかに高い位置に設定しており、この設定により、身体障害者や乳児を連れた使用者に対して出入りを行ない易くしている。又、多目的トイレ室200の床面と地面Gとの間である程度の段差が生じるが、地面Gから出入り口1Fに向かうスロープ1Hを設けることにより段差を無くすことで、車椅子でも多目的トイレ室200への出入りができるようにすることが好ましい。又、女性用及び大便用トイレ室210及び男性用トイレ室220においては、地面Gと出入り口1Fに亘って階段1Iを設けている。
【0015】
尚、本実施例のタンクT1〜5は、フロートバルブ(図示せず)を備えたものであり、該フロートバルブにより、タンクT1〜5に対する給水・給水停止が行なわれるものである。又、トイレ室2における部屋数は任意であり、又、使用する便器は、例示した便器に限られず、多目的トイレ室22を除いて全て洋式便器としてもよいし、全て和式便器としてもよい。
【0016】
以下、汚水を処理するための機能部が設置された貯水室3、浄化設備室4、機械室5を説明するが、各水洗トイレから排水される汚水を浄化するための構成や浄化方法等は、図7に示すフロー図で示す。
【0017】
貯水室3の内部空間30Aは、貯水槽30を載置するスペースであると共に、各種配管の配管スペースである。又、貯水室3の内部空間30Aは、防水加工が施されており、仮に、貯水槽30や配管から汚水の漏れが発生しても、該汚水を内部空間30Aに留め、汚水の外部への流出を防止している。貯水槽30は、汚水の臭気が漏れないように密閉された箱体状のものであり、内部にポンプ3C(図7参照)が備えられている。ポンプ3Cは、貯水槽30に貯水された汚水を浄化設備40に圧送するようにしている。尚、図示では、2個のポンプ3Cを有した構成で例示しているが、本発明においては、ポンプの数を限定するものではない。
【0018】
浄化設備室4には、浄化設備40を設置する部屋であると共に、各配管の配管スペースである。本形態の浄化設備40は、上流側の貯水槽30から流入する汚水中の固形分を沈殿分離する沈分槽41と、該沈分槽41から流入する汚水を曝気する流動曝気槽42と、該流動曝気槽42から流入する汚水に残留する固形分を分離する膜分離槽43と、これら、沈分槽41、流動曝気槽42、膜分離槽43で順次浄化された水を貯留すると共に、水を脱色する脱色装置44Aを備えた給水槽44と、を有している。
【0019】
又、浄化設備40は、貯水槽30、沈分槽41、流動曝気槽42に空気を送り込むための曝気ブロア40A、膜分離槽43に空気を送り込む膜ブロア40B、膜分離槽42から膜分離された水を給水槽44に送り込むポンプ40C、給水槽44内の水を脱色装置44Aに流入させて脱色動作をさせるためのポンプ40D、給水槽44内の浄化水をタンクT1〜T5へ供給するためのポンプ40E等の動力設備400を有している。
【0020】
沈分槽41は、オーバーフロー管41Aを有しており、沈分槽41からオーバーフローする水が流動曝気槽42へ流入する。流動曝気槽42は、内部にポンプ40Fが備えられており、該ポンプ40Fにより流動曝気槽42に貯水された水を膜分離槽43に圧送する。膜分離槽43と沈分槽41に亘って、貯水された底部付近の水を沈殿槽41に戻すための戻し管43Aが配管されている。該戻し管43Aは、膜ブロア40Bの空気が送り込まれるようにされており、この送り込まれる空気によって水を吸い上げると共に、沈分槽41に戻すようにしている。
【0021】
この構成により、沈分槽41から膜分離槽43に亘って水を循環させ、より確実な浄化を行なうことができる。給水槽44には、貯水された底部付近の水を給水槽44の脱色装置44A側に戻す戻し管44Bが配管されている。該戻し管44Bは、膜ブロア40Bの空気が送り込まれるようにされており、この送り込まれる空気によって水を吸い上げると共に、給水槽44の脱色装置44A側に戻すようにしている。すなわち、この構成により、給水槽44の水を循環させ、より確実な脱色(浄化)を行なうことができる。
【0022】
貯水槽30、流動曝気槽42、膜分離槽43、給水槽44には、フロート式のレベルセンサSが備えられており、該レベルセンサSにより各槽の水量を検出している。又、レベルセンサSの検出に基づいて、前記各ポンプ及び各ブロアの作動及び作動停止を制御するようにしている。
【0023】
レベルセンサSを用いた具体的な制御は、貯水槽30、流動曝気槽42、膜分離槽43、給水槽44の水のレベルを設定された上限位置から下限位置の間で槽毎に検出し、水のレベルが下限位置にあるときには、各槽に対応するポンプやブロアの停止状態を保持する制御が行なわれている。このとき、水のレベルが下限位置でない槽については、ポンプやブロアの作動状態を保持する制御が行なわれている。そして、水のレベルが下限位置を超えたときに、停止状態のポンプやブロアを作動させる制御が行なわれる。又、水洗トイレユニットAを設置して電源を入れることにより、前記制御を行なう制御システムが起動するようにされている。
【0024】
すなわち、前記制御により、各便器から排水される汚水を貯水槽30に貯水し、浄化設備40で浄化した浄化水を洗浄水としてタンクT1〜5に戻す動作を自動的に行うことができる。
【0025】
機械室5には、動力設備400、及び該動力設備400に電力を供給する電気設備401、更には、タンクT1〜T5が設置されている。又、給水槽44内の気体や浄化設備室4の空気を排気する排気ファン50が備えられている。電気設備401は、外部から受電すると共に、動力設備400や排気ファン50に配電する受配電機能を備えたものである。
【0026】
次に、本実施例における水洗トイレユニットAの設置形態を説明すると、該水洗トイレユニットAは、図2に示すように、支持体10を地中に埋め込んで設置することもでき、図3に示すように、支持体10を地面Gに載置して設置することもできる。この設置形態は、例えば、水洗トイレユニットAをある程度長期的に設置する場合には、地中に埋め込む設置形態とし、短期間で撤収するような場合には、地面Gに載置する設置形態とすることが挙げられる。
【0027】
本実施例の水洗トイレユニットAでは、地面Gと床面との段差にスロープ1Hや階段1Iを設けることにより、各トイレ室の出入りを行ない易くしている。又、地面に設置する形態では、地中に埋め込む形態よりも、床面の位置が高くなるが、スロープの距離を長くしたり、階段の段数を多くしたりすることで対処することができる(図示せず)。
【0028】
多目的トイレ室200のように身体障害者や乳児を連れた使用者が使用する場合、その出入りを行い易くするためには、地面と床面との段差を可能な限り低くし、スロープの角度や距離を短くするのが好適である。そのため、第2実施例の水洗トイレユニットBに構成することが提案される。
【0029】
第2実施例の水洗トイレユニットBは、図8及び図9に示すように、多目的トイレ室200の床面を除くトイレ室2の床面、及び浄化設備室4の床面、並びに機械室5の床面を、多目的トイレ室200の床面よりも高くし、これらの床下に貯水室3用の空間Sを確保している。そして、この空間Sに貯水室3が適合するように設けられている。貯水室3は、第1実施例と同様に、支持体10を兼ねるものであり、貯水室3の床下面と多目的トイレ室200の床下面とが面一にされている。この水洗トイレユニットBの多目的トイレ室200の床面高さは、第1実施例の多目的トイレ室の床面高さと同等としている。したがって、本実施例の貯水室3の内部空間30Aは、第1実施例で示す貯水室の内部空間よりも底が浅くなっている。そのため、本実施例の貯水槽30は、貯水室3の内部空間30Aの高さに対応させて底を浅いものとするが、底を浅くした分、幅を広くすることにより、第1実施例の貯水槽と同等の体積になるようにしている。又、この実施例では、支持体10は、貯水室3及び多目的トイレ室200の床部材1C、並びに貯水室3の周囲に位置する骨組み体1Aで構成される。
【0030】
尚、本実施例の水洗トイレユニットBの構成は、第1実施例で示す水洗トイレユニットの構成と、貯水室の形態を除き同様であるので、重複する部位についての説明は、図面に同符号を付すことにより説明は省略する。
【0031】
本実施例の水洗トイレユニットBによれば、貯水室3の床下面が多目的トイレ室200の床下面と面一であるので、地面Gに載置して設置しても、多目的トイレ室200の床面高さを、第1実施例の水洗トイレユニットを地中に埋め込んだ形態での多目的トイレ室の床面高さと同等に設定される。すなわち、この水洗トイレユニットBは、地面Gに載置して設置する形態として使用するのに好適なものである。更に、貯水槽30の体積も第1実施例の貯水槽の体積と同等にしているので、汚水の処理能力が低下することはない。
【0032】
第1実施例及び第2実施例の水洗トイレユニットA,Bによれば、水洗トイレの洗浄水を浄化して再利用するものであるので、使用者の人数にかかわらず、洗浄水の不足や汚水のオーバーフローを防止することができ、しかも、定期的なメンテナンス回数を減らすことができる。
【0033】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る水洗トイレユニットの横断面図。
【図2】本発明に係る水洗トイレユニットの縦断面図で支持体を地中に埋め込んで設置する形態を示す。
【図3】本発明に係る水洗トイレユニットの縦断面図で支持体を地面に載置して設置する形態を示す。
【図4】図2の(4)-(4)線断面図。
【図5】図2の(5)-(5)線断面図。
【図6】図2の(6)-(6)線断面図。
【図7】汚水の浄化構成を示すフロー図。
【図8】本発明に係る水洗トイレユニットの他の実施例を示す縦断面図で支持体を地面に載置して設置する形態を示す。
【図9】図8の(9)-(9)線断面図。
【符号の説明】
【0035】
A:水洗トイレユニット 1:屋体 2:トイレ室 3:貯水室 4:浄化設備室
10:支持体 20:水洗トイレ 30:貯水槽 40:浄化設備 1B:側壁部材
1C:床部材 10D:屋根部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根部材と床部材と側壁部材を有する箱状に形成された屋体に、
少なくとも、
地面に載置可能又は埋め込み可能な支持体と、
水洗トイレが設置されたトイレ室と、
水洗トイレからの汚水を貯水する貯水槽が設置された貯水室と、
貯水槽に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレに洗浄水として供給する浄化設備が設置された浄化設備室と、
を一体に備えていることを特徴とする水洗トイレユニット。
【請求項2】
屋根部材と床部材と側壁部材を有する箱状に形成された屋体に、
少なくとも、
地面に載置可能な支持体と、
水洗トイレが設置されたトイレ室と、
水洗トイレからの汚水を貯水する貯水槽が設置された貯水室と、
貯水槽に貯水された汚水を浄化すると共に、浄化した浄化水を水洗トイレに洗浄水として供給する浄化設備が設置された浄化設備室と、
を一体に備え、
貯水室は、屋体の床部材の一部又は全部を底上げして床下に確保された空間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水洗トイレユニット。
【請求項3】
貯水室が支持体の一部を兼ねていることを特徴とする特徴とする請求項1又は2に記載の水洗トイレユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−235790(P2009−235790A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83365(P2008−83365)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508092897)パークプランニング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】