説明

水溶性ポリビニルアセタール樹脂

【課題】機械的強度及び柔軟性に優れた水溶性ポリビニルアセタール樹脂を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコールの部分アセタール化物に基づく構造単位式(2)と、共重合単位式(3)を有し、アセタール化率が50モル%以上である水溶性ポリビニルアセタール樹脂。


式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。


式(3)中、Rは、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミド基又はスルホ基を有する基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度及び柔軟性に優れた水溶性ポリビニルアセタール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機又は有機粉体の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシート及び導電ペースト、インク、塗料、焼き付け用エナメル、ウォッシュプライマー等の用途に利用されている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、セラミックス粉末を有機溶剤中に分散した分散液に、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂と可塑剤とを加え、均一に混合し、脱泡してスラリー組成物を調製する。次いで、スラリー組成物を剥離性の支持体上に塗布し、これを加熱して乾燥した後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストを塗布した後、これを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。更に、得られた積層体を所定の形状に切断した後、焼成して得たセラミックス焼結体の端面に外部電極を焼結することにより、積層セラミックコンデンサを得る。
【0004】
一方、セラミックグリーンシートを製造するために用いられる有機溶剤は、環境汚染、毒性、爆発事故等の危険性等の問題を抱えていることから、特に近年の環境問題に対する関心の高まりに伴い、有機溶剤の代わりに水を媒体とするセラミックグリーンシートの製造方法が提案されている。また、バインダー樹脂としても水を溶剤として使用することのできる水溶性のバインダー樹脂が求められている。
【0005】
これに対し、本発明者は、所定の構造で示されるユニットを有するとともに所定のアセトアセタール化度及びブチラール化度を有する水溶性ポリビニルアセタール樹脂を発明し、特許文献1に開示している。しかしながら、近年、セラミックグリーンシートには更なる強靱性が求められており、水を溶剤として使用することができ、かつ、強靱なセラミックグリーンシートを得ることのできる機械的強度及び柔軟性に優れた新たなバインダー樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−295016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械的強度及び柔軟性に優れた水溶性ポリビニルアセタール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位及び下記式(3)で表される構成単位を有し、下記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が50モル%以上である水溶性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0011】
【化3】

式(3)中、Rは、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミド基又はスルホ基を有する基を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
機械的強度及び柔軟性に優れたポリビニルアセタール樹脂を得るためには、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基の含有量、即ち、アセタール化度を高めることが有効であると考えられる。しかしながら、アセタール化度の高いポリビニルアセタール樹脂は水溶性が低下し、水を溶剤として使用することは困難である。一般に、水溶性のポリビニルアセタール樹脂は原料となるポリビニルアルコールを水中でアセタール化することにより得られるが、水中では、アセタール化度が高くなると生成したポリビニルアセタール樹脂が水溶性を維持することができず、析出してしまう。
これに対し、本発明者は、ポリビニルアセタール樹脂の構造中にカルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミド基又はスルホ基を有する基を付与することにより、水溶性を維持しながら、高度にアセタール化され、機械的強度及び柔軟性に優れたポリビニルアセタール樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を有する。
【0014】
【化4】

【0015】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂における上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が30モル%、好ましい上限が50モル%である。上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が30モル%未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の水溶性が低下したり、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下したりすることがある。上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が50モル%を超えると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性が高くなって安定性が低下することがある。
上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合は、より好ましい上限が45モル%である。
【0016】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位を有する。
【0017】
【化5】

式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
なかでも、合成が容易であることから、上記式(2)中のRは、メチル基又はプロピル基であることが好ましい。
【0018】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂における上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合、即ち、本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール化度は、下限が50モル%である。上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が50モル%未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の機械的強度又は柔軟性が低下する。
上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が55モル%である。
【0019】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂における上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合の上限は特に限定されないが、好ましい上限は69モル%である。上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が69モル%を超えると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の製造自体が困難となることがある。
上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合のより好ましい上限は65モル%である。
【0020】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(3)で表される構成単位を有する。
下記式(3)で表される構成単位を有することにより、本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水溶性を維持しながら上述したような高いアセタール化度を有することができ、優れた機械的強度及び柔軟性を発現することができる。
【0021】
【化6】

式(3)中、Rは、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミド基又はスルホ基を有する基を表す。
なお、本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂中の複数の式(3)で表される構成単位において、Rは同じ官能基であってもよく、複数の異なる官能基であってもよい。
【0022】
上記カルボキシル基を有する基は、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、アルキル基とカルボキシル基とを有する基等が挙げられる。
【0023】
上記エチレンオキサイド基を有する基は、エチレンオキサイドの繰り返し単位を有していれば特に限定されず、例えば、炭素数1〜5のエチレンオキサイド基を有する基等が挙げられる。
上記式(3)におけるRが上記エチレンオキサイド基を有する基である場合、上記式(3)で表される構成単位として、より具体的には、例えば、下記式(4)で表される構成単位等が挙げられる。
【0024】
【化7】

式(4)中、Rは炭化水素基を表し、在っても無くてもよく、nは1以上の整数を表す。
【0025】
上記アミド基を有する基は、アミド結合を有していれば特に限定されず、例えば、アミド基、ケトンとアミド基とを有する基、カルボキシル基とアミド基とを有する基、ヒドロキシル基とアミド基とを有する基等が挙げられる。
【0026】
上記スルホ基を有する基は、スルホ基を有していれば特に限定されず、例えば、スルホ基等が挙げられる。
上記式(3)におけるRが上記スルホ基を有する基である場合、上記式(3)で表される構成単位として、より具体的には、例えば、下記式(5)で表される構成単位等が挙げられる。
【0027】
【化8】

式(5)中、Rは炭化水素基を表し、在っても無くてもよい。
【0028】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂における上記式(3)で表される構成単位の割合は、好ましい下限が2モル%、好ましい上限が10モル%である。上記式(3)で表される構成単位の割合が2モル%未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水溶性を維持しながら上述したような高いアセタール化度を有することができないことがある。上記式(3)で表される構成単位の割合が10モル%を超えると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の原料である変性ポリビニルアルコールをアセタール化することが困難になることがある。
上記式(3)で表される構成単位の割合は、より好ましい下限が4モル%、より好ましい上限が8モル%である。
【0029】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の好ましい下限が300、好ましい上限が4000である。上記平均重合度が300未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を用いて得られるセラミックグリーンシートの支持体からの剥離性が低下したり、機械的強度が低下したりすることがある。上記平均重合度が4000を超えると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下することがある。
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は3300である。
なお、本明細書において、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料である変性ポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。また、本明細書において、変性ポリビニルアルコールの平均重合度とは、混合物である変性ポリビニルアルコールにおけるそれぞれの変性ポリビニルアルコールの重合度から求めた平均値を意味する。
【0030】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、アルデヒドにより、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位及び上記式(3)で表される構成単位を有する変性ポリビニルアルコールを水中でアセタール化することによって得ることができる。
上記変性ポリビニルアルコールが上記式(3)で表される構成単位を有することにより、上記変性ポリビニルアルコールを上述したように高度にアセタール化することができ、生成した水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水中でも析出することがない。
【0031】
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用することが好ましい。
【0032】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(3)で表される構成単位を有することから、水溶性を維持しながら上述したような高いアセタール化度を有することができ、優れた機械的強度及び柔軟性を発現することができる。
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂の用途は特に限定されないが、例えば、本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂、セラミックス粉末、及び、必要に応じて添加される添加剤等を含有する水を媒体としたセラミックスラリーを、剥離性の支持体上に塗布し、乾燥することにより、機械的強度及び柔軟性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、有機溶剤に代えて水を溶剤として使用できることから、環境汚染、毒性、爆発事故等の危険性等の観点からも好ましい。
【0033】
上記セラミックス粉末は特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。これらのセラミックス粉末は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記セラミックスラリーを製造する際の混合方法は特に限定されず、例えば、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
また、上記剥離性の支持体上にセラミックスラリーを塗布する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の従来公知の方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、機械的強度及び柔軟性に優れた水溶性ポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0037】
(実施例1)
変性ポリビニルアルコールとして、平均重合度500、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)を用いた。
この変性ポリビニルアルコール溶液450gにn−ブチルアルデヒド25gを添加し、液温を60℃に保持しながらアセタール化反応を行い、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が35モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が57モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は500であった。
【0038】
(実施例2)
変性ポリビニルアルコールとして、平均重合度800、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が35モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が55モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は800であった。
【0039】
(実施例3)
変性ポリビニルアルコールとして、平均重合度1700、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が35モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が55モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は1700であった。
【0040】
(比較例1)
アセタール化反応を行わず、実施例1で用いた平均重合度500、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)をそのまま用いた。
【0041】
(比較例2)
n−ブチルアルデヒド25gをn−ブチルアルデヒド15gへ変更したこと以外は実施例1と同様にして、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が50モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が45モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は500であった。
【0042】
(比較例3)
アセタール化反応を行わず、実施例2で用いた平均重合度800、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)をそのまま用いた。
【0043】
(比較例4)
n−ブチルアルデヒド25gをn−ブチルアルデヒド15gへ変更したこと以外は実施例2と同様にして、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が48モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が48モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は800であった。
【0044】
(比較例5)
アセタール化反応を行わず、実施例3で用いた平均重合度1700、変性度5モル%、ケン化度98.0モル%の、エチレンオキサイド基で変性されたポリビニルアルコール(上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)を有する)をそのまま用いた。
【0045】
(比較例6)
n−ブチルアルデヒド25gをn−ブチルアルデヒド15gへ変更したこと以外は実施例3と同様にして、水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が50モル%、上記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位(式(2)におけるRはプロピル基)の割合(アセタール化度)が45モル%、及び、上記式(4)で表される構成単位(式(4)は、Rは有しておらず、nが1である)の割合が5モル%であり、平均重合度は1700であった。
【0046】
(比較例7)
平均重合度1700、ケン化度98.0モル%の通常のポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液を得ようとしたが、ポリビニルアセタール樹脂が析出してしまい充分にアセタール化反応を行うことができなかった。
【0047】
<評価>
実施例及び比較例で得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液又は変性ポリビニルアルコール溶液について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
(1)機械的強度
水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液又は変性ポリビニルアルコール溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、乾燥することにより、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについてテンシロン引張試験機を用いて破断点伸度(%)を測定した。
【0049】
(2)弾性率
水溶性ポリビニルアセタール樹脂溶液又は変性ポリビニルアルコール溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、乾燥することにより、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについて、JIS K 7113に準拠した方法により、AUTOGRAPH(AGS−J、島津製作所社製)を用いて引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)を測定した。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、機械的強度及び柔軟性に優れた水溶性ポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位及び下記式(3)で表される構成単位を有し、
下記式(2)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が50モル%以上である
ことを特徴とする水溶性ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】

【化2】

式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【化3】

式(3)中、Rは、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミド基又はスルホ基を有する基を表す。
【請求項2】
式(3)で表される構成単位の割合が2〜10モル%であることを特徴とする請求項1記載の水溶性ポリビニルアセタール樹脂。

【公開番号】特開2012−144660(P2012−144660A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5082(P2011−5082)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】