説明

水溶液から金属を回収する方法

本明細書には、水溶液を、ホスフィン酸を含む有機相溶液と接触させることにより水溶液からモリブデンおよび/またはその他の有価金属を抽出し、有機相溶液を、無機化合物を含みそして<1.0M濃度の遊離アンモニアを含む水相ストリッピング液と接触させることにより有機相溶液からモリブデンおよび/またはその他の有価金属をストリッピングし、そして水相ストリッピング液からモリブデンおよび/またはその他の有価金属を分離することによりそれらを回収する工程による溶媒抽出法により、1リットル当たりppm〜数グラム:の広範な濃度からの、水溶液中に存在するモリブデンおよび/またはその他の有価金属(例えば、ウラン)を回収する方法が提供される。モリブデンおよび/またはその他の有価金属が低濃度でのみ存在する時は、その方法は、回収の前に金属を濃縮するために、有機相再循環工程および/または水相ストリッピング再循環工程を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、金属に対して特定の抽出試薬を使用する溶媒抽出法による、様々な原料物質から誘導される水溶液からの金属の回収方法に関する。より具体的な態様において、本発明は、酸性水溶液からの、低濃度で存在することができるモリブデンとウランの回収の改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低濃度の供給物から金属を回収するために使用される好適な方法は伝統的には、イオン交換法である。しかし、鉱業および金属回収産業の本質を考慮すると、供給物の溶液は有機物質、固形物およびその他の汚染物質の濃度に高度のばらつきを有する可能性がある。これらの汚染物質は非常にやっかいであることは周知であり、イオン交換樹脂を汚染して、大量輸送係数(mass transfer coefficient)の低下と効果的な交換能の低下をもたらす。金属が低濃度の供給物から抽出される時は、樹脂は全能力に到達する前に、より長期間、供給物水溶液と接触すると考えられる。これは、樹脂のより早急な汚染と、樹脂の能力のより早急な低下をもたらし、それはより頻繁な再生周期を必要とする。樹脂の汚染は時々、樹脂の分解をもたらす。樹脂が汚染される時は、樹脂の再生および/または洗浄が非常にめんどうで、大量の廃棄物を生成し、そして強力な洗浄後でも樹脂の交換能は著しく変る。更に、樹脂がより頻繁に再生そして/または洗浄されるために、樹脂の物理的特性が劇的に変る。
【0003】
それに対し、溶媒抽出法は、特定の標的金属に対して極めて選択的であることができ、そして有意な量の固形物、不純な沈殿物、粒状物および有機物質を処理することができる、十分に確立された方法である。鉱石から金属を回収する1つの経路は、鉱石を、浸出物質、例えば、金属を鉱石から溶液中に抽出する酸、を含む水溶液と接触させる工程によるものである。次に貴浸出液(pregnant leach solution)と呼ばれる浸出水溶液は、金属に特定の抽出試薬を含む非水溶液(例えば、有機溶液)と貴浸出液とを接触させる溶媒抽出法により処理される。この試薬は、金属を水相から非水相中に抽出し;ラフィネートと呼ばれる浸出水溶液は全般的に浸出工程に再循環されて更なる金属を溶解する。浸出水溶液は主要金属(primary metal)以外の金属を含むことができる。例えば、非特許文献1により、モリブデンが、硫酸を使用する銅鉱石からの銅の抽出に関与した異なる水流中に認められることが報告されている(非特許文献1参照)。これらの水流からのモリブデンは貴重であり、低濃度で(例えば、1ppm〜1,000ppm)存在するだけにも拘わらず回収する価値がある。溶媒抽出による酸化モリブデン原料からのモリブデンの回収は全般的には研究されてきたが、溶媒抽出法は典型的には、非効率のために、低濃度でのみ存在するこのような金属を回収する工程には使用されなかった。
【0004】
酸化モリブデンの原料は、例えば酸化輝水鉛鉱および、鉱石を含むあらゆるモリブデンの浸出から生成されるモリブデンを含む。酸化輝水鉛鉱のその他の原料は、使用済み触媒、モリブデンを含む再循環合金、焙焼装置(roaster)からのスクラビング溶液、鉱石溶融残留物、合金、輝水鉛鉱精鉱物の浸出物、加圧酸化輝水鉛鉱、等を含む。
【0005】
アミンを使用する酸性溶媒からのモリブデンの溶媒抽出法は特許文献1、2および3に記載され、水溶液からモリブデンを抽出するために使用される(特許文献1、2、3参照)。しかしこれらの方法に対する欠点は、ストリッピング期間中の沈殿に関連する有機相中のケイ素の移動、リン、ヒ素、アンチモン、鉛、ビスマスおよびセレンの同時抽出、第3相の形成、弱い相遊離(disengagement)並びに更にモリブデン−アミン錯体の低い溶解度を含む。水性供給物中のリンの存在は非特許文献2によりPMo12O403-.として特徴を
示された第3相の形成をもたらす(非特許文献2参照)。
【0006】
モリブデンを回収するために探求された他の方法は、非特許文献3中にB. Nyman 等により記載されたビス(2-エチルヘキシル)リン酸(DEHPA)またはホスホン酸を使用する方法である(非特許文献3参照)。しかしこれらの方法はモリブデンと同時抽出される高レベルの鉄に悩まされる。
【0007】
特許文献4においては、モリブデン抽出のためにオキシムも研究されたが、それらの適用は、有機相からモリブデンを完全にストリッピングするために必要な塩基性溶媒中でのオキシムの減少した安定性により限定される。
【0008】
モリブデンを抽出するためのホスフィン酸の使用は特許文献5、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7および非特許文献8に記載された(特許文献4、非特許文献5、6、7、8参照)。
【0009】
Cyanex(登録商標)272 (Cytec Industries, Woodland Park NJから入手可能)のようなホスフィン酸を使用する酸性水溶液からのモリブデンの回収は特許文献5と非特許文献4に記載されている(特許文献5、非特許文献4参照)。Zhang等は、十分に過剰なNH4OHを使用する工程を報告した(非特許文献4参照)。しかし、この方法は有意な量のホスフィン酸が水相に移動され、それが有機相中への有意なアンモニウムと水の移動のみならずまた、抽出溶媒の有意な喪失をもたらす欠点を有する。その結果、有機相が抽出工程に再循環される時に、かなりの量のアンモニウム塩が酸性水溶液中に形成される。更にエマルションの形成(すなわち、相の遊離)が報告されている。従って、モリブデンを回収するためのこれらの溶媒抽出法は工業的規模における使用には実際的でない。
【0010】
従って、様々な原料からの水溶液から金属を回収する溶媒抽出法は更なる改善を必要とする。浸出操作または溶媒抽出操作に下流の影響を与えずに、既存の操作から、ごく痕跡量で存在する金属を選択的に回収し、それによりこのような金属の別々の採鉱経費を有効に排除するように冶金学的有機相:水相(O/A)の比率を微調整する方法は、当該技術分野で有用な進歩であり、冶金学的鉱業において早急に受容され得ると考えられる。更に、ストリッピング工程にアンモニア性溶液を使用しそして相遊離(disengagement)の問題またはエマルションの形成を起こさない溶媒抽出法はまた、有用な改善であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第 3,455,677号明細書
【特許文献2】米国特許第4,000,244号明細書
【特許文献3】米国特許第4,444,733号明細書
【特許文献4】特開平6−192761号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A. Cruz and A. Reghezza, Hydrocopper 2007, Chapter 07 New projects and expansions, p.349-355
【非特許文献2】Moyer et al., W.J.McDowel, Hydrometallurgy, 1986, 16, p. 177-195
【非特許文献3】Oslo Symposium 1982, Ion Exchange and Solvent Extraction, Ed. JO/An Frost Urstad and Gerd Borgen, Society of Chemical Industry, pp. V-15-V-35, 1982
【非特許文献4】P. Zhang et al., Energy & Fuels 1995, 9, 231-239
【非特許文献5】M. Oliazadeh et al., Hydrometallurgy 2003-Fifth International Conference in Honor of professor Ian Ritchie-Volume 1: Leaching and Solution Purification, 843-852, 2003;
【非特許文献6】A. Saily et al., Fresenius J. Anal. Chem, 360, 266-270, 1998
【非特許文献7】P. Behera et al., Journal of RadiO/Analytical and Nuclear Chemistry, 178(1), 179-192
【非特許文献8】Y.Cao et al., Mo Kexue Yu Jishu, 9(4), 6-12,(1989)
【発明の概要】
【0013】
本明細書に詳述される発見は、溶媒抽出法により、金属を、様々な原料からの水溶液から選択的に回収する、改善された方法を提供する。このような方法は、良好な混合性(すなわち、均一な液滴サイズ)と既存の浸出操作からのこのような金属の高抽出率の双方を得るために、冶金学的有機相対水相(「冶金学的O/A比率」または「O/A比率」)を微調整することにより、水溶液中に痕跡量でのみ存在する金属を回収するための効率的で経済的な方法を提供する。本明細書に記載され、提供されるような本発明に従う方法は、既存の溶媒抽出法の浸出操作または溶媒抽出操作に対して下流の影響を伴わずに実施することができ、そして既存の溶媒抽出法の一部としてそれと同時に実施することができ、それにより別個の採鉱経費を排除することができる。更に、本明細書に記載のような本発明に従う方法は、アンモニウムに基くストリッピング溶液に依存する溶媒抽出法における改善を提供し、第3相の形成またはエマルション発生を伴わずに良好な相遊離性を提供する。
【0014】
従って、本明細書に詳述される発明は1つの態様において、モリブデンを含む酸性水溶液からモリブデンを回収する方法であって、水溶液を、ホスフィン酸を含む有機相溶液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を水相から有機相に抽出し、有機相を、無機化合物を含みそして5〜11のpHを有する水相ストリッピング液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を有機相から水相ストリッピング液にストリッピングさせ、但し、無機化合物がNH4OHである時は、遊離アンモニアの濃度は0.01〜1.0Mであることとし、そしてモリブデンを水相ストリッピング溶液から分離し、それによりモリブデンを回収する工程による方法を提供する。
【0015】
他の態様において、本発明は、低濃度でのみ存在する金属を水溶液から回収する溶媒抽出法であって、水溶液を有機相溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を水相から抽出し、金属含有の有機相溶液の50〜100%を再循環させ、そして有機相を金属含有水溶液と接触させ、それにより有機相中の金属の濃度を増加または維持し、金属含有の有機相溶液を、金属を逆抽出する化合物を含む水相ストリッピング溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を有機相溶液から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、そして金属を水相ストリッピング溶液から分離し、それにより金属を回収する工程による方法を提供する。
【0016】
本発明の、以上およびその他の目的、特徴および利点は添付の図面と実施例に関連して使用される、本発明の様々な態様の以下の詳細な説明から明白になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本明細書に記載される、本発明に従う、水溶液から金属を回収する方法の1態様を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
前記に要約されるように、今回、発見され、本明細書に開示された方法は、第3相またはエマルションの形成を伴わずに、良好な相遊離を提供するO/A比率を使用して水溶液か
ら金属を回収するために有用であり、そして水溶液中に低濃度でのみ(すなわち、痕跡量)存在する金属を回収するために有用である。
【0019】
定義
前記および本開示全体に使用される、以下の用語は読者の補助にするために提供される。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術分野の用語、句読点およびその他の科学用語は化学技術分野の技術者により一般に理解される意味をもつことが意図される。本明細書および添付請求項に使用される単数形は、文脈が明白にそうでないことを記載しない限り複数の対象物を含む。
【0020】
本明細書を通して、用語および置換物はそれらの定義を保持する。有機化学者(すなわち、当業者)により使用される略語の総合的なリストはJournal of Organic Chemistry.の各巻の巻頭に認められる。典型的には“Standard List of Abbreviations(略語の標準リスト)”と題した表中に提示されるリストが参照により本明細書に引用されていることとする。
【0021】
本明細書で使用される用語「モリブデン」は0を超える酸化状態をもつアニオンまたはカチオンのモリブデン種(species)を表す。
【0022】
本明細書で使用される用語「金属」は0を超える酸化状態をもち、主要金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、メタロイド、希土類金属、ランタニド、アクチニド、半金属および半導体から選択される群を伴う周期表のあらゆる元素(またはそれらの種)を表す。
【0023】
アルキルは,線状、分枝または環式炭化水素構造物およびそれらの組み合わせ物を含むことが意図される。低級アルキルは1〜6個の炭素原子のアルキル基を表す。低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−およびt−ブチル等を含む。好適なアルキル基はC30以下のものである。シクロアルキルはアルキルの下部集合であり、3〜30個の炭素原子、好適には3〜8個の炭素原子をもつ環式炭化水素基並びに7〜10個の炭素原子をもつ多環式炭化水素を含む。シクロアルキル基の例はc−プロピル、c−ブチル、c−ペンチル、等を含む。C7〜C10多環式炭化水素の例はノルボルニルおよびアダマンチルのような環系を含む。
【0024】
アルコキシまたはアルコキシアルキルは、酸素により親構造に結合された、直鎖、分枝、環式形態およびそれらの組み合わせ物の1〜30個の炭素原子の基を表す。例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を含む。
【0025】
アリールは、二環式9-または10-員の芳香環系、あるいは三環式13-または14-員の芳香環系;を含む5-または6-員の芳香族炭素環式環を表す。芳香族の6-〜14-員の炭素環式環は例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリンおよびフルオレンを含む。
【0026】
本明細書で使用される用語「アラルキル」は広義の用語であり、少なくとも1個のアルキルの水素原子をアリール部分で置換されているアルキル、例えばベンジル、−CH2(1 もしくは 2-ナフチル)、−(CH2)2フェニル、−(CH2)3フェニル、−CH(フェニル)2、等、を表すために限定せずに含む、その通常の意味で使用される。本明細書で使用される用語「アルキルアリール」は広義の用語であり、少なくとも1個のアリールの水素原子をアルキル部分で置換されているアリールを表すために限定せずに含む、その通常の意味で使用される。特に好適なアリール基はC6-12アリールとC7-20アラルキル基を含む。
【0027】
複素環は、その1〜3個の炭素がN、OおよびSよりなる群から選択されるヘテロ原子により置換されているシクロアルキルまたはアリール残基を意味する。窒素と硫黄のヘテロ原子は場合により酸化されてもよく、窒素のヘテロ原子は場合により四級化されてもよい。本発明の範囲内に入る複素環の例はピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する時は、一般的にメチレンジオキシフェニルと呼ばれる)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等を含む。ヘテロアリールはその複素環が芳香族である複素環の下部集合であることに注意しなければならない。複素環式残基の例は更に、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソーピロリジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、クイヌクリジニル、イソチアゾリジニル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、オキサジアゾリル、トリアゾリルおよびテトラヒドロキノリニルを含む。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルキルシクロ」は広義の用語であり、少なくとも1個の水素原子をアルキル部分で置換されているC6〜C30炭素環を表すために限定せずに含む、その通常の意味で使用される。特に好適な炭素環基はC6-18炭素環を含む。
【0029】
本明細書で使用される用語「シクロアルキルアリール」は広義の用語であり、少なくとも1個のアリールの水素原子をシクロアルキル部分で置換されているアリールを表すために限定せずに含む、その通常の意味で使用される。特に好適なアリール基はC6-12アリールおよびC7-20アラルキル基を含む。
【0030】
置換アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、等は、その各残基中の3個までのH原子がハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、カルボアルコキシ(アルコキシカルボニルとも呼ばれる)、カルボキサミド(アルキルアミノカルボニルとも呼ばれる)、シアノ、カルボニル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、アシルアミノ、アミジノ、フェニル、ベンジル、ハロベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ベンゾイル、ハロベンゾイルまたは低級アルキルヒドロキシで置換されているアルキル、アリール、シクロアルキルまたはヘテロシクリルを表す。
【0031】
用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0032】
本明細書で使用される用語「低濃度で存在する金属」または「痕跡量の金属」または「少量の金属」は1ppm〜1,000ppmの溶液中濃度を有する金属を表す。このような金属はしばしば、有意に、より高い濃度の金属を含む鉱石中では不純物であると考えられる。有意に、より高い濃度で鉱石中に存在する金属は典型的には、「主要金属」と呼ばれ、そして例えば、銅を含む。
【0033】
用語「g/l」、「g/L」または「gpl」はすべて、「1リットル当たりのグラム数」を意味すると理解される。
【0034】
本明細書と請求項に使用される成分の量、反応条件等を表すすべての数は、すべての場
合に用語「約」により修飾されていると理解することができる。従って、その反対を記載されない限り、本明細書と添付請求項に示される数値パラメーターは、本発明により獲得することを追求される所望の特性に応じて変ることができる近似値である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは有意な桁の数と通常の丸め法に照らして解釈するべきである。
【0035】
溶媒抽出法
1つの態様において、本発明は、モリブデンを含む酸性水溶液からモリブデンを回収する方法であって、水溶液を、ホスフィン酸を含む有機相溶液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を水相から有機相に抽出し、有機相を、無機化合物を含みそして5〜11のpHを有する水相ストリッピング液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を有機相から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、但し、無機化合物がNH4OHである時は、遊離アンモニアの濃度は0.01〜1.0Mであることとし、そしてモリブデンを水相ストリッピング溶液から分離し、それによりモリブデンを回収する工程による方法を提供する。
【0036】
本発明に従う方法は、モリブデンを含むあらゆる流れに適用することができる。それは有益には、そこでモリブデンが溶液中に存在する既存の浸出操作からもたらされる、モリブデンを含む流れに適用される。このような態様において、モリブデンは、浸出操作またはその他のSX操作に対する下流の影響を受けずに回収されることができる。更に、モリブデンは、それが既に溶液中に存在するために、更なる採鉱経費を伴わずに、経済的に回収することができる。特定の態様において、浸出溶液中のモリブデン濃度は沈殿したモリブデンを含む既存の堆積物/ゴミの山/廃棄材を酸性化することにより増加させることができる。モリブデンのその他の原料も使用することができ、これらの場合には、次に更なる浸出工程が必要かも知れない。このような態様においては、最初の浸出工程に戻す前に、この更なる浸出溶液を既存の抽出溶液に添加して、処理することができる。
【0037】
従って、本発明の特定の態様において、供給物水溶液として、異なる酸性水溶液、例えば、既存の溶媒抽出(SX)操作、すなわち銅のSX操作、からの浸出溶液、酸プラント/鉱石溶融操作からのスクラビング液、煙塵、濾過ケーク、酸化モリブデン鉱石の処理、使用済み触媒の再処理、からの浸出液、またはそれに限定はされないが潤滑油廃棄物のようなモリブデンを含むその他の廃棄流、を使用することができる。例えば、好適な態様において、酸性溶液は、特に硫酸を使用する銅抽出法からのラフィネートである。金属を含む水溶液の2種以上の原料を使用することができる。
【0038】
1つの態様において、金属含有供給物の水溶液は、他の不純物(例えば、鉄、アルミニウム、バナジウム、等)の負荷を限定するために、抽出工程に前進する前に酸性化することができる。金属の溶解を高めるために浸出液に酸を添加する(SX後に)ことは近年のSX法には一般的な方法であるが、本発明は、金属の選択性と回収率を高めるために、標的の金属を抽出する前に、そして浸出液が最初の金属抽出工程に戻される前に、既存のSX操作のラフィネート流に酸を添加する可能性と利益を提供する。モリブデン含有酸性水溶液は好適には4未満の、より好適には2.5未満の、そしてもっとも好適には1未満のpHを有する。
【0039】
本発明の方法に従う有機相溶液中に使用されるホスフィン酸は全般的に以下の構造:
【0040】
【化1】

【0041】
[式中、R1 と R2 は個々に、場合により置換されていてもよいC1-C30 アルキル、C3-C30シクロアルキル、C3-C30 アルコキシアルキル、C4-C30 アルキルシクロ、C7-C30 アルキルアリール、C7-C30 アラルキルおよびC8-C30 シクロアルキルアリール基から選択される]により表される。特定の態様において、R1 と R2 は個々にC4-C12アルキルから選択される。
【0042】
本発明による使用に適したホスフィン酸は、限定はされないが、国際公開出願第07/143832号パンフレット中に記載されたもの: ジメチルホスフィン酸; ジエチルホスフィン酸;
ジ-n-プロピルホスフィン酸; ジイソプロピルホスフィン酸; ジ-n-ブチルホスフィン酸;
ジイソブチルホスフィン酸; ジ-n-ペンチルホスフィン酸; ジ-n-ヘキシルホスフィン酸;
ジ-n-ヘプチルホスフィン酸; ジ-n-オクチルホスフィン酸; ジ-n-ノニルホスフィン酸; ジ-n-デシルホスフィン酸; ジ-n-ドデシルホスフィン酸; ジ-n-テトラデシルホスフィン酸; ジ-n-ヘキサデシルホスフィン酸; ジ-n-エイコシルホスフィン酸;ジ-ノルボルニルホスフィン酸; ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)シクロヘキシルホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)オクチルホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ホスフィン酸; (1,1,3,3-テトラメチルブチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1-メチル-1-エチルペンチル)ホスフィン酸; (1-メチル-1-エチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; ジシクロペンチルホスフィン酸;ジシクロヘキシルホスフィン酸;ジシクロオクチルホスフィン酸; シクロヘキシル, n-ブチルホスフィン酸; シクロペンチル, n-ドデシルホスフィン酸; シクロオクチルエーテルホスフィン酸; 2,4,6-トリイソプロピル-1,3,5-ジオキソホスホリナン, 5-ヒドロキシ, 5-オキシドホスフィン酸; シクロヘキシル, フェニル ホスフィン酸;シクロペンチル-p-トリルホスフィン酸;シクロオクチル -p-クロロフェニルホスフィン酸, ジフェニルホスフィン酸;ジ-o-トリルホスフィン酸; ジ-m-トリルホスフィン酸; ジ-p-トリルホスフィン酸; ビス(2,3-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,4-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,5-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,6-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(3,4-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(3,5-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ジ-(p-エチルフェニル) ホスフィン酸; ジ-(p-オクチルフェニル) ホスフィン酸;エチルフェニル, n-ブチルフェニルホスフィン酸; n-オクチルフェニル, n-ヘキサデシルフェニルホスフィン酸; エチル-o-トリルホスフィン酸; n-オクチル-p-トリルホスフィン酸; ビス(o-クロロフェニル) ホスフィン酸; ビス(m-クロロフェニルホスフィン酸; ビス(p-クロロフェニル) ホスフィン酸; メチル-o-クロロフェニルホスフィン酸; n-プロピル-p-クロロフェニルホスフィン酸, n-ドデシル-p-クロロフェニルホスフィン酸; ジベンジルホスフィン酸; メチル-ナフチルホスフィン酸; ジアリルホスフィン酸; シクロヘキシル, 1-ヒドロキシシクロヘキシルホスフィン酸; ビス(2-メチル-1-ヒドロキシペンチル) ホスフィン酸; ベンジル, アルファヒドロキシベンジルホスフィン酸; o-クロロベンジル, アルファ-ヒドロキシ-o-クロロベンジルホスフィン酸; p-クロロベンジル, アルファ-ヒドロキシ-p-クロロベンジルホスフィン酸; フェニル, アルファ-メチルベンジルホスフィン酸; シクロペンチル, 1-ヒドロキシシクロペンチルホスフィン酸; アルファ-メチルベンジル, アルファ-ヒドロキシ-アルファ-メチルベンジルホスフィン酸; 1-メチルペンチル, 1-ヒドロキシ-1-メチルペンチルホスフィン酸; n-
オクチル, アルファヒドロキシベンジルホスフィン酸; (1-ヒドロキシ-1メチルエチル)イソプロピルホスフィン酸、を含む。1種または複数のホスフィン酸のあらゆる混合物もまた使用することができる。好適なホスフィン酸はビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ホスフィン酸; (1,1,3,3-テトラメチルブチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1-メチル-1-エチルペンチル)ホスフィン酸; (1-メチル-1-エチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸およびそれらの組み合わせ物である。
【0043】
特定の好適な態様において、ホスフィン酸はビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ホスフィン酸; (1,1,3,3-テトラメチルブチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1-メチル-1-エチルペンチル)ホスフィ酸;(1-メチル-1-エチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸およびそれらの組み合わせ物:から選択される。
【0044】
特定の態様において、有機相はホスフィン酸に対する希釈剤として多数の不活性な、水非混和性有機溶媒を含んでなることができる。このような有機溶媒の例は、それらに限定はされないが、脂肪族および芳香族炭化水素溶媒、例えばケロセンを含む。好適な溶媒は例えば、120°F(48.9℃)以上の発火点をもち、非常に低い水溶性をもつ芳香族または脂肪族の溶媒を含む。市販の溶媒の例は、ORFOM(登録商標) SX-12、SX-7、SX-11、SX-80 および SX-18 (Chevron Phillips Chemical LP, The Woodlands, TXから市販); ISOPARTM、NORPARTM および ESCAIDTM 100、110 および 120 (ExxonMobil, Houston, TXから市販); または様々な石油およびケロセン留分からのあらゆる、その他の有機溶媒を含む。
【0045】
本発明の方法に従う有機相溶液中のホスフィン酸の濃度は全般的に0.01〜1.5モル/lである。特定の態様において、その濃度は好適には0.05〜0.8モル/lであり、他の態様においては、ホスフィン酸の濃度はより好適には0.2〜0.6モル/lである。
【0046】
本発明に従う方法により、抽出工程における修飾剤(modifier)および/または動力学的促進剤の使用も想定される。修飾剤の使用は有機相溶液中への金属の抽出をわずかに低下させるかも知れないが、それらはその後のストリッピング工程における全体的相遊離を改善することができる。
【0047】
従って、いくつかの態様において、有機相溶液は更に、フェノール;芳香族エステル;脂肪族エステル;有機リン化合物;ホスフェート;酸化ホスフィン;芳香族脂肪族アルコール;脂肪族アルコール;ニトリル;ケトン;アミド;カルバメート;スルホキシド;尿素;カルボネート;オキシム;エーテル;ポリエーテル;エステル−エーテル;アミン、ホスホニウム、アンモニウム、イミダゾリウム、スルホニウムおよびピリジニウムから選択される塩並びにそれらの組み合わせ物:から選択される官能基を含む修飾剤化合物を含む。特定の態様において、修飾剤の官能基は、それに限定はされないがトリデカノールのような例えばC8-C24アルコ−ルを含むアルコールである。他の態様においては、修飾剤の官能基はエステルであり、それに限定はされないが、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(“TXIB”)を含む。更に他の態様においては、修飾剤の官能基は酸化ホスフィンであり、それに限定はされないが、酸化トリアルキルホスフィン、例えばトリス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン・オキシドまたはトリオクチルホスフィン・オキシドを含む。幾つかの態様において、修飾剤はこれらの官能基の組み合わせ物を含むことができる。
【0048】
本発明の方法に従う抽出工程は、溶媒抽出法における当業者により知られたあらゆる方
法に従って実施することができる。抽出はミキサー・セトラー、カラム、遠心分離機、静的(static)ミキサー、反応器またはその他の適切な接触/分離装置中で実施することができる。抽出工程は1種または複数の抽出工程を含むことができ、洗浄/スクラビング工程、および/または不純物を除去しそして捕捉汚染物を減少させるためのコアレッサーを含むことができる。
【0049】
特定の態様において、酸性水溶液からモリブデンを回収する方法は更に、モリブデンを含む有機相溶液の5〜100%を再循環させ、そして有機相を、モリブデンを含む酸性水溶液と接触させ、それにより有機相中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含むことができる。幾つかの態様において、再循環工程にかけられるモリブデン含有有機相の割合は80〜99.9%である。好適な態様に従うと、有機相は、方法の開始相期間に100%再循環される。
【0050】
特定の態様において、再循環工程は、水相溶液を冶金学的O/Aが0.001〜0.20であるモリブデン含有有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5〜2.0のO/Aを設定し、それにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして有機相溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含むことができる。当業者は、均一な液滴サイズ分布が有機相溶液と水相溶液の良好な混合性の結果的効果であり、そして再循環工程を使用して、有機相溶液中のモリブデン(または低濃度でのみ存在するあらゆる金属)を有効に濃縮し、それにより下流の処理装置のサイズを縮小し、そして本発明に従う方法の経済を著しく高めることができることを認めると考えられる。
【0051】
本明細書で使用される用語「冶金学的O/A比率」または「O/A」は、あらゆる直接の再循環物を除く、ミキサーへの有機相と水相の新鮮な溶液の流れの比率であると定義される。ミックスボックスまたは内部のO/A比率はミキサー内の有機相と水相の容量比である。再循環物が使用されない場合はミックスボックスのO/A比率は冶金学的比率と同一である。SX法は、溶液から、低濃度でのみ(例えば、ppm)存在する金属の回収のために典型的には使用されないが、本発明に従う方法は、モリブデンの適度な回収を獲得しながら、抽出工程に低いO/A比率を使用することができることを示した。これは、低濃度でのみ存在する金属を有機相中で濃縮し、それにより下流の処理装置(ストリッピング、スクラビング、結晶化装置、等)の規模を縮小し、工程の経済を著しく高める。
【0052】
全般的に冶金学的O/A比率は、ルーチン実験により、有機相溶液中の金属濃度を最大にするために微細調整されると考えられる。特定の態様において、抽出工程における有機相対酸性水相の冶金学的比率(冶金学的O/A比率)は1:1000〜10:1であることができる。幾つかの態様において、抽出工程における冶金学的O/A比率は好適には1:100〜10:1または1:1〜1:100の範囲内にある。
【0053】
発明の1つの態様において、有機相の再循環工程は少なくとも1回実施される。その他の態様においては、有機相の再循環工程は連続して実施される。有機相の再循環工程は好適には、有機相溶液中のモリブデン(または低濃度で存在するその他の標的金属)の濃度が少なくとも0.3g/l〜25g/lになるまで、実施される。
【0054】
本発明のその他の態様において、方法は更に、モリブデンを添加された有機相溶液の少なくとも一部を鉱酸溶液と接触させ、それにより有機相溶液からあらゆる不純物を除去する工程により実施される1種または複数のスクラビング工程を含むことができる。
【0055】
本発明に従う方法の水相ストリッピング溶液はアンモニア、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩、水酸化ナトリウム、ナトリウム塩、モリブデンおよびそれらの組み合わせ物:から選択される無機化合物を含む。幾つかの態様において、アンモニウムおよびナトリ
ウム塩は炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物およびそれらの組み合わせ物:から選択される。特定の好適な態様において、水相ストリッピング溶液の無機化合物は、炭酸、硫酸、リン酸およびそれらの組み合わせ物:から選択されるアンモニウム塩と混合された水酸化アンモニウムである。
【0056】
ストリッピング工程における構成供給物の無機化合物の濃度は好適には、水相ストリッピング溶液に対するその添加の希釈効果を最少にするために、できるだけ高い。特定の態様において、濃厚NH4OHまたは気体のNH3が好適に使用される。水相ストリッピング溶液のpHは5〜11の範囲内にある。
【0057】
アンモニアまたは水酸化アンモニウムが水相ストリッピング溶液中のストリッピング試薬として使用される無機化合物である態様において、金属を含む有機相溶液に移動されるアンモニアの量は、相遊離と水の移動の問題を回避するために適切に低くなければならない。出願者は、有益で、驚くべきことには、アンモニアによるストリッピングを必要とする金属に対するNHの濃度は、ストリッピング工程が工業的規模で有効であるためには1M未満でなければならないことを発見した。アンモニアの濃度はヘンダーソン−ハッセルバルク等式の以下の形態: [NH3] = [総アンモニア] / (1 + 10pH-pKa)[ここで、[総アンモニア]はまた[NH3] + [NH4] として表すことができ、アンモニアのpKa は9.244である]を使用して計算される。この等式は本明細書の実施例に使用されており、先行技術の方法に対して本発明に従う成功した方法を対比している。
【0058】
特定の態様において、酸性水溶液からモリブデンを回収する方法は更に、モリブデンを含む水相ストリッピング溶液の5〜100%を再循環し、そして水相ストリッピング溶液を、モリブデンを含む有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中のモリブデンの濃度を増加または維持する工程により実施される第2の再循環工程を含むことができる。幾つかの態様において、第2の再循環工程を受けるモリブデン含有の水相ストリッピング溶液の割合は80〜99.9%である。
【0059】
その他の態様において、酸性水溶液からモリブデンを回収する方法は、水相ストリッピング溶液を、その冶金学的O/Aが1〜1000である、モリブデン含有の有機相溶液と接触させて流し、そしてミキサー中に0.5〜10のO/Aを設定し、それにより均一な液滴サイズの分布をもたらし、そして水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含む第2の再循環工程を含むことができる。再度、当業者は、均一な液滴サイズの分布は有機相溶液と水相溶液の良好な混合性の結果的効果であり、そして第2の再循環工程を使用して水相ストリッピング溶液中のモリブデン(または低濃度で存在するのみのあらゆるその他の標的金属)を有効に濃縮することができる、ことを認めると考えられる。
【0060】
本発明の1つの態様に従うと、第2の再循環工程における有機相溶液対水相ストリッピング溶液の冶金学的O/A比率は1を超える。その他の態様において、第2の再循環工程における有機相溶液対水相ストリッピング溶液の冶金学的O/A比率は、好適には少なくとも2、より好適には少なくとも10、そしてもっとも好適には少なくとも100である。
【0061】
特定の態様において、前記に考察された有機相の再循環工程と同様に、水相ストリッピング溶液の再循環工程は少なくとも1回実施される。その他の態様において、水相ストリッピング溶液の再循環工程は連続して実施される。水相ストリッピング溶液の再循環工程は好適には、水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度が少なくとも5g/l〜200g/l、そして好適には少なくとも30g/l〜少なくとも80g/lになるまで実施される。
【0062】
本発明に従う方法において、i)有機相溶液からモリブデンをストリッピングし、ii)良好な相遊離性(すなわち、エマルションまたは第3相の形成なし)を与え、そしてiii
)低濃度の無機化合物の有機相溶液中への移動をもたらすために、水相ストリッピング溶液中に適量の無機化合物が使用される。更に、ストリッピングし、そして水相ストリッピング溶液を再循環するために使用される無機化合物の量を減少することにより、水相ストリッピング溶液中のホスフィン酸の抽出溶媒のロスを最少にすることができる。水相ストリッピング溶液はストリッピング工程に再循環させて、そこで丁度十分量の新鮮な無機化合物、例えばアンモニアまたはその他の選択される無機化合物が水相ストリッピング溶液に添加され、それにより更なるモリブデンのストリッピングを許し、そして水相ストリッピング溶液中の最少の希釈を伴って更なる濃縮を許すことができる。
【0063】
水相ストリッピング溶液中のモリブデンが飽和に達すると、モリブデンは析出することができる。従って、特定の態様において、ストリッピング工程は好適には、沈降タンク(settler)、好適には円錐形沈降タンク中で実施される。幾つかの態様において、モリブデン結晶を含む水相ストリッピング溶液は濾過器、遠心分離機またはその他の適当な装置に運ばれて、濃厚な(pregnant)ストリッピング液(飽和された)から結晶を分離することができる。結晶は水またはその他の適当な溶媒で洗浄されて、不純物を除去されることができる。
【0064】
特定の態様において、モリブデンは、例えば、蒸発、酸性化、有機溶媒の添加(すなわち、エタノール添加)、電解採取(electro-winning)、他の塩の形成、沈殿、結晶化およびそれらの組み合わせ物:を含む、当業者に知られたあらゆる適当な方法により水相ストリッピング溶液から遊離させることができる。1つの態様において、モリブデンはインサイチューの沈殿により水相ストリッピング溶液から分離される。
【0065】
最終的モリブデン生成物はストリッピングに使用される1種または複数の無機化合物から誘導される多数の塩の1つであることができ、そして所望される最終的モリブデン生成物に応じて、多数の経路を介して更に処理されることができる。
【0066】
本発明に従う方法の特定の態様において、モリブデンのストリッピング後に得られる有機相は、標的の第2の金属をストリッピングするために特定の無機化合物を含む第2の水相ストリッピング溶液を使用することにより、有機相溶液から第2の金属(モリブデンと異なる)をストリッピングするために、その後のスクラビング工程および/または第2のストリッピング工程において更に処理されることができる。幾つかの態様において、この方法は、標的金属をストリッピングするために特定の化合物を使用して、有機相から第3または第4の金属をストリッピングするために繰り返される。
【0067】
更なるストリッピング工程でストリッピングされることができる金属は、主要金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、メタロイド、希土類金属、ランタニド、アクチニド、半金属および半導体:から選択される化合物を含む。当業者は、元素の周期表からこれらの群を容易に認め、そしてそれらが含む元素を認めると考えられる。幾つかの態様において、好適な金属は、それらに限定はされないが、ウラン、アルミニウム、インジウム、スカンジウム、ガリウム、ビスマス、ヒ素、テルル、セレン、リチウム、マグネシウムおよびテクネチウムを含む。
【0068】
例えば、1つの態様において、ウランは、リン酸、炭酸アンモニウム、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、炭酸ナトリウム、蓚酸およびそれらの混合物:から選択される化合物を含む第2の水相ストリッピング溶液を使用して有機相から逆抽出することができる。
【0069】
本発明に従う方法の特定の態様において、1種または複数のストリッピング工程後に、有機相溶液は有益には少なくとも一部は抽出工程に再循環して戻される。様々な態様にお
いて、1種または複数の抽出工程に流入する金属の濃度は1種または複数のストリッピング工程を介してSX操作を流出する金属の濃度と定常状態にあると考えられる。
【0070】
従って、前記のような本発明に従う方法は、溶媒抽出法により、広範な濃度:1リットルにつきppm〜数グラム、からの、酸性水溶液中に存在するモリブデンおよび/またはその他の貴重な金属(例えば、ウラン)の回収を許す。本発明に従う溶媒抽出法はホスフィン酸の試薬を使用し、有機相中に移動されるアンモニウムまたはナトリウムの量を減少させ、それは、エマルションまたは第3の相形成を伴わずに、ストリッピング試薬のロス、酸の消費、塩の形成および抽出剤のロスを最少にさせる。
【0071】
本明細書に提供される方法は、有機相の選択的ストリッピングにより、モリブデンに加えてウランのようなその他の貴重な金属の回収を許す。本発明に従う方法のその他の利点は、供給物水溶液から低濃度でのみ存在する金属を抽出し、濃縮する能力およびほとんど不純物元素を含まない金属生成物を生成する能力を含む。
【0072】
従って、他の態様において、本発明は、金属が低濃度で水溶液中に存在する水溶液から金属を回収する溶媒抽出法であって、水溶液を有機相溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を水相から抽出し、そして金属含有の有機相溶液の50〜100%を再循環させ、そして有機相を金属含有水溶液と接触させ、それにより有機相中の金属の濃度を増加または維持し、金属含有の有機相溶液を、金属を逆抽出する化合物を含んでなる水相ストリッピング溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を有機相溶液から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、そして金属を水相ストリッピング溶液から分離し、それにより金属を回収する工程による方法を提供する。
【0073】
回収を目的とされる金属は前記に考察されたあらゆるものを含み、全般的に、主要金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、メタロイド、希土類金属、ランタニド、アクチニド、半金属および半導体の、周期表の群に対応する金属元素を含む。
【0074】
特定の態様において、再循環工程は、水相溶液を、その冶金学的O/Aが0.001〜0.20である有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5〜2.0のO/Aを設定し、それにより均一な液滴サイズの分布をもたらし、そして有機相溶液中の金属の濃度を増加または維持する工程を含む。
【0075】
幾つかの態様において、本方法は更に、金属を含む水相ストリッピング溶液の5〜100%を再循環させ、そして水相ストリッピング溶液を、金属を含む有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持する工程を含んでなる、第2の再循環工程を更に含む。特定の態様において、第2の再循環工程は、水相ストリッピング溶液をその冶金学的O/Aが1〜1000である金属含有の有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5〜10のO/Aを設定して、それにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持する工程を含む。幾つかの態様において、第2の再循環工程は連続して実施される。
【0076】
水性供給物流中に低濃度でのみ存在する金属は典型的には1ppm〜1,000ppm(すなわち、1g/l)の範囲内で存在する。特定の態様において、抽出、有機再循環およびストリッピング工程を実施する総合的濃縮倍率は20〜10,000Xである。
【0077】
特定の態様において、低濃度のみで存在する金属を回収する方法は、既存の金属溶媒抽出操作の一部として実施される。その他の態様において、低濃度でのみ存在する金属を回収する方法は、典型的にはより高濃度の異なる金属(すなわち、主要金属)の抽出後に実施される。
【0078】
本発明において、抽出およびストリッピングはミキサー・セトラー、カラム、遠心分離機、静的ミキサー、反応器またはその他の適当な接触/分離装置中で実施することができる。その方法は1種または複数の抽出工程、1種または複数のストリッピング工程を含むことができ、そして不純物を除去し、そして巻き込み汚染を減少するための1種または複数の洗浄/スクラビング工程を含んでも含まなくてもよい。これらの工程は、特定の適用および/または方法の需要を満たすための過度の実験を伴わずに、当業者によりあらゆる特定の順序に容易に配列することができる。低濃度でのみ存在する金属は前記の以前に考察されたまたは当業者に知られたあらゆる方法により水相ストリッピング溶液から分離することができる。
【0079】
本発明に従う方法を実施する溶媒抽出プラントはSX回路の各部分(すなわち、抽出部分、スクラビング/洗浄部分およびストリッピング部分)について直列、修正直列、直並列(series-parallel)、修正直並列、並列または混合(interlaced)直並列操作に配列することができる。あるいはまた、抽出、スクラビングおよびストリッピング工程をバッチに基づいて実施することができる。
【0080】
本発明に従う方法の1つの態様に従うと、その方法は連続的方法である。
【0081】
本発明に従う方法の他の態様に従うと、抽出工程と再循環工程は連続的に実施され、そしてストリッピング工程はバッチ法で実施される。特定の態様において、抽出、ストリッピングおよび再循環工程はすべて連続的に実施される。
【0082】
ここで、本発明に従う方法を、本発明の1つの態様に従う方法を表すフロー図を表す図1に関連して更に詳細に説明する。図1を参照すると、金属(1)を含む供給物水溶液を場合により鉱酸(2)で酸性化し、次に抽出ミキサーに流し、そこで、それを有機相溶液と接触させ、それが供給物水溶液から金属を抽出する(抽出工程)。使用済み供給物水溶液(またはラフィネート)(3)は抽出工程を流出するかまたは第2の抽出工程(図示されていない)に流入することができる。場合により、抽出工程の前もしくは後にスクラビング工程(図示されていない)を導入することができる。次に金属(5)を添加された有機相の一部をストリッピング装置に流入させ、そこで、ストリッピング水溶液と接触させ、それが金属を有機相溶液から逆抽出する(ストリッピング工程)。有機相溶液(4)の残りの部分は連続的または部分的に再循環(recycle)/(recirculate)させることができる。ストリッピングされた有機相(6)は抽出工程のミキサーに戻るか、または、場合によるスクラビングおよび/または他の金属をストリッピングするための更なるストリッピング工程(図示されていない)に流すことができる。水相ストリッピング溶液(8)の一部は再循環され、そして水相ストリッピング溶液(7)の更なる追加物を必要に応じて添加する。ストリッピング水溶液の一部(連続的の場合)または全ストリッピング水溶液を(バッチの場合)、例えば、更なる蒸発/結晶化工程(図示されていない)により、金属回収(9)のために更に処理することができる。
【0083】
その他の態様
1. モリブデンを含む酸性水溶液からモリブデンを回収する方法であって、
a)水溶液を、ホスフィン酸を含んでなる有機相溶液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を水相から有機相に抽出し、
b)有機相を、無機化合物を含んでなりそして5〜11のpHを有する水相ストリッピング液と接触させそれによりモリブデンの少なくとも一部を有機相から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、但し無機化合物がNH4OHである時は、遊離アンモニアの濃度は0.01〜1.0Mであることとし、そして
c)モリブデンを水相ストリッピング溶液から分離しそれによりモリブデンを回収する工

を含んでなる方法。
2. 有機相溶液が更に、フェノール;芳香族エステル;脂肪族エステル;有機リン化合物;ホスフェート;酸化ホスフィン;芳香族脂肪族アルコール;脂肪族アルコール;ニトリル;ケトン;アミド;カルバメート;スルホキシド;尿素;カルボネート;オキシム;エーテル;ポリエーテル;エステル−エーテル;アミン、ホスホニウム、アンモニウム、イミダゾリウム、スルホニウムおよびピリジニウムから選択される塩並びにそれらの組み合わせ物から選択される官能基を含んでなる修飾剤を含んでなる、態様1に従う方法。
3. 修飾剤の官能基がC8〜C24アルコール、芳香族エステル、脂肪族エステル、フォスフェート、酸化ホスフィンおよびそれらの組み合わせ物から選択される、態様2に従う方法。
4. 修飾剤の官能基がトリデカノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール・ジイソブチレート、トリブチルホスフェート、トリアルキルホスフィン・オキシドおよびそれらの組み合わせ物から選択される、態様2または態様3に従う方法。
5. 工程(a)のモリブデンを含む有機相溶液の5〜100%をリサイクルし、そして有機相を、モリブデンを含む酸性水溶液と接触させ、それにより有機相中のモリブデンの濃度を増加または維持する工程を更に含んでなる、前記態様のいずれか1つに従う方法。
6. 再循環工程に供されるモリブデンを含む有機相の割合が80〜99.9%である、態様5に従う方法。
7. 再循環工程が、水相溶液を、その冶金学的O/Aが0.001〜0.20である有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5〜2.0のO/Aを設定し、それにより、均一な液滴サイズの分布をもたらしそして有機相溶液中のモリブデンの濃度を増加または維持する工程を含んでなる、態様5〜6に従う方法。
8. 再循環工程が少なくとも1回繰り返される、態様5〜7のいずれか1つに従う方法。
9. 再循環工程が連続的である、態様5〜7のいずれか1つに従う方法。
10. 再循環工程が、有機相溶液中のモリブデンの濃度が少なくとも0.3g/L〜25g/Lになるまで実施される、態様5〜9のいずれか1つに従う方法。
11. モリブデンを添加された有機相溶液の少なくとも一部を鉱酸溶液と接触させ、それにより有機相溶液からあらゆる不純物を除去する工程により実施される1種または複数のスクラビング工程を更に含んでなる、前記態様のいずれか1つに従う方法。
12. 工程(b)のモリブデンを含む水相ストリッピング溶液の5〜100%をリサイクルさせ、そして水相ストリッピング溶液を、モリブデンを含む有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含んでなる、第2の再循環工程を更に含んでなる、前記態様のいずれか1つに従う方法。
13. 第2の再循環工程にかけられる、モリブデンを含む水相ストリッピング溶液の割合が80〜99.9%である、態様12に従う方法。
14. 第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液を、その冶金学的O/Aが1〜1000であるモリブデン含有の有機相溶液と接して流しそしてミキサー中に0.5〜10のO/Aを設定して、それにより、均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含んでなる、態様12〜13に従う方法。
15. 第2の再循環工程が少なくとも1回繰り返される、態様12〜14のいずれか1つに従う方法。
16. 第2の再循環工程が連続的である、態様12〜14のいずれか1つに従う方法。17. 第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度が少なくとも5.0g/L〜200g/Lになるまで実施される、態様12〜16のいずれか1つに従う方法。
18. 水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度が少なくとも30g/L〜80g/Lである、態様17に従う方法。
19. 抽出工程に流入するモリブデン濃度がストリッピング工程を流出するモリブデン濃度と定常状態にある、前記態様のいずれか1つに従う方法。
20. モリブデン含有酸性水溶液が、銅抽出法からのラフィネート;酸プラント/鉱石溶融操作からのスクラビング液;溶媒抽出操作、濾過ケーキ、酸化モリブデン鉱石、煙塵の処理、使用済み触媒の再処理および潤滑油廃棄物から選択される原料から得られる浸出液;並びにそれらの組み合わせ物から選択される、前記態様のいずれか1つに従う方法。21. ホスフィン酸が
【0084】
【化2】

【0085】
[式中、RとRは個々に、場合により置換されていてもよいC1-C30 アルキル、C3-C30 シクロアルキル、C3-C30 アルコキシアルキル、C4-C30 アルキルシクロ、C7-C30 アルキルアリール、C7-C30 アラルキルおよびC8-C30 シクロアルキルアリール基から選択される]
により表される化合物から選択される、前記態様のいずれか1つに従う方法。
22. RとRが個々に、C-C12 アルキルから選択される、態様21に従う方法。
23. ホスフィン酸が、ジメチルホスフィン酸; ジエチルホスフィン酸; ジ-n-プロピルホスフィン酸; ジイソプロピルホスフィン酸; ジ-n-ブチルホスフィン酸; ジイソブチルホスフィン酸; ジ-n-ペンチルホスフィン酸; ジ-n-ヘキシルホスフィン酸; ジ-n-ヘプチルホスフィン酸; ジ-n-オクチルホスフィン酸; ジ-n-ノニルホスフィン酸; ジ-n-デシルホスフィン酸; ジ-n-ドデシルホスフィン酸; ジ-n-テトラデシルホスフィン酸; ジ-n-ヘキサデシルホスフィン酸; ジ-n-エイコシルホスフィン酸;ジ-ノルボルニルホスフィン酸; ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)シクロヘキシルホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)オクチルホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ホスフィン酸; (1,1,3,3-テトラメチルブチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1-メチル-1-エチルペンチル)ホスフィン酸; (1-メチル-1-エチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; ジシクロペンチルホスフィン酸;ジシクロヘキシルホスフィン酸;ジシクロオクチルホスフィン酸; シクロヘキシル, n-ブチルホスフィン酸; シクロペンチル, n-ドデシルホスフィン酸; シクロオクチルエーテルホスフィン酸; 2,4,6-トリイソプロピル-1,3,5-ジオキソホスホリナン, 5-ヒドロキシ, 5-オキシドホスフィン酸; シクロヘキシル, フェニル ホスフィン酸;シクロペンチル-p-トリルホスフィン酸;シクロオクチル -p-クロロフェニルホスフィン酸, ジフェニルホスフィン酸;ジ-o-トリルホスフィン酸; ジ-m-トリルホスフィン酸; ジ-p-トリルホスフィン酸; ビス(2,3-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,4-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,5-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(2,6-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(3,4-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ビス(3,5-ジメチルフェニル) ホスフィン酸; ジ-(p-エチルフェニル) ホスフィン酸; ジ-(p-オクチルフェニル) ホスフィン酸;エチルフェニル, n-ブチルフェニルホスフィン酸; n-オクチルフェニル,
n-ヘキサデシルフェニルホスフィン酸; エチル-o-トリルホスフィン酸; n-オクチル-p-トリルホスフィン酸; ビス(o-クロロフェニル) ホスフィン酸; ビス(m-クロロフェニルホスフィン酸; ビス(p-クロロフェニル) ホスフィン酸; メチル-o-クロロフェニルホスフィン酸; n-プロピル-p-クロロフェニルホスフィン酸, n-ドデシル-p-クロロフェニルホスフィン酸; ジベンジルホスフィン酸; メチル-ナフチルホスフィン酸; ジアリルホスフィン
酸; シクロヘキシル, 1-ヒドロキシシクロヘキシルホスフィン酸; ビス(2-メチル-1-ヒドロキシペンチル) ホスフィン酸; ベンジル, アルファヒドロキシベンジルホスフィン酸; o-クロロベンジル, アルファ-ヒドロキシ-o-クロロベンジルホスフィン酸; p-クロロベンジル, アルファ-ヒドロキシ-p-クロロベンジルホスフィン酸; フェニル, アルファ-メチルベンジルホスフィン酸; シクロペンチル, 1-ヒドロキシシクロペンチルホスフィン酸; アルファ-メチルベンジル, アルファ-ヒドロキシ-アルファ-メチルベンジルホスフィン酸; 1-メチルペンチル, 1-ヒドロキシ-1-メチルペンチルホスフィン酸; n-オクチル, アルファヒドロキシベンジルホスフィン酸; (1-ヒドロキシ-1メチルエチル)イソプロピルホスフィン酸およびそれらの組み合わせ物から選択される、態様21または態様22に従う方法。
24. ホスフィン酸がビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ホスフィン酸; (1,1,3,3-テトラメチルブチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸; (2,4,4-トリメチルペンチル)(1-メチル-1-エチルペンチル)ホスフィ酸;(1-メチル-1-エチルペンチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸およびそれらの組み合わせ物から選択される、態様21〜23のいずれか1つに従う方法。
25. 有機相中のホスフィン酸の濃度が0.01モル/L〜1.5モル/Lである、前記態様のいずれかに従う方法。
26. ホスフィン酸の濃度が0.005モル/L〜0.8モル/Lである、態様25に従う方法。
27. ホスフィン酸の濃度が0.2モル/L〜0.6モル/Lである、態様25または態様26に従う方法。
28. 水相ストリッピング溶液の無機化合物がアンモニア、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩、水酸化ナトリウム、ナトリウム塩、モリブデンおよびそれらの組み合わせ物:から選択される、前記態様のいずれかに従う方法。
29. アンモニウムおよびナトリウム塩が炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物およびそれらの組み合わせ物:から選択される、態様28に従う方法。
30. 水相ストリッピング溶液の無機化合物が、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせ物から選択されるアンモニウム塩と混合された水酸化アンモニウムである、態様28または態様29に従う方法。
31. 分離工程(c)が蒸発、酸性化、電解採取、結晶化、有機溶媒添加、沈殿およびそれらの組み合わせ物から選択される方法により実施される、前記態様のいずれか1つに従う方法。
32. 分離工程がインサイチューの沈殿により実施される、態様31に従う方法。
33. 第2の金属をストリッピングするために特定の化合物を含んでなる第2の水相ストリッピング溶液を使用して、第2の金属を有機相溶液からストリッピングする工程を更に含んでなる、前記態様のいずれかに従う方法。
34. 第2の金属が主要金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、メタロイド、希土類金属、ランタニド、アクチニド、半金属および半導体から選択される、態様31に従う方法。
35. 金属がウランであり、そして第2の水相ストリッピング溶液中の化合物が1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、蓚酸、リン酸およびそれらの組み合わせ物:から選択される、態様33または態様34に従う方法。
36. ストリッピングされた有機相溶液を抽出工程(a)に再循環する工程を更に含んでなる、前記態様のいずれかに従う方法。
37. 金属が低濃度で水溶液中に存在する水溶液から金属を回収する溶媒抽出法であって、
a)水溶液を有機相溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を水相から抽出し、そして金属含有の有機相溶液の50〜100%を再循環させ、そして有機相を金属含有水溶液と接触させ、それにより有機相中の金属の濃度を増加または維持し、
b)金属含有有機相溶液を、金属を逆抽出する化合物を含んでなる水相ストリッピング溶
液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を有機相溶液から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、そして
c)金属を水相ストリッピング溶液から分離し、それにより金属を回収する工程
を含んでなる方法。
38. 再循環工程が、水相溶液をその冶金学的O/Aが0.001〜0.20である有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5〜2.0のO/Aを設定しそれにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして有機相溶液中の金属濃度を増加または維持する工程、を含んでなる、態様37に従う方法。
39. 金属含有水相ストリッピング溶液の5〜100%を再循環させ、そして水相ストリッピング溶液を金属含有有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持する工程を含んでなる第2の再循環工程を更に含んでなる、態様37または態様38に従う方法。
40. 第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液をその冶金学的O/Aが1〜1000である金属含有の有機相溶液と接触させて流し、そしてミキサー中に0.5〜10のO/Aを設定しそれにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持させる工程、を含んでなる、態様39に従う方法。
41.水溶液中の金属の濃度が1ppm〜1,000ppmである、態様37〜40のいずれか1つに従う方法。
42. 工程(a)と(b)からの合計の濃縮係数が20〜10,000である、態様37〜41のいずれか1つに従う方法。
43. その方法が主要金属の抽出後に実施される、態様37〜42のいずれか1つに従う方法。
44. 第2の再循環工程が連続的である、態様39〜43のいずれか1つに従う方法。45. 金属を含む有機相の少なくとも一部を鉱酸溶液と接触させ、それにより有機相溶液からあらゆる不純物を除去する工程により実施される、1種または複数のスクラビング工程を更に含んでなる、態様37〜44のいずれか1つに従う方法。
46. 分離工程(c)が蒸発、酸性化、電解採取、結晶化、有機溶媒添加、沈殿およびそれらの組み合わせ物:から選択される方法により実施される、態様37〜45いずれか1つに従う方法。
47. 金属が主要金属、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、メタロイド、希土類金属、ランタニド、アクチニド、半金属および半導体:から選択される、態様37〜46のいずれか1つに従う方法。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を更に理解するように当業者を補助するために提供される。これらの実施例は説明的目的のためのみを意図され、本発明の請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0087】
有機相として、ORFORM(登録商標)-SX 7 溶媒に溶解された0.1 M のホスフィン酸の試薬、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)-ホスフィン酸を使用する。本実施例に使用される水相は1.6 g/lの Cu、4 g/lの Fe、6.5 g/lの Al、25 ppm のCo および 25 ppm のMoを含む合成水溶液であり、そのpHは硫酸を使用して1.06に調整される。合成水溶液を生成するために使用されるすべての金属は硫酸塩である。等容量の有機相と無機相を30分間磁石撹拌し、両相をInductive Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy (ICP-OES)(電磁結合プラスマ発光分光分析)のためにサンプルを採取する。水相のpHは硫酸を使用して0.95に調整され、その二相系を30分間磁石撹拌し、ICP-OES分析のためのサンプルを採取する。異なるpH値(pH = 0.65, pH= 0.43および pH= 0.03)で手順を繰り返す。結果を使用して、表1に示す有機相中に抽出される金属の百分率を計算し、モリブデンがホスフィン酸により優先的に抽出されることを示す。モリブデン抽出はpH低下とともにごくわず
かに減少し、それはモリブデンが非常に酸性の溶媒から抽出され得ることを示す。有機相中に抽出されるアルミニウムは0.5 ppm未満である。鉄の抽出は最少であり、pHの減少に従って減少する(表1)。
【0088】
【表1】

【実施例2】
【0089】
1.5%の修飾剤を含む、および修飾剤を含まないORFORM(登録商標) SX-7中のホスフィン酸試薬を、4.8 g/l Mo、2.7 g/l Fe、6.3 g/l Al、0.6 g/l Cuを含む供給物水溶液とともに1:2の 冶金学的O/A 比率で、そしてpH =0.4において添加する。その二相系を1時間磁石撹拌し、次に相を分離し、相分離紙(有機相)および通常の濾紙(水相)を通して濾過し、二相をICP-OESにより分析する。次に有機相をストリッピング実験に使用する。ストリッピング溶液は0.5 M のNH4OH/0.25 Mの (NH4)2CO3を含む水溶液よりなる。水相分析からの有機物添加量は有機相中に約5 g/l Moを示す。
【0090】
表2は抽出後の有機相上のモリブデン添加量を示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2における結果は、修飾剤の添加はモリブデン添加量をごく僅かに減少するが、その添加は相遊離性を著しく高めることを示す。ストリッピング溶液は0.5MのNH4OH/0.25 M の(NH4)2CO3である。抽出例からの有機相とストリッピング水溶液を各2.5分間を2回、渦ミキサーを使用して混合し、相遊離動態をモニターする。ストリッピング実験から得た結果は表3に示される。水相部分を注意して分離し、通常の濾紙を通して濾過し、ICP-OESにより分析する。結果を使用して、ストリッピングされたモリブデンの百分率とストリッピング相中のモリブデンの濃度を計算する。
【0093】
【表3】

【0094】
表3中の結果は、修飾剤が使用されると相遊離時間と相発現が改善することを示す。従って、修飾剤の添加は二相の発現を改善しながら、有機相中へのモリブデンの抽出を僅かに減少する。
【実施例3】
【0095】
CuのSXプラントからのラフィネートは硫酸でpH = 0.43に調整され、冶金学的O/A=1でORFORM(登録商標) SX-7中の0.1 Mのホスフィン酸試薬と接触させる。サンプルは5.7 g/l Al、0.65 g/l Cu、4.7 g/l Fe、63 ppm Mo、9 ppm V、33 ppm U、10.3 ppm Tiおよび表4に示されるその他の金属を含む。この二相系を30分間磁石撹拌し、相を分離し、有機相をICP-OES分析のために採取する。有機相を磁石撹拌下で平衡にされた同一冶金学的O/A 比率 (1:1)で新鮮な水溶液と接触させ、有機相をICP-OES分析のために採取する。この手順を繰り返し、有機サンプルをICP-OESにより分析する。結果は表5に示され、モリブデンが有機相中に濃縮されることを示す。ウランもまた抽出され、同様な傾向を辿る。他方、有機相中の鉄の濃度は抽出期間中に有意に変わらなかった。従って、抽出剤は所望の金属(標的金属)に対して選択的である。
【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【実施例4】
【0098】
ORFORM(登録商標) SX-7中に0.1 Mのホスフィン酸試薬を含む有機溶液を、0.5の冶金学的O/A 比率における6.3 g/l Al、0.6 g/l Cu、2.7 g/l Fe および 4.9 g/l Moを含む合成ラフィネートと接触させる。この二相系を30分間磁石撹拌し、有機相を更にストリッピング工程に使用する。抽出後に得られる有機相を45の冶金学的O/A 比率で3 M のNH4OH溶液と接触させる。有機相と水相の接触時に、溶液から白色沈殿物が落下開始する。二相系を10分間磁石撹拌し、固形物を濾取し、X-線回折により分析する。分析は、沈殿物がアンモニウム・ヘプタモリブデートであることを示す。
【実施例5】
【0099】
有機相中のモリブデンを抽出し、濃縮するために、1 %と 100 %の有機再循環物のミックスボックスのO/A比率を使用して連続的リグ(rig)を実施する。水相は、1.13のpH をもつアンモニウム・モリブデートを添加されたCu のSX回路からのラフィネートである。水相の原子吸収(“AA”)分析は、以下の結果: 0.24 g/l Cu、93 ppm Mo、0.21 g/l Feを与える。水溶液のEMF は502 mVである。有機相はORFORM(登録商標) SX-12中10 容量 % のホスフィン酸試薬よりなる。連続的リグ配置を40 時間走行させ、その後、有機相をAAにより分析する。結果は、有機相中3.88 g/l Mo およびラフィネート中43 ppm Mo を示す。従って、実施例は、モリブデンが低濃度の水性供給物原料から有効に回収され、抽出工程において40倍を超えて濃縮されることができる、ことを示す。
【0100】
添加有機物からモリブデンをストリッピングするための28% NH4OH (O/A=1)の使用はエマルション形成をもたらした。15% H2SO4(O/A=1)を使用することにより、56 ppm のMo が有機相からストリッピングされる。これは、硫酸がモリブデンをストリッピングする有効な試薬ではないことを示す。
【実施例6】
【0101】
モリブデンを抽出するために、酸プラント流出液(スクラビング液)をホスフィン酸の試薬を含む有機相と接触させる。この接触が準安定なエマルションをもたらす。次にこの同一の水性供給物を、Cuの SX回路からのラフィネートで希釈し(6部のラフィネートで1部の溶鉱炉のスクラビング液)、そして溶液を抽出する。AAにより測定される希釈後のモリブデン濃度は21 ppmである。ORFORM(登録商標) SX-12中にホスフィン酸試薬を含む有機相を、冶金学的O/A=1.25における希釈された溶鉱炉のスクラビング液と接触され、3分間平衡化し、水相をAAにより分析する。水相を排水し、有機相を新鮮な水性供給物溶液と再接触させ、水相を分析する。この手順は多数の接触に対して使用される。希釈された溶鉱炉のスクラビング液は複数の接触後でも有機相との接触中にエマルション形成を示さない。表6に示されるAA分析は、モリブデンが低濃度の供給物(21 ppm)からでも抽出されることを示す。
【0102】
【表6】

【0103】
本実施例はモリブデンが希釈供給物から有効に濃縮されることを示し、供給物の希釈が時々必要であるかも知れない。
【実施例7】
【0104】
134 ppmの最終Mo濃度までアンモニウム・モリブデートを添加された実際の銅ラフィネート溶液とORFORM(登録商標) SX-12中10 容量 %のホスフィン酸試薬を含む有機相を使用して、連続リグ抽出系を完成する。使用されたラフィネート溶液中でICP-OESにより分析された金属は表7に示される。水相のpHは硫酸を使用することにより0.45に調整される。
【0105】
【表7】

【0106】
抽出工程は、1.12 g/lの有機相中モリブデンの濃度が達成される(8.4X 濃縮)まで、100 %有機相再循環物を使用して実施される。
【0107】
一旦有機相が1.12 g/lの Mo に添加されると、有機相からの側部流(15 ml/分)がストリッピング工程に移動される。水相ストリッピング溶液は0.52 M (NH4)2CO3 と 3.13 N NH4OH よりなり、150:1の冶金学的O/A 比率に対応する流量で添加される。系内で水性再循環物が利用されて、10:1のミックスボックスのO/A を達成する。水性ストリッピング溶液中のモリブデンは34.5 g/lに濃縮される。Mo ストリッピング後の無用の有機相は時々サンプル採取され、ICP-OES により分析される(表8)。
【0108】
【表8】

【0109】
実施例は、供給物の酸性化が、選択的モリブデンの抽出、およびAl、Fe、Cu、Mg、MnよりもMoに高い選択性、を許すことを示す。それはまた、134 ppmの供給物から34.5g/lの総Mo濃度をもたらす、希釈供給物水溶液からの高いモリブデンの移動をも示し、それにより257の濃縮係数を達成することを示す。結果はまた、モリブデンとウランとの間の分離を達成することができることを示す。
【0110】
ストリッピングの6時間後に、有機相をアンモニウム含量につき分析する。連続的リグ抽出系からストリッピングされた有機相のサンプルを2回、冶金学的O/A=0.25で1N H2SO4と接触させ、平衡にさせる。水相を相分離させ、溶液が塩基性(pH=8)になるまで水酸化ナトリウムを水相に添加する。サンプルをキールダールフラスコを使用して蒸留し、50 mL の0.1 N HClを使用してあらゆる蒸留アンモニアを回収する。指示薬としてメチル−オレンジを使用して、塩酸を0.1 N NaOHで滴定する。蒸留後に、50 mL の 0.1 N NaOH を使用して塩酸を滴定し、有機相がアンモニウム塩を全く含まなかったことを示す。
【実施例8】
【0111】
ORFORM(登録商標) SX-12中0.1 Mのホスフィン酸試薬を含む有機相を冶金学的O/A 比率 = 1で0.42のpHをもつ、4.13 g/lの Mo、0.48 g/lの Cuを含む供給物水溶液と接触さ
せる。2相を平衡にし、分離させ、水相を廃棄し、有機相を水で洗浄する。次に生成された洗浄有機相を冶金学的O/A =2.5で6 g/lの NH3/ 15 g/l の炭酸塩を含む水性ストリッピング溶液と接触させる。2相を平衡にし、分離させ、ストリッピングされた有機相を他の抽出/ストリッピングサイクルで使用されるように水で洗浄する。各サンプルからの水性ストリッピング溶液を再使用する。ストリッピング溶液をAA により分析し、結果はMo が15.46 g/lに濃縮されていることを示す。
【0112】
最後のストリッピング溶液を蒸留して、101 g/lのMo濃度までアンモニアと水を除去する。次にストリッピング溶液のアリコートを以後の沈殿/結晶化の実施例に使用する。
【0113】
6ミリリッターを10℃に18時間冷却し、アンモニウム・モリブデート結晶化をもたらす。
【0114】
他の2 mLのその溶液(pH=7)を硫酸でpH 4.0に酸性化し、モリブデンを含むことを確証する白色沈殿物が形成する。
【0115】
2 mLの溶液アリコートを白色沈殿物が形成されるまで試薬アルコ−ル(95% エタノールと 5% メタノール)で処理する。白色沈殿物の X-線回折分析がアンモニウム・ヘプタモリブデートとアンモニウム・オクタモリブデートの存在を示す。
【実施例9】
【0116】
ORFORM(登録商標) SX-12中0.3Mのホスフィン酸試薬にCuの SXラフィネートを添加する。添加された有機相の組成は表9に示される。次に添加有機相を、ストリッピング工程に送る前に、1:1の冶金学的O/A 比率で100 g/lの H2SO4を含む水溶液でスクラビングする。スクラビング後に水溶液を分析し、表9に示される結果は、最低量のMo (7.5 ppm) がスクラビングされるが、鉄はスクラビング溶液中にほとんど完全に抽出されることを示す。
【0117】
【表9】

【実施例10】
【0118】
3 g/lの Mo を添加されたORFORM(登録商標) SX-12中40 容量% のホスフィン酸試薬をO/A=1で以下の濃度: 0.6 mM、50 mM、0.15 M、1Mおよび 3M の水酸化アンモニウム水溶液と接触させる。サンプルを15分間磁石撹拌し、相遊離を許す。観察事項は表10に要約される。
【0119】
【表10】

【0120】
遊離アンモニアの濃度が1.2 M 未満である時は、相遊離時間は短い。遊離アンモニアの高い濃度(>1M) は非常に長い相遊離時間と第3相の形成をもたらす。 [NH3]=0.0087 M は非常に高いストリッピング効率の割合を与える。従って、遊離アンモニアの濃度が1M未満である時は、良好な相遊離性と高いストリッピング効率を得ることができる。
【実施例11】
【0121】
2.7 g/lの Mo に添加されたORFORM(登録商標) SX-12 中40 容量% のホスフィン酸試薬をO/A=1でH2SO4 を使用してpH=6.37 に調整された3M NH4OH と接触させる。サンプルを15分間磁石撹拌し、相遊離させる。実施例はまた40℃でも実施される。相遊離はRT と 40℃ (< 3 分)の両方で短い。
【実施例12】
【0122】
ORFORM(登録商標) SX-12 中20 容量% のホスフィン酸試薬と1.6 g/lの Moを含む有機溶液をO/A=1で0.8M のリン酸アンモニウムを含む水相ストリッピング溶液と接触させる。水相のpH はリン酸の添加により6.34 ([NH3]遊離=0.9 mM) に調整される。サンプルを60 分間磁石撹拌し、相をICP-OESにより分析する。相遊離時間は1分未満である。ストリッピング効率は99.3%である。
【実施例13】
【0123】
ORFORM(登録商標) SX-12中40 容量%のホスフィン酸試薬と2.8 g/lの Moを含む有機相溶液のサンプルをO/A=1で、それぞれ0.5 M NaOH、0.5 M NaOH/10 gpl NaClおよび 0.5 M NaOH/10 gpl Na2CO3を含む水相ストリッピング溶液と接触させる。サンプルを15分間磁石撹拌し、ICP-OESにより相を分析する。相遊離時間はすべての場合に短い。ストリッピング効率は99%を超える(表11)。
【0124】
【表11】

【実施例14】
【0125】
2.77 gpl Mo、0.032 gpl Fe、14.3 gpl Al、1.10 gpl Co、0.18 gpl Ni を含む水溶液を、硫酸を使用してpH=0.9 に調整する。Exxol(登録商標) D80 中40 容量% のホスフィン酸試薬を含む有機相のサンプルをO/A=1で前記水溶液と接触させ、O/A=1 (20 mL 有機相と 20 mL 水相)、40℃で6重量% のアンモニア水および0.36 Mの NH4OHそれぞれとともに磁石撹拌する。サンプルを40℃で1晩磁石撹拌する。6重量% のアンモニア水を含むサンプルにおいて、接触工程後に、水サンプルの容量は15 mL に減少し、有機相は25 mLに増加する。カールフィッシャー滴定による、接触後の有機相の分析が、0.36 M NH4OH を含むサンプルに対する有機相中の0.76 % のみの水に比較して、有機相中に20% の水を示す(表12)。
【0126】
【表12】

【0127】
従って、接触工程後の有機相中の20%の水の存在 ([NH3]遊離=2.6 Mの時) はこれらのストリッピング条件を非実際的にさせる。更に、相遊離時間は0.36 M NH4OH に対して122 秒、そして6 重量% NH4OH に対して390 秒であり、良好な相遊離性のためには、より低い遊離アンモニア濃度が必要であることを示す。
【実施例15】
【0128】
38 ppm Uを含むCuの SX操作からの水性ラフィネートを、O/A=0.33でORFORM(登録商標) SX-12中0.1 M のホスフィン酸試薬を含む有機相溶液と接触させ、1時間磁石撹拌する。有機相を、相遊離紙を通して濾過し、ストリッピング工程に使用する。添加有機相サンプルをO/A=1で、表13に示した水相ストリッピング溶液と接触させる。FeSO4 を使用するストリッピング実施例を窒素ブランケット下で実施する。水性サンプルを、ICP-OES を使用して、接触の前後に分析し、結果をストリッピング効率計算に使用する。
【0129】
【表13】

【実施例16】
【0130】
ORFORM(登録商標) SX-7 中5-ノニルサリチルアルドキシムを含む有機相溶液を、pH=1
を有し、26 ppm のモリブデンを含む水溶液と接触させる。30 分後、有機相を分離し、再度新鮮な水溶液と接触させる。有機相をICP-OESによりモリブデン含量につき分析する
。結果は表14に示され、第2の接触でモリブデンの濃度が有機相中に増加することを示す。
【0131】
【表14】

【実施例17】
【0132】
5.4 gplの Cu を添加されたORFORM(登録商標) SX-11中に50 gplの 5-ノニルサリチルアルドキシムを含む有機相溶液を、O/A=1において、180 gplの H2SO4 を含む水性ストリッピング溶液と接触させる。水相ストリッピング溶液を新鮮に添加された有機相と再接触させる。手順を更に5回繰り返す。接触工程後、水相ストリッピング溶液はICP-OES により分析され、表15に示される。結果は、Cu が水相ストリッピング溶液を再循環することにより水相中で濃縮されることができることを示す。
【0133】
【表15】

【0134】
様々な特許および/または科学文献の参考文献が本出願書全体に言及された。それらの全体の、これらの刊行物の開示物は、あたかもこのような開示物が本発明と矛盾しない程度に、そして参照によるこのような引用が許されるすべての管轄に対して、本明細書に記載されているように、参照により本明細書に引用されたこととする。以上の説明および実施例を考慮して、当業者は過度な実験を伴わずに、請求される開示物を実行することができると考えられる。
【0135】
以上の説明は本教示の基礎的な新規の特徴物を示し、説明しそして指摘したが、図示され、説明された抽出系および方法の形態の様々な省略、置き換えおよび変更が、本教示の範囲から逸脱せずに、当業者により実施されることができることが理解されると考えられる。その結果、本教示の範囲は以上の説明に限定されるべきではなく、添付の請求項により定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを含む酸性水溶液からモリブデンを回収する方法であって、
a)水溶液を、ホスフィン酸を含んでなる有機相溶液と接触させ、それによりモリブデンの少なくとも一部を水相から有機相に抽出し、
b)有機相を、無機化合物を含んでなりそして5〜11のpHを有する水相ストリッピング液と接触させそれによりモリブデンの少なくとも一部を有機相から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、但し、無機化合物がNH4OHである時は、遊離アンモニアの濃度は0.01〜1.0Mであることとし、そして
c)モリブデンを水相ストリッピング溶液から分離しそれによりモリブデンを回収する工程
を含んでなる方法。
【請求項2】
修飾剤の官能基がC8-C24アルコール、芳香族エステル、脂肪族エステル、リン酸エステル、酸化ホスフィンおよびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(a)のモリブデンを含む有機相溶液の5〜100%を再循環し、そして有機相を、モリブデンを含む酸性水溶液と接触させ、それにより有機相中のモリブデンの濃度を増加または維持する工程を更に含んでなる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
再循環工程が、水相溶液を、その冶金学的O/Aが0.001 〜 0.20である有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5 〜 2.0のO/Aを設定し、それにより均一な液滴サイズの分布をもたらしそして有機相溶液中のモリブデンの濃度を増加または維持する工程を含んでなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
再循環工程が、有機相溶液中のモリブデンの濃度が少なくとも0.3 g/L 〜 25 g/Lになるまで実施される、請求項3〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
モリブデンを添加された有機相溶液の少なくとも一部を鉱酸溶液と接触させ、それにより有機相溶液からあらゆる不純物を除去する工程により実施される1種または複数のスクラビング工程を更に含んでなる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)のモリブデンを含む水相ストリッピング溶液の5〜100%を再循環させ、そして水相ストリッピング溶液を、モリブデンを含む有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含んでなる、第2の再循環工程を更に含んでなる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液をその冶金学的O/Aが1 〜 1000であるモリブデン含有有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5 〜 10のO/Aを設定して、それにより均一な液滴サイズ分布をもたらしそして水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度を増加または維持する工程を含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液中のモリブデン濃度が少なくとも5.0 g/L 〜 200 g/Lになるまで実施される、請求項7〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抽出工程に流入するモリブデンの濃度がストリッピング工程を流出するモリブデン濃度と定常状態にある、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
モリブデン含有酸性水溶液が、銅抽出法からのラフィネート;酸プラント/鉱石溶融操作からのスクラビング液;溶媒抽出操作、濾過ケーキ、酸化モリブデン鉱石、煙塵の処理
、使用済み触媒の再処理および潤滑油廃棄物から選択される原料から得られる浸出液;並びにそれらの組み合わせ物から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ホスフィン酸が
【化1】

[式中、RとRは個々に、場合により置換されていてもよいC1-C30 アルキル、C3-C30 シクロアルキル、C3-C30 アルコキシアルキル、C4-C30 アルキルシクロ、C7-C30 アルキルアリール、C7-C30 アラルキルおよびC8-C30 シクロアルキルアリール基である]
により表される化合物から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
有機相中のホスフィン酸の濃度が0.01 mol/L 〜 1.5 mol/Lである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
水相ストリッピング溶液の無機化合物がアンモニア、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩、水酸化ナトリウム、ナトリウム塩、モリブデンおよびそれらの組み合わせ物から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
アンモニウムおよびナトリウム塩が炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物およびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
分離工程(c)が蒸発、酸性化、電解採取、結晶化、有機溶媒添加、沈殿およびそれらの組み合わせ物から選択される方法により実施される、前記請求項のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項17】
第2の金属をストリッピングするために特定の化合物を含んでなる第2の水相ストリッピング溶液を使用して、第2の金属を有機相溶液からストリッピングする工程を更に含んでなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
金属がウランであり、そして第2の水相ストリッピング溶液中の化合物が1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、蓚酸、リン酸およびそれらの組み合わせ物から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ストリッピングされた有機相溶液を抽出工程(a)に再循環する工程を更に含んでなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
金属が低濃度で水溶液中に存在する水溶液から金属を回収する溶媒抽出法であって、
a)水溶液を有機相溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を水相から抽出しそして金属含有の有機相溶液の50〜100 %を再循環させ、そして有機相を金属含有水溶液と接触させ、それにより有機相中の金属の濃度を増加または維持し、
b)金属含有有機相溶液を、金属を逆抽出する化合物を含んでなる水相ストリッピング溶液と接触させ、それにより金属の少なくとも一部を有機相溶液から水相ストリッピング溶液にストリッピングさせ、そして
c)金属を水相ストリッピング溶液から分離し、それにより金属を回収する工程
を含んでなる方法。
【請求項21】
再循環工程が、水相溶液をその冶金学的O/Aが0.001 〜 0.20である有機相溶液と接して流し、そしてミキサー中に0.5 〜 2.0のO/Aを設定しそれにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして有機相溶液中の金属濃度を増加または維持する工程、を含んでなる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
金属含有水相ストリッピング溶液の5〜100 %を再循環させ、そして水相ストリッピング溶液を金属含有の有機相溶液と接触させ、それにより水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持する工程を含んでなる第2の再循環工程を更に含んでなる、請求項20または請求項21記載の方法。
【請求項23】
第2の再循環工程が、水相ストリッピング溶液をその冶金学的O/Aが1 〜 1000である金属含有の有機相溶液と接触して流し、そしてミキサー中に0.5 〜 10のO/Aを設定しそれにより均一な液滴サイズ分布をもたらし、そして水相ストリッピング溶液中の金属濃度を増加または維持させる工程、を含んでなる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
工程(a)と(b)からの合計の濃縮倍率が20〜10,000である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
その方法が主要金属の抽出後に実施される、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532989(P2012−532989A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519658(P2012−519658)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/041032
【国際公開番号】WO2011/005736
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】