説明

水溶液中でのアルキンの環状三量化法

【課題】水溶性遷移金属触媒を使用する水溶液中での〔2+2+2〕環状三量化反応の改良法を提供する。
【解決手段】合成できる化合物は下記の通りである。
一般式:


〔式中,R1はHまたは−CH2OHからなる群から選ばれ、R2は−CH2OH,−COCH3,−CO2CH3,(CH2)2OH,−CH2NH(CH3),−C(CH3)2OHまたは−CH2N(CH3)2からなる群から選ばれる〕を有する、置換芳香族化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成化学の分野に関する。とりわけ本発明は水溶液中で〔2+2+2〕環状三量化反応を行なう新規方法を開示するものである。最も好ましくは、本発明は、アルキンの〔2+2+2〕環状三量化により置換芳香族化合物をつくる方法を包含する。また本発明には水溶液中で〔2+2+2〕環状三量化反応を触媒できる新規水溶性遷移金属触媒が含まれる。
【0002】
発明の背景
多くの重要な医薬品化合物は、キラルな置換基が付加したアキラルな芳香族基を含んでいる。芳香族環系(ベンゼン類、ナフタレン類など)を含む生成物を合成する最も強力な方法の一つは、シクロペンタジエニルコバルト(CpCo)遷移金属で媒介される第一、第二および第三の反応体アルキンの〔2+2+2〕付加環化(本明細書中では、アルキンの「環状三量化」と呼ぶ)である。
【0003】
Vollhardtは、その多くの生物学的に活性な化合物の流麗な合成法においてこの反応を使用した(Vollhardt(1984)Angew.Chem.国際版、英文、23:539、およびその中の引用文献)。遷移金属で媒介される〔2+2+2〕環状三量化はアルキン反応体に限らないこと、およびアルキンおよびアルケン反応体を組み合わせることにより非芳香族6員環生成物を合成しうることに注目しなければならない。更にまた、アルキンとニトリルの環状三量化により複素環式芳香環系、例えばピリジン類、を合成することができる。
【0004】
従ってアルキン類から芳香族化合物への環状三量化は合成化学の領域において根本的な重要性をもつものであり、この反応を実施する方法の開発に多大の努力が注がれてきた。(Vollhardt(1984)Angew.Chem.国際版、英文、23:539およびその中の引用文献;Collman等(1987)Principles andApplications of Organotransition Metal Chemistry,University ScienceBooks:Mill Valley,CA,pp.870−879;Schore(1988)Chem.Rev.88:1081参照)。
【0005】
アセチレンからベンゼンへの熱的環状三量化は最初1866年にBerthelotにより報告された(Berthelot(1866)C.R.Acad.Sci.62:905)。この反応は高温度(400℃)を必要とし、混合生成物を与えた。1949年に、Reppe等は遷移金属により媒介されるこの転換反応の改良法を発表したが、その方法においてはニッケルが触媒として用いられていた。しかし、この反応の主要生成物はシクロオクタテトラエンであり、ベンゼンではなかった(Reppe等(1948)Justus Liebigs Ann.Chem.560:1)。現在数種の遷移金属が、アルキンから芳香族化合物への〔2+2+2〕環状三量化における活性な触媒として認められており、その若干は以下で述べる。
【0006】
〔2+2+2〕環状三量化を行なうために、Ziegler型触媒、例えばTiCl4/AlEt3を使用する多くの研究が考えられてきた。これらの反応は不活性溶媒、例えばベンゼン、または無水エタノール中で還流温度において行なわれる。一般に、置換基としてはアルキルまたはフェニル基のみが許容され、これらの反応からは、重合体副産物を生ずるのが普通である。(Parshall(1980)Homogeneous Catalysis;ch.11,Wiley:New York;Franzus等、(1959)J.Am.Chem.Soc.81:1514;Meriwether等(1961)J.Org.Chem.26:5155−5163;Lutz(1961)J.Am.Chem.Soc.83:2551;Lachmann等(1987)J.Molecular Catalysis 42:151;Du Plessis等(1991)J.Molecular Catalysis 64:269)。更に、Ziegler型触媒は水性条件では安定に存在しないものである。
【0007】
ロジウム触媒の中には例えば触媒1a−cおよび2a−cのようにアルキンを環状三量化する能力を示すものがある。(例えば、Collman等(1968)Inorg.Chem.:1298;Wakatsuki and Yamazaki(1974)J.Organomet.Chem.50:393;Cash等(1973)J.Organomet.Chem.50:277;Borrini等(1985)J.Molecular Catalysis 30:181参照。また、Wilkinson触媒〔(PPh3RhCl)〕の考察については、Grigg等(1988)J.Chem.Soc.Perkin Trans.I 1357−1364参照)。これら反応は、無水溶媒、例えば無水エタノール中で行なわれ、触媒的に不活性な多くの金属錯体を生じ、その結果触媒回転率が低くなる。更に、ロジウムは大規模な合成用に向けて検討するには余りにも高価すぎる。
【0008】
【化1】

【0009】
上記の通り、アルキンの環状三量化におけるニッケル触媒の使用は、最初1948年に探究され、その結果大部分はシクロオクタテトラエン形成に終った。(Reppe等(1948)Justus Liebigs Ann.Chem.560:1)。更に最近の研究では、Ni触媒3a−cは、環状三量化生成物に対して良好な選択性を示し、不用のシクロオクタテトラエン副産物を生成しなかった。(Rosenthal and Schulz(1987)J.Organomet.Chem.321:103)。
【0010】
【化2】

【0011】
トリアルキルホスフィンをニッケル触媒4と共に併用すると、環状三量体が良好な収量で得られ、二量体が若干生成するもののシクロオクタテトラエンは生じない(表1)。トリアルキルホスフィン配位子が存在しない場合には、二量体が主要生成物となり、シクロオクタテトラエンが若干生成することが報告された。これらの結果から、ホスフィン−ニッケル触媒がその場(in situ)で生成した後、環状三量化が起こることがわかる。電子供与性P(Bu)3配位子は環状三量体形成に最良の選択性を示した。これらの反応は乾燥不活性溶媒中高温度で行なわれるものである。
【0012】
【表1】

【0013】
これまで最もよく研究された実用的環状三量化触媒は、η5−シクロペンタジエニルコバルト(CpCo)族のものである。1967年にヤマザキとハギハラは、最初のコバルトシクロペンタジエントリフェニルホスフィン錯体〔CpCoP(Ph)3〕を単離した。このものは、還流トルエン中化学量論量のジフェニルアセチレンで処理したとき、1時間後にヘキサフェニルベンゼンを収率8%で生成した。(Yamazaki and Hagihara(1967)J.Organomet.Chem.:22)。市販触媒であるコバルトシクロペンタジエンジカルボニル(CpCo(CO)2)(5)は、還流しているn−オクタン中でビス−アルキン(6)と触媒的に反応し、収率45%のベンゾシクロブテン(n=2)を含む数種の二環系(7)を生成した。(Vollhardt and Bergman(1974)J.Am.Chem.Soc 96:4996)。
【0014】
【化3】

【0015】
Vollhardtは、コバルトで触媒される環状三量化の潜在的な可能性に気づいた最初の人であった。(Vollhardt and Bergman(1974)J.Am.Chem.Soc.96:4996;Vollhardt(1984)Angew Chem.国際版、英文、23:539)。金属で媒介される〔2+2+2〕環状三量化が研究しつくされてしまったと思われたとき、合成的転換法の範囲を拡張する更に画期的な報告が現われた。コバルトで触媒される環状三量化により合成することのできる化学の広さと構造の多様性を示す最近の例として、ステロイド(Funk and Vollhardt(1980)J.Am.Chem.Soc.102:5253;Sternberg and Vollhardt(1984)J.Org.Chem.49:1564;Hillard等(1983)Tetrahedron 37:905;Lecker等(1986)J.Am.Chem.Soc.108:856)、カルバゾール類(Grotjahn and Vollhardt(1986)J.Am.Chem.Soc.108:2091;Boese等(1994)Synthesis 1374)、ステモジン(Germanas等(1991)J.Am.Chem.Soc.113:4006)、イルドール(Johnson andVollhardt(1991)J.Am.Chem.Soc.113:381)、フェニレン類(Schmidt-Radde and Vollhardt(1992)J.Am.Chem.Soc.114:9713)、γ−リコラン(Grotjahn and Vollhardt(1993)Synthesis579)および麦角アルカロイドリセルグ酸およびリセルゲン(Saa等(1994))Synlett.,487)が挙げられる。導電性オリゴマーから重要な医薬品化合物まで、環状三量化は、企図可能な合成径路に対して大きな影響を与えてきた。
【0016】
最近まで、水はCpCoのような低原子価の有機金属遷移金属触媒に対して有害であると考えられていた。それは、これら触媒が酸素と水の両方に対し敏感であり、金属の酸化あるいは有機金属化合物の加水分解のいずれかを起こすからである。(Parshall(1980)Homogeneous Catalysis Wiley:ニューヨーク)。
【0017】
水は多くの高酸化状態有機金属で媒介される転換、例えば重合反応、(Novakand Grubbs(1988)J.Am.Chem.Soc.110:7542−7543)、スルホン化第三級ホスフィンおよび水溶性ジホスフィンの水溶性ロジウム錯体を使用するアルキンの不斉水素化(Toth and Hanson(1990)Tetrahedron:Asymmetry :895−912;Nagel and Kinzel(1986)Chem.Ber.119:1731;Alario等(1986)J.Chem.Soc.Chem.Commun.202−203;Amrani等(1989)Organometallics:542−547;Sinou(1987)Bull.Soc.Chim.Fr.480)およびイミン類の不斉水素化(Bakos等(1989)第5回OMCOSの抄録、フロレンス、イタリー、PS1−36)に対する媒質として使用されてきた。これらの反応では生成物分布における選択性の上昇と触媒活性の上昇とが見られる。更に、水溶液中の有機生成物を水溶性触媒から分離することにより、生成物の回収量が高まり、触媒の回収および再使用が可能となった。(Novak and Grubbs(1988)J.Am.Chem.Soc.110:7542−7543;Toth and Hanson(1990)Tetrahedron:Asymmetry :895−912;Nagel and Kinzel(1986)Chem.Ber.119:1731;Alario等(1986)J.Chem.Soc.Chem.Commun.202−203;Amrani等(1989)Organometallics:542−547;Sinou(1987)Bull.Soc.Chim.Fr.480)。すなわち、水性媒質を使用することにより、これら触媒系は著しく改良されたのである。
【0018】
環境および健康の問題並びに有機溶媒の使用と廃棄に伴う経費のため、水溶液中で実施可能な反応の開発に多大の関心が寄せられている。これらの理由から、水溶液中で低原子価金属を含む有機金属媒介反応の実施を可能にすることは望ましい筈である。しかし、水性媒質中で有機金属反応を実施するためには、先ず第一に水溶性触媒を調製する必要がある。今日に至るまで、環状三量化反応に有用で、しかも水中で可溶かつ安定な低原子価遷移金属触媒は報告されていない。
【0019】
発明の簡単な要約
本発明は、水溶液中で〔2+2+2〕環状三量化反応を実施するための新規方法を包含するものである。本発明の好ましい一実施態様は、新規な水溶性コバルト触媒を利用するものである。本発明には、水溶液中で可溶かつ安定なコバルト触媒の製造法が包含される。このようにしてつくられる新規触媒も本発明の一部をなす。
【0020】
本発明は、多種多様な置換芳香族化合物を製造するための反応スキームを含む。これら化合物の製造における一つの重要な要素は、水溶液中で安定かつ可溶な新規低原子価有機金属触媒を使用することである。好ましい実施態様においては、その金属はコバルト(I)である。本発明に係る新規コバルト触媒を利用すると、その結果収量、反応速度、選択性の増加が起こり、また先行技術の触媒より広い官能基配列も許容できる。更にまた、水性媒質の使用により触媒の回収および再使用が可能となり、反応をはるかに安全にかつ一層経済的に実施できるようになる。
【0021】
本発明に係る芳香族化合物は、例えば米国特許出願第08/309,245号明細書、1994年9月20日提出、発明の名称「Parallel SELEX」(その記載内容を本願明細書の記載の一部とする)に開示されているように、とりわけエンジニアリング樹脂、医薬品、診断薬およびコンビナトリアル化学への応用において多くの用途をもつ。環状化学生成物、とりわけ6員環を含む生成物が望ましい用途はいずれも本発明の範囲内にある。本発明生成物の応用としては、種種な治療用、予防用、診断用および美容用としての用途が挙げられる。本発明生成物により処置できると思われる医学的症状の具体的な部類としては、炎症、心臓血管疾患、新生物性症状、代謝障害、寄生虫症および感染性疾患が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。より具体的には、本発明生成物は癌、アンギナ、関節炎、喘息、アレルギー、鼻炎、ショック、炎症性腸疾患、低血圧症および痛みと炎症の全身的治療、局所的外傷、例えば傷、火傷および発疹の治療あるいは予防に有用と思われる。望ましい生成物は当業者にとって周知の任意の方法により投与できる。
【0022】
更にまた、本発明に係る望ましい生成物は農薬としての用途があると思われる。具体的には、かかる望ましい生成物は、除草剤、有害生物防除剤、成長調節剤などとなりうる。農業用に本発明生成物を使用、投与することは当業者にとって公知である。本発明の生成物はまた化学的製造工程においても使用可能である。
【0023】
本発明に係る望ましい生成物には、例えば重合体樹脂、例えば「KEVLAR(登録商標)」および「TORLON(登録商標)」(これらは芳香族ポリアミド線維である)における単量体として、エンジニアリング樹脂分野での用途もあり得る。
【0024】
最後に本発明に係る望ましい生成物には、金属を溶液から抽出するための金属キレート剤としての用途があり得る。
【0025】
本発明方法は、置換芳香族化合物を製造するためのアルキンの〔2+2+2〕環状三量化に限らず、他の〔2+2+2〕カップリング反応により非芳香族6員環系および複素環式芳香族環系を生成する反応にも適合する。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、水性媒質中で〔2+2+2〕環状三量化反応を実施する方法を包含する。本発明の好ましい一実施態様においては、新規水溶性コバルト触媒を利用することにより、水性媒質中でアルキンの〔2+2+2〕環状三量化を行ない、多種多様な置換芳香族化合物を製造する。本発明方法は、非芳香族6員環系および芳香族複素環化合物の製造に拡張できる。
【0027】
本発明は、本発明方法に従って製造できるすべての新規化合物に拡張される。
【0028】
本発明には、水溶液中で安定かつ可溶な〔2+2+2〕環状三量化反応用遷移金属触媒の製造法が包含される。好ましい一実施態様における遷移金属触媒はコバルト(I)触媒である。この改良触媒は収量の向上、反応速度増加、生成物分布の選択性改善を達成し、他の方法では製造困難な芳香族化合物の合成を可能にする。水性媒質を使用すると触媒の回収と再使用が容易になる。そのようにして調製された新規触媒も本発明の一部をなす。
【0029】
本発明方法によりつくられる代表的置換芳香族化合物を表2に示す。表2は、本発明方法に従って製造できると思われる置換芳香族化合物のごく一部のリストを表わしている。
【0030】
本明細書中で本発明を記載するために使用した幾つかの用語を以下の通り定義する: 「環状三量化」とは、分子を互につないで環状化合物を形成させる反応を意味する。「〔2+2+2〕環状三量化」とは、3個の不飽和部分、好ましくはアルキン、を互につないで6員環、例えばベンゼン、置換ベンゼン、あるいは縮合芳香族環系、例えばナフタレンおよびインドールを形づくる反応である。この定義内に包含されるのは、単一アルキンR1C≡CR2の分子間反応、2種または3種の異なるアルキン間の分子間反応、およびジインとアルキンR1C≡CR2との間、あるいはジインとアルキンとの間の部分的分子内反応などである。特にまた非芳香族6員環および複素環式芳香族化合物、例えばピリジンまたは置換ピリジンを形成する反応もこの定義内に包含される。
【0031】
本発明に係る「触媒」は、最も一般的には不飽和部分の〔2+2+2〕環状三量化反応の速度を高めて6員環をつくり出すことのできる水溶性遷移金属錯体として定義される。好ましい一実施態様においては、遷移金属はコバルトであり、生ずる化合物は置換芳香族化合物である。この触媒は以下にもっと詳しく定義することにする。
【0032】
本発明の一実施態様の一般的反応の特徴は次のように記述できる:
【0033】
【化4】

【0034】
1およびR2は、多種多様な官能基、例えば水素、アルコール(1°,2°および3°)、エーテル、ケトン、エステル、アミド(1°および2°)、アミン(1°および2°)、スルフィド、サルフェート、ホスフェート、C1−C20アルカン、置換C1−C20アルカン、ハロゲン、チオエーテル、チオエステルなどから独立に選ぶことができるが、それらに限定されない。公知のCpCoあるいは従来法とは対照的に、R1およびR2内に存在するどの官能基も(例えば、アルコール類)一般に保護する必要がない。更にまた、アルキンR1C≡CR2は水溶性である必要はなく、少なくとも乳化できれば良い。
【0035】
より具体的には、R1とR2は、H、C1−C5アルコール(1°,2°および3°)、C1−C5アミン(1°および2°)、C1−C5エステルまたはC1−C5ケトンからなる群から独立に選ぶことができる。
【0036】
本発明の一実施態様においては、R1およびR2は、H,−CH2OH,−COCH3,−CO2CH3,(CH22OH,−CH2NH(CH3),−C(CH32OHおよび−CH2N(CH32からなる群から独立に選ばれる。
【0037】
表2は、本発明方法に従って製造される置換芳香族化合物の部分的一覧を詳細に記載したものである。表2から分かる通り、多種多様な官能基、例えばアルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド、アミン、スルフィド、サルフェート、ホスフェートC1−C20アルカン、ハロゲン、例えば塩素およびフッ素、チオエーテルおよびチオエステルを含む置換芳香族化合物が製造できるが、これらに限定されるわけではない。本発明者等は、化合物13−18は新規化合物であると考えている。
【0038】
本発明に係る芳香族アルコールおよびアミンの注目に価する応用はエンジニアリング樹脂の分野である。これらのような化合物は、芳香環を含む多くの重合体の合成に使用され、その一例はKEVLAR(登録商標)(多くの製品の製造に使用される芳香族ポリアミド繊維)である。現在のところこれら化合物の合成は比較的苛酷な条件を必要とする。本発明方法を使用すると、これら化合物は温和な条件下で合成でき、併せて精製工程も簡素化され、これまでより著しく経済的なプロセスが生み出される。本発明の合成条件は、「Parallel SELEX」という名称の米国特許出願第08/309,245号明細書(1994年、9月20日提出)に記載のような核酸で促進される生成物形成の条件にも適合する。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から分かるように、一置換アルキンの反応生成物は1,2,4−異性体と1,3,5−異性体との2:1混合物である。反応の生成物は一般に反応混合物から沈殿し、容易に濾別される。これら異性体はその後分別結晶により分離してもよい。水溶液中に溶けたまま残っている触媒はその後再使用できる。
【0041】
本発明方法における重要な要素は、水中で安定で、しかも水に可溶な遷移金属触媒を調製して使用することである。本発明触媒は、次の式:Rx−C−M−Lにより最も一般的に特徴づけてもよい、式中Cはシクロペンタジエニルまたはインデニルであり、RはCに結合した電子吸引基である。
【0042】
Rは、ニトリル、エステル、ケトン、アミド、クロロ、またはフルオロからなる群から選んでもよい。Xは0,1または2である。触媒を可溶化するためには、一般にこの位置に電子求引基が必要である。電子求引基(R)の数が増加するにつれて触媒は一層反応性に富むようになるが、また不安定にもなり、その結果触媒回転率が低下する。注目すべきは、シクロペンタジエニルまたはインデニル環は、下に例をあげて説明するように(触媒B)、1個より多くのR基を含んでもよい点である。本発明の一実施態様においては、Rはまたアミン、アミド、スルホキシド、スルホネート、ヒドロキシル、グアニジニウム、ポリアミン、プトラセン、またはスペルマジンからなる群から選ばれる高度に極性の官能基を含む。この極性官能基は触媒の溶解性を増加させる働きをする。
【0043】
MはCo,Rh,またはIrからなる群から選ばれる遷移金属である。本発明の好ましい一実施態様においては、Mはコバルト(I)である。Lは2個の別個の2電子π−配位子または1個の4電子π−配位子のいずれでもよい。当業者には使用できる各種配位子が認識される筈である。通常の2電子π−配位子(L)の例としては、エチレン類、プロペン類、ブテン類、ペンテン類、シクロペンテン類、ヘキセン類およびシクロヘキセン類が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。通常の4電子π−配位子の例は、シクロブタジエン、シクロヘキサジエン、またはシクロオクタジエンである。好ましい一実施態様においては、Cはシクロペンタジエニル、Lはシクロオクタジエン、X=1であり、触媒は次の構造を有する。
【0044】
【化5】

【0045】
本発明の更にもう一つの実施態様においては、Lはアミン、スルホネート、ヒドロキシル、グアニジニウム、ポリアミン、プトラセン、またはスペルマジンからなる群から選ばれる1個以上の極性基(R3)を含んでいてもよい。Lが1個の極性官能基を含む一実施態様においては、その触媒は次の構造を有する。
【0046】
【化6】

【0047】
Lが1個の極性官能基を含む第二の実施態様においては、触媒は次の構造(式中、n=1から8、R3は上で定義した通りである)を有する。
【0048】
【化7】

【0049】
本発明の更にもう一つの実施態様においては、上記シクロペンチルジエニル基をインデニル基により置き換えることができ、この場合、触媒はX=1の場合について下記の構造:
【0050】
【化8】

【0051】
をとることになるであろう。他の基はすべて、上記シクロペンタジエニル触媒について前述したものと同じである。
【0052】
本発明方法を例示するため、二つの別個の水溶性コバルト触媒、即ち触媒Aと触媒B、を例1および例2(スキーム1と2)に記載のように調製した。
【0053】
【化9】

【0054】
触媒Aは、電子求引基(R)としてケトンを含む。触媒Bは二つの電子求引基(R)、即ちエステルとケトン、を有し、このため触媒Bは触媒Aよりはるかに反応性に富む。触媒Aはまた極性ヒドロキシル基も含み、これは水中の溶解性を増加させる。表2に例示された反応は触媒Aを用いて行なわれたものである。
【0055】
本発明方法によるアルキンの〔2+2+2〕環状三量化に対する一般的反応スキームを例3(スキーム3)に記載する。この反応は−20から200℃の温度で行なうことができる。好ましい温度範囲は50から130℃である。最も好ましい実施態様においては、反応は約85℃で行なう。好ましい実施態様においては、反応はアルキルアルコールの20−100%混合物(例えば、メタノールまたはエタノールと水)中で行なう。最も好ましい実施態様においては、反応は20%−40%アルコール/水の中で行なう。他の許容しうる溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)/H2O、テトラヒドロフラン(THF)/H2O、およびジオキサン/H2Oが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
上記の通り、本発明方法によりつくられる置換芳香族化合物は、医薬品、診断薬、農薬として、また化学製造プロセスにおいて使用することが意図されている。
【0057】

下記の例は本発明に係る製造法および生成物の好ましい実施態様の例示であるが、本発明をこれらの例に限定するものと解釈すべきではない。
【0058】
一般的事項
反応と操作はすべて不活性雰囲気グローブ−ボックスまたは標準Schlenck技術のいずれかを使用する乾燥アルゴン雰囲気下で行なった。1Hおよび13CNMRスペクトルは、CDCl3,C66,D2O,CD3CN,またはCH3OD中、Bruker ARX(300MHz 1H)またはBruker AMX(300MHz 1H)で得た。IRスペクトルはPerkin-Elmer 1600フーリエ変換赤外(FTIR)分光計で記録した。質量スペクトルデータは、ワシントン州立大学の学部設備およびカリフォルニア大学バークレー校質量スペクトル設備から得た。元素分析はDesert Analytics,Tucson,AZから得た。融点はMel-Temp装置で記録し、補正はしていない。
【0059】
材料
アルキン類はAldrich Chemical Company(ミルウォーキー、ウィスコンシン)あるいはFarchan Chemicalsから購入し、使用前に真空蒸留するかまたは再結晶した。クロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(Cl〔CO(PPh33〕)は、WakatsukiおよびYamazaki(1989)Inorg.Synth.26,189の方法に従って調製した。ナトリウムメトキシカルボニルシクロペンタジエニドは、Hart等(1980)J.Am.Chem.Soc.102:1196の方法に従って調製した。(η5−メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)−コバルト(η4−1,5−シクロオクタジエン)は、WakatsukiおよびYamazaki(1985)Bull.Chem.Soc.Jpn.58:2715の方法に従い調製した。テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケルはLevisonおよびRobinson(1971)Inorg.Syn.13:105の方法に従い調製した。
【0060】
例 1 環状三量化触媒Aの製造
環状三量化触媒Aを、スキーム1に示すように、シクロペンタジエンから合成した。すなわち、ナトリウムシクロペンタジエニリドを還流THF中でまずブチロラクトンと反応させ、続いてクロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルトおよびシクロオクタジエンと反応させて触媒Aを得た。
【0061】
【化10】

【0062】
ナトリウムーブタ−4−オール−1−オン−シクロペンタジエニリド(9)の 製造
THF 10ml中に調製したばかりのナトリウムシクロペンタジエニリド(10ミリモル)を含む火炎乾燥したフラスコへ、THF(K/ベンゾフェノンから蒸留したて)15ml中ブチロラクトン753μl(9.8ミリモル)を10分間にわたりカニューレを用いて滴加した。室温で1時間後、反応容器に還流コンデンサーを取り付け、この混合物を2時間還流加熱した。反応物は幾分橙色に変った。室温まで冷却後、中程度の焼結ガラスに通して濾過し、濾液を約10mlに濃縮した。次にこの反応混合物を、迅速攪拌中のヘキサンの溶液(300ml、掃気)へ滴加して幾分ピンク色の粉末を形成させた。この粉末を濾集し、ヘキサン(2×30ml)で洗浄し、真空ラインで乾燥して1.236g(72%)の白色粉末を得た。1H NMR(300MHz,D2O)δ1.89(pent,J=7.0),2.71(t,J=7.0Hz,2H),3.65(t,J=7.0Hz,2H),6.20(m.2H),6.67(m,2H);13C NMR(75MHz,CD3OD)δ30.36,34.10,61.71,112.95,115.94,117.46,117.85,122.59,190.96。
【0063】
環状三量化触媒Aの製造
トルエン(10ml,ナトリウムから蒸留したて)およびシクロオクタジエン(10ml,81ミリモル)をフラスコに加え、凍結−ポンプ処理−融解させた(3サイクル)。次にこのフラスコに5.0g(5.67ミリモル)のクロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルトを加え、激しくかきまぜた。次にTHF10ml中9(1.41g,8.10ミリモル)の溶液を加えた。溶液は直ちに赤色に変った。室温で12時間かきまぜた後、この反応混合物を中性アルミナ(H2O 5%で不活性化)のパッド(2mm×20mm)に適用し、THF10mlで溶離した。その溶離液を真空で3mlまで濃縮し、中性アルミナ(2mm×75mm)のカラムに適用した。最初、褐色帯をヘキサンで溶離し、その後、カラムを20%THF/ヘキサン(50ml)、50%THF/ヘキサン(50ml)そして最後にTHF(50ml)で洗浄して橙色帯を溶離し、これを集めた。溶媒を真空で除去し、生じた橙色固体をTHF0.5mlとヘキサン10mlに溶かし、−30℃のフリーザーに入れた。暗橙色結晶を単離し、ヘキサンで洗浄して900mg(50%)の環状三量化触媒Aを得た。mp55−56℃;1H NMR(300MHz,CD3CN)δ1.65(m,4H),2.03(t,J=6.9Hz,2H),2.36(m,4H),2.84(t,J=5.3Hz,1H),3.14(t,J=7.2Hz,2H),3.56(m,4H),3.68(q,J=6.1Hz,2H),4.24(t,J=2.1Hz,2H),5.25(t,J=2.1Hz,2H);13C NMR(75MHz,C66)δ28.30,32.28,36.75,62.83,69.01,83.37,88.84,97.68,197.26;MS m/z(M+)318。
【0064】
例 2 環状三量化触媒Bの製造
スキーム2に示したように、ナトリウムメトキシカルボニルシクロペンタジエニドから環状三量化触媒Bを合成した。簡単に述べると、先ず還流しているTHF中でナトリウムメトキシシクロペンタジエニドを無水酢酸と反応させ、続いてtert−ブトキシドと反応させて化合物11を形成させた。次に化合物11をクロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルトおよびシクロオクタジエンと反応させて触媒Bを得た。
【0065】
【化11】

【0066】
化合物(10)の製造
ナトリウムメトキシカルボニルシクロペンタジエニド1.5g(10.3ミリモル)と蒸留したばかりのTHF(K/ベンゾフェノンから)50mlとをフラスコに加え、−78℃に冷却し、かきまぜた。蒸留したばかりの無水酢酸1.15g(11.3ミリモル)とTHF(15ml)の溶液を調製し、上記の攪拌中の混合物中にカニューレでゆっくり加えた。添加後15分で、冷却浴を除去し、反応物が室温まで温まるに任せ、12時間かきまぜた。12時間後、得られた橙/黄混合物を200mlの酢酸エチルに溶かし、食塩水(5×40ml)で洗浄した。有機層を集め、回転蒸発により溶媒を減少させた。生じた黄色油状物をカラムクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサン)にかけ、694mg(41%)の淡黄色固体、化合物10を得、これをヘキサンから再結晶した。mp58.5−59.0℃;1H NMR(300MHz,CDCl3)δ2.48(s,3H),389(s,3H),6.31(dd,J=3.1Hz,4.6Hz,1H),7.03(dd,J=1.9Hz,4.6Hz,1H),7.37(dd,J=1.9Hz,3.1Hz,1H),15.61(s,1H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ21.10,52.56,117.38,119.40,121.31,131.77,136.68,169.91,177.03。
【0067】
化合物(11)の製造
蒸留したばかりのTHF35mlを含む100mlフラスコに化合物10(170mg,1.023ミリモル)を加え、−78℃に冷却した。ナトリウムt−ブトキシド96mg(1ミリモル)とTHF15mlの溶液を調製し、上記の化合物10の溶液中にカニューレで加えた。ナトリウムt−ブトキシドを含むフラスコを8mlのジオキサンで洗浄し、これも上記反応混合物中にカニューレで加えた。この反応物を1時間かけて室温まで温まるに任せ、更に1.5時間かきまぜた。溶媒を真空で除き、生じた固体をヘキサン(5ml)、トルエン(5ml)、そして最後にヘキサン(5ml)で洗浄して108mgの淡黄色固体、化合物11(57%)を得、これをそれ以上精製することなく使用した。
【0068】
(η5−1−メトキシカルボニル−2−アセチルシクロペンタジエニル)コバルト(η4−シクロオクタジエン)(触媒B)の製造
ガラスボンベ中クロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルト400mg(0.451ミリモル)、シクロオクタジエン172μl(1.41ミリモル)および蒸留したばかりのトルエン(Na/ベンゾフェノンから)のガス抜きした溶液へ、化合物10(106mg,0.563ミリモル)および蒸留したばかりのTHF2mlの溶液を加えると、反応物は直ちに赤色に変った。室温で12時間かきまぜた後、その反応混合物を中性アルミナ(H2O 5%で不活性化)のパッド(2mm×20mm)に適用し、THF10mlで溶離した。その溶離液を真空でおよそ2mlに濃縮し、中性アルミナ(2mm×75mm)のカラムに適用した。このカラムを順次ヘキサンで洗浄して小さい褐色帯を溶離し、トルエンで洗浄して緑色帯を溶離し、そして最後に5%THF/トルエンで洗浄して赤/橙色帯を溶離し、この赤/橙色帯を集めた。溶媒を真空で除去し、得られた赤色固体をTHF/ヘキサンから再結晶して60mg(40%)の赤色固体(環状三量化触媒B)を得た。mp95.0−96.5℃;1H NMR(300MHz,C66)δ1.49(m,4H),2.27(m,4H),2.74(s,3H),3.40(s,3H),3.52(m,4H),4.47(t,J=2.5Hz,1H),4.75(pent,J=2.5Hz,2H);13C NMR(75MHz,C66)δ31.02,31.72,32.11,51.61,70.33,70.46,86.02,87.97,88.29,90.50,97.68,167.10,196.30;MS m/z(M+)332。
【0069】
例 3 コバルトで触媒される環状三量化反応の一般手順
下記の一般手順により化合物12−18(表2)を調製した。
テフロン(登録商標)ストップコックと攪拌棒を備えたガラスボンベに、アルキン4.5ミリモル、コバルト触媒2.5モル%(112μモル、20mM)、ミリポアH2O(アルゴンで掃気)3.4mlおよび蒸留したばかりのメタノール(アルゴンで掃気)を加えた。この混合物を凍結−ポンプ処理−融解(4サイクル)させ、85℃の油浴に入れ、40時間かきまぜ、室温まで冷却した。
【0070】
化合物12
上記ボンベを室温まで冷却し、固体沈殿物を濾集した。この固体を水、THFで洗浄し、集めることにより52%収率で白色固体を得た。1H NMR(300MHz:CD3OD/D2O)δ5.22;13C(1H)(75MHz,CD3OD)δ58.92,140.68;MS m/z(M+)259。
【0071】
化合物13
上記水性混合物が室温まで冷えたとき、それを酢酸エチル(3×30ml)で抽出した。得られた抽出液を食塩水(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を真空で除去し、生じた残留物を、アセトン(20%)、ベンゼン(20%)およびヘキサン(60%)の混合物を使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。2フラクションを集め、特性を記述した。
化合物13a 白色固体43%。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ2.65(s,9H),8.63(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ26.74,131.64,137.81,196.54;MS m/z(M+)204。
【0072】
化合物14
上記水性混合物が室温まで冷えたとき、それを酢酸エチル(3×25ml)で抽出し、得られた抽出液を食塩水(50ml)で洗浄した。溶媒を真空下で減量し、得られた残留物を、ヘキサン中25%酢酸エチルの混合物を用いてシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。2フラクションを集め、特性を記述した。
化合物14a:白色固体20%;1H NMR(300MHz,CDCl3)δ3.95(s,9H),8.82(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ52.59,131.18,134.55,165.38;MS m/z(M+)252。
化合物14b:透明油状物47%;1H NMR(300MHz,CDCl3)δ3.88(s,6H),3.90(s,3H),7.69(d,J=8.0Hz,1H),8.14(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),8.36(d,J=1.6Hz,1H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ52.52,52.74,52.81,128.79,130.16,131.53,132.16,132.35,136.13,165.25,166.71,167.48;MS m/z(M+)252。
【0073】
化合物15
上記水性混合物を室温まで冷却後、それを食塩水(10ml)にとり、酢酸エチル(5×30ml)で抽出した。抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空で除いた。得られた残留物を、酢酸エチル8%メタノールを使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。1フラクションを集めた。このフラクションから250mg(68%)の粘稠油が得られたが、これはNMRにより異性体15aと15b(27:73)の混合物として同定された。1H NMR(300MHz,CD3OD)δ13C NMR(75MHz,CDCl3)δ36.53,36.90,39.75,40.08,63.90,64.02,64.17,64.29,128.08,128.60,131.05,131.67,135.89,138.03,138.20,140.25;MS m/z(M+)210。
【0074】
上記とは別の以下の手順を用いて化合物15aと15bを分離した。上記水性混合物を室温まで冷却後、それを25%HCl 3mlにとり、塩化メチレン(30ml)で洗浄した。次にこの水層を3M NaOHを用いて塩基性とし、塩化メチレン(3×30ml)で抽出した。得られた抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空で除いて透明油状物を得た。これら2異性体を中性アルミナ(H2O 5%で不活性化)のカラム上で5%メタノール/2%トリエチルアミン/アセトニトリルで溶離することにより分離した。
化合物15a:白色固体27%;1H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.36(s,18H),3.70(s,6H),7.31(s,3H);13C NMR(75MHz,CD3OD)δ45.58,63.55,132.73,137.43。
化合物15b:透明油状物51%;1H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.13(s,6H),2.42(s,6H),2.43(s,6H),3.42(s,2H),3.88(s,2H),3.90(s,2H),7.30(m,3H);13C NMR(75MHz,CD3OD)δ43.14,43.24,45.23,61.50,61.86,62.22,63.97,131.92,133.61,134.64,135.10,136.20,140.68。
【0075】
化合物16
上記水性混合物を室温まで冷却後、それを25%HCl 3mlにとり、塩化メチレン(30ml)で洗浄した。次にこの水層を3M NaOHで塩基性とし、塩化メチレン(3×30ml)で抽出した。得られた抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空で除いて透明油状物を得た。このものは異性体混合物として同定された。13C〔1H〕(75MHz,CD3OD)δ33.44,33.55,34.92,35.11,35.35,41.61,53.49,53.86,55.23,55.38,55.54,61.47,61.71,128.81,129.55,130.36,130.98,131.15,132.93,132.99,135.96,137.22,137.89,139.60,139.74,140.48,140.95;MS m/z(M+−NH2CH3)176。
【0076】
化合物17
上記水性混合物を室温まで冷却後、それを食塩水10mlにとり、酢酸エチル(5×30ml)で抽出した。この抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空で除いた。得られた残留物を、40%アセトン/ヘキサンを使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。2フラクションを集めた。
化合物17a:白色固体;20%; 1H NMR(300MHz,CD3OD)δ1.43(s,6H),7.38(s,1H);13C NMR(75MHz,CD3OD)δ32.11,73.32,119.99,150.18。
化合物17b:白色固体37%;1H NMR(300MHz,CD3OD)δ1.40(s,6H),1.55(s,6H),1.57(s,6H),7.12(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),7.19(d,J=8.4Hz,IH),7.40(d,J=2.1Hz,1H);13C NMR(75MHz,CD3OD)δ31.90,33.90,33.92,72.16,75.19,75.59,123.54,125.34,129.01,144.90,146.57,148.31。
【0077】
化合物18
上記ボンベを室温まで冷却し、上記水性混合物を3mlの25%HClにとり、塩化メチレン(3×30ml)で洗浄した。次にその水層を3M NaOHで塩基性とし、次に塩化メチレン(30ml)で三回抽出した。得られた抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空で除いて透明油状物を得た。5%CH3OH/2%トリエチルアミン/アセトニトリルで溶離することにより、中性アルミナ(H2O 5%で不活性化)でその2つの異性体を分離した。
(a):白色固体27%;1H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.36(s,18H),3.70(s,6H),7.31(s,3H);13C(1H)(75MHz,CD3OD)δ45.58,63.55,132.73,137.43;MS m/z(M+)249。
(b):透明油状物51%;1H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.13(s,6H),2.42(s,6H),2.43(s,6H),3.42(s,2H),3.88(s,2H),3.90(s,2H),7.30(m,3H);13C(1H)(75MHz,CD3OD)δ43.14,43.24,45.23,61.50,61.86,62.22,63.97,131.92,133.61,134.64,135.10,136.20,140.68;MS m/z(M+)249。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

〔式中,R1はHまたは−CH2OHからなる群から選ばれ、R2は−CH2OH,−COCH3,−CO2CH3,(CH22OH,−CH2NH(CH3),−C(CH32OHまたは−CH2N(CH32からなる群から選ばれる〕
を有する、置換芳香族化合物。
【請求項2】
一般式:
【化2】

〔式中,R1はHまたは−CH2OHからなる群から選ばれ、R2は−CH2OH,−COCH3,−CO2CH3,(CH22OH,−CH2NH(CH3),−C(CH32OHまたは−CH2N(CH32からなる群から選ばれる〕
を有する置換芳香族化合物。

【公開番号】特開2007−277256(P2007−277256A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154908(P2007−154908)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【分割の表示】特願平9−533471の分割
【原出願日】平成9年2月25日(1997.2.25)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】