説明

水滴形成装置

【課題】 従来の針方式降雨装置では、格子状に並べられた一定径の降雨針に送り込む水の量を調節することにより降雨量を可変することができる。
【解決手段】本発明は、従来の方法では成し得なかった大きな水滴径を安定的に形成できる方法を明らかにするものである。図2と図3で示すように、吐出口5から吐出された水を、一旦傾斜面119の水滴形成領域101で受けることにより、吐出口5から吐出された水でできる水滴と吐出時に吐出口101で発生する引きちぎり現象による小径の吐出水滴307を1個の大きな直径の形成水滴315として吸収することができるとともに、傾斜面119の水滴形成領域101で1個の水滴に形成された大きな直径の形成水滴315は、その自重で徐々に傾斜面119の水滴形成領域101から加速領域103へと滑り落ち、その後、大きな直径の形成水滴315は傾斜面119の縁部115を離れほぼ球状の1個の大きな直径の形成水滴315として落下させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径1mm程度の小水滴径から直径10mmを越える大水滴径まで可変して形成させることができるのに好適な水滴形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
降雨影響に関する試験や研究用に用いられる試験装置には様々な方式がある中で、より自然に近い降雨を再現することを目的とした降雨針を格子状に並べて降雨させる装置がある(以下針方式降雨装置という)。
【0003】
針方式降雨装置では、格子状に並べられたすべての降雨針に極わずかな水圧を定常的に与えることにより、降雨針の針先に水滴を形成させ、水滴の自重による降雨針からの自然落下において降雨をさせている。
【0004】
例えば、図4に示されるように、従来の針方式降雨装置では、注射針のように中空の細い直径2mm程度の円筒状になった針先の先端が水平方向に平行な断面をもつ降雨針401に水を送り、降雨針401の先端に形成される水滴の自重で落下させる方法で人工的に降雨に似せた状態を作り出している。さらに従来の針方式降雨装置では、降雨状態を作り出したい領域に合わせて、降雨針401を格子状に並べて降雨させている。また、格子状に並べた降雨針401と降雨針401の間隔にも均一に降雨させるために、降雨針401に遠心力をかけ格子状に並べた降雨針401の間隔に降雨針401の先端に形成される水滴をランダムに落下させるようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。さらに降雨針401の先端に形成される水滴に空気をあててランダムに落下させるようにする形態もある(例えば、特許文献3参照)。降雨針401の先端に形成される水滴が落下するまでの状態を時系列順に説明すると、降雨針401による水滴形成状態400は、降雨針401にポンプなどの送水手段により送られた水は、吐出状態401−1から吐出状態401−2、吐出状態401−3、吐出状態401−4と時系列矢印Aで示すように降雨針401の先端で成長して重力方向に落下する。このとき降雨針401形成される水滴は直径3.0mm程度が限界である。また、従来の針方式降雨装置では、自重で落下する水滴の径を可変するため、格子状に並べられた降雨針401に遠心力を与えて、降雨針401の針先にできる水滴を強制的に振り落とす装置を付加している。つまり、この遠心力形成装置で与える回転数を可変させることで水滴径を1.7mmから約3.0mm程度まで可変することができる。さらに、降雨針に遠心力を加えることで、格子状に並べられた降雨針の間に、ランダムに雨滴を落下させることが可能となり、降雨させる面全体にむらなく降雨させることができ自然降雨状態に近づけることができる。しかしながら、降雨針401に遠心力を加えるもしくは空気をあてることは水滴径を小さく可変することには有効な手段ではあるが、水滴径を大きく(例えば、直径10mm以上の水滴)形成することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭61−44587号公報
【特許文献2】実開昭61−33661号公報
【特許文献3】実用新案登録第3152114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の針方式降雨装置で前記降雨針401よりさらに水滴径を大きくする形態について図5で説明する。大きな直径の水滴を形成するために、前記降雨針401の先端の水滴を大きく成長させることが必要である。すなわち、水滴がその自重で重力方向に落下しないように前記降雨針401の先端と水滴の接触面積を大きくして表面張力を増大させるが必要である。そこで、表面張力を増大させるために水滴形成傘502の構造を有した傘付傘付降雨針501がある。傘付降雨針501の先端に形成される水滴が落下するまでの状態を時系列順に説明すると、傘付降雨針501による水滴形成状態500は、傘付降雨針501にポンプなどの送水手段により送られた水は、吐出状態501−1から吐出状態501−2、吐出状態501−3、吐出状態501−4と時系列矢印Aで示すように傘付降雨針501の先端で成長して重力方向に落下する。このとき水滴形成傘502の直径を大きくしても形成される水滴が自重で重力方向に落下するために、傘付降雨針501形成される水滴は直径4.0mm程度が限界である。このように、従来の針方式降雨装置では、格子状に並べられた一定径の降雨針に送り込む水の量を調節することにより降雨量は可変することができる。また、降雨針401に遠心力を加えるもしくは空気をあてることで水滴径を小さくすることは可能であった。しかしながら、従来の針方式降雨装置で傘付降雨針501を用いた場合でも4.0mm以上の水滴径を任意にかつ安定的に形成し落下させることが困難であった。
【0007】
さらに、前記降雨針401と前記傘付降雨針501よりさらに水滴径を大きくする従来の形態について図6と図7で説明する。大きな直径の水滴を形成するために、前記降雨針401と前記傘付降雨針501の中空の円筒部が直径6.0mm程度で先端が水平方向に平行な断面をもつノズル601を用いることがある。ノズル601の先端に形成される水滴が落下するまでの状態を時系列順に説明すると、ノズル601による水滴形成状態600は、ノズル601にポンプなどの送水手段により送られた水は、吐出状態601−1から吐出状態601−2、吐出状態601−3、吐出状態601−4と時系列矢印Aで示すようにノズル601の先端で成長して重力方向に落下する。しかしながら、このときノズル601の先端において水の表面張力がうまく働かない場合に、図7で示す水滴形成状態700のように、ポンプなどの送水手段により送られた水がノズル601中空の円筒部の内壁を伝い、吐出状態701−1から吐出状態701−2、吐出状態701−3、吐出状態701−4と時系列矢印Aで示すようにノズル601の先端で水滴が大きく成長せず重力方向に落下してしまう場合がある。そこで、ハニカム構造物や孔子状物をノズル601の先端に取り付け水の表面張力が効くようにしても、水滴が自重により落下するため、ノズル601で形成できる水滴の直径は、水質と水の温度に影響されるが概ね6.0mm程度が限界である。このことは、つまり大きな直径の水滴(例えば、直径10mm以上の水滴)を得ようとしてノズル601の直径を大きくしても水滴径を大きく形成する手段とならいことを示している。さらに、ノズル601の先端において4.0mm程度の水滴を形成して落下させようとすると形成される水滴が水滴自らの自重により自然落下するとき、落下する水滴と降雨針の先端に残る水との間の水が引きちぎられることにより、落下する水滴の後に径の小さな水滴601−5が同時に形成されてしまう現象が起きる。このようにノズル601先端に形成させた水滴を落下させる方法では、任意の径の水滴以外の径の小さな水滴601−5が発生してしまい、これを防ぐことは構造上容易でない。また針方式降雨装置では、水の表面張力や温度・組成・粘性など微妙な条件変動が水滴形成を阻害して直径4.0mm以上の安定的な水滴径の形成がおこなえない。さらに、針方式降雨装置として使用する水は通常、水道水もしくは純水を使用するため、使用する水の粘性などを制御する薬剤を使用できない。このように、針方式降雨装置において降雨針401、傘付降雨針501、ノズル601を使用して大きな直径の水滴(例えば、直径10mm以上の水滴)を安定的に形成することができなかった。
【課題を解決する為の手段】
【0008】
本発明は、このような問題を解決しようとするもので、水を吐出する吐出口と、前記吐出口の鉛直下側に配置されて傾斜面を有する滑落台を備え、前記吐出口から吐出された水を前記傾斜面で受け止めて水滴にし、更に前記水滴を前記傾斜面に沿って下方に案内し、前記傾斜面の下側の縁部から落下させる特徴を備えた水滴形成装置である。
【0009】
前記傾斜面は、前記吐出口の水を受け止める水滴形成領域と、前記水滴形成領域よりも下方に形成されて前記水滴形成領域よりも傾斜角が大きい加速領域を備えた水滴形成装置である。
【0010】
前記傾斜面の角度を変える角度制御装置を備えている水滴形成装置である。
【0011】
前記傾斜面の下側の前記縁部が湾曲している特徴を備えた水滴形成装置である。
【0012】
前記傾斜面は、前記水滴を案内する溝が傾斜方向に沿って形成されていることを特徴とする水滴形成装置である。
【0013】
前記吐出口に脈動させながら水を送水するポンプを備えている水滴形成装置である。
【0014】
前記吐出口と前記ポンプの間に逆止弁を備え、送水する水の脈動の圧力を前記吐出口の水滴に伝える特徴を備えた水滴形成装置である。
【0015】
前記縁部の途中が、前記水滴から離れる方向に折れ曲がっている特徴を備えた水滴形成装置である。
【0016】
前記縁部の折れ曲がり角度は、鋭角である特徴を備えた水滴形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、吐出口から吐出された水を、一旦傾斜面の水滴形成領域で受けることにより、吐出口から吐出された水でできる水滴と吐出時に吐出口で発生する引きちぎり現象による小径の水滴を1個の水滴として吸収することができるとともに、傾斜面の水滴形成領域で1個の水滴に形成された水滴は、その自重で徐々に傾斜面の水滴形成領域から加速領域へと滑り落ち、その後、水滴は傾斜面の縁部を離れほぼ球状の1個の水滴として落下させることが可能となる。
【0018】
また、吐出口から吐出する水量を調節することで、傾斜面の水滴形成領域で1個の水滴に形成された水滴の大きさを可変することができる。つまり、吐出口から吐出する水量を調節することで任意の径を有した水滴を安定的に形成することが可能となる。
【0019】
さらに、吐出口に対して脈動させながら送水するので、吐出量を均一化することが可能となり、また、形成したい任意の大きな直径の水滴の体積量に合わせて吐出口に送水する水量を調節することも可能となる。また、吐出口に送水する水の脈動の圧力を確実に吐出口の水滴に伝えるために逆止弁を併用することで吐出口の吐出量を均一化させることが可能となる。
【0020】
従来形成することが困難であった径の大きな水滴の再現が本装置で可能となり、自然界の状態に近い降雨を再現する降雨装置にとして、降雨影響に関する試験や研究用として利用することができる。
【0021】
任意の水滴径を形成して滑落させるには、傾斜面に吐出する水量をポンプ側で調整することと、傾斜面の角度を調節する機能を付加すること、あるいはそれらを組み合わせることにより、装置設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水滴形成装置の構成図である。
【図2】同水滴形成装置の水滴形成・滑落部の詳細図である。
【図3】水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図4】降雨針による水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図5】傘付降雨針による水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図6】ノズルによる水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図7】ノズルによる水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図8】V字型溝を付けた水滴形成・滑落部の斜視図である。
【図9】従来の縁部(湾曲縁部)による水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る水滴形成・滑落部の縁部(鋭角縁部)による水滴形成の時系列的状態変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る水滴形成装置の構成について図1で説明する。水滴形成装置1は、水の吐出口5に供給する水を貯える水槽25と、吐出口5に対して脈動させながら送水するポンプ21と、ポンプ21と連動して開閉する電磁弁19と、吐出口5に送水するポンプ21の脈動の圧力を確実に吐出口5の先端の水滴に伝えるための逆止弁13と、水槽25から吐出口5へ送水する送水管23および送水管11と、送水管11から供給された水を吐出口5に分岐して供給する連通管9と、連通管9から金具3に取り付けられた吐出口5に送水された水を供給するために接続されたチューブ7と、吐出口5供給する水流量を調節するバルブ15と、水流量を監視する流量計17と、吐出口5から吐出された水を水滴として形成して滑落させる水滴形成・滑落部100と水滴形成・滑落部100の角度調整と水供給用の電磁弁19とポンプ21を制御するコントロールユニット27とで構成されている。
【0024】
次に、水滴生成装置の水滴形成・滑落部100について図2で説明する。水滴形成・滑落部100は、水滴形成領域101と加速領域103と縁部115が水滴の滑落方向に連続して形成される傾斜面119と、傾斜面119を支える取付台105と、取付台105を揺動することができるボールベアリング109と、ボールベアリング109を支える支柱111と、傾斜面119を支える取付台105を前後に揺動させる前後角度調整モーター107と、取付台105を左右に揺動させる左右角度調整モーター113とで構成されている。なお、加速領域103は、水滴形成領域101の傾斜角よりも大きな傾斜角に形成され、水滴形成領域101から滑落してきた水滴にさらに加速を付けて縁部115に案内する。また、縁部115は、水滴の滑落方向の下側に(滑落方向に凸となるように)丸まるように湾曲して形成されている。これにより、加速領域103で加速された水滴は、湾曲部で縁部115から離れ易くなっている。
【0025】
水滴形成装置の水滴形成手順について、図1で説明する。水槽25に蓄えられた水は、送水管23からポンプ21に供給され、電磁弁19はポンプ21の駆動と連動して弁を開き、ポンプ21から送り出された水はバルブ15で流量を調節して逆支弁13を通過して送水管11により連通管9に流れ、連通管9に取り付けられたチューブ7から、金具3に取り付けられた吐出口5へと供給される。吐出口5への水の供給量は流量計17で確認することができる。また、電磁弁19の開閉と、ポンプ21の駆動はコントロールユニット27で制御される。
【0026】
続いて、水滴形成装置の水滴形成手順について図2と図3で説明する。図3は水滴形成・滑落部100で吐出口5から吐出された水が水滴形成・滑落部100で水滴として形成され滑落するまでを水滴形成状態300Aから水滴形成状態300B、水滴形成状態300C、水滴形成状態300D、水滴形成状態300E、水滴形成状態300F、水滴形成状態300Gへと時系列順に表している。時系列順に説明すると、300Aで表すように、吐出口5の先端にポンプ21から送り出された水が吐出水状態303−1のように鉛直方向に出る。その後、300Bで表すように吐出口5の先端の水は吐出水状態303−2のように徐々に成長する。その後、300Cで表すようにさらに成長した吐出口5の先端の水は吐出水状態303−3のように、吐出口5から引きちぎられるように吐出口5の鉛直下部の水にくびれが出来始める。その後、300Dで表すように吐出口5から引きちぎられた水は、大径の吐出水滴305が形成されると同時に引きちぎられたくびれ部分で小径の吐出水滴307が形成され吐出水落下方向309に鉛直落下する。その後、300Eで表すように水滴形成・滑落部100の傾斜面119の水滴形成領域101に先に落下した大径の吐出水滴305にわずかに遅れて落下した小径の吐出水滴307がひとつにまとまり、300Fで表すように大きな形成水滴315(例えば、直径10mm以上の水滴)となり、形成水滴315はその自重で傾斜面119に案内されながら形成水滴滑落方向311に徐々に滑落をはじめ、加速領域103で加速された形成水滴315は、その後、300Gで表すように傾斜面119の縁部115から離れて、形成水滴落下方向312に形成水滴315が落下する。なお、水滴形成領域101から滑落してきた水滴は、水滴形成領域よりも傾斜角の大きい加速領域103で加速されるとともに、回転を始め、その回転の遠心力により略球状の水滴となって回転しながら落下する。
【0027】
なお、水滴形成・滑落部100の傾斜面119について、図8で表すように傾斜面119にV字型またはU字型の水滴誘導溝801を付け、さらに傾斜面119に撥水加工を施すようにしても好ましい。このようにすることで、水滴形成領域101において、吐出口5から吐出された大径の吐出水滴305とわずかに遅れて落下する小径の吐出水滴307が、水滴誘導溝801に誘導されて、ひとつの水滴にまとまりやすくなる。また、ひとつにまとまった水滴は滑らかにその自重で傾斜面119の水滴形成領域101から加速領域103方向に徐々に滑落をはじめ、加速領域103で加速された水滴が、その後、縁部115で傾斜面119から球状に近い形で離れて落下するようになる。なお、上記と同様に、水滴形成領域101から滑落してきた水滴は、水滴形成領域よりも傾斜角の大きい加速領域103で加速されるとともに、回転を始め、その回転の遠心力により略球状の水滴となって回転しながら落下する。
【0028】
上記実施形態では、水滴形成領域101と、水滴形成領域101の傾斜角よりも大きな傾斜角を有する加速領域103を設ける構造としているが、少なくとも水滴形成領域103の傾斜面119だけがあれば良く、加速領域103と縁部115が無い形態でも良い。
【0029】
上記実施形態では、従来の方法では成し得なかった大きな水滴径(例えば、直径10mm以上の水滴)を安定的に形成することができる。つまり図2と図3で示すように、吐出口5から吐出された水を、一旦傾斜面119の水滴形成領域101で受けることにより、吐出口5から吐出された水でできる水滴と吐出時に吐出口5で発生する引きちぎり現象による小径の吐出水滴307を1個の形成水滴315として吸収することができるとともに、傾斜面119の水滴形成領域101で1個の水滴に形成された形成水滴315は、その自重で徐々に傾斜面119の水滴形成領域101から加速領域103へと滑り落ち、その後、形成水滴315は傾斜面119の縁部115を離れほぼ球状の1個の形成水滴315として落下させることが可能となる。上記実施形態の構成により、水滴形成装置1は、直径10mm以上の水滴を形成することができる。勿論、1mmから10mm程度の直径の水滴を形成するにも好適である。
【0030】
また、図1で示すように吐出口5から吐出する水量をポンプ21あるいはバルブ15で調節することで、図2と図3で示す傾斜面119の水滴形成領域101で1個の水滴に形成された形成水滴315の大きさを可変することができる。つまり、吐出口5から吐出する水量を調節することで任意の径を有した水滴を安定的に形成することが可能となる。
【0031】
さらに、図1で示す吐出口5に対してポンプ21が脈動させながら送水することで、吐出量を均一化することが可能となり、また、形成したい任意の大きな直径の水滴の体積量に合わせて吐出口5に送水する水量を調節することも可能となる。また、吐出口5に送水する水の脈動の圧力を確実に吐出口の水滴に伝えるために逆止弁13を併用することで吐出口5の吐出量をさらに均一化させることが可能となる。
【0032】
このように、従来形成することが困難であった径の大きな水滴の再現が本装置で可能となり、自然界の状態に近い降雨を再現する降雨装置にとして、降雨影響に関する試験や研究用として利用することができる。
【0033】
さらに任意の形成水滴315の水滴径を形成して滑落させるには、傾斜面119に吐出する水量をポンプ21で調整することと、図2で示すように傾斜面119の角度を調節する機能を付加すること、あるいはそれらを組み合わせることにより、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態に係る水滴形成装置について説明する。なお、第2実施形態に係る水滴形成装置は、水滴形成・滑落部100の縁部(以下、鋭角縁部910と言う)に特徴があり、その他の構成や形状については、第1実施形態に係る水滴形成装置1と同じであるので、同じ部分については、同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0035】
図9および図10を用いて、第2実施形態に係る鋭角縁部910を、前述の第1実施形態で説明した縁部115との比較で説明する。図9は第1実施形態に係る水滴形成装置1で説明した縁部115であり、水滴901の滑落方向の下側に丸まるように湾曲した形状となっている。なお、以下、第1実施形態に係る水滴形成装置1において、水滴の滑落方向の下側に丸まるように湾曲した縁部115を湾曲縁部900と言うことがある。
【0036】
図9は、加速領域103で加速された水滴901が、湾曲縁部900で傾斜面119から離れて落下するまでの状態を、時系列矢印Aで示すように水滴離脱状態900Aから水滴離脱状態900B、水滴離脱状態900Cへと時系列順に表した説明図である。時系列順に説明すると、水滴離脱状態900Aで表すように、加速領域103で加速された水滴901は傾斜面119を滑落するときに得られた加速度により湾曲縁部900で傾斜面119から引き剥がされ始める。この時、水滴901は水滴離脱状態900Bで示すよう水の表面張力により変形して湾曲縁部900との間に尾903が発生する。その後、水滴離脱状態900Cで示すよう水滴901は傾斜面119を滑落するときに得られた加速度と自重により、終わりには傾斜面119から離れて落下するが、湾曲縁部900の湾曲面が長かったり、湾曲縁部900の表面状態が粗かったり、または水の粘度や湿度等の違いにより尾903が長く伸び、湾曲縁部900との間に発生した尾903が水滴901からひきちぎられて小さな径の水滴905を形成して落下する場合がある。通常、ここで形成される水滴905は、小径の吐出水滴307(または、図6で説明した径の小さな水滴601−5)に比べて非常に小径のため、実質的にはなんら問題にならない。
【0037】
図10に示されるように、第2実施形態に係る水滴形成装置の鋭角縁部910は、水滴の滑落方向下側に丸まって湾曲した縁部の一部が滑落する水滴から離れる方向に折れ曲がるように形成されている所に特徴がある。具体的には、鋭角縁部910は、水滴911が離れる近傍において、湾曲部910aに連続して形成される鋭角部910bが形成されている。換言すると、鋭角縁部910の一部が峰状(頂き状)に形成され、峰910cの角度は鋭角(例えば、30°〜60°)になっている。この鋭角縁部910は、図9で説明した、通常は問題にならない程度の非常に小径の水滴905をも確実に防止するものである。図10は、鋭角縁部910において加速領域103で加速された水滴911が、鋭角縁部910で傾斜面119から離れて落下する滑落するまでの状態を、時系列矢印Aで示すように水滴離脱状態910Aから水滴離脱状態910B、水滴離脱状態910Cへと時系列順に表した説明図である。時系列順に説明すると、水滴離脱状態910Aで表すように、加速領域103で加速された水滴911は傾斜面119を滑落するときに得られた加速度により鋭角縁部910で傾斜面119から引き剥がされ始める。その後、水滴911は水滴離脱状態910Bで示すよう水の表面張力により変形して鋭角縁部910との間に尾913が発生する。その後、水滴離脱状態910Cで示すよう水滴911は傾斜面119を滑落するときに得られた加速度と自重により終には傾斜面119から離れて落下する。しかしながら、鋭角縁部910では、湾曲面の先端を鋭角状にすることで、尾913が小さい(短い)段階で、鋭角縁部910から水滴911が離れる(つまり、峰910cから離れる)。これにより尾913の発生は、前述した湾曲縁部900に比べて短くなり、鋭角縁部910との間に発生した尾913が水滴911からひきちぎられて小さな径の水滴905を形成して落下することを抑えることに有効である。
【符号の説明】
【0038】
1 水滴形成装置
3 金具
5 吐出口
7 チューブ
9 連通管
11 送水管
13 逆止弁
15 バルブ
17 流量計
19 電磁弁
21 ポンプ
23 送水管
25 水槽
27 コントロールユニット
100 水滴形成・滑落部
101 水滴形成領域
103 加速領域
105 取付台
107 前後角度調整モーター
109 ボールベアリング
111 支柱
113 左右角度調整モーター
115 縁部
119 傾斜面
300A〜G 水滴形成状態
303−1〜4 吐出水状態
305 大径の吐出水滴
307 小径の吐出水滴
309 吐出水落下方向
311 形成水滴滑落方向
312 形成水滴落下方向
315 形成水滴
400 降雨針401による水滴形成状態
401 降雨針
401−1〜4 吐出水状態
500 傘付降雨針501による水滴形成状態
501 傘付降雨針
501−1〜4 吐出水状態
600 ノズル601による水滴形成状態
601 ノズル1
601−1〜4 吐出水状態
601−5 小さな径の水滴
700 ノズル601による水滴形成状態
701−1〜4 吐出水状態
801 水滴誘導溝
900 湾曲縁部
900A〜C 水滴離脱状態
901、911 水滴
903、913 尾
905 小さな径の水滴
910 鋭角縁部
910a〜c 水滴離脱状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出する吐出口と、前記吐出口の鉛直下側に配置されて傾斜面を有する滑落台を備え、前記吐出口から吐出された水を前記傾斜面で受け止めて水滴にし、更に前記水滴を前記傾斜面に沿って下方に案内し、前記傾斜面の下側の縁部から落下させることを特徴とする水滴形成装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記吐出口の水を受け止める水滴形成領域と、前記水滴形成領域よりも下方に形成されて前記水滴形成領域よりも傾斜角が大きい加速領域を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の水滴形成装置。
【請求項3】
前記傾斜面の角度を変える角度制御装置を備えていることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の水滴形成装置。
【請求項4】
前記傾斜面の下側の前記縁部が湾曲していることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水滴形成装置。
【請求項5】
前記傾斜面は、前記水滴を案内する溝が傾斜方向に沿って形成されていることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水滴形成装置。
【請求項6】
前記吐出口に脈動させながら水を送水するポンプを備えていることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水滴形成装置。
【請求項7】
前記吐出口と前記ポンプの間に逆止弁を備え、送水する水の脈動の圧力を前記吐出口の水滴に伝えることを特徴とする、
請求項6に記載の水滴形成装置。
【請求項8】
前記縁部の途中が、前記水滴から離れる方向に折れ曲がっていることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水滴形成装置。
【請求項9】
前記縁部の折れ曲がり角度は、鋭角であることを特徴とする、
請求項8に記載の水滴形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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