説明

水濡れ判定構造及び該水濡れ判定構造を有する電池パック

【課題】水濡れの有無を良好に判定することができる水濡れ判定構造、該水濡れ判定構造を有することにより、内部への浸水の事実の有無が良好に判定される電池パックを提供する。
【解決手段】電池パック1は、素電池2と、素電池2の側面に配する保護回路基板4と、素電池2の四側面を覆う第1外装枠10及び第2外装枠11とを備える。保護回路基板4の一端部には、略矩形状を有する水濡れ判定シール9が貼着されている。水濡れ判定シール9の基材の表面の長手方向の両端部には、水溶性インクを用い、帯状に印刷してなる記録部92,92が設けられている。第1外装枠10は、保護回路基板4を覆う基板被覆部10aを備えており、該基板被覆部10aには、中央部が露出し、記録部92,92が視認されない状態で水濡れ判定シール9を配する判定窓10eが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水濡れ判定シールを外装体の窓部に対向させて配置し、電池等の水濡れ被判定体が水に濡れたか否かを判定する水濡れ判定構造、及び該水濡れ判定構造を有する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているビデオカメラ、モバイルコンピュータ、携帯電話機等の携帯電子機器の電源としては、充放電可能な直方体状の非水電解質二次電池、例えばリチウムイオン二次電池等が主として用いられている。リチウムイオン二次電池(素電池)は、正極及び負極をセパレータを介して巻回した発電要素を、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、直方体状をなすケースに収納して構成される。
【0003】
この素電池の一側面に、過充電及び過放電を防止するために電池電圧を制御する保護回路、及び素電池から外部へ電力を取り出し、又は外部から電力を取り込むための出力端子を有する保護回路基板を配置することにより電池コアが構成される。保護回路基板と素電池との間は接続用のリード板により電気的に接続されている。
電池コアの側面を絶縁性を有する、例えば合成樹脂製の外装枠で覆い、又は電池コアを例えば合成樹脂製の外装ケースに収納し、さらに素電池の平面と、外装枠又は外装ケースとをラベルで覆うことで電池パックが得られ、この電池パックが携帯電子機器に装着される。
【0004】
ところで、携帯電話機は、使用者の不注意により水に濡れたり、水没したりする場合があり、この水濡れ等により、携帯電話機の電源として用いられている電池パックの内部に水が浸入することがある。電池パックは、上述の外装枠等の外装体の内部に水が浸入した状態で使用された場合には、この水により短絡を起こして故障又は性能劣化が生じるという問題がある。
【0005】
このように水没が原因で故障又は性能劣化が生じた電池パックは、完全に乾燥させた場合には、浸水の痕跡が残り難いことから、例えば、修理に持ち込まれても故障又は性能劣化の原因の究明が非常に困難であることが多い。このため、電池パックの内部に水が浸入した事実の有無の判断を容易にするために、水濡れ判定シールを備える電池パックが開発されている。
【0006】
水濡れ判定シールは、吸水性の基材の一面に、例えば、文字、図形、模様(例えば水玉模様)をなすように水溶性インクを付着しており、電池パックの外装体の内側に設けられた判定窓に前記一面が対向する状態で配される。
【0007】
前記水濡れ判定シールを備えることにより、外装体の内部に水が浸入した場合には、浸入した水が水濡れ判定シールに浸透して水溶性インクを滲ませるから、基材の一面に施された水玉模様が滲んで不鮮明になる。外装体の内部に浸水した電池パックを完全に乾燥させた場合においても、基材の水玉模様が滲んで不鮮明になった状態で乾燥されるから、水濡れ判定シールを前記外装体の窓部から視認することにより電池パックの内部に水が浸入したか否かを判定することができる。
【0008】
特許文献1には、水溶性インクを一面に付着し、水に濡れた場合に、水溶性インクの滲みが他面(判定窓側)に現れるようにした水濡れ判定シールの発明が開示されている。この水濡れ判定シールにおいては、前記一面は判定面ではないので、水溶性インクを付着させるときの水分管理が簡易である。
【0009】
特許文献2には、吸水性の紙葉からなるベースの表面に、水溶性インクによる水没確認マークと不水溶性インクによる文字・図形情報とを形成し、前記表面を透光性のラミネートフィルムにより被覆してなる銘板を、ベースの裏面を機器筐体に向け、該機器筐体に形成した開口に水没確認マークを合致させる状態で、機器筐体の外面に貼着した小型電子機器の発明が開示されている。
【特許文献1】特開2005−189117号公報
【特許文献2】特開2001−177268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された電池パック等の従来の電池パックにおいては、電池パック(又は電子機器)の外装体の判定窓から、水濡れ判定シールに記録された模様、文字、図形等が常時視認されており、上述したように、電池パックの内部に水が浸入して、水溶性インクが水に溶解した場合、模様等が滲んだり、変色することから、水濡れの有無を判定していた。
【0011】
しかし、この構成によれば、電池パックが水に濡れなくても、高温多湿環境下で、水溶性インクが滲み、変色することがあり、浸水したと誤判定されるおそれがあった。
特許文献1の電池パックにおいては、水濡れ前には水濡れ判定シールに記録された模様、文字、図形等が視認されず、外装体の内側に浸水した場合に、水濡れ判定シールの裏面に塗布された水溶性インクが表面側まで浸透して模様等が表れるように構成されているが、上記と同様に、高温多湿環境下、水溶性インクが表面側まで浸透して滲み、浸水が生じたと誤判定されるおそれがあった。
また、近年の電池パックの薄型化により、判定窓も小さくなっており、水濡れ判定シールに記録してある模様等が見えにくく、この点からも、水濡れの有無の誤判定が生じるという問題があった。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、水濡れ判定シールの記録部を、外装体の窓部に対応する部分以外の部分に形成することにより、記録部は、水濡れ前には視認されず、外装体の内部に浸水し、水溶性インクが水に溶解して基材の面方向に拡がり、窓部に滲み出た場合に初めて視認されるので、水濡れの有無を良好に判定することができる水濡れ判定構造を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、記録部を帯状に形成することにより、外装体の内部に浸水した場合、水溶性インクが水に溶解して記録部が帯状に拡がり、より確実に視認され、水濡れの有無がより良好に判定される水濡れ判定構造を提供することを目的とする。
【0014】
そして、本発明は、高温多湿環境を想定した試験で測定される記録部の幅寸法の増加量より広い間隔を、窓部の縁部に対応する部分から隔てた状態で記録部を形成することにより、高温多湿環境下、窓部に記録部が滲み出て、浸水したと誤判定されることが抑制されている水濡れ判定構造を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、記録部を、前記縁部から0.4mm以上離隔するように形成することにより、さらに十分に誤判定が抑制されている水濡れ判定構造を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、上述の水濡れ判定構造を有することにより、内部への浸水の事実の有無が良好に判定される電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1発明に係る水濡れ判定構造は、水濡れ被判定体と、吸水性の基材の一面の端部寄りの部分に水溶性インクを用いてなる記録部が形成された水濡れ判定シールと、該水濡れ判定シールを配する窓部を有し、前記一面の中央部寄りの部分を露出させ、前記窓部の縁部から所定間隔を隔てて前記記録部を遮蔽する状態で、前記水濡れ被判定体を覆う外装体とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、水溶性インクにより文字、図形又は模様が記録された記録部は、窓部に対応する部分以外の部分に形成されているので、記録部は、水濡れ前には視認されず、外装体の内部に浸水し、水溶性インクが水に溶解して基材の面方向に拡がり、窓部に滲み出た場合に初めて視認される。
【0019】
第2発明に係る水濡れ判定構造は、第1発明において、前記記録部は帯状に形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、外装体の内部に浸水した場合、水溶性インクが水に溶解して帯状に拡がるので、より確実に記録部が視認される。
【0021】
第3発明に係る水濡れ判定構造は、第1又は第2発明において前記記録部と窓部の縁部との間隔は、温度50℃以上70℃以下、湿度90%の環境下、72時間放置した場合の前記記録部の幅寸法の増加量より長くなるように設定されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、高温多湿環境を想定した試験で測定される記録部の幅寸法の増加量より広い間隔を、窓部の縁部に対応する部分から隔てた状態で記録部が形成されているので、高温多湿環境下の水分量で、窓部の縁部から記録部が滲み出ることがない。
【0023】
第4発明に係る水濡れ判定構造は、第3発明において、前記記録部は、前記縁部から0.4mm以上離隔するように形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、記録部は、窓部の縁部から十分に離隔させて形成されているので、高温多湿環境下で、窓部の縁部から記録部が滲み出ることがより十分に抑制されている。
【0025】
第5発明に係る電池パックは、第1乃至第4発明のいずれかの水濡れ判定構造を有する電池パックであって、前記水濡れ被判定体は、二平面及び四側面を有する直方体状をなす素電池であり、前記外装体は、前記素電池の少なくとも四側面を覆うように構成され、前記素電池及び外装体の一部又は全部を覆うラベルを有することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、記録部は、水濡れ前には窓部から視認されず、外装体の内側に浸水し、水溶性インクが水に溶解して窓部に滲み出た場合に初めて視認される。
従って、浸水の事実の有無が良好に判定され、電池パックの故障の原因追求時に考慮され得る。
【発明の効果】
【0027】
第1発明によれば、水溶性インクにより文字、図形又は模様が記録された記録部は、窓部に対応する部分以外の部分に形成されており、記録部は、水濡れ前には視認されず、外装体の内部に浸水し、水溶性インクが水に溶解して窓部に滲み出た場合に初めて視認されるので、水濡れの有無を良好に判定することができる。
【0028】
第2発明によれば、記録部は帯状に形成されているので、外装体の内部に浸水した場合、水溶性インクが水に溶解して記録部が帯状に水濡れ判定シールの中央部側へ拡がり、外装体の窓部より確実に視認されるので、水濡れの有無の判定がより容易になる。
【0029】
第3発明によれば、高温多湿環境を想定した試験で測定される記録部の幅寸法の増加量より広い間隔を、窓部の縁部に対応する部分から隔てた状態で、記録部が形成されているので、高温多湿環境下に、記録部が滲んだとしても、窓部から視認されず、よって、浸水したと誤判断されることが阻止される。
【0030】
第4発明によれば、記録部は、窓部の縁部から0.4mm以上離隔するように形成されているので、より十分に誤判定が抑制されている。
【0031】
第5発明によれば、第1乃至第4発明のいずれかの水濡れ判定構造を有するので、記録部は、水濡れ前には窓部から視認されず、外装体の内側に浸水し、水に水溶性インクが溶解して窓部に滲み出た場合に初めて視認され、良好に水濡れの有無を判定することができる。
このように、浸水の事実の有無が適確に判定されるので、ユーザは、前記事実を考慮して、電池パックの交換、電子機器の修理等を販売店等に頼むことができ、販売店、メーカー等も適切な対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電池パック1を示す分解斜視図、図2は、水濡れ判定シール9を示す分解斜視図、図3は電池パック1を示す一部正面図である。
本実施の形態の電池パック1は携帯電話機の電源として用いられる。
電池パック1の水濡れ被判定体としての素電池2は角型平板状をなし、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であり、正極及び負極をセパレータを介して巻回した電極群、並びに非水電解質を、アルミニウム又はアルミニウム合金製のケースに収納してなる。素電池2の第1側面21には、絶縁板(図示せず)を介して負極端子2aが設けられ、これと平行な第2側面22には、リード取付板(図示せず)が設けられている。負極端子2aが設けられた部分以外の素電池2の全体が正極(端子)とされる。
【0033】
素電池2の負極端子2aが設けられている第1側面21に隣接する第3側面23には、絶縁性を有するスペーサ3を介し、保護回路基板4が配されている。スペーサ3には、前記負極端子2aを露出するための端子窓3aが設けられている。
保護回路基板4は、平面視が略矩形状をなし、裏面に、素電池2の過充電又は過放電等を防止するための保護回路を実装し、該保護回路を絶縁性の合成樹脂で覆ってなる保護回路実装部41を備えている。また、保護回路基板4の表面の中央部より一端部寄りには、素電池2の外部へ電力を取り出し、逆に充電のために外部から電力を取り込むための正負極、及び温度端子である出力端子42,42,42が、金メッキにより並設されている。
【0034】
保護回路基板4の他端部には、水濡れ判定シール9が貼着されている。
水濡れ判定シール9の基材91は、略矩形状をなし、吸水性を有する上質紙等からなる。該基材91の表面の長手方向の両端部には、水溶性インクを用い、帯状に印刷することにより記録部92,92が形成されている。記録部92,92及び基材91は、アクリル樹脂等からなる粘着剤94を介し、例えばPP(ポリプロピレン)等からなる透明樹脂層95により覆われている。透明樹脂層95は、水濡れ判定シール9の表面に傷がついたり、電池パック1の組立時等に記録部92,92が剥がれるのを防止したり、水濡れ判定シール9の表面側から水に濡れるのを防止する。前記上質紙の一例としてリンテック株式会社製の「55K」が挙げられ、水溶性インクの一例として、大久保インキ株式会社製の「ADSカラー:紅」が挙げられる。
基材91の裏面の短手方向の両端部には、アクリル樹脂等からなる粘着剤93,93が塗布されており、該粘着剤93,93により、水濡れ判定シール9が保護回路基板4の表面に貼着される。
【0035】
前記保護回路基板4は、一端部に形成したパッド(図示せず)が、第1リード5を介してPTC(Positive Temperature Coefficient)素子6の裏面側の電極と接続され、PTC素子6の表面側の電極は、第2リード7を介し、前記端子窓3aから露出した負極端子2aと接続されている。
保護回路基板4の他端部に形成したパッド(図示せず)は、第3リード板8及びリード取付板を介して素電池2の第2側面22と接続されている。
【0036】
合成樹脂製の第1外装枠10は、保護回路基板4を覆う基板被覆部10aと、素電池2の第1側面21及び第2側面22をそれぞれ覆う側面被覆部10b,10cとを備える。基板被覆部10aの中央部より一端部寄りには、保護回路基板4の出力端子42,42,42を露出させるための窓部10d,10d,10dが設けられている。基板被覆部10aの他端部には、保護回路基板4に貼着された水濡れ判定シール9の中央部を露出させ、水濡れの有無を判定するための判定窓10eが設けられている。判定窓10eは略矩形状を有する。
側面被覆部10b,10cの長手方向の端部には、それぞれ係止凹部10f,10gが設けられている。
【0037】
第2外装枠11は、素電池2の第4側面24を覆う側面被覆部11aと、第1側面21,第2側面22の端部を覆う側面被覆部11b,11cとを備える。側面被覆部11b,11cの長手方向の端部には、それぞれ係止凸部11d,11eが設けられている。
【0038】
前記保護回路基板4を覆うように、第1外装枠10を素電池2に嵌め合わせ、素電池2の第4側面24を覆うように第2外装枠11を嵌め合わせ、係止凹部10f,10gと係止凸部11d,11eとを係止させることにより第1外装枠10と第2外装枠11とが一体化される。
そして、素電池2の両平面、並びに第1外装枠10及び第2外装枠11により覆われた第1側面21,第2側面22に合成樹脂製のラベル13が貼着されて、電池パック1が構成される。
【0039】
以上のように構成された本実施の形態に係る電池パック1においては、前記水濡れ判定シール9により、素電池2の水濡れの有無の事実を判定する。水濡れ判定シール9は、図3の一部正面図に示すように、記録部92,92の内側端部が判定窓10eの縁部からL(mm)離隔する状態で判定窓10eに配置されている。なお、本実施態様において、電池パック1の厚みは5.6mm、水濡れ判定シール9の大きさは4mm×4mm程度であり、記録部92,92の幅は略1.4mm、Lは0.4mmである。
従って、電池パック1の水濡れ前には記録部92,92は視認されない。
【0040】
図4は、第1外装枠10の内側に浸水し、水溶性インクが水に溶解して記録部92,92が判定窓10eの縁部を超えて拡がった状態を示す一部正面図である。
図4に示すように、第1外装枠10の内側に浸水し、水溶性インクが水に溶解して判定窓10eに滲み出た場合に初めて記録部92,92が現れる。そして、前記Lを、高温多湿環境下の水分量では、記録部92,92が判定窓10eに滲み出ない間隔とすることにより、高温多湿環境下において、記録部92,92が判定窓10eまで拡がり、浸水が生じたと誤判定されることがない。
【0041】
本実施の形態においては、前記Lの好ましい範囲を求めるために、予め、以下に示す試験を行った。
まず、上質紙(リンテック株式会社製の「55K」)に、水溶性インク(大久保インキ株式会社製の「ADSカラー:紅」)を用いて、幅略1.4〜1.5mmの帯状に記録部を形成した複数の試料を作製した。そして、試料を温度60℃、湿度90%の高温多湿環境下に24時間又は72時間放置し、前記記録部の幅寸法の増加量を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1より、温度60℃、湿度90%の高温多湿環境下で24時間放置した場合は、記録部の幅寸法の増加量の平均値は0.221mmであり、72時間放置した場合は、前記増加量の平均値が0.334mmであり、前記増加量の最大値は0.372mmであることが分かる。
本実施の形態においては、確実に誤判定が防止されるように前記Lを0.4mmとしている。
従って、本実施の形態においては、高温多湿環境下の水分量で、記録部92,92が拡がって判定窓10eから視認され、浸水が生じたと誤判定されることがなく、水濡れの有無を良好に判定することができる。
よって、浸水の事実の有無が確実に判定され、電池パックの故障の原因追求時に考慮され得る。このように、浸水の事実の有無が適確に判定されるので、ユーザは、前記事実を考慮して、電池パックの交換、修理等を販売店等に頼むことができ、販売店、メーカー等も適切な対応が可能となる。
【0044】
なお、前記Lを0.4mm以上にすれば、高温多湿環境下における誤判定が略確実に防止されるが、これに限定されるものではなく、高温多湿環境下において誤判定が十分に防止される間隔であればよい。そして、前記Lの上限は、記録部92,92を形成するために用いる水溶性インクの量、及び電池パック1の厚み等から定まる。
また、本実施の形態においては、水濡れ判定シール9を保護回路基板4に貼着する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、水濡れ判定シール9を第1外装枠10の判定窓10eの外縁部に貼着するように構成してもよい。
さらに、本実施の形態においては、外装体である第1外装枠10及び第2外装枠11は枠状であるが、外装体は箱体状等であってもよい。
【0045】
そして、記録部92,92は帯状に形成されている場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、他の図形、文字又は模様をなすように記録することにしてもよい。また、記録部92,92は基材91の表面に印刷により形成される場合に限定されず、塗布等により形成することにしてもよい。
さらに、判定窓10eが略矩形状をなす場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、判定窓10eは略楕円状等の形状を有するものであってもよい。判定窓10eが略楕円状を有する場合、例えば上下の縁部から略0.4mm、間隔を隔てたU字状に記録部92,92を形成することができる。
【0046】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る電池パックに備えられる水濡れ判定シール96を示す斜視図である。図中、図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態の電池パックにおいては、水濡れ判定シール96の基材91の裏面全体に亘り粘着剤97が塗布されていること、透明樹脂層95を有しないことが、実施の形態1に係る電池パック1と異なる。
【0047】
本実施の形態においては、実施の形態1に係る水濡れ判定シール9と同様に、記録部92,92が判定窓10eの縁部から所定間隔を隔てる状態で配置されるように構成されているので、高温多湿環境下に誤判定されることが防止され、水濡れの有無を良好に判定することができる。
以上のように構成されているので、透明樹脂層95を省略しても、誤判定のおそれがなく、部材点数および工程数の削減を図ることができる。
【0048】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3に係る電池パックに備えられる水濡れ判定シール98を示す斜視図である。図中、図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態の電池パックにおいては、水濡れ判定シール98の基材91の裏面全体に亘り粘着剤97が塗布されていること、透明樹脂層95の代わりに、記録部92,92及び基材91が透明のマットニス層99により覆われていることが、実施の形態1に係る電池パック1と異なる。
【0049】
本実施の形態においては、実施の形態1に係る水濡れ判定シール9と同様に、記録部92,92が判定窓10eの縁部から所定間隔を隔てる状態で配置されるように構成されているので、高温多湿環境下で誤判定されることが防止され、水濡れの有無を良好に判定することができる。
そして、印刷された記録部92,92がマットニス層99により保護されているので、水濡れ判定シール98の表面に傷がついたり、汚れるのを安価に防止することができる。
【0050】
なお、前記実施の形態1乃至3においては、素電池2がリチウムイオン二次電池である場合につき説明しているがこれに限定されるものではない。
また、前記実施の形態1乃至3においては、電池パックが携帯電話機の電源として用いられる場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、本発明は、ビデオカメラ、モバイルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、MP3プレーヤー等の他の携帯電子機器の電源として用いられる電池パックにも適用することができる。
そして、本発明の構成は小型の電子機器に対して好適であることから、前記実施の形態1乃至3においては、本発明の水濡れ判定構造を、水濡れ被判定体としての素電池2を有する電池パックに適用した場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、菓子包装容器等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電池パックを示す分解斜視図である。
【図2】水濡れ判定シールを示す分解斜視図である。
【図3】電池パックを示す一部正面図である。
【図4】第1外装枠の内側に浸水し、水溶性インクが水に溶解して記録部が判定窓の縁部を超えて拡がった状態を示す一部正面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る電池パックに備えられる水濡れ判定シールを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る電池パックに備えられる水濡れ判定シールを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電池パック
2 素電池
2a 負極端子
21 第1側面
22 第2側面
23 第3側面
24 第4側面
3 スペーサ
4 保護回路基板
41 保護回路実装部
42 出力端子
5 第1リード
6 PTC素子
7 第2リード
8 第3リード
9、96、98 水濡れ判定シール
91 基材
92 記録部
93、94、97 粘着剤
95 透明樹脂層
99 マットニス層
10 第1外装枠
11 第2外装枠
13 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水濡れ被判定体と、
吸水性の基材の一面の端部寄りの部分に水溶性インクを用いてなる記録部が形成された水濡れ判定シールと、
該水濡れ判定シールを配する窓部を有し、前記一面の中央部寄りの部分を露出させ、前記窓部の縁部から所定間隔を隔てて前記記録部を遮蔽する状態で、前記水濡れ被判定体を覆う外装体と
を備えることを特徴とする水濡れ判定構造。
【請求項2】
前記記録部は帯状に形成されている請求項1に記載の水濡れ判定構造。
【請求項3】
前記記録部と窓部の縁部との間隔は、温度50℃以上70℃以下、湿度90%の環境下、72時間放置した場合の前記記録部の幅寸法の増加量より長くなるように設定されている請求項1又は2に記載の水濡れ判定構造。
【請求項4】
前記記録部は、前記縁部から0.4mm以上離隔するように形成されている請求項3に記載の水濡れ判定構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の水濡れ判定構造を有する電池パックであって、
前記水濡れ被判定体は、二平面及び四側面を有する直方体状をなす素電池であり、
前記外装体は、前記素電池の少なくとも四側面を覆うように構成され、
前記素電池及び外装体の一部又は全部を覆うラベルを有することを特徴とする電池パック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−14489(P2009−14489A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176273(P2007−176273)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(597176832)三洋ジーエスソフトエナジー株式会社 (94)
【Fターム(参考)】