説明

水熱源空調システム

【課題】水を熱源とする空調装置の効率低下を防ぐことができる水熱源空調システムを提供する。
【解決手段】水熱源空調システム1は、チラー3と、水槽4と、第1ポンプ5と、第2ポンプ7と、制御部15とを備える。チラー3は、水を加熱または冷却し、水槽4は、この水を貯留する。第1ポンプ5は、チラー3によって加熱または冷却された水を水槽4に供給する。第2ポンプ7は、水槽4内に基づく熱エネルギーを空調装置2a,2bに供給する。制御部15は、水槽4の水の温度が所定範囲内となるように、第1ポンプ5、第2ポンプ7及びチラー3を含む機器群9を制御する。また、制御部15は、水槽4の水の温度が所定範囲外となった場合、機器群9に関する異常が生じていると判断し、その判断結果に基づいて機器群9に対し異常対応制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱源空調システム、特に、水を熱源とする空調装置の効率を向上させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2009−002532号公報)に開示されているように、水を熱源とする空調装置を用いたシステムが知られている。特許文献1に係るシステムは、冷媒が循環する冷媒循環系統、ガスエンジン等である機械的駆動源の排熱が流れる排熱循環系統、及び冷却水が循環する冷却水循環系統を有しており、空調装置の室外機が冷却水により冷却される構成となっている。特に、特許文献1に係るシステムでは、空調装置の冷房運転時に冷却水の温度が所定温度よりも低くなった場合、機械的駆動源の排熱を冷却水循環系統における冷却水に投入することで、冷却水の温度を上昇させる制御が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記空調装置の熱源である水を貯留するためのものとして、内部が複数の区画に区分された水槽が用いられる場合がある。当該水槽内の水は循環しており、区画毎に温度差が生じている。このような水槽においては、各区画内の水の温度制御が行われるが、各区画内の水の温度に異常が生じると、空調装置の効率(具体的には、COP:Coefficient Of Performance)が低下し、消費電力の増大を招く恐れがある。
【0004】
そこで、本発明は、水を熱源とする空調装置の効率低下を防ぐことができる水熱源空調システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1に係る水熱源空調システムは、水を熱源とする空調装置の効率を向上させるシステムである。水熱源空調システムは、加熱冷却部と、貯水部と、第1ポンプと、第2ポンプと、制御部とを備える。加熱冷却部は、水を加熱または冷却する。貯水部は、加熱冷却部によって加熱または冷却された水を貯留する。第1ポンプは、加熱冷却部によって加熱または冷却された水を貯留部に供給可能である。第2ポンプは、貯水部内の水に基づく熱エネルギーを空調装置に供給可能である。制御部は、貯水部内の水の温度が所定範囲内となるように、機器群を制御する。機器群は、第1ポンプ、第2ポンプ、及び加熱冷却部を含む。制御部は、貯水部内の水の温度が所定範囲外となった場合、機器群に関する異常が生じていると判断し、その判断結果に基づいて機器群に対し異常対応制御を行う。
【0006】
この水熱源空調システムによると、貯水部内の水の温度が所定範囲外である場合には、第1ポンプや第2ポンプ等を含む機器群に関する異常が生じていると判断され、機器群に対し異常対応制御が行われる。ここで、機器群に関する異常としては、例えば第2ポンプの流量過剰や流量不足等の流量異常、加熱冷却部及び第1ポンプの能力不足等が挙げられる。異常対応制御としては、第2ポンプの流量を絞る制御や逆に流量を増やす制御等が挙げられる。これにより、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができ、従って水を熱源とする空調装置の効率低下及び消費電力の増大を防ぐことができる。
【0007】
尚、上記システムに係る第2ポンプは、貯水部内の水に基づく熱エネルギーを、空調装置に直接供給してもよいし、例えば熱交換器等を介して空調装置に供給してもよい。
【0008】
発明2に係る水熱源空調システムは、発明1に係る水熱源空調システムであって、異常対応制御は、機器群に含まれる第1ポンプ、第2ポンプ及び加熱冷却部の少なくとも1つに対し、貯水部内の水の温度が所定範囲内である場合の運転とは異なる運転を行わせる制御である。
【0009】
この水熱源空調システムによると、機器群に関する異常が生じていると制御部によって判断された場合には、機器群である第1ポンプ、第2ポンプ及び加熱冷却部の少なくとも1つに対し、正常時(即ち、水温が所定範囲内の場合)の制御とは異なる制御が行われる。従って、第1ポンプ、第2ポンプ及び加熱冷却部の中に異常の原因となるものがある場合には、当該異常を改善もしくは解消することができる。
【0010】
発明3に係る水熱源空調システムは、発明2に係る水熱源空調システムであって、第2ポンプは複数台設けられている。異常対応制御には、第1制御、第2制御及び第3制御の少なくとも1つが含まれる。第1制御は、第2ポンプが複数台運転している場合、第2ポンプの運転台数を順次減らす制御である。第2制御は、第2ポンプが1台運転している場合、運転している第2ポンプの回転数を減少させる制御である。第3制御は、加熱冷却部及び第1ポンプが運転していない場合に、この加熱冷却部及び第1ポンプを運転させる制御である。
【0011】
第1制御及び第2制御は、第2ポンプによって循環される水の流量を減少させる制御であって、第3制御は、加熱冷却部によって加熱または冷却された水を貯水部へ供給させる制御であると言える。この水熱源空調システムによると、生じている機器群に関する異常が第2ポンプの流量異常(具体的には、流量過剰)である場合には、第1制御及び第2制御によって当該異常が改善され、生じている機器群に関する異常が貯水部への水の供給不足に基づく異常である場合には、第3制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0012】
発明4に係る水熱源空調システムは、発明3に係る水熱源空調システムであって、制御部は、異常対応制御として、第1制御、第2制御及び第3制御を所定の順序で行う。
【0013】
この水熱源空調システムでは、実行される異常対応制御の内容が所定の順序で変化するため、機器群に関する異常として良く考えられる第2ポンプの流量異常(具体的には、流量過剰)が生じている場合には、第1制御及び第2制御によって当該異常が改善もしくは解消される。また、機器群に関する異常として良く考えられる貯水部への水の供給不足に基づく異常が生じている場合には、第3制御によって当該異常が改善もしくは解消される。つまり、この水熱源空調システムによると、このような第1制御から第3制御が異常対応制御として順に行われるため、機器群に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群に関する異常が改善もしくは解消される。従って、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0014】
発明5に係る水熱源空調システムは、発明4に係る水熱源空調システムであって、制御部は、冷房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合、第1制御、第2制御及び第3制御の順序で異常対応制御を行う。
【0015】
冷房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合の機器群に関する異常の内容としては、第2ポンプの流量異常(具体的には、流量過剰)が最も良く挙げられ、次いで、貯水部への水の供給不足に基づく異常が挙げられる。この水熱源空調システムでは、冷房運転時、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合、最も可能性の高い第2ポンプの流量異常(流量過剰)に対応する第1制御及び第2制御が行われ、次いで次に可能性の高い貯水部への水の供給不足に対応する第3制御が行われる。即ち、この水熱源空調システムでは、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0016】
発明6に係る水熱源空調システムは、発明4に係る水熱源空調システムであって、制御部は、暖房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合、第1制御、第2制御及び第3制御の順序で異常対応制御を行う。
【0017】
暖房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合の機器群に関する異常の内容としては、第2ポンプの流量異常(具体的には、流量過剰)が最も良く挙げられ、次いで、貯水部への水の供給不足に基づく異常が挙げられる。この水熱源空調システムでは、暖房運転時、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合、最も可能性の高い第2ポンプの流量異常(流量過剰)に対応する第1制御及び第2制御が行われ、次いで次に可能性の高い貯水部への水の供給不足に対応する第3制御が行われる。即ち、この水熱源空調システムでは、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0018】
発明7に係る水熱源空調システムは、発明2に係る水熱源空調システムであって、第2ポンプ及び加熱冷却部は、それぞれ複数台設けられている。異常対応制御には、第4制御、第5制御及び第6制御の少なくとも1つが含まれる。第4制御は、加熱冷却部及び第1ポンプが複数台運転している場合、加熱冷却部及び第1ポンプの運転台数を順次減らす制御である。第5制御は、第2ポンプが1台運転している場合、運転している第2ポンプの回転数を増加させる制御である。第6制御は、第2ポンプの運転台数を順次増やす制御である。
【0019】
第4制御は、加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力を減らす制御であって、第5制御及び第6制御は、第2ポンプによって循環される水の流量を増加させる制御であると言える。この水熱源空調システムによると、生じている機器群に関する異常の内容が加熱冷却部の運転能力の過剰さである場合には、第4制御によって当該異常が改善もしくは解消され、生じている機器群に関する異常の内容が第2ポンプによる流量異常(具体的には、流量不足)である場合には、第5制御及び第6制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0020】
発明8に係る水熱源空調システムは、発明7に係る水熱源空調システムであって、制御部は、異常対応制御として、第4制御、第5制御及び第6制御を所定の順序で行う。
【0021】
この水熱源空調システムでは、実行される異常対応制御の内容が所定の順序で変化するため、機器群に関する異常の内容として良く考えられる加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さが生じている場合には、第4制御によって当該異常が改善される。また、第2ポンプの流量異常(具体的には、流量不足)が機器群に関する異常の内容として生じている場合には、第5制御または第6制御によって当該異常が改善もしくは解消される。つまり、この水熱源空調システムによると、このような第4制御から第6制御が異常対応制御として順に行われるため、機器群に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群に関する異常が改善もしくは解消される。従って、貯水部内の水の温度異常を改善もしくは解消することができる。
【0022】
発明9に係る水熱源空調システムは、発明8に係る水熱源空調システムであって、制御部は、冷房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合、第4制御、第5制御及び第6制御の順序で異常対応制御を行う。
【0023】
冷房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合の機器群に関する異常の内容としては、加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さが最も良く挙げられ、次いで、第2ポンプの流量異常(具体的には、流量不足)が挙げられる。この水熱源空調システムでは、冷房運転時、貯水部内の水の温度が所定範囲以下となった場合、最も可能性の高い加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さに対応する第4制御が行われ、次いで次に可能性の高い第2ポンプの流量異常(流量不足)に対応する第5制御及び第6制御が行われる。即ち、この水熱源空調システムでは、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0024】
発明10に係る水熱源空調システムは、発明8に係る水熱源空調システムであって、制御部は、暖房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合、第4制御、第5制御及び第6制御の順序で異常対応制御を行う。
【0025】
暖房運転時に、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合の機器群に関する異常の内容としては、加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さが最も良く挙げられ、次いで第2ポンプの流量異常(具体的には、流量不足)が挙げられる。この水熱源空調システムでは、暖房運転時、貯水部内の水の温度が所定範囲以上となった場合、最も可能性の高い加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さに対応する第4制御が行われ、次いで次に可能性の高い第2ポンプの流量異常(流量不足)に対応する第5制御及び第6制御が行われる。即ち、この水熱源空調システムでは、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0026】
発明11に係る水熱源空調システムは、発明1〜10のいずれかに係る水熱源空調システムであって、出力部を更に備える。出力部は、判断結果、制御内容情報、及び結果情報の少なくとも1つを外部に出力する。制御内容情報は、異常対応制御の内容を示す情報である。結果情報は、異常対応制御が行われた後の異常の有無及び程度を含む情報である。
【0027】
出力部による判断結果、制御内容情報及び結果情報の出力先としては、水熱源空調システムを遠隔制御するためのリモートコントローラや、当該システムが通信ネットワークを介して接続されている外部端末等が挙げられる。従って、この水熱源空調システムによると、出力部によってリモートコントローラや外部端末に出力される判断結果、制御内容情報及び結果情報により、当該システムのユーザや外部端末の操作者は、水熱源空調システムにおける異常の有無や、当該異常の内容、異常対応制御が行われた後のシステムの状態等を知ることができる。そのため、未だ機器群に関する異常が改善もしくは解消されていない場合には、システムのユーザや外部端末の操作者は、それまでに行った制御とは別の制御を策として講じることができる。また、結果情報が、機器群に関する異常が改善もしくは解消されたことを示す情報であれば、ユーザや外部端末の操作者は、当該結果情報及び制御内容情報に基づき、生じていた機器群に関する異常の内容を特定することができる。
【0028】
発明12に係る水熱源空調システムは、発明1〜11のいずれかに係る水熱源空調システムであって、貯水部は、その内部が複数の区画に区分されており、複数の区画を順に水が流れることで、区画毎に温度差が生じている。第1ポンプは、冷房運転時、貯水部のうち温度の一番低い区画に加熱冷却部からの水を供給する。また、第1ポンプは、暖房運転時、貯水部のうち温度の一番高い区画に加熱冷却部からの水を供給する。
【0029】
ここで、加熱冷却部は、冷房運転時には水を冷却し、暖房運転時には水を加熱する。そのため、冷房運転及び暖房運転のどちらの運転が行われても、貯水部内は、低い側の区画では温度が低く、高い側の区画では温度が高くなる。
【0030】
発明13に係る水熱源空調システムは、発明12に係る水熱源空調システムであって、制御部は、冷房運転時、貯水部のうち温度の一番低い区画内の温度が所定範囲内となるように、機器群を制御する。制御部は、暖房運転時、貯水部のうち温度の一番高い区画内の温度が所定範囲内となるように、機器群を制御する。
【0031】
この水熱源空調システムでは、冷房運転時には、一番温度の低い区画内の水の温度によって機器群に関する異常の判断が行われ、暖房運転時には、一番温度の高い区画内の水の温度によって機器群に関する異常の判断が行われる。
【発明の効果】
【0032】
発明1に係る水熱源空調システムによると、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができ、従って水を熱源とする空調装置の効率低下及び消費電力の増大を防ぐことができる。
【0033】
発明2に係る水熱源空調システムによると、機器群である第1ポンプ、第2ポンプ及び加熱冷却部の中に異常の原因となるものがある場合には、当該異常を改善もしくは解消することができる。
【0034】
発明3に係る水熱源空調システムによると、生じている機器群に関する異常が第2ポンプの流量異常(具体的には、流量過剰)である場合には、第1制御及び第2制御によって当該異常が改善され、生じている機器群に関する異常が貯水部への水の供給不足に基づく異常である場合には、第3制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0035】
発明4に係る水熱源空調システムによると、第1制御から第3制御が異常対応制御として順に行われるため、機器群に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群に関する異常が改善もしくは解消される。従って、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0036】
発明5及び発明6に係る水熱源空調システムによると、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0037】
発明7に係る水熱源空調システムによると、生じている機器群に関する異常の内容が加熱冷却部及び第1ポンプの運転能力の過剰さである場合には、第4制御によって当該異常が改善もしくは解消され、生じている機器群に関する異常の内容が第2ポンプによる流量異常(具体的には、流量不足)である場合には、第5制御及び第6制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0038】
発明8に係る水熱源空調システムによると、第4制御から第6制御が異常対応制御として順に行われるため、機器群に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群に関する異常が改善もしくは解消される。従って、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0039】
発明9及び発明10に係る水熱源空調システムによると、機器群に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0040】
発明11に係る水熱源空調システムによると、未だ機器群に関する異常が改善もしくは解消されていない場合には、システムのユーザや外部端末の操作者は、それまでに行った制御とは別の制御を策として講じることができる。また、結果情報が、機器群に関する異常が改善もしくは解消されたことを示す情報であれば、ユーザや外部端末の操作者は、当該結果情報及び制御内容情報に基づき、生じていた機器群に関する異常の内容を特定することができる。
【0041】
発明12に係る水熱源空調システムによると、冷房運転及び暖房運転のどちらの運転が行われても、貯水部内は、低い側の区画では温度が低く、高い側の区画では温度が高くなる。
【0042】
発明13に係る水熱源空調システムによると、冷房運転時には、一番温度の低い区画内の水の温度によって機器群に関する異常の判断が行われ、暖房運転時には、一番温度の高い区画内の水の温度によって機器群に関する異常の判断が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係る水熱源空調システムの構成を概略的に示す図。
【図2】本実施形態に係る水熱源空調システムの制御部、及び制御部に接続された機器を模式的に示す図。
【図3】本実施形態に係る水熱源空調システムの冷房サイクルの説明図。
【図4】本実施形態に係る水熱源空調システムが冷房サイクルを行う場合の、水槽の各区画内の温度を示すグラフ。
【図5】本実施形態に係る水熱源空調システムの暖房サイクルの説明図。
【図6】本実施形態に係る水熱源空調システムが暖房サイクルを行う場合の、水槽の各区画内の温度を示すグラフ。
【図7】判断結果、制御内容情報及び結果情報の画面表示例。
【図8】本実施形態に係る水熱源空調システムの全体的な動作の流れを示すフローチャート。
【図9】本実施形態に係る水熱源空調システムの全体的な動作の流れを示すフローチャート。
【図10】図8,9に係る異常対応制御1を示すサブルーチン。
【図11】図8,9に係る異常対応制御2を示すサブルーチン。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る水熱源空調システムについて、図面を用いて詳述する。
【0045】
(1)概要
図1は、本実施形態に係る水熱源空調システム1の構成図である。図1の水熱源空調システム1は、水を熱源とする空調装置2a,2bを、当該水を用いて駆動させるためのシステムであって、空調装置2a,2bの効率(具体的には、COP:Coefficient Of Performance)を向上させることができる。水熱源空調システム1は、主として、空調装置2a,2bの熱源である水を貯留する1次側回路1aと、貯留されている水の熱エネルギーを1次側回路1aから受け取り空調装置2a,2bへと送る2次側回路1bとで構成されている。
【0046】
ここで、空調装置2a,2bは、冷房運転及び暖房運転を行うことが可能であって、屋外に設置されている室外機21a,21bと、空調対象空間となる室内の壁や天井等に設置されている室内機23a,23bとを、それぞれ有している。各室外機21a,21bは、内部に室外機用水熱交換器22a,22bを有している。室外機用水熱交換器22a,22bは、2次側回路1b内を流れる水と、室外機21a,21b及び室内機23a,23bの間を流れる冷媒との間で熱交換を行う。室外機21a,21b及び室内機23a,23bの間を流れる冷媒としては、HFC系冷媒の一種であるHFC−410Aや、CO2等が挙げられる。その他、室外機21a,21bは、圧縮機や室外ファン(いずれも図示せず)等を有している。また、室内機23a,23bは、室内ファン(図示せず)等を有しており、冷たい空気(冷房運転の場合)や暖かい空気(暖房運転の場合)を室内に供給することができる。
【0047】
そして、本実施形態に係る水熱源空調システム1は、空調装置2a,2bが冷房運転を行う際には冷房サイクルを行い、空調装置2a,2bが暖房運転を行う際には暖房サイクルを行う。冷房サイクル及び暖房サイクルについては、「(3)動作」の「(3−1)冷房サイクル」「(3−2)暖房サイクル」にて説明する。特に、本実施形態に係る水熱源空調システム1は、1次側回路1aにおいて、空調装置2a,2bの熱源となる水を貯留する水槽4(貯水部に相当)を有している。水熱源空調システム1は、当該水槽4内の水の温度制御を行うことで、空調装置2a,2bに供給される熱エネルギーの調整を行い、空調装置2a,2bの効率の向上を実現させている。従って、水槽4内の水の温度が異常となると、この異常は空調装置2a,2bに供給される熱エネルギーに影響を及ぼし、その結果空調装置2a,2bの効率を低下させてしまう。そこで、水熱源空調システム1は、水槽4内の水の温度が異常となった場合、この異常を解消もしくは改善するような制御を1次側回路1aに対し行うことで、空調装置2a,2bの効率の低下を防ぐ。
【0048】
尚、1次側回路1a及び2次側回路1bを構成する各機器は、室内機23a,23bの設置されている空調対象空間とは別の空間に設置されている。また、図1等では、一例として、空調装置2a,2bの設置台数が2台である場合を表しているが、空調装置2a,2bの設置台数はこれに限定されず、何台であってもよい。
【0049】
(2)構成
以下より、本実施形態に係る水熱源空調システム1の詳細な構成について説明する。
【0050】
図1に示すように、水熱源空調システム1は、1次側回路1aを構成する機器として、チラー3(加熱冷却部に相当)、水槽4、第1ポンプ5及び第2ポンプ7を備えると共に、2次側回路1bを構成する機器として、熱交換器10及び第3ポンプ11を備える。更に、水熱源空調システム1は、図2に示すように、制御部15及び出力部16を備える。
【0051】
1次側回路1aのチラー3、水槽4及び第1ポンプ5は、配管L1,L2によって環状に接続されている。2次側回路1bの熱交換器10及び第3ポンプ11は、配管L4,L5,L6によって互いに接続されていると共に、空調装置2a,2bにも直接接続されている。
【0052】
(2−1)チラー
チラー3は、空調装置2a,2bの熱源となる水を加熱または冷却するためのものである。チラー3によって加熱または冷却された水は、配管L1または配管L2を介して水槽4に貯留される。尚、チラー3による水の加熱動作及び冷却動作は、制御部15によって制御される。
【0053】
尚、図1、図3、図5においては、1台のチラー3を図示してはいるが、本実施形態に係るチラー3は、複数台が並列に設置されている。具体的には、複数台のチラー3は、互いに並列に、それぞれ配管L1,L2に接続されている。個々のチラー3のオン及びオフは、制御部15によって制御され、各チラー3が加熱または冷却した水は、配管L1または配管L2を経て水槽4に供給される。
【0054】
(2−2)水槽
水槽4は、チラー3によって加熱または冷却された水を貯留するためのものである。つまり、水槽4は、空調装置2a,2bの熱源を蓄熱するためのものである。一例として、水槽4は、密閉型ではなく、上側が開放された直方体の形状を有しており、例えば深さが3m、横が10m、奥行きが20mの大きさを有する。
【0055】
特に、本実施形態に係る水槽4は、図1に示すように、内部が複数の区画に区分されている。具体的に、本実施形態に係る水槽4は、高温側区画41、中高温側区画42、中低温側区画43、低温側区画44の4つの区画に区分されている。水槽4の内部においては、高温側区画41、中高温側区画42、中低温側区画43及び低温側区画44の順(または、低温側区画44、中低温側区画43、中高温側区画42、高温側区画41の順)に水が流れており、これによって水槽4内部には、図4,6に示すような温度差が区画毎に生じている。図4,6では、横軸を区画の種類、縦軸を区画内の温度として、水槽4内の区画毎の水の温度を表している。図4,6に示すように、高温側区画41における水の温度が最も高く、逆に低温側区画44における水の温度が最も低くなっている。つまり、図4,6に示すように、水槽4内の温度は、高温側区画41から低温側区画44へと連続的に低くなっているが、ここでは、各区画における中間点あたりの温度を、“各区画の温度”と言う。一例としては、高温側区画41、中高温側区画42、中低温側区画43、低温側区画44の順に、各区画内の水の温度はそれぞれ30℃、26.7℃、23.3℃、20℃である。尚、水槽4内の水の流れは、後述する第1ポンプ5と第2ポンプ7との流量の差によって生成される。
【0056】
尚、図示してはいないが、水槽4の内側であって、かつ各区画41〜44の中央付近には、水槽4内の水の温度を検出するための温度センサが設けられている。特に、低温側区画44内の中央付近の部分、ならびに高温側区画41内の中央付近の部分に、それぞれ温度センサが設けられている。この温度センサによって検出された水の温度は、制御部15によって取り込まれ、水熱源空調システム1の1次側回路1aにおいて異常が生じているか否かを制御部15が把握する際に用いられる。
【0057】
(2−3)第1ポンプ
第1ポンプ5は、チラー3と水槽4とを繋ぐ配管L1上に接続されている。第1ポンプ5は、チラー3によって加熱または冷却された水を水槽4に供給することができ、常にチラー3と同期して運転を行う。具体的には、第1ポンプ5は、冷房サイクル時には、チラー3によって冷却された水を配管L1を介して水槽4の低温側区画44へと送り、高温側区画41内の水を配管L2を介してチラー3へと戻す(図3)。逆に、暖房サイクル時には、第1ポンプ5は、チラー3によって加熱された水を配管L2を介して水槽4の高温側区画41へと送り、低温側区画44内の水を配管L1を介してチラー3へと戻す(図5)。尚、冷房サイクル及び暖房サイクル時に、第1ポンプ5が高温側区画41及び低温側区画44のどちらに水を供給するかについては、第1ポンプ5の流出口側に接続されている四路切換弁6によって切り換えられる。
【0058】
このような第1ポンプ5としては、遠心式や容積式のポンプ要素(図示せず)が第1ポンプ5用のモータ(図示せず)によって駆動されるポンプを採用することができる。第1ポンプ5用のモータは、インバータ装置(図示せず)によってその回転数(即ち、運転周波数)を可変でき、これにより第1ポンプ5の容量制御ができる。
【0059】
(2−4)第2ポンプ
第2ポンプ7は、水槽4の低温側区画44と熱交換器10と高温側区画41とを繋ぐ配管L3上に接続されている。第2ポンプ7は、水槽4内の水に基づく熱エネルギーを空調装置2a,2bに供給することができる。具体的に、第2ポンプ7は、冷房サイクル時には、水槽4内の水を低温側区画44から熱交換器10を経由して、高温側区画41へと送り(図3)、暖房サイクル時には、水槽4内の水を高温側区画41から熱交換器10を経由して、低温側区画44へと送ることができる(図5)。尚、第2ポンプ7が水槽4内の水を低温側区画44から熱交換器10、または高温側区画41から熱交換器10のどちらの方向に流すかについては、第2ポンプ7の流出口側に接続されている四路切換弁8によって切り換えられる。
【0060】
このような第2ポンプ7としては、第1ポンプ5と同様、遠心式や容積式のポンプ要素(図示せず)が第2ポンプ7用のモータ(図示せず)によって駆動されるポンプを採用することができる。第2ポンプ7用のモータは、インバータ装置(図示せず)によってその回転数(即ち、運転周波数)を可変でき、これにより第2ポンプ7の容量制御ができる。
【0061】
尚、本実施形態では、図示してはいないが、第2ポンプ7が複数台設けられており、複数の第2ポンプ7は互いに並列に接続されている。個々の第2ポンプ7のオン及びオフ等の制御は、制御部15によって制御され、複数の第2ポンプ7は、それぞれ水槽4から水を吸い上げて熱交換器10へと送り、熱交換器10にて熱交換された後の水を再度水槽4に戻すことができる。
【0062】
尚、以下では、説明の便宜上、1次側回路1aに含まれる第1ポンプ5、第2ポンプ7及びチラー3を、まとめて機器群9と言う(図2)。
【0063】
(2−5)熱交換器
熱交換器10は、1次側回路1aの配管L3上を流れている水槽4からの水と、2次側回路1bの配管L4,L5,L6上を流れている水との間で熱交換を行う、いわゆる水―水熱交換器である。熱交換器10にて熱交換された後の2次側回路1b側の水は、空調装置2a,2bに供給されることから、熱交換器10は、空調装置2a,2bの熱源として機能する。
【0064】
(2−6)第3ポンプ
第3ポンプ11は、配管L5と空調装置2a,2bに直接繋がれている配管L6との間に接続されており、2次側回路1bの水の流れを生成する。具体的には、冷房サイクル時、第3ポンプ11は、四路切換弁12による流路切り換え動作により、室外機21a,21bから配管L6、第3ポンプ11、配管L5、熱交換器10、配管L4を介して再度室外機21a,21bへと水が流れるように、水を循環させる(図3)。また、暖房サイクル時、第3ポンプ11は、四路切換弁12による流路切り換え動作により、室外機21a,21bから配管L4、熱交換器10、配管L5、第3ポンプ11、配管L6を介して再度室外機21a,21bと水が流れるように、水を循環させる(図5)。尚、第3ポンプ11が水を室外機21a,21bからどちらの配管L4,L6へと流すかについては、第3ポンプ11の流出口側に接続されている四路切換弁12によって切り換えられる。
【0065】
このような第3ポンプ11としては、第1ポンプ5や第2ポンプ7と同様、遠心式や容積式のポンプ要素(図示せず)が第3ポンプ11用のモータ(図示せず)によって駆動されるポンプを採用することができる。第3ポンプ11用のモータは、インバータ装置(図示せず)によってその回転数(即ち、運転周波数)を可変でき、これにより第3ポンプ11の容量制御ができる。
【0066】
(2−7)制御部
制御部15は、RAMやROM等のメモリとCPUとで構成されるマイクロコンピュータであって、図2に示すように、1次側回路1aの機器群9(具体的には、チラー3、第1ポンプ5及び第2ポンプ7)、1次側回路1a及び2次側回路1bの四路切換弁6,8,12、2次側回路1bの第3ポンプ11と接続されており、接続された各機器の制御を行う。例えば、制御部15は、チラー3によって加熱または冷却される水の温度の決定、チラー3のオン及びオフの制御、水槽4内の高温側区画41または低温側区画44の基準となる温度の設定(以下、設定値という)、冷房サイクル及び暖房サイクル毎の四路切換弁6,8,12の流路切り換え制御を行う。設定値は、冷房サイクル及び暖房サイクルが開始される際の、水の温度の目標値として用いられる。また、制御部15は、第1ポンプ5、第2ポンプ7、及び第3ポンプ11それぞれのオン及びオフや、回転数制御等を行う。
【0067】
特に、本実施形態に係る制御部15は、冷房サイクル及び暖房サイクル時、水槽4の水の温度(具体的には、低温側区画44または高温側区画41内の温度)が所定範囲内となるように、機器群9を制御する。そして、制御部15は、水槽4の水の温度が所定範囲外となった場合には、機器群9に関する異常が生じていると判断し、その判断結果に基づいて機器群9に対し異常対応制御を行う。
【0068】
−所定範囲−
ここで、所定範囲について説明する。所定範囲の上限値及び下限値は、高温側区画41または低温側区画44における設定値に対して所定の幅増減した値となっている。
【0069】
例えば、図4,6に示すように、低温側区画44において、設定値が“20℃”であるとすると、所定範囲は“15〜25℃”であり、この場合、上限値が“25℃”、下限値が“15℃”となる。また、高温側区画41において、設定値が“30℃”であるとすると、所定範囲は“25〜35℃”であり、この場合、上限値が“35℃”、下限値が“25℃”となる。従って、例えば冷房サイクル時、低温側区画44の水の温度が“23℃”であれば、制御部15は、当該温度“23℃”は低温側区画44における所定の範囲“15〜25℃”内であるため、機器群9に関する異常は生じていないと判断する。しかし、低温側区画44の水の温度が“31℃”であれば、制御部15は、当該温度“31℃”は低温側区画44における所定の範囲“15〜25℃”外であるため、機器群9に関する異常が生じていると判断する。
【0070】
尚、本実施形態では、水熱源空調システム1が冷房サイクルを行っている場合には、異常が生じているか否かを判断する際の所定範囲としては、図4の所定範囲Aが用いられる。所定範囲Aは、冷房サイクル時における低温側区画44側の水の温度範囲である。従って、所定範囲A内か否かを判断する際に用いられる水の温度は、低温側区画44内に設けられた温度センサ(図示せず)の検知結果が用いられる。逆に、水熱源空調システム1が暖房サイクルを行っている場合には、所定範囲としては、図6の所定範囲Bが用いられる。所定範囲Bは、暖房サイクル時における高温側区画41側の水の温度範囲である。従って、所定範囲B内か否かを判断する際に用いられる水の温度は、高温側区画41内に設けられた温度センサ(図示せず)の検知結果が用いられる。
【0071】
−異常対応制御−
次に、異常対応制御について具体的に説明する。異常対応制御は、機器群9に含まれる第1ポンプ5、第2ポンプ7及びチラー3の少なくとも1つに対し、水槽4に供給される水の温度が所定範囲A,B内である場合の運転とは異なる運転を行わせる制御である。言い換えると、異常対応制御とは、機器群9に関する異常が生じたと判断されるまで(即ち、正常時)に行われていた動作とは異なる動作を、異常が生じたと判断した場合に第1ポンプ5等に行わせる制御である。
【0072】
具体的に、異常対応制御には、以下の第1制御〜第6制御が含まれる。
(I)第2ポンプ7の運転台数が複数台である場合、第2ポンプ7の運転台数を順次減らす第1制御
(II)第2ポンプ7の運転台数が1台である場合、運転している第2ポンプ7の回転数を減少させる第2制御
(III)チラー3及び第1ポンプ5が運転していない場合、運転していないチラー3及び第1ポンプ5を運転させる第3制御
(IV)チラー3及び第1ポンプ5の運転台数が複数台である場合、チラー3及び第1ポンプ5の運転台数を順次減らす第4制御
(V)第2ポンプ7の運転台数が1台である場合、運転している第2ポンプ7の回転数を増加させる第5制御
(VI)複数台の第2ポンプ7の運転台数を順次増やす第6制御
【0073】
第1制御及び第2制御は、第2ポンプ7の流量が過剰である流量異常が機器群9に関する異常として生じている場合に有効である。第1制御及び第2制御が行われることにより、第2ポンプ7によって循環される水の流量が減少するため、上記流量異常(即ち、流量過剰)を改善もしくは解消することができる。第3制御は、チラー3からの水の水槽4への供給不足が機器群9に関する異常として生じている場合に有効である。第3制御が行われることにより、それまで運転していなかったチラー3及び第1ポンプ5が駆動し、チラー3によって加熱または冷却された水が水槽4へ供給されるため、上述した水の供給不足を改善もしくは解消することができる。尚、第3制御において、既にチラー3及び第1ポンプ5が駆動している場合には、水槽4への水の供給量を増加させるべく、例えば第1ポンプ5の回転数を上げたりチラー3の運転能力を上げたりしてもよい。
【0074】
第4制御は、チラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さが機器群9に関する異常として生じている場合に有効である。第4制御が行われることにより、チラー3による水の加熱能力または冷却能力、ならびに第1ポンプ5の運転能力が抑えられるため、チラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さを改善もしくは解消することができる。尚、第4制御において、チラー3及び第1ポンプ5の運転台数を1台にまで減少させたが、更にチラー3による水の加熱能力または冷却能力を抑えたり第1ポンプ5の運転能力を下げたりしたい場合には、運転しているチラー3の運転能力自体を下げたり、第1ポンプ5の回転数を減少させることで水槽4に供給される水の流量を減少させたりしてもよい。第5制御及び第6制御は、第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量不足)が機器群9に関する異常として生じている場合に有効である。第5制御及び第6制御が行われることにより、第2ポンプ7によって循環される水の流量が増加するため、第2ポンプ7の流量異常(流量不足)を解消することができる。
【0075】
そして、本実施形態においては、上述した第1制御〜第3制御は、冷房サイクル時に、低温側区画44の水の温度が所定範囲Aの上限値を超えた場合に、第1制御、第2制御、第3制御の順序で行われる。また、第1制御〜第3制御は、暖房サイクル時に、高温側区画41の水の温度が所定範囲Bの下限値を下回った場合に、第1制御、第2制御、第3制御の順序で行われる。各制御は、所定時間の間行われる。所定時間としては、例えば10分が挙げられる。
【0076】
また、本実施形態においては、上述した第4制御〜第6制御は、冷房サイクル時に、低温側区画44の水の温度が所定範囲Aの下限値を下回った場合に、第4制御、第5制御、第6制御の順序で行われる。また、第4制御〜第6制御は、暖房サイクル時に、高温側区画41の水の温度が所定範囲Bの上限値を超えた場合に、第4制御、第5制御、第6制御の順序で行われる。各制御は、所定時間の間行われる。所定時間としては、例えば10分が挙げられる。
【0077】
上述のように、制御部15は、第1制御〜第3制御ないしは第4制御〜第6制御を、各制御につき所定時間ずつ行うが、これらの制御を行っている間、水槽4の水の温度を監視し、機器群9に関する異常が改善もしくは解消したか否かを判断する。つまり、制御部15は、上述した異常対応制御を行っている間、冷房サイクルが行われている場合には低温側区画44内の温度センサ(図示せず)から検知結果を例えば5分毎に取得し、当該検知結果が所定範囲A内か否かを確認する。また、制御部15は、上述した異常対応制御を行っている間、暖房サイクルが行われている場合には高温側区画41内の温度センサ(図示せず)から検知結果を例えば5分毎に取得し、当該検知結果が所定範囲B内か否かを確認する。当該検知結果が所定範囲A,B内であれば、制御部15は、生じていた機器群9に関する異常が解消したために水槽4内の水の温度が正常となったと判断すると共に、次に行おうと予定していた制御はする必要がなくなったと判断し、現在行っている異常対応制御をそのまま継続させる。例えば、第2制御を10分行ったことにより機器群9に関する異常が解消した場合には、制御部15は、次に行う予定であった第3制御は行わず、第2制御を行った状態で冷房サイクルまたは暖房サイクルを行う。このように、異常対応制御を行うことによって水槽4内の水の温度が改善もしくは解消されたということは、即ち実際に生じていた機器群9に関する異常の内容と実際に行った異常対応制御の内容とが対応していたということとなり、機器群9に関する異常の内容を特定することができる。
【0078】
逆に、第1制御〜第3制御ないしは第4制御〜第6制御を行っていても、検知結果が依然として所定範囲A,B外であれば、制御部15は、異常対応制御を開始する前の検知結果と今回の検知結果とを比較し、どちらの値が所定範囲A,Bに近いかを判断する。異常対応制御を開始する前の検知結果よりも今回の検知結果の方が所定範囲A,Bに近ければ、制御部15は、現在行っていた制御により機器群9に関する異常が改善されつつあると判断し、現在の制御を所定時間の間継続させる。例えば、第2制御によって機器群9に関する異常が改善されつつあれば、第2制御が例えば10分間継続して行われる。一方、異常対応制御を開始する前の検知結果と今回の検知結果とがほぼ同一の値、もしくは異常対応制御を開始する前の検知結果の方が今回の検知結果よりも所定範囲A,Bに近い場合には、制御部15は、現在行っている制御では機器群9に関する異常を改善することができないと判断し、次に行おうと予定している第1制御〜第3制御、第4制御〜第6制御を行う。例えば、第2制御が所定時間行われた後でも水槽4内の水の温度が改善しない場合には、制御部15は、機器群9に関する異常が改善していないものと判断し、異常対応制御を第2制御から第3制御に切り換える。また、制御部15は、第1制御〜第3制御全てないしは第4制御〜第6制御全てを行ったが、水槽4内の水の温度の異常が改善されておらず、検知結果が依然として所定範囲A,B外であれば、水槽4内の水の温度の異常は機器群9以外が原因で生じているものと判断し、通常の制御に戻す。特に、第1〜第3制御や第4制御〜第6制御の異常対応制御を行ったが、検知結果が異常対応制御の開始前よりも更に所定範囲A,Bの上限値及び下限値から離れた値となった場合には、制御部15は、生じている異常の程度が異常対応制御によって悪化したと判断し、直ちに異常対応制御開始前に行っていた制御に戻す。
【0079】
まとめると、制御部15は、冷房サイクル時に低温側区画44の水の温度が所定範囲Aの上限値を越えた場合、及び暖房サイクル時に高温側区画41の水の温度が所定範囲Bの下限値を下回った場合、第1制御、第2制御、第3制御の順序で異常対応制御を行う。また、制御部15は、冷房サイクル時に低温側区画44の水の温度が所定範囲Aの下限値を下回った場合、及び暖房サイクル時に高温側区画41の水の温度が所定範囲Bの上限値を越えた場合、第4制御、第5制御、第6制御の順序で異常対応制御を行う。そして、各制御の間に水槽4の水の温度が所定範囲A,B内となれば、制御部15は、機器群9に関する異常が解消したと判断し、異常が解消した時の異常対応制御を継続して行う。逆に、各制御の間に水槽4の水の温度が依然として所定範囲A,B外であれば、制御部15は、異常対応制御を行う直前の区画41,44内の温度と現在の区画41,44内の温度とを比較する。比較した結果、機器群9に関する異常が改善されていると判断した場合には、制御部15は、現在行っていた異常対応制御を継続して行い、機器群9に関する異常が改善されていないと判断した場合には、次に行う異常対応制御を行う。予定している異常対応制御全てを行っても、水槽4の水の温度が依然として所定範囲A,B外であれば、制御部15は、水槽4内の水の温度異常の原因は機器群9以外にあると判断し、通常の制御に戻す。
【0080】
また、制御部15は、図2に示すように、出力部16とも接続されている。制御部15は、機器群9に関する異常があると判断した結果や異常対応制御の内容に基づき、出力部16によって外部に出力される各種情報(後述)を生成する。
【0081】
(2−8)出力部
出力部16は、制御部15による判断結果、異常対応制御の内容を示す制御内容情報、及び異常対応制御が行われた後の異常の有無及び程度を含む結果情報を外部に出力する。出力部16が各種情報を出力する出力先としては、空調装置2a,2bを遠隔操作するためのリモートコンローラや、制御部15またはリモートコントローラが通信ネットワークを介して接続されているセンター内の外部端末等が挙げられる。
【0082】
ここで、以下では、出力部16によってセンター内の外部端末に各種情報が出力された場合を例に取る。図7は、出力部16によって出力された各種情報がセンター内の外部端末の表示部(図示せず)上に表示された画面例を示す。図7の表示画面P1上には、判断結果Inf1、制御内容情報Inf2及び結果情報Inf3が含まれている。判断結果Inf1は、機器群9に関する異常ありと判断されたことを示す“有”と表されており、制御内容情報Inf2には、第1制御が10分間実行され、次いで第2制御が10分間実行されたことが表されている。結果情報Inf3には、異常対応制御後の機器群9に関する異常が“無”、即ち異常対応制御によって機器群9に関する異常が解消されたことで、水槽4内の水の温度が正常となった旨が表されている。つまり、これらの情報Inf1〜Inf3は、機器群9に関する異常が生じたと制御部15が判断した後に、異常対応制御として第1制御及び第2制御が10分ずつ行われ、第2制御によって機器群9に関する異常が解消したことを表している。特に、本実施形態では、異常対応制御として、第1制御、第2制御及び第3制御がこの順で行われるため、外部端末の操作者は、制御内容情報Inf2及び結果情報Inf3の内容から、第2ポンプ7による流量異常(流量過剰)が機器群9に関する異常の内容であったと特定することができる。
【0083】
尚、図7の画面例p1は、異常が解消されたことを示しているが、水槽4内の水の温度の異常が解消されなかったものの改善されつつあることから、機器群9に関する異常が改善されつつある場合や、水槽4内の水の温度の異常が改善及び解消されなかった場合にも、出力部16は、判断結果Inf1、制御内容情報Inf2及び結果情報Inf3を外部に出力する。この場合、結果情報Inf3の制御後の異常の有無には“有”と表示され、かつ機器群9に関する異常の程度や水槽4内の水の温度の異常の程度には、“多少改善された”や“悪化した”等のメッセージが表示される。
【0084】
(3)動作
(3−1)冷房サイクル
次に、水熱源空調システム1が冷房サイクルを行う場合の、1次側回路1a及び2次側回路1bにおける水の流れや各機器の動作について、簡単に説明する。
【0085】
先ず、リモートコントローラ(図示せず)等によって空調装置2a,2bの冷房運転の開始指示がユーザによってなされた場合、制御部15は、リモートコントローラから冷房運転の開始指示を取得する。すると、制御部15による四路切換弁6,8,12の流路切り換え制御により、四路切換弁6,8,12は、全て図1の点線で示されるように流路を切り換える。具体的には、四路切換弁6は、第1ポンプ5の流出口と水槽4の低温側区画44とを連通すると共に、チラー3と第1ポンプ5の流入口とを連通する。四路切換弁8は、第2ポンプ7の流出口と水槽4の高温側区画41とを連通すると共に、熱交換器10と第2ポンプ7の流入口とを連通する。四路切換弁12は、第3ポンプ11の流出口と熱交換器10とを連通すると共に、室外機21a,21b(具体的には、室外機21a,21bの室外機用水熱交換器22a,22b)と第3ポンプ11の流入口とを連通する。
【0086】
次いで、制御部15により各ポンプ5,7,11及びチラー3等の駆動制御がなされ、水熱源空調システム1においては、図3の矢印に示されるように水が循環する。具体的には、1次側回路1aにおいては、水槽4の高温側区画41からの水がチラー3に流入し、チラー3によって冷却された後、水槽4の低温側区画44内に流入する。また、低温側区画44内の水は、第2ポンプ7によって配管L3に流入し、熱交換器10にて2次側回路1b側の水から熱を吸収し温められた後、高温側区画41に戻される。この時、水槽4内においては、高温側区画41から低温側区画44への水の流れまたは、逆の水の流れが形成されている。尚、水槽4内の水は、制御部15による機器群9の制御によって、冷房サイクル時には低温側区画44内の温度が図4に示す所定範囲A内となるように、温度制御される。
【0087】
2次側回路1bにおいては、熱交換器10にて1次側回路1a側の水に熱を放出し冷却された水が室外機21a、21bに流入され、室外機用水熱交換器22a,22bにて冷媒と熱交換される。これにより、室外機21a,21b側では冷媒は凝縮し、当該冷媒はその後室内機23a,23b内の熱交換器(図示せず)にて空調対象空間内の空気と熱交換を行うことで蒸発し、当該空気は冷やされる。
【0088】
一方、室外機用水熱交換器22a,22bにて冷媒と熱交換された後の水は、高温の水となっており、配管L6を介して熱交換器10に再度流入される。
【0089】
(3−2)暖房サイクル
次に、水熱源空調システム1が暖房サイクルを行う場合の、1次側回路1a及び2次側回路1bにおける水の流れや各機器の動作について、簡単に説明する。
【0090】
先ず、リモートコントローラ(図示せず)等によって空調装置2a,2bの暖房運転の開始指示がユーザによってなされた場合、制御部15は、リモートコントローラから暖房運転の開始指示を取得する。すると、制御部15による四路切換弁6,8,12の流路切り換え制御により、四路切換弁6,8,12は、全て図1の実線で示されるように流路を切り換える。具体的には、四路切換弁6は、第1ポンプ5の流出口とチラー3とを連通すると共に、水槽4の低温側区画44と第1ポンプ5の流入口とを連通する。四路切換弁8は、第2ポンプ7の流出口と熱交換器10とを連通すると共に、水槽4の高温側区画41と第2ポンプ7の流入口とを連通する。四路切換弁12は、第3ポンプ11の流出口と室外機21a,21b(具体的には、室外機21a,21bの室外機用水熱交換器22a,22b)とを連通すると共に、熱交換器10と第3ポンプ11の流入口とを連通する。
【0091】
次いで、制御部15により各ポンプ5,7,11及びチラー3等の駆動制御がなされ、水熱源空調システム1においては、図5の矢印に示されるように水が循環する。具体的には、1次側回路1aにおいては、水槽4の低温側区画44からの水がチラー3に流入し、チラー3によって加熱された後、水槽4の高温側区画41内に流入する。また、高温側区画41内の水は、第2ポンプ7によって熱交換器10に流入し、熱交換器10にて2次側回路1b側の水に熱を放熱し冷却された後、低温側区画44に戻される。この時、水槽4内においては、低温側区画44から高温側区画41への水の流れまたは、逆の水の流れが形成されている。尚、水槽4内の水は、制御部15による機器群9の制御によって、暖房サイクル時には高温側区画41内の温度が図6に示す所定範囲B内となるように、温度制御される。
【0092】
2次側回路1bにおいては、熱交換器10にて1次側回路1a側の水から熱を吸収し加熱された水が室外機21a,21bに流入され、室外機用水熱交換器22a,22bにて冷媒と熱交換される。これにより、室外機21a,21b側では冷媒は蒸発し、当該冷媒はその後室内機23a,23b内の熱交換器(図示せず)にて空調対象空間内の空気と熱交換を行うことで凝縮し、当該空気は温められる。
【0093】
一方、室外機用水熱交換器22a,22bにて冷媒と熱交換された後の水は、低温の水となっており、配管L4を介して熱交換器10に再度流入される。
【0094】
(3−3)水熱源空調システムの全体的な動作
次に、本実施形態に水熱源空調システム1の動作について説明する。
【0095】
〔全体動作〕
図8〜9は、本実施形態に係る水熱源空調システム1の全体的な動作の流れを示すフローチャートである。
【0096】
ステップS1〜S2:リモートコントローラ等から冷房運転開始が指示されると(S1のYes)、制御部15は、水槽4内の低温側区画44内の温度が設定値となるように温度制御を開始すると共に、冷房サイクルを開始させる(S2)。また、制御部15は、機器群9において異常が生じたか否かを判断する際に用いる所定範囲を、“所定範囲A”と決定し、第1ポンプ5から水槽4の低温側区画44へと水が供給され、低温側区画44の水の温度が所定範囲A内となるように、機器群9を制御する。
【0097】
ステップS3〜S4:制御部15は、低温側区画44内の温度を温度センサ(図示せず)から例えば5分毎に取得し、当該温度が所定範囲A内か否かを監視する。当該温度が所定範囲A以上、つまり所定範囲Aの上限値を超えている場合には(S3のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が生じていると判断し、機器群9に対して異常対応制御1を行う(S4)。異常対応制御1のフローについては、後述する。
【0098】
ステップS5〜S6:低温側区画44内の温度が所定範囲A以上ではなく(S3のNo)、所定範囲A以下、即ち所定範囲Aの下限値を下回っている場合には(S5のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が生じていると判断し、機器群9に対して異常対応制御2を行う(S6)。異常対応制御2のフローについては、後述する。
【0099】
尚、当該温度が所定範囲A内であれば(S5のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常は生じていないと判断し、ステップS9以降の動作を行う。
【0100】
ステップS7〜S9:ステップS4,S6の異常対応制御1,2が行われても水槽4内の水の温度異常が未だ解消されていない場合には(S7のNo)、制御部15は、異常対応制御1,2を行う前の制御に戻す(S8)。逆に、ステップS4,S5の異常対応制御1,2によって水槽4内の水の温度異常が解消された場合には(S7のYes)、水熱源空調システム1は、リモートコントローラ等から冷房運転の停止指示がない限り、冷房サイクルを継続し(S9のYes)、ステップS3以降の動作を繰り返す。リモートコンローラ等から冷房運転の停止指示があれば(S9のNo)、水熱源空調システム1は、冷房サイクルを終了して、一連の動作を終了する。
【0101】
ステップS11〜S12:リモートコントローラ等から暖房運転開始が指示されると(S11のYes)、制御部15は、水槽4内の高温側区画41内の温度が設定値となるように温度制御を開始すると共に、暖房サイクルを開始させる(S12)。また、制御部15は、機器群9において異常が生じたか否かを判断する際に用いる所定範囲を、“所定範囲B”と決定し、第1ポンプ5から水槽4の高温側区画41へと水が供給され、高温側区画41の水の温度が所定範囲B内となるように、機器群9を制御する。
【0102】
ステップS13〜S14:制御部15は、高温側区画41内の温度を温度センサ(図示せず)から例えば5分毎に取得し、当該温度が所定範囲B内か否かを監視する。当該温度が所定範囲B以下、つまり所定範囲Bの下限値を下回っている場合には(S13のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が生じていると判断し、機器群9に対して異常対応制御1を行う(S14)。異常対応制御1のフローについては、後述する。
【0103】
ステップS15〜S16:高温側区画41内の温度が所定範囲B以下ではなく(S13のNo)、所定範囲B以上、つまり所定範囲Bの上限値を越えている場合には(S15のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が生じていると判断し、機器群9に対して異常対応制御2を行う(S16)。異常対応制御2のフローについては、後述する。
【0104】
尚、当該温度が所定範囲B内であれば(S15のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常は生じていないと判断し、ステップS19以降の動作を行う。
【0105】
ステップS17〜S18:ステップS14,S16の異常対応制御1,2が行われても水槽4内の水の温度異常が未だ解消されていない場合には(S17のNo)、制御部15は、異常対応制御1,2を行う前の制御に戻す(S18)。逆に、ステップS14,S16の異常対応制御1,2によって水槽4内の水の温度異常が解消された場合には(S17のYes)、水熱源空調システム1は、リモートコントローラ等から暖房運転の停止指示がない限り、暖房サイクルを継続し(S19のYes)、ステップS13以降の動作を繰り返す。リモートコンローラ等から暖房運転の停止指示があれば(S19のNo)、水熱源空調システム1は、暖房サイクルを終了して、一連の動作を終了する。
【0106】
〔異常対応制御1〕
図10は、図8,9のステップS4、S14における異常対応制御1のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0107】
ステップS21:制御部15は、はじめに、第1制御を所定時間の間行う。即ち、制御部15は、第2ポンプ7が複数台運転している場合には、第2ポンプ7の運転台数を順次減らしていくことで、第2ポンプ7によって循環される水の流量を減少させる制御を行う。
【0108】
ステップS22〜S24:ステップS21にて行われた第1制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S22のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第1制御を継続して行う(S23)。水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S22のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されていないと判断し、次いで第2制御を所定時間の間行う(S24)。即ち、制御部15は、第1制御によって1台となった運転中の第2ポンプ7の回転数を減少させる制御を行うことで、第2ポンプ7によって循環される水の流量を更に減少させる制御を行う。
【0109】
ステップS25〜S27:ステップS24にて行われた第2制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S25のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第2制御を継続して行う(S26)。水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S25のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されていないと判断し、次いで第3制御を所定時間の間行う(S27)。即ち、制御部15は、チラー3及び第1ポンプ5が運転していなければ、運転していないチラー3及び第1ポンプ5を運転させることで、水槽4への水の供給不足を解消させる制御を行う。
【0110】
ステップS28〜S30:ステップS27にて行われた第3制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S28のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第3制御を継続して行う(S29)。第3制御を行ってもなお水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S28のNo)、制御部15は、判断結果“有”、異常が生じてから行ってきた異常対応制御の内容を示す制御内容情報(即ち、第1制御〜第3制御をそれぞれ所定時間の間行った旨の内容)、異常対応制御後の異常“有”の旨及び異常対応制御後の異常の程度“改善されず”もしくは“悪化した”旨を含む結果情報を作成する。出力部16は、制御部15によって作成されたこれらの各種情報を、リモートコントローラやセンターの外部端末に出力する(S30)。
【0111】
ステップS31:第1制御〜第3制御のうちいずれか1つによって異常が改善もしくは解消され、第1制御〜第3制御のいずれか1つが継続して行われている場合には(S23,S26,S29)、制御部15は、判断結果“有”、異常が生じてから行ってきた異常対応制御の内容を示す制御内容情報(つまり、異常が改善するまでに行った第1制御〜第3制御の内容)、異常対応制御後の異常“無”の旨もしくは異常の程度“改善された”旨を含む結果情報を作成する。出力部16は、制御部15によって作成されたこれらの各種情報を、リモートコントローラやセンターの外部端末に出力する。
【0112】
尚、上記第1制御〜第3制御は、各制御が行われる際の条件(例えば、第2ポンプ7が複数台運転している等)が満たされた場合に行われるものとし、当該条件が満たされない場合には、次に行う予定の制御が行われるものとする。例えば、始めから第2ポンプ7が1台しか駆動していない場合には、第1制御は行われずに、第2制御、第3制御が異常対応制御として行われる。
【0113】
〔異常対応制御2〕
図11は、図8,9のステップS6,S16における異常対応制御2のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0114】
ステップS41:制御部15は、はじめに、第4制御を所定時間の間行う。即ち、制御部15は、複数台のチラー3が運転している場合には、チラー3の運転台数を順次減らしていくことで、チラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さを解消する制御を行う。
【0115】
ステップS42〜S44:ステップS41にて行われた第4制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S42のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第4制御を継続して行う(S43)。水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S42のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されていないと判断し、次いで第5制御を所定時間の間行う(S44)。即ち、制御部15は、第2ポンプ7の運転台数が1台である場合、運転している第2ポンプ7の回転数を増加させることで、第2ポンプ7の流量不足を解消する制御を行う。
【0116】
ステップS45〜S47:ステップS44にて行われた第5制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S45のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第5制御を継続して行う(S46)。水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S45のNo)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されていないと判断し、次いで第6制御を所定時間の間行う(S47)。即ち、制御部15は、第2ポンプ7の運転台数を順次増やすことで、第2ポンプ7の流量不足を解消する制御を行う。
【0117】
ステップS48〜S50:ステップS47にて行われた第6制御によって水槽4内の水の温度異常が改善もしくは解消された場合には(S48のYes)、制御部15は、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたと判断し、第6制御を継続して行う(S49)。第6制御を行ってもなお水槽4内の水の温度異常が改善及び解消されていない場合には(S48のNo)、制御部15は、判断結果“有”、異常が生じてから行ってきた異常対応制御の内容を示す制御内容情報(つまり、第4制御〜第6制御をそれぞれ所定時間の間行った旨の内容)、異常対応制御後の異常“有”の旨及び異常対応制御後の異常の程度“改善されず”もしくは“悪化した”旨を含む結果情報を作成する。出力部16は、制御部15によって作成されたこれらの各種情報を、リモートコントローラやセンターの外部端末に出力する(S50)。
【0118】
ステップS51:第4制御〜第6制御のうちいずれか1つによって異常が改善もしくは解消され、第1制御〜第3制御のいずれか1つが継続して行われている場合には(S43,S46、S49)、制御部15は、判断結果“有”、異常が生じてから行ってきた異常対応制御の内容を示す制御内容情報(つまり、異常が改善するまでに行った第4制御〜第6制御の内容)、異常対応制御後の異常“無”の旨もしくは異常の程度“改善された”旨を含む結果情報を作成する。出力部16は、制御部15によって作成されたこれらの各種情報を、リモートコントローラやセンターの外部端末に出力する。
【0119】
尚、上記第4制御〜第6制御は、各制御が行われる際の条件(例えば、チラー3が複数台運転している等)が満たされた場合に行われるものとし、当該条件が満たされない場合には、次に行う予定の制御が行われるものとする。例えば、始めから並列接続されたチラー3のうち1台しか駆動していない場合には、第4制御は行われずに、第5制御、第6制御が異常対応制御として行われる。
【0120】
(4)効果
(A)
本実施形態に係る水熱源空調システム1によると、水槽4の水の温度が所定範囲A,B外である場合には、第1ポンプ5や第2ポンプ7等を含む機器群9に関する異常が生じていると判断され、機器群9に対し異常対応制御が行われる。ここで、機器群9に関する異常としては、例えば第2ポンプ7の流量過剰や流量不足等の流量異常、チラー3及び第1ポンプ5の能力不足等が挙げられ、異常対応制御としては、第2ポンプ7の流量を絞る制御や逆に流量を増やす制御が挙げられる。これにより、水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができ、従って水を熱源とする空調装置2a,2bの効率低下及び消費電力の増大を防ぐことができる。
【0121】
(B)
また、本実施形態に係る水熱源空調システム1では、機器群9に関する異常が生じていると制御部15によって判断された場合には、機器群9である第1ポンプ5、第2ポンプ7及びチラー3の少なくとも1つに対し、正常時(即ち、水槽4の水の温度が所定範囲A,B内の場合)の制御とは異なる制御が行われる。従って、第1ポンプ5、第2ポンプ7及びチラー3の中に異常の原因となるものがある場合には、当該異常を改善もしくは解消することができる。
【0122】
(C)
また、本実施形態に係る異常対応制御には、第1制御、第2制御及び第3制御の少なくとも1つが含まれる。第1制御は、第2ポンプ7の運転台数を順次減らす制御である。第2制御は、運転している第2ポンプ7の回転数を減少させる制御である。第3制御は、運転していないチラー3及び第1ポンプ5を運転させる制御である。つまり、第1制御及び第2制御は、第2ポンプ7によって循環される水の流量を減少させる制御であって、第3制御は、チラー3によって加熱または冷却された水を水槽4へ供給させる制御であると言える。この水熱源空調システム1によると、生じている機器群9に関する異常が第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量過剰)である場合には、第1制御及び第2制御によって当該異常が改善され、生じている機器群9に関する異常が水槽4への水の供給不足に基づく異常である場合には、第3制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0123】
(D)
また、本実施形態に係る水熱源空調システム1では、異常対応制御として、第1制御、第2制御及び第3制御が所定の順序で行われる。つまり、水熱源空調システム1では、実行される異常対応制御の内容が順に変化するため、機器群9に関する異常として良く考えられる第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量過剰)が生じている場合には、第1制御及び第2制御によって当該異常が改善される。また、機器群9に関する異常として良く考えられる水槽4への水の供給不足に基づく異常が生じている場合には、第3制御によって当該異常が改善される。即ち、水熱源空調システム1では、このような第1制御から第3制御が異常対応制御として順に行われるため、機器群9に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群9に関する異常が改善もしくは解消される。従って、水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0124】
(E)
冷房サイクル時に、水槽4における低温側区画44の水の温度が所定範囲A以上となった場合の機器群9に関する異常の内容としては、第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量過剰)が最も良く挙げられ、次いで、水槽4への水の供給不足に基づく異常が挙げられる。本実施形態に係る水熱源空調システム1では、冷房サイクル時、低温側区画44の水の温度が所定範囲A以上となった場合、最も可能性の高い第2ポンプ7の流量異常(流量過剰)に対応する第1制御及び第2制御が行われ、次いで次に可能性の高い水槽4への水の供給不足に対応する第3制御が行われる。即ち、この水熱源空調システム1では、機器群9に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群9に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0125】
(F)
また、暖房サイクル時に、水槽4における高温側区画41の水の温度が所定範囲B以下となった場合の機器群9に関する異常の内容としては、第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量過剰)が最も良く挙げられ、次いで、水槽4への水の供給不足に基づく異常が挙げられる。本実施形態に係る水熱源空調システム1によると、暖房サイクル時、高温側区画41の水の温度が所定範囲B以下となった場合、最も可能性の高い第2ポンプ7の流量異常(流量過剰)に対応する第1制御及び第2制御が行われ、次いで次に可能性の高い水槽4への水の供給不足に対応する第3制御が行われる。即ち、この水熱源空調システム1では、機器群9に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群9に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0126】
(G)
また、本実施形態に係る異常対応制御には、第4制御、第5制御及び第6制御の少なくとも1つが含まれる。第4制御は、チラー3及び第1ポンプ5の運転台数を順次減らす制御である。第5制御は、運転している第2ポンプ7の回転数を増加させる制御である。第6制御は、第2ポンプ7の運転台数を順次増やす制御である。つまり、第4制御は、チラー3による水の加熱または冷却の能力ならびに第1ポンプ5の運転能力を減らす制御であって、第5制御及び第6制御は、第2ポンプ7によって循環される水の流量を増加させる制御であると言える。この水熱源空調システム1によると、生じている機器群9に関する異常の内容がチラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さである場合には、第4制御によって当該異常が改善され、生じている機器群9に関する異常の内容が第2ポンプ7による流量異常(具体的には、流量不足)である場合には、第5制御及び第6制御によって当該異常が改善もしくは解消される。
【0127】
(H)
また、本実施形態に係る水熱源空調システム1は、異常対応制御として、第4制御、第5制御及び第6制御が所定の順序で行われる。つまり、水熱源空調システム1では、実行される異常対応制御の内容が順に変化するため、機器群9に関する異常の内容として良く考えられるチラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さが生じている場合には、第4制御によって当該異常が改善される。また、第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量不足)が機器群9に関する異常の内容として生じている場合には、第5制御または第6制御によって当該異常が改善される。つまり、水熱源空調システム1では、このような第4制御から第6制御までが異常対応制御として順に行われるため、機器群9に関する異常の内容が特定されていなくとも、変化する異常対応制御の内容のいずれかによって機器群9に関する異常が改善もしくは解消される。従って、水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0128】
(I)
冷房サイクル時に、水槽4における低温側区画44の水の温度が所定範囲A以下となった場合の機器群9に関する異常の内容としては、チラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さが最も良く挙げられ、次いで、第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量不足)が挙げられる。この水熱源空調システム1では、冷房サイクル時、低温側区画44の水の温度が所定範囲A以下となった場合、最も可能性の高いチラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さに対応する第4制御が行われ、次いで次に可能性の高い第2ポンプ7の流量異常(流量不足)に対応する第5制御及び第6制御が行われる。即ち、この水熱源空調システム1では、機器群9に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群9に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0129】
(J)
暖房サイクル時に、水槽4における高温側区画41の水の温度が所定範囲B以上となった場合の機器群9に関する異常の内容としては、チラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さが最も良く挙げられ、次いで第2ポンプ7の流量異常(具体的には、流量不足)が挙げられる。この水熱源空調システム1では、暖房サイクル時、高温側区画41の水の温度が所定範囲B以上となった場合、最も可能性の高いチラー3及び第1ポンプ5の運転能力の過剰さに対応する第4制御が行われ、次いで次に可能性の高い第2ポンプ7の流量異常(流量不足)に対応する第5制御及び第6制御が行われる。即ち、この水熱源空調システム1では、機器群9に関する異常の内容として可能性の高い順に、対応する制御が行われるため、比較的早く機器群9に関する異常を改善もしくは解消することができ、従って水槽4内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができる。
【0130】
(K)
また、本実施形態では、判断結果、異常対応制御の内容を示す制御内容情報、及び異常対応制御が行われた後の機器群9に関する異常の有無及び程度を含む結果情報の少なくとも1つが、出力部16によってリモートコントローラや外部端末に出力される。従って、本実施形態に係る水熱源空調システム1のユーザや外部端末の操作者は、水熱源空調システム1における異常の有無や、当該異常の内容、異常対応制御が行われた後の当該システム1の状態等を知ることができる。そのため、未だ機器群9に関する異常が改善もしくは解消されていない場合には、当該システム1のユーザや外部端末の操作者は、それまでに行った制御とは別の制御を策として講じることができる。従って、当該システム1の消費電力が増大する期間をできるだけ抑え、かつ策を講じるまでの時間を短縮することができる。また、結果情報が、機器群9に関する異常が改善もしくは解消されたことを示す情報であれば、ユーザや外部端末の操作者は、当該判断結果及び制御内容情報に基づき、生じていた機器群9に関する異常の内容を特定することができる。
【0131】
(L)
また、本実施形態に係る水熱源空調システム1では、水槽4は、その内部が高温側区画41、中高温側区画42、中低温側区画43及び低温側区画44からなる4つの区画に区分されており、これらの区画41〜44を順に水が流れることで、区画41〜44毎に温度差が生じている。そして、冷房サイクル時には、チラー3は水を冷却し、この水は水槽4のうち温度の一番低い低温側区画44に供給される。暖房サイクル時には、チラー3は水を加熱し、この水は温度の一番高い高温側区画41に供給される。そのため、冷房サイクル及び暖房サイクルのどちらの運転が行われても、水槽4内は、低い側の区画44,43(特に区画44)では温度が低く、高い側の区画42,41(特に区画41)では温度が高くなる。
【0132】
(M)
また、本実施形態に係る水熱源空調システム1では、冷房サイクル時、低温側区画44内の温度が機器群9の制御に用いられ、暖房サイクル時、高温側区画41内の温度が機器群9の制御に用いられる。従って、冷房サイクル時には、低温側区画44の水の温度によって機器群9に関する異常の判断が行われ、暖房サイクル時には、高温側区画41の水の温度によって機器群9に関する異常の判断が行われる。
【0133】
<その他の実施形態>
(a)
上記実施形態では、図1に示すように、1次側回路1aの水槽4内に貯留された水に基づく熱エネルギーが、熱交換器10を含む2次側回路1bを介して各空調装置2a,2bに供給されると説明した。しかし、水槽4内に貯留された水に基づく熱エネルギーは、熱交換器10を介さずに、空調装置2a,2bの室外機21a,21bに直接供給されてもよい。この場合、熱交換器10を含む2次側回路1bの構成は不要となり、水熱源空調システムは、第2ポンプ7によって水槽4から吸い上げられた水を、室外機21a,21bに直接送られるような構成となる。
【0134】
(b)
上記実施形態では、図1,3,5に示すように、四路切換弁6,8,12によって冷房サイクル及び暖房サイクル時の水の流れ方向を切り換える場合について説明した。しかし、水熱源空調システムにおける水の流れ方向を切り換える手法は、四路切換弁を用いない手法が採用されてもよい。四路切換弁を用いずに水の流れ方向を切り換える手法としては、第1ポンプ、第2ポンプ及び第3ポンプそれぞれに逆向きのポンプを並列に接続する手法や、第1ポンプ、第2ポンプ及び第3ポンプとして、水の流れ方向を逆に切り換えることができるポンプを用いる手法等が挙げられる。
【0135】
(c)
上記実施形態では、水を加熱または冷却する加熱冷却部として、チラー3が採用されている場合について説明した。しかし、1次側回路1aの水を加熱または冷却できるものであれば、加熱冷却部はどのようなものであってもよく、チラー3でなくともよい。
【0136】
(d)
上記実施形態では、異常対応制御に含まれる第1制御〜第3制御は、第1制御、第2制御及び第3制御の順で行われ、第4制御〜第6制御は、第4制御、第5制御及び第6制御の順で行われると説明した。しかし、第1制御〜第3制御、第4制御〜第6制御が行われる順番は、これに限定されず、それぞれ適宜定められた所定の順序で行われればよい。所定の順序は、入力手段(図示せず)によって入力された水熱源空調システム1に関する様々な情報に基づき、適宜決定されることができる。例えば、水熱源空調システム1を現地に導入する、いわゆる施工業者によって当該システム1の環境情報が入力手段を介して入力された場合には、当該システム1が実際に使用される前に、当該情報に基づいて所定の順序が決定される。また、当該システム1を利用するユーザによって、当該システム1が実際に使用される前に適宜決定されてもよい。更に、当該システム1の使用後であっても、当該システム1を実際に使用して生じている異常の内容の履歴等から、比較的よく生じる異常の原因に対応する異常対応制御が優先的に設定されてもよい。
【0137】
(e)
上記実施形態では、出力部16が、結果情報、制御内容情報及び結果情報全てを、外部に出力する場合について説明した。しかし、出力部16は、結果情報、制御内容情報及び結果情報全てではなく、これらの情報のうち少なくとも1つを外部に出力してもよい。
【0138】
(f)
また、上記実施形態では、図7に示すように、出力部16によって外部に出力された各種情報が、センター内の外部端末に画面表示される場合について説明した。しかし、出力部16によって出力される各種情報は、リモートコントローラやセンター内の外部端末の画面に表示される場合に限定されず、用紙に印刷されてもよいし、音声よって出力されたり、音声と画面表示との組み合わせ、またはLEDによってユーザ等に認識可能に出力されたりしてもよい。
【0139】
(g)
上記実施形態では、図8〜9に示すように、水槽4内の水の温度異常が改善されなかった場合には(S7のNo,S17のNo)、異常対応制御を行う前の制御に戻すと説明した(S8,S18)。しかし、水熱源空調システム1は、水槽4内の水の温度異常が改善されなかった場合には、異常対応制御を行う前の状態に戻すのではなく、冷房サイクル及び暖房サイクルを停止してもよい。
【0140】
(h)
上記実施形態では、図示しない温度センサが、水槽4の低温側区画44および高温側区画41内にそれぞれ設けられている場合について説明した。しかし、温度センサの設置箇所は、これに限定されず、配管L3の内部であってもよい。この場合、温度センサは、配管L3の端部のうち、低温側区画44側の端部の内部、及び配管L3の端部のうち、高温側区画41側の端部の内部に、それぞれ設けられている。これにより、配管L3の低温側区画44側の端部内にある温度センサの検出結果は、冷房サイクル時に制御部15によって取り込まれ、配管L3の高温側区画41側の端部内にある温度センサの検出結果は、暖房サイクル時に制御部15によって取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明に係る水熱源空調システムは、貯水部内の水の温度の異常を改善もしくは解消することができ、従って水を熱源とする空調装置の効率低下及び消費電力の増大を防ぐことができるという効果を有する。この水熱源空調システムは、水を熱源とする空調装置の効率を向上させるシステムとして適用できる。
【符号の説明】
【0142】
1 水熱源空調システム
1a 1次側回路
1b 2次側回路
2a,2b 空調装置
21a,21b 室外機
22a,22b 室外機用水熱交換器
23a,23b 室内機
3 チラー
4 水槽
41 高温側区画
42 中高温側区画
43 中低温側区画
44 低温側区画
5 第1ポンプ
6,8,12 四路切換弁
7 第2ポンプ
9 機器群
10 熱交換器
11 第3ポンプ
15 制御部
16 出力部
L1〜L6 配管
Inf1 判断結果
Inf2 制御内容情報
Inf3 結果情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】
【特許文献1】特開2009−002532号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を熱源とする空調装置(2a,2b)の効率を向上させる水熱源空調システム(1)であって、
水を加熱または冷却する加熱冷却部(3)と、
前記加熱冷却部(3)によって加熱または冷却された水を貯留する貯水部(4)と、
前記加熱冷却部(3)によって加熱または冷却された水を前記貯水部(4)に供給可能な第1ポンプ(5)と、
前記貯水部(4)内の水に基づく熱エネルギーを前記空調装置(2a,2b)に供給可能な第2ポンプ(7)と、
前記貯水部(4)内の水の温度が所定範囲内となるように、前記第1ポンプ(5)、前記第2ポンプ(7)及び前記加熱冷却部(3)を含む機器群(9)を制御する制御部(15)と、
を備え、
前記制御部(15)は、前記貯水部(4)の水の温度が前記所定範囲外となった場合、前記機器群(9)に関する異常が生じていると判断し、その判断結果に基づいて前記機器群(9)に対し異常対応制御を行う、
水熱源空調システム(1)。
【請求項2】
前記異常対応制御は、前記機器群(9)に含まれる前記第1ポンプ(5)、前記第2ポンプ(7)及び前記加熱冷却部(3)の少なくとも1つに対し、前記貯水部(4)内の水の温度が前記所定範囲内である場合の運転とは異なる運転を行わせる制御である、
請求項1に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項3】
前記第2ポンプ(7)は複数台設けられており、
前記異常対応制御には、
前記第2ポンプ(7)が複数台運転している場合、前記第2ポンプ(7)の運転台数を順次減らす第1制御、
前記第2ポンプ(7)が1台運転している場合、運転している前記第2ポンプ(7)の回転数を減少させる第2制御、及び
前記加熱冷却部(3)及び前記第1ポンプ(5)が運転していない場合、運転していない前記加熱冷却部(3)及び前記第1ポンプ(5)を運転させる第3制御、
の少なくとも1つが含まれる、
請求項2に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項4】
前記制御部(15)は、前記異常対応制御として、前記第1制御、前記第2制御及び前記第3制御を所定の順序で行う、
請求項3に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項5】
前記制御部(15)は、冷房運転時に、前記貯水部(4)内の水の温度が前記所定範囲以上となった場合、前記第1制御、前記第2制御及び前記第3制御の順序で前記異常対応制御を行う、
請求項4に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項6】
前記制御部(15)は、暖房運転時に、前記貯水部(4)内の水の温度が前記所定範囲以下となった場合、前記第1制御、前記第2制御及び前記第3制御の順序で前記異常対応制御を行う、
請求項4に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項7】
前記第2ポンプ(7)及び前記加熱冷却部(3)はそれぞれ複数台設けられており、
前記異常対応制御には、
前記加熱冷却部(3)及び前記第1ポンプ(5)が複数台運転している場合、前記加熱冷却部(3)及び前記第1ポンプ(5)の運転台数を順次減らす第4制御、
前記第2ポンプ(7)が1台運転している場合、運転している前記第2ポンプ(7)の回転数を増加させる第5制御、及び
前記第2ポンプ(7)の運転台数を順次増やす第6制御、
の少なくとも1つが含まれる、
請求項2に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項8】
前記制御部(15)は、前記異常対応制御として、前記第4制御、前記第5制御及び前記第6制御を所定の順序で行う、
請求項7に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項9】
前記制御部(15)は、冷房運転時に、前記貯水部(4)内の水の温度が前記所定範囲以下となった場合、前記第4制御、前記第5制御及び前記第6制御の順序で前記異常対応制御を行う、
請求項8に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項10】
前記制御部(15)は、暖房運転時に、前記貯水部(4)内の水の温度が前記所定範囲以上となった場合、前記第4制御、前記第5制御及び前記第6制御の順序で前記異常対応制御を行う、
請求項8に記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項11】
前記判断結果、前記異常対応制御の内容を示す制御内容情報、及び前記異常対応制御が行われた後の異常の有無及び程度を含む結果情報、の少なくとも1つを外部に出力する出力部(16)、
を更に備える、
請求項1〜10のいずれかに記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項12】
前記貯水部(4)は、その内部が複数の区画(41〜44)に区分され、複数の前記区画を順に水が流れることで、前記区画毎に温度差が生じており、
前記第1ポンプ(5)は、
冷房運転時、前記貯水部(4)のうち温度の一番低い前記区画(44)に前記加熱冷却部(3)からの水を供給し、
暖房運転時、前記貯水部(4)のうち温度の一番高い前記区画(41)に前記加熱冷却部(3)からの水を供給する、
請求項1〜11のいずれかに記載の水熱源空調システム(1)。
【請求項13】
前記制御部(15)は、
冷房運転時、前記貯水部(4)のうち温度の一番低い前記区画(44)内の温度が前記所定範囲内となるように前記機器群(9)を制御し、
暖房運転時、前記貯水部(4)のうち温度の一番高い前記区画(41)内の温度が前記所定範囲内となるように前記機器群(9)を制御する、
請求項12に記載の水熱源空調システム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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