水田作業機
【課題】乗用田植機において畔際植付の作業操作を容易にする。
【解決手段】乗用田植機の走行車体には昇降アクチュエータにより苗植付装置を昇降自在に設け、苗植付装置側に設けた対地センサの検出情報に基づき所望の対地高さとなるように苗植付装置を昇降制御する昇降制御手段を設ける。苗植付装置には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカを設け、昇降制御手段の制御感度を鈍感側に変更し、且つ、線引きマーカを非作用状態に切り替える操作具を設ける。
単一の操作具を操作することにより、苗植付装置を畔際作業に対応することができ、苗植付装置の不適正作動及び線引きマーカの破損を防止することができる。
【解決手段】乗用田植機の走行車体には昇降アクチュエータにより苗植付装置を昇降自在に設け、苗植付装置側に設けた対地センサの検出情報に基づき所望の対地高さとなるように苗植付装置を昇降制御する昇降制御手段を設ける。苗植付装置には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカを設け、昇降制御手段の制御感度を鈍感側に変更し、且つ、線引きマーカを非作用状態に切り替える操作具を設ける。
単一の操作具を操作することにより、苗植付装置を畔際作業に対応することができ、苗植付装置の不適正作動及び線引きマーカの破損を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用田植機等の水田作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用田植機において、圃場に対する作業装置の昇降位置を検出するセンサによる検出に基づいて作業装置を所定に位置に制御する昇降制御手段を設け、昇降制御手段の昇降感度を設定する感度設定器を設け、昇降制御感度を前記感度設定器による設定よりも極端に鈍感側に変更する昇降感度補正手段を設けたものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−88207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来装置では、水田の畔際に沿った植付作業時には、ステアリングハンドルの操作や、作業装置を昇降制御する昇降制御手段の制御感度の補正や、次行程の走行経路の指標となる線引きマーカの入切操作等があり、操作が複雑となる不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解消し、畔際での植付作業操作を簡単にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、走行車体(1)には昇降アクチュエータ(31)により作業装置(3)を昇降自在に構成し、前記作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように前記作業装置(3)を昇降制御する昇降制御手段(41)を設け、前記作業装置(3)には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ(32)を設け、前記昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ前記線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替える操作具(SW1)を設けたことを特徴とする水田作業機とする。
【0005】
前記構成によると、走行車体(1)の通常の作業では、作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように作業装置(3)が昇降制御されながら例えば苗植付作業がなされ、また、線引きマーカ(32)により作業装置(3)の次行程の走行経路の指標となる位置に線が引かれる。また、操作具(SW1)を操作すると、昇降制御手段(41)の制御感度が鈍感側に変更され且つ線引きマーカ(32)が非作用状態に切り替えられ、畔際に沿った適正な作業状態に変更される。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明は、水田の畔際に沿った作業時には、単一の操作具(SW1)の簡単な操作により、昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替えることができ、作業装置(3)の不適正作動を防止し、線引きマーカ(32)の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面に基づきこの発明の実施形態について説明する。図1〜図3にはこの発明を具備した6条植え乗用田植機が図示されている。図1は全体側面図、図2は全体平面図、図3は一部省略した平面図である。
【0008】
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用田植機に構成している。
【0009】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8を取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置20を一体的に組み付け、エンジン12から伝達された動力を前後進及び無段変速するように構成している。
【0010】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を配設し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0011】
また、図3に示すように、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0012】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸16aにケース連結フレーム16をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0013】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置20の入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置20により前後進切替及び前後進の無段変速がされて、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0014】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸21に取り出され、PTO伝動軸21からPTO軸22を経て苗植付装置3及び施肥装置6に伝達されている。
【0015】
苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース(図示省略)と、この駆動軸ケース(図示省略)内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に対して回転する複数の植付伝動ケース27,…と、植付伝動ケース27,…の回転に伴って所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0016】
また、左右両側の植付伝動ケース27,27の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央の植付伝動ケース27の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサSE2により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動して昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに昇降調節するように構成している。
【0017】
次に、図4に基づき制御ブロック構成について説明する。
制御部41の入力側には、入力インターフェイスを経由して、昇降制御手段の制御感度を調節する感度調節ダイヤル42と、枕地スイッチSW1と、線引きマーカ32の出し入れ制御手段の入切をするマーカ入切スイッチSW2と、作業操作スイッチSW3と、非作業操作スイッチSE4と、任意下降スイッチSE5と、昇降用リンク装置2の昇降位置を検出する昇降リンクセンサSE1と、フロートセンサSE2と、変速レバーセンサSE3と、ステアリングセンサSE4を接続している。
【0018】
また、制御部41の出力側には、出力インターフェイスを介して、前記昇降シリンダ31作動用の昇降用電磁バルブ43と、前記PTO軸23のクラッチ入切用の植付クラッチ用モータM1と、線引きマーカ32作動用のマーカ用モータM2と、前記油圧式無段変速装置20変速用の変速モータM3を接続している。
【0019】
前記センターフロート30Cの前側部を上下回動自在にして、表土面の凹凸に応じてその前端部が上下動するように構成し、植付作業時にはセンターフロート30C前側部の上下動を上下動検出機構(図示省略)を介してフロートセンサSE2に伝達される。フロートセンサSE2の検出結果に関連して昇降用油圧電磁バルブ43が切り替えられ、前記昇降シリンダ31を伸縮し苗植付装置3が所定位置に昇降する。
【0020】
例えば、表土面が高くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が押し上げられ、フロート迎い角が小さく検出される。すると、昇降用油圧電磁バルブ43に制御指令が出され昇降シリンダ31を伸長させ苗植付装置3を上昇させる。また、表土面が低くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が下がり、フロート迎い角が大きく検出されと、昇降用油圧電磁バルブ43への下降指令により、昇降シリンダ31が短縮し苗植付装置3を下降させる。このように、表土面の高低に応じて苗植付装置3の対地高さを調節し、苗の植付深さを一定に維持する植付昇降制御がなされる。
【0021】
前記感度調節ダイヤル42は制御部41の昇降制御手段の昇降感度を設定する感度設定器であり、前記センサフロート30Cの上下移動量をフロートセンサSE2で検出し、検出情報により昇降シリンダ31用の昇降用油圧電磁バルブ43を切り替えて昇降制御をする上でのフロートセンサSE2の基準位置を調節することにより、昇降制御の感度調節をするものである。
【0022】
苗植付装置3の左右両側には、圃場を折り返し走行しながら苗植作業をするときに、次行程で機体の左右中心部の通過位置を圃場表面に線引きする左右線引きマーカ32L,32Rを上下回動自在に設け、また、機体前側部の左右両側には、前行程で植え付けた最外側の植付条の位置を示す左右サイドマーカ33L,33Rを設けている。また、機体の前部左右中央部にはセンターマーカ34を設け、左右線引きマーカ32L,32Rによって圃場に引かれた線とセンターマーカ34とを目視で合致させて機体の進路を決定するように構成している。
【0023】
前記ステアリングセンサSE4によるステアリングハンドル10の旋回操作検出情報及び昇降リンクセンサSE1の昇降用リンク装置3の上昇検出情報に基づき、制御部41からマーカモータM2に指令信号が出され、左右線引きマーカ32L,32Rが交互に上下回動し、その一方の先端部が泥の中に突入する作用状態となるように構成されている。
【0024】
また、前記枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2を切り状態になる。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤルが標準状態あるいは感度調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられ、左右線引きマーカ32L,32Rの出し入れ制御が可能になる。
【0025】
前記構成によると、畔際の植付作業時に枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が切り状態になり、畔際植付作業の操作状態に整えられる。従って、凹凸の激しい畔際の植付作業に際し、苗植付装置3の激しい上下動を抑制しながら精度よく植付作業をすることができる。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤル42が標準状態あるいは調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられるので、通常の折り返し植付作業の操作状態に簡単迅速に復帰することができる。
【0026】
また、次のように構成してもよい。枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が切りになり、更に、変速モータM3により油圧式無段変速装置20における油圧ポンプ20aのトラニオン軸(図示省略)の高速側の変速を規制するように構成する。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤル42が標準感度あるいは調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられ、更に、油圧式無段変速装置20の高速側の変速規制が解除されるように構成する。
【0027】
図5に示すように、本制御が開始すると、枕地スイッチSW1がONか否かの判定がされ(ステップS1)、枕地スイッチSE1がONであると、苗植付装置3の昇降制御のフロートセンサSE2の制御目標位置が鈍感側に補正され(ステップS2)、次いで、マーカ用モータM2により線引きマーカ32L,32Rが上方に回動し非作動位置に移動し下降への移動が規制され(ステップS3)、次いで、変速モータM3の高速位置への作動が制限される。
【0028】
また、枕地スイッチSW1がONか否かの判定をし(ステップS1)、枕地スイッチSW1がOFFであると、制御部41からの指令により標準設定に変更され(ステップS5)、苗植付装置3の昇降制御のフロートセンサSE2の制御目標位置が標準状態に戻され、マーカ用モータM2の下方回動規制が解除されて線引きマーカ32L,32Rを下方回動可能状態に戻され、変速モータM3の高速変速規制が解除され高速変速が可能になる。前記構成によると、枕地の植付作業時に、オペレータの操作を容易にしながら植付精度を高めることができる。
【0029】
次に、制御の他の実施形態について説明する。ステアリングセンサSE4によるステアリングハンドル10の旋回操作検出情報及び昇降リンクセンサSE1の昇降用リンク装置3の上昇検出情報に基づき、制御部41の上昇指令により昇降用油圧電磁バルブ43が作動して苗植付装置3が自動的に上昇するような自動上昇制御がなされる。そして、前記自動上昇制御時において、変速レバーセンサSE3により変速レバー36の後進変速状態を検出すると、苗植付装置3の上昇制御が牽制され苗植付装置3は上昇せずに下降状態を維持するように制御される。
【0030】
前記構成によると、旋回時において後進状態では苗植付装置3の上昇が牽制され下降姿勢を保持するので、オペレータが後方を見やすくなり、苗植付装置3の畔への衝突を防止しながら畔際まで後進できる。
【0031】
次に、図6に基づきステアリングハンドル10に設けるスイッチ構成について説明する。ステアリングハンドル10のスポーク10aの上面外周部には、ちょい下げスイッチSE5、作業操作スイッチSE3を設け、また、スポーク10aの下面外周部には非作業操作スイッチSE4を設けている。
【0032】
前記構成によると、ステアリングハンドル10を操作しながら、ちょい下げスイッチSE5を操作すると、昇降用油圧電磁バルブ43を作動し苗植付装置3を少しだけ下降させることができ、苗植付装置3の昇降調節を容易にすることができる。また、作業操作スイッチSE3を操作すると、PTOクラッチ23を入りにし苗植付装置3及び施肥装置6を駆動することができる。また、非作業操作スイッチSE4を操作することにより、PTOクラッチ23を切りにし苗植付装置3及び施肥装置6を停止することができる。
【0033】
次に、図7及び図8に基づき苗植付装置3の苗載せ台29の潤滑構成について説明する。苗載せ台29の左右方向の前板29aに苗タンク29bの摺動部材29cを当接して左右方向に摺動自在に支持し、左右往復動装置29dにより苗タンク29bを所定範囲にわたり往復移動するように構成している。そして、苗タンク29b側の摺動部材29cには支持部29e,…を設けて、支持部29e,…に固形ワックス51,…を嵌合装着し、押え板29f,…、加圧バネ29g,…を介装し、支持板29hをボルト・ナットで押圧支持している。
【0034】
前記構成によると、苗載せ台29の前板29aと苗タンク29bとの間を固形ワックス51が左右に移動しながら潤滑することができ、グリス塗布の潤滑方式に比較してメンテナンス回数を大幅に減少させることができる。
【0035】
次に、図9に基づき施肥装置6の肥料ホッパ52について説明する。平面視四角形状の肥料ホッパ52下部には漏斗状部52aを設け、漏斗状部52aの下部開口部に繰出ロール(図示省略)を配設している。肥料ホッパ52の漏斗状部52aには網体53を嵌合装着し網体53を経て肥料が流下するように構成している。この網体52の下部には対向する角部間を繋ぐように上下方向の仕切板54を設け、平面視で仕切板54によりホッパを二分するように構成している。
【0036】
肥料ホッパ52内の中央部には肥料の重量が加わり、空洞が発生する所謂ブリッジ現象が生じようとする。しかし、前記構成によると、網体52の下方に仕切板54を設けてホッパを平面視で二分しているので、仕切板52の一方側と他方側とで肥料の重量バランスが崩れて部分的に空洞が崩壊し、肥料を円滑に繰り出すことができる。
【0037】
また、図10のように構成してもよい。肥料ホッパ52における漏斗状部52a上部に網体53を嵌合装着し、この網体52の下部左右両側部には、下方に突出するように左右仕切板54a,54bを一体的に取り付け、例えば、一方の左仕切板54aを漏斗状部52aの傾斜角度よりも緩傾斜状にし、また、他方の右仕切板54aを略垂直状にし、ホッパの左右両側で肥料の流下案内力を大小に異なるように設定している。このように構成すると、ホッパの左右両側部で肥料重量の加重バランスが崩れて空洞が崩壊し、肥料を円滑に繰り出すことができる。
【0038】
次に、図11に基づき油圧式無段変速装置20の他の実施形態について説明する。
油圧式無段変速装置20は、エンジン(図示省略)により駆動される可変容量型ポンプ20a及びチャージポンプ20bと、可変容量型ポンプ20aと油圧モータ20cとを主管路20d,20eで接続して形成される閉回路20deと、油圧モータ20cの両側の主管路20d,20e間にチャージポンプ20bから主管路20d,20eの漏洩を補うように低圧リリーフ弁20fでセットされた油圧を補給するように接続された2個のチエック弁20g,20gと、主管路20d,20eの油圧を規制する両効きの高圧リリーフ弁20hとにより構成されている。
【0039】
しかして、エンジンで駆動される可変容量型ポンプ20aの吐出油に応じて油圧モータ20cが回転して車輪(図示省略)を駆動し、また、チャージポンプ20bにより吐出された作動油をチャージ油路20p、チエック弁20g,20gを介して、可変容量型ポンプ20a、油圧モータ20c等から漏れた作動油を補給し、過剰に供給された作動油は、低圧リリーフ弁20fを経てタンク20jに戻される。
【0040】
また、前記チエック弁20g,20gにはニュートラル弁20n,20nを一体構成し、チャージポンプ20bからの作動油を切替弁20mを経由してニュートラル弁20n,20nに作用させるように構成している。そして、変速レバー36により可変容量型ポンプ20aの吐出圧が微小域に切り替えられると、切替弁20mが送油側に切り替わって2個のニュートラル弁20n,20nに作動油が送られ、チャージ油路20pがチエック弁20g,20gからニュートラル弁20n,20nに切り替えられ、主管路20d,20dが連通状態となり、油圧モータ20cが回転しないように構成されている。
【0041】
前記構成によると、油圧式無段変速装置20の中立位置での油圧ポンプ20cの回転が停止し車輪が回転するようなこともなくて安全であり、また、チャージポンプ20bからの作動油によりニュートラル弁20n,20nを切り替えるように構成しているので、コンパクトな構成とすることができる。
【0042】
また、油圧式無段変速装置20を図12に示すように構成してもよい。可変容量型ポンプ20aと油圧モータ20cとを主管路20d,20eで接続して閉回路20deを形成し、この閉回路20deには油圧モータ20cの両側に位置するようにロータリ切替弁56を設けている。そして、ロータリ切替弁56を、連通部56a、高圧リリーフ部56b及び閉鎖部56cの3位置切り替え式に構成し、弁調節モータM4をカップリング57を介してロータリ切替弁56に接続し回転切替可能に構成している。また、変速レバー36により可変容量型ポンプ20aの吐出圧微小域に切り替えると、ロータリ切替弁56の連通部56aに関連的に切り替えられ、主管路20d,20dが無負荷の連通状態となり、油圧モータ20cが回転しないように構成している。
【0043】
また、ロータリ切替弁56の弁ケース56dと弁体56eとの間には、弁体56eの回転に関連して開口容積が関連的に順次大小に変化するスリット56fを設けているので、ロータリ切替弁56を緩やかに切り替えるこよができ、機体を緩やかに発進したり停止させることができる。
【0044】
次に、油圧式無段変速装置20の他の実施形態について説明する。無段変速装置20の油圧ポンプ20aを可変ピストン型に構成し、副変速装置(図示省略)変速用の副変速レバー(図示省略)には変速操作位置検出用の副変速レバーセンサ(図示省略)を設けている。そして、副変速レバー(図示省略)の低速の植付作業位置への操作が変速レバーセンサで検出されると、制御部の指令信号により油圧ポンプ20aが大容量側に切り替えられ、また、副変速レバー(図示省略)が高速の移動速度位置に操作されると、油圧ポンプ20aが小容量側に切り替えられて油圧ポンプ20aが駆動される。
【0045】
前記構成によると、苗植付装置3で植付作業をしない路上走行の移動時には、必要最小限の小容量で作動油を油圧モータ20cに供給するので、馬力ロスを低減し省エネルギーで田植機を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】乗用田植機の一部省略した平面図
【図4】制御ブロック図
【図5】フローチャート
【図6】ステアリングハンドル部の斜視図、側面図
【図7】苗植付装置部の切断側面図
【図8】苗植付装置部の切断正面図
【図9】施肥装置の肥料ホッパの斜視図、平面図
【図10】施肥装置の肥料ホッパの側面図
【図11】油圧式無段変速装置の回路図
【図12】油圧式無段変速装置の回路図、弁体の切断正面図、切断側面図
【符号の説明】
【0047】
1 走行車体
3 作業装置(苗植付装置)
31 昇降アクチュエータ(昇降シリンダ)
32 引く線引きマーカ
41 昇降制御手段(制御部)
42 感度調節ダイヤル
SE2 対地センサ(フロートセンサ)
SW1 操作具(枕地スイッチ)
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用田植機等の水田作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用田植機において、圃場に対する作業装置の昇降位置を検出するセンサによる検出に基づいて作業装置を所定に位置に制御する昇降制御手段を設け、昇降制御手段の昇降感度を設定する感度設定器を設け、昇降制御感度を前記感度設定器による設定よりも極端に鈍感側に変更する昇降感度補正手段を設けたものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−88207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来装置では、水田の畔際に沿った植付作業時には、ステアリングハンドルの操作や、作業装置を昇降制御する昇降制御手段の制御感度の補正や、次行程の走行経路の指標となる線引きマーカの入切操作等があり、操作が複雑となる不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解消し、畔際での植付作業操作を簡単にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、走行車体(1)には昇降アクチュエータ(31)により作業装置(3)を昇降自在に構成し、前記作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように前記作業装置(3)を昇降制御する昇降制御手段(41)を設け、前記作業装置(3)には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ(32)を設け、前記昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ前記線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替える操作具(SW1)を設けたことを特徴とする水田作業機とする。
【0005】
前記構成によると、走行車体(1)の通常の作業では、作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように作業装置(3)が昇降制御されながら例えば苗植付作業がなされ、また、線引きマーカ(32)により作業装置(3)の次行程の走行経路の指標となる位置に線が引かれる。また、操作具(SW1)を操作すると、昇降制御手段(41)の制御感度が鈍感側に変更され且つ線引きマーカ(32)が非作用状態に切り替えられ、畔際に沿った適正な作業状態に変更される。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明は、水田の畔際に沿った作業時には、単一の操作具(SW1)の簡単な操作により、昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替えることができ、作業装置(3)の不適正作動を防止し、線引きマーカ(32)の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面に基づきこの発明の実施形態について説明する。図1〜図3にはこの発明を具備した6条植え乗用田植機が図示されている。図1は全体側面図、図2は全体平面図、図3は一部省略した平面図である。
【0008】
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用田植機に構成している。
【0009】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8を取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置20を一体的に組み付け、エンジン12から伝達された動力を前後進及び無段変速するように構成している。
【0010】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を配設し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0011】
また、図3に示すように、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0012】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸16aにケース連結フレーム16をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0013】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置20の入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置20により前後進切替及び前後進の無段変速がされて、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0014】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸21に取り出され、PTO伝動軸21からPTO軸22を経て苗植付装置3及び施肥装置6に伝達されている。
【0015】
苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース(図示省略)と、この駆動軸ケース(図示省略)内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に対して回転する複数の植付伝動ケース27,…と、植付伝動ケース27,…の回転に伴って所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0016】
また、左右両側の植付伝動ケース27,27の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央の植付伝動ケース27の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサSE2により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動して昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに昇降調節するように構成している。
【0017】
次に、図4に基づき制御ブロック構成について説明する。
制御部41の入力側には、入力インターフェイスを経由して、昇降制御手段の制御感度を調節する感度調節ダイヤル42と、枕地スイッチSW1と、線引きマーカ32の出し入れ制御手段の入切をするマーカ入切スイッチSW2と、作業操作スイッチSW3と、非作業操作スイッチSE4と、任意下降スイッチSE5と、昇降用リンク装置2の昇降位置を検出する昇降リンクセンサSE1と、フロートセンサSE2と、変速レバーセンサSE3と、ステアリングセンサSE4を接続している。
【0018】
また、制御部41の出力側には、出力インターフェイスを介して、前記昇降シリンダ31作動用の昇降用電磁バルブ43と、前記PTO軸23のクラッチ入切用の植付クラッチ用モータM1と、線引きマーカ32作動用のマーカ用モータM2と、前記油圧式無段変速装置20変速用の変速モータM3を接続している。
【0019】
前記センターフロート30Cの前側部を上下回動自在にして、表土面の凹凸に応じてその前端部が上下動するように構成し、植付作業時にはセンターフロート30C前側部の上下動を上下動検出機構(図示省略)を介してフロートセンサSE2に伝達される。フロートセンサSE2の検出結果に関連して昇降用油圧電磁バルブ43が切り替えられ、前記昇降シリンダ31を伸縮し苗植付装置3が所定位置に昇降する。
【0020】
例えば、表土面が高くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が押し上げられ、フロート迎い角が小さく検出される。すると、昇降用油圧電磁バルブ43に制御指令が出され昇降シリンダ31を伸長させ苗植付装置3を上昇させる。また、表土面が低くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が下がり、フロート迎い角が大きく検出されと、昇降用油圧電磁バルブ43への下降指令により、昇降シリンダ31が短縮し苗植付装置3を下降させる。このように、表土面の高低に応じて苗植付装置3の対地高さを調節し、苗の植付深さを一定に維持する植付昇降制御がなされる。
【0021】
前記感度調節ダイヤル42は制御部41の昇降制御手段の昇降感度を設定する感度設定器であり、前記センサフロート30Cの上下移動量をフロートセンサSE2で検出し、検出情報により昇降シリンダ31用の昇降用油圧電磁バルブ43を切り替えて昇降制御をする上でのフロートセンサSE2の基準位置を調節することにより、昇降制御の感度調節をするものである。
【0022】
苗植付装置3の左右両側には、圃場を折り返し走行しながら苗植作業をするときに、次行程で機体の左右中心部の通過位置を圃場表面に線引きする左右線引きマーカ32L,32Rを上下回動自在に設け、また、機体前側部の左右両側には、前行程で植え付けた最外側の植付条の位置を示す左右サイドマーカ33L,33Rを設けている。また、機体の前部左右中央部にはセンターマーカ34を設け、左右線引きマーカ32L,32Rによって圃場に引かれた線とセンターマーカ34とを目視で合致させて機体の進路を決定するように構成している。
【0023】
前記ステアリングセンサSE4によるステアリングハンドル10の旋回操作検出情報及び昇降リンクセンサSE1の昇降用リンク装置3の上昇検出情報に基づき、制御部41からマーカモータM2に指令信号が出され、左右線引きマーカ32L,32Rが交互に上下回動し、その一方の先端部が泥の中に突入する作用状態となるように構成されている。
【0024】
また、前記枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2を切り状態になる。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤルが標準状態あるいは感度調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられ、左右線引きマーカ32L,32Rの出し入れ制御が可能になる。
【0025】
前記構成によると、畔際の植付作業時に枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が切り状態になり、畔際植付作業の操作状態に整えられる。従って、凹凸の激しい畔際の植付作業に際し、苗植付装置3の激しい上下動を抑制しながら精度よく植付作業をすることができる。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤル42が標準状態あるいは調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられるので、通常の折り返し植付作業の操作状態に簡単迅速に復帰することができる。
【0026】
また、次のように構成してもよい。枕地スイッチSE1を入りにすると、感度調節ダイヤル42が鈍感側に調節され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が切りになり、更に、変速モータM3により油圧式無段変速装置20における油圧ポンプ20aのトラニオン軸(図示省略)の高速側の変速を規制するように構成する。また、枕地スイッチSW1を切りにすると、感度調節ダイヤル42が標準感度あるいは調節前の状態に戻され、且つ、マーカ入切スイッチSW2が入りに切り替えられ、更に、油圧式無段変速装置20の高速側の変速規制が解除されるように構成する。
【0027】
図5に示すように、本制御が開始すると、枕地スイッチSW1がONか否かの判定がされ(ステップS1)、枕地スイッチSE1がONであると、苗植付装置3の昇降制御のフロートセンサSE2の制御目標位置が鈍感側に補正され(ステップS2)、次いで、マーカ用モータM2により線引きマーカ32L,32Rが上方に回動し非作動位置に移動し下降への移動が規制され(ステップS3)、次いで、変速モータM3の高速位置への作動が制限される。
【0028】
また、枕地スイッチSW1がONか否かの判定をし(ステップS1)、枕地スイッチSW1がOFFであると、制御部41からの指令により標準設定に変更され(ステップS5)、苗植付装置3の昇降制御のフロートセンサSE2の制御目標位置が標準状態に戻され、マーカ用モータM2の下方回動規制が解除されて線引きマーカ32L,32Rを下方回動可能状態に戻され、変速モータM3の高速変速規制が解除され高速変速が可能になる。前記構成によると、枕地の植付作業時に、オペレータの操作を容易にしながら植付精度を高めることができる。
【0029】
次に、制御の他の実施形態について説明する。ステアリングセンサSE4によるステアリングハンドル10の旋回操作検出情報及び昇降リンクセンサSE1の昇降用リンク装置3の上昇検出情報に基づき、制御部41の上昇指令により昇降用油圧電磁バルブ43が作動して苗植付装置3が自動的に上昇するような自動上昇制御がなされる。そして、前記自動上昇制御時において、変速レバーセンサSE3により変速レバー36の後進変速状態を検出すると、苗植付装置3の上昇制御が牽制され苗植付装置3は上昇せずに下降状態を維持するように制御される。
【0030】
前記構成によると、旋回時において後進状態では苗植付装置3の上昇が牽制され下降姿勢を保持するので、オペレータが後方を見やすくなり、苗植付装置3の畔への衝突を防止しながら畔際まで後進できる。
【0031】
次に、図6に基づきステアリングハンドル10に設けるスイッチ構成について説明する。ステアリングハンドル10のスポーク10aの上面外周部には、ちょい下げスイッチSE5、作業操作スイッチSE3を設け、また、スポーク10aの下面外周部には非作業操作スイッチSE4を設けている。
【0032】
前記構成によると、ステアリングハンドル10を操作しながら、ちょい下げスイッチSE5を操作すると、昇降用油圧電磁バルブ43を作動し苗植付装置3を少しだけ下降させることができ、苗植付装置3の昇降調節を容易にすることができる。また、作業操作スイッチSE3を操作すると、PTOクラッチ23を入りにし苗植付装置3及び施肥装置6を駆動することができる。また、非作業操作スイッチSE4を操作することにより、PTOクラッチ23を切りにし苗植付装置3及び施肥装置6を停止することができる。
【0033】
次に、図7及び図8に基づき苗植付装置3の苗載せ台29の潤滑構成について説明する。苗載せ台29の左右方向の前板29aに苗タンク29bの摺動部材29cを当接して左右方向に摺動自在に支持し、左右往復動装置29dにより苗タンク29bを所定範囲にわたり往復移動するように構成している。そして、苗タンク29b側の摺動部材29cには支持部29e,…を設けて、支持部29e,…に固形ワックス51,…を嵌合装着し、押え板29f,…、加圧バネ29g,…を介装し、支持板29hをボルト・ナットで押圧支持している。
【0034】
前記構成によると、苗載せ台29の前板29aと苗タンク29bとの間を固形ワックス51が左右に移動しながら潤滑することができ、グリス塗布の潤滑方式に比較してメンテナンス回数を大幅に減少させることができる。
【0035】
次に、図9に基づき施肥装置6の肥料ホッパ52について説明する。平面視四角形状の肥料ホッパ52下部には漏斗状部52aを設け、漏斗状部52aの下部開口部に繰出ロール(図示省略)を配設している。肥料ホッパ52の漏斗状部52aには網体53を嵌合装着し網体53を経て肥料が流下するように構成している。この網体52の下部には対向する角部間を繋ぐように上下方向の仕切板54を設け、平面視で仕切板54によりホッパを二分するように構成している。
【0036】
肥料ホッパ52内の中央部には肥料の重量が加わり、空洞が発生する所謂ブリッジ現象が生じようとする。しかし、前記構成によると、網体52の下方に仕切板54を設けてホッパを平面視で二分しているので、仕切板52の一方側と他方側とで肥料の重量バランスが崩れて部分的に空洞が崩壊し、肥料を円滑に繰り出すことができる。
【0037】
また、図10のように構成してもよい。肥料ホッパ52における漏斗状部52a上部に網体53を嵌合装着し、この網体52の下部左右両側部には、下方に突出するように左右仕切板54a,54bを一体的に取り付け、例えば、一方の左仕切板54aを漏斗状部52aの傾斜角度よりも緩傾斜状にし、また、他方の右仕切板54aを略垂直状にし、ホッパの左右両側で肥料の流下案内力を大小に異なるように設定している。このように構成すると、ホッパの左右両側部で肥料重量の加重バランスが崩れて空洞が崩壊し、肥料を円滑に繰り出すことができる。
【0038】
次に、図11に基づき油圧式無段変速装置20の他の実施形態について説明する。
油圧式無段変速装置20は、エンジン(図示省略)により駆動される可変容量型ポンプ20a及びチャージポンプ20bと、可変容量型ポンプ20aと油圧モータ20cとを主管路20d,20eで接続して形成される閉回路20deと、油圧モータ20cの両側の主管路20d,20e間にチャージポンプ20bから主管路20d,20eの漏洩を補うように低圧リリーフ弁20fでセットされた油圧を補給するように接続された2個のチエック弁20g,20gと、主管路20d,20eの油圧を規制する両効きの高圧リリーフ弁20hとにより構成されている。
【0039】
しかして、エンジンで駆動される可変容量型ポンプ20aの吐出油に応じて油圧モータ20cが回転して車輪(図示省略)を駆動し、また、チャージポンプ20bにより吐出された作動油をチャージ油路20p、チエック弁20g,20gを介して、可変容量型ポンプ20a、油圧モータ20c等から漏れた作動油を補給し、過剰に供給された作動油は、低圧リリーフ弁20fを経てタンク20jに戻される。
【0040】
また、前記チエック弁20g,20gにはニュートラル弁20n,20nを一体構成し、チャージポンプ20bからの作動油を切替弁20mを経由してニュートラル弁20n,20nに作用させるように構成している。そして、変速レバー36により可変容量型ポンプ20aの吐出圧が微小域に切り替えられると、切替弁20mが送油側に切り替わって2個のニュートラル弁20n,20nに作動油が送られ、チャージ油路20pがチエック弁20g,20gからニュートラル弁20n,20nに切り替えられ、主管路20d,20dが連通状態となり、油圧モータ20cが回転しないように構成されている。
【0041】
前記構成によると、油圧式無段変速装置20の中立位置での油圧ポンプ20cの回転が停止し車輪が回転するようなこともなくて安全であり、また、チャージポンプ20bからの作動油によりニュートラル弁20n,20nを切り替えるように構成しているので、コンパクトな構成とすることができる。
【0042】
また、油圧式無段変速装置20を図12に示すように構成してもよい。可変容量型ポンプ20aと油圧モータ20cとを主管路20d,20eで接続して閉回路20deを形成し、この閉回路20deには油圧モータ20cの両側に位置するようにロータリ切替弁56を設けている。そして、ロータリ切替弁56を、連通部56a、高圧リリーフ部56b及び閉鎖部56cの3位置切り替え式に構成し、弁調節モータM4をカップリング57を介してロータリ切替弁56に接続し回転切替可能に構成している。また、変速レバー36により可変容量型ポンプ20aの吐出圧微小域に切り替えると、ロータリ切替弁56の連通部56aに関連的に切り替えられ、主管路20d,20dが無負荷の連通状態となり、油圧モータ20cが回転しないように構成している。
【0043】
また、ロータリ切替弁56の弁ケース56dと弁体56eとの間には、弁体56eの回転に関連して開口容積が関連的に順次大小に変化するスリット56fを設けているので、ロータリ切替弁56を緩やかに切り替えるこよができ、機体を緩やかに発進したり停止させることができる。
【0044】
次に、油圧式無段変速装置20の他の実施形態について説明する。無段変速装置20の油圧ポンプ20aを可変ピストン型に構成し、副変速装置(図示省略)変速用の副変速レバー(図示省略)には変速操作位置検出用の副変速レバーセンサ(図示省略)を設けている。そして、副変速レバー(図示省略)の低速の植付作業位置への操作が変速レバーセンサで検出されると、制御部の指令信号により油圧ポンプ20aが大容量側に切り替えられ、また、副変速レバー(図示省略)が高速の移動速度位置に操作されると、油圧ポンプ20aが小容量側に切り替えられて油圧ポンプ20aが駆動される。
【0045】
前記構成によると、苗植付装置3で植付作業をしない路上走行の移動時には、必要最小限の小容量で作動油を油圧モータ20cに供給するので、馬力ロスを低減し省エネルギーで田植機を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】乗用田植機の一部省略した平面図
【図4】制御ブロック図
【図5】フローチャート
【図6】ステアリングハンドル部の斜視図、側面図
【図7】苗植付装置部の切断側面図
【図8】苗植付装置部の切断正面図
【図9】施肥装置の肥料ホッパの斜視図、平面図
【図10】施肥装置の肥料ホッパの側面図
【図11】油圧式無段変速装置の回路図
【図12】油圧式無段変速装置の回路図、弁体の切断正面図、切断側面図
【符号の説明】
【0047】
1 走行車体
3 作業装置(苗植付装置)
31 昇降アクチュエータ(昇降シリンダ)
32 引く線引きマーカ
41 昇降制御手段(制御部)
42 感度調節ダイヤル
SE2 対地センサ(フロートセンサ)
SW1 操作具(枕地スイッチ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)には昇降アクチュエータ(31)により作業装置(3)を昇降自在に構成し、前記作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように前記作業装置(3)を昇降制御する昇降制御手段(41)を設け、前記作業装置(3)には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ(32)を設け、前記昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ前記線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替える操作具(SW1)を設けたことを特徴とする水田作業機。
【請求項1】
走行車体(1)には昇降アクチュエータ(31)により作業装置(3)を昇降自在に構成し、前記作業装置(3)側に設けた対地センサ(SE2)の検出情報に基づき所望の対地高さとなるように前記作業装置(3)を昇降制御する昇降制御手段(41)を設け、前記作業装置(3)には次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ(32)を設け、前記昇降制御手段(41)の制御感度を鈍感側に変更し且つ前記線引きマーカ(32)を非作用状態に切り替える操作具(SW1)を設けたことを特徴とする水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−282583(P2007−282583A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114580(P2006−114580)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]