説明

水田作業機

【課題】整地装置の泥滞留に起因した整地装置による泥水の押し出しを効果的に抑制することができる水田作業機を提供する。
【解決手段】整地装置40を整地作用する整地作用状態と整地装置40における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段97,98と、整地装置40における泥滞留の発生を検出する泥滞留検出手段92,93とを設けてある。泥滞留検出手段92,93が検出作動すると、整地装置40が泥滞留解消状態に切り換え操作されるように泥滞留検出手段92,93による検出情報を基に切り換え手段97,98を自動的に操作する制御手段96を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した水田作業機は、整地装置による整地が行われた箇所に水田作業装置による苗植付けや種子供給などの作業を行なえるようにしたものである。
この種の水田作業機として、従来、例えば特許文献1に記載されたものがあった。特許文献1に記載されたものでは、水田作業装置としての苗植付装置、整地装置としての代掻き装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−341881号公報(段落〔0068〕、〔0078〕、図1〜6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した水田作業機では、一般に、整地装置は、整地装置の内部に泥水通路となる空洞部を備えさせて構成され、整地装置の前側に位置する泥水を整地装置の内部を通して後側に排出しながら作業できるように構成される。ところが、整地装置の内部に泥土が滞留する事態が生じた場合、整地装置の前側に位置する泥水が整地装置によって整地装置の横外側に押し出されやすくなる。また、整地装置の前側に泥土が滞留する事態が生じた場合も、同様に泥水が整地装置によって整地装置の横側に押し出されやすくなる。整地装置の横外側に泥水が押し出されると、水田作業装置の横側に既に植え付けられている植付苗あるいは供給されている種子などが整地装置から流れ出た泥水を受け、植付苗や種子などの姿勢乱れやずれ動きが発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、整地装置の泥滞留に起因した整地装置による泥水の押し出しを効果的に抑制しながら作業することができる水田作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機において、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段と、前記整地装置における泥滞留の発生を検出する泥滞留検出手段とを設け、
前記泥滞留検出手段が検出作動すると、前記整地装置が前記泥滞留解消状態に切り換え操作されるように前記泥滞留検出手段による検出情報を基に前記切り換え手段を自動的に操作する制御手段を設けてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、整地装置における泥滞留が発生すると、これが泥滞留検出手段によって検出されて泥滞留検出手段による検出情報を基に制御手段が切り換え手段を自動的に操作し、整地装置が切り換え手段によって整地作用状態から泥滞留解消状態に切り換え操作されるから、整地装置における泥滞留が発生しても、整地装置の泥滞留の解消が自動的に図られるのであり、整地装置の泥滞留を発生後に早期に解消させることができる。
【0008】
従って、整地装置における泥滞留が発生しても早期に解消させて整地装置による泥水の押し出しを効果的に防止や抑制することができ、植付苗や種子などに整地装置からの泥水による悪影響が出にくい良好な作業を行なうことができる。
【0009】
本第2発明は、走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機であって、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段を設け、
前記整地装置が前記整地作用状態と前記泥滞留解消状態とに周期的に交互に切り換わるように前記切り換え手段を自動的に操作する制御手段を設けてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、切り換え手段が制御手段によって自動的に操作されて整地装置が整地作用状態と泥滞留解消状態に周期的に交互に切り換えられるから、整地装置が泥滞留解消状態に切り換えられたときに泥滞留の解消を行なわせることができ、整地装置における泥滞留が発生しても、滞留した泥を大きくならないうちに比較的早期に解消させることができる。
【0011】
従って、整地装置における泥滞留が発生しても比較的早期に解消させて整地装置による泥水の押し出しを効果的に防止や抑制することができ、植付苗や種子などに整地装置からの泥水による悪影響が出にくい良好な作業を行なうことができる。
【0012】
本第3発明は、走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機において、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段を設け、
前記水田作業装置に動力伝達するクラッチが切り状態に切り換え操作されると、前記整地装置を前記泥滞留解消状態に切り換え操作するべく前記切り換え手段が操作されるように、前記クラッチと前記切り換え手段とを連係させてある。
【0013】
本第3発明の構成によると、水田作業装置に動力伝達するクラッチが切り状態に切り換え操作されると、クラッチと切り換え手段との連係によって切り換え手段が自動的に操作されて整地装置が泥滞留解消状態に切り換え操作されるから、苗や種子などの補給であるとか畦際での旋回走行が行なわれる際、整地装置がクラッチの切り操作に連係して泥滞留解消状態に自動的に切り換わり、整地装置の泥滞留の解消を行わせることができる。
【0014】
従って、苗や種子の補給や旋回走行が行なわれる都度に整地装置の泥滞留の解消を行なわせて整地装置による泥水の押し出しを効果的に防止や抑制することができ、植付苗や種子などに整地装置からの泥水による悪影響が出にくい良好な作業を行なうことができる。
【0015】
本第4発明では、前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が田面から離間するよう整地作用状態から上昇した状態である。
【0016】
本第4発明の構成によると、整地装置は、泥滞留解消状態に切り換えられると、整地作用状態から上昇して田面から離間した状態となるから、殊に整地装置の前側に滞留した泥土の場合、泥土を整地装置の下方を通して整地装置の後側に排出しやすくできる。
【0017】
従って、整地装置の前側における泥滞留が発生した場合に殊に、整地装置の泥滞留の解消を効果的に行なわせて、整地装置による泥水の押し出しを効果的に抑制することできる。
【0018】
本第5発明では、前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が整地作用の回転方向とは逆の回転方向に駆動された状態である。
【0019】
本第5発明の構成によると、整地装置は、泥滞留解消状態に切り換えられると、整地作用の回転方向とは逆回転方向に駆動された状態になるから、殊に整地装置の内部に滞留した泥土の場合、泥土が滞留した際の回転方向とは逆回転方向の回転力を泥土に付与して泥土を排出しやすくできる。
【0020】
従って、整地装置の内部における泥滞留が発生した場合に殊に、整地装置の泥滞留の解消を効果的に行なわせて、整地装置による泥水の横外側への押し出しを効果的に抑制することできる。
【0021】
本第6発明では、前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が田面から離間するよう整地作用状態から上昇し、かつ整地作用の回転方向とは逆の回転方向に駆動された状態である。
【0022】
本第6発明の構成によると、整地装置は、泥滞留解消状態に切り換えられると、整地作用状態から上昇して田面から離間し、かつ整地作用の回転方向とは逆回転方向に駆動された状態になるから、整地装置の前側に滞留した泥土であっても、整地装置の内部に滞留した泥土であっても、整地装置の下方を通して整地装置の後側に排出しやすくしたり、泥土が滞留した際の回転方向とは逆回転方向の回転力を泥土に付与して泥土を排出しやすくしたりして泥滞留を解消させることができる。
【0023】
従って、整地装置の前側と内部のいずれにおける泥滞留が発生しても、泥滞留の解消を効果的に行なわせて、整地装置による泥水の横外側への押し出しを効果的に抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】水田作業機の全体を示す側面図である。
【図2】水田作業装置を示す側面図である。
【図3】水田作業装置の前部を示す正面図である。
【図4】水田作業装置の苗植付部及び駆動構造を示す平面図である。
【図5】水田作業装置の下部を示す平面図である。
【図6】サイド用の整地装置の駆動機構を示す平面図である。
【図7】サイド用の整地装置が整地作業状態に切り換えられた状態を示す側面図である。
【図8】サイド用の整地装置が泥滞留解消状態に切り換えられた状態を示す側面図である。
【図9】サイド用の整地装置が上昇格納状態に切り換えられた状態を示す側面図である。
【図10】サイド用の整地装置の支持構造を示す正面図である。
【図11】(a)は、正逆回転切り換え機構の正回転伝動状態を示す線図であり、(b)は、正逆回転切り換え機構の逆回転伝動状態を示す線図である。
【図12】サイド用の整地装置の昇降制御及び泥滞留解消制御を示すブロック図である。
【図13】第2の泥滞留検出手段を示す側面図である。
【図14】泥滞留解消の制御を示すフロー図である。
【図15】泥滞留解消の制御を示すフロー図である。
【図16】第2及び第4の実施形態を備えた水田作業機における整地装置の制御を示すブロック図である。
【図17】第2及び第3の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段による制御を示すフロー図である。
【図18】第2の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段による制御を示すフロー図である。
【図19】第3の実施形態を備えた水田作業機における整地装置の制御を示すブロック図である。
【図20】第3の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段による制御を示すフロー図である。
【図21】第4の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段による制御を示すフロー図である。
【図22】第5の実施形態を備えた水田作業機の全体を示す側面図である。
【図23】第5の実施形態を備えた水田作業機における水田作業装置の下部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の実施の形態に係る水田作業機の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施の形態に係る水田作業機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1、左右一対の駆動自在な後車輪2,2、運転座席3aを有した運転部3を備えた乗用型で自走式の走行車と、この走行車の車体フレーム4の後部にリンク機構5を介して連結された水田作業装置10と、走行車の運転座席3aの後側に設けた肥料タンク21を有した施肥装置20と、走行車の車体の後方に設けた1つのセンタ用のロータ型の整地装置30及び左右一対のサイド用のロータ型の整地装置40,40とを備えて構成してある。
【0026】
走行車は、車体前部に設けたエンジン6を備え、このエンジン6が出力する駆動力を車体前部に位置するミッションケース7に入力してこのミッションケース7の内部に位置する走行ミッション(図示せず)から前輪駆動ケース8に伝達して左右一対の前車輪1,1を駆動し、走行ミッションの出力を回転伝動軸7aを介して車体後部に位置する後輪駆動ケース9に伝達して左右一対の後車輪2,2を駆動する。走行車は、エンジン6が出力する駆動力をミッションケース7の内部に位置する作業ミッション(図示せず)から回転伝動軸7bを介して水田作業装置10に伝達する。
【0027】
リンク機構5は、車体フレーム4とリンク機構5の作業装置側の部材にわたって連結してある油圧シリンダ5aが操作されることにより、この油圧シリンダ5aによって車体フレーム4に対して上下に揺動操作されて、水田作業装置10をこれの下部に車体横方向に並んで位置する1個のセンタ接地フロート11及び4個のサイド接地フロート12が田面Aに接地した下降作業位置と、センタ接地フロート11及びサイド接地フロート12が田面Aから高く上昇した上昇非作業位置とに昇降操作する。
【0028】
水田作業機は、水田作業装置10を下降作業位置して走行車を走行させることにより、走行車の後方でセンタ用の整地装置30及び左右一対のサイド用の整地装置40,40によって田面Aを整地し、この整地後の田面Aに水田作業装置10によって8条の苗植付けを行ない、施肥装置20によって8条の植付苗に対する肥料供給を行なう。
【0029】
水田作業装置10について説明する。
図2は、水田作業装置10を示す側面図である。図4は、水田作業装置10の苗植付部及び駆動構造を示す平面図である。図5は、水田作業装置10の下部を示す平面図である。これらの図に示すように、水田作業装置10は、前記センタ接地フロート11及び前記サイド接地フロート12を備える他、車体横方向の角形の鋼管材で成るメインフレーム13aを有した作業装置フレーム13と、作業装置フレーム13の後端部に車体横方向に並べて支持させた8つの苗植付機構14と、作業装置フレーム13の上側に上端側ほど車体前方側に位置する傾斜姿勢で設けた1つの苗載せ台15とを備えて構成してある。
【0030】
作業装置フレーム13は、前記メインフレーム13aを備える他、メインフレーム13aの車体横方向での中間部に連結されたフィードケース13bと、メインフレーム13aから車体後方向き延出するとともに車体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ4つの植付駆動ケース13cと、4つの植付駆動ケース13cの隣り合う一対の植付駆動ケース13c,13cの前端部にわたって連結された伝動ケース13dとを備えて構成してある。
【0031】
8つの苗植付機構14は、各植付駆動ケース13cの後端部の両横側に1つずつ駆動回動自在に支持される状態で作業装置フレーム13に支持されている。各苗植付機構14は、植付駆動ケース13cに回転駆動自在に支持されたロータリケース14aと、このロータリケース14aの両端部に回転駆動自在に支持された植付アーム14bとを備えて構成してある。各苗植付機構14は、前記回転伝動軸7bからフィードケース13bに入力された駆動力がフィードケース13bの内部に位置する植付駆動ミッション、伝動ケース13dの内部に位置する伝動軸16、及び植付駆動ケース13cの内部に位置する伝動チェーン17を介して苗植付機構14の回転支軸14cに伝達されることによって駆動されて苗植運動を行なう。すなわち、各苗植付機構14は、一対の植付アーム14bに設けてある植付け爪14dの先端側が苗載せ台15に車体横方向に並べて設けてある8つの苗載置部のうちの対応する苗載置部のための苗取出し口と田面Aとの間を回転軌跡を描きながら往復移動するように駆動され、一方の植付アーム14bの植付け爪14dと他方の植付アーム14bの植付け爪14dとによって交互に苗載せ台15の苗載置部に位置するマット状苗から一株分の苗を切断して取り出し、取り出し苗を下降搬送して田面Aに植え付ける。
【0032】
苗載せ台15は、フィードケース13bの内部に位置する植付け駆動ミッションによって回転駆動される苗横送り駆動軸18によって8つの苗植付機構14の苗植え運動に連動させて車体横方向に往復移送され、各苗植付機構14によるマット状苗からの苗取り出しがマット状苗の横一端側から他端側に向けて順次に行なわれるように、苗載せ台15の各苗載置部に載置されているマット状苗を苗植付機構14に対して車体横方向に往復移動させる。
【0033】
施肥装置20について説明する。
図1に示すように、施肥装置20は、肥料タンク21の下部に連結された繰出し機構22と、繰出し機構22に送風管23を介して接続された電動ブロワ24と、繰出し機構22が備える8つの肥料送出部に各別に接続された8本の肥料供給ホース25とを備えて構成してある。8本の肥料供給ホース25は、水田作業装置10に車体横方向に並べてセンタ接地フロート11あるいはサイド接地フロート12に支持させて設けた8個の作溝施肥器26に各別に接続されている。
【0034】
施肥装置20は、繰出し機構22を後輪駆動ケース9に動力伝達する伝動軸7aからの駆動力によって駆動して繰出し機構22によって肥料タンク21から粉粒状の肥料を繰出し、この繰出し肥料を電動ブロワ24が供給する搬送風によって繰出し機構22の各肥料送出部から肥料供給ホース25に供給する。各作溝施肥器26は、対応する苗植付機構14による苗植付箇所の横側近くで田面Aに溝を作成し、作成した溝に肥料供給ホース25からの肥料を落下させる。これにより、施肥装置20は、水田作業装置10が8条の苗植え作業を行なうに伴い、田面Aの各植付苗の横側近くに肥料を供給する。
【0035】
センタ用の整地装置30について説明する。
図5に示すように、センタ用の整地装置30は、水田作業装置10のセンタ接地フロート11及びサイド接地フロート12のうちの車体横方向での中央部に位置するセンタ接地フロート11の前方に位置している。
【0036】
図2,3,5に示すように、センタ用の整地装置30は、センタ用の整地装置30が下端側に車体横向き軸芯Yまわりに回転自在に連結している左右一対の支持杆31,31を介して左右一対の支持アーム32,32に支持されている。左右一対の支持アーム32,32は、作業装置フレーム13のメインフレーム13aから車体前方向きに延出している。左右の支持杆31は、支持杆31の上端側に設けた連結軸33を介して支持アーム32の延出端部に枢支されていて、連結軸33の車体横向き軸芯まわりに上下揺動するようになっており、センタ用の整地装置30は、連結軸33の車体横向き軸芯を揺動支点としてメインフレーム13aに対して昇降する。左右一対の支持杆31,31は、一方の支持杆31の上端側と支持アーム32に設けたバネ支持体34とに連結されたスプリング35によって下降側に揺動付勢されており、センタ用の整地装置30は、スプリング35によって下降付勢されている。一方の支持杆31の上端側は、支持アーム32の延出端部に設けたブラケット36に装着されたストッパねじ37に当接して支持されており、ストッパねじ37がセンタ用の整地装置30の下降限界を設定している。
【0037】
したがって、センタ用の整地装置30は、水田作業装置10が下降作業位置に下降操作されることにより、水田作業装置10と共に下降して下降作用位置になる。図2は、センタ用の整地装置30が下降作用位置にある状態を示している。この図に示すように、センタ用の整地装置30は、下降作用位置に下降すると、センタ用の整地装置30の下端が田面Aの上方に田面Aから設定間隔Dを隔てて位置した状態になり、センタ接地フロート11の前側で整地作用することにより、2つのセンタ用の苗植付機構14,14の作業箇所を苗植付機構14の苗植付けに先立って整地する。
【0038】
すなわち、センタ用の整地装置30は、田面Aから設定間隔Dを超えて盛り上がった隆起が田面Aに存在した場合、スプリング35によって付与される押圧力によって隆起を押圧処理する。センタ用の整地装置30は、接地のために車体横向き軸芯Yまわりに自由に回転しながら整地処理を行う。これにより、センタ用の整地装置30が泥土にもぐり込みにくくなる。また、センタ用の整地装置30の前側に位置する泥水が、センタ用の整地装置30の下方を通ってセンタ用の整地装置30の後側に流動しやすくなる。すなわち、センタ用の整地装置30の前側に位置する泥水がセンタ用の整地装置30によってセンタ用の整地装置30の横外側に押し流される事態を回避しやすい。
【0039】
水田作業装置10の苗植え深さを変更調節した場合など、ストッパねじ37を回転操作部37aによって回動調節することにより、左右一対の支持杆31,31の下降限界を変更調節でき、センタ用の整地装置30の下降作用位置を車体上下方向に変更調節することができる。
【0040】
左右一対のサイド用の整地装置40,40について説明する。
左側及び右側のサイド用の整地装置40は、走行車の後車輪2の後方で、かつ水田作業装置10のセンタ接地フロート11よりも車体横外側に位置する2個のサイド接地フロート12,12の前方に位置している。
図10は、左右のサイド用の整地装置40の支持構造を示す正面図である。この図及び図2,3に示すように、左側及び右側のサイド用の整地装置40は、作業装置フレーム13のメインフレーム13aから車体前方向きに延出した左右一対の支持機構50,50を介してメインフレーム13aに支持されている。
【0041】
図3,7,10に示すように、左側及び右側のサイド用の整地装置40は、左右一対の支持機構50,50の軸支持リンク51におけるボス部51aに回転自在に支持された車体横向きの角軸で成る回転支軸41と、回転支軸41の軸芯方向に並べて回転支軸41に一体回転自在に取付けた複数個の整地装置構成体42とを備えて構成してある。
【0042】
図3,7,10に示すように、左側及び右側のサイド用の整地装置40を構成する各整地装置構成体42は、回転支軸41にボス部43aによって一体回転自在に外嵌する回転板部43と、回転板部43の側面から隣りの整地装置構成体42の回転板部43に向かって延出するとともに整地装置構成体42の回転方向に並ぶ複数本の整地バー部44とを備え構成してある。各整地装置構成体42の各整地バー部44の延出端側は、隣りの整地装置構成体42の回転板部43の側面に連結してこの回転板部43に支持されている。各整地装置構成体42における複数本の整地バー部44は、整地装置構成体42の回転方向に隣り合う一対の整地バー部44,44どうしの間、及び各整地バー部44と回転支軸41との間に所定間隔での隙間を形成する状態で備えられている。整地バー部44どうしの隙間、及び整地バー部44と回転支軸41の隙間は、サイド用の整地装置40の内部に位置する泥水通路になっている。
【0043】
図4に示すように、左側及び右側のサイド用の整地装置40は、この整地装置40の車体横外方側の端部に一端側が連結された伝動ケース61を備えた駆動機構60に連動されている。
【0044】
図6は、左側のサイド用の整地装置40に連動された駆動機構60を示す平面図である。右側のサイド用の整地装置40に連動された駆動機構60は、左側のサイド用の整地装置40に連動された駆動機構60と同じ構造を備えて構成してあり、右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60の詳細は、図示しない。図4及び図6に示すように、左側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60及び右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60は、前記伝動ケース61を備える他、水田作業装置10の横端部に位置する植付駆動ケース13cの前端部に設けた動力取り出し軸70と、この動力取り出し軸70及び伝動ケース61の入力軸62に連結された正逆回転切り換え機構71と、伝動ケース61の内部の入力側に設けた伝動切り換え機構75を備えて構成してある。
【0045】
図6に示すように、伝動ケース61は、前記入力軸62を備える他、サイド用の整地装置40の回転支軸41の端部に角軸形の一端部65aが角形によって一体回転自在に連結した出力軸65と、入力軸62と出力軸65を連動させる一対の伝動チェーン63,64とを備えている。
【0046】
図6に示すように、伝動切り換え機構75は、入力軸62に設けたキー溝62aに摺動自在に係入された伝動切り換えキー76と、伝動切り換えキー76の一端側にシフトアーム77を介して連係した状態で伝動ケース61の支持部61aに摺動自在に支持された変速操作軸78とを備えており、変速操作軸78が操作ケーブル78aによってスプリング79に抗して摺動操作されるか、あるいはスプリング79によって摺動操作されることにより、高速状態と低速状態とに切り換わる。
【0047】
すなわち、伝動切り換え機構75は、変速操作軸78がスプリング79によって摺動操作されると、高速状態になる。つまり、変速操作軸78がスプリング79によって摺動操作されると、伝動切り換えキー76がシフトアーム77によってキー溝62aの一端側に位置した高速位置に切り換え操作されて、伝動切り換えキー76の伝動突部76aが低速駆動の伝動チェーン64のスプロケット64aのボス部から外れて高速駆動の伝動チェーン63のスプロケット63aのボス部に係合し、入力軸62と高速駆動の伝動チェーン63のスプロケット63aとが伝動切り換えキー76によって一体回転自在に連結されて、入力軸62の駆動力を高速駆動の伝動チェーン63に伝達する。
【0048】
伝動切り換え機構75は、変速操作軸78がスプリング79に抗して摺動操作されると、低速状態になる。すなわち、変速操作軸78がスプリング79に抗して摺動操作されると、伝動切り換えキー76がシフトアーム77によってキー溝62aの他端側に位置した低速位置に切り換え操作されて、伝動切り換えキー76の伝動突部76aが高速駆動の伝動チェーン63のスプロケット63aのボス部から外れて低速駆動の伝動チェーン64のスプロケット64aのボス部に係合し、入力軸62と低速駆動の伝動チェーン64のスプロケット64aとが伝動切り換えキー76によって一体回転自在に連結されて、入力軸62の駆動力を低速駆動の伝動チェーン64に伝達する。
【0049】
左側のサイド用の整地装置40及び右側のサイド用の整地装置40のための伝動機構60における伝動切り換え機構75の変速操作軸78は、水田作業装置10の苗載せ台15の上端部の車体前方側に設けた変速レバー75a(図3参照)に操作ケーブル78aを介して連動されており、変速レバー75aの揺動操作によって操作される。
【0050】
図11に示すように、正逆回転切り換え機構71は、動力取り出し軸70に一体回転自在に設けた入力ギヤ71a、入力軸62に一体回転自在に設けた出力ギヤ71b、入力ギヤ71a及び出力ギヤ71bに噛合う逆転ギヤ71c、逆転ギヤ71cを回転自在に支持するギヤホルダー72、動力取り出し軸70に一体回転及び摺動自在に支持された切り換え体73を備えて構成してある。
【0051】
ギヤホルダー72は、動力取り出し軸70及び入力軸62に相対回転自在に支持されている。切り換え体73は、ギヤホルダー72に設けたクラッチ爪72aに係脱自在なクラッチ爪73a、及びブレーキ72bを備えている。ブレーキ72bは、入り状態に切り換え操作されることにより、ギャホルダー72に制動作用してギヤホルダー72を固定状態にし、切り状態に切り換え操作されることにより、ギヤホルダー72に対する制動作用を解除してギヤホルダー72を回転可能な状態にする。
【0052】
つまり、正逆回転切換え機構71は、ブレーキ72bが切り換え操作され、切り換え体73にシフトアーム74aを介して連係する電動アクチュエータ74によって切り換え体73がシフト操作されることにより正回転伝動状態と逆回転伝動状態とに切り換わる。
【0053】
図11(a)は、正逆回転切り換え機構71の正回転伝動状態を示す線図である。この図に示すように、正逆回転切り換え機構71は、ブレーキ72bが切り状態に切り換え操作され、電動アクチュエータ74が正回転側に操作されると、切り換え体73がギヤホルダー72に近づいた正回転位置にシフト操作されて切り換え体73のクラッチ爪73aがギヤホルダー72のクラッチ爪72aに係合し、切り換え体73がギヤホルダー72と動力取り出し軸70を一体回転するように連結することより、動力取り出し軸70の駆動力の回転方向を反転しないで動力取り出し軸70の駆動力を入力軸62に伝達する。
【0054】
図11(b)は、正逆回転切り換え機構71の逆回転伝動状態を示す線図である。この図に示すように、正逆回転切り換え機構71は、ブレーキ72bが入り状態に切り換え操作され、電動アクチュエータ74が逆転側に操作されると、切り換え体73がギヤホルダー72から離れた逆転位置にシフト操作されて切り換え体73のクラッチ爪73aがギヤホルダー72のクラッチ爪72aから離脱し、切り換え体73によるギヤホルダー72と動力取り出し軸70の連結が解除されることより、動力取り出し軸70の駆動力を入力ギヤ71a、逆転ギヤ71c及び出力ギヤ71bによって逆回転方向の駆動力に変換して入力軸62に伝達する。
【0055】
つまり、左側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60及び右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60は、フィードケース13bから苗植付機構14に伝達される駆動力を動力取り出し軸70によって植付駆動ケース13cから取り出して正逆回転切り換え機構71に入力し、正逆回転切り換え機構71の出力を伝動ケース61の入力軸62に伝達し、入力軸62の駆動力を伝動切り換え機構75及び高速駆動の伝動チェーン63を介して出力軸63に伝達して、あるいは入力軸62の駆動力を伝動切り換え機構75及び低速駆動の伝動チェーン64を介して出力軸63に伝達し、出力軸63によってサイド用の整地装置40を回転支軸41の車体横向き軸芯Pまわりに回転駆動する。
【0056】
したがって、左側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60及び右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60は、正逆回転切り換え機構71が正回転伝動状態に切り換えられることにより、サイド用の整地装置40を整地作用の回転方向F(図7参照)に駆動し、正逆回転切り換え機構71が逆回転伝動状態に切り換えられることにより、サイド用の整地装置40を整地作用の回転方向Fとは逆の回転方向R(図7参照)に駆動する。
【0057】
左側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60及び右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60は、サイド用の整地装置40を整地作用の回転方向Fと整地作用の回転方向Fとは逆の回転方向Rとのいずれの回転方向に駆動する場合においても、伝動切り換え機構75が高速状態に切り換えられておれば、サイド用の整地装置40を高速回転で駆動し、伝動切り換え機構75が低速状態に切り換えられておれば、サイド用の整地装置40を低速回転で駆動する。左側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60及び右側のサイド用の整地装置40のための駆動機構60は、サイド用の整地装置40を整地作用の回転方向Fに駆動する場合、高速回転と低速回転のいずれの回転速度で駆動する場合であっても、整地装置40の周速度が走行車の走行速度よりも速い速度になる状態で駆動する。
【0058】
図7は、左側及び右側のサイド用の整地装置40を支持する支持機構50を示す側面図である。この図及び図2,10に示すように、左側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50、及び右側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50は、前記軸支持リンク51を備える他、この軸支持リンク51に一端側が連結ピン52を介して相対回転自在に連結された中間リンク53と、この中間リンク53の他端側に遊端側が連結ピン54を介して相対回転自在に連結された揺動リンク55と、中間リンク53の中間部に遊端側が連結ピン56を介して相対回転自在に連結された操作リンク57とを備えて構成してある。
【0059】
揺動リンク55の基端側は、メインフレーム13aに固定されたステー58の支持板部58aに枢支ピン55aを介して回転自在に支持されている。操作リンク57の基端側は、前記ステー58の前記支持板部58aに車体横向きの連動軸59を介して回転自在に支持されている。
【0060】
図2,7,10に示すように、左側のサイド用の整地装置40を支持する左側の支持機構50に、操作リンク57に一体成形した扇形ギヤ80と、この扇形ギヤ80に出力ギヤ81が噛合った電動モータで成る昇降モータ82とを備えてある。昇降モータ82は、ステー58に設けたモータ取付け部58bに支持されている。左側のサイド用の整地装置40を支持する右側の支持機構50及び右側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50は、扇形ギヤ80及び昇降モータ82を備えていない。
【0061】
図7,10に示すように、連動軸59は、左側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50及び右側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50における操作リンク57をステー58の支持板部58aに揺動自在に枢支させるとともに操作リンク57の基端側に一体回転自在に連結している枢支軸部59aと、隣り合う一対の支持機構50,50における枢支軸部59aを一体回転自在に連結する連結軸部59bとを備えて構成してある。つまり、連動軸59は、左側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50における操作リンク57と右側のサイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50における操作リンク57とを一体に揺動するように連動させている。
【0062】
したがって、左側及び右側のサイド用の整地装置40のための支持機構50は、昇降モータ82が駆動されることにより、作業装置フレーム13に対して昇降操作されてサイド用の整地装置40を下降整地位置と、下降整地位置よりも少し上昇した泥滞留解消位置と、泥滞留解消位置よりもさらに上昇した上昇格納位置とに昇降操作する。
【0063】
図7は、サイド用の整地装置40が下降整地位置に下降操作され状態を示す側面図である。この図に示すように、昇降モータ82が下降側に回転駆動され、扇形ギヤ80が出力ギヤ81によって連動軸59の軸芯まわりに下降側に揺動操作されて操作リンク57が連動軸59の軸芯まわりに下降操作され、中間リンク53が操作リンク57によって下降操作されて軸支持リンク51を下降操作するとともに中間リンク53が揺動リンク55による支持のために連結ピン56の軸芯まわりに揺動し、軸支持リンク51がメインフレーム13aに対して下降するとともに中間リンク53に対して連結ピン52の軸芯まわりに揺動した下降設定姿勢になる。昇降モータ82を設けてある支持機構50の軸支持リンク51が下降設定姿勢になると、連動軸59が各支持機構50の操作リンク57を連動させていることにより、昇降モータ82を設けていない支持機構50の軸支持リンク51も昇降モータ82を設けてある支持機構50の軸支持リンク51と同じ下降設定姿勢になり、左側のサイド用の整地装置40の支持機構50及び右側のサイド用の整地装置40の支持機構50が下降状態になって、左右一対のサイド用の整地装置40,40が下降整地位置になる。左側及び右側のサイド用の整地装置40は、下降整地位置になると、整地装置40の下端部が圃場の泥土部に作用深さD1(図2,7参照)で入り込んだ状態になる。
【0064】
図8は、サイド用の整地装置40が泥滞留解消位置に上昇操作された状態を示す側面図である。この図に示すように、昇降モータ82が上昇側に回転駆動され、扇形ギヤ80が出力ギヤ81によって連動軸59の軸芯まわりに上昇側に揺動操作されて操作リンク57が連動軸59の軸芯まわりに上昇操作され、中間リンク53が操作リンク57によって上昇操作されて軸支持リンク51を上昇操作するとともに中間リンク53が揺動リンク55による支持のために連結ピン56の軸芯まわりに揺動し、軸支持リンク51がメインフレーム13aに対して上昇するとともに中間リンク53に対して連結ピン52の軸芯まわりに揺動した第1の設定上昇姿勢になる。昇降モータ82を設けてある支持機構50の軸支持リンク51が第1の設定上昇姿勢になると、連動軸59の連動作用により、昇降モータ82を設けていない支持機構50の軸支持リンク51も第1の設定上昇姿勢になり、左側のサイド用の整地装置40の支持機構50及び右側のサイド用の整地装置40の支持機構50が第1の上昇状態になって、左右一対のサイド用の整地装置40,40が泥滞留解消位置になる。
【0065】
図9は、サイド用の整地装置40が上昇格納位置に上昇操作された状態を示す側面図である。この図に示すように、昇降モータ82が上昇側に回転駆動され、扇形ギヤ80が出力ギヤ81によって連動軸59の軸芯まわりに上昇側に揺動操作されて操作リンク57が連動軸59の軸芯まわりに上昇操作され、中間リンク53が操作リンク57によって上昇操作されて軸支持リンク51を上昇操作するとともに中間リンク53が揺動リンク55による支持のために連結ピン56の軸芯まわりに揺動し、軸支持リンク51がメインフレーム13aに対して上昇するとともに中間リンク53に対して連結ピン52の軸芯まわりに揺動した第2の設定上昇姿勢になる。昇降モータ82を設けてある支持機構50の軸支持リンク51が第2の設定上昇姿勢になると、連動軸59の連動作用により、昇降モータ82を設けていない支持機構50の軸支持リンク51も第2の設定上昇姿勢になり、左側のサイド用の整地装置40の支持機構50及び右側のサイド用の整地装置40の支持機構50が第2の上昇状態になって、左右一対のサイド用の整地装置40,40が上昇格納位置になる。左右一対のサイド用の整地装置40,40は、上昇格納位置になると、泥滞留解消位置よりも高い配置高さの位置に持ち上げられた状態になる。
【0066】
図12は、左右一対のサイド用の整地装置40,40の昇降制御及び泥滞留解消制御を示すブロック図である。この図に示すように、前記昇降モータ82に制御装置90が連係され、この制御装置90に選択設定手段91、第1の泥滞留検出手段92、第2の泥滞留検出手段93及び取付け高さセンサ94が連係されている。
【0067】
図12に示す昇降レバー99は、揺動操作されることにより、ポテンショメータ99aを操作してポテンショメータ99aによって所定の指令を制御装置90に出力することにより、制御装置90によって油圧シリダ5aの制御弁5bを制御させて水田作業装置10を下降作業位置及び上昇非作業位置に昇降操作したり、下降作業位置と上昇非作業位置の間の苗補給位置に停止操作したりするものである。
【0068】
制御装置90は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段95、泥滞留解消の制御手段96、第1の切り換え手段97及び第2の切り換え手段98を構成している。
【0069】
図12に示すように、選択設定手段91は、格納位置Uと使用域Dとに人為操作によって切り換え自在なロータリスイッチによって構成されている。選択設定手段91は、格納位置Uに切り換え操作されると、サイド用の整地装置40を上昇格納させるべき格納指令を制御装置90に出力する。選択設定手段91は、使用域Dに切り換え操作されることにより、サイド用の整地装置40の作用深さを設定し、設定作用深さの情報をサイド用の整地装置40を圃場の泥土部に入り込ませるべき深さとして制御装置90に出力する。選択設定手段91は、使用域Dでの操作位置を変更調節されることにより、サイド用の整地装置40の作用深さを変更して設定し、変更した設定作用深さの情報をサイド用の整地装置40を圃場の泥土部に入り込ませるべき深さとして制御装置90に出力する。
【0070】
取付け高さセンサ94は、各支持機構50の操作リンク57を連動させている連動軸59の端部に操作軸が連動された回転ポテンショメータによって構成してある。取付け高さセンサ94は、操作リンク57の揺動角をサイド用の整地装置40の取付け高さとして検出し、検出結果を制御装置90に出力する。
【0071】
昇降制御手段95は、選択設定手段91からの格納指令を入力した場合、この格納指令および取付け高さセンサ94による検出情報を基に昇降モータ82を上昇側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を上昇格納位置に上昇させる。
【0072】
図12に示すように、第1の泥滞留検出手段92は、6個の超音波センサ92aを備えて構成してある。
【0073】
図3,7に示すように、6個の超音波センサ92aは、左側及び右側のサイド用の整地装置40の上方に3個ずつが車体横方向に所定間隔を隔てて並んで位置するように配置してある。各超音波センサ92aは、作業装置フレーム13のメインフレーム13aから延出した支持アーム92bに支持されている。各超音波センサ92aは、発信器によって超音波をサイド用の整地装置40の前側近くに向けて発信し、整地作用状態にあるサイド用の整地装置40の前側近くでの田面Aから反射した超音波を受信器によって受信し、超音波の発信及び受信の情報を制御装置90に出力する。
【0074】
超音波センサ92aにおける超音波の発信時と受信時の時間差を基に超音波センサ92aから整地装置40の前側近くの田面Aまでの距離を計測し、計測距離と超音波センサ92aから泥滞留がない田面Aまでの距離として設定した設定距離とを比較して計測距離が設定距離よりも小になっておれば、サイド用の整地装置40の前側に泥滞留が発生していると検出することができる。
【0075】
したがって、第1の泥滞留検出手段92は、各超音波センサ92aに対応する計測距離が設定距離よりも小であるか否かが判別され、6個の超音波センサ92aの少なくとも1個の超音波センサ92aに対応する計測距離が設定距離よりも小であると判別される状態になれば、サイド用の整地装置40の前側に泥滞留が発生したと検出作動した状態となる。第1の泥滞留検出手段92は、6個の超音波センサ62aのいずれにも対応する計測距離が設定距離以上であると判別される状態にあれば、サイド用の整地装置40の前側における泥滞留を検出しない非検出状態となる。
【0076】
図13は、第2の泥滞留検出手段93を示す側面図である。図7及び図13に示すように、第2の泥滞留検出手段93は、左側のサイド用の整地装置40及び右側のサイド用の整地装置40の後方側に設けた泥跳ね防止カバー100と、各泥跳ね防止カバー100の車体横方向での一端側の上端部付近に設けたポテンショメータ101とを備えて構成してある。
【0077】
各泥跳ね防止カバー100は、サイド用の整地装置40を支持する左右一対の支持機構50,50における軸支持リンク51に連結された車体横向きの中空形の取り付けバー102に回転支軸103を介して枢支されており、回転支軸103の車体横向き軸芯まわりに上下揺動する。泥跳ね防止カバー100が下降揺動するに伴い、取り付けバー102に設けてあるストッパー104が泥跳ね防止カバー100の基部に当接して受け止め作用するように構成してあり、泥跳ね防止カバー100の整地装置40に最も接近した位置としての下降限界がストッパー104によって設定される。各ポテンショメータ101の回転操作軸が泥跳ね防止カバー100の回転支軸103に連動されている。
【0078】
サイド用の整地装置40の内部に泥土が入り込んで整地バー部44どうしの隙間や整地バー部44と回転支軸41の隙間に泥土が滞留し、滞留した泥土のボリュームが増大した場合、滞留泥土が整地装置40の回転のために泥跳ね防止カバー100の内面側に当接して泥跳ね防止カバー100が滞留泥土によって下降限界から押し上げ操作される。したがって、泥跳ね防止カバー100が下降限界から上昇揺動したことを検出することにより、サイド用の整地装置40の内部における泥滞留が発生したと検出することができる。
【0079】
つまり、第2の泥滞留検出手段93は、各泥跳ね防止カバー100の上昇がポテンショメータ101によって検出され、各ポテンショメータ101が検出状態にあるか否かを判別され、左側のサイド用の整地装置40に対応するポテンショメータ101と右側のサイド用の整地装置40に対応するポテンショメータ101の少なくとも一方のポテンショメータ101が検出状態にあると判別される状態になれば、サイド用の整地装置40の内部における泥土滞留が発生したと検出作動した状態になる。第2の泥滞留検出手段93は、2個のポテンショメータ101のいずれもが検出状態ではないと判断された場合、サイド用の整地装置40の内部における泥土滞留を検出しない非検出状態になる。
【0080】
図14及び図15は、泥滞留解消の制御手段96による泥滞留解消制御を示すフロー図である。図14に示すように、泥滞留解消の制御手段96は、選択設定手段91からの情報を基に選択設定手段91が使用域Dに操作されているか否かを判断し、選択設定手段91が使用域Dに操作されていると判断した場合、オン状態に切り換って泥滞留解消制御を行ない、選択設定手段91が使用域Dに操作されていないと判断した場合、オフ状態に切り換って泥滞留解消制御を行なわない。
【0081】
図15に示すように、泥滞留解消の制御手段96は、オン状態に切り換わった場合、第1の泥滞留検出手段92及び第2の泥滞留検出段93が検出作動の状態であるか否かを判断する。泥滞留解消の制御手段96は、第1の泥滞留検出手段92が検出作動の状態であると判断した場合、第1の切り換え手段97に整地装置40の泥滞留解消を行なわせるべき泥滞留解消指令を出力し、第1の泥滞留検出手段92が検出作動の状態ではないと判断した場合、第1の切り換え手段97に整地装置40を整地作用状態に維持させるべき整地指令を出力する。
【0082】
第1の切り換え手段97は、泥滞留解消の制御手段96から泥滞留解消指令を入力した場合、泥滞留解消側に作動して昇降モータ82を上昇側に制御し、かつ正逆回転切り換え機構71のアクチュエータ74を正回転側に制御して正逆回転切り換え機構71を正回転伝動状態に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された泥滞留解消状態に切り換え操作する。
【0083】
第1の切り換え手段97は、泥滞留解消の制御手段96から整地指令を入力した場合、整地側に作動して昇降モータ82を下降側に制御し、かつ正逆回転切り換え機構71のアクチュエータ74を正回転側に制御して正逆回転切り換え機構71を正回転伝動状態に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40を下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態に操作する。
【0084】
第1の切り換え手段97は、左右一対のサイド用の整地装置40,40を整地作用状態に操作した場合、選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に昇降モータ82を下降側に制御し、左右一対のサイド用の整地装置440,40の作用深さD1を選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さに調整する。
【0085】
泥滞留解消の制御手段96は、第2の泥滞留検出手段98が検出作動の状態であると判断した場合、第2の切り換え手段98に整地装置40の泥滞留解消を行なわせるべき泥滞留解消指令を出力し、第2の泥滞留検出手段98が検出作動の状態ではないと判断した場合、第2の切り換え手段98に整地装置40を整地作用状態に維持させるべき整地指令を出力する。
【0086】
第2の切り換え手段98は、泥滞留解消の制御手段96から泥滞留解消指令を入力した場合、泥滞留解消側に作動して昇降モータ82を上昇側に制御し、かつ正逆回転切り換え機構71のアクチュエータ74を逆回転側に制御して正逆回転切り換え機構71を逆回転伝動状態に切り換え操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fとは逆の回転方向Rに駆動された泥滞留解消状態に切り換え操作する。
【0087】
第2の切り換え手段98は、泥滞留解消の制御手段96から整地指令を入力した場合、整地側に作動して昇降モータ82を下降側に制御し、かつ正逆回転切り換え機構71のアクチュエータ74を正回転側に制御して正逆回転切り換え機構71を正回転伝動状態に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40を下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態に操作する。
【0088】
第2の切り換え手段98は、左右一対のサイド用の整地装置40,40を整地作用状態に切り換え操作した場合、選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に昇降モータ82を下降側に制御し、左右一対のサイド用の整地装置40,40の作用深さD1を選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さに調整する。
【0089】
泥滞留解消の制御手段96は、第1の泥滞留検出手段92が検出作動の状態にある場合、第2の泥滞留検出手段93が非検出状態にあっても、第2の泥滞留検出手段93からの情報に優先して第1の切り換え手段97による整地装置40の泥滞留解消状態への切り換えを行なわせる。泥滞留解消の制御手段96は、第2の泥滞留検出手段93が検出作動の状態にある場合、第1の泥滞留検出手段92が非検出状態にあっても、第1の泥滞留検出手段92からの情報に優先して第2の切り換え手段98による整地装置40の泥滞留解消状態への切り換えを行なわせる。
【0090】
つまり、作業を行なう場合、選択設定手段91を使用域Dに切換える。すると、選択設定手段91からの設定作用深さの情報、第1の泥滞留検出手段92及び第2の泥滞留検出手段93による検出情報を基に泥滞留解消の制御手段96が作動して、制御手段96による指令を基に第1の切り換え手段97及び第2の切り換え手段98が昇降モータ82及び正逆回転切り換え機構71を操作する。したがって、左側及び右側のサイド用の整地装置40の前側及び内部における泥土滞留が発生していないと、左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態に操作され、左側のサイド用の整地装置40は、走行車の左側の後車輪2の通過後で、かつ左側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、左側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地し、右側のサイド用の整地装置40は、走行車の右側の後車輪2の通過後で、かつ右側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、右側の3つのサイド用の苗植付機構14,14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地する。
【0091】
左側のサイド用の整地装置40と右側のサイド用の整地装置40の少なくとも一方の整地装置40の前側に泥土が滞留した場合、第1の泥滞留検出手段92が検出作動して制御手段96が第1の泥滞留検出手段92による検出情報を基に第1の切り換え手段97を制御し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が第1の切り換え手段97によって泥滞留解消状態に切り換え操作される。したがって、左側及び右側のサイド用の整地装置40は、これの前側に滞留した泥土を整地装置40の下方を通して整地装置40の後側に流出させて泥滞留を解消する。
【0092】
左側のサイド用の整地装置40と右側のサイド用の整地装置40の少なくとも一方において、整地装置40の内部における泥土滞留が発生した場合、第2の泥滞留検出手段93が検出作動して制御手段96が第2の泥滞留検出手段93による検出情報を基に第2の切り換え手段98を制御し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が第2の切り換え手段98によって泥滞留解消状態に切り換え操作される。したがって、左側及び右側のサイド用の整地装置40は、泥滞留解消位置で整地作用の回転方向Fとは逆の回転方向Rに駆動されて滞留泥土を内部から排出することによって泥土滞留を解消する。
【0093】
左右一対のサイド用の整地装置40,40は、第1の切り換え手段97によって泥滞留解消状態に切り換え操作された場合も、第2の切り換え手段98によって泥滞留解消状態に切り換え操作された場合も泥土滞留を解消すると、第1の泥滞留検出手段92、第2の泥滞留検出段93が非検出状態になり、制御手段96が第1の泥滞留検出手段92による情報を基に第1の切り換え手段97を整地側に制御し、あるいは制御手段96が第2の泥滞留検出手段93による情報を基に第2の切り換え手段98を整地側に制御し、左右一対のサイド用の整地装置40,40は、第1の切り換え手段97あるいは第2の切り換え手段98によって整地作用状態に戻される。
【0094】
〔第2の実施形態〕
図16は、第2の実施形態を備えた水田作業機における左右一対のサイド用の整地装置40,40の制御を示すブロック図である。この図に示すように、第2の実施形態を備えた水田作業機では、前記昇降モータ82が連係された制御装置90に、選択設定手段91及びクラッチセンサ110が連係されている。
【0095】
制御装置90は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段95、泥滞留解消の制御手段96を構成している。
【0096】
選択設定手段91は、第1の実施形態を備えた水田作業機に設けた選択設定手段91と同じ構成を備えている。
【0097】
クラッチセンサ110は、エンジン6の駆動力を水田作業装置10に伝達する植付け用のクラッチ111を入り状態と切り状態に切り換え操作するクラッチレバー112に連動させた検出スイッチによって構成してあり、クラッチレバー112の操作位置を基に植付け用のクラッチ111の入り状態を検出する。
【0098】
昇降制御手段95は、選択設定手段91が格納位置Uに切り換え操作された場合、選択設定手段91からの格納情報を基に昇降モータ82を上昇側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を上昇格納位置に切り換え操作する。
【0099】
昇降制御手段95は、選択設定手段91が使用域Dに切り換え操作された場合、選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に昇降モータ82を下降側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を下降整地位置に切り換え操作し、かつ左右一対のサイド用の整地装置40,40の作用深さD1を選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さに調整する。
【0100】
図17,18は、第2の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段96による制御を示すフロー図である。図17に示すように、第2の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段96は、選択設定手段91からの情報を基に選択設定手段91が使用域Dに操作されているか否かを判断し、クラッチセンサ110からの情報を基に植付け用のクラッチ111が入り状態にあるか否かを判断し、選択設定手段91が使用域Dに操作され、植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されていると判断した場合、オン状態に切り換わる。
【0101】
図18に示すように、泥滞留解消の制御手段96は、オン状態に切り切り換わった場合、取り付け高さセンサ94による検出情報を基に左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあるか否かを判断し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあると判断した場合、左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあると判断してからの経過時間t1を計測し、計測経過時間t1が設定時間t0に達した否かを判断する。
【0102】
制御手段96は、計測経過時間t1が設定時間t2に達したと判断した場合、昇降モータ82を上昇側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を、泥滞留解消位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された泥滞留解消状態に切り換える。
【0103】
制御手段96は、左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消状態に切り換えると、左右一対のサイド用の整地装置40,40が泥滞留解消状態に切り換わってからの経過時間t2を計測し、計測経過時間t2が設定時間t3に達したか否かを判断する。
【0104】
制御手段96は、計測経過時間t2が設定時間t3に達したと判断した場合、昇降モータ82を下降側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態に復帰させる。
【0105】
制御手段96は、選択設定手段91が使用域Dに操作され、植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されている間、左右一対のサイド用の整地装置40,40を設定時間t0だけ整地作用状態に維持した後に泥滞留解消状態に切り換えること、泥滞留解消状態に切換えた左右一対のサイド用の整地装置40,40を設定時間t3だけ泥滞留解消状態に維持した後に整地作用状態に復帰させることを繰り返して行なう。
【0106】
第2の実施形態を備えた水田作業機にあっては、作業を行なう場合、選択設定手段91を使用域Dに切り換えると、昇降制御手段95が選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に作動して昇降モータ82を下降側に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態なり、左側のサイド用の整地装置40は、左側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、左側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地し、右側のサイド用の整地装置40は、右側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、右側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地する。
【0107】
植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されることによって泥滞留解消の制御手段96が選択設定手段91及びクラッチセンサ110による情報を基にオン状態に切り換わり、泥滞留解消の制御手段96が計測経過時間t1及び計測経過時間t2を基に昇降モータ82を上昇側と下降側に繰り返して切り換え操作することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40は、整地作用状態を設定時間t0にわたって維持した後に泥滞留解消状態に切り換えられ、泥滞留解消状態を設定時間t3にわたって維持した後に整地作用状態に戻される状態で整地作用状態と泥滞留解消状態とに周期的に交互に切り換えられ、整地装置40の前側に泥土が滞留することがあっても、整地装置40が泥滞留解消状態に切り換えられた場合に滞留泥土を整地装置40の下方を通して整地装置40の後側に流出させて泥滞留を解消する。
【0108】
〔第3の実施形態〕
図19は、第3の実施形態を備えた水田作業機における左右一対のサイド用の整地装置40,40の制御を示すブロック図である。この図に示すように、第3の実施形態を備えた水田作業機では、前記昇降モータ82が連係された制御装置90に、選択設定手段91、クラッチセンサ110及び車輪回転センサ113が連係されている。
【0109】
制御装置90は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段95、泥滞留解消の制御手段96を構成している。
【0110】
選択設定手段95は、第1の実施形態を備えた水田作業機に設けた選択設定手段95と同じ構成を備えている。クラッチセンサ110は、第2の実施形態を備えた水田作業機に設けたクラッチセンサ110と同じ構成を備えている。昇降制御手段95は、第2の実施形態を備えた水田作業機に設けた昇降制御手段95と同じ構成を備えている。
【0111】
車輪回転センサ113は、走行車の後車輪2の回転数を検出し、検出結果を制御装置90に出力する。
【0112】
第3の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段96は、図17及び図20に示す制御フローに基づいて作動する。
【0113】
すなわち、泥滞留解消の制御手段96は、選択設定手段91からの情報を基に選択設定手段91が使用域Dに操作されているか否かを判断し、クラッチセンサ110からの情報を基に植付け用のクラッチ111が入り状態にあるか否かを判断し、選択設定手段91が使用域Dに操作され、植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されていると判断した場合、オン状態に切り換わる。
【0114】
図20に示すように、泥滞留解消の制御手段96は、オン状態に切り切り換わった場合、取り付け高さセンサ94による検出情報を基に左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあるか否かを判断し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあると判断した場合、左右一対のサイド用の整地装置40,40が整地作用状態にあると判断してからの走行車の走行距離L1を車輪回転センサ113による検出結果を基に計測し、計測走行距離L1が設定距離L0に達した否かを判断する。
【0115】
制御手段96は、計測走行距離L1が設定距離L0に達したと判断した場合、昇降モータ82を上昇側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を、泥滞留解消位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された泥滞留解消状態に切り換える。
【0116】
制御手段96は、左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消状態に切り換えると、左右一対のサイド用の整地装置40,40が泥滞留解消状態に切り換わってからの経過時間t2を計測し、計測経過時間t2が設定時間t3に達したか否かを判断する。
【0117】
制御手段96は、計測経過時間t2が設定時間t3に達したと判断した場合、昇降モータ82を下降側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態に復帰させる。
【0118】
制御手段96は、選択設定手段91が使用域Dに操作され、植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されている間、左右一対のサイド用の整地装置40,40を走行車の走行距離が設定距離LOに達するまで整地作用状態に維持した後に泥滞留解消状態に切り換えること、泥滞留解消状態に切換えた左右一対のサイド用の整地装置40,40を設定時間t3だけ泥滞留解消状態に維持した後に整地作用状態に復帰させることを繰り返して行なう。
【0119】
第3の実施形態を備えた水田作業機にあっては、作業を行なう場合、選択設定手段91を使用域Dに切り換えると、昇降制御手段95が選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に作動して昇降モータ82を下降側に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態なり、左側のサイド用の整地装置40は、左側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、左側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地し、右側のサイド用の整地装置40は、右側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、右側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地する。
【0120】
植付け用のクラッチ111が入り状態に操作されることによって泥滞留解消の制御手段96が選択設定手段91及びクラッチセンサ110による情報を基にオン状態に切り換わり、泥滞留解消の制御手段96が計測走行距離L1及び計測経過時間t2を基に昇降モータ82を上昇側と下降側に繰り返して切り換え操作することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40は、走行車が設定距離L0を走行した後に整地作用状態から泥滞留解消状態に切り換えられ、泥滞留解消状態を設定時間t3にわたって維持した後に整地作用状態に戻される状態で整地作用状態と泥滞留解消状態とに周期的に交互に切り換えられ、整地装置40の前側に泥土が滞留することがあても、整地装置40が泥滞留解消状態に切り換えられた場合に滞留泥土を整地装置40の下方を通して整地装置40の後側に流出させて泥滞留を解消する。
【0121】
〔第4の実施形態〕
図16は、第4の実施形態を備えた水田作業機における左右一対のサイド用の整地装置40,40の制御を示すブロック図である。この図に示すように、第4の実施形態を備えた水田作業機では、前記昇降モータ82が連係された制御装置90に、選択設定手段91及びクラッチセンサ110が連係されている。
【0122】
制御装置90は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段95、泥滞留解消の制御手段96を構成している。
【0123】
選択設定手段91は、第1の実施形態を備えた水田作業機に設けた選択設定手段91と同じ構成を備えている。クラッチセンサ110は、第2の実施形態を備えた水田作業機に設けたクラッチセンサ110と同じ構成を備えている。
【0124】
昇降制御手段96は、第2の実施形態を備えた水田作業機に設けた昇降制御手段96と同じ構成を備えている。
【0125】
図21は、第4の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段96による制御を示すフロー図である。この図に示すように、第4の実施形態を備えた水田作業機における泥滞留解消の制御手段96は、クラッチセンサ110からの情報を基に植付け用のクラッチ111が切り状態にあるか否かを判断し、植付け用のクラッチ111が切り状態に操作されていると判断した場合、昇降モータ82を上昇側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を、泥滞留解消位置に位置するとともに停止した泥滞留解消状態に昇降モータ82(切り換え手段)によって切り換える。この場合、左右一対のサイド用の整地装置40,40は、整地用の回転方向Fに駆動されている。
【0126】
泥滞留解消の制御手段96は、植付け用のクラッチ111が切り状態に操作されていないと判断した場合、昇降モータ82を下降側に制御することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40を、下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態に昇降モータ82によって切り換える。
【0127】
つまり、泥滞留解消の制御手段96は、植付け用のクラッチ111が切り状態に切り換え操作されるのに連係して昇降モータ82が上昇側に作動して左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消状態に切り換えるように、植付け用のクラッチ111と昇降モータ82とを連係させている。
【0128】
第4の実施形態を備えた水田作業機にあっては、作業を行なう場合、選択設定手段91を使用域Dに切り換えると、昇降制御手段95が選択設定手段91からの設定作用深さの情報を基に作動して昇降モータ82を下降側に操作し、左右一対のサイド用の整地装置40,40が下降整地位置に位置するとともに駆動機構60によって整地用の回転方向Fに駆動された整地作用状態なり、左側のサイド用の整地装置40は、左側の2つのサイド接地フロート12,12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、左側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地し、右側のサイド用の整地装置40は、右側の2つのサイド接地フロート12の前側において選択設定手段91による設定作用深さに対応した作用深さD1で整地作用することにより、右側の3つのサイド用の苗植付機構14による作業箇所を苗植付機構14の苗植え付けに先立って整地する。
【0129】
苗載せ台15に対する苗補給や畦際での旋回走行を行なう場合、植付け用のクラッチ111が切り状態に切り換え操作され、泥滞留解消の制御手段96による植付け用のクラッチ111と昇降モータ82の連係によって昇降モータ82が上昇側に作動して左右一対のサイド用の整地装置40,40を泥滞留解消状態に切り換え操作することにより、左右一対のサイド用の整地装置40,40は、泥滞留解消状態に自ずと切り換わって田面Aから上昇することにより、サイド用の整地装置40の内部に泥土が滞留していても、泥土の自然落下によって泥土を排出する。
【0130】
〔第5の実施形態〕
図22は、第5の実施形態を備えた水田作業機の全体を示す側面図である。図23は、第5の実施形態を備えた水田作業機に設けられた水田作業装置120の下部を示す平面図である。これらの図に示すように、第5の実施形態を備えた水田作業機に設けられた水田作業装置120は、タンク121を有した播種機構122、播種機構122に接続された電動ブロワ123、水田作業装置120の機体フレームの下部に車体横方向に並べて設けた一つのセンタ接地フロート11及び4つのサイド接地フロート12を備えて構成してあり、主として稲用の種子を田面Aに供給する。
【0131】
播種機構122は、車体横方向に並ぶ8つの種子送出部、及び各種子送出部に接続された種子供給管124を備え、タンク121に貯留された種子を繰出しロールによって各種子送出部に繰出し、各種子送出部に繰出した種子を電動ブロワ123から供給される搬送風によって種子供給管124に送り出す。8本の種子供給管124は、車体横方向に並べてセンタ接地フロート11及びサイド接地フロート12に取付けられた作溝播種器125に接続されている。各作溝播種器125は、田面Aに溝を形成し、形成した溝に種子供給管124からの種子を供給する。
【0132】
第5の実施形態を備えた水田作業機は、一つのセンタ用の整地装置30及び左右一対のサイド用の整地装置40,40を備えており、水田作業装置10をセンタ接地フロート11及びサイド接地フロート12が田面Aに接地した下降作業位置に下降され、走行車が走行されることにより、センタ用の整地装置30及びセンタ接地フロート11によって整地された後の田面Aに播種機構122によって2条の種子を供給し、左側及び右側のサイド用の整地装置40及び左側及び右側のサイド接地フロート12によって整地された後の田面Aに播種機構122によって3条の種子を供給し、全体として8条の種子を田面Aに供給する。
【0133】
第5の実施形態を備えた水田作業機に設けたセンタ用の整地装置30は、第1の実施形態を備えた水田作業機に設けたセンタ用の整地装置30と同じ構成を備えている。
【0134】
図22,23に示すように、第5の実施形態を備えた水田作業機に設けた左側及び右側のサイド用の整地装置40は、第1の実施形態を備えた水田作業機に設けたセンタ用の整地装置30が備える整地装置構成体42と同じ構成を有した整地装置構成体42を回転支軸41の軸芯方向に並べて備える他、回転支軸41に一体回転自在に取り付けられた溝切り回転体45を備えて構成してある。
【0135】
溝切り回転体45は、隣り合う一対のサイド接地フロート12,12の間あるいは隣り合うサイド接地フロート12とセンタ接地フロート11の間の前方に位置するように配置されている。溝切り回転体45は、整地装置構成体42の外径よりも大きい外径を備え、田面Aにサイド接地フロート12とセンタ接地フロート11の間あるいはサイド接地フロート12どうしの間を通る排水溝を形成する。排水溝は、サイド用の整地装置40の前側に位置する泥水を整地装置40の前側に溜まらないように接地フロート間を通して後方に排水するものである。
【0136】
〔別の実施形態〕
(1)上記した第1〜第3の実施形態では、整地装置40が泥滞留解消位置に上昇されるとともに整地作用の回転方向Fに駆動された状態、あるいは、整地装置40が泥滞留解消位置に上昇されるとともに整地作用の回転方向Fと逆の回転方向Rに駆動された状態を整地装置40の泥滞留解消状態としたが、整地装置40が泥滞留解消位置に上昇されるとともに停止された状態を整地装置40の泥滞留解消状態として実施してもよい。
(2)上記した第1の実施形態では、第1の泥滞留検出手段92及び第2の泥滞留検出手段93を備え、第1の泥滞留検出手段92及び第2の泥滞留検出手段93による検出情報を基に整地装置40が泥滞留解消状態に切り換え操作されるよう構成しているが、第1の泥滞留検出手段92を備えて、第2の泥滞留検出手段93を備えず、第1の泥滞留検出手段92による検出情報を基に整地装置40が泥滞留解消状態に切り換え操作されるように構成するか、あるいは、第1の泥滞留検出手段92を備えずに、第2の泥滞留検出手段93を備え、第2の泥滞留検出手段93による検出情報を基に整地装置40が泥滞留解消状態に切り換え操作されるように構成して実施してもよい。
(3)溝切り回転体45を有したサイド用の整地装置40を、田植え用の水田作業装置10を有し水田作業機に装備して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、苗植付けを行なうよう構成された水田作業装置を採用した水田作業機の他、圃場に稲籾などの種子を供給するよう構成された水田作業装置を採用した水田作業機にも利用できる。
【符号の説明】
【0138】
10,120 水田作業装置
40 整地装置
82,97,98 切り換え手段
92,93 泥滞留検出手段
96 制御手段
111 クラッチ
A 田面
F 整地作用の回転方向
P 横向き軸芯
R 整地作用の回転方向と逆の回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機であって、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段と、前記整地装置における泥滞留の発生を検出する泥滞留検出手段とを設け、
前記泥滞留検出手段が検出作動すると、前記整地装置が前記泥滞留解消状態に切り換え操作されるように前記泥滞留検出手段による検出情報を基に前記切り換え手段を自動的に操作する制御手段を設けてある水田作業機。
【請求項2】
走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機であって、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段を設け、
前記整地装置が前記整地作用状態と前記泥滞留解消状態とに周期的に交互に切り換わるように前記切り換え手段を自動的に操作する制御手段を設けてある水田作業機。
【請求項3】
走行車体に連結される水田作業装置、及び前記水田作業装置の作業箇所よりも車体前方側の箇所で整地作用するよう車体横向き軸芯まわりに回転駆動される整地装置を備える水田作業機であって、
前記整地装置を整地作用する整地作用状態と前記整地装置における泥滞留の解消を図る泥滞留解消状態とに切り換え操作する切り換え手段を設け、
前記水田作業装置に動力伝達するクラッチが切り状態に切り換え操作されると、前記整地装置を前記泥滞留解消状態に切り換え操作するべく前記切り換え手段が操作されるように、前記クラッチと前記切り換え手段とを連係させてある水田作業機。
【請求項4】
前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が田面から離間するよう整地作用状態から上昇した状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が整地作用の回転方向とは逆の回転方向に駆動された状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項6】
前記整地装置の前記泥滞留解消状態が、前記整地装置が田面から離間するよう整地作用状態から上昇し、かつ整地作用の回転方向とは逆の回転方向に駆動された状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−139670(P2011−139670A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2263(P2010−2263)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】