説明

水田用除草機

【課題】除草装置を車輪(車軸)に近づけて配置することを可能とし、圃場端での回向時、ハンドルによる除草装置の持ち上げ作業を軽くした水田用除草機を提供する。
【解決手段】1輪からなる車輪2をエンジン4により駆動して走行しつつ、ロータ40を田面に接触して自転し、株間及び株ぎわの雑草を除草する。車輪2が走行する条間Bの左右の植付条U,Uの株間を除草する2対のロータは、植付条を挟んで前後方向に所定間隔を隔てて配置され、かつ後側のロータ40r,40fが両方とも車輪2の後方に位置すると共に前側のロータ40f,40fが側面視車輪2とオーバラップするように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田において立毛中に発生した雑草を除草する除草機に係り、詳しくは1輪で自走するタイプの水田用除草機における車輪に対する除草装置の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、水稲栽培において、減農薬、無農薬或いは有機栽培が実施されており、これに伴い、植付け後の除草においても、除草剤を用いずに、機械的に除草する水田用除草機が注目されている。
【0003】
従来、エンジンにより自走する車輪と、田面との接地抵抗により自転するロータを有する除草装置とを備え、車輪により走行しつつ、ロータが自転して株間及び株ぎわの雑草を掻込むようにした水田用除草機が案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記車輪を1輪として、圃場端において植付苗を傷付けることなく回向できるようにした水田用除草機も提案されており、このものは、多数の上記株間用ロータが車輪の後方に略々一列状に横方向に並べて配置されるか、又は1条の植付苗列の左右を挟むようにして、前後方向に所定間隔を置いてかつ多数の植付条列において前後方向の関係(傾斜方向)を一定に揃えて配置されている(例えば特願2004−302456号;本願出願時未公開)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−204603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記1輪タイプの水田用除草機は、圃場端においてハンドルを持ち上げ、除草装置が植付苗を倒さないように上げた状態で回向する必要があるが、上述した株間用ロータを横一列に配置したもの又は全条同じ向きに前後方向に傾斜して配置したものは、すべてのロータが車輪の後方に位置することになり、かつ上記株間用ロータの後方に条間除草用ロータ又はフロートが配置されることが相俟って、車輪から除草装置までの距離が長くなり、作業者は、大きな力でハンドルを持ち上げる必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、除草装置を車輪(車軸)に近づけて配置することを可能とし、もって圃場端等での回向時、ハンドルによる除草装置の持ち上げ作業を軽くした水田用除草機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、エンジン(4)により駆動される走行用の車輪(2)と、田面(D)との接触により自転して株間及び株ぎわを除草するロータ(40)を有する除草装置(5)と、機体(3)の後方に延びるハンドル(13)と、を備えてなる水田用除草機(1)において、
前記車輪(2)が、1輪からなり、
前記ロータ(40)の少なくとも前記車輪(2)が走行する条間(B)の左右の植付条(U,U)の株間及び株ぎわを除草する2対のロータ(40f,40r)(40f,40r)は、それぞれ前記植付条(U,U)を挟んで前後方向に所定間隔を隔てて配置され、
前記前後方向に配置された2対のロータの後側のロータ(40r,40r)が、前記車輪(2)の後方に位置するように配置されてなる、
ことを特徴とする水田用除草機にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記前後方向に配置された2対のロータの前側のロータ(40f,40f)が、側面視、前記車輪(2)と少なくとも一部がオーバラップするように配置されてなる、
請求項1記載の水田用除草機にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記ロータ(40)は、少なくとも4条の植付条の株間及び株ぎわを除草する4対のロータを有し、
前記各ロータは、前記車輪(2)が位置する平面(V−V)に対して、鏡面対称となるように配置されてなる、
請求項1又は2記載の水田用除草機にある。
【0011】
請求項4に係る本発明は、前記除草装置(5)は、前記ロータ(40)を有する株間除草部(20)と、前記ロータの後方に配置され、植付条間(B)を除草する条間除草部(21)とを有してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載の水田用除草機にある。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、株間及び株ぎわを除草するロータ(株間用ロータ)を植付条を挟んで前後方向に所定間隔を隔てて配置し、植付苗(株)に対して左右のロータが同時に作用せず、苗を傷つけることなく株間及び株ぎわを除草できるものでありながら、前記車輪が走行する条間の左右2対のロータは両方とも、その後側ロータが上記車輪走行条間に位置するように配置したので、株間及び株ぎわ用のロータ(株間用ロータ)を車輪(車軸)に近づくように配置することが可能となり、ハンドルにより除草装置を持ち上げて除草機を回向する際の操作を軽くすることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、上記2対のロータの前方側のロータを車輪と側面視オーバラップするように配置したので、除草装置を車輪に近い位置に配置して、回向作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、多条を除草するロータを、車輪が位置する平面に対して鏡面対称となるように配置したので、水田用除草機の左右バランスを良好に保持して、除草作業及び回向作業を安定して行うことができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、前記ロータを有する株間用除草部を車輪に近づけて配置したので、その後方に位置する条間用除草部も比較的前方に配置することができ、除草装置が、株間用除草部と条間用除草部とを有するものであっても、除草機の回向作業を軽く容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2において、1は、本発明に係る1輪自走タイプの水田用除草機であり、本除草機1は、1輪の走行用水田車輪2と、該車輪により支持される機体3と、該車輪の駆動源となるエンジン4と、除草装置5と、を備える。
【0018】
前記機体3は、前後方向に平面視平行に延びている2本のフレーム9,9と、これらフレームから車輪2を挟むように垂下して延びている2枚の連結プレート12とを有しており、更に前記各フレームの後端に固着され、後方に延びてループ状に形成されたハンドル13が一体に設けられており、これら左右のフレーム及びハンドルは、パイプ10及びプレート11により互に連結されて一体に構成されている。前記2枚の連結プレート12,12の下部には前記車輪2の車軸2aが回転自在に支持されており、かつ一方の連結フレーム12には車軸2aに連動するギヤボックス15が設けられている。
【0019】
前記一方のフレーム9とギヤボックス15に亘ってシャフトケース16が固定されており、該シャフトケース16は機体3の前・上方に向って斜めに延びて、その先端部に前記エンジン4が配設されている。該エンジン4からの動力は、前記シャフトケース16内のシャフトを介してギヤボックス15に伝達され、更に車輪2に伝達される。また、前記フレーム9,9の先端部には、前方に延びて取付けブラケット17が一体に固定されており、該ブラケット17にはバランスウェイト19が左右方向に位置調節自在に固定されている。
【0020】
前記除草装置5は、株間及び株ぎわを除草する株間除草部20と、条間を除草する条間除草部21とからなり、車輪2の後方でかつハンドル13の下方において、前記機体3に上下方向位置及び前後の回転方向位置を調節自在に配置されている。即ち、該除草装置5は、横(左右)方向に延びる支持杆(角パイプ)23及び該支持杆の所定箇所に固定されて上方向に延びる連結杆25を有しており、支持杆23と左右連結プレート12との間に連結ロッド26,26がピン結合により連結されていると共に、上記連結杆25の上部と一方の連結プレート12との間に伸縮杆27がピン結合により連結されており、これにより支持杆23を上下方向に移動自在に支持する平行リンクを構成している。また、伸縮杆27はハンドル29が設けられて、該ハンドルを回動操作することにより伸縮杆27が伸縮して支持杆23の回動位置を調節し得る。
【0021】
前記支持杆23の中央部にはピン30により回動自在にかつ上方に延びてノッチプレート31が連結されており、該ノッチプレート31はトーションバネ34により図1の反時計方向に付勢されている。該ノッチプレート31には、複数の位置決め用ノッチを有する溝31a形成されていると共に、上端に後方に延びる操作レバー32が一体に固定されている。また、ハンドル13に固定されたパイプ10にノッチピン33が設けられており、該ノッチピン33が上記溝31aに嵌挿して、所定ノッチに係合することにより、除草装置5の上下位置が調節・固定される。
【0022】
前記支持杆23には、植付条列Uに対応する間隔でボルト35により取付アーム36が4本(4条対応)その中央部で固定されており、これら取付アームの両端部にはそれぞれブラケット37を介して株間除草用ロータ40が支持されている。該ロータ40は、上記ブラケット37の下端に所定角度傾斜して回転自在に支持されるロータ軸40aと、該ロータ軸に放射状に取付けられたロータ刃40bとを有しており、ロータ刃40bが田面Dと接触することにより除草機1の自走に伴って自転する。また、取付アーム36は、支持杆23に対してボルト35により取付角度を調節することができ、これによりロータ40の植付条列Uに対する位置を調節し得る。
【0023】
前記支持杆23には、中央側の3条間B,B,Bに対応してブラケット41が固定されており、該ブラケットは後方に延び、その後端部に条間除草用ロータ42が回転自在に支持されている。該ロータは、横(水平)方向に延びるロータ軸42aと、該ロータ軸に放射状に取付けられかつ該ロータ軸と平行部分を有するカゴ状のロータ杆42bとを有しており、ロータ杆42bが田面に接触することにより除草機1の自走に伴って自転する。前記支持杆23の左右端には、条間B,Bに対応してブラケット43が固定されており、これらブラケットは後方に延び、その後端部にフロート45が固定されている。これらフロート45は、後部分が一部切欠かれており、前記ブラケット43に固定されたスタンドバー46が上記切欠き45aを通って後・下方に向けて延びている。
【0024】
前記株間除草用ロータ40が前記株間除草部20を構成し、前記条間除草用ロータ42及びフロート45が前記条間除草部21を構成する。条間除草部21は株間除草部20の走行方向後方に配置されており、かつフロート45は、その中央部が条間除草用ロータ42の後方でかつその前端部側が、側面視一部条間除草用ロータ42にオーバラップするように配置されている。
【0025】
そして、株間除草部20は、平面視(図2参照)において、1輪からなる走行用車輪2の走行平面V−Vに対して右側にある取付アーム36が時計方向に所定角度傾斜し、左側にある取付アームが反時計方向に所定角度傾斜して配置されている。従って、各取付アーム36に取付けられている1対のロータ40は、車輪右側にあってはその前側のロータが条列Uに対して右側にかつその後側のロータが条列Uに対して左側に位置し、車輪左側にあってはその前側のロータが条列Uに対して左側にかつその後側のロータが条列Uに対して右側に位置することになる。即ち、車輪2が位置する平面V−Vに対して、左右の各ロータ40は、各取付アーム36に取付けられた1対のロータの前後関係が鏡面対称となるように配置される。特に、車輪が走行する条間Bの右側の植付条Uを除草する1対のロータ40f,40rは、前側のロータ40fが植付条Uの右側にかつ後側のロータ40rが植付条Uの左側に位置し、上記条間Bの左側の植付条Uを除草する1対のロータ40f,40rは、前側のロータ40fが植付条Uの左側にかつ後側のロータ40rが植付条Uの右側に位置することになる(上記2対のロータを以下の40,40と記す)。
【0026】
即ち、上記2対のロータ40,40と40,40は、両方とも車輪2が位置する条間Bにあっては車輪2の後方に後側のロータ40r,40rが位置し、前側のロータ40f,40fは、共に上記条間Bに隣接する条間B,Bに位置して、車輪2と干渉することはない。その結果、株間除草部20を車輪2(車軸2a)に近づくように配置することができ、具体的には、上記2対のロータの前側のロータ40f,40fが、側面視(図1参照)、車輪1と少なくとも一部がオーバラップするように配置される。更に、株間除草部20の後方に位置する条間除草部21(条間除草部材42,45)を含めた除草装置5全体が、車輪2に近づくように配置される。
【0027】
ついで、以上構造からなる本水田用除草機1の作用について説明する。
【0028】
圃場内に本水田用除草機1を入れると、まず、水田の深さHに応じてハンドル29を回転することにより、除草装置5の角度が調節される。これにより、作業水田の深さHに対応して、前後の株間除草用ロータ40,40、条間除草用ロータ42が略々同レベルで田面に接する。また、操作レバー32によりノッチプレート31をトーションバネ34に抗して回動して、ハンドル13の高さを作業者に合せて高さ調節し、ノッチピン33を適宜のノッチに係合することにより固定する。
【0029】
この状態で、エンジン4の回転を車輪2に伝達して、除草機1を植付条列Uに沿って走行する。株間除草部20は、取付アーム36に取付けられた1対のロータ40,40がそれぞれ各植付条列Uを挟むようにして、株間及び株ぎわの田面に接触して回転して、雑草を掻込むようにして除草する。なおこの際、植付苗Pは、茎も太くなっており、ロータ40により掻込まれることはなく、更に1対のロータ40,40は前後方向に所定間隔を隔てて配置されているので、植付苗Pに対して左右から同時にロータが作用することはなく、1個のロータの作用方向に対して植付苗が反対方向に逃げることができ、ロータにより植付苗を傷つけることを防止できる。
【0030】
また、条間除草部21は、ロータ42が水平軸であるロータ軸42aを中心に、各条間Bを所定幅にて田面に接触して回転し、各条間Bの雑草を掻込むと共に、上記株間除草用ロータ40で掻込まれた雑草と共に田面中に埋込む。同時に、左右端のフロート45,45は、各条間Bの雑草を、上記株間除草用ロータ40で掻込まれた雑草と共に田面中に埋込む。この際、左右のフロート45は、田面上を滑走して、1輪からなる水田用除草機1の左右の傾きを防止して除草機1の走行を安定させる。これにより、4条の植付条列Uの株間及び株ぎわ、並びに各植付条間の条間B及び植付条に隣接する条間Bの雑草が除草される。
【0031】
水田用除草機1が、上述したように株間及び条間の雑草を除草しつつ走行して圃場端に至ると、作業者は、操作レバー32を操作して、図1の2点鎖線に示すように、ハンドル13を下げ位置に固定する。この状態で、作業者は、ハンドルを持ち上げて、除草装置5を田面から離して所定高さに上げ、1輪の車輪2を株間を通して機体を回向し、つぎの4条の植付条に合せる。この際、株間除草用ロータ40の前述した配置により、除草装置5が車輪2(車軸2a)に近づくように配設されており、この結果、車軸2aを中心にして機体3を前下り状態に傾斜して除草装置5を持ち上げる際の回転モーメントが小さくなって、ハンドル13を持ち上げる力が軽くなる。反面、ハンドル13の持ち上げストロークに対する除草装置5の上昇量は小さくなるが、上述したようにハンドル13を一旦下げてから持ち上げることにより、除草装置の充分な上昇量を確保できる。
【0032】
ついで、同様に、車輪2を回転して除草機1を反対方向から走行して、隣の4条分の株間及び条間の雑草を除草する。なおこの際、作業が隣り合う条間は、フロート45が往復滑走して、2重に作業することになる。これを繰返すことにより、すべての植付条の株間及び条間の除草が行われる。
【0033】
なお、上述した水田用除草機は、4条タイプであるが、6条等の更に多条タイプとしてもよく、この場合、除草装置が重くなるので、本発明による株間除草用ロータ40の配置は、更に有効に機能する。また、株間除草用ロータの配置は、車輪2が位置する条間Bを挟んで左右の植付条列U,Uに対応する2対のロータ40,40であれば足り、他のロータは、必ずしも図2に示すように鏡面対称にしなくてもよく、例えば横方向に一列状に配置する等の他の配置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に適用した水田用除草機を示す側面図。
【図2】その平面図。
【符号の説明】
【0035】
1 水田用除草機
2 車輪
3 機体
4 エンジン
5 除草装置
20 株間除草部
21 条間除草部
40 ロータ
40r,40r 後側のロータ
40f,40f 前側のロータ
U,U,U 植付条(列)
B,B 条間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される走行用の車輪と、田面との接触により自転して株間及び株ぎわを除草するロータを有する除草装置と、機体の後方に延びるハンドルと、を備えてなる水田用除草機において、
前記車輪が、1輪からなり、
前記ロータの少なくとも前記車輪が走行する条間の左右の植付条の株間及び株ぎわを除草する2対のロータは、それぞれ前記植付条を挟んで前後方向に所定間隔を隔てて配置され、
前記前後方向に配置された2対のロータの後側のロータが、前記車輪の後方に位置するように配置されてなる、
ことを特徴とする水田用除草機。
【請求項2】
前記前後方向に配置された2対のロータの前側のロータが、側面視、前記車輪と少なくとも一部がオーバラップするように配置されてなる、
請求項1記載の水田用除草機。
【請求項3】
前記ロータは、少なくとも4条の植付条の株間及び株ぎわを除草する4対のロータを有し、
前記各ロータは、前記車輪が位置する平面に対して、鏡面対称となるように配置されてなる、
請求項1又は2記載の水田用除草機。
【請求項4】
前記除草装置は、前記ロータを有する株間除草部と、前記ロータの後方に配置され、植付条間を除草する条間除草部とを有してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載の水田用除草機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−116951(P2007−116951A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311929(P2005−311929)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000147693)株式会社石井製作所 (17)
【Fターム(参考)】