説明

水硬性材料用収縮低減剤

【課題】他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、結合材(X)と組み合わせた場合に、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を示し、優れた耐凍結融解性を示す、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供する。
【解決手段】本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントから選択される少なくとも1種の結合材(X)と組み合わせて用いる水硬性材料用収縮低減剤であって、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)および減水剤(B)を含み、該ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の分子量が4000〜10000であり、該減水剤(B)が、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体から選択される少なくとも1種を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用収縮低減剤に関する。詳細には、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与することができる水硬性材料用収縮低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない材料である。
【0003】
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、硬化物の内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2009年2月に改訂された、鉄筋コンクリート造に関する建築工事標準仕様書(JASS 5(日本建築学会))では、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみが800×10−6以下に規制されている。
【0005】
最近、コンクリート硬化物の乾燥収縮を低減させる方法として、水硬性材料用収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、水硬性材料用収縮低減剤に関する建築学会基準も制定された。
【0006】
水硬性材料用収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
【0007】
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る水硬性材料用収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組み合わせが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
【0008】
さらに、これらの水硬性材料用収縮低減剤を使用したコンクリート硬化物では、耐凍結融解性が著しく低下する問題がある。このために、これらの水硬性材料用収縮低減剤を寒冷地で使用することが困難であり、これらの水硬性材料用収縮低減剤が市場へ普及することが大きく妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭56−51148号公報
【特許文献2】特公平1−53214号公報
【特許文献3】特公平1−53215号公報
【特許文献4】特開昭59−152253号公報
【特許文献5】特公平6−6500号公報
【特許文献6】特許第2825855号公報
【特許文献7】特開平9−301758号公報
【特許文献8】特開2002−68813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、結合材(X)と組み合わせた場合に、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を示し、優れた耐凍結融解性を示す、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントから選択される少なくとも1種の結合材(X)と組み合わせて用いる水硬性材料用収縮低減剤であって、
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)および減水剤(B)を含み、
該ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の分子量が4000〜10000であり、
該減水剤(B)が、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体から選択される少なくとも1種を含む。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)が上記結合材(X)に対して0.5〜12重量%の割合で含有される。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記減水剤(B)がリグニンスルホン酸塩を含み、該リグニンスルホン酸塩が上記結合材(X)に対して0.01〜0.25重量%の割合で含有される。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記減水剤(B)がポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を含み、該ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体が上記結合材(X)に対して0.01〜0.8重量%の割合で含有される。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)が一般式(1)で表わされる。
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは90〜225である。)
【0016】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基の90mol%以上がオキシエチレン基である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)がポリエチレングリコールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、結合材(X)と組み合わせた場合に、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を示し、優れた耐凍結融解性を示す、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪1.水硬性材料用収縮低減剤≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、結合材(X)と組み合わせて用いる水硬性材料用収縮低減剤であって、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)および減水剤(B)を含む。
【0020】
<1−1.ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)を含む。ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0021】
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)は、その分子量が、4000〜10000であり、好ましくは4500〜10000であり、より好ましくは4500〜8000であり、さらに好ましくは4500〜6000である。ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の分子量が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を結合材(X)と組み合わせた場合に、収縮低減機能および耐凍結融解性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0022】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の含有割合は、結合材(X)に対して、固形分換算で、好ましくは0.5〜12重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%であり、特に好ましくは1.5〜5重量%である。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を結合材(X)と組み合わせた場合に、収縮低減機能および耐凍結融解性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0023】
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)は、好ましくは、一般式(1)で表わされる。
RO−(AO)−H (1)
【0024】
一般式(1)において、Rは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、好ましくは、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。Rが水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基であることによって、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を結合材(X)と組み合わせた場合に、例えば、消泡剤(C)およびAE剤(D)を併用する際に、コンクリート中への連行空気の量および質の調整を容易に行うことが可能となり、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与することができる。
【0025】
一般式(1)において、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。具体的には、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。上記の範囲の炭素原子数を有するオキシアルキレン基を用いることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は水に良好に溶解し得る。AOは、1種類のみのオキシアルキレン基でも良いし、2種以上のオキシアルキレン基でも良い。2種以上のオキシアルキレン基の場合、(AO)はランダム配列でもブロック配列でもよい。
【0026】
一般式(1)において、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わす。一般式(1)において、nは90〜225であり、好ましくは100〜225であり、より好ましくは100〜180であり、さらに好ましくは100〜140である。nが90〜225であることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、結合材(X)と組み合わせた場合に、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0027】
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、ペンチルオキシポリエチレングリコール、ヘキシルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、オクチルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレン付加物;メトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ペンチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリブチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレンを必須とする2種以上のオキシアルキレン付加物などが挙げられる。これらの中でも、結合材(X)と組み合わせた場合に、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与でき、かつ、コストも抑えることができるという点から、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールのオキシエチレン付加物が好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基のうち、90mol%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、95mol%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、99mol%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基の90mol%以上がオキシエチレン基であれば、結合材(X)と組み合わせた場合に、優れた収縮低減機能および優れた耐凍結融解性を付与でき、さらに、強度低下を抑制することができる。
【0029】
<1−2.減水剤(B)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、減水剤(B)を含む。減水剤(B)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0030】
減水剤(B)は、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体から選択される少なくとも1種を含む。
【0031】
リグニンスルホン酸塩としては、任意の適切なリグニンスルホン酸塩を採用し得る。このようなリグニンスルホン酸塩としては、例えば、リグニンスルホン酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0032】
ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体としては、任意の適切なポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を採用し得る。このようなポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体としては、例えば、3−メチル3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩;(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩;などが挙げられる。
【0033】
減水剤(B)は、その他の任意の適切な減水剤を含有していても良い。このような減水剤としては、例えば、ポリオール誘導体、グルコン酸などのオキシカルボン酸およびその一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0034】
減水剤(B)がリグニンスルホン酸塩を含む場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の該リグニンスルホン酸塩の含有割合は、結合材(X)に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜0.25重量%であり、より好ましくは0.02〜0.25重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%であり、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のリグニンスルホン酸塩の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を結合材(X)と組み合わせた場合に、結合材(X)の分散性に影響を及ぼすことから、収縮低減機能および耐凍結融解性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0035】
減水剤(B)がポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を含む場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の該ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体の含有割合は、結合材(X)に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜0.8重量%であり、より好ましくは0.01〜0.75重量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量%であり、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体の含有割合が上記範囲を外れると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を結合材(X)と組み合わせた場合に、結合材(X)の分散性に影響を及ぼすことから、収縮低減機能および耐凍結融解性が十分に発揮されないおそれがあり、さらに、コンクリート硬化物の強度を低下させるおそれがある。
【0036】
<1−3.AE剤(C)および消泡剤(D)>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、好ましくは、さらにAE剤(Air Entraining剤)(C)および消泡剤(D)を含む。AE剤(C)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。消泡剤(D)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0037】
AE剤(C)としては、任意の適切なAE剤を採用し得る。AE剤(C)としては、例えば、樹脂石鹸、飽和または不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートなどが挙げられる。
【0038】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤にAE剤(C)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のAE剤(C)の含有割合は、結合材(X)に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001〜10重量%であり、より好ましくは0.00001〜5重量%である。AE剤(C)の含有割合を0.000001〜10重量%にすることにより、一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0039】
消泡剤(D)としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。消泡剤(D)としては、例えば、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤などが挙げられる。これらの中でも、オキシアルキレン系消泡剤が好ましい。
【0040】
鉱油系消泡剤としては、例えば、燈油、流動パラフィンなどが挙げられる。油脂系消泡剤としては、例えば、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。脂肪酸系消泡剤としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどが挙げられる。アルコール系消泡剤としては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などが挙げられる。アミド系消泡剤としては、例えば、アクリレートポリアミンなどが挙げられる。リン酸エステル系消泡剤としては、例えば、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどが挙げられる。金属石鹸系消泡剤としては、例えば、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどが挙げられる。シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などが挙げられる。
【0041】
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;などが挙げられる。
【0042】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に消泡剤(D)が含まれる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の消泡剤(D)の含有割合は、結合材(X)に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001〜10重量%であり、より好ましくは0.00001〜5重量%である。消泡剤(D)の含有割合を0.000001〜10重量%にすることにより、一層優れた耐凍結融解性を付与し得る。
【0043】
<1−4.その他の成分>
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分としては、例えば、水、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、pH調整剤、遅延剤、早強剤・促進剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0044】
しかしながら、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、結合材(X)と組み合わせた場合に、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化物のひび割れ発生を抑制し、優れた耐凍結融解性を付与できるという効果を発現できる。したがって、上記に挙げたようなその他の成分は、水を除いて、必要でなければ、特に用いなくても良い。
【0045】
≪2.水硬性材料用収縮低減剤の調製≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、任意の適切な方法で調製すれば良い。例えば、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)および減水剤(B)を必須に用い、これと、必要に応じて、AE剤(C)、消泡剤(D)、および任意の他の成分から選ばれる少なくとも1種を、任意の適切な方法で混合すれば良い。混合の順序は、任意の適切な順序を採用し得る。また、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)と減水剤(B)は、予め混合した後に結合材(X)に混合しても良いし、結合材(X)に各々別々に添加して混合しても良い。
【0046】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、結合材(X)と組み合わせた場合に、優れた収縮低減機能と優れた耐凍結融解性を併せ持つ。本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)を高濃度に含有し、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の経時安定性が優れており、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(重量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
【0047】
≪3.コンクリート組成物≫
コンクリート組成物は、本発明の水硬性材料用収縮低減剤と結合材(X)を含む。
【0048】
結合材(X)は、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントから選択される少なくとも1種である。
【0049】
コンクリート組成物とは、最終的に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の各構成成分と結合材(X)を含む組成物となっていれば、その調製過程は問わない。すなわち、コンクリート組成物を構成する各構成成分(本発明の水硬性材料用収縮低減剤の各構成成分、結合材(X)、および、必要に応じてその他の成分)から選ばれる一部を予め混合した後に残りを混合して調製しても良いし、コンクリート組成物を構成する各構成成分の全部を一括で混合しても良い。
【0050】
コンクリート組成物は、好ましくは、骨材および水を含む。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。なお、細骨材および水を含み、粗骨材を含まないコンクリート組成物を、モルタルと称することがある。
【0051】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0052】
粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。
【0053】
水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0054】
コンクリート組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤、粉体が挙げられる。粉体としては、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。
【0055】
コンクリート組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0056】
コンクリート組成物は、そのままコンクリート(フレッシュコンクリート)として用い得る。
【0057】
コンクリート組成物における、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、結合材(X)に対し、固形分換算で、0.5〜10.0重量%とすることが好ましい。また、コンクリート組成物中の結合材(X)の容量が14容量%を超える場合は、結合材(X)に対し、固形分換算で、好ましくは0.5〜10.0重量%であり、より好ましくは0.5〜6.0重量%である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0059】
≪GPC分子量測定条件≫
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
【0060】
≪コンクリート物性の評価≫
〔コンクリートに添加する各成分の固形分測定〕
コンクリート物性の評価に使用した水硬性材料用収縮低減剤に用いる各成分の固形分を以下の方法で測定した。
1.アルミ皿を精秤した。
2.精秤したアルミ皿に固形分を測定する成分をのせ、精秤した。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に、2.で精秤した成分をアルミ皿ごと1時間入れた。
4.1時間後、アルミ皿および固形分を測定する成分を乾燥機から取り出し、デシケーター内で15分間放冷した。
5.15分後、デシケーターから取り出したアルミ皿および固形分を測定する成分(乾燥後)を精秤した。
6.上記で測定した重量を用いて、以下の式により、固形分を算出した。
固形分(%)={[(上記5の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]/[(上記2の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]}×100
【0061】
〔フレッシュコンクリートの評価〕
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプフロー、スランプ値、空気量を以下の方法により測定した。
スランプフロー:JIS A 1150−2001
スランプ値:JIS A 1101−1998
空気量:JIS A 1128−1998
【0062】
〔乾燥収縮低減性の評価〕
乾燥収縮低減性評価用のコンクリート供試体(10×10×40cm)の作成を、JIS A 1129に従って実施した。
型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたコンクリートを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。
JIS A 1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。この際、長さ変化比は、下記式で示されるように、基準コンクリート(収縮低減剤を使用しないコンクリート)の収縮量に対する、実施例または比較例の収縮低減剤を用いたコンクリートの収縮量の比を表し、値が小さいほど収縮を低減することができることを示す。
長さ変化比
={(実施例または比較例の収縮低減剤を用いたコンクリートの収縮量)/(基準コンクリートの収縮量)}×100
【0063】
〔コンクリート圧縮強度の評価〕
得られたフレッシュコンクリートを圧縮強度評価用の供試体型枠(直径10cm、高さ20cm)に入れ、密閉して20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、20℃の静水中で28日間水中養生を行った。水中養生後、供試体を取り出し、供試体の上下両端面を研磨した後、圧縮強度の測定をJIS A 1108に準拠して実施した。
【0064】
〔製造例1〕:PEG4500の製造
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、分子量400のポリエチレングリコール(PEG400)100gおよび水酸化ナトリウム0.015gを仕込んだ。次いで、反応系を150℃まで昇温させた後、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド100gを添加し、中間体(1)として分子量800のポリエチレングリコール(PEG800)得た。
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、中間体(1)150gおよび水酸化ナトリウム0.012gを仕込んだ。次いで、反応系を150℃まで加温した。次に、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド700gを添加し、分子量4500のポリエチレングリコール(PEG4500)を得た。
【0065】
〔製造例2〕:共重合体(1)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を14.66重量部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体(IPN50)を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液2.39重量部を添加し、アクリル酸3.15重量部およびイオン交換水0.79重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.13重量部、L−アスコルビン酸0.06重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が37700の共重合体(1)の水溶液を得た。
【0066】
〔製造例3〕:共重合体(2)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を42.43重量部、IPN50を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液4.12重量部を添加し、アクリル酸3.11重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.90重量部およびイオン交換水2.26重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.33重量部、L−アスコルビン酸0.11重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が31900の共重合体(2)の水溶液を得た。
【0067】
〔製造例4〕:減水剤2の製造
製造例2で得られた共重合体(1)および製造例3で得られた共重合体(2)を、重量比で、共重合体(1)/共重合体(2)=30/70の割合で混合し、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体に相当する減水剤2の水溶液を得た。
【0068】
〔製造例5〕:共重合体(3)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水200.2gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)225.2g、メタクリル酸44.8g、水450gおよび連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸2.2gを混合したモノマー水溶液を4時間、並びに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液60gを5時間かけて反応容器に滴下し、5.2%過硫酸アンモニウム水溶液滴下終了後、さらに1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して重量平均分子量22600の共重合体(3)の水溶液を得た。
【0069】
〔製造例6〕:共重合体(4)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水200.2gを仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25)239.9g、メタクリル酸20.1g、水450gおよび連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸2.2gを混合したモノマー水溶液を4時間、並びに5.2%過硫酸アンモニウム水溶液60gを5時間かけて反応容器に滴下し、5.2%過硫酸アンモニウム水溶液滴下終了後、さらに1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して重量平均分子量35600の共重合体(4)の水溶液を得た。
【0070】
〔製造例7〕:減水剤3の製造
製造例5で得られた共重合体(3)および製造例6で得られた共重合体(4)を、重量比で、共重合体(3)/共重合体(4)=30/70の割合で混合し、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体に相当する減水剤3の水溶液を得た。
【0071】
〔実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5で用いる各種成分≫
実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5で用いるポリオキシアルキレングリコール化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を表1に示す。
【0072】
【表1】

ここで、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の中で、PEG200は分子量200のポリエチレングリコール(第一工業製薬社製)、PEG600は分子量600のポリエチレングリコール(第一工業製薬社製)、PEG1000は分子量1000のポリエチレングリコール(第一工業製薬社製)、PEG2000は分子量2000のポリエチレングリコール(第一工業製薬社製)、PEG6000は分子量6000のポリエチレングリコール(第一工業製薬社)、PEG10000は分子量10000のポリエチレングリコール(第一工業製薬社)である。また、減水剤(B)中で、減水剤1はリグニンスルホン酸系AE減水剤(BASFポゾリス社製、商品名「ポゾリスNo.70」)である。さらに、AE剤(C)はアルキルエーテル陰イオン系AE剤(ADEKA社製、商品名「アデカホープYES−25」)であり、消泡剤(D)はオキシアルキレン系消泡剤(ADEKA社製、商品名「アデカノールLG299」)である。
【0073】
〔実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例2〕
(配合)
下記に示すコンクリート配合1で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、強制2軸練りミキサーを使用して材料の混錬を実施した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0074】
コンクリート配合1
単位セメント量: 320kg/m
単位水量 : 170kg/m
単位細骨材量 : 837kg/m
単位粗骨材量 : 942kg/m
水セメント比(W/C):53%
細骨材率(s/a):48.0%
【0075】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。
なお、材料の練り混ぜの際には、また、空気量調整剤(AE剤および消泡剤:表1参照)によって、コンクリートの空気量が5±1%となるように調整した。
配合比を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
(評価)
得られた水硬性材料用収縮低減剤を用いたフレッシュコンクリートについて、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
表3より、実施例1〜実施例3では、比較例1〜比較例2に比べて、長さ変化比が小さく、圧縮強度が大きいことが分かる。
【0080】
〔実施例4〜実施例9、比較例3〜比較例5〕
(配合)
下記に示すコンクリート配合2で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、強制2軸練りミキサーを使用して材料の混錬を実施した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0081】
コンクリート配合2
単位セメント量: 356kg/m
単位水量 : 178kg/m
単位細骨材量 : 786kg/m
単位粗骨材量 : 945kg/m
水セメント比(W/C):50%
細骨材率(s/a):46.3%
【0082】
(材料の練り混ぜ)
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)、減水剤(B)、AE剤(C)、消泡剤(D)を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。
なお、材料の練り混ぜの際には、また、空気量調整剤(AE剤および消泡剤:表1参照)によって、コンクリートの空気量が5±1%となるように調整した。また、減水剤2および減水剤3を適宜添加することにより、スランプが18±2cmとなるように調整した。
配合比を表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
(評価)
得られた水硬性材料用収縮低減剤を用いたフレッシュコンクリートについて、評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表5より、実施例4〜実施例9では、比較例3〜比較例5に比べて、長さ変化比が小さく、圧縮強度が大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価であり、また、結合材(X)と組み合わせた場合に、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を示し、優れた耐凍結融解性を示す、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができるので、これらはコンクリート用の収縮低減剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントから選択される少なくとも1種の結合材(X)と組み合わせて用いる水硬性材料用収縮低減剤であって、
ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)および減水剤(B)を含み、
該ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)の分子量が4000〜10000であり、
該減水剤(B)が、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体から選択される少なくとも1種を含む、
水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)が前記結合材(X)に対して0.5〜12重量%の割合で含有される、請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項3】
前記減水剤(B)がリグニンスルホン酸塩を含み、該リグニンスルホン酸塩が前記結合材(X)に対して0.01〜0.25重量%の割合で含有される、請求項1または2に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項4】
前記減水剤(B)がポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体を含み、該ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体が前記結合材(X)に対して0.01〜0.8重量%の割合で含有される、請求項1または2に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)が一般式(1)で表わされる、請求項1から4までのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは90〜225である。)
【請求項6】
前記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)に含まれるオキシアルキレン基の90mol%以上がオキシエチレン基である、請求項1から5までのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレングリコール化合物(A)がポリエチレングリコールである、請求項1から6までのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤。


【公開番号】特開2012−162434(P2012−162434A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25971(P2011−25971)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】