説明

水系における次亜臭素酸の生成方法

【課題】特に高価な設備等を必要とせず、予め混合しておくなどといった手間や使用直前に製造するといった制約もなく簡便で、なお且つ、特に危険な試薬を用いることもなく安全に次亜臭素酸およびその水溶性塩を製造することができる方法であって、またさらに、有害な臭素酸の発生もなく安定で、高い殺菌・殺微生物効果を有する次亜臭素酸およびその水溶性塩を、効率良く迅速に生成することができるようにする。
【解決手段】次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方と臭化物とを被処理液中で反応させて、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法であって、前記被処理液にさらに変性亜塩素酸塩を添加することにより、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方と臭化物とを被処理液中で反応させて、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜臭素酸及びその水性塩は、高いpH値を有する被処理液(例えば、温泉水の高アルカリ泉、パルプ製紙工場の抄紙機における白水、開放式循環冷却水などが挙げられる)において、高い殺菌効果や殺微生物効果を発揮し得るので、そのような被処理液の消毒用あるいはスライムコントロール剤等として使用されている。
【0003】
次亜臭素酸及びその水溶性塩の従来の製造方法としては、臭素イオンを含む溶液にオゾンを吹き込み、臭素イオンを次亜臭素酸に変換して製造する方法(特許文献1参照)、次亜塩素酸塩類と臭化物とを被処理液に添加して反応させ次亜臭素酸塩類を生成する方法(特許文献2参照)、被処理液に臭化物を存在させて、過酢酸水溶液または過酸化水素水溶液を添加して次亜臭素酸塩を生成する方法(特許文献3参照)、並びに、スルファミン酸塩化合物を安定化剤として、事前に次亜塩素酸塩と臭化物とを混合し、安定な次亜臭素酸塩を製造しておく方法(特許文献4及び5参照)等が報告されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−213706公報
【特許文献2】特開昭60−129182号公報
【特許文献3】特公表2002−86155公報
【特許文献4】特公表平11−506139公報
【特許文献5】特公表2001−501869公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、臭素イオンを含む溶液にオゾンを吹き込み、臭素イオンを次亜臭素酸に変換して製造する方法(特許文献1参照)の場合、大がかりで高価なオゾン発生装置を準備しなくてはならないので、設置の際の手間や生産コストがかかるという問題があった。
【0006】
また、次亜塩素酸塩類と臭化物とを被処理液に添加して反応させ次亜臭素酸塩類を生成する方法(特許文献2参照)の場合、被処理液中に存在する臭化物に、次亜塩素酸塩類を添加して次亜臭素酸塩を生成させようとしても、反応速度が遅く最大次亜臭素酸塩濃度を得るのに20分〜30分を要し、その間に投入した次亜塩素酸塩は揮発等で消失するということになり、必要量以上の次亜塩素酸塩を添加しなければならなくなってしまうので、次亜塩素酸塩類と臭化物とを予め混合してから被処理液に添加しなくてはならないという調製の際の手間が生じていた。
【0007】
さらに、上述したこれら2つの方法では、生成した次亜臭素酸塩の水溶液を長期保存すると、次亜臭素酸で安定せずに毒性の高い臭素酸(HBrO3)まで生成してしまうという問題があるので(ちなみに我が国の飲料水の臭素酸の規制は0.01mg/L以下である)、被処理液に使用する直前に製造あるいは混合しなければならないという制約があった。
【0008】
そこで、上述した手間やコストそして制約の問題を解決すべく、被処理液に臭化物を存在させて、過酢酸水溶液または過酸化水素水溶液を添加して次亜臭素酸塩を生成する方法(特許文献3参照)があるが、添加する過酢酸水溶液または過酸化水素水溶液は次亜塩素酸塩に比べて酸化力が強く、消防法に規定された危険物であり取り扱いに相当な注意を要するものであり、あまり用途的に推奨出来得る薬品でないという問題を持っている。
【0009】
また、臭素酸生成の問題を解決すべく、スルファミン酸塩化合物を安定化剤として、事前に次亜塩素酸塩と臭化物とを混合し、安定な次亜臭素酸塩を製造しておく方法(特許文献4及び5参照)があるが、この方法では臭素酸の生成も少なくはなるが、被処理水に残存したスルファミン酸塩の濃度が25mg/L程度を越えてくると添加されてくる次亜臭素酸塩までも安定化させてしまい、次亜臭素酸塩の殺菌・殺微生物効果を封じ込めてしまうという問題が発生している。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、特に高価な設備等を必要とせず、予め混合しておくなどといった手間や使用直前に製造するといった制約もなく簡便で、なお且つ、特に危険な試薬を用いることもなく安全に次亜臭素酸およびその水溶性塩を製造することができる方法であって、またさらに、有害な臭素酸の発生もなく安定で、高い殺菌・殺微生物効果を有する次亜臭素酸およびその水溶性塩を、効率良く迅速に生成することができる生成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方と臭化物とを被処理液中で反応させて、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法であって、前記被処理液にさらに変性亜塩素酸塩を添加することにより、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
被処理液中に臭化物と、次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方(以下「次亜塩素酸類」と記す)を添加すると、臭化物は被処理液中で臭素イオンを放出し、次亜塩素酸類と反応して次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方(以下「次亜臭素酸類」と記す)を生成する。
高いpH値を有する被処理液に塩素系殺菌剤を使用すると、その殺菌・殺微生物効果は次亜塩素酸の解離により低減されてしまうが、次亜臭素酸の場合、その解離は、次亜塩素酸よりも高いpH域で生じることから、そのような高いpH値を有する被処理液においても高い殺菌・殺微生物効果を有する。
また、次亜臭素酸類の生成速度は、放出された臭素イオンと、次亜塩素酸類の濃度が高いほど速く、濃度が薄いほど遅い。
通常、次亜臭素酸1mg/L濃度の薄い次亜臭素酸類を直接水系で生成させるには20〜30分を要するが、処理液中に変性亜塩素酸塩を添加しておくと、次亜塩素酸類との反応[化1]によって生じる活性酸素の作用によって、幅広いpH値範囲で強い殺菌力(塩素の殺菌効果の約2.6倍)と酸化力(塩素の酸化力の約10倍)とを有する二酸化塩素が被処理液中に生成され、この二酸化塩素の酸化力が[化2]に示す反応にて触媒として機能し、その結果2〜10分以内に次亜臭素酸類を生成することが可能となる。
〔化1〕
Cl2 + Cl4102- → 4ClO2 + 2Cl- + O2
〔化2〕
Cl2 + 2Br- → Br2 + 2Cl-
従って、従来と比べて2〜15倍の速さで反応が進むので、反応速度を上げるために予め次亜塩素酸類と臭化物とを混合してから被処理液に添加するといった手間をかける必要もなく、また添加した次亜塩素酸類の時間経過に伴う揮発によるロスも少なくてすみ、効率良く迅速に次亜臭素酸類が生成され得る。
さらに、本発明においては、被処理液中に臭化物、次亜塩素酸類及び変性亜塩素酸塩を添加すればよいので、大掛かりで高価な設備や、取扱いに注意を要する危険な試薬を用いることもなく簡便且つ安全に次亜臭素酸類を製造することができる。
また、生成した次亜臭素酸類は、被処理液中の菌又は微生物に作用して一旦は消費されるが、[化3]に示すように、被処理液中の水酸化物イオンによって再び臭素イオンに変換されて、[化2]に示すように次亜臭素酸類の生成に再利用され得る。
〔化3〕
2Br2 + 4OH- → O2 + 4Br- + 2H2
従って、臭化物のリサイクル利用が可能となるので、結果として被処理液に使用される臭化物の量を節約することができ、コストの削減につながる。
なお、本発明によって生成された次亜臭素酸類は、有害な臭素酸の生成もなく安定で、殺菌・殺微生物効果も大きく、スライム中への浸透性も優れ、かつ総残留ハロゲン濃度の高い持続性を有して効率よくスライム抑制ならびにスライム除去することができるということが、後述する実施例に示されるように本発明者らによって初めて見い出されたものである。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記変性亜塩素酸塩をpH値が3以下である硫酸イオン含有水溶液中にペルオキシ化合物を0.001mol/L〜0.01mol/Lとなるように混合した後、pH値が7以上となるようにさらに亜塩素酸塩水溶液を混合して製造するという点にある。
〔作用及び効果〕
上述の製造方法により、安定な変性亜塩素酸塩を簡便に製造することが可能となる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記変性亜塩素酸塩が、テトラクロロデカオキサイドである点にある。
〔作用及び効果〕
テトラクロロデカオキサイド(以下「TCDO」と記す)は、市販されており、危険物取扱い上の法規等の規制を受けることもなく、誰でも容易に入手可能である。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記臭化物と前記変性亜塩素酸塩のモル比が、1:0.002〜0.3である点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
臭化物と変性亜塩素酸塩とのモル比を1:0.002〜0.3とすることにより、反応速度も大きくなり、添加した次亜塩素酸類のロスも少なくてすむので、より効率的に次亜臭素酸類を生成することが可能となる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記臭化物と前記変性亜塩素酸塩とを予め水中にて混合した混合溶液と、次亜塩素酸又はその水性塩の少なくともいずれか一方とを前記被処理液に別個に添加する点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
臭化物と変性亜塩素酸塩は、後述する実施例に示すように、水中で相互に反応しないので、その混合溶液は安定で長期間保存することができ、その結果、薬液管理の簡略化が図れる。さらに注入操作も簡略化されて注入装置の数を少なくできるので設備面のコストダウンが可能となる。そしてなおかつ被処理液へ注入する際の混合比が一定に保たれるので処理結果の再現性を確保することも可能となる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記被処理液が、パルプ製紙工場の工程水、工業用循環冷却水及び温泉水からなる群より選択されるものであるという点にある。
【0020】
〔作用及び効果〕
パルプ工場、製紙工場においては、その工程において使用される用水中に微生物が繁殖すると種々の障害の原因となることはよく知られており、例えば、製紙工場の抄紙機における白水中には、栄養源となるパルプを多量に含み、かつ適度な温度条件にあることから、微生物の増殖にとって極めて都合の良い環境にある。白水中に微生物が繁殖すると、微生物やその代謝物が凝集して粘着性物質、所謂スライムを形成し、これが工程内の水の流れにより剥離して紙料中に混入するなど紙に汚点、斑点、目玉等製品の品質を揖なう原因となり、更に、紙切れ、ワイヤーや毛布の目詰まり、腐食、悪臭等の工程上の障害を引き起こし操業上にも重大な影響を及ぼすこととなる。
【0021】
紙の抄紙方法にはpHが4〜6の条件で抄紙する酸性抄紙法と、pHが6〜8の条件で抄紙する中性ないしアルカリ抄紙法があるが、最近では機器に対する腐食性が小さいことや紙質が優れている等の理由から中性ないしアルカリ抄紙法が主流になりつつある。中性ないしアルカリ抄紙法では、従来の酸性抄紙法に較べて白水のpHが微生物類の増殖・生育に適しており、加えて最近では白水の循環再利用化が進んで、水中の栄養分が濃縮され、かつ水温が高くなってきていることもあって微生物の棲息にとって好都合となっている。
【0022】
しかしながら、従来から用いられてきたスライムコントロール剤は、pHが4〜6の酸性抄紙条件では有効であってもpHが6〜8の中性ないしアルカリ抄紙条件では十分なスライム抑制効果を示さず使用量を多くしなければならない。
【0023】
また、開放式循環冷却水においては、水の使用量と排水量を削減するため水を循環再使用する高濃縮度運転が進められており、高濃縮度運転では水中の溶解物が濃縮され、pHが上昇するなど水質は悪化する傾向にあり、レジオネラ菌による病原菌の拡散や、スライムによる障害は増える方向にある。
【0024】
水系における微生物は水に浮遊しているよりも機器表面に付着する場合が多く、この付着微生物の多くは多糖類から成る細胞外ポリマーに包まれたミクロコロニーを形成し、水中の爽雑物が複雑に相互作用し合いスライムを形成する。開放式循環冷却水系等におけるスライムは、水路の閉塞や熱交換器における伝熱障害を引き起こすだけでなく微生物が腐食の原因となることもありその対策が強く望まれている。
【0025】
循環水系におけるスライムコントロールでは、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌル酸等の塩素系殺微生物剤が広く使用されてきたが、これら塩素系スライムコントロール剤は水に溶解すると次亜塩素酸を生成して殺菌・殺微生物に効果を示すと考えられている。しかし、pHが高くなると次亜塩素酸イオンに解離して殺微生物効果が低下するという欠点を有している。最近では循環冷却水系は高濃縮度運転化によりpHが9前後にまで高くなっている場合が多く、このような高pHにある水系では塩素系スライムコントロール剤は十分な効果を示さず、スライム障害を充分に抑制できない。
【0026】
またさらに、温泉水の高アルカリ泉ではpHが8.5以上もしくは9以上を越えるものがあり、このような水系での塩素系殺菌剤よる殺菌消毒効果はあまり期待できるものではない。
【0027】
しかしながら、本発明によれば、次亜臭素酸の解離は次亜塩素酸より高いpHで起きることから、高pHにおいても殺菌効果や殺微生物効果あるいは生育阻害効果が低下し難いという長所をもっているので、パルプ製紙工場の工程水(白水)、工業用循環冷却水及び温泉水といった高いpH値を有する被処理液における上述のスライム障害や殺菌消毒の問題を未然に防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次亜塩素酸類は、水に溶解して次亜塩素酸ないし次亜塩素酸イオンを生成するものであり、具体的には、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌル酸、塩素が挙げられ、また塩素イオンを含む水を電気分解して生成した次亜塩素酸塩であってもよい。
【0029】
水中で臭素イオンを放出する臭化物(以下、「臭化物」と記す)は、具体的には臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化亜鉛などがあり、好ましくは臭化ナトリウムである。
【0030】
変性亜塩素酸塩は、具体的には特公平6−102522号公報に記載されているものを使用することが出来、本実施形態では、テトラクロロデカオキサイド(以下、「TCDO」と記す)を使用した。
【0031】
生成の態様は、1.対象とする水系に臭化物とTCDOを別々に加え、これに次亜塩素酸類を加えて生成させる方式、2.あらかじめ臭化物とTCDOを一液に混合した製剤としておいて、これを水系に添加した後に次亜塩素酸類を加えて生成させる方式、3.スケール防止などに使用される分散剤、鉄、銅配管の腐食防止に使用される防錆剤等の殺菌・殺微生物用途以外の薬品と臭化物とTCDOとをあらかじめ一液に混合した製剤としておいて、これを水系に添加した後に次亜塩素酸類を加えて生成させる方式がある。
【0032】
このうち最も好ましい実施形態は、2又は3のあらかじめ臭化物とTCDOを一液に混合した製剤としておくことであり、これを水系に添加した後に次亜塩素酸類を加えて生成させる方式である。臭化物とTCDO等は水中で相互に反応しないので長期間安定に保存でき、かつ水系へ注入する際の混合比を一定にでき、さらに注入装置の数を少なくできるなど、注入管理が簡略化できる利点がある。3のスケール防止などに使用される分散剤、鉄、銅配管の腐食防止に使用される防錆剤等の殺菌・殺微生物用途以外の薬品と臭化物とTCDOが安定である組み合わせの場合にはさらに注入装置の数を少なくできる利点は大きい。
【0033】
次亜塩素酸類とTCDOとの反応は、次亜塩素酸類と臭化物との反応より速く進行するので、次亜塩素酸類はTCDOと優先的に反応し、残った次亜塩素酸類が臭化物と反応することになる。
【0034】
【表1】

【0035】
また、生成した二酸化塩素は[表1]の如く揮発性が高く、二酸化塩素が次亜臭素酸類の生成に関与することもなく揮発することも考えられ、二酸化塩素は触媒的要素で十分であり、この場合の臭化物とTCDOのモル比は、好ましくは1:(0.002〜0.3)、より好ましくは1:(0.01〜0.1)とする。TCDOが0.002倍(モル比)より少ないと次亜臭素酸類の生成速度が遅くなり、0.3倍(モル比)より大きいと、次亜臭素酸類の生成は充分満たされるが、過剰生成した二酸化塩素が揮発して添加した次亜塩素酸類のロスが多くなり経済的には不利となる。
【0036】
水系での臭化物と添加する次亜塩素酸類のモル比は、次亜塩素酸類を臭化物に対して0.4〜0.8倍加えるのが良く、好ましくは0.5〜0.7倍である。臭化物に対し次亜塩素酸類を0.4倍(モル比)より小さいと添加した臭化物が無駄となり、また0.8倍(モル比)より大きいと、揮発する次亜臭素酸類で減少する臭素イオンの補填確保が出来ずに臭化物不足が生じてくることになり好ましくない。
【0037】
いずれの場合においても、臭化物とTCDOの合計モル数が次亜塩素酸類のモル数より小さいと、次亜塩素酸類が残ることになるが、次亜塩素酸類はそのもの自身スライムコントロール機能があり、本発明の効果発現にとって何ら障害になるものではない。
【0038】
次亜塩素酸類、臭化物、TCDOはいずれも水溶性であるので、それぞれの成分を固形物のまま対象とする水系へ加えることもでき、あるいはそれぞれ水溶液を作り、これを対象とする水系に添加してもよい。しかし固形物の状態で水系に加えた場合には溶解に要する時間が異なり、また水溶液にして水系に加えた場合でも水中への拡散状態にも依るので、次亜塩素酸類、臭化物及びTCDOの各成分を同時、あるいは同時に近い状況で加えたときの反応の進行は、溶解速度、拡散状況によって変わるのはいうまでもない。
【0039】
TCDOと臭化物を予め水中で混合しておく場合においては、これらが混合される水のpHは9〜12、好ましくは10〜11である。pHが9未満ではTCDOが分解し、塩素ガスや臭素ガスとなって揮発し易く、またpHが12を超えると被処理水のpHを9以上に押し上げることもあり、その場合には被処理液中での次亜臭素酸類への転化率が低下することもあるので好ましくない。
【0040】
本発明の方法が適用される被処理液のpHは、好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜9.5である。被処理液のpHが9.5を超えるとTCDOを添加したと言えども次亜塩素酸塩と臭化物の反応において効率良く次亜臭素酸類を生成することができず、スライムコントロール効果が悪くなり、またpHが5以下では、酸化剤による腐食原因の助長が懸念され好ましくない。
【0041】
本発明の好ましい実施態様における次亜塩素酸類、臭化物及びTCDOの被処理水系への添加量は、これらスライムコントロール剤組成物の構成比、対象とする水系の水質、スライム発生の程度、添加頻度等によって異なり一律に決められるものではないが、通常は該水系の水に対して次亜臭素酸(次亜臭素酸塩は次亜臭素酸に換算して)として0.1〜50ppm、好ましくは0.2〜20ppm、さらに好ましくは0.5〜10ppmが生成するのが望ましい。
【0042】
生成量が0.1ppmより低いと実質的に次亜臭素酸の効果発現が期待できず、また50ppmより多いと効果は充分あるが、それ以上の効果の向上がみられず経済的に不利であり、さらに環境汚染の面からも好ましくない。
【0043】
次亜塩素酸類、臭化物及びTCDOの対象水系への添加方法は特に限定されるものではないが、通常定量ポンプを使用して行う。
【0044】
次亜臭素酸の残留濃度は、ジエチルーp−フェニレンジアンモニウム(DPD)比色法、DPD−硫酸アンモニウム鉄(II)滴定法〔JIS K 0101〕、SBT試験法(株式会社同仁化学研究所)等の公知の方法により測定できる。
【0045】
これらの試験法では、水中の遊離残留ハロゲン量、遊離残留臭素量と二酸化塩素量の合算量、総残留ハロゲン量が定量される。ここで遊離残留ハロゲン量は遊離残留塩素量と遊離残留臭素量と二酸化塩素量の和であり、総残留ハロゲン量は遊離残留ハロゲン量と結合残留ハロゲン量の和である。遊離残留臭素はここでは次亜臭素酸と次亜臭素酸イオンの合計である。
【0046】
DPD比色法、DPD−硫酸アンモニウム鉄(II)滴定法は、ハック(Hach)社、ラモットケミカルプロダクツ(LaMotte Chemical Products)社から簡易な分析キットが市販されており、SBT試験法は株式会社同仁化学研究所より残留塩素測定キット−SBT法が市販されている。本発明方法での残留濃度管理に使用できる。
【0047】
また、次亜臭素酸類の残留濃度が酸化還元電位に影響を及ぼすことを利用し、濃度と酸化還元電位の相関関係を別途求めておくことにより、酸化還元から次亜臭素酸の残留濃度を求めることができ実用上便利である。
【0048】
本発明で生成された次亜臭素酸類は、パルプ工場、製紙工場における工程水、開放式循環水系、温泉水その他各種水系の被処理液(例えば、各種産業の工程水、冷却水、洗浄水、排水などの工業用水系、貯水槽、水泳プール、温泉水、鑑賞用池等が挙げられる)に適用できる。
【0049】
パルプ工場、製紙工場工程水は、砕木工程、抄紙工程、スクリーン工程、漂白工程等の所謂白水と総称される工程水、その他パルプ工場、製紙工場の工程で扱う全ての水が含まれ、本発明生成の次亜臭素酸類を上述の濃度で添加しても工程上影響なく、また製品品質を損なうことがないことが確かめられた。
【0050】
また、開放式循環水系に適用した場合、スライム生成による熱交換器、配管などの閉塞、熱伝導の劣化が抑制される。本発明のスライムコントロール方法は、好気性バクテリアの一種である鉄バクテリアの殺微生物に有効であるばかりでなく、スライムヘの浸透性がよく、スライム除去効果にも優れていることから、スライム下部の瞭気性雰囲気下で発生し易い硫酸塩還元菌にも効果的に作用し、鉄バクテリアや硫酸塩還元菌等により誘発される腐食を防止することもできる。
【0051】
水系においては、スライムコントロールの他に、パルプ工場、製紙工場における工程水では、ピッチコントロール剤、消泡剤などが、開放式循環水系では亜鉛塩、重合リン酸塩、有機ホスホン酸、アゾール化合物、モリブデン酸塩などの腐食抑制剤、アクリル酸やマレイン酸などを含む重合体を用いるスケール抑制剤、各種界面活性剤を用いる分散剤などが同時に用いられることがあるが、本発明の効果が損なわれない範囲において本発明はこれら各種薬剤との混合や併用を妨げるものではない。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
[遊離残留塩素、遊離残留臭素と二酸化塩素、総残留ハロゲンの分析]
試験水中の遊離残留塩素、遊離残留臭素と二酸化塩素の合算量及び結合残留ハロゲンの濃度測定は以下の株式会社同仁化学研究所より市販されている「残留塩素測定キット−SBT法」に依った。
【0054】
(1)分析方法:
i.遊離残留ハロゲン量の測定
「残留塩素測定キット−SBT法」に規定されている如く、検水10mlに対して検水調整液0.2mlを添加し、次に色素液を0.1ml添加して得られる発色をキット付属の比色計を用いて塩素濃度[mgCl2/L]として計測した。
【0055】
ii.遊離残留臭素量と二酸化塩素量の合算量の測定
検水10mlに対して10%グリシン溶液0.5mlを加えて混合し、速やかに検水調整液0.2mlを添加し、次に色素液を0.1ml添加して得られる発色をキット付属の比色計を用いて塩素濃度[mgCl2/L]として計測した。
【0056】
iii.総残留ハロゲン量の測定
「残留塩素測定キット−SBT法」に規定されている如く、検水10mlに対して検水調整液0.2mlを添加し、次に色素液を0.1ml添加した後、5%ヨウ化カリウム溶液0.15ml加えて得られる発色をキット付属の比色計を用いて塩素濃度[mgCl2/L]として計測した。
【0057】
(2)ここでは、遊離残留塩素、遊離残留臭素と二酸化塩素の合算量、結合残留ハロゲンは全て塩素(Cl2)換算にて表わした。遊離残留ハロゲン量、総残留ハロゲン量は以下の[数1]に示す通りである。
【0058】
なお、本発明において使用される「残留塩素測定キット−SBT法」について、このキットによる測定方法は、塩素のみでなく、臭素についてもその直線性が保証されているが、その特異性が低いために、臭素のみを個別に測定することが困難であるので、便宜的に遊離残留臭素量と二酸化塩素量との合算量という考えを導入して、それらの濃度を塩素濃度「mgCl2/L」として一緒くたに測定することで間接的に臭素の生成・分解を評価している。
【0059】
〔数1〕
遊離残留ハロゲン量=(遊離残留塩素量)+(遊離残留臭素量)+(二酸化塩素量)
総残留ハロゲン量=(遊離残留ハロゲン量)+(結合残留ハロゲン量)
【0060】
[実施例1]
試験溶液として、燐酸一水素二ナトリウムNa2HPO4 1.8gを秤りとり純水約500mlに溶かし、燐酸二水素一ナトリウム二水塩NaH2PO4・2H2O 0.05gをまぜて溶解し全量を1Lとしたものを作製した。この溶液のpHは8.50であった。この溶液を100mlのビーカに採り0.04mmol/L(4.1mg/L)の臭化ナトリウムと、0.0000mmol/L〜0.0200mmol/Lの量のTCDO(東西化学産業株式会社製「ハイドロキサン」[20%のTCDO有効成分含有品])を変化させて添加し、最後に遊離残留塩素濃度[mgCl2/L]として2mgCl2/Lとなる量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加後の遊離残留ハロゲン量[mgCl2/L]と、遊離残留臭素量と二酸化塩素量の合算量[mgCl2/L]を添加後の時間経過とともに測定した。
【0061】
尚、添加した0.0026mmol/LのTCDOから得られる最大の二酸化塩素量は、塩素濃度[mgCl2/L]として0.38mgCl2/Lである。
【0062】
〔化4〕
Cl2 + Cl4102- → 4ClO2 + 2Cl-
分子量 71 302 142(Cl2として)
mg/L 0.19 0.8 0.38(Cl2として)
【0063】
添加した0.04mmol/Lの臭化ナトリウムから得られる最大の次亜臭素酸は、塩素濃度[mgCl2/L]として1.4mgCl2/Lである。
【0064】
〔化5〕
Cl2 + 2NaBr → Br2 + 2NaCl
分子量 71 206 71(Cl2として)
mg/L 4.1 1.4(Cl2として)
【0065】
添加量と計測結果を[表2][図1]および[図2]に示した。
【0066】
【表2】

【0067】
TCDOに次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した場合には、二酸化塩素が生成しては消滅していっている。確認できた二酸化塩素は0.05mgCl2/Lでしかなかった。臭化ナトリウムに次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した場合には30分後には最大ピークとなるが最大値が1.3mgCl2/Lであり、1.4mgCl2/Lには至らなかった。臭化物と次亜塩素酸の組み合わせにTCDOを添加していくと、TCDOの添加が多くなるごとに最大ピーク値は大きくなり、最大ピーク値に到達するまでの時間は早くなって迅速な次亜臭素酸が生成されていることが明らかである。臭化物とTCDOのモル比が1:0.5を越えると添加された次亜塩素酸は二酸化塩素生成に消費されて速いスピードで揮発する結果となった。
【0068】
[実施例2]
試験溶液として、pH7付近である製紙工場における中性抄紙工程白水を使用して、実施例1と同様な添加で、臭化物及び次亜塩素酸類を変えて試験した結果を[表3]に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
次亜塩素酸類は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシナヌル酸、等が使用でき、臭化物は、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化亜鉛などが使用できうることが明白である。
【0071】
[実施例3]
60m3/hrで循環している保有水量18m3の開放循環冷却水(pH8.6)にバルスターDT(東西化学産業株式会社製次亜塩素酸ナトリウム、有効塩素10%)、臭化ナトリウム、ハイドロキサン(東西化学産業株式会社製、TCDO20%含有)を組み合わせて添加し本発明の効果を比較した。(試験期間中、ブローは停止された)
【0072】
また、以下の各濃度計測結果に示されるように、遊離残留ハロゲン量、総残留ハロゲン量及び遊離残留臭素量と二酸化塩素量の合算量の各測定結果と共に、試験開始前(各添加物の投入前)と試験終了時の2時点における、被処理液(開放循環冷却水)のpH値と、イオンクロマトグラフ法によるBrO3-及びBr-の各イオン濃度の測定結果も合せて記載している。なお、表中のハイフン(−)は不実施であることを意味する。
【0073】
比較例1 : バルスターDTのみを添加した結果は以下の如くであった。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
pHが高く、遊離残留ハロゲン量が総残留ハロゲン量(=総塩素量)の16%程度しか検出されず、酸化能力が乏しいことが解る。
【0077】
比較例2:バルスターDTとハイドロキサンとを組合せた結果は以下の如くであった。
【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
冷却塔ピットに遊離残留ハロゲンが認められなく、採水5分後のビーカに保管した検水の二酸化塩素を測定すると濃度計測結果の採水5分後の遊離残留臭素と二酸化塩素の合算量の結果となった。これは、変性亜塩素酸と次亜塩素により二酸化塩素は生成しているが、冷却塔の散水板を落下してくるときに既に気化分解しているものと考えることが出来る。それが所以に、採水静置した5分後の二酸化塩素を見るとしっかりと二酸化塩素が生成している。つまり、次亜塩素はpHが8.5であることにより結合塩素となっているが、変性亜塩素酸の添加により二酸化塩素を徐々に生成している。しかし生成した二酸化塩素は冷却塔の散水攪拌により即時に気化していることとなる。二酸化塩素単独では冷却塔に使用できない結果である。
【0081】
比較例3 : バルスターDTと臭化ナトリウムとを組合せた結果は以下の如くであった。
【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
次亜臭素酸が生成して、殺菌酸化反応を起こすことは確認できたが、次亜臭素酸が最大ピークに達するのに20分を要した。反応速度が遅いという結果である。
【0085】
塩素の分解は、比較例1の次亜塩素酸のみを添加した場合と比べても遅く、総残留ハロゲン量が20分ほど長く維持できており、また例えば、総残留ハロゲン量が0.42mgCl2/Lに下がるまでの投入後の時間(分)を比較すると、上述の比較例1においてはおよそ30分であるのに対して、本比較例においてはおよそ60分であることから、次亜塩素酸に比べて次亜臭素酸はおよそ2倍気化が遅いことは明白である。
【0086】
実施例1 : バルスターDTと臭化ナトリウムとハイドロキサンを組合せた結果は以下の如くであった。
【0087】
【表10】

【0088】
【表11】

【0089】
急激な反応によって次亜臭素酸が生成して、殺菌酸化反応を起こした。次亜臭素酸が最大ピークに達するのに5分とかかっておりません。冷却塔での攪拌効果が生成速度をさらに速める結果であった。
【0090】
塩素の分解は、次亜臭素酸のみほど遅くはなかったが、二酸化塩素程早くなく、丁度次亜塩素酸と同等に近い結果となった。
【0091】
実施例2 : 実施例1で残留した臭化ナトリウムへ、ハイドロキサンとバルスターDTを追加した場合の結果は以下の如くであった。
【0092】
【表12】

【0093】
【表13】

【0094】
残存臭素イオンででも、急激に次亜臭素酸が生成し、殺菌酸化反応が起こることに変わりはなかった。
【0095】
比較例3と、実施例1及び実施例2の臭素イオンの変化を比較すると、比較例3では0.6ppm(Cl2として)の次亜臭素酸が検出される状況では1.65ppm(Br−として)程度の臭素イオンが消失したが、TCDOが添加されていると0.467ppm(Br−として)の臭素イオンしか消失しなかった(実施例1及び実施例2ともに同じ結果)。つまり、次亜臭素酸になった臭化物は、酸化使用されると臭素イオンに戻ることが確認された。
【0096】
つまり、変性亜塩素酸液を添加することにより臭素イオンを再使用出来得ることとなり再使用できうることが証明された。
【0097】
また、変性亜塩素酸液を加えても臭素酸の生成はなく、臭素酸の生成の心配は全く必要無い結果であった。
【0098】
[実施例4]
pH9.2の温泉水を使用している浴槽水に対して遊離残留塩素濃度として0.5mg/L検出されるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、浴槽水中のレジオネラ属菌を検査したところ1,000cfu/100ml検出された。アルカリ性域では遊離残留塩素の中でも殺菌力の弱い次亜塩素酸イオンが主となり、殺菌効果が減衰していることを示している。
【0099】
そこで、遊離残留塩素として0.5mgCl2/L検出されるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加しながら、臭化ナトリウムを1mg/Lとなるように添加したところ、浴槽水中の遊離残留臭素濃度が0.25mgCl2/L検出された。この浴槽水中のレジオネラ属菌を検査したところ100cfu/100ml検出された。このことは、アルカリ性域で殺菌効果のある次亜臭素酸が生成されたことで浴槽水中のレジオネラ属菌に対する殺菌効果が強化されたことを意味している。さらに、遊離残留塩素として0.5mgCl2/L検出されるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加しながら、臭化ナトリウムを1mg/Lとなるように添加し、ハイドロキサン(東西化学産業株式会社製、TCDO:20%含有品)を0.7mg/Lとなるように添加したところ、浴槽水中のレジオネラ属菌数は検出限界以下である10cfu/100mL以下となり、浴槽水中の遊離残留臭素濃度は0.4mgCl2/L検出された。このことは、浴槽水中にTCDOを添加したことでTCDOが遊離残留塩素と反応し二酸化塩素を生成し、さらに浴槽水中の臭化物イオンと反応することで次亜臭素酸の生成を促進した結果と考えられる。
【0100】
TCDOと臭化物イオンを次亜塩素酸ナトリウム溶液と併用することで、従来次亜塩素酸等では殺菌が困難であると言われているアルカリ域の温泉水を使用した浴槽水の殺菌効果を向上することができた。
【0101】
[実施例5]
ポリマレイン酸(スケール防止剤)4%、ベンゾトリアゾール(銅用防錆剤)1%、水酸化ナトリウム(安定化剤)3%、臭化ナトリウム2%及びハイドロキサン3%からなる製剤を作った。
【0102】
この製剤はpHを10.0以上に調整されており、5℃でも、室温でも、50℃でも3ヶ月以上安定であった。この製剤を7倍濃縮で運転されている開放循環系冷却水系統(pH:8.4)に添加して、循環水中にこの製剤が200mg/Lの濃度で保持されるようにコントロールした。24時間/日で運転されており、朝8時から夕17時までの毎時に保有水量に対して1mgCl2/Lの遊離残留塩素を10回/日に添加した。10%有効塩素の次亜塩素酸ナトリウム液では1日に100(mg)/保有水量(L)添加することとした。朝10時の添加後の状況と夕17時の添加時の状況を以下に示す。
【0103】
【表14】

【0104】
次亜塩素酸添加時に迅速に次亜臭素酸が生成しており、系内濃度も殺菌・殺微生物効果の現れる状況であり、夏期の7月から9月の3月間の運転下では冷却塔ならびに熱交換機の銅チューブにもスライム障害の兆候は見られなかった。この系統は、従来より防錆分散剤の薬品注入ポンプと次亜塩素酸ナトリウム溶液の殺菌剤ポンプの2台にて管理されており、防錆分散剤製剤に臭化ナトリウムとTCDOを加えた安定製剤に切り換えることにより、容易に殺菌・殺微生物効果を向上することが出来得た。
【0105】
以上の試験結果より本発明の被処理液中に臭素イオンを放出する臭化物と、変性亜塩素酸塩を存在させ、次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を添加することにより、被処理液中に次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成せしめる優れた方法であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】各試験の遊離残留ハロゲン量の時間的推移を示す図
【図2】各試験の遊離残留臭素量と二酸化塩素量との合算量の時間的推移を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方と臭化物とを被処理液中で反応させて、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法であって、
前記被処理液にさらに変性亜塩素酸塩を添加することにより、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法。
【請求項2】
前記変性亜塩素酸塩を、pH値が3以下である硫酸イオン含有水溶液中にペルオキシ化合物を0.001mol/L〜0.01mol/Lとなるように混合した後、pH値が7以上となるようにさらに亜塩素酸塩水溶液を混合して製造する請求項1に記載の生成方法。
【請求項3】
前記変性亜塩素酸塩が、テトラクロロデカオキサイドである請求項2に記載の生成方法。
【請求項4】
前記臭化物と前記変性亜塩素酸塩のモル比が、1:0.002〜0.3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項5】
前記臭化物と前記変性亜塩素酸塩とを予め水中にて混合した混合溶液と、次亜塩素酸又はその水性塩の少なくともいずれか一方とを前記被処理液に別個に添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項6】
前記被処理液が、パルプ製紙工場の工程水、工業用循環冷却水及び温泉水からなる群より選択されるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の生成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方と臭化物とを被処理液中で反応させて、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法であって、
前記次亜塩素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方、前記臭化物、及びテトラクロロデカオキサイドを前記被処理液に添加することにより、次亜臭素酸又はその水溶性塩の少なくともいずれか一方を生成する生成方法。
【請求項2】
前記臭化物と前記テトラクロロデカオキサイドのモル比が、1:0.002〜0.3である請求項1に記載の生成方法。
【請求項3】
前記臭化物と前記テトラクロロデカオキサイドとを予め水中にて混合した混合溶液と、次亜塩素酸又はその水性塩の少なくともいずれか一方とを前記被処理液に別個に添加する請求項1又は2のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項4】
前記被処理液が、パルプ製紙工場の工程水、工業用循環冷却水及び温泉水からなる群より選択されるものである請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−83135(P2006−83135A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271943(P2004−271943)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【特許番号】特許第3685800号(P3685800)
【特許公報発行日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(593204650)東西化学産業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】