説明

水系シリコーン組成物

【課題】シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せる、又は一般の粘着剤或いは接着剤を用いてシリコーンポリマー製の部材と他の部材を強固に貼り合せるのに有用で、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することができ、且つ使用の際に加熱架橋が不要な水系シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】(A)シリコーンゴム水系エマルジョンと、(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンと、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液と、(D)有機スズ化合物の水系分散液と、を所定の割合で含有する水系シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系シリコーン組成物に関し、更に詳しくは簡便な混合装置で混合するだけで製造することができ、シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せる場合や、シリコーンポリマー製の部材と他の部材を、一般の粘着剤や接着剤を用いて強固に貼り合せる場合に好適に用いることができ、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することができ、且つ使用の際に加熱架橋が不要な水系シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンポリマー製の部材は表面エネルギーが小さく、アクリル系粘着剤やエポキシ系接着剤等の一般の粘着剤や接着剤を用いて貼り合せることが困難である。そのため、化学構造が類似しているシリコーン粘着剤を用いて貼り合せる方法が採用されている。シリコーン粘着剤は、電気絶縁性、難燃性、耐熱性等に優れるため、電気絶縁テープ、難燃テープ、医療器具等の分野で使用されている。
【0003】
シリコーン粘着剤は、通常、シリコーンゴムとシリコーンレジンをトルエン等の有機溶剤中で一部反応させた後、基材に塗布して乾燥し、更に150℃程度の高温で過酸化物架橋等を行うことによって製造される。この製造方法では、高温で架橋を行うため、基材には耐熱性のポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタートフィルム(以下、「PETフィルム」ともいう)、ガラスクロス等の使用が欠かせない。また、有機溶剤を使用するため、環境への悪影響が指摘されている。更には、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することが出来ないため、複雑な部材には適用することができないという問題があった。
【0004】
そこで、一旦有機溶媒中でシリコーン粘着剤を調製した後、得られたシリコーン粘着剤溶液から有機溶媒を脱溶媒し、次いで乳化剤と水を加えて乳化分散させたものを、使用直前に架橋剤を添加して再度乳化分散させるシリコーンエマルジョン粘着剤組成物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法によれば、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することができるので、複雑な成形物にも適用することができる。しかしながら、溶液反応工程、脱溶媒工程、及び乳化分散工程の複数の工程を必要とするので、経済的ではない。また、粘着テープ等に加工する場合、架橋剤として白金触媒を使用する時は100〜130℃で1〜3分の加熱を必要とし、過酸化物触媒を使用する時は130〜200℃で1〜15分の加熱を必要とするので、従来の方法と同様に耐熱性の基材しか使用できないという問題があった。
【0005】
また、ジオルガノポリシロキサンガムのエマルジョンと、いわゆるMQシリコーンレジンのエマルジョン混合物に、白金触媒のエマルジョン又は過酸化物のエマルジョンを硬化触媒として混合した、実質的に有機溶剤を含有しないエマルジョン型シリコーン粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。このエマルジョン型シリコーン粘着剤組成物は、基材に塗布し、乾燥させた後、加熱硬化を行うことで粘着テープ等として使用される。しかしながら、加熱硬化を行う際に、白金触媒のエマルジョンを混合した場合は80〜130℃で30秒〜3分の加熱を必要とし、過酸化物のエマルジョンを混合した場合は100〜200℃で30秒〜10分の加熱を必要とする。そのため、基材は実質的にある程度の耐熱性を有する必要がある。また、シリコーンポリマー製の部材に現場で直接塗布し、硬化させることは実質的に困難である。
【0006】
更に、水系シリコーン粘着剤を用いてシリコーンポリマー製の部材と、ステンレス部材(例えば、SUS等)やポリプロピレン樹脂(以下、「PP」ともいう)等の他の部材を貼り合せる場合、両部材に同等の粘着力を得ることは難しく、粘着力の小さい側の部材から剥離してしまうという問題があった。
【0007】
この問題を解決する方法として、両面粘着テープの基材の片面にシリコーン粘着剤を塗布し、他面にアクリル粘着剤を塗布する方法がある。しかしながら、この方法では、アクリル系粘着剤の塗布工程とシリコーン粘着剤の塗布工程が必要となり、経済的ではない。更に、アクリル系粘着剤の性能に制限され、PP等の表面エネルギーの比較的小さい他の部材とシリコーンポリマー製の部材を強固に貼り合せることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特許第3516410号公報
【特許文献2】特開2007−197514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、簡便な混合装置で混合するだけで製造することができ、シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せる、又はアクリル系粘着剤、SBR系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、若しくはエポキシ系接着剤等を用いてシリコーンポリマー製の部材と、SUSやPP等の他の部材を強固に貼り合せるのに有用で、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することができ、且つ使用の際に加熱架橋が不要な水系シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、(A)シリコーンゴム水系エマルジョン、(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョン、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液、及び(D)有機スズ化合物の水系分散液を所定の割合で含有することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す水系シリコーン組成物が提供される。
【0012】
[1](A)シリコーンゴム水系エマルジョンと、(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンと、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液と、(D)有機スズ化合物の水系分散液と、を含有し、前記(A)シリコーンゴム水系エマルジョンの固形分100質量部に対し、前記(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンの固形分が100〜170質量部で、前記(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液の固形分が20〜70質量部であり、かつ前記(A)シリコーンゴム水系エマルジョンと前記(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンと前記(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液の固形分の合計100質量部に対し、前記(D)有機スズ化合物の水系分散液の固形分が0.5〜3.0質量部である水系シリコーン組成物。
【0013】
[2]前記(D)有機スズ化合物の水系分散液が、ジブチルスズジラウレートの水系分散液である前記[1]に記載の水系シリコーン組成物。
【0014】
[3]シリコーンポリマー製の部材を貼り合せるために用いられる前記[1]又は[2]に記載の水系シリコーン組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水系シリコーン組成物は、簡便な混合装置で混合するだけで製造することができ、シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せる、又はアクリル系粘着剤、SBR系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、若しくはエポキシ系接着剤等を用いてシリコーンポリマー製の部材とSUSやPP等の他の部材を強固に貼り合せるのに有用で、シリコーンポリマー製の部材に直接塗布することができ、且つ使用の際に加熱架橋が不要であるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中、「シリコーンポリマー製の部材」には、その全体が、シリコーンゴムやシリコーンレジン等のシリコーンポリマーによって構成された部材(成形品)だけでなく、シリコーンポリマーでコーティング等が施されて形成された表層を有する部材も概念的に含まれる。
【0017】
本発明の水系シリコーン組成物は、構成成分として、(A)シリコーンゴム水系エマルジョン、(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョン、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液、及び(D)有機スズ化合物の水系分散液を含有するものである。また、各構成成分は、簡便な混合装置で容易に混合可能なように、低粘度のものを使用する。
【0018】
1 構成成分
(1) (A)シリコーンゴム水系エマルジョン
(A)シリコーンゴム水系エマルジョン(以下、「(A)成分」ともいう)としては、自己架橋型軟質タイプのシリコーンゴム水系エマルジョンが好ましい。自己架橋性が無いタイプのシリコーンゴム水系エマルジョンを含有する場合、乾燥後の粘着性シリコーン組成物層や粘着シート等(以下、「粘着体」ともいう)の凝集力が小さく、実用的ではない場合がある。また、硬質タイプのシリコーンゴム水系エマルジョンを含有する場合、粘着性が得にくい場合がある。自己架橋型軟質タイプのシリコーンゴム水系エマルジョンとして、具体的には、商品名「KM−2002L−1」(信越化学工業社製)を挙げることができる。なお、ここでいう「自己架橋性」とは、エマルジョン状態では非架橋構造で、乾燥後に他の架橋剤の添加無しに自己架橋して架橋構造となることをいう。
【0019】
(2) (B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョン
(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョン(以下、「(B)成分」ともいう)としては、M単位(RSiO1/2)とQ単位(SiO4/2)からなるMQレジンで、乾燥後にオイル状を呈するシリコーンレジンの水系エマルジョンが好ましい。このような、乾燥後にオイル状を呈するMQレジンの水系エマルジョンとして、具体的には、商品名「KM−9717」(信越化学工業社製)、商品名「X−52−8005」(信越化学工業社製)等を挙げることができる。
【0020】
(B)成分の使用量は、(A)成分の固形分100質量部に対し、固形分換算で100〜170質量部であり、110〜160質量部であることが好ましく、120〜150質量部であることが更に好ましい。(B)成分の使用量が100質量部未満であると、シリコーンポリマー製の部材の表面からの界面破壊が起こり易くなり、十分な粘着強度が得られない場合がある。一方、170質量部超であると、粘着体の凝集力が低下し、十分な粘着強度を得られない場合がある。
【0021】
(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液
(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液(以下、「(C)成分」ともいう)としては、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴムの水系分散液が好ましい。このような構造を有するシリコーンゴムの水系分散液として、具体的には、商品名「KM−9729」(信越化学工業社製)、商品名「X−52−1133」(信越化学工業社製)、商品名「DY33−430M」(東レ・ダウコーニング社製)等を挙げることができる。
【0022】
(C)成分の使用量は、(A)成分の固形分100質量部に対し、固形分換算で20〜70質量部であり、30〜50質量部であることが好ましい。(C)成分の使用量が20質量部未満であると、水系シリコーン組成物をセパレーター上に塗布した時に相分離を起こし、均一な粘着体が得られない場合がある。一方、70質量部超であると、粘着体の凝集力が低下し、十分な粘着強度が得られない場合がある。
【0023】
(D)有機スズ化合物の水系分散液
(D)有機スズ化合物の水系分散液(以下、「(D)成分」ともいう)としては、ジブチルスズ化合物やジオクチルスズ化合物の様なジアルキルスズ化合物の水系分散液を好適に使用することができる。特に、ジブチルスズジラウレートの水系分散液(例えば、商品名「SCAT−1W」、日東化成社製)を使用することが好ましい。
【0024】
(D)成分の使用量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の固形分の合計100質量部に対し、固形分換算で0.5〜3.0質量部であり、0.8〜1.2質量部であることが好ましい。(D)成分の使用量が0.5質量部未満であると、シリコーンポリマー製の部材に対する粘着力が低下する場合がある。一方、3.0質量部超であると、粘着強度が低下する場合がある。
【0025】
(E)添加剤
本発明の水系シリコーン組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、老化防止剤、シリカ等の無機フィラー、SBR等のゴムラテックス、アクリル等のポリマーエマルジョン等の(E)添加剤(以下、「(E)成分」ともいう)を添加しても良い。
【0026】
なお、(E)成分として、水系シリコーン組成物をセパレーター上に塗布した時に起こるハジキを防止する目的で、増粘剤(例えば、商品名「M−2005A」、第一工業製薬社製、高分子量ポリオキシエチレン誘導体水溶液)を添加することも好ましい。増粘剤としてM−2005Aを添加する場合、その添加量は、水系シリコーン組成物の粘度にもよるが、通常、水系シリコーン組成物の水分を含んだ全質量100質量部に対し、1〜5質量部であることが好ましく、2〜4質量部であることが更に好ましい。添加量が1質量部未満であると、ハジキを防止できない場合がある。一方、5質量部超であると、塗布性を損ない、粘着強度の低下を招く場合がある。
【0027】
本発明の水系シリコーン組成物は、各構成成分を混合する際に、特別な装置を必要としなく、一般的な水系エマルジョンの混合機を用いて混合することができる。また、各構成成分のうち、(A)〜(D)成分の添加順序の制限は無いが、(E)成分は(A)〜(D)成分の水系混合物の粘度を見て、必要量を最後に添加することが好ましい。また、加熱の必要は無い。更に、室温で混合することができる。
【0028】
2 使用方法
本発明の水系シリコーン組成物は、以下のような方法で使用することにより、シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せる、又はシリコーンポリマー製の部材と他の部材を強固に貼り合せることができる。
【0029】
(1) シリコーンポリマー製の部材同士の貼り合せ方法
シリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せる方法としては、先ず、本発明の水系シリコーン組成物を刷毛やヘラを用いてシリコーンポリマー製の部材に塗布し、乾燥させて、その表層に粘着性シリコーン組成物層を形成する。次に、表層に粘着性シリコーン組成物層を形成したシリコーンポリマー製の部材と他のシリコーンポリマー製の部材を貼り合せる、又は表層に粘着性シリコーン組成物層を形成したシリコーンポリマー製の部材を二つ用意し、これらを貼り合せる、という方法がある。
【0030】
また、先ず、本発明の水系シリコーン組成物をフッ素系離型剤がコーティングされたセパレーター(例えば、商品名「フィルムバイナ50E−0010SF3」、藤森工業社製、フッ素系離型剤塗布PETセパレーター)に塗布し、室温で乾燥することにより、例えば、粘着性シートや粘着性テープ等を作製する。次に、この粘着性シートや粘着性テープをシリコーンポリマー製の部材にローラー等で圧着した後、セパレーターを剥がして他のシリコーンポリマー製の部材と貼り合せる、又は粘着性シートや粘着性テープ等をローラー等で圧着したシリコーンポリマー製の部材を二つ用意し、セパレーターを剥がしてこれらを貼り合せる、という方法がある。なお、乾燥を短時間で実施したい場合は、100℃未満の乾燥機を使用しても良い。
【0031】
(2) シリコーンポリマー製の部材と他の部材の貼り合せ方法
シリコーンポリマー製の部材と他の部材(例えば、ステンレス部材やポリプロピレン樹脂等)を、一般のアクリル系、SBR系、ブチルゴム系等の粘着剤や、エポキシ系の接着剤等を用いて貼り合せる方法としては、先ず、シリコーンポリマー製の部材に本発明の水系シリコーン組成物を刷毛やヘラを用いて塗布し、乾燥させて粘着性シリコーン組成物層を形成する。次に、表層に粘着性シリコーン組成物層を形成したシリコーンポリマー製の部材と他の部材を一般的な方法で粘着剤や接着剤を用いて貼り合せる、という方法がある。
【0032】
また、先ず、本発明の水系シリコーン組成物をフッ素系離型剤がコーティングされたセパレーターに塗布し、室温で乾燥させることにより、例えば、粘着性シートや粘着性テープを作製する。次に、この粘着性シートや粘着性テープをシリコーンポリマー製の部材にローラー等で圧着した後、セパレーターを剥がして、一般的な方法で粘着剤や接着剤を用いて他の部材と貼り合せる、という方法がある。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、物性値の測定方法を以下に示す。
【0034】
[剥離強度(N/10mm)]:シリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートに関しては、300mm/分の剥離速度で、JIS Z 0237に準拠してT字剥離を実施して測定した。また、シリコーンポリマー製の部材と他の部材を貼り合せたシートに関しては、300mm/分の剥離速度で、JIS Z 0237に準拠して180度剥離を実施して測定した。
【0035】
(実施例1)
(A)シリコーンゴム水系エマルジョンとして、商品名「KM−2002L−1」(信越化学工業社製:固形分43%)8.61g、(B)オイル状シリコーンレジンエマルジョンとして、商品名「KM−9717」(信越化学工業社製:固形分60%)8.02g、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液として、商品名「KM−9729」(信越化学工業社製:固形分52%)2.85g、(D)有機スズ化合物の水系分散液として、ジブチルスズジラウレートの水系分散液(商品名「SCAT−1W」、日東化成社製:固形分10%)1.00gをカップにて秤量して混合し、水系混合物を調製した。別途、(E)増粘剤として、商品名「M−2005A」(第一工業製薬社製)0.61gを別のカップに秤量し、これに先の((A)〜(D)成分の水系混合物を添加してスパチュラーで混合した後、減圧脱泡して水系シリコーン組成物(1)を調製した。なお、(A)〜(D)成分の固形分比(質量換算で)は100/130/40/2.7である。また、(A)〜(D)成分の水系混合物100部当り、(E)成分は3部である。
【0036】
(実施例2〜5、比較例1〜5)
各成分の使用量を表1に記載した量としたこと以外は、実施例1と同様にして各水系シリコーン組成物を調製した。なお、(A)〜(D)成分の使用量は全て固形分換算値である。また、(A)〜(D)成分の水系混合物100部当り、(E)成分3部を実施例1と同様に添加した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1で調製した水系シリコーン組成物(1)を、セパレーター(商品名「フィルムバイナ50E−0010SF3」、藤森工業社製)上に60μmのコーターで塗布し、室温で1日乾燥させて、セパレーター上に厚み30μmの粘着性シートを作製した。作製した粘着性シートを、2×25×150mmのシリコーンゴムシート(ショアA硬度50)2枚にローラーで80mmの長さ分だけ圧着した。セパレーターを剥がした後、粘着性シートを圧着したシリコーンゴムシートの粘着性シート面同士をローラーで圧着してシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを作製した。作製したシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを、5日間室温で養生した後、剥離強度を測定したところ、2.8N/10mmであった。
【0039】
表2に記載した水系シリコーン組成物を用いたこと以外は、上記した方法でシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを作製し、剥離強度を測定した。結果を表2に記載する。
【0040】
実施例1で調製した水系シリコーン組成物(1)を刷毛を用いて、2×25×150mmのシリコーンゴムシート(ショアA硬度50)2枚に片端から80mmの位置まで直接塗布し、室温で1日乾燥させて、シリコーンゴムシート上に厚み20μmの粘着性シリコーン組成物層を作製した。このシリコーンゴムシートの粘着性シリコーン組成物層同士をローラーで圧着してシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを作製した。作製したシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを、5日間室温で養生した後、剥離強度を測定したところ、2.7N/10mmであった。
【0041】
表2に記載した水系シリコーン組成物を用いたこと以外は、上記した方法でシリコーンポリマー製の部材同士を貼り合せたシートを作製し、剥離強度を測定した。結果を表2に記載する。
【0042】
【表2】

【0043】
表2からわかるように、本発明の水系シリコーン組成物を用いると、シリコーンポリマー製の部材同士を強固に貼り合せることができる。
【0044】
実施例1で調製した水系シリコーン組成物(1)を、セパレーター(商品名「フィルムバイナ50E−0010SF3」、藤森工業社製)上に60μmのコーターで塗布し、室温で1日乾燥させて、セパレーター上に厚み30μmの粘着性シートを作製した。作製した粘着性シートを、2×25×150mmのシリコーンゴムシート(ショアA硬度50)にローラーで80mmの長さ分だけ圧着してシリコーンポリマー製の部材を作製した。作製したシリコーンポリマー製の部材と、他の部材(SUS304)を、アクリル系粘着剤(商品名「PSD−30」、住友スリーエム社製)を用いて貼り合せた後、5日間室温で養生して、シリコーンポリマー製の部材と他の部材を貼り合せたシートを作製した。作製したシリコーンポリマー製の部材と他の部材を貼り合せたシートの剥離強度を測定したところ、8.0N/10mmであった。
【0045】
表3に記載した水系シリコーン組成物、他の部材、及び粘着剤又は接着剤を用いたこと以外は、上記と同様の方法でシリコーンポリマー製の部材と他の部材を貼り合せたシートを作製し、剥離強度を測定した。結果を表3に記載する。
【0046】
【表3】

【0047】
なお、表3に記載した他の部材、粘着剤、及び接着剤の詳細を以下に記す。
【0048】
(他の部材)
SUS:0.8×25×150mm、SUS304
PP:1×25×150mm、ポリプロピレン樹脂
PET:1×25×150mm、ポリエチレンテレフタート
【0049】
(粘着剤)
アクリル系粘着剤:商品名「PSD−30」、住友スリーエム社製
ブチルゴム系粘着剤:商品名「KZ−12」、日東電工社製
SBR系粘着剤:商品名「PCD−25」、住友スリーエム社製
【0050】
(接着剤)
エポキシ系接着剤:商品名「EP001N A/B」、セメダイン社製
【0051】
表3からわかるように、本発明の水系シリコーン組成物を用いると、シリコーンポリマー製の部材と他の部剤を、一般の粘着剤又は接着剤を用いて強固に貼り合せることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水系シリコーン組成物は、セパレーター上に塗布し、乾燥させてシリコーンポリマー製の部材に転写する、又はシリコーンポリマー製の部材に直接塗布し、乾燥させるだけで、加熱架橋することなくシリコーンポリマー製の部材の表面に粘着体を形成することができ、複雑な構造のシリコーンポリマー製の部材にも直接塗布することができるため、医療機器、電子部品、家電製品等の分野でシリコーンポリマー製の部材同士の強固な貼り合せ、又は一般の粘着剤や接着剤を用いたシリコーンポリマー製の部材と他の部材との強固な貼り合せに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーンゴム水系エマルジョンと、(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンと、(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液と、(D)有機スズ化合物の水系分散液と、を含有し、
前記(A)シリコーンゴム水系エマルジョンの固形分100質量部に対し、前記(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンの固形分が100〜170質量部で、前記(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液の固形分が20〜70質量部であり、かつ、
前記(A)シリコーンゴム水系エマルジョンと前記(B)オイル状シリコーンレジン水系エマルジョンと前記(C)シリコーンゴムパウダー水系分散液の固形分の合計100質量部に対し、前記(D)有機スズ化合物の水系分散液の固形分が0.5〜3.0質量部である水系シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(D)有機スズ化合物の水系分散液が、ジブチルスズジラウレートの水系分散液である請求項1に記載の水系シリコーン組成物。
【請求項3】
シリコーンポリマー製の部材を貼り合せるために用いられる請求項1又は2に記載の水系シリコーン組成物。

【公開番号】特開2010−53287(P2010−53287A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221429(P2008−221429)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】