説明

水系チタン組成物および帯電防止処理剤

【課題】 水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ長期にわたり濁りや沈殿を生じず安定であり、さらに、水酸基やカルボキシル基以外の官能基とも反応性を有する水系チタン組成物および帯電防止剤と該水系チタン組成物からなる帯電防止処理剤に関するものであり、特に耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事を目的とする。
【解決手段】 チタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシ酸の反応物に更にオキシ酸を接触、混合し、更に2以上の水酸基を有する化合物の水酸基のモル数がチタンに対し0.05〜5.0にて接触、混合する事により水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ電解質を含んだ水に対しても安定な水性チタン組成物。本水系チタン組成物を利用し、特定の帯電防止剤と接触、混合する事で、水や洗剤液に対して耐性を有する帯電防止皮膜を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系チタン組成物及び水系チタン組成物用いた帯電防止処理剤に関するものであり、特に水と任意の割合で混合する事のできる安定した水系チタン組成物に関するものである。これを使用し、水系樹脂の架橋剤として塗料、インキ、接着剤、バリヤーコート剤などに、表面処理剤として高屈折率膜などの酸化チタン含有薄膜、アンカーコート剤、カップリング剤などに、紙や繊維のコーティング剤などに、触媒としてエステル化、シリコーン硬化などに、無機バインダーとして防錆処理剤用バインダー、セラミックス焼結剤などに、その他に光触媒前駆体、強誘電体原料などに利用できる。また、本水系チタン組成物と帯電防止剤を組み合わせた帯電防止処理液にて耐水性、耐洗濯性に非常に優れた帯電防止膜を形成する事ができる。本帯電防止処理液は、帯電防止性を必要とするポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等を用いた繊維、フィルム、シートや容器等のプラスチック製品、EPDM、NBR、フッ素ゴム等を用いた各種ゴム製品、表面を樹脂加工した紙や木製品、さらにはガラス製品等帯電しやすい全ての材料の表面処理に好適に適用できる。
【背景技術】
【0002】
チタンアルコキシドは、架橋剤として分子中に水酸基、カルボキシル基などを有する化合物と反応するため、接着改良剤、塗料の架橋剤、塗料の耐熱向上剤などに利用されている。さらにゾルゲル法により酸化チタンの薄膜製造や、エステル化の触媒として工業的に幅広く使用されている。しかし、チタンアルコキシドは非常に高い加水分解性を有しているため、空気中の水分によっても作業中や保存中に不溶物を生じやすい。また、チタンアルコキシドを使用する際には有機溶媒を多量に使用する必要があり、環境負荷が極めて高い。このため、環境負荷が低く耐加水分解性を有するチタン化合物として、水系のチタン組成物が検討されてきた。現在市販されている水系のチタン化合物の技術はチタンアルコキシドにキレート化剤を反応させる方法がとられており、オキシ酸である乳酸とチタンアルコキシドとを反応させたチタンラクテート、アルカノールアミンであるトリエタノールアミンとチタンアルコキシドを反応させたチタントリエタノールアミネート、ジカルボン酸であるシュウ酸とチタンアルコキシドとを反応させたシュウ酸チタンなどがある。これについては、たとえば、(特許文献1)や、(非特許文献1)に記載されている。しかしこれらのうちオキシ酸である乳酸とチタンアルコキシドとを反応させたチタンラクテートは保存中に白色沈殿を生じやすい。またアルカノールアミンであるトリエタノールアミンとチタンアルコキシドを反応させたチタントリエタノールアミネートも初期は水溶性であるが、水と1対1で混合し40℃で保存すると、一ヶ月後には濁りを生じ流動性がなくなり茶色のゲル状態となる。(特許文献2)には脂肪族アミンを使用してチタン含有水溶液の製造方法が記載されているが、水溶液を作るのに長時間を要し、少量の水の添加では配合物が白色固体となり、均一で透明な液体を得る事ができない。また、表面処理剤として従来の水系チタン化合物を使用する場合、従来の水系チタン化合物は粘度が低いため、製膜性が著しく悪く、均一な塗工面を得にくかった。そこで、ポリビニルアルコール等の水系樹脂組成物を混合し、高粘度化をはかる方法もあるが、従来の水系チタン化合物は、水酸基との反応が非常に速く、常温にてゲル化してしまうため、塗工は困難であった。その他、従来の水系チタン化合物は、水酸基、カルボキシル基との反応は速やかに進行するものの、エポキシ基、イソシアナト基などとの反応性は乏しく、反応する官能基を選択して使用する必要があった。また、帯電防止剤としては、低分子量の帯電防止剤を用い帯電防止処理を行った物品は耐水性、耐洗濯性などの耐性が悪く、水による洗浄、洗剤を用いた洗濯によって、膜が取れ、短時間の暴露で帯電防止性を失なってしまう。耐水性については、アクリルモノマーなどと帯電防止剤との共重合体等で解決する例はあるが、長期にわたり水中や洗剤液中に暴露すると帯電防止性を失ってしまう。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−98393
【特許文献2】特開2001−322815
【特許文献3】特開2001−107030
【特許文献4】特開平1−230653
【非特許文献1】杉山岩吉、「含有金属有機化合物とその利用」、M.R.機能性物質シリーズNo.5、日本、シーエムアイ株式会社、昭和58年3月18日、p.73−74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ長期にわたり濁りや沈殿を生じず安定な水系チタン組成物であり、さらに、水酸基やカルボキシル基以外の官能基とも反応性を有する水系チタン化合物を提供することを第一の目的とする。従来のチタンアルコキシドは空気中の水分で加水分解を生じ、取り扱いに問題があった。本発明は、水分の影響を受けず取り扱いが簡単であり、水のみならず電解質を含んだ水に対しても安定であり、架橋剤、接着改良剤、薄膜原料などに使用すれば優れたチタン組成物本来の性能を発揮する事ができ、作業安定性に優れ、かつ有機溶剤の排出を減らす事も出来る水系チタン組成物を提供することを課題とする。
【0005】
また、水系チタン化合物を合成する際に使用する2以上の水酸基を有する化合物として多価アルコールを用いることで、チタンアルコキシド又はチタンキレートの反応性だけでなく、多価アルコール中に含まれる水酸基を利用し、水酸基、カルボキシル基以外の官能基との反応性を高めることを課題とする。
第二の目的としては、帯電防止処理剤に関するものであり、特に耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事を目的とする。本水系チタン化合物と、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基を有する特定の帯電防止剤を混合して使用することにより、帯電防止剤と水系チタン化合物が反応し、基材との密着性向上並びに、帯電防止膜の耐性を向上するため、従来の帯電防止剤で得ることが困難であった耐水性や耐洗濯性を改善する事ができ、且つ、水溶性のため、作業安全性に優れ、有機溶剤の排出も減らすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ長期にわたり濁りや沈殿を生じず安定な水系チタン組成物を鋭意検討してきた。その結果、チタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシ酸の反応物に更にオキシ酸を接触、混合し、更に2以上の水酸基を有する化合物の水酸基のモル数がチタンに対し0.05〜5.0にて接触、混合する事により水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ電解質を含んだ水に対しても安定な水系チタン組成物を見出すに至った。
また、本水系チタン組成物を利用し、特定の帯電防止剤と接触、混合する事で、水や洗剤液に対して耐性を有する帯電防止皮膜を形成できる事を見いだすに至った。
【0007】
すなわち本発明は、チタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシ酸の反応物に更にオキシ酸と2以上の水酸基を有する化合物とを混合してなり、2以上の水酸基を有する化合物の水酸基のモル数がチタンに対し0.05〜5.0である事を特徴とする水系チタン組成物であり、更に本水系チタン化合物と帯電防止剤を混合する事を特徴とする帯電防止処理剤に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水と任意の割合で混ぜる事ができ、かつ長期にわたり濁りや沈殿を生じず安定な水系チタン組成物を提供するものである。したがって少量の水を使用してもチタン含有水溶液が得られるため、チタンの含有率を高くする事ができ、また、水を加えても白色固体を生じないために製造および使用が容易である。この水系チタン組成物は従来のチタンアルコキシドと比べ水分の影響を受けず取り扱いが簡単であり、かつ水のみならず電解質を含んだ水に対しても安定であるので、架橋剤、接着改良剤、薄膜原料などに使用すれば優れたチタン組成物本来の性能を発揮する事ができ、作業安定性に優れ、かつ有機溶剤の排出を減らす事も出来る。チタンアルコキシド(A)と、脂肪族アミン(B)と、オキシ酸(C)と、2以上の水酸基を有する化合物(D)の組み合わせやそれらの反応条件を選べば、機能の発現条件をを任意に設定することができる。例えば架橋剤として使用する場合に、低温では反応を抑え、より高温で硬化させるように調整することができる。
【0009】
更に、本水系チタン化合物中の2以上の水酸基を有する化合物として多価アルコールを使用することによって、水酸基やカルボキシル基以外のエポキシ基やイソシアナト基などの官能基を有する化合物と反応させる事が可能である。また、本チタン化合物を使用し、エポキシ基などを有する特定の帯電防止剤(E)と組み合わせることで、特に水溶性で且つ耐水性、耐洗濯性に非常に優れた膜を形成する事ができる。この組成物の使用により、従来の帯電防止剤で得ることが困難であった耐水性や耐洗濯性を改善する事ができ、且つ、水溶性のため、作業安全性に優れ、有機溶剤の排出も減らすこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。本発明の帯電防止組成物における水系チタン化合物は下記に示すチタンアルコキシド(A)と、脂肪族アミン(B)または、オキシ酸(C)との反応物に更に、オキシ酸(C)、2以上の水酸基を有する化合物(D)との混合物であり、更に帯電防止処理剤は、この水系チタン化合物に更に、帯電防止剤(E)を混合したものである。
【0011】
チタンアルコキシド(A)は下記一般式(I)で表される。
【化1】

【0012】
〜Rはアルキル基である。好ましいアルキル基の炭素数は1〜8の整数であり、nは1〜10の整数である。さらに具体的にはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラt−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラノルマルエチルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート2量体、テトラノルマルブチルチタネート4量体、テトラノルマルブチルチタネート7量体などがある。ここに例示したものに限らないが、これらのチタンアルコキシドを単独または2種類以上混合して用いる事ができる。
【0013】
脂肪族アミン(B)としては、次のようなものがある。例えば、アルキルアミンではメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン,t−ブチルアミン、n−アミルアミン、sec−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジn−ブチルアミノ)プロピルアミンなどがあり、脂肪族環状アミンではピペリジン、ピロリジンなどがあり、アルコキシアルキルアミンとしては、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミンなどがあり、ヒドロキシアルキルアミンではN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジn−ブチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどがあり、第四級アンモニウム水酸化物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラn−ブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどがある。無論ここに例示したものに限らないが、単独または2種類以上混合して用いる事ができる。これら脂肪族アミンの中で特にヒドロキシアルキルアミンを使用することが好ましい。
【0014】
脂肪族アミンの添加量はチタンアルコキシドと直接反応させる場合、アルカノールアミンを用いることが好ましく、チタンアルコキシド1モルに対して、脂肪族アミン1モル以上が必要であり、更に、チタンアルコキシド1モルに対して脂肪族アミンは2モル以上にて反応を行うことが好ましい。チタンアルコキシド1モルに対し、脂肪族アミンが1モル以下の場合は、水系チタン化合物が得られず、水に添加した際、白色沈殿を析出する。
【0015】
オキシ酸(C)としては炭素数が2〜20のオキシ酸が使用でき、更に炭素数が2〜10のオキシ酸を使用することが好ましい。オキシ酸の種類としては、次のようなものがあげられる。例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸、オキシイソ酪酸、マンデル酸、トロバ酸、グルコン酸などをあげられる。無論ここに例示したものに限らないが、これらのオキシカルボン酸を単独または2種類以上混合して用いる事ができる。この中で特にリンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸がより好ましい。オキシ酸を用い、チタンアルコキシドと反応する場合は、チタンアルコキシド1モルに対し、オキシ酸が1モル以上必要であり、更には、チタンアルコキシド1モルに対し、オキシ酸が2モル以上反応する事が好ましい。オキシ酸が1モル以下の場合は、水溶性のチタン化合物が得られず、水を添加した時に白色沈殿を生ずる場合がある。オキシ酸を添加剤として用いる場合、オキシ酸の添加量はチタンアルコキシド1モルに対しに対して、0.1モル以上が必要である。オキシカルボン酸の添加は水系チタン組成物を安定化させ、急激な反応を押さえて安定した作業性を与え,電解質を含む水溶液と接触しても濁りや沈殿物を生じ難くなる。
【0016】
2以上の水酸基を有する化合物としては、次のようなものがあげられる。たとえば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリンなどがあげられ、また、樹脂組成物として完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等があげられる。無論ここに例示したものに限らないが、これらの化合物を単独または2種類以上混合して用いる事ができる。
【0017】
水酸基を2以上有する化合物の添加量は、水酸基を2以上有する化合物の水酸基のモル数がチタンに対し0.01〜10.0であり、好ましくは、0.05〜5.0である。添加量が0.01モル以下または10.0以上であると、水溶性のチタン化合物が得られず、水を添加した時に白色沈殿を生ずる場合がある。
【0018】
帯電防止剤(E)としては分子中に少なくとも一つ以上の水酸基又はカルボキシル基を有する帯電防止剤または、分子中に1以上のエポキシ基を有する帯電防止剤を好適に使用する事ができる。分子中に一つ以上の窒素原子を有する帯電防止剤としては、例えば、N−ドデシル−N−ヒドロキシエチルドデカンアミド、N−ヒドロキシエチル−N−オクタデキルテトラデカンアミド、N−ヒドロキシエチル−N−オクタデシルドコサンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシテトラデシル)エタノールアミン、N−ヒドロキシエチルドデシルアミン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、塩化ココイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸のコポリマー、第四級アンモニウム塩含有アクリル樹脂などがあげられる。また、分子中に1以上のエポキシ基を有する帯電防止としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドなどがあげられる。無論ここに例示したものに限らないが、単独または2種類以上混合して用いる事ができる。これら帯電防止剤は本水系チタン組成物中のチタンアルコキシド1モルに対し0.1モル以上添加する事が好ましい。帯電防止剤の添加量がチタンアルコキシド1モルに対し0.5モル比以下であると、帯電防止性が得られず、耐水性、耐洗濯性を劣化させる。
【0019】
水系チタン化合物の合成法に関してはチタンアルコキシドと脂肪族アミンまたはオキシ酸との反応をした後は特に順序無くオキシ酸や2以上の水酸基を有する化合物を添加できる。また、帯電防止剤との混合においても、同様であり、水系チタン化合物に帯電防止剤を添加しても良いし、逆に帯電防止剤中に水系チタン化合物を添加しても良い。
【0020】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0021】
水系チタン組成物Aの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらジエタノールアミン 21.0g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還留し、冷却した。
冷却後、クエン酸を19.2g(0.1モル)混合溶解し、溶解を確認後、5%完全ケン化型ポリビニルアルコール(平均分子量:約80000)水溶液を15.0g混合溶解した。本水系チタン化合物中のチタンに対する完全ケン化型ポリビニルアルコール中の水酸基のモル数は0.20であった。この薬液を水系チタン組成物Aとした。
【0022】
水系チタン組成物Bの合成
100mlの四つ口フラスコにテトラノルマルブチルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらトリエタノールアミン 29.8g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還留し、冷却した。冷却後、リンゴ酸を13.4g(0.1モル)混合溶解し、溶解を確認後、5%ヒドロキシエチルセルロース(平均分子量:約60000)を20g混合溶解した。本水系チタン化合物中のチタンに対するヒドロキシエチルセルロース中の水酸基のモル数は0.15であった。この薬液を水系チタン組成物Bとした。
【0023】
水系チタン組成物Cの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらトリエタノールアミン 29.8g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還留し、冷却した。冷却後、酒石酸を15.0g(0.1モル)混合溶解し、溶解を確認後、5%カルボキシメチルセルロース(平均分子量:約60000)を20g混合溶解した。本水系チタン化合物中のチタンに対するヒドロキシエチルセルロース中の水酸基のモル数は0.15であった。この薬液を水系チタン組成物Cとした。
【0024】
水系チタン組成物Dの合成
100mlの四つ口フラスコにテトライソプロピルチタネートを28.4g(0.1モル)仕込み、攪拌しながらジメチルモノエタノールアミン17.8g(0.2モル)を30分かけて加えた。添加終了後、85℃にて30分間還留し、冷却した。
冷却後、クエン酸を19.2g(0.1モル)混合溶解し、溶解を確認後、グリセリンを0.9g(0.01モル)混合溶解した。
本水系チタン化合物中のチタンに対するグリセリン中の水酸基のモル数は0.10であった。水系チタン組成物チタン化合物Dとした。
【0025】
水系チタン組成物Eの合成
ジエタノールアミンを乳酸18.0g(0.2モル)に代えた以外はチタン化合物Bと同様な操作を行った。この薬液を水系チタン組成物Eとした。
【0026】
水系チタン組成物Fの合成
ジエタノールアミンをクエン酸38.4g(0.2モル)に代えた以外はチタン化合物Cと同様な操作を行った。この薬液を水系チタン組成物Fとした。
【0027】
実施例1〜6および比較例1
上記水系チタン組成物A〜F各4.4gを、水および、電解質水溶液の濃度が0.5モル/Lの酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸の各水溶液に20g加え配合液を作り、配合液の濁りまたは沈殿物の生成状態を観察した。なお酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸の0.5モル/L水溶液のpHは、おのおの8.8でアルカリ性、6.9で中性、2.5で酸性であった。比較例として、チタントリエタノールアミネートであるオルガチックスTC−400(松本製薬工業社製)を用い、同試験を行った。その結果を表1に示す。
【表1】

実施例7〜13および比較例2〜3
各水系チタン組成物と帯電防止剤、水を混合した帯電防止処理液を表2に示す。
【表2】

【0028】
試験片の作製
帯電防止組成物を水にて10倍に希釈した後、本希釈液をポリエステルの布の重量と同量ディップ法により塗工した。塗工後、100℃にて2分間乾燥した。その後、160℃にて2分間硬化した。
これを試験片とした。
洗濯試験
試験片を1g/Lの濃度に調整した洗剤水溶液に入れ、洗濯機を用い、5分洗濯をした。洗濯終了後、2分間すすぎを2回行った。本工程を5回連続し行った。5回目のすすぎ工程終了後、20分間流水中にて洗浄し、乾燥機にて15分間乾燥し、洗濯後の試験片を得た。
摩擦帯電圧測定試験
室温20℃、湿度40%に設定した恒温室にてJISL1094に基づき摩擦帯電圧を測定した。
これら測定結果を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンアルコキシドと脂肪族アミン及び/又はオキシカルボン酸と2以上の水酸基を有する化合物を必須成分とし、これらを接触、混合してなり、2以上の水酸基を有する化合物の水酸基のモル数がチタンに対し0.1以上である水系チタン組成物。
【請求項2】
帯電防止剤と請求項1の水系チタン化合物からなる帯電防止処理剤。
【請求項3】
2以上の水酸基を有する化合物が炭素数3以上の化合物の多価アルコールである請求項1の水系チタン組成物。
【請求項4】
水酸基を有する化合物が、ビニルアルコールの(共)重合体である請求項1の水系チタン組成物。
【請求項5】
脂肪族アミンがアルカノールアミン、第四級アンモニウム水酸化物である請求項1の水系チタン組成物。
【請求項6】
チタンアルコキシドと接触、混合するオキシカルボン酸のモル数がチタンアルコキシドに対して0.1以上である請求項1の水系チタン組成物。
【請求項7】
分子中に少なくとも1以上の水酸基またはカルボキシル基を有する帯電防止剤を使用する請求項2記載の帯電防止処理剤。
【請求項8】
分子中に少なくとも1以上のエポキシ基を有する帯電防止剤を使用する請求項2記載の帯電防止処理剤。

【公開番号】特開2006−206855(P2006−206855A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51891(P2005−51891)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000188939)松本製薬工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】