説明

水系ポリウレタン樹脂組成物

【課題】得られる絶縁性硬化物の耐熱性、耐湿熱性が優れ、しかも樹脂の製造過程での揮発性化合物の飛散が少なく、取り扱いが容易な絶縁性ポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】酸素含有率が20重量%以下及びヨウ素価が155以下のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られた絶縁性ウレタンプレポリマーに、鎖延長剤を更に反応させて得られる一液型絶縁性ポリウレタン樹脂(ただし、該一液型絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオール及び鎖延長剤の活性水素の合計に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が1.4〜2.2倍当量となるように配合されたものである)を水に分散させた水分散体を含有することを特徴とする水系ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性ポリウレタン樹脂は、その原料であるポリオールとポリイソシアネートとの選択により低硬度のゴム状弾性体から架橋密度の高い硬質樹脂まで、幅広い硬度を有する絶縁性硬化物が得られるため、種々の電気・電子部品の絶縁材料として幅広く用いられ、その需要は拡大しつつある。例えば、プリントサーキットボードはプラスチック板等の基板の上に銅等の導体により電気回路が形成されているもので、衝撃及び周辺に存在する水分やごみ等から電気回路を保護するために絶縁性ポリウレタン樹脂で封止されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところがこのような構造をもつプリントサーキットボードは、電気回路が絶縁性硬化物中に閉じ込められているため電気回路から発生する熱が外に逃げられず、その熱によって電気回路を保護している絶縁性硬化物の硬度等の物性が変化する問題がある。又高温多湿下で使用される場合、前記絶縁性硬化物が熱と水分とで加水分解されることによって絶縁性硬化物の硬度等の物性が変化するという問題もある。絶縁性硬化物の硬度は、電気回路を衝撃から有効に保護するように調整されているので、該硬度が変化すると電気回路を衝撃から有効に保護できなくなる。従って絶縁性硬化物は優れた耐熱性(高温下に曝されても硬度等の物性が変化し難いこと)及び耐湿熱性(高温多湿下に曝されても硬度等の物性が変化し難いこと)をもつことが要求される。硬化物がこのような物性をもつことはプリントサーキットボードの分野に限らず、絶縁性ポリウレタン樹脂が使用される種々の分野においても要望されるところである。
一方、近年、絶縁性ポリウレタン樹脂の需要の拡大に伴い、絶縁性ポリウレタン樹脂の製造過程で問題となっている溶剤等の揮発性化合物の飛散を少なくし、かつ取り扱いが容易であることも要望されるようになってきた。
【0004】
本発明は、上記要望に鑑み、得られる絶縁性硬化物の耐熱性、耐湿熱性が優れ、しかも樹脂の製造過程での揮発性化合物の飛散が少なく、取り扱いが容易な絶縁性ポリウレタン樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、酸素含有率が20重量%以下及びヨウ素価が155以下のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られた絶縁性ウレタンプレポリマーに、鎖延長剤を更に反応させて得られる一液型絶縁性ポリウレタン樹脂(ただし、該一液型絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオール及び鎖延長剤の活性水素の合計に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が1.4〜2.2倍当量となるように配合されたものである)を水に分散させた水分散体を含有することを特徴とする水系ポリウレタン樹脂組成物が提供される。
又、本発明によれば、電気又は電子部品、とりわけプリントサーキットボードの絶縁に用いられる前記水系ポリウレタン樹脂組成物が提供される。
【0006】
本発明者らによって初めて、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を造るポリオールの酸素含有率を20重量%以下に、かつヨウ素価を155以下に調整すると、耐熱性及び耐湿熱性に優れた絶縁性硬化物を提供することができることが発見された。更に本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、水系であるから、樹脂の製造過程で溶剤等の揮発性化合物が飛散することが殆どなく、又火災発生等の恐れも低減されており、含有される一液型絶縁性ポリウレタン樹脂が一液型であるから、二液型の絶縁性ポリウレタン樹脂と違って、絶縁性硬化物を形成する際に2液を混合する設備や手間を必要とせず、又得られる絶縁性硬化物の物性(硬さ等)を水系ポリウレタン樹脂組成物を得た段階で決定することができるため、硬化物の物性を所望どおりにしやすい等、取り扱いが容易である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を水に分散させた水分散体を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物からは、耐熱性、耐湿熱性に優れた絶縁性硬化物が得られ、しかも該水系ポリウレタン樹脂組成物は樹脂の製造過程での揮発性化合物の飛散が少なく、取り扱いも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用される一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を造るポリオールの酸素含有率は20重量%以下で、ヨウ素価は155以下である。ポリオールの酸素含有率が20重量%を超えると、得られる絶縁性硬化物の耐湿熱性が劣り、高温多湿状態で硬度が大きく減少してしまう。又、ヨウ素価が155を超えると、絶縁性硬化物の耐熱性が劣り、高温下で硬くもろくなる。
ポリオールの酸素含有率は、好ましくは1〜15重量%である。酸素含有率がこの範囲であると絶縁性硬化物の耐湿熱性が特によくなる。
又、ヨウ素価は、好ましくは1〜120である。ヨウ素価がこの範囲であると絶縁性硬化物の耐熱性が特によくなる。
ここで酸素含有率(重量%)は
【0009】
【数1】

【0010】
で計算される。
又、ヨウ素価は、JIS K 3331-1995に従って測定される。
【0011】
本発明で使用される一液型絶縁性ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとから製造される。本発明において絶縁性ポリウレタン樹脂とは、25±5℃、65±5%RHで測定した体積固有抵抗値(Ω・cm)が、1010Ω・cm以上の硬化物を得ることができるものを言う。
さらに誘電率が6以下(1MHz)、絶縁破壊電圧が15KV/mm以上が好ましい。
絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオールの酸素含有率、溶出イオン濃度あるいは溶出イオンの種類の数等を調整することによって、得られる絶縁性硬化物の体積固有抵抗値を、1010Ω・cm以上、好ましくは1011Ω・cm以上に調整して得ることができる。特に体積固有抵抗値が1011Ω・cm以上であると、硬化物の絶縁性が良好に保持され、例えばフィルムコンデンサの絶縁材料、電子部品の封止剤等として好適に使用できる。
体積固有抵抗値の測定は、JIS C 2105に従って行う。具体的には、東亜電波工業社製SE−10Eを用い、25±5℃、65±5%RHで、サンプル(厚さ:3mm)に500Vの測定電圧を印加し、60秒後の数値を測定する。
【0012】
本発明において、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂としては、得られる硬化物が絶縁性を示す限り、ポリオールとして、ポリエステルポリオールを用いたポリエステル系樹脂、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系樹脂、その他のポリオールを用いた樹脂、これらの混合物を用いた樹脂のいずれも使用できる。
【0013】
ポリエステルポリオールは、脂肪酸とポリオールとの反応物であり、該脂肪酸としては、例えば、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸、オキシヘキサンデセン酸のヒドロキシ含有長鎖脂肪酸等が挙げられる。
脂肪酸と反応するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール及びジエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びトリエタノールアミン等の3官能ポリオール、ジグリセリン及びペンタエリスリトール等の4官能ポリオール、ソルビトール等の6官能ポリオール、シュガー等の8官能ポリオール、これらのポリオールに相当するアルキレンオキサイドと脂肪族、脂環族、芳香族アミンとの付加重合物や、該アルキレンオキサイドとポリアミドポリアミンとの付加重合物等が挙げられる。
【0014】
なかでも、リシノール酸グリセライド、リシノール酸と1,1,1−トリメチロールプロパンとのポリエステルポリオール等が好ましい。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4'−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4'−ジヒドロキシフェニルメタン等の2価アルコールあるいはグリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合物等が挙げられる。
【0016】
その他のポリオールとして、主鎖が炭素−炭素よりなるポリオール、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、AN(アクリロニトリル)やSM(スチレンモノマー)を前記した炭素−炭素ポリオールにグラフト重合したポリオール、ポリカーボネートポリオール、PTMG(ポリテトラメチレングリコール)等が挙げられる。
【0017】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が使用できる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリトリレンポリイソシアネート(粗TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。この他に、上記ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート(カルボジイミド変性ポリイソシアネート)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー(例えばポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であってイソシアネート基を分子末端にもつもの)等も使用できる。これらは単独あるいは混合物として使用してもよい。
これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0018】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法としては、ポリオールとポリイソシアネートとから得られる絶縁性ウレタンプレポリマーを水中に分散させて、得られた水分散体に鎖延長剤を加えて、水系ポリウレタン樹脂組成物を得る方法(以下(a)法という)、絶縁性ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液に鎖延長剤加えて一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する有機溶剤溶液を得、該有機溶剤溶液に水を加えて水に分散させ、得られた水系組成物から有機溶剤を分離する方法(以下(b)法という)等がある。
【0019】
(a)法として、具体的には以下の方法が例示される。
(1)ポリオール、ポリイソシアネート、及びNCO基反応性の活性水素及び下記する塩形成剤と反応して塩を形成する基(塩形成基)を含有する化合物とから塩形成基を含有する絶縁性ウレタンプレポリマーを得、該絶縁性塩形成基含有ウレタンプレポリマーを前記塩形成基と反応して塩を形成する塩形成剤を使用して水中に分散させ、得られた水系組成物に鎖延長剤を加えて前記絶縁性ウレタンプレポリマーと反応させて一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を得る。
塩形成基を含有する化合物として、(i)グリコール酸、アミノカルボン酸、ヒドロキシ酸、ヒドロキシルスルホン酸等の塩形成性のカルボン酸又はスルホン酸基を有する化合物、(ii)アミノアルコール類やアミン類等の酸で中和可能な第4級又は第3級基になり得る基を有する化合物、(iii)2−クロロエタノール、2−ブロモメタノール等の第4級化反応を起こすハロゲン原子又は相当する強酸のエステルを含有する化合物等が挙げられる。
該塩形成基と反応して塩を形成する塩形成剤としては、化合物(i)に対応する塩形成剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、アンモニア、第3級アミン化合物、化合物(ii)に対応する塩形成剤として、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、メチルクロライド等の無機及び有機酸類、反応性ハロゲン原子を有する化合物等、化合物(iii)に対応する塩形成剤として、例えば、第3級アミン、スルフィド類、フォスフィン類等が挙げられる。
【0020】
(2)ポリオール、ポリイソシアネート及びメタノールやエタノール等のモノアルコール又は多価アルコールのエチレンオキサイド、該エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物等とから親水性基を含む絶縁性ウレタンプレポリマーを得、該絶縁性ウレタンプレポリマーを水中に分散させ、得られた水系組成物に鎖延長剤を加えて前記絶縁性ウレタンプレポリマーと反応させて一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を得る。
【0021】
(3)ポリオールとポリイソシアネートとから絶縁性ウレタンプレポリマーを得、該絶縁性ウレタンプレポリマーをアニオン性、非イオン性、カチオン性、両性界面活性剤を使用して水中に強制的に分散させ、得られた水分散体に鎖延長剤を加えて前記絶縁性ウレタンプレポリマーと反応させて一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を得る。
界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム又はナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
(4)方法(1)で得られる塩形成基含有絶縁性ウレタンプレポリマーを方法(1)で使用される塩形成剤と方法(3)で使用される界面活性剤とを使用して水中に分散させ、得られた水系組成物に鎖延長剤を加えて前記絶縁性ウレタンプレポリマーと反応させて一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を得る。
【0023】
鎖延長剤として、ジメチロールプロパン、メラミン、ジメチロールウレア、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン等の多価アミン化合物、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミン等が挙げられる。
【0024】
ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の配合量は、目的とする絶縁性硬化物の硬度等の物性によって適宜決められるが、通常、ポリオール及び鎖延長剤の活性水素の合計に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が1.4〜2.2倍当量、好ましくは1.6〜2.0倍当量である。
【0025】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物中の一液型絶縁性ポリウレタン樹脂含有率は特に限定されないが、通常5〜65重量%が好ましく、更に好ましくは20〜55重量%である。該絶縁性ポリウレタン樹脂の含有率が5〜65重量%であれば、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂が水中に可溶化あるいは安定に分散している。
【0026】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には本発明の効果を阻害しない範囲内で、充填剤、難燃剤、消泡剤、防菌剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、防黴剤、他の水系分散樹脂等の添加剤を含むことができる。
【0027】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機等のスイッチ部や電動工具等に使用されている電子、電気部品に含まれる電気・電子回路を水分、湿気から保護するために該回路を封止する封止剤、電気、電子機器のシーリング剤やコーティング剤、及びコンデンサー、コンバーター、トランス、電線、コイル、電装品(自動車の電子部品)の絶縁材料等として好適に使用される。
特にプリントサーキットボードの絶縁材料として用いた場合、得られた絶縁性硬化物は優れた耐熱性と耐湿熱性をもっているので、プリントサーキットボードの電気回路が高温になっても、あるいは該ボードを水廻り製品等の高温多湿の条件下で長時間使用しても、該プリントサーキットボードを封止している絶縁性硬化物は適切な硬さ、絶縁性などの電気特性を保つことができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、以下に実施例、比較例で行った試験方法を記載する。
【0029】
体積固有抵抗値(Ω・cm)の測定
東亜電波工業社製SE−10Eを用い、25±5℃、65±5%RHで、サンプル(50mm×50mm、厚さ:3mm)に500Vの測定電圧を印加し、60秒後の数値を測定する。
【0030】
硬度の測定
サンプル(50mm×50mm、厚さ:3mm)を2枚重ねて(厚さ:6mm)、硬度をJIS K 6253に従って測定する。硬度計は高分子計器株式会社アスカーA型を用いる。
【0031】
実施例1
ポリオールとして、1,2−ポリブタジエンポリオール(ポリオールA、水酸基価:45mgKOH/g)と、リシノール酸とトリメチロールプロパンとを反応させて得たポリエステルポリオール(ポリオールB、水酸基価:37mgKOH/g)との混合物(ポリオールA:ポリオールB=80:20(重量比))を、ポリイソシアネートとしてナフチレンジイソシアネートを使用し、これらを1:2(ポリオール:ポリイソシアネートの当量比)で90℃1時間反応させ、NCO基を末端に含む絶縁性ウレタンプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトン(MEK)とトルエン(1:1重量比)の混合溶媒に溶解し、絶縁性ウレタンプレポリマーを50重量%含む溶液を得た。得られた絶縁性ウレタンプレポリマー溶液に、鎖延長剤としてジメチロールウレアを得られた末端NCO基を含む絶縁性ウレタンプレポリマー2当量に対して1当量添加、混合して60℃で1時間反応させ、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を含有する溶液を得た。イオン交換水を得られた絶縁性ポリウレタン樹脂含有溶液に対し1倍量添加し、該溶液を水に分散させた。次いで冷却分離器付真空脱溶剤機で水分散体の脱MEK/トルエンを80℃、3トールで2時間行い、一液型絶縁性ポリウレタン樹脂を53重量%含む水系ポリウレタン樹脂組成物を水分散体として得た。
【0032】
サンプルは、得られた水分散体をテフロン(登録商標)容器に流し、25℃65%RHで24時間放置し、次いで80℃24時間乾燥して得た。
得られたサンプルについて、下記する耐熱処理及び耐湿熱処理を行い、これらの処理前後の体積固有抵抗値、硬度及び重量を測定した。結果を表3に示す。硬度および重量については処理前の値(初期値)に対する低下率として示す。表3及び4中、VRは体積固有抵抗値を、WTは初期値に対する重量の減少率を、HAは初期値に対する硬さの減少率を示す。また、ポリオールA〜Gの構成及び物性を表5に示す。
【0033】
耐熱性処理
ヤマト科学(株)製のDN−62恒温槽中に得られたサンプルを150℃で24時間放置する。
【0034】
耐湿熱処理
株式会社平山製作所製プレッシャークッカー PC−242HS−A中で得られたサンプルを121℃、100%RH、2気圧の条件下で24時間放置する。
【0035】
実施例2〜20
表1、2に示すポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を使用して実施例1に準じて水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
得られた水系ポリウレタン樹脂組成物から、実施例1に準じてサンプルを得た。得られたサンプルの耐熱処理及び耐湿熱処理前後の体積固有抵抗値、硬度及び重量を測定した。結果を表3及び4に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
比較例1〜9
表6に示すポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を使用して実施例1に準じて水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
得られた水系ポリウレタン樹脂組成物から、実施例1に準じてサンプルを得た。得られたサンプルの耐熱処理及び耐湿熱処理前後の体積固有抵抗値、硬度及び重量を測定した。結果を表7に示す。表7中、VRは体積固有抵抗値を、WTは初期値に対する重量の減少率を、HAは初期値に対する硬さの減少率を示す。
【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

【0044】
表3、4、7から明らかなように、酸素含有率が20重量%以下及びヨウ素価が155以下のポリオールとポリイソシアネートとから得られた一液型絶縁性ポリウレタン樹脂の水系ポリウレタン樹脂組成物から得られた絶縁性硬化物は、121℃、100%RH2気圧の条件下24時間放置した後でも、150℃恒温槽中に24時間放置した後でも、硬度及び重量の減少率を10%以下に抑えることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有率が20重量%以下及びヨウ素価が155以下のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られた絶縁性ウレタンプレポリマーに、鎖延長剤を更に反応させて得られる一液型絶縁性ポリウレタン樹脂(ただし、該一液型絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオール及び鎖延長剤の活性水素の合計に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基が1.4〜2.2倍当量となるように配合されたものである)を水に分散させた水分散体を含有することを特徴とする水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
電気又は電子部品の絶縁用である請求項1記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
電気又は電子部品がプリントサーキットボードである請求項2記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−31726(P2007−31726A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307010(P2006−307010)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【分割の表示】特願2001−387873(P2001−387873)の分割
【原出願日】平成13年12月20日(2001.12.20)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】