説明

水系ポリウレタン樹脂組成物

【課題】保存安定性に優れ、塗料、接着剤、繊維処理剤として有効に用いることのできる水系ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ウレタン樹脂100質量部に、(B)(b−1)下記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(b−2)ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダムポリマーを(b−3)ポリイソシアネート化合物で縮合したビスフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種1〜30質量部と、水30〜900質量部と、を配合してなる水系ポリウレタン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系ポリウレタン樹脂組成物に関し、詳しくは、特定のポリエーテル化合物を乳化剤として使用してなり、保存安定性に優れ、塗料、接着剤、繊維処理剤として有効に用いることのできる乳化分散型水系ポリウレタン樹脂組成物(以下、「ポリウレタン樹脂エマルション組成物」と記す場合もある)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物は、塗料、接着剤、表面改質剤等に広く応用されているが、対環境汚染、労働衛生、安全性から、組成物中に有機溶剤を全く使用しない水分散型のものが望まれている。中でも、組成物中にイオン性基を持たせず乳化剤を用いて水中に分散させたポリウレタン樹脂エマルションは、イオン性分散型水系ポリウレタン樹脂組成物のように中和剤を使用する必要がないので、臭気、中和剤の残留等の問題が発生しない、pH、イオン性等の使用条件に影響を受けない等、の利点を有しており、幅広い応用が可能である。
【0003】
上記のポリウレタン樹脂エマルション組成物としては、例えば、特許文献1にポリイソシアネート、エチレンオキサイド付加アルコール等のイソシアネートブロック剤及びポリエチレングリコールからなる乳化剤から得られるものが、特許文献2にポリイソシアネート、アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキレンオキサイド付加物及び鎖延長剤から得られるものが、特許文献3にジイソシアネートとアルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキレンオキサイド付加物から得られるものが、また、特許文献4にポリイソシアネートと特殊構造を有する二価の活性水素含有のエチレンオキサイド付加物から得られるもの等が夫々報告されている。
【0004】
また、特許文献5には、酸価10〜100かつ水酸基価1〜20のアクリル樹脂、ビスフェノールAのポリアルキレンオキシド付加物及びアミノ樹脂からなる水性塗料組成物が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献6には、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物及び帯電防止剤を含有してなるガラス繊維集束剤が提案されている。
【0006】
さらにまた、特許文献7〜特許文献9には、水系エポキシ樹脂にビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物あるいは該化合物にイソシアネート化合物を縮合した縮合物からなるビスフェノール系ポリエーテル化合物が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−151419号公報
【特許文献2】特開昭63−39911号公報
【特許文献3】特開平7−53661号公報
【特許文献4】特開平11−106733号公報
【特許文献5】特開平7−188606号公報
【特許文献6】特開平7−277778号公報
【特許文献7】特許第3644782号公報
【特許文献8】特開2000−178410号公報
【特許文献9】特開2002−88229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまで報告されているポリウレタン樹脂エマルション組成物は保存安定性等の面でかならずしも十分であるとはいえなかった。例えば、特許文献1〜4に記載されているポリウレタン樹脂エマルション組成物は、長期保存や40℃以上の温度で沈殿を生じる等、保存安定性に満足できるものではなかった。
【0008】
また、特許文献5に記載されたポリエーテル化合物は、樹脂中に組み込むことを目的とするものであり、特許文献5には水系ポリウレタン樹脂の乳化剤として用いることは記載も示唆もない。
【0009】
さらに、特許文献6で使用されるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物はガラス繊維に潤滑性を付与するために配合されているものであり、特許文献6にはこれを水系ポリウレタン樹脂の乳化剤として使用することを示唆する記載もなく、実際にここで使用されるビスフェノールAのエチレンオキシド2〜40モル付加物を乳化剤として用いた場合には分散性、保存安定性が全く不十分である。
【0010】
さらにまた、特許文献7〜特許文献9には、乳化剤を用いてウレタン樹脂を水分散させた水系ポリウレタン樹脂の安定性に関しては何等記載されていない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、保存安定性に優れ、塗料、接着剤、繊維処理剤として有効に用いることのできる水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ビスフェノール化合物のポリアルキレンオキシド付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなる特定のポリエーテル化合物を乳化剤として使用した水系ポリウレタン樹脂組成物により、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、(A)ウレタン樹脂100質量部に、(B)(b−1)下記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(b−2)ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダムポリマーを(b−3)ポリイソシアネート化合物で縮合したビスフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種1〜30質量部と、水30〜900質量部と、を配合してなることを特徴とするものである。
【0014】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保存安定性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。その結果、かかる水系ポリウレタン樹脂組成物は、塗料、接着剤、繊維加工剤、繊維集束剤などの広範囲の用途において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明に使用される(A)ウレタン樹脂は、乳化剤成分である特定のビスフェノール系ポリエーテル化合物の作用により安定に水に分散することが可能となるが、アニオン性基、カチオン性基等のイオン性基等の親水基を有していてもよく、また、鎖延長剤により高分子化されたものでもよい。
【0017】
上記(A)ウレタン樹脂は、(a−1)ポリイソシアネート成分、(a−2)ポリオール成分、必要に応じて用いられる(a−3)イオン性基導入成分、必要に応じて用いられる(a−4)イオン性基中和剤成分、必要に応じて用いられる(a−5)鎖延長剤成分から得られるものである。
【0018】
(a−1)ポリイソシアネート成分は、ジイソシアネートを必須成分とし一分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物を任意成分としてなり、これらは、一種類又は二種類以上混合で用いることができる。
【0019】
上記ジイソシアネート化合物としては、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0020】
上記のジイソシアネートは、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
【0021】
上記の一分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、ビウレット三量化物、トリメチロールプロパンアダクト化物等;トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等の三官能以上のイソシアネート等が挙げられ、これらのイソシアネート化合物はカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
【0022】
前記(a−2)ポリオール成分は、ジオール化合物を必須成分とし他のポリオール化合物を任意成分としてなり、他のポリオール化合物としては、ヒドロキシル基を3個以上有するポリオール化合物が挙げられ、これらは、一種類又は二種類以上混合で用いることができる。
【0023】
上記ジオール化合物及びヒドロキシル基を3個以上有するポリオール化合物としては、低分子ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオールが挙げられる。
【0024】
上記の低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等脂環式ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキサイド付加物;ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレンオキサイド付加物;上記の低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオール類としては、上記に例示の低分子ポリオール等のポリオールと、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体、及び/又は、ラクトン類もしくはその加水分解開環して得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものが挙げられる。多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類などの多価カルボン酸が挙げられ、そのエステル形成性誘導体としては、これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸クロライド、ブロマイド等のハライド;該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステルが挙げられる。また、上記ラクトン類としてはγ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0027】
前記(a−3)イオン性基導入成分としては、アニオン性基を導入するものとカチオン性基を導入するものが挙げられる。アニオン性基を導入するものとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられ、カチオン性基を導入するものとしては、例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−ブチル−N,N−ジエタノールアミン等のN−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類が挙げられる。
【0028】
前記(a−4)イオン性基中和剤成分としては、アニオン性基の中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類等の三級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等塩基性化合物が挙げられ、カチオン性基の中和剤としては、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸等の有機カルボン酸、パラトルエンスルホン酸、スルホン酸アルキル等の有機スルホン酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸等の無機酸、エピハロヒドリン等エポキシ化合物の他、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル等の四級化剤が挙げられる。
【0029】
前記(a−5)鎖延長剤成分としては、水系ポリウレタン樹脂組成物に用いられる周知一般の鎖延長剤を一種類又は二種類以上混合で使用することができ、多価アミン化合物、多価一級アルコール化合物等が好ましく、多価アミン化合物がより好ましい。上記多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の前記例示の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものである低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類;ヒドラジン;上記のポリエステルポリオールに用いられる多価カルボン酸で例示したジカルボン酸とヒドラジンの化合物であるジカルボン酸ジヒドラジド化合物が挙げられる。
【0030】
上記(a−5)鎖延長剤の使用量については、特に制限されることはなく、任意の量を選択して使用できるが、例えば、プレポリマー法を選択した場合、プレポリマー中のイソシアネート基の数1に対して鎖延長剤の活性水素の数が0.1〜1.5の範囲が得られる水系ポリウレタン樹脂の分散性が良好で、変色もないので好ましく、0.5〜1.0がより好ましい。
【0031】
本発明に使用される(B)(b−1)下記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(b−2)ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダムポリマーを(b−3)ポリイソシアネート化合物で縮合したビスフェノール系ポリエーテル化合物は乳化剤として用いられ、本発明の効果である保存安定性等の向上に寄与するものである。
【0032】
(一般式1)

(式中、R及びRは各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。)
【0033】
上記一般式(1)中、RおよびRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどがあげられる。該RおよびRとしては、特に水素原子あるいはメチル基が好ましい。
【0034】
上記(b−1)ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物(以下、単に「付加物」ということもある)に使用できるアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、デシレンオキシドなどがあげられ、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが好ましく、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが共付加されたものは、分散性及び保存安定性に優れ、しかも熱着色性にも優れるため好ましい。
【0035】
上記付加物は、アルキレンオキシド1〜80モル、特に2〜40モルの付加物であることが好ましい。付加モル数が1モル未満では水分散物の安定性が低下するおそれがあり、80モルより多い場合には凝集を生じるおそれがあるため好ましくない。
【0036】
また、上記付加物は、前記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物に、アルキレンオキシドを常法により付加することで容易に得られるが、その方法に関しては特に限定されるものではない。
【0037】
上記(b−2)成分は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリプロピレンブロックポリマーまたはポリオキシエチレンポリプロピレンランダムポリマーであり、これらのオキシエチレン単位は50〜1000、特に75〜500が好ましく、またオキシプロピレン単位は0〜100、特に5〜80が好ましく、オキシエチレン単位が50未満では、乳化安定性が低下するおそれがあり、1000を超えると凝集を起こすおそれがあるため好ましくない。また、例えば、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレン―ポリオキシエチレン等の構造を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを使用することで、特に安定な水分散物が得られるため好ましい。
【0038】
上記(b−3)成分のポリイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートがあげられ、具体的には前記(a−1)に示したイソシアネート化合物が挙げられる。
【0039】
上記(b−1)成分及び(b−2)成分の使用量は、モル比(前者/後者)で2/1〜1/10、特に、1/1〜1/5が好ましく、(b−1)成分がこの範囲の下限未満の場合には凝集を生じるおそれがあり、(b−2)成分がこの下限未満の場合には水分散物の安定性が低下するおそれがあるため好ましくない。また、上記(b−3)成分の使用量は、上記(b−1)成分及び上記(b−2)成分のアルコール性水酸基1当量に対し、イソシアネート基0.1〜1.0当量、特に0.4〜0.9当量範囲が好ましく、0.1当量未満では目的とするものが十分得られないおそれがあり、1.0当量を超えて使用すると高分子量化して乳化剤としての機能を果たせなくなるおそれがあるため好ましくない。
【0040】
上記(B)ビスフェノール系ポリエーテル化合物を得る方法としては、通常のポリオール類とポリイソシアネート類とからウレタン化合物を得るために用いられる方法がそのまま適用できるが、(b−1)成分及び(b−2)成分を予め混合してそれを(b−3)成分と反応させる方法、(b−1)成分あるいは(b−2)成分のいずれか一方を先に(b−3)成分と反応させた後に他方と反応させる方法等が挙げられ、その方法に関しては特に限定されるものではない。
【0041】
また、上記反応は有機溶媒中でも行うことができ、該有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類並びにこれら2種以上の混合溶媒をあげることができる。
【0042】
また、上記反応は触媒存在下で行うこともでき、該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン類、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫化合物等をあげることができる。
【0043】
上記(B)ビスフェノール系ポリエーテル化合物は、その平均分子量が50000以下、特に20000〜35000のものが好ましい。該平均分子量が50000を超えるものを使用すると分散安定性が低下するおそれがある。
【0044】
上記(B)ビスフェノール系ポリエーテル化合物の配合量は、(A)ウレタン樹脂100質量部に対し、1〜30質量部、好ましくは5〜15質量部である。該配合量が1質量部未満では乳化剤としての機能を十分に発揮することができず、30質量部よりも多いときには塗料に用いた場合の塗膜性能が低下する。
【0045】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、更に別の乳化剤として、脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコールおよびアルキルフェノールからなる群から選ばれる一種のアルキレンオキシド付加物または該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるアルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種を(A)ウレタン樹脂100質量部に対し1〜30質量部併用することができ、該アルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物の併用により、さらに分散安定性が向上するため好ましい。
【0046】
ここで、上記脂肪族一価アルコールとしては、例えは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがあげられ、また上記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ソルビタン、ヒマシ油などがあげられ、また上記アルキルフェノールとしては、例えば、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどがあげられる。
【0047】
上記アルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物の中でも、とりわけポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物あるいは該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるポリエーテル化合物を用いることが、特に優れた併用効果を示すため好ましい。
【0048】
上記アルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物の配合量は、好ましくは(A)ウレタン樹脂100質量部に対し1〜30質量部である。
【0049】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、更に、必要に応じて他の乳化剤を併用することができる。これらの他の乳化剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、液体脂肪油の硫酸エステル塩、脂肪族アミンおよび脂肪族アマイドの硫酸塩、脂肪族アルコールのリン酸エステル、二塩基酸性脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸、ホルマリン縮合ナフタリンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ベタイン型、硫酸エステル型、スルホン酸型などの両性界面活性剤、前記以外のノニオン系界面活性剤などがあげられる。
【0050】
また、本発明に係る水系ポリウレタン樹脂は、その製造方法によって特に限定されることはなく、周知一般の製造方法を用いることができる。製造方法としては、例えば、反応に不活性且つ水との親和性の大きい溶媒中で反応させ、プレポリマーを合成してからウレタンプレポリマーを水に分散させた後、溶媒を除去する方法が好ましい。例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を反応させ、末端ヒドロキシル基としたウレタンプレポリマーを合成した後、乳化剤を加え、このプレポリマーへ水を添加し、ウレタン樹脂を水に分散させる方法(イ)、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を反応させ、末端イソシアネート基としたウレタンプレポリマーを合成した後、乳化剤を加え、このプレポリマーへ水を添加しウレタン樹脂を水に分散させ、更に鎖伸長剤成分を反応させる方法(ロ)、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を反応させ、末端ヒドロキシル基としたウレタンプレポリマーを合成した後、乳化剤を加え、このプレポリマーを水中に添加し、ウレタン樹脂を水に分散させる方法(ハ)、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を反応させ、末端イソシアネート基としたウレタンプレポリマーを合成した後、乳化剤を加え、このプレポリマーを水中に添加し、ウレタン樹脂を水に分散させ、更に鎖伸長剤成分を反応させる方法(ニ)が挙げられる。ウレタン構造中にカルボキシル基やポリオキシエチレン基等の親水基を持たないプレポリマーの水分散は、分散性が劣るため製造が困難となるので、(イ)及び(ロ)の様なプレポリマー中に水を添加し水分散体を得る方法の方がより好ましい。
【0051】
上記の好適な製造方法に使用される反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、3〜100質量%が用いられる。これら溶媒のなかで、沸点100℃以下の溶媒はプレポリマー水分散後、減圧留去することが好ましい。
【0052】
この場合の配合については、使用されるポリイソシアネートのイソシアネート基とポリオールのアルコール性水酸基との数の比であるNCO数/OH数が、0.5より小さいとウレタンプレポリマーの末端官能基は水酸基となり、かつ平均分子量が小さいため充分なウレタン樹脂の物性が得られない場合があり、5.0を超えると得られる水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性に影響を及ぼす場合があるので0.5〜5.0の範囲が好ましく、0.8より大きく3以下の範囲がより好ましい。
【0053】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、ウレタン樹脂100質量部に対し、水が30〜900質量部、好ましくは80〜400質量部配合される。水の配合量が30質量部よりも少ない時には粘度が高く取扱いが困難になり、900質量部よりも多い場合には塗料に用いた場合の塗膜の硬化性が低下し、このため塗膜の物性も低下する。
【0054】
ここで、上記撹拌に使用される攪拌機としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、回転型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどがあげられる。
【0055】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の用途としては、塗料、接着剤、表面改質剤、有機及び/又は無機粉体のバインダー等が挙げられ、具体的には、ガラス繊維収束剤、感熱紙の表面コート剤、印刷インクのバインダー剤、鋼板用コート剤、繊維処理剤等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、周知一般に用いられる各種添加剤を用いてもよい。該添加剤としては、例えば、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、カップリング剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤等が挙げられる。
【0057】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の組成は、ウレタン樹脂100質量部、前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物1〜30質量部(好ましくは5〜15質量部)および水30〜900質量部(好ましくは80〜400質量部)を含む組成である。また、本発明の水系ウレタン樹脂組成物の望ましい組成は、ウレタン樹脂100質量部、前記ビスフェノール系ポリエーテル化合物1〜30質量部(好ましくは5〜15質量部)、前記アルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物1〜30質量部および水30〜900質量部(好ましくは80〜400質量部)を含む組成である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例、比較例、製造例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例、比較例、製造例及び評価例によって何ら制限を受けるものではない。
【0059】
〔乳化剤製造例〕
ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物(以下、「AO−1」)として下記式2に示すBEX−1を72質量部(0.2モル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(以下、「AO−2」)として下記式3に示すPEO−PPO−1を2224質量部(0.4モル)及びポリイソシアネート化合物(以下、「NCO」)としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネートを105質量部(0.4モル)混合し、さらに触媒としてアデカスタブBT−11((株)ADEKA製:ジブチル錫ジラウレート)2.4g(0.1質量%)を加え、80℃で2時間反応させて乳化剤SA−1を製造した。
【0060】
(式2)

BEX−1 : A=C,m+n=3
BEX−2 : A=C,m+n=12
BPX−1 : A=C,m+n=6
【0061】
(式3)

PEO−PPO−1 : a+c=100、b=20
PEO−PPO−2 : a+c=240、b=20
PEO−PPO−3 : a+c=200、b=1
PEO−PPO−4 : a+c=170、b=30
【0062】
乳化剤SA−1と同様に、下記表1の配合比で、乳化剤SA−2〜SA−8を製造した。また、表1には比較例で用いた乳化剤も併せて記す。なお、下記表1に示すBPEXは下記式4に示すものである。
【0063】
(式4)

BPEX : p+s=100、q+r=8
【0064】
【表1】

【0065】
表1中、H12MDIは、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、TDIは、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート混合物を示す。
【0066】
〔実施例1−1〕
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリオール成分として平均分子量1000の1,6ヘキサンジオール+イソフタル酸系(以下、「1,6−HD+iPA系」)ポリエステルポリオール((株)ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108)1000g(1.0モル)、ポリイソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート257g(0.98モル)、メチルエチルケトン648gを混合し、80〜90℃でNCO含有量がなくなるまで3時間反応させた後、乳化剤SA−1成分126g(ウレタン樹脂に対し10質量%量)を添加しウレタンプレポリマー成分を得た。
【0067】
<ポリウレタン樹脂エマルションの調製>
50℃に設定した上記ウレタンプレポリマー成分1000g中に30℃の脱イオン水557gを攪拌混合しながら15分かけて加え、30〜40℃で30分間熟成させた後、40〜45℃/8kPaにて3〜4時間脱溶剤を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて下記試験を行った。それらの結果を下記表2に示す。
【0068】
〔保存安定性〕
水分散物を試験管中に深さ30cmとなるように入れ、室温で1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月間放置した後、樹脂相と水相との分離状態を下記基準により4段階で評価した。
1 : 分離が全く見られない。
2 : 僅かに分離が見られる。
3 : 分離が見られる。
4 : 完全に分離している。
【0069】
〔平均粒径〕
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した(単位μm)。
【0070】
〔分散性〕
ウレタンプレポリマー成分の水への分散性について下記基準により3段階で評価した。
○ : 分散性良好
△ : 分散性悪いが分散可能
× : 全く分散せず
【0071】
〔実施例1−2〜1−11〕
下記の表2記載に対応する乳化剤成分を換えた以外は、上記実施例1−1と同様の配合、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて上記試験を行った。それらの結果を下記表2にあわせて示す。
【0072】
【表2】

*乳化剤量:表中数値は、ウレタン樹脂100質量部に対する質量部を表す。
【0073】
〔比較例1−1〜1−7〕
下記表3記載に対応する乳化剤成分を換えた以外は、上記実施例1−1と同様の配合、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて上記試験を行った。それらの結果を下記表3に併せて示す。
【0074】
【表3】

【0075】
〔実施例2−1〜2−11〕
下記表4に記載のポリオール成分を換えた以外は、前記実施例1−1と同様の配合(NCO基/OH基比=0.98及び固形分割合)、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表4にあわせて示す。
【0076】
【表4】

*D/K mol比:0.6/0.4
【0077】
表4中のポリオール化合物は以下の通りである。
ポリオールA;1,6−HD+AA系ポリエステルポリオール:Mw1000((株)ADEKA製、製品名アデカニューエースY6−10)、ポリオールB;MPD+AA系ポリエステルポリオール((株)クラレ製、製品名クラポールP−1010)、ポリオールC;MPD+iPA系ポリエステルポリオール:Mw1000((株)クラレ製、製品名クラポールP−1020)、ポリオールD;DEG+iPA系ポリエステルポリオール:MW1000(三菱化学(株)製、製品名HA−1000)、ポリオールE;1,6−HD系ポリカーボネートジオール:Mw1000((株)UBE製、製品名UH−100)、ポリオールF;PTEMG系ポリエーテルポリオール、MW1000(保土ヶ谷化学(株)製、製品名PTG−1000)、ポリオールG;BP−A系ポリエーテルポリオール:Mw1000((株)ADEKA製、製品名アデカポリエーテルBPX−1000)、ポリオールH:ポリシロキサン系ポリオール:Mw1000(信越化学(株)製、製品名X−22−160AS)、ポリオールI;PG系ポリエーテルポリオール:Mw400((株)ADEKA製、製品名アデカポリエーテルP−400)、ポリオールJ;MPD+AA:Mw5000((株)クラレ製、製品名クラポールP−5010)、ポリオールK:EG(1,6HD:1,6ヘキサンジオール、AA:アジピン酸、i−PA:イソフタル酸、MPD:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、DEG:ジエチレングリコール、PTMEG:ポリテトラメチレングリコール、BP−A:ビスフェノールA、PG:プロピレングリコール、EG:エチレングリコール)
【0078】
〔実施例3−1〜3−4〕
下記表5に記載のイソシアネート成分を換えた以外は、前記実施例1−1と同様の配合(NCO基/OH基比=0.98及び固形分割合)、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表5に併せて示す。
【0079】
【表5】

【0080】
表5中のイソシアネート化合物は、以下の通りである。
IPDI:イソホロンジイソシアネート、TDI:2,4−/2,6− シアネート混合物、XDI:メタキシレンジイソシアネート、HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
12MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
【0081】
〔実施例4−1〕
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリオール成分として平均分子量1000の1,6−HD+iPAポリエステルポリオール((株) ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108)1000g(1.0モル)、ポリイソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート393g(1.5モル)、メチルエチルケトン784gを混合し、80〜90℃で理論NCO含有量に達するまで3時間反応させた後、乳化剤SA−1成分139g(ウレタン樹脂に対し10質量%量)を添加しウレタンプレポリマー成分を得た。
【0082】
<ポリウレタン樹脂エマルションの調製>
50℃に設定した上記ウレタンプレポリマー成分1000g中に30℃の脱イオン水541gを攪拌混合しながら15分かけて加え、30〜40℃で30分間熟成させ、さらに鎖伸長成分エチレンジアミン及びアジピン酸ジヒドラジド(プレポリマー残存イソシアネート基に対し、0.40/0.50モル)を反応させた後、40〜45℃/8kPaにて3〜4時間脱溶剤を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0083】
〔実施例4−2〕
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリオール成分として平均分子量1000の1,6−HD+iPA系ポリエステルポリオール((株) ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108)1000g(1.0モル)、ポリイソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート590g(2.25モル)、親水基成分としてジメチロールプロピオン酸(DMPA)67g(0.5モル)及びメチルエチルケトン932gを混合し、80〜90℃で理論NCO含有量に達するまで3時間反応させた後、乳化剤SA−1成分166g(ウレタン樹脂に対し10質量%量)を添加しウレタンプレポリマー成分を得た。
【0084】
<ポリウレタン樹脂エマルションの調製>
50℃に設定した上記ウレタンプレポリマー成分1000g中に30℃の脱イオン水541gを攪拌混合しながら15分かけて加え、30〜40℃で30分間熟成させ、さらに鎖伸長成分エチレンジアミン及びアジピン酸ジヒドラジド(プレポリマー残存イソシアネート基に対し、0.40/0.50モル)を反応させた後、40〜45℃/8kPaにて3〜4時間脱溶剤を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0085】
〔実施例4−3〕
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリオール成分として平均分子量1000の1,6−HD+iPA系ポリエステルポリオール((株) ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108)1000g(1.0モル)、ポリイソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート231g(0.88モル)、親水基成分としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)1モルに対し平均分子量1000の末端メトキシ基ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製、製品名メトキシPEG−1000)を1モル反応させたジイソシアネート化合物(以下NPEGと記す)155g(0.1モル)、メチルエチルケトン714gを混合し、80〜90℃でNCO含有量がなくなるまで3時間反応させた後、乳化剤SA−1成分139g(ウレタン樹脂に対し10質量%量)を添加しウレタンプレポリマー成分を得た。
【0086】
<ポリウレタン樹脂エマルションの調製>
50℃に設定した上記ウレタンプレポリマー成分1000g中に30℃の脱イオン水557gを攪拌混合しながら15分かけて加え、30〜40℃で30分間熟成させた後、40〜45℃/8kPaにて3〜4時間脱溶剤を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて上記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0087】
〔比較例4−1〕
乳化剤成分を乳化剤SA−9に換えた以外は、上記〔実施例4−2〕と同様の配合、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0088】
〔実施例5−1〕
<ウレタンプレポリマーの合成>
ポリオール成分として平均分子量1000の1,6−HD+iPA系ポリエステルポリオール((株) ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108)700g(0.7モル)、架橋剤成分としてメラミン38g(0.3モル)、ポリイソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート296g(1.13モル)、メチルエチルケトン533gを混合し、80〜90℃でNCO含有量がなくなるまで3時間反応させた後、乳化剤SA−1成分103g(ウレタン樹脂に対し10質量%量)を添加しウレタンプレポリマー成分を得た。
【0089】
<ポリウレタン樹脂エマルションの調製>
50℃に設定した上記ウレタンプレポリマー成分1000g中に30℃の脱イオン水454gを攪拌混合しながら15分かけて加え、30〜40℃で30分間熟成させた後、40〜45℃/8kPaにて3〜4時間脱溶剤を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0090】
〔実施例5−2〕
架橋剤成分をトリメチロールプロパン(以下TMPと記す)に換えた以外は、上記〔実施例5−1〕と同様の配合、方法により水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて前記試験を行った。それらの結果を下記表6に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6中鎖伸長剤成分は、EDA:エチレンジアミン、ADH:アジピン酸ジヒドラジドを示す。
【0093】
表2の結果より、従来汎用の乳化剤を用いた系(比較例1−1〜1−7)では、すべて保存安定性が不十分であるのに対し、本発明の特定の乳化剤化合物は安定性に優れる。また、本発明の乳化剤は、種々のポリオール成分(表4:実施例2−1〜2−11)、イソシアネート成分(表5:実施例3−1〜3−4)、鎖伸長剤使用系(表6:実施例4−1)、親水基導入構造(表6:実施例4−2、4−3)、内部架橋成分の導入(表6:実施例5−1、5−2)においても、保存安定性に優れ、様々なウレタン構造において効果を発揮する。
【0094】
上記結果から明らかなように、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れ、塗料、接着剤、繊維加工剤、繊維集束剤などの広範囲の用途に有用に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン樹脂100質量部に、(B)(b−1)下記一般式(1)で表されるビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物および(b−2)ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダムポリマーを(b−3)ポリイソシアネート化合物で縮合したビスフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種1〜30質量部と、水30〜900質量部と、を配合してなることを特徴とする水系ポリウレタン樹脂組成物。

(式中、R及びRは各々独立に水素原子またはアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(b−1)成分がアルキレンオキシド1〜80モルの付加物である請求項1記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b−1)成分におけるアルキレンオキシドが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b−2)成分が、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコールおよびアルキルフェノールからなる群から選ばれる一種のアルキレンオキシド付加物または該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるアルコール系ポリエーテル化合物またはフェノール系ポリエーテル化合物の少なくとも一種を(A)ウレタン樹脂100質量部に対し1〜30質量部併用してなる請求項1〜4のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記アルコール系ポリエーテル化合物または前記フェノール系ポリエーテル化合物が、ポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物または該付加物をポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物からなるポリエーテル化合物である請求項5記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)ウレタン樹脂が、(a−1)ジイソシアネート化合物を必須成分とするポリイソシアネート成分と(a−2)ジオール化合物を必須成分とするポリオール成分から得られるものである請求項1〜6いずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−255196(P2008−255196A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97786(P2007−97786)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】