説明

水系樹脂エマルション

【目的】比較的低い硬化温度で耐熱性に優れた樹脂を形成させることができ、熱可塑性樹脂の改質剤として用いることができる、水系樹脂エマルションを提供する。
【構成】メチルエチルケトン150gにビス[4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )フェニル]メタン72.5gと、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン72.5gとを溶解した樹脂溶液を用意する。容量1l のホモミキサーに375ccの水を入れ、撹拌しながらポリビニルアルコール15g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5gを順次加えて溶解し、さらに撹拌しながら上記樹脂溶液を加え、均一に撹拌した後、加圧式ホモジナイザーに移して乳化を行なう。その後、加温下で減圧してメチルエチルケトンを留去させ、水系樹脂エマルションを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とを水に分散した水系樹脂エマルション、及びそれを用いた熱可塑性樹脂改質剤に関する。本発明の水系樹脂エマルションは、低温で硬化させることができるため、熱可塑性樹脂の改質剤に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料や接着剤等の分野において、作業時における樹脂の流動性をよくするために、樹脂を有機溶剤に溶解させて使用することが行われてきた。しかし、近年、大気や地下水等の環境に及ぼす有機溶剤の影響が問題となり、樹脂を水系エマルションとすることにより、有機溶媒を用いないで樹脂の流動性を高めることが行われている。
【0003】
現在までに、様々な水系樹脂エマルションが開発されており、優れた耐熱性を特性とするイミド系樹脂に関しては、アルケニル置換ナジイミドを用いた水系樹脂エマルションが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−120025号公報
【0004】
この水系樹脂エマルションは、水を除去した後に加熱すると、アルケニル置換ナジイミドが硬化してポリイミド樹脂となる。このため、耐熱性の優れた塗料、コーティング剤、接着剤等として有用である。また、この水系樹脂エマルションは、保存安定性がよく、アルケニル置換ナジイミドは高濃度に含有させても粘度が低いため、塗料やコーティング剤として使用した場合の作業性にも優れている。
【0005】
一方、アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とを混合した熱硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献2〜7)。
【特許文献2】特開平6−100633号公報
【特許文献3】特開平7−133393号公報
【特許文献4】特開平7−206991号公報
【特許文献5】特開平7−224121号公報
【特許文献6】特開平7−258353号公報
【特許文献7】特開平7−330872号公報
【0006】
これらの熱硬化性樹脂組成物は、アルケニル置換ナジイミド単独の樹脂に比べて、比較的低い温度で、短時間に硬化させることができる。また、アルケニル置換ナジイミドはマレイミド化合物との相溶性もよいため、加熱処理によって均質な硬化物とすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、上記特許文献1に記載のアルケニル置換ナジイミドを水に分散させた水系樹脂エマルションは、耐熱性の塗料等として有用であり、保存安定性及び流動性に優れるため、取扱も容易であるという利点はある。しかし、アルケニル置換ナジイミドを硬化させるためには、一般に200°C以上という高い温度が必要であるため、この水系樹脂エマルションを塗料やコーティング剤として用いる場合、被処理物の材料に、ある程度の耐熱性が要求されるという問題があった。また、硬化温度が高いという問題から、ポリ乳酸や飽和ポリエステル等、耐熱性に劣る他の熱可塑性樹脂の改質剤として用いるということもされていなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであり、比較的低い硬化温度で耐熱性に優れた樹脂硬化物を形成させることができ、さらに、耐熱性に劣る他の熱可塑性樹脂の改質剤として用いることができる、水系樹脂エマルションを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記課題を解決するために、200℃未満という比較的低い温度で耐熱性に優れた樹脂を形成させることができる、アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とを混合した熱硬化性樹脂組成物をエマルションとすることを考え、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の水系樹脂エマルションは、アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とが保護コロイド及び/又は界面活性剤によって水に分散されていることを特徴とする。
【0011】
発明者らの試験結果によれば、本発明の水系樹脂エマルションは、アルケニル置換ナジイミドのみを分散させた水系樹脂エマルションに比べて、より低い温度で短時間に硬化させることができる。また、加熱によって得られる樹脂硬化物は、
アルケニル置換ナジイミドのみを分散させた水系樹脂エマルションから得られた樹脂硬化物と同様に、優れた耐熱性及び優れた機械的特性を有する。
【0012】
本発明におけるアルケニル置換ナジイミドとは、下記一般式で表される化合物をいう。
【化1】

ここで、R1、R2はそれぞれ独立に選ばれた水素またはメチル基、nは1〜2の整数を表し、かつ、n=1の時、R3はC1〜C12のアルキル基、C3〜C6のアルケニル基、C5〜C8のシクロアルキル基、C6〜C12の一価の芳香族基、ベンジル基、これらの基の1〜3個の水素を水酸基で置換した基または−{(Cq2qO)t(Cr2rO)us2s+1}(ただしq、r、sはそれぞれ独立に選ばれた2〜6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数)で表されるポリオキシアルキル基もしくは−C64−T−C65{ただしTは−CH2−、−C(CH32−、−CO−、−O−、−S−、−SO2−}で表される基もしくはこれらの基の1〜3個の水素を水酸基で置換した基であり、n=2のとき、R3は−Cp2p−(ただしpは2〜20の整数)で表されるアルキレン基、C5〜C8のシクロアルキレン基、−{(Cq2qO)t(Cr2rO)us2s}−(ただしq、r、sはそれぞれ独立に選ばれた2〜6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数)で表されるポリオキシアルキレン基、C6〜C12の二価の芳香族基、−C64−T−C64−{ただしTは−CH2−、−C(CH32−、−CO−、−O−、−OC64C(CH3)264O−、−S−、−SO2−}で表される基またはこれらの基の1〜3個の水素を水酸基で置換した基である。
【0013】
例えば、特開昭59−80662号公報、特開昭60−178862号公報、特開昭61−18761号公報、特開昭61−197556号公報、特開昭63−170358号公報 、特開平7−53516号公報、特開平7−206991号公報公報及び特開平8−277265号公報に記載されている様々なアルケニル置換ナジイミド を用いることができる。具体的には、N−メチル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′−ヒドロキシエチル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′−ヒドロキシエチル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′−ヒドロキシエチル)−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′,2′−ジメチル−3′−ヒドロキシプロピル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′,2′−ジメチル−3′−ヒドロキシプロピル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′,3′−ジヒドロキシプロピル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2′,3′−ジヒドロキシプロピル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3′−ヒドロキシ−1′−プロペニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4′−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4′−ヒドロキシフェニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4′−ヒドロキシフェニル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4′−ヒドロキシフェニル)−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4′−ヒドロキシフェニル)−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3′−ヒドロキシフェニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3′−ヒドロキシフェニル)−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−ヒドロキシベンジル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2′−(2″−ヒドロキシエトキシ)エチル}−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2′−(2″−ヒドロキシエトキシ)エチル}−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2′−(2″−ヒドロキシエトキシ)エチル}−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2′−(2″−ヒドロキシエトキシ)エチル}−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2′−{2″−(2″′−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2′−{2″−(2″′−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2′−{2″−(2″′−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4′−(4″−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4′−(4″−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4′−(4″−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N,N′−エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−エチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−エチレン−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−ヘキサメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−ドデカメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−ドデカメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−シクロヘキシレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−シクロヘキシレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、1,2−ビス{3′−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、1,2−ビス{3′−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、1,2−ビス{3′−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、ビス〔2′−{3″−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エチル〕エーテル、ビス〔2′−{3″−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エチル〕エーテル、1,4−ビス{3′−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}ブタン、1,4−ビス{3′−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}ブタン、N,N′−p−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−p−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−m−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N′−m−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、2,2−ビス〔4′−{4″−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4′−{4″−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4′−{4″−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、N,N′−2,5−ジメチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )、N,N′−2,6−ジメチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )、N,N′−3,8−ジメチレン−トリシクロ[5.2.1.0]デカン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )等があげられるが、これらに限定されることはない。このような構造のアルケニル置換ナジイミドは単独で用いてもよいし、それらの混合物又はそのオリゴマーとして用いてもよい。
【0014】
また、本発明で用いられるマレイミド化合物とは、例えば、脂肪族マレイミド 、芳香族マレイミド 、脂肪族シトラコンイミド 、芳香族シトラコンイミド およびビスマレイミド 類等が挙げられる。これらの内、脂肪族マレイミド としては、例えば、マレイミド 、N−メチルマレイミド 、N−エチルマレイミド 、N−プロピルマレイミド 、N−ラウリルマレイミド 、N−(2−ヒドロキシエチル)マレイミド 、N−シクロヘキシルマレイミド 等が挙げられ、芳香族マレイミド としては、例えば、N−フェニルマレイミド 、N−(2−メチルフェニル)マレイミド 、N−(3−エチルフェニル)マレイミド 、N−(4−メチルフェニル)マレイミド 、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド 、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド 、N−(2−クロロフェニル)マレイミド 、N−(4−クロロフェニル)マレイミド 、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド 、N−(4−ヒドロキシメチルフェニル)マレイミド 、N−(4−カルボキシフェニル)マレイミド 、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)マレイミド 、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド 、N−(4−フェノキシフェニル)マレイミド 等が挙げられ、脂肪族シトラコンイミド としては、例えば、シトラコンイミド 、N−メチルシトラコンイミド 、N−ブチルシトラコンイミド 、N−シクロヘキシルシトラコンイミド 等が挙げられ、芳香族シトラコンイミド としては、例えばN−フェニルシトラコンイミド 、N−(3−エチルフェニル)シトラコンイミド 、N−(2,6−ジメチルフェニル)シトラコンイミド 、N−(4−クロロフェニル)シトラコンイミド 、N−(4−ヒドロキシフェニル)シトラコンイミド 、N−(4−ベンジルフェニル)シトラコンイミド 等が挙げられる。さらにビスマレイミド 類としては、例えば、ビス(4−マレイミド フェニル)メタン、N,N´−フェニレルビスマレイミド 、ビス(4−マレイミド フェニル)エーテル、ビス(4−マレイミド フェニル)スルホン、ビス(4−マレイミド シクロヘキシル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、N,N´−トリレンビスマレイミド 、N,N´−ジメチルフェニレンビスマレイミド 、N,N´−キシリレンビスマレイミド 、ビス(4−マレイミド フェニル)シクロヘキサン、N,N´−ジクロロビフェニレンビスマレイミド 、ビス[4−(メチルマレイミド )フェニル]メタン、ビス[4−(メチルマレイミド )フェニル]エーテル、ビス[4−(メチルマレイミド )フェニル]スルホン、N,N´−エチレンビスマレイミド 、N,N´−ヘキサメチレンビスマレイミド 、N,N´−ヘキサメチレンビスメチルマレイミド 等が用いられるが、これらに限定されることはない。また、これらのマレイミド化合物は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよく、さらにオリゴマーとして用いても差し支えない。
【0015】
本発明で用いられる保護コロイドとしては、例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、でんぷん、寒天、ゼラチン、アルブミン、アラビアゴム、プロタルビン酸、リサルビン酸、アルギン酸、スチレン無水マレイン酸共重合体、マレイン化液状ポリブタジエン誘導体、ナフタレンスルホン酸縮合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル酸アミド、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0016】
また、界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等を用いることができる。
【0017】
陰イオン界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ロジン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩またはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0018】
また、陽イオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩酸塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩またはN,N´−ジアルキルモルホリニウム塩等が挙げられる。
【0019】
さらに、非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン化多価アルコール脂肪酸部分エステルまたは脂肪酸ジエタノールアミド、カルボキシベタイン、イミダゾリンまたはアミノ硫酸エステル等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる保護コロイドおよび界面活性剤はこれらに限定されるものではない。また、保護コロイドまたは界面活性剤をそれぞれ単独でまたは複数種組合せて用いてもよく、さらに、保護コロイドおよび界面活性剤を組合せて用いてもよい。
【0021】
また、(アルケニル置換ナジイミドの含有量):(マレイミド化合物の含有量)は、硬化温度の低温化と最終目的硬化物の物性等を考慮して、適宜決定されるが、耐熱性向上のためには質量比で98:2〜20:80、好ましくは90:10〜30:70の範囲が好適である。
【0022】
また、(アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物との合計):(保護コロイド及び/又は界面活性剤の合計)が質量比で99.9:0.1〜80:20であることが好ましい。
【0023】
請求項1乃至3の水系樹脂エマルションは、比較的低い温度で硬化させることができるため、耐熱性に劣る熱可塑性樹脂の改質剤として用いることができる。すなわち、上記水系樹脂エマルションと、熱可塑性樹脂のエマルション又は熱可塑性樹脂のディスパージョンとを混合し、水分を蒸発させ、さらに加熱することにより、熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させることができる。特に、耐熱性の向上が求められているポリ乳酸や飽和ポリエステルに適用すると好適である。この場合において、(請求項1乃至3の水系樹脂エマルションの樹脂成分含有量):(熱可塑性樹脂成分の含有量)は重量比で50:50〜1:99とされていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例1〜7を比較例1〜3と比較しつつ説明する。
【0025】
<水系樹脂エマルションの調製>
(実施例1)
メチルエチルケトン150gに対し、ビス[4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )フェニル]メタン(丸善石油化学(株)製、商品名BANI−M)72.5gと、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン72.5gとを溶解させた樹脂溶液を用意する。容量1l のホモミキサーに375ccの水を入れ、撹拌しながらポリビニルアルコール15g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5gを順次加えて溶解し、さらに撹拌しながら上記樹脂溶液を加える。そして、均一に撹拌された混合溶液を加圧式ホモジナイザーに移して乳化を行なう。その後、加温下で減圧してメチルエチルケトンを留去させ、実施例1の水系樹脂エマルションを得た。このエマルションの濃度は40質量%、平均粒径は0.5μmであり、3か月経過した後も沈澱を生じなかった。
【0026】
(実施例2)
容量1l のホモミキサーに375ccの水を入れ、ロジン酸カリウム塩14g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル11g、N,N´−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )(丸善石油化学(株)製、商品名BANI−X)180g、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン45g及びトルエン150gを順次加え、70°Cに加熱して均一に撹拌する。この混合液を加圧式ホモジナイザーに移して乳化を行った後、さらに加温下で減圧しトルエンを留去させ、実施例2の水系樹脂エマルションを得た。このエマルションの濃度は40質量%、平均粒径は1.0μmであり、3か月経過した後も沈澱を生じなかった。
【0027】
(実施例3)
容量1l のホモミキサーに375ccの水を入れて撹拌しながら、N,N´−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド )(丸善石油化学(株)製、商品名BANI−H)80g、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン120g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル45g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール30g及びメチルエチルケトン150gを加え、50°Cに加熱して均一に撹拌する。そして、この混合液を加圧式ホモジナイザーに移して乳化を行ない、さらに加温下で減圧してメチルエチルケトンを留去させ、実施例3の水系樹脂エマルションを得た。このエマルションの濃度は40質量%、平均粒径は0.3μmであり、3か月経過した後も沈澱を生じなかった。
【0028】
なお、実施例1〜3では、ホモミキサーによって乳化を行っているが、必要に応じ、高圧ホモジナイザーを用いてさらに微粒子化することも可能である。また、ホモミキサーや高圧ホモジナイザー等の強制的な機械乳化法によらず、反転乳化法、転相温度乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法などの化学的乳化方法を用いることも可能である。
【0029】
<熱可塑性樹脂の改質>
(実施例4)
レゼムES-1(中京油脂(株)製 線状飽和ポリエステルエマルション、不揮発分30質量%、ポリエステル:分子量15000〜20000、軟化点163°C)75重量部に、実施例1の水系樹脂エマルション25重量部を混合したものを接着剤とする。この接着剤を基材(アルミ箔20cm×2cm)に浸漬塗布(2cm×2cm)し、室温乾燥後、塗布部分を2枚に重ね合わせ、180°C×1分、1kgf/cm2にて熱プレス処理する。こうして貼り合わせた圧着処理物の片側に100gの重りをつけ、180°Cの恒温器内に吊るし、保持力の試験を行った。その結果、60分経過しても剥がれ落ちることなく、良好な耐熱接着性を示した。
【0030】
(比較例1)
接着剤としてレゼムES-1のみを用い、他の条件は実施例4と同様として圧着処理物の保持力の試験を行った。その結果、10分経過後、圧着面が剥がれ基材が落下した。
【0031】
実施例4と比較例1との比較から、実施例1の水系樹脂エマルションを線状飽和ポリエステルエマルションに混合することにより、線状飽和ポリエステルエマルション硬化物の耐熱性が飛躍的に向上することが分かった。
【0032】
(実施例5)
レゼムPLA-1(中京油脂(株)製 ポリ乳酸エマルション、不揮発分35質量%、ポリ乳酸:融点150°C、結晶化温度105°C)70重量部に、実施例1の水系樹脂エマルション30重量部を混合したものを接着剤とする。この接着剤を基材(アルミ箔20cm×2cm)に浸漬塗布(2cm×2cm)し、室温乾燥後、塗布部分を2枚に重ね合わせ、180°C×1分、1kgf/cm2にて熱プレス処理する。こうして貼り合わせた圧着処理物の片側に100gの重りをつけ、130°Cの恒温器内に吊るし、保持力の試験を行った。その結果、60分経過しても剥がれ落ちることなく、良好な耐熱接着性を示した。
【0033】
(比較例2)
接着剤としてレゼムPLA-1のみを用い、他の条件は実施例5と同様として圧着処理物の保持力の試験を行った。その結果、10分経過後、圧着面が剥がれ基材が落下した。
【0034】
実施例5と比較例2との比較から、実施例1の水系樹脂エマルションをポリ乳酸エマルションに混合することにより、ポリ乳酸エマルション硬化物の耐熱性が飛躍的に向上することが分かった。
【0035】
(実施例6)
おがくず28gにレゼムPLA-1(中京油脂(株)製 ポリ乳酸エマルション、不揮発分35質量%、ポリ乳酸:融点150°C、結晶化温度105°C)24gと、実施例1の水系樹脂エマルション6.3gとを加え、よく混練した後、80°Cにて水分を除去する。そして、150mm×150mmの枠を用いて180°C×2分、10kgf/cm2にて熱プレス処理を行いボード(厚さ3.5mm)を作成する。こうして得られたボードを100mm×50mmに切断し、ボードの中央に500gの錘を載せ、120°C×1時間静置させた。その結果、ボードの形状に変化は認められず、良好な耐熱性を示した。
【0036】
(比較例3)
実施例6において、おがくず28gにレゼムPLA-1のみを34.3gのみを加えた以外は実施例6と同じ条件で実験を行った。その結果、静置後においてボードの変形が認められ、120°Cにおける耐熱性が実施例6に比べて劣っていた。
【0037】
(実施例7)
ケナフ繊維(繊維径約50〜500μm、繊維長約10〜200mm)14gにレゼムPLA-1(中京油脂(株)製 ポリ乳酸エマルション、不揮発分35質量%、ポリ乳酸:融点150°C、結晶化温度105°C)12gと、実施例1の水系樹脂エマルション3.2gとを加え、よく混練した後、80°Cにて水分除去する。そして、150mm×150mmの枠を用いて180°C×2分、10kgf/cm2にて熱プレス処理を行い、ボード(厚さ3.5mm)を作成する。こうして得られたボードを100mm×50mmに切断し、ボードの中央に500gの錘を載せ、120°C×1時間静置させた。その結果、ボードの形状に変化は認められず、良好な耐熱性を示した。
【0038】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、耐熱性に優れた接着剤や塗料として使用することができる。また、ポリ乳酸やポリエステル等の熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させるための改質剤として好適に用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物とが保護コロイド及び/又は界面活性剤によって水に分散されていることを特徴とする水系樹脂エマルション。
【請求項2】
(アルケニル置換ナジイミドの含有量):(マレイミド化合物の含有量)が質量比で98:2〜20:80であることを特徴とする請求1項記載の水系樹脂エマルション。
【請求項3】
(アルケニル置換ナジイミドとマレイミド化合物との合計):(保護コロイド及び/又は界面活性剤の合計)が質量比で99.9:0.1〜80:20であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系樹脂エマルション。
【請求項4】
請求項1乃至3の水系樹脂エマルションからなることを特徴とする熱可塑性樹脂改質剤。
【請求項5】
請求項1乃至3の水系樹脂エマルションと、熱可塑性樹脂のエマルション又は熱可塑性樹脂のディスパージョンとが混合されてなることを特徴とする水系樹脂エマルション。
【請求項6】
熱可塑性樹脂はポリ乳酸又は飽和ポリエステルであることを特徴とする請求項5記載の水系樹脂エマルション。
【請求項7】
(請求項1乃至3の水系樹脂エマルションの樹脂成分含有量):(熱可塑性樹脂成分の含有量)が質量比で50:50〜1:99であることを特徴とする請求項6記載の水系樹脂エマルション。

【公開番号】特開2006−124425(P2006−124425A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311108(P2004−311108)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(596000154)中京油脂株式会社 (13)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】