説明

水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法

【課題】大量の水素分子(水素ガス)を簡便な方法で製造する方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】水素原子を含む分子を捕捉する気体状分子吸着性材料2を内部に有する高真空容器1と、該気体状分子吸着性材料2にフェムト秒レーザービームを照射可能なように配置したフェムト秒レーザービーム照射装置4と、を含むことを特徴とする、水素ガス製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法に関し、特にフェムト秒レーザーを利用する水素ガス製造装置及び水素ガス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境調和技術の発展に伴い、CO排出量を削減するために、既存の燃料の代替燃料が研究されている。水素燃料は燃焼後に水しか排出しない理想的なクリーンエネルギー源であるが、その製造・貯蔵技術の実用化にはまだハードルが高い。水素ガス発生方法としては、電気化学反応や光触媒を用いた既存技術が有名だが、電気化学反応の場合には例えば特許文献1に示されているように、特殊な固体電解質材料および電極の配置方法を工夫する。光触媒を用いた既存技術では例えば特許文献2に示されているように、太陽光の波長分布に適した領域で活性な触媒を利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−241195号公報(図1、請求項4−7)
【特許文献2】特開2009−066529号公報(請求項4−6)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Kinoshita, E.Ito, M.Omori and S.Ueki,“Direct Observation of Femtosecond Pulse Buildup in a Self−Mode−Locked Laser Using an Intracavity Acoustooptic Modulator”, Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.40,pp6430−6434(2001).
【非特許文献2】M.Adachi, K.Yamane, R.Morita, M.Yamashita, “Sub−5−fs Pulse Compression of Laser Output Using Photonic Crystal Fiber with Short Zero−Dispersion Wavelength”, Jpn.J.Applied.Phys.,Vol.44,ppL1423−1425(2005).
【非特許文献3】S.Shimizu, J.Kou, S.Kawato, K.Shimizu, S.Sakabe, and N.Nakashima, “Coulomb explosion of benzene irradiated by an intense femto second laser pulse”, Chem.Phys.Lett.,Vol.317,pp609−614(2000).
【非特許文献4】Y.Maniwa, Y.Kumazawa, Y.Saito, H.Tou, H.Kataura, H.Ishii, S.Suzuki, Y.Achiba, A.Fujiwara, and H.Suematsu, “Anomaly of X−ray Diffraction Profile in Single−Walled Carbon Nanotubes”, Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38,ppL668−670(1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された水素ガス装置には以下のような問題がある。電気化学反応による水素製造には、反応効率を最大にする温度が高温環境であることと、多量電流量の供給が必要になる。特許文献1に記載されている発明実施形態(段落0011)によると、設定温度が800℃から1000℃となっている。また、1.5Vの印加電圧下にて安定に1.2Aの電流を供給する電力が必要である(同じく段落0022)。この電力に加え高温状態を保つ電力もかんがみると、実用的な水素ガス供給量を達成するには巨大なエネルギー供給施設が必要である。
【0006】
次に特許文献2の光触媒を利用した水素ガス生成技術では、太陽光中の可視光波長で最も活性な光触媒を開発する必要がある。しかも、太陽光利用の水素製造効率を考えると、このような触媒を使用して大面積パネルを製造する必要がある。特許文献2の段落0012によれば、このような触媒材料に適した助触媒材料として白金など希少で高価な元素が必要になり、大面積パネル製造にはハードルがある。
【0007】
(発明の目的)
本発明の目的は、大量の水素分子(水素ガス)を簡便な方法で製造する方法及び製造装置を提供することにある。この製造方法は、特殊な原料物質、および反応に必要な高価な材料を含む触媒を必要としない。分子構造中に水素原子が含まれるガスを例えば多孔質材料等の気体状分子吸着性材料に濃縮し、それに高強度のレーザーパルスを照射することで、多量の水素ガスを短時間で発生させる。水素ガス製造のための原料はありふれたガス種でよいことと、特殊な触媒を用いない利点をいかし、環境調和性をもった水素ガス製造方法を供給し、創エネルギー産業へ貢献することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の視点において、本発明に係る水素ガス製造装置は、水素原子を含む分子を捕捉する気体状分子吸着性材料を内部に有する高真空容器と、該気体状分子吸着性材料にフェムト秒レーザービームを照射可能なように配置したフェムト秒レーザービーム照射装置と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第2の視点において、本発明に係る水素ガス製造方法は、水素原子を含む分子を気体状分子吸着性材料に捕捉させる工程と、該分子を捕捉した該気体状分子吸着性材料に、低温かつ真空条件下においてフェムト秒レーザービームを照射する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の原理は、水素原子を含む分子から、そのほかのいかなる化学物質も用いずに水素原子だけを解離させ、解離した水素原子が自発的に水素分子化したものを、真空チャンバー中にて吸気収集するものである。このように、水素原子を含む分子から水素だけを取り出すには、好ましくは電場強度が10V/Å程度の強度の強い光を、好ましくはパルス幅が10fs以下の非常に短いパルスとして照射することが有効である。
【0011】
レーザー光を集光して高輝度のパルスにすることは非特許文献1および非特許文献2に記載されており、とくに非特許文献2では、パルス幅が5fs以下と著しく短くなっている。このように圧縮されたパルス光の電場強度は10V/Åを優に超えることが知られている。
【発明の効果】
【0012】
第1の効果は、フェムト秒レーザー(特に図1(b)にあるような短いパルスが好ましい)照射を利用することで、分子によらず、構成要素に水素原子を持つものであれば、何からでも水素ガス取り出しの原料ガスとできることである。これにより、製造者の入手可能性、利便性に即したガスを自由に選ぶことが出来る。
【0013】
第2の効果は、太陽光を利用する場合と異なり、希少な元素から構成される触媒物質を利用することなく、分子から水素ガスを取り出すことが出来ることである。
【0014】
第3の効果は、気体状分子吸着性材料に分子を吸着させることで、レーザー光の照射断面積を向上させることができることである。これにより、ガス相に直接レーザー光を当てるよりも高密度の水素ガス発生が可能で、それを引き続き貯蔵するために必要な水素分圧を高く出来ることである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水素ガス製造に使用されるレーザーの一例である、波長800nmのフェムト秒レーザーの光電場(縦軸)の時間(横軸)変化を示す。(a)はパルス半値幅が50fsの場合であり、(b)はパルス半値幅が2fsの場合である。いずれも電場強度は1に規格化して表現されており、実際の利用においては、(b)のパルス波形の場合、10V/Åのオーダーの電場強度となる。点線はガウス型関数の形状を示す。
【図2】水素を含む分子がフェムト秒レーザーを浴びた後、高速で水素を吐き出す様子を塩化水素分子の例で示したシミュレーション結果である。
【図3】本発明に使用する分子吸着に用いる多孔質材料に分子が吸着された場合の一例である。
【図4】本発明に使用する分子吸着に用いる管状構造材料に分子が吸着された場合の一例である。
【図5】本発明に使用する分子吸着に用いる多層構造材料に分子が吸着された場合の一例である。矢印のAとBはフェムト秒レーザー光を入射する方向。高密度水素発生には、光が浸透しやすい方向Bが望ましい。
【図6】本発明の水素発生装置の一例を示す全体図である
【図7】本発明の一例の水素発生装置を用いて水素発生をさせる1つの工程である。
【図8】本発明の一例の水素発生装置を用いて水素発生をさせる次の工程である。
【図9】本発明の一例の水素発生装置を用いて水素発生をさせるその次の工程である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の視点において、前記フェムト秒レーザービーム照射装置は、パルス幅が10fs以下に圧縮され、電場強度が10V/Åのオーダーであり、電場振幅が非対称であるパルス状レーザーを照射可能であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記気体状分子吸着性材料は、所定の条件で気体状である物質を吸着する性質を有する、多孔質材料、管状構造を有する材料、及び層状構造を有する材料のいずれか1以上であることが好ましい。
【0018】
前記多孔質材料は、ゼオライトであることが好ましい。
【0019】
前記管状構造を有する材料は、管壁の厚さが25nm以下である、単層又は多層のカーボンナノチューブ又はボロンナイトライドチューブであることが好ましい。
【0020】
前記層状構造を有する材料は、7層以下の積層グラフェンであることが好ましい。
【0021】
前記分子を前記高真空容器内に供給するための吸着ガス導入配管(吸着ガス導入口)と、前記気体状分子吸着性材料を冷却するための冷却装置と、前記高真空容器に接続され、該高真空容器を真空引きするための真空装置をさらに含むことが好ましい。
【0022】
第2の視点において、前記フェムト秒レーザービームは、パルス幅が10fs以下に圧縮され、電場強度が10V/Åのオーダーであり、電場振幅が非対称であるパルス状レーザービームであることが好ましい。
【0023】
前記気体状分子吸着性材料は、所定の条件で気体状である物質を吸着する性質を有する、多孔質材料、管状構造を有する材料、及び層状構造を有する材料のいずれか1以上であることが好ましい。
【0024】
前記多孔質材料は、ゼオライトであることが好ましい。
【0025】
前記管状構造を有する材料は、管壁の厚さが25nm以下である、単層又は多層のカーボンナノチューブ又はボロンナイトライドチューブであることが好ましい。
【0026】
前記層状構造を有する材料は、7層以下の積層グラフェンであることが好ましい。
【0027】
前記低温かつ真空条件は、77°Kで10−9Torr以下であることが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明に要するフェムト秒レーザー光による電場の振動が、通常の光のそれとは著しく異なることがわかる。通常の光では、光による電場の振幅は正弦波のパターンをなすが、図1(横軸は時間である。縦軸は電場の強度を単位の無い数値に規格化して表示している。)の(a)を見るとわかるように、フェムト秒レーザーの電場の振動パターンは正弦波に点線で示すガウス型関数の振幅が重なったパターンをなしている。
【0029】
フェムト秒レーザーのパルス幅は非特許文献2によれば、著しく短くすることができる。図1(b)は図1(a)のパターンと同じ振動周期のパルス光をパルス半値幅2fsにまで圧縮した場合の、同じく規格化した電場振幅パターンを示す。パルス幅が著しく圧縮されているので、電場強度は10V/Åのオーダーにまで増大し、電場振幅も著しく非対称になっている。
【0030】
このように極端に圧縮された電界に物質がさらされると、通常の光励起選択則(これは、量子力学における摂動理論によって導かれる)では説明のできない、電子の集団励起とそれによる構造変化が生じる。非特許文献3ではベンゼン分子がこのような高輝度光でクーロン爆発する実験の例が紹介されている。
【0031】
分子がクーロン爆発する際には、原子核へ運動エネルギーが付与される。この場合、元素の質量に依存して運動エネルギーの分配に偏りが生じる。これは、熱的平衡状態のときに見られるエネルギー等分配則では説明できない非平衡状態である。
【0032】
図2にその一例を示す。図1(b)の波形のパルスを、塩化水素分子に照射した場合のダイナミクスが図2に示されている。この際の印加電場の最大値は13.6V/Åである。光の電場の分極方向は図の水平方向で、電場の振動が非対称なために、水素原子の軌跡は、斜めの方向になっている。この図の結果は、第一原理計算によるシミュレーションによるもので、水素原子に与えられた運動エネルギーはおよそ1eV、塩素原子へはその10分の1程度の運動エネルギーしか与えられていない。
【0033】
かかる例においては、分子を構成する原子の中に水素原子が含まれているので、パルス照射後の水素原子の放出が見られた。このような塩化水素の例にとどまらず、水素原子を含む全ての分子種において、水素原子と他の原子の質量比が異なるために、図1(b)のような波形のパルス光印加に際して、分子の分解を生じ、水素原子にのみ著しく大きな運動エネルギーが発生する。
【0034】
従って、分子種に関わらず、水素原子の放出という効果がもたらされる。本発明では、例えば多孔質材料のように、例えば室温前後で、気体状である分子を吸着する性質を有する材料を用いることにより、レーザーを照射する分子が狭い空間に高密度で閉じ込められた状態となっている。そのため、レーザーのエネルギー利用効率を高め、水素ガスの製造効率を高めることができる。
【0035】
図3には、気体状分子吸着性材料の一例である多孔質材料に、毛細管現象で捕捉された分子の模式図が示されている。レーザー照射に対して多孔質材料の光透過性が高い場合には、分子へ照射される光強度の減衰が少ない。従って、光の照射断面積が、同分子種の気体相と比較して格段に向上していることが分かる。このような多孔質材料として、例えばゼオライトが挙げられる。ゼオライトはさまざまな分子を吸着することで知られており、使用する分子に応じて種々のゼオライトが使用可能である。
【0036】
しかも、この実施例では、この多孔質材料を真空引きされたチャンバー内に置くので、発生した水素原子が他のガスと反応せず、水素原子同士が反応して水素分子になるという効果が得られる。
【0037】
図3の形状の多孔質材料は、図4のようなナノチューブ状材料(管状構造材料)でも良い。例えばカーボンナノチューブ又はボロンナイトライドチューブが適用可能である。図4のようなナノチューブ材料の両端を開口する技術はすでに非特許文献4の1ページ目の左の欄の下から3行目から書いてある通り、ナノチューブを空気中350度で20分間熱処理すればよい。ナノチューブの構造だが、単層(チューブの壁が原子一層分)の場合には、パルスレーザー光の浸透が十分であるが、3層以上になるとレーザー光が内部の分子に届かず、ナノチューブの壁を破壊し、炭素原子を放出するだけとなることには注意しなくてはいけない。このときのナノチューブの壁厚は単層、多層にかかわらず、25nm以下であることが好ましい。これ以上であると光が到達しないからである。
【0038】
あるいは図5のような数ナノからサブナノメートルの隙間を持った層状構造体物質の層間に分子を吸着できるような材料であれば、その材料へのパルスレーザー照射により、吸着された分子より水素原子を放出させることが可能であり、例えば炭素からなる積層グラフェンが適用可能である。この場合、層状物質の積層方向からのパルスレーザー照射が図5の矢印Aからの方向である場合には、層状物質の層数が十層未満の領域にしか光の電場が届かない。そのため、光到達深度の限界である25nm程度までの厚さ、具体的には積層グラフェンで7層程度までが好ましい。しかし、照射方向が図5の矢印Bからの方向である場合には、層内数マイクロメータまで光の電場が浸透するので、Bからの方向の入射が、水素ガス発生の高効率化のためには望ましい。
【0039】
(製法の説明)
次に、図6から図9を参照して本発明に係る水素ガス製造方法の1つの実施例を説明する。図6に示すように、高真空容器1内部に冷却基板3を設け、その冷却基板3の上に多孔質材料(気体状分子吸着性材料)2を配置する。その多孔質材料2に向けてレーザービームを照射できるように、フェムト秒レーザー照射装置4を配置する。高真空容器1には、吸着ガス導入口5及び排気口6も設けている。
【0040】
次に、図7に示すように、大気圧及び室温前後の条件において、吸着ガス導入口5より、水素原子を含む分子である吸着ガスを導入し、高真空容器1内の吸着ガスの分圧を上昇させる。すると、多孔質材料2に吸着していた既存のガス(窒素や酸素、二酸化炭素など大気中のガス)が排気口6から排気され、吸着ガスが多孔質材料内の空隙を満たす。分圧の高さと吸着が飽和する時間は、高真空容器1の形状により異なるが、分圧0.5気圧で3時間さらせば、多孔質材料の種類、高真空容器内の温度によらず、吸着飽和を完了する。なお、吸着ガスを導入して吸着させる温度及び圧力は、吸着ガスが気体状である温度及び圧力であれば特に制限されないが、標準状態、即ち大気圧、25℃(或いは室温)前後が作業上簡便で好ましいのはもちろんである。
【0041】
なお、水素原子を含む分子は、操作条件において気体状であるもの(完全に気化するものである必要はなく、ある程度の蒸気圧を有するものであればよい)であればなんでも適用可能である。したがって、容易に入手可能なガスで、吸着されやすく、水素原子を多く含む分子であればより好ましい。例えば図2の塩化水素以外に、水、アンモニア、炭化水素、特に低級鎖式アルカン等が考えられるが、それらに限定されるものではない。
【0042】
次に、冷却基板3の温度を下げて多孔質材料2を冷却する。基板に液体窒素を触れさせるなど、高真空容器1の外部に用意した液体窒素循環装置を利用して、冷却を行うことができるが、それは図では省略されている。温度が下がりきった時点で、図8に示すように容器内に残存する全ガスを排気口6から真空排気し10−Torrの真空度を達成する。なお、排気口6に接続された真空装置は図示していないが、市販の装置を適宜使用可能である。温度を下げているおかげで、高真空容器1内の真空度を上げても、多孔質材料2の空隙に吸着した分子が脱離して排気されることはない。
【0043】
冷却温度については、吸着時の温度以下であれば適用可能であるが、できるだけ低温としたほうが安定して水素ガスを製造できる。特に液体窒素で到達可能な77°K程度が実用上好ましい。また、高真空容器内の圧力については、10−9Torr以下にしないと、水素以外の残留ガスがあり、発生した水素と残留ガスの両方を収集してしまい、水素ガス回収効率的に好ましくない。
【0044】
最後に図9に示すように、多孔質材料2に向けて、フェムト秒レーザー照射装置4よりフェムト秒レーザーパルスを照射する。照射するパルス波形は図1(b)の波形である。図2の塩化水素分子の例と同様に、吸着分子は水素原子を吐き出すが、水素以外の原子への運動エネルギーは小さいので、水素原子だけが多孔質材料2から吐き出され高真空容器1内へ放出され排気口6から排気される。水素原子同士はすぐに結合するので、排気口6近くにて水素分子になり、排気口6に接続された図示しない排気装置により水素ガスを収集することが出来る。
【0045】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 高真空容器
2 多孔質材料
3 冷却基板
4 フェムト秒レーザー照射装置
5 吸着ガス導入口
6 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素原子を含む分子を捕捉する気体状分子吸着性材料を内部に有する高真空容器と、該気体状分子吸着性材料にフェムト秒レーザービームを照射可能なように配置したフェムト秒レーザービーム照射装置と、を含むことを特徴とする、水素ガス製造装置。
【請求項2】
前記フェムト秒レーザービーム照射装置は、パルス幅が10fs以下に圧縮され、電場強度が10V/Åのオーダーであり、電場振幅が非対称であるパルス状レーザーを照射可能であることを特徴とする、請求項1に記載の水素ガス製造装置。
【請求項3】
前記気体状分子吸着性材料は、所定の条件で気体状である物質を吸着する性質を有する、多孔質材料、管状構造を有する材料、及び層状構造を有する材料のいずれか1以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水素ガス製造装置。
【請求項4】
前記多孔質材料はゼオライトであるか、前記管状構造を有する材料は管壁の厚さが25nm以下である単層又は多層のカーボンナノチューブもしくはボロンナイトライドチューブであるか、又は前記層状構造を有する材料は7層以下の積層グラフェンであることを特徴とする、請求項3に記載の水素ガス製造装置。
【請求項5】
前記分子を前記高真空容器内に供給するための吸着ガス導入配管と、前記気体状分子吸着性材料を冷却するための冷却装置と、前記高真空容器に接続され、該高真空容器を真空引きするための真空装置をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の水素ガス製造装置。
【請求項6】
水素原子を含む分子を気体状分子吸着性材料に捕捉させる工程と、
該分子を捕捉した該気体状分子吸着性材料に、低温かつ真空条件下においてフェムト秒レーザービームを照射する工程と、
を含むことを特徴とする、水素ガス製造方法。
【請求項7】
前記フェムト秒レーザービームは、パルス幅が10fs以下に圧縮され、電場強度が10V/Åのオーダーであり、電場振幅が非対称であるパルス状レーザービームであることを特徴とする、請求項6に記載の水素ガス製造方法。
【請求項8】
前記気体状分子吸着性材料は、所定の条件で気体状である物質を吸着する性質を有する、多孔質材料、管状構造を有する材料、及び層状構造を有する材料のいずれか1以上であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の水素ガス製造方法。
【請求項9】
前記多孔質材料はゼオライトであるか、前記管状構造を有する材料は管壁の厚さが25nm以下である単層又は多層のカーボンナノチューブもしくはボロンナイトライドチューブであるか、又は前記層状構造を有する材料は7層以下の積層グラフェンであることを特徴とする、請求項8に記載の水素ガス製造方法。
【請求項10】
前記低温かつ真空条件は、77°Kで10−9Torr以下であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一に記載の水素ガス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12243(P2012−12243A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149216(P2010−149216)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】