説明

水素冷却装置及び水素冷却装置の冷却方法

【課題】汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを十分に冷却可能でかつ水素ガスが保有する熱を回収可能な水素冷却装置及び水素冷却装置の冷却方法を提供する。
【解決手段】本発明の水素冷却装置は、汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却装置であって、復水を冷却媒体とし水素ガスを冷却する第1水素冷却器2と、第1水素冷却器2で冷却された水素ガスをさらに冷却する、軸冷系統40の軸冷水を冷却媒体とする第2水素冷却器3とを備え、第1水素冷却器2に復水ポンプ22の出口部から復水を送り、水素ガスと熱交換した復水を脱塩装置23の入口部の復水系統20に戻し、必要に応じて第2水素冷却器3に冷却媒体として軸冷系統40の軸冷水を送り水素ガスをさらに冷却し、復水で水素ガスが保有する熱を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却装置及び水素冷却装置の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、発電所に備えられる発電機には冷却媒体に水素ガスが使用され、温度の上昇した水素ガスを冷却するため水素冷却器が使用される。水素冷却器は隔壁式熱交換器であり、冷却媒体として軸冷系統から軸冷水(冷却水)が送られる。軸冷系統は、所内冷却水系統又は所内冷却水供給システムとも呼ばれ、水素冷却器の他、励磁機、固定子冷却水装置、タービン油冷却器、ボイラ・タービン補機などに軸冷水を送る。以降、軸冷水を冷却水と記す場合もある。一般的な軸冷系統は、軸受冷却水ポンプ、軸受冷却水冷却器が組み込まれた軸冷水が循環する循環路を備え、軸受冷却水ポンプの吐出側から水素冷却器等に軸冷水を送り、温度の高くなった戻り軸冷水を軸受冷却水冷却器で冷却する。軸受冷却水冷却器の冷却媒体には海水が使用される。軸冷系統は、温度の高くなった戻り軸冷水の熱を有効に利用するため、復水熱交換器と接続し戻り軸冷水は復水と熱交換する。
【0003】
上記軸冷系統では、夏季に復水の温度が戻り軸冷水の温度を上回ることがある。このときには、戻り軸冷水は復水熱交換器をバイパスさせて運転される。このようなシステムは、戻り軸冷水の有する熱エネルギーを十分に有効利用しているとは言い難い。このような問題を解決するため戻り軸冷水を、常時復水の温度よりも高い系統、常時復水の温度よりも低い系統、外気温によって復水の温度に対し上下する系統に分類し、常時復水の温度よりも高い戻り冷却水系統は、復水熱交換器と接続し、常時復水の温度よりも低い戻り冷却水系統は、復水熱交換器をバイパスさせ、外気温によって復水の温度に対し上下する系統は、復水温度を下回るとき復水熱交換器をバイパスさせるシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。同様に上記問題を解決するため、温度の高い戻り軸冷水のみが復水熱交換器に送られるように制御されたバイパス通路が設けられた軸冷系統が提案されている(例えば特許文献2参照)。また軸冷系統から水素冷却器等に軸冷水を送り冷却するシステムでは、戻り軸冷水の保有する熱は、海水に奪われ無駄に放熱されるとし、復水で水素冷却器等を冷却する方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−240049号公報
【特許文献2】特開2008−261316号公報
【特許文献3】特開2004−36535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載のように復水を水素冷却器等の冷却媒体とし、水素ガス等と熱交換した復水を復水系統に戻す方法は、水素冷却器等を十分に冷却できるのであれば、水素ガス等が保有する熱の回収にもつながり好ましい方法と言える。特許文献3には、復水は、十分な冷却能力を有するので、水素冷却器等の冷却機能を損なうことはないとあるが、実際には復水の冷却能力は、外気温に大きく依存する。外気温の低いときには、復水を冷却媒体として使用しても水素冷却器等の性能を損なうことはないが、夏季等で外気温の高いときは、海水温度も上昇し、結果、復水温度も上昇するため必ずしも水素冷却器等を十分に冷却することができるとは言えない。軸冷系統から軸冷水が送られる冷却器等のうち、水素冷却器は負荷が大きいので、水素冷却器を適切に冷却し、かつ熱回収することは他の冷却器等を冷却し、かつ熱回収することに比べ効果が大きい。
【0006】
本発明の目的は、汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを十分に冷却可能でかつ水素ガスが保有する熱を回収可能な水素冷却装置、及び水素ガスを十分に冷却すると共に水素ガスが保有する熱を回収し、汽力発電プラントの運転に有効利用できる水素冷却装置の冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却装置であって、復水を冷却媒体とし水素ガスを冷却する第1水素冷却器と、前記第1水素冷却器で冷却された水素ガスをさらに冷却する、軸冷系統の軸冷水を冷却媒体とする第2水素冷却器と、を備えることを特徴とする水素冷却装置である。
【0008】
また本発明は、前記水素冷却装置の冷却方法であって、前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプを備え、復水を給水加熱器に送る復水系統と、軸受冷却水ポンプを通じて補機、冷却器に軸冷水を送り、温度の高くなった戻り軸冷水を軸受冷却水冷却器で冷却する、軸冷水を循環使用する軸冷系統と、を備え、前記第1水素冷却器に冷却媒体として前記復水ポンプの出口部から復水を送り、水素ガスと熱交換した復水を前記復水系統に戻し、前記第2水素冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の軸冷水を送り、水素ガスと熱交換した軸冷水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする水素冷却装置の冷却方法である。
【0009】
また本発明は、前記水素冷却装置の冷却方法において、前記復水系統は、前記復水ポンプの出口部に前記軸冷系統の温度の高くなった戻り軸冷水と復水とを熱交換可能な復水熱交換器を備え、戻り軸冷水で復水を加熱することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記水素冷却装置の冷却方法において、前記第1水素冷却器で冷却された水素ガスが規定温度であるときは、前記第2水素冷却器に冷却媒体を送らないことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却器を備える水素冷却装置の冷却方法であって、復水の温度に応じて復水に封水を添加し復水を所定温度まで低下させ、該復水を冷却媒体として前記水素冷却器に送り、水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すことを特徴とする水素冷却装置の冷却方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水素冷却装置は、復水を冷却媒体とし水素ガスを冷却する第1水素冷却器を備えるので、水素ガスと熱交換した復水を通じて水素ガスが保有する熱を回収することができる。さらに第1水素冷却器で冷却された水素ガスを冷却する、軸冷系統の軸冷水を冷却媒体とする第2水素冷却器を備えるので、外気温の影響で復水の温度が高く第1水素冷却器で水素ガスを十分に冷却できないときも、第2水素冷却器で水素ガスを十分に冷却することができる。
【0013】
本発明の水素冷却装置の冷却方法は、第1水素冷却器に冷却媒体として復水ポンプの出口部から復水を送り、水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すので復水系統の温度が上昇する。この結果、給水加熱器の負荷が低減し、汽力発電プラントのエネルギー効率が高まる。また第2水素冷却器に冷却媒体として送る軸冷系統の軸冷水は、夏季においても低い温度に調整されているので、夏季でも水素ガスを十分に冷却することができる。復水系統及び軸冷系統とも汽力発電プラントの標準的な設備であり、また本冷却方法における復水及び軸冷系統の軸冷水の使用方法も特殊なものではなく、本発明の水素冷却装置の冷却方法は、適用しやすい実用的な方法と言える。
【0014】
また本発明によれば復水系統は、復水ポンプの出口部に軸冷系統の温度の高くなった戻り軸冷水と復水とを熱交換可能な復水熱交換器を備えるので、戻り軸冷水の温度が復水の温度を上回るときは、戻り軸冷水で復水を加熱することができる。これにより水素ガスが保有する熱をより有効に利用することができる。
【0015】
また本発明によれば第1水素冷却器で冷却された水素ガスが規定温度であるときは、第2水素冷却器には冷却媒体を送らないので、軸受系統の負荷が低減し、軸受系統のランニングコストを低減できる。
【0016】
また本発明の水素冷却装置の冷却方法は、復水の温度に応じて復水に封水を添加し復水を所定温度まで低下させ、所定温度の復水を冷却媒体として水素冷却器に送り、水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すので、水素ガスを十分に冷却すると共に水素ガスが保有する熱を回収し汽力発電プラントの運転に有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態としての水素冷却装置の概略的構成を示す構成図である。
【図2】図1の水素冷却装置の冷却媒体の系統図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての水素冷却装置の冷却媒体の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態としての水素冷却装置1の概略的構成を示す構成図である。図2は、水素冷却装置1の冷却媒体の系統図である。
【0019】
水素冷却装置1は、汽力発電プラントに備えられる発電機15内に封入された水素ガスを冷却する装置であり、2つの水素冷却器を有する。第1水素冷却器2は、汽力発電プラントの復水系統20の復水を冷却媒体とし、発電機15内に封入された水素ガスを冷却する。一方、第2水素冷却器3は、汽力発電プラントの軸冷系統40の軸冷水(冷却水)を冷却媒体とし、第1水素冷却器2で冷却された水素ガスをさらに冷却する。第2水素冷却器3で冷却された水素ガスは、発電機15内に送出される。第1水素冷却器2及び第2水素冷却器3とも公知の隔壁式熱交換器であり、第1水素冷却器2と第2水素冷却器3とは、水素ガスが流通する水素ガス送出管4で結ばれている。
【0020】
第1水素冷却器2には、汽力発電プラントの復水系統20の復水が冷却媒体として送られる。汽力発電プラントの復水系統20は、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させ復水にする復水器21、復水を圧送する復水ポンプ22、水中の塩類を除去する脱塩装置23、復水昇圧ポンプ24、復水昇圧ポンプ24から送られる復水と軸冷系統40の軸冷水とを熱交換させ、軸冷水から熱回収する復水熱交換器25及びこれらを送水可能に結ぶ復水管26、27、28、29、30を含み構成され、復水を給水加熱器に送る。
【0021】
復水ポンプ22と脱塩装置23とを結ぶ復水管27の途中には、流量調整が可能な三方弁31が取付けられている。三方弁31の一方の出口部は、復水送水管32を通じて第1水素冷却器2の冷却媒体入口部と結ばれ、第1水素冷却器2の冷却媒体出口部は、復水返送管33を通じて脱塩装置23の入口部と接続する復水管27につながる。
【0022】
三方弁31の制御は、温度調節計5が行う。水素ガス送出管4には第1水素冷却器2出口部の水素温度を検出する温度検出器6が装着されており、温度調節計5は、第1水素冷却器2出口部の水素ガス温度が所定の温度となるように、三方弁31を介して第1水素冷却器2に送る復水の量を調整する。
【0023】
第2水素冷却器3には、汽力発電プラントの軸冷系統40の軸冷水が冷却媒体として送られる。汽力発電プラントの軸冷系統40は、軸受冷却水ポンプ41、軸受冷却水冷却器42及びこれらの間を結び軸冷水を循環させる管路を含み、循環路が形成され、冷却水は循環使用される。
【0024】
軸受冷却水ポンプ41から送出された戻り軸冷水は、送水管43を通じて軸受冷却水冷却器42に送られ、ここで冷却され温度を低下させた後、送水管44を通じてタービン油冷却器71に送られる。タービン油冷却器71で潤滑油を冷却し温度を上昇させた戻り軸冷水は、途中に三方弁46が設けられた返送管45を通じて、復水熱交換器25又は復水熱交換器25をバイパスするバイパス管47を通じて軸受冷却水ポンプ41に送られる。三方弁46は、流路切替器48の指令により戻り軸冷水を復水熱交換器25又はバイパス管47に送る。三方弁46の上流側の返送管45には戻り軸冷水温度を検出する温度検出器49が、復水系統10の復水管29には、復水温度を検出する温度検出器35が設けられ、流路切替器48は、この2つの温度を比較し、戻り軸冷水温度が復水温度を上回るときのみ復水熱交換器25に戻り軸冷水を送るように三方弁46に指令を送る。復水熱交換器25で復水と熱交換した戻り軸冷水は、返送管50を通じて軸受冷却水ポンプ41に送られる。軸受冷却水冷却器42には、冷却媒体として海水が使用され、軸冷水は、年間を通じて30℃程度に維持されている。
【0025】
また軸冷水は、送水管44に接続する送水管51を通じて給水ポンプ、通風機などのボイラ・タービン補機72に送られ、軸受部を冷却し温度を上昇させた戻り軸冷水は、返送管52を通じて返送管45に合流し、他の戻り軸冷水といっしょになる。なお、図示を省略したが、軸冷系統40の冷却水は、タービン油冷却器71と同様の要領で、図示を省略した交流励磁器冷却器、固定子冷却水装置、離相母線冷却器を冷却する。
【0026】
送水管44には、軸冷水を第2水素冷却器3に送る送水管53が設けられ、送水管53は第2水素冷却器3の冷却媒体入口部と接続する。第2水素冷却器3の冷却媒体出口部には、軸冷水を軸冷系統40に戻すための返送管54が接続し、返送管54は、返送管45に接続する。送水管53の途中には、流量調整弁55が取付けられている。
【0027】
流量調整弁55の制御は、温度調節計7が行う。第2水素冷却器3の出口部には水素ガス温度を検出する温度検出器8が装着されており、温度調節計7は、温度検出器8と接続すると共に、温度調節計5とも接続する。温度調節計5から送られる第1水素冷却器2出口部の水素ガス温度が規定温度まで冷却されていれば、さらに水素ガスを冷却する必要がないので、温度調節計7は、流量調整弁55を閉止させ、第2水素冷却器3には軸冷水を送らない。一方、温度調節計7は、温度調節計5から送られる第1水素冷却器2出口部の水素ガス温度が規定温度を上回るときは、第2水素冷却器3出口部の水素ガスが規定温度となるように、流量調整弁55を調整して第2水素冷却器3に送る軸冷水の量を調整する。ここで規定温度は、発電機15が要求する水素ガス温度である。
【0028】
上記のように構成される水素冷却装置1は、復水を冷却媒体とし水素ガスを冷却する第1水素冷却器2の他、第1水素冷却器2で冷却された水素ガスを冷却する、軸冷系統の軸冷水を冷却媒体とする第2水素冷却器3を備えるので、外気温の影響で復水の温度が高い場合でも水素ガスを十分に冷却することができる。水素冷却装置1は、温度の高い水素ガスを復水で冷却し、水素ガスと熱交換した復水を復水系統20に戻すので、水素ガスから十分に熱回収を行うことができる。また第2水素冷却器3は、復水で冷却され温度の低下した水素ガスを冷却するので負荷は小さい。また第1水素冷却器2で水素ガスが規定温度まで冷却されれば、第2水素冷却器3に冷却媒体は送らないので、軸受冷却水ポンプ41の吐出量が低下し、ランニングコストを低減できる。温度の異なる2つの冷却媒体を使用することで、効率的に水素ガスを冷却しかつ熱回収を行うことができる。
【0029】
復水系統20及び軸冷系統40とも汽力発電プラントの標準的な設備であり、本実施形態に示す第1水素冷却器2への復水及び第2水素冷却器3への軸冷水の供給方法も簡単であり適用しやすい実用的な方法と言える。また軸冷系統40の戻り軸冷水が復水の温度を上回るときは、復水熱交換器25を介して戻り軸冷水で復水を加熱することもできるので、汽力発電プラントのエネルギー効率をより高めることができる。なお、常時、軸冷系統40の戻り軸冷水の温度が復水の温度を下回るときは、復水熱交換器25を設ける必要はない。
【0030】
図3は、本発明の第2実施形態としての水素冷却装置11の冷却媒体の系統図である。第1実施形態に示す水素冷却装置1及び冷却媒体の系統と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
水素冷却装置11は、汽力発電プラントに備えられる発電機15内に封入された水素ガスを冷却する装置であり、1つの水素冷却器12を備える従来から使用されている水素冷却装置11である。この水素冷却器12も隔壁式熱交換器であり、冷却媒体に復水系統20の復水を使用する点では、第1実施形態に示す水素冷却装置1と共通する。第1実施形態に示す水素冷却装置1では、復水の温度が上昇し、復水のみでは水素ガスを十分に冷却することができない場合であっても、水素ガスを規定温度に冷却するために復水で冷却した水素ガスをさらに軸冷系統40の軸冷水で冷却するため2つの水素冷却器を備える。これに対し、本実施形態に示す水素冷却装置11では、水素冷却器12は1つであり、外気温が上昇した場合でも、復水のみで水素ガスを規定温度に冷却するために水素冷却器12に送る復水を冷却するシステムを採用する。
【0032】
汽力発電プラントは、復水器21に復水を供給し又は復水系統20の余剰の復水を貯留する復水タンク60を備える。復水タンク60に貯留される復水は、ボイラ給水ポンプ(図示を省略)の軸受の封水としても使用される。このため封水を供給する封水ポンプ61及び封水供給管62が設けられている。本実施形態では、この復水タンク60に貯留されている復水(封水)を利用して水素冷却器12に送る復水を冷却する。復水送水管32の途中には混合器36が設けられ、さらにこの混合器36に封水を供給する、封水供給管62と連絡する封水送水管63が設けられている。この封水送水管63には、流量調整弁64が設けられ、この流量調整弁64の制御は、流量調節計37が行う。混合器36出口部の復水送水管32には、復水の温度を検出する温度検出器38及び流量検出器39が装着されており、流量調節計37は、流量検出器39からの信号により復水送水管32に復水が流れていることを検知すると、混合器36出口部の復水温度が所定の温度となるように、流量調整弁64を介して混合器36に送る封水の量を調整する。復水送水管32に復水が送られていないときは、封水は供給しない。
【0033】
復水タンク60に貯留される復水は、復水器21に比べ温度が低いので、復水系統20から送られる復水に復水タンク60に貯留される復水を加えることで温度を低下させることができる。なお、汽力発電プラントが起動中は、封水ポンプ61からボイラ給水ポンプに封水は供給されないので、封水を復水系統20の復水の冷却に使用しても汽力発電プラントの運転に支障はない。
【0034】
上記のように第2実施形態に示す水素冷却装置11では、復水の温度に応じて復水に封水を添加し復水を所定の温度まで低下させ、所定温度の復水を冷却媒体として水素冷却器12に送るので、復水のみを冷却媒体としながら水素ガスを十分に冷却することができる。また水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すので水素ガスが保有する熱を回収し汽力発電プラントの運転に有効利用することができる。
【0035】
上記実施形態に示すように本発明に係る水素冷却装置及びその冷却方法は、復水を冷却媒体とし、水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すので水素ガスが保有する熱を回収することができる。また軸冷系統の軸冷水(冷却水)又は封水を使用し水素ガスを冷却可能に構成されているので、外気温の影響で復水系統の復水の温度が高い場合であっても水素ガスを十分に冷却することができる。また本発明に係る水素冷却装置への冷却媒体の供給は、汽力発電プラントの既設の設備を利用して行うことができるので、汽力発電プラントへの適用も容易である。なお、本発明に係る水素冷却装置及びその冷却方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。例えば、三方弁31は、復水送水管32に代え復水返送管33と接続するように設けてもよく、第2実施形態において、第1実施形態と同様に、復水熱交換器25を設け、戻り軸冷水と復水とを熱交換させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 水素冷却装置
2 第1水素冷却器
3 第2水素冷却器
4 水素送出管
5 温度調節計
6 温度検出器
7 温度調節計
8 温度検出器
11 水素冷却装置
12 水素冷却器
15 発電機
20 復水系統
21 復水器
22 復水ポンプ
25 復水熱交換器
31 三方弁
32 復水送水管
33 復水返送管
37 流量調節計
38 温度検出器
39 流量検出器
40 軸冷系統
41 軸受冷却水ポンプ
42 軸受冷却水冷却器
53 送水管
54 返送管
55 流量調整弁
60 復水タンク
63 封水送水管
64 流量調整弁
71 タービン油冷却器
72 ボイラ・タービン補機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却装置であって、
復水を冷却媒体とし水素ガスを冷却する第1水素冷却器と、
前記第1水素冷却器で冷却された水素ガスをさらに冷却する、軸冷系統の軸冷水を冷却媒体とする第2水素冷却器と、
を備えることを特徴とする水素冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素冷却装置の冷却方法であって、
前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプを備え、復水を給水加熱器に送る復水系統と、
軸受冷却水ポンプを通じて補機、冷却器に軸冷水を送り、温度の高くなった戻り軸冷水を軸受冷却水冷却器で冷却する、軸冷水を循環使用する軸冷系統と、を備え、
前記第1水素冷却器に冷却媒体として前記復水ポンプの出口部から復水を送り、水素ガスと熱交換した復水を前記復水系統に戻し、
前記第2水素冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の軸冷水を送り、水素ガスと熱交換した軸冷水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする水素冷却装置の冷却方法。
【請求項3】
前記復水系統は、前記復水ポンプの出口部に前記軸冷系統の温度の高くなった戻り軸冷水と復水とを熱交換可能な復水熱交換器を備え、戻り軸冷水で復水を加熱することを特徴とする請求項2に記載の水素冷却装置の冷却方法。
【請求項4】
前記第1水素冷却器で冷却された水素ガスが規定温度であるときは、前記第2水素冷却器に冷却媒体を送らないことを特徴とする請求項2又は3に記載の水素冷却装置の冷却方法。
【請求項5】
汽力発電プラントに備えられる発電機内に封入された水素ガスを冷却する水素冷却器を備える水素冷却装置の冷却方法であって、
復水の温度に応じて復水に封水を添加し復水を所定温度まで低下させ、該復水を冷却媒体として前記水素冷却器に送り、水素ガスと熱交換した復水を復水系統に戻すことを特徴とする水素冷却装置の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143080(P2012−143080A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294362(P2010−294362)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】