説明

水素含有ガス製造装置

【課題】 構造簡単にして高速開閉に好適な弁装置を有する高効率な水素含有ガス製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 反応室5と、原料供給手段2と、水蒸気供給手段3と、水蒸気供給手段と反応室とを間欠的に連通せしめる弁装置4と、反応室で生成された水素含有ガスを取り出す取出手段9とを備え、弁装置は、弁体8が駆動機構10により弁体の軸線方向に往復駆動され、駆動機構10は軸線方向に延び両端側で案内部材18,19により案内される可動体11〜17を有し、可動体14は一端側で弁体8と一体をなすように接続され、可動体は軸線方向で両案内部材間の中間部16が軸線に対して直角方向に変位可能であると共に軸線に対して両側で安定点をもっており、それぞれの安定点の位置に、可動体を中間部にて一方の安定点へ向けそして他方の安定点へ向け交互に駆動せしめる駆動体23,24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成させることは広く知られている。
【0003】
そのための装置は、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、高圧の水蒸気を瞬間的に反応室に流入せしめて、ここで衝撃波を発生させ、この衝撃波で反応室内の原料を衝撃圧縮することにより瞬時に反応温度まで昇温させている。上記水蒸気の反応室への瞬間的流入には、高速開閉を行なう弁装置が用いられている。
【0004】
この特許文献1の水素含有ガス製造装置に用いられている弁装置は、添付図面の図4に示されるように、反応室に連通する管体51の開口せる一端がシリンダ52内に突入して設けられ、シリンダ52内に配された弁体としてのピストン53により該管体の一端の開口が開閉自在となっている。上記管体の開口は喇叭状に広がっていてその開口端に円筒部51Aが設けられ、ピストン53も円筒部53Aを有していて該円筒部53Aが上記円筒部51Aの内面で案内される。シリンダ52内はピストン53により、上記管体51側の加圧空間Pとこれと反対側の背圧空間Bとに区分され、背圧空間Bには圧縮ばね54が配されていて、ピストン53に対し管体51に向け付勢力を与えている。この弁装置においては、加圧空間Pと背圧空間Bに高圧水蒸気が送気管55,56により等しく送入されているときは、ピストン53に作用する力として、背圧空間Bでの印加力の方がばね付勢力の分だけ加圧空間Pでの印加力よりも大きいので、ピストン53は管体51を閉じている。次に、排気管57の弁が開かれて該排気管57から背圧空間Bの高圧水蒸気を瞬間的に排出すると、加圧空間Pの印加力の方が勝って、ピストン53はばね54の力に抗して移動し、ピストン53は管体51との間に隙間を形成し、この隙間から加圧空間P内の高圧水蒸気が管体1内に流入する。この高圧水蒸気の瞬間的流入は、管体1内で衝撃波を生じ、この衝撃波により反応室で反応物質を衝撃圧縮して反応温度まで温度を上昇せしめ、反応が行われる。
【特許文献1】特開2004−43268
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような特許文献1の装置では、管体51の開閉時間は、排気管での背圧水蒸気の排出時間と、ピストンの作動時間と、排気管での開閉弁との動作時間の三者を重畳した時間により定まる。もともと、上記排気管の開閉弁自体が高速でないのに加え、上記背圧水蒸気の排出時間や、ピストンの作動時間を要するので、上記管体の高速開閉は、あまり望めない。
【0006】
高速開閉があまり望めないということは、強い衝撃波を得られないということであり、ひいては、原料の温度が十分に高くならず、反応効率をより高めることができないということを意味する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構造で、さらに高速開閉を可能とする弁装置を備えた水素含有ガス製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水素含有ガス製造装置は、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを衝撃波で瞬間圧縮させることにより反応温度まで高温し反応させて水素含有ガスを生成させる。
【0009】
かかる水素含有ガス製造装置において、本発明では、原料と水蒸気とを収容する反応室と、原料を反応室へ供給する原料供給手段と、水蒸気を反応室へ供給する水蒸気供給手段と、該水蒸気供給手段と反応室とを間欠的に連通せしめる弁装置と、反応室での水蒸気と原料中の炭素もしくは炭化水素との反応により生成された水素含有ガスを反応室外へ取り出す取出手段とを備え、上記弁装置は、弁体が駆動機構により弁体の軸線方向に往復駆動されるようになっており、上記駆動機構は上記軸線方向に延び両端側で案内部材により該軸線方向に案内される可動体を有し、該可動体は一端側で上記弁体と一体をなしもしくは一体をなすように接続され、該可動体は上記軸線方向で両案内部材間の中間部が上記軸線に対して直角方向に変位可能であると共に該軸線に対して両側で安定点をもっており、それぞれの安定点の位置に、可動体を中間部にて一方の安定点へ向けそして他方の安定点へ向け交互に駆動せしめる駆動体が設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明装置では、反応室内へ原料を供給した後に、上記弁装置が瞬間的に開いて、水蒸気供給装置から反応室へ高圧な水蒸気が流入する。この瞬間的な水蒸気の流入は、反応室で衝撃波を生じ、この衝撃波の反応室内での進行によって原料は衝撃圧縮され反応温度まで上昇し、水蒸気との反応による水素含有ガスが生成される。しかる後に、取出手段により、反応室から、この水素含有ガスが製品として室外へ取り出される。
【0011】
本発明では、上記弁装置が高速に開くので、大きい衝撃波を得られ、したがって反応効率が高い。
【0012】
本発明の弁装置によると、一方の安定点に位置する駆動体が可動体の中間部を軸線に直角な方向に押すと、可動体は軸線上の不安定な中立点を越えて他方の安定点の方へ素早く変位する。この場合、一方の安定点と他方の安定点の間の変位量は、これによる可動体の一端における軸方向での変位量の方よりも大きい。したがって、可動体の中間点での変位は、変位の方向を軸線に対して直角方向から軸線方向に変換させると共に変位速度を拡大して可動体の一端へ伝えられることとなる。かくして、上記可動体の一端での拡大された変位速度により弁体が高速作動して、弁が高速に開閉する。次に、他方の安定点へ変位した可動体はこの他方の安定点側の駆動体の作動により、上記とは逆方向に変位して上記一方の安定点へ戻る。この往復によって、弁の開動作、閉動作が繰り返してなされる。
【0013】
本発明において、可動体は、両案内部材によりそれぞれ案内される直動部と、これらの直動部の間にあって直動部とピンにより直列に連結された二つの揺動部とを有し、揺動部同士がピンで連結された連結部が駆動体により駆動される被駆動部を形成しているようにすることができる。すなわち、この形態では、直動部と揺動部とを剛体部材を用いたリンク機構とし、各リンク部材をピンにより互いに回動自在に直列に連結して形成される。このリンク機構では、揺動部としてのリンク部材同士を連結する節をなすピンが軸線上に位置したとき、この位置が死点となる。
【0014】
本発明において、反応室には減圧装置が接続されており、該減圧装置は取出手段による反応室からの水素含有ガスの取出し後水蒸気供給手段による反応室への水蒸気供給前に、反応室内の圧力を減ずるように作動することが好ましい。衝撃波の強さは、水蒸気が反応室内へ流入する前後での反応室内の圧力比が大きい程大きい。したがって、水蒸気流入前に反応室内の圧力を減圧しておくことが有効である。
【0015】
又、本発明において、原料供給装置は、原料予熱装置に接続されており、原料が予熱後に反応室へ供給されるようになっていることが好ましい。原料が反応室へ供給される前に予熱されていれば、その分、衝撃圧縮時の温度が高められ、反応効率が上がる。
【0016】
さらには、本発明において、反応室には、水蒸気供給手段の接続位置寄りに、原料供給装置からの反応室への原料供給後、水蒸気供給手段からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ駆動ガスを供給する駆動ガス供給手段が接続されていることが好ましい。反応室への水蒸気の流入時に、水蒸気が衝撃波形成の直前での亜音速流れの領域で低圧側の原料と混合してしまうと、この原料が未反応原料として残ってしまう。そこで、上記駆動ガスを供給すると、原料は駆動ガスにより圧せられて水蒸気供給装置からの水蒸気との混合が阻止される。したがって、未反応原料が残らず、殆どの原料が衝撃波により圧縮され反応する。上記駆動ガスは水蒸気とすることができる。この水蒸気は、水蒸気供給装置から供給され衝撃波を生じた後の水蒸気と一緒になっても、当然のことながら、反応に何ら問題をもたらさない。
【0017】
本発明において、反応室は取出手段の方に向け先細りになっていることが好ましい。こうすることにより、衝撃波による衝撃圧縮の効果が上がる。さらには、本発明において、反応室には、原料供給装置からの反応室への原料供給後、水蒸気供給手段からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給手段が接続されていることが好ましい。反応室へ酸素、空気等の支燃性ガスを供給することにより、衝撃圧縮加熱時に同時に起きる支燃性ガスと炭素ないし炭化水素を含有する原料との間の酸化反応による発熱により、加熱温度がさらに上昇し、反応効率を高めることができる。
【0018】
本発明において、原料としてはC3以上の炭化水素系化合物(炭素原子を3個分子中に保有する炭化水素系化合物)が主体の物質を用いると、反応し易いので、反応効率が良い。特にC8(炭素原子を8個分子中に保有する炭化水素系化合物)以上の炭化水素化合物の場合、水蒸気改質反応よりも生起しやすい反応である熱分解反応により、エチレンと水素に分解する反応が生じやすいので水素含有ガスの製造効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のごとく、水素含有ガス製造装置において、弁体を駆動する駆動機構が、弁体の移動方向である軸線方向に延びる可動体に弁体と一体化させ、可動体の中間部を駆動体で軸線に直角方向に駆動して変位させることにより、この変位の方向を軸線に変換しかつ変位速度を拡大して可動体の一端部、すなわち弁体を変位させるので、弁の開閉がきわめて短時間でなされる。したがって、与えられた水蒸気の圧力のもとで、大きな衝撃波が得られ、その結果、反応効率を上げることができる。しかも、本発明では、可動体の中間部には、駆動体にトリガとして作用すれば十分で、少なくとも可動体の変位が不安定な中立点を越えてからは駆動力は不要で、可動体は自ら素早く安定点に向かうので、駆動力が小さくてすむし、装置としても簡単なものとして構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面の図1ないし図3にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の水素含有ガス製造装置を示す概要構成図である。
【0022】
図1において、本実施形態では、炭素もしくは炭化水素を含有する原料を水蒸気と反応させて水素含有ガスを生成するための反応装置1を有しており、該反応装置1には原料供給装置2、水蒸気供給装置3が接続されている。反応装置1には弁装置4が取り付けられていて、弁の開時に水蒸気が瞬時に上記反応装置に供給される。
【0023】
上記反応装置1は、図2のごとく、内筒5と外筒6とを軸線を共通として同心に有し、該内筒5が反応室を形成している。内筒5と外筒6との間には環状空間7が形成されている。上記内筒5の一端(図にて左端)開口は、軸線方向に可動な弁体8により開閉されるようになっている。該内筒5の他端は端壁で閉じられており、図1に見られるように排気管9A、取出管9Bが接続されており、該排気管9Aそして取出管9Bは所定時に開閉する弁(図示せず)が取り付けられている。かかる反応室を形成する内筒5に上記原料供給装置2が、そして外筒6に上記水蒸気供給装置3がそれぞれ接続されている。内筒5と外筒6との間に形成される環状空間7には、上記水蒸気供給装置3から供給される高圧水蒸気が充填される。
【0024】
本実施形態では、水蒸気と反応して水素含有ガスを生成するための原料としては、固体原料、液体原料そして気体原料のいずれでもよく、例えば、固体原料としては、微粉炭、廃プラスチック粉、液体原料としては灯油、重油、タール、廃油、石油精製残渣、溶融廃プラスチック、そして気体原料としてはメタンガス、LPGガス、各種熱分解ガス等が例示できる。原料供給装置2は、これらの固体原料、液体原料そして気体原料を、適宜選択しあるいは混合して供給してもよい。
【0025】
又、上記水蒸気供給装置3への水蒸気供給源は、例えば、廃熱ボイラからの水蒸気とすることができる。
【0026】
上記内筒5の上記一端開口を開閉する弁装置4は、上記弁体8とこれを開閉駆動する駆動装置10とを備えている。
【0027】
上記弁体8はその外周面が上記外筒6との間でシール状態で該外筒6に対して軸方向に摺動可能となっている。弁体8は内筒5の一端(図にて左端)との間に隙間が形成されているときに上記環状空間7内の高圧水蒸気が内筒5内に流入することを許容し、弁体8が内筒5の一端に圧接されているときに高圧水蒸気の流入を阻止する。該弁体8の内面には円錐部8Aが形成されていて、上記高圧水蒸気の内筒5への流入時の抵抗を小さくしている。
【0028】
上記弁体8は、外方に向け軸線方向に延びる弁棒8Bを有していて、この弁棒8Bは下述の駆動装置10と連結されている。
【0029】
駆動装置10は、可動体として直状な四つのロッド11,12,13,14を有し、これらはピン15,16,17により、各ピンまわりに回動自在に、直列に連結されたリンク機構を形成している。両端のロッド11,14は、スライド案内部材18,19で長手方向に上記軸線上で摺動案内される直動部を形成し、両ロッド11,14間で連結された中間部のロッド12,13は、ピン15,16,17まわりに揺動自在であって揺動部を形成する。
【0030】
上記直動部をなす右側のロッド14は弁棒5と一体を成しており、左側のロッド11は可動プレート20に連結されている。該可動プレート20は、固定プレート21との間に配された付勢部材としての圧縮ばね22から右方への付勢力を受け、これをロッド11へ伝達している。
【0031】
左右方向で中央に位置する揺動部としての二つのロッド12,13を連結している連結部としてのピン16の上下位置には、軸線から所定の間隔をもって駆動体としてのシリンダ装置23,24が配設されている。このシリンダ装置23,24は、制御装置4Aからの指令を受けて、所定時、例えば一定周期に作動する。上記連結部としてのピン16の部分は駆動体としてのシリンダ装置23,24により押圧駆動される被駆動部を形成する。該シリンダ装置23,24は軸線との距離を可変設定でき、あるいはシリンダ装置23,24は、ピストンロッド23A,24Aのストロークが可変設定できるようになっている。上記シリンダ装置としては、油圧、空圧、水圧等の流体圧シリンダ、あるいは電磁シリンダを用いることができる。上記ピストンロッド23A,24Aは、ピン16の部分の上下方向の一方での変位を生じせしめる駆動体としての機能を有すると共に、ピン16の部分の上下方向変位量を規制するストッパとしての機能をも有する。すなわち、上記揺動部をなす二つのロッド12,13は、それらを連結しているピン16の部分で、一方のシリンダ装置、例えば上方のシリンダ装置23のピストンロッド23Aにより下方へ押されて、ピストン15,17まわりに揺動して、該ロッド12,13がロッド11,14と一直線となる軸線上の不安定中立点の位置を過ぎて、下方のシリンダ装置23のピストンロッド24Aに当接する安定位置まで、下方に向け揺動する。この揺動変位中、ロッド12,13が中立点の位置にある瞬間は、ロッド11,14は互いに最も離れる方向に左右に直動し、ピン16の部分がピストンロッド23A,24Aに当接するときは、ロッド11,14は互いに近づく方向へ直動する。このようなリンク機構では、上記中立点の位置で死点をなし、ピストンロッドとの当接位置で安定点をなす。このとき、ピン16での上下方向変位量よりもロッド11,14の横方向変位量の方が小さいため、ロッド14の変位速度はピン16の変位速度よりも拡大されて、ロッド14は高速作動する。
【0032】
このような本実施形態装置は、次のように作動する。
【0033】
(1)先ず、反応室を形成する内筒5内へ反応物質を予め充填しておく。
【0034】
(2)次に、制御装置4Aの指令にもとづき、図2のごとく、シリンダ装置23のピストンロッド23Aを後退させると、ばね22の付勢力をロッド11から受けたロッド12はピン15まわりに上方へ回動し、ピン16が上記ピストンロッド23Aに当接する安定点にくる。このピン16に引かれて、ロッド13がピン17まわりに回動して上昇し、したがって、ロッド14は左方へ移動する。その結果、弁体8は左方に移動して内筒5の左端開口との間に隙間を形成し、この隙間を経て環状空間7内の高圧水蒸気が内筒5内へ流入する。上記弁体8の開動作は瞬間的に高速でなされるので、この高圧水蒸気も高速で流入する。
【0035】
(3)内筒5内に高速流入した高圧水蒸気は衝撃波を生じ、この衝撃波は内筒5内で右方へ進行し内筒5内の反応物質としての原料を衝撃圧縮して反応せしめ水素含有ガスを生ずる。
【0036】
(4)次に、上方のシリンダ装置23のピストンロッド23Aを前進(突出)せしめると、図3(A)のごとく、ピン16の部分はこのピストンロッド23Aに圧せられて下方へ変位し、不安定中立点の位置を通過する。この中立点の位置に在る瞬間、弁体8は閉じられる。このとき、内筒5からは製品としての水素含有ガスが取出管9Bから系外へ取り出された後に排気管9Aから排気がなされると共に、次の反応物質としての原料の充填が行われる。この取出し、排気そして充填動作は弁の動作と同期して行われる。
【0037】
(5)ピン16の部分は不安定中立点の位置を一瞬にして通過し、図3(B)のごとく、下方のシリンダ装置24の後退しているピストンロッド24Aに当接する位置まで変位する。このときには、再び弁体8は開状態となる。したがって、高圧水蒸気は内筒5内に高速流入し、衝撃波を生ずる。この衝撃波は、直前に内筒5内に充填されている反応物質たる原料を衝撃圧縮する。
【0038】
(6)しかる後、ピストンロッド24Aを前進させて、図3(C)のごとく、ピン16の部分を上方へ変位せしめる。中立点の位置にきた時点では、弁体8は閉状態にあり、このとき、反応物としての水素含有ガスの取出しと次の反応物質としての原料の充填が行われる。かくして、再び図2の状態に戻る。
【0039】
本発明は、既述した形態に限定されず、種々変更が可能である。
【0040】
例えば、図1で破線で示されるごとく、反応室には減圧装置31を接続することができる。該減圧装置31は反応室からの水素含有ガスの取出し後水蒸気供給装置3による反応室への水蒸気供給前に、反応室内の圧力を減ずるように作動する。反応室内での衝撃波の強さは、水蒸気が反応室内へ流入する前後での反応室内の圧力比が大きい程大きい。したがって、水蒸気流入前に反応室内の圧力を減圧しておくことが有効となる。また供給する水蒸気圧力が低い場合には、反応室内の圧力を減圧しておくことが衝撃圧縮による加熱温度を反応温度にまで高めることを可能とし、水素含有ガスの生成効率の向上に有効である。
【0041】
次に、原料供給装置2に原料予熱装置32を接続し、原料を反応室への供給前に予熱することができる。原料を予め加熱しておけば、その分、反応室内での衝撃圧縮時の温度が高くなり反応効率も上がる。
【0042】
又、反応室には、水蒸気供給装置3から水蒸気を受ける内筒の一端開口寄りに、原料供給装置2からの反応室への原料供給後、水蒸気供給装置3からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ駆動ガスを供給する駆動ガス供給装置33を接続することができる。反応室への水蒸気の流入時に、水蒸気が衝撃波形成の直前での亜音速流れの領域で低圧側の原料と混合してしまうと、この原料が未反応原料として残ってしまう。そこで、上記駆動ガスを供給すると、原料は駆動ガスにより圧せられて水蒸気供給装置からの水蒸気との混合が阻止される。したがって、未反応原料が残らず、殆どの原料が衝撃波により圧縮され反応する。上記駆動ガスは水蒸気とすることができる。この水蒸気は、水蒸気供給装置から供給され衝撃波を生じた後の水蒸気と一緒になっても、当然のことながら、反応に何ら問題をもたらさない。
【0043】
さらには、反応室は取出手段の方に向け先細りになっているようにすることができる。こうすることにより、衝撃波による衝撃圧縮の効果が上がる。さらには、反応室には、酸素、空気、その他の支燃性ガス供給手段を備え、原料供給装置からの反応室への原料供給後、水蒸気供給手段からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ支燃性ガスを供給することにより、衝撃圧縮加熱時に同時に起きる支燃性ガスと炭素ないし炭化水素を含有する原料との間の酸化反応による発熱により、加熱温度がさらに上昇し、反応効率を高めることができる。この衝撃加熱時の温度上昇は、原料の未反応残渣をなくすのに有効である。
【0044】
本発明は、図示された形態には限定されず、種々変更可能である。例えば、弁体が弁座に対して接離する部分の形状を、図示のごとくの平坦面とせずに、弁体そして弁座を互いに円錐状面として、弁体の閉状態で互いに面接触させることができる。こうすることにより、金属同士の密着接触シールが可能となり、耐久性の高い金属性シール材料で弁体を構成できる。この金属接触でのシールにより、約10気圧程度の水蒸気をシールすることができる。
【0045】
次に、弁体とその周辺の形状である。弁体が開いたときに、高圧流体が流れる際の抵抗を極力小さくする形状とすることである。例えば、弁体に対して上流側での高圧流体の流れと下流側での高圧流体の流れがほぼ同一方向となるように、弁体とその周辺の形状を決定することである。すなわち、弁体の前後で高圧流体の流れの方向が変わらないようにする。一般に、弁体近傍では縮流が生じ圧力損失が大きくなるが、上述のような形状にすることにより、縮流も圧力損失も回避でき、流体の吐出流速を大きいものとすることができる。あるいは、弁装置の設計条件によって、上記上流側と下流側とで流れの方向を変えざるを得ないときには、流路を低抵抗の形状とするように、弁体そしてそのまわりの壁面を弯曲させまた流路断面積を増大させて調整する。
【0046】
また、本発明の弁装置をさらに高速開口させることができる。例えば、弁座と弁体とを、開閉方向で摺動範囲をもって作動させるようにすれば、弁体は、この摺動範囲で、十分に加速され摺動範囲を外れたときに開口するようになるので、開口時には高圧流体が急激な流入を促進し、例えば、衝撃波発生のための目的における使用時にきわめて有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態装置を示す概要構成図である。
【図2】図1装置に用いられる弁装置を示す断面図である。
【図3】図1装置の作動工程順に示す図で、(A)は弁装置の可動体が不安定中立点に、(B)は下方の安定点に、(C)は再び不安定中立点にある状態を示す。
【図4】従来の弁装置を有する水素含有ガス製造装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 原料供給手段(装置)
3 水蒸気供給手段(装置)
4 弁装置
5 反応室(内筒)
8 弁体
9 取出手段(装置)
10 駆動機構
11〜17 可動体
11,14 直動部
12,13 揺動部
15,16,17 ピン
16 中間部
18,19 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成させる水素含有ガス製造装置において、原料と水蒸気とを収容する反応室と、原料を反応室へ供給する原料供給手段と、水蒸気を反応室へ供給する水蒸気供給手段と、該水蒸気供給手段と反応室とを間欠的に連通せしめる弁装置と、反応室での水蒸気と原料中の炭素もしくは炭化水素との反応により生成された水素含有ガスを反応室外へ取り出す取出手段とを備え、上記弁装置は、弁体が駆動機構により弁体の軸線方向に往復駆動されるようになっており、上記駆動機構は上記軸線方向に延び両端側で案内部材により該軸線方向に案内される可動体を有し、該可動体は一端側で上記弁体と一体をなしもしくは一体をなすように接続され、該可動体は上記軸線方向で両案内部材間の中間部が上記軸線に対して直角方向に変位可能であると共に該軸線に対して両側で安定点をもっており、それぞれの安定点の位置に、可動体を中間部にて一方の安定点へ向けそして他方の安定点へ向け交互に駆動せしめる駆動体が設けられていることを特徴とする水素含有ガス製造装置。
【請求項2】
可動体は、両案内部材によりそれぞれ案内される直動部と、これらの直動部の間にあって直動部とピンにより直列に連結された二つの揺動部とを有し、揺動部同士がピンで連結された連結部が駆動体により駆動される被駆動部を形成していることとする請求項1に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項3】
反応室には減圧装置が接続されており、該減圧装置は取出手段による反応室からの水素含有ガスの取出し後水蒸気供給手段による反応室への水蒸気供給前に、反応室内の圧力を減ずるように作動することとする請求項1に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項4】
原料供給装置は、原料予熱装置に接続されており、原料が予熱後に反応室へ供給されるようになっていることとする請求項1に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項5】
反応室には、水蒸気供給手段の接続位置寄りに、原料供給装置からの反応室への原料供給後、水蒸気供給手段からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ駆動ガスを供給する駆動ガス供給手段が接続されていることとする請求項1、請求項3、請求項4のうちの一つに記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項6】
駆動ガスは水蒸気であることとする請求項5に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項7】
反応室は取出手段の方に向け先細りになっていることとする請求項1、請求項3、請求項5のうちの一つに記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項8】
反応室には、原料供給装置からの反応室への原料供給後、水蒸気供給手段からの反応室への水蒸気供給前に、反応室へ支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給手段が接続されていることとする請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7のうちの一つに記載の水素含有ガス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−137742(P2007−137742A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336807(P2005−336807)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】