説明

水素吸蔵合金の活性化方法及び水素吸蔵合金の活性化装置

【課題】水素吸蔵合金の活性化工程を簡略化可能であり、かつ、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能な、水素吸蔵合金の活性化方法及び活性化装置を提供する。
【解決手段】水素吸蔵合金を収容した容器へ水素含有ガスを流入させながら水素吸蔵合金を昇温させる昇温工程と、容器を通過した水素含有ガスに含有される水素の濃度と水素吸蔵合金の温度との関係を用いて水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かを判断する判断工程と、を有する水素吸蔵合金の活性化方法、並びに、水素吸蔵合金を収容した容器と、水素吸蔵合金を昇温可能な昇温手段と、水素含有ガスが流通する水素流入部及び水素流出部と、水素流出部を流通する水素含有ガスを分析可能なガス分析手段とを備え、容器から排出されたガス成分の濃度と水素吸蔵合金の温度との関係を用いて、昇温手段の動作停止及び容器への水素含有ガスの流入停止が判断される、水素吸蔵合金の活性化装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金の活性化方法及び水素吸蔵合金の活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策技術として有望な燃料電池に関する研究が、近年盛んに行われている。燃料電池は、電解質層と一対の電極とを備える構造体で電気化学反応を起こし、この電気化学反応により発生した電気エネルギーを外部に取り出す装置である。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等の分野で利用される固体高分子型燃料電池(以下「PEFC」ということがある。)では、水素含有ガスと酸素含有ガスとが用いられる。それゆえ、PEFCの実用化を図る上で、水素製造技術及び水素貯蔵技術の確立は不可欠である。
【0003】
これまでに提案されている水素貯蔵技術としては、水素ガスを圧縮して高圧水素タンクに貯蔵する形態、液体水素を液体水素タンクに貯蔵する形態、及び、水素を吸蔵した水素貯蔵材料をタンクに貯蔵する形態が知られている。しかし、高圧水素タンクを用いる形態では、タンクの体積が大きく小型化を図りにくいほか、高圧化すると、加圧エネルギーを浪費しやすい等の問題がある。また、液体水素タンクを用いる形態では、水素を極低温(−253℃以下)に冷却し続ける必要があるため、貯蔵時にエネルギーを消費しやすいほか、タンク外部から流入する熱で液体水素が気化する「ボイルオフ」を回避し難い等の問題がある。それゆえ、貯蔵時のエネルギーが少なく、ボイルオフ等の懸念がない水素貯蔵材料を用いる形態が注目されている。
【0004】
水素貯蔵材料に関する技術として、例えば特許文献1には、水素吸蔵合金を入れた複数のタンクを連通する水素配管および該水素配管に設けられた水素コンプレッサと、複数の前記タンク同士を熱交換可能に接続する熱媒配管および該熱媒配管に設けられた熱媒ポンプと、を有する水素吸蔵合金の活性化装置が開示されている。さらに、特許文献1には、水素放出中の第1のタンクから水素吸蔵の第2のタンクに水素を圧縮して移動させるとともに、水素吸蔵の第2のタンクで発生する熱を水素放出の第1のタンクに熱媒にて供給する第1の工程と、水素の移動方向と熱の供給方向を第1の工程と逆転させて水素を第2のタンクから第1のタンクに戻す第2の工程と、を有し、第1の工程および第2の工程を、複数回繰り返す、水素吸蔵合金の活性化方法も開示されている。また、水素吸蔵合金の活性化に適用可能な技術として、例えば特許文献2には、貯蔵する気体を吸着する固相物理吸着媒体を充填した容器に二つの容器弁を設け、容器弁の一方からヘリウム等のパージガスを導入し、他方の容器弁から導出して容器内にパージガスを流通させながら固相物理吸着媒体を加熱する吸着式気体貯蔵容器の活性化方法が開示されている。さらに、特許文献2には、パージガス流通時に、導出されるパージガス中の不純物が0.1ppm以下になるまで活性化操作を行う吸着式気体貯蔵容器の活性化方法も開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−69502号公報
【特許文献2】特開2001−248793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術によれば、水素吸蔵合金の活性化に必要な水素量及び熱エネルギーを低減することが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、水素吸蔵合金を活性化するために、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる工程と水素吸蔵合金から水素を放出させる工程とを複数回繰り返す必要があることから、水素吸蔵合金の活性化工程が複雑化しやすいという問題があった。さらに、特許文献1に開示されている技術では、水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かを正確に把握することが困難であるという問題もあった。一方、特許文献2に開示されている技術によれば、容器内にパージガスを流通させながら固相物理吸着媒体を加熱するので、固相物理吸着媒体の活性化が容易になると考えられる。しかしながら、容器から導出されたパージガス中の不純物濃度を単に測定するのみでは、活性化の完了を正確に把握することが困難であった。そのため、特許文献1に開示されている技術と特許文献2に開示されている技術とを単に組み合わせたとしても、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することは困難であるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、水素吸蔵合金の活性化工程を簡略化可能であり、かつ、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能な水素吸蔵合金の活性化方法、及び、当該活性化方法を実施可能な水素吸蔵合金の活性化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
第1の本発明は、水素吸蔵合金を収容した容器へ水素含有ガスを流入させながら水素吸蔵合金を昇温させる昇温工程と、容器を通過した水素含有ガスに含有されるガス成分の濃度と水素吸蔵合金の温度との関係を用いて、水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かを判断する判断工程と、を有することを特徴とする、水素吸蔵合金の活性化方法である。
【0009】
また、上記第1の本発明において、昇温工程で、さらに容器内の圧力が高められることが好ましい。
【0010】
第2の本発明は、水素吸蔵合金を収容した容器と、水素吸蔵合金を昇温可能な昇温手段と、容器へと供給される水素含有ガスが流通する水素流入部と、容器を通過した水素含有ガスが流通する水素流出部と、水素流出部を流通する水素含有ガスのガス成分を分析可能なガス分析手段と、を備え、昇温手段によって昇温されている水素吸蔵合金を収容する容器から排出され水素流出部を流通するガス成分の濃度と、水素吸蔵合金の温度との関係を用いて、昇温手段の動作停止、及び、容器への水素含有ガスの流入停止が判断されることを特徴とする、水素吸蔵合金の活性化装置である。
【発明の効果】
【0011】
第1の本発明によれば、水素吸蔵合金を収容した容器を通過した水素含有ガスに含有されるガス成分の濃度と水素吸蔵合金の温度との関係を用いて水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かが判断されるので、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能になる。さらに、第1の本発明によれば、水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かをモニタリングすることができるので、水素含有ガスを流通させながら水素吸蔵合金を昇温させるという簡易な形態で水素吸蔵合金を確実に活性化させることができる。そのため、第1の本発明によれば、水素吸蔵合金の活性化工程を簡略化可能であり、かつ、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能な水素吸蔵合金の活性化方法を提供することができる。
【0012】
また、上記第1の本発明において、昇温工程で容器内の圧力が高められることにより、容器内の不純物を除去することが容易になるので、水素吸蔵合金の活性化温度を低下させることが可能な、水素吸蔵合金の活性化方法を提供することが可能になる。
【0013】
第2の本発明によれば、水素吸蔵合金の活性化工程を簡略化可能であり、かつ、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能な水素吸蔵合金の活性化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、鋭意研究の結果、水素吸蔵合金を収容した容器から排出されたガス成分の濃度と、昇温されている水素吸蔵合金の温度との関係を用いることにより、水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かを正確に把握可能であることを知見し、本発明を完成させた。
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明にかかる水素吸蔵合金の活性化方法(以下において「本発明の活性化方法」ということがある。)の形態例を示すフローチャートである。図1に示すように、本発明の活性化方法は、合金収容工程(工程S1)と、ガス分析装置接続工程(工程S2)と、不純物除去工程(工程S3)と、昇温工程(工程S4)と、活性化判断工程(工程S5)と、降温工程(工程S6)と、を備え、工程S1〜工程S6を経て、水素吸蔵合金が活性化される。
【0017】
図2は、本発明にかかる水素吸蔵合金の活性化装置(以下において「本発明の活性化装置」ということがある。)20の形態例を示す概念図である。図2の矢印は、水素含有ガスの流通方向を示している。図2に示すように、本発明の活性化装置20は、水素吸蔵合金1を収容する容器2と、容器2に収容された水素吸蔵合金1を加熱又は冷却可能な熱交換器3と、熱交換器3に接続された熱源4と、容器2へと流入する水素含有ガスが流通する水素流入部5と、容器2から流出する水素含有ガスが流通する水素流出部6と、水素流出部6を流通するガスの成分を分析可能なガス分析装置7と、を備えている。そして、水素流入部5には減圧弁8及びバルブ9が設けられ、水素流出部6には、圧力計10及びバルブ11が設けられている。本発明の活性化装置20では、熱交換器3及び熱源4が昇温手段として機能する。以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明の活性化方法及び本発明の活性化装置について説明する。
【0018】
<工程S1>
工程S1は、容器2に水素吸蔵合金1を収容する工程である。本発明の活性化方法における工程S1の形態は、活性化される水素吸蔵合金1を容器2へ収容可能であれば特に限定されるものではなく、公知の形態とすることができる。
【0019】
<工程S2>
工程S2は、バルブ9及びバルブ11を「閉」とした状態で、水素流出部6を介して容器2とガス分析装置7とを接続する工程である。ガス分析装置7を接続することにより、容器2を通過したガスを分析することが可能になる。
【0020】
<工程S3>
工程S3は、減圧弁8を用いて圧力が調整された水素含有ガスを、容器2へと流入させることにより、水素吸蔵合金1の表面等に吸着されている不純物を、除去する工程である。工程S3では、バルブ9及びバルブ11が「開」とされた状態で、水素流入部5、容器2、及び、水素流出部6に水素含有ガス(例えば、0.3MPa程度の圧力に調整された水素含有ガス)を流通させる。工程S3を経ることにより、水素吸蔵合金1の表面等に吸着されている不純物が除去されるので、昇温しても水素吸蔵合金1の表面が酸化されにくい形態(水素吸蔵合金1を活性化しやすい形態)とすることが可能になる。工程S3で水素含有ガスを流通させる時間は、例えば、30分程度とすることができる。
【0021】
<工程S4>
工程S4は、バルブ9及びバルブ11が「開」とされた状態で、水素流入部5、容器2、及び、水素流出部6に水素含有ガスを流通させ、ガス分析装置7を用いて水素流出部6を流通する水素含有ガスの流量及び成分(例えば、Hや、HO、CO、CO、及び、CH等の不純物)の濃度(又は圧力)を測定しながら、熱源4及び熱交換器3を用いて水素吸蔵合金1の温度Tを上昇させる工程である。工程S4で上昇させる温度Tは、容器2に充填する水素圧や、水素吸蔵合金の系・組成に応じて決定する。本発明の活性化方法では、工程S4で水素を流通させながら水素吸蔵合金1の温度Tを上昇させることにより、水素吸蔵合金1の表面へと供給された水素と水素吸蔵合金1の表面に形成されている酸化皮膜に含有される酸素とを反応させ、HOを生成させる。さらに、工程S4では、水素吸蔵合金1の表面へと供給された水素と水素吸蔵合金1の表面に形成されている酸化皮膜に含有される炭素とを反応させ、CH等を生成させる。生成させたHOやCH等は、容器2から流出して水素流出部6を流通するため、工程S4を有する本発明の活性化方法では、ガス分析装置7を用いて水素流出部6を流通するガス成分の測定結果を用いることにより、水素吸蔵合金1の活性化の程度を把握することが可能になる。工程S4で流通させる水素含有ガスの圧力は、例えば、0.1MPa程度とすることができる。
【0022】
<工程S5>
工程S5は、水素吸蔵合金1の活性化が完了したか否かを判断する工程である。工程S5で肯定判断された場合には、上記工程S4が終了され、工程S6へと進む。これに対し、工程S5で否定判断された場合には、上記工程S4へと戻り、工程S5で肯定判断がなされるまで、工程S4が継続される。工程S5は、例えば、ガス分析装置7を用いて分析されたHO濃度が上昇から下降へと移行し、さらに、H濃度が下降から上昇へと移行することにより水素吸蔵合金への水素吸蔵が確認されたか否かを判断する工程、とすることができる。工程S5における判断は、本発明の活性化装置20を使用するユーザーが行っても良く、機器を用いて判断しても良い。当該判断が機器を用いてなされる場合、本発明の水素吸蔵合金の活性化装置は、図2の構成に加えて、さらに、当該判断を実施可能な制御装置が備えられる形態とすれば良い。
【0023】
<工程S6>
工程S6は、バルブ9及びバルブ11を閉じて水素含有ガスの流通を停止し、活性化された水素吸蔵合金(以下において「水素吸蔵合金1’」ということがある。)の温度を室温にまで低下させる工程である。
【0024】
上記工程S1〜工程S6を経て水素吸蔵合金を活性化させる本発明の活性化方法によれば、容器2を通過した水素含有ガスに含有されるガス成分の濃度と水素吸蔵合金1の温度との関係から、水素吸蔵合金1の活性化の進行度合いを把握することができる。さらに、本発明の活性化方法によれば、容器2を通過した水素含有ガスに含有される水素の濃度と水素吸蔵合金1’の温度との関係から、水素吸蔵合金1’への水素吸蔵が行われたか否かを把握することができる。すなわち、本発明の活性化方法によれば、ガス分析結果と水素吸蔵合金の温度との関係をモニタリングすることにより、水素含有ガスを流通させながら水素吸蔵合金を昇温させるという簡易な工程で、水素吸蔵合金を確実に活性化することができる。したがって、本発明によれば、従来よりも水素吸蔵合金の活性化工程を簡略化可能であり、かつ、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握することが可能な、水素吸蔵合金の活性化方法を提供することができる。加えて、水素吸蔵合金の活性化装置20には、熱交換器3及び熱源4が備えられるので、容器2に収容された水素吸蔵合金の温度を制御することができる。水素吸蔵合金1’の温度を制御することにより、反応を徐々に進めることができるので、本発明の活性化方法によれば、水素吸蔵合金を安全確実に活性化させることができる。
【0025】
本発明に関する上記説明では、流通させている水素含有ガスのガス分析を行いながら水素吸蔵合金を昇温させる形態の昇温工程が備えられる形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。例えば、水素吸蔵合金が収容された容器内の圧力を高めながら水素吸蔵合金を昇温すると、容器内の圧力を高めない場合と比較して、水素吸蔵合金1の表面等に吸着されている不純物を、低温で除去することができる。したがって、水素吸蔵合金の活性化で消費される熱エネルギーを低減可能な形態の水素吸蔵合金の活性化方法を提供可能とする等の観点からは、昇温工程で容器内の圧力が高められることが好ましい。容器内の圧力が高められる形態の昇温工程が備えられる場合には、例えば、一定の速度で熱エネルギーを供給している状態で、容器内の温度上昇が止まって容器内の温度が一定になり、不純物の発生量が所定値以下になったことを確認した後に、容器内の圧力を高めれば良い。かかる形態とすることにより、消費される熱エネルギーを低減しながら水素吸蔵合金を容易に活性化することが可能になる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を参照しつつ、本発明について具体的に説明する。
【0027】
(1)水素吸蔵合金の活性化
図3は、水素吸蔵合金の活性化装置を想定した試験機(以下において「実施例にかかる試験機」という。)30の形態を示す概念図である。図3の矢印は、水素含有ガスの流通方向を示している。図3において、図2と同様の構成を採るものには、図2で使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。図3に示すように、実施例にかかる試験機30では、容器に模した石英ガラス管へ、水素吸蔵合金(TiCrVMo系、3g)を大気中で収容し、水素吸蔵合金を収容した石英ガラス管を加熱炉に配置した。その後、バルブ9及びバルブ11を「閉」とした状態で、水素流出部6を介して石英ガラス管とガス分析装置7(PRISMA QME200、Pfeiffer Vacuum社製)とを接続した。
【0028】
このようにして実施例にかかる試験機30を作製した後、0.1MPaの水素含有ガス(H;0.003MPa、He;0.087MPa、Ar;0.010MPa)を一定流量(100ml/min)で流通させ、さらに、加熱炉を用いて昇温速度20℃/minで水素吸蔵合金を昇温させた。
【0029】
(2)結果
図4にガス分析結果を示す。図4の縦軸は強度(圧力[Pa]。以下において同じ。)、横軸は水素吸蔵合金の温度[℃]である。図4より、350℃付近から水の強度が高まり始め、500℃付近で最大強度となった後、水の強度は低下した。水素含有ガスに水が含有されていたのは、水素吸蔵合金の表面に存在する酸素分子・酸素原子が水素によって還元され、水として放出されたためであると考えられる。実施例にかかる試験機30を用いた水素吸蔵合金の活性化方法では、水素含有ガスを流通させながら水素吸蔵合金を昇温させることにより、水素吸蔵合金表面に存在する酸素分子・酸素原子を除去して水素吸蔵合金を活性化することができた。水の強度をモニタリングすることにより水素吸蔵合金の活性化の度合い(不純物が除去された度合い)を把握することができるので、本発明によれば、水素吸蔵合金の活性化の度合いを正確に把握可能であることが確認できた。
【0030】
さらに、図4より、500℃付近から水素の強度が低下し始め、560℃付近で最小強度となった後、630℃付近で最大強度となった。これは、活性化された水素吸蔵合金に、500℃付近から水素が吸蔵され始め、その後の昇温により水素吸蔵合金から水素が放出されたためであると考えられる。すなわち、水素吸蔵合金を収容した容器から流出した水素量と水素吸蔵合金の温度との関係をモニタリングすることにより、本発明によれば、水素吸蔵合金の活性化完了を正確に把握可能であることが確認できた。
【0031】
上記実施例では、水素圧;0.003MPa、ガス流量;100ml/minの条件で水素吸蔵合金を活性化したが、水素圧やガス流量の条件を変えることで、水素吸蔵合金の活性化開始温度を低下させることが可能になる。具体的には、水素含有ガスに含まれる水素の圧力Aと水素含有ガスに含まれる不純物の圧力Bとの比A/Bを大きくすれば良い。そのため、水素の圧力を高めるか、又は、水素含有ガスの流量を多くして不純物ガスの圧力を低減することにより、水素吸蔵合金の活性化開始温度を低下させることが可能になる。活性化開始温度と水素圧との関係を、図5に示す。図5の縦軸は活性化開始温度[℃]、横軸は水素圧[MPa]である。
例えば、30MPaまで昇圧可能な高圧型の水素貯蔵タンクに水素吸蔵合金を収容すれば、図5より、30MPaの時の活性化開始温度は200℃程度になると考えられる。そのため、本発明の活性化方法における昇温工程を、圧力が高められる形態とすることにより、水素吸蔵合金の活性化で消費される熱エネルギーを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる水素吸蔵合金の活性化方法の形態例を示すフローチャートである。
【図2】本発明にかかる水素吸蔵合金の活性化装置の形態例を示す概念図である。
【図3】水素吸蔵合金の活性化装置を想定した試験機の形態を示す概念図である。
【図4】ガス分析結果を示す図である。
【図5】活性化開始温度と水素圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1、1’…水素吸蔵合金
2…容器
3…熱交換器(昇温手段)
4…熱源(昇温手段)
5…水素流入部
6…水素流出部
7…ガス分析装置
8…減圧弁
9…バルブ
10…圧力計
11…バルブ
20…水素吸蔵合金の活性化装置
30…試験機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を収容した容器へ水素含有ガスを流入させながら前記水素吸蔵合金を昇温させる昇温工程と、
前記容器を通過した前記水素含有ガスに含有されるガス成分の濃度と前記水素吸蔵合金の温度との関係を用いて、前記水素吸蔵合金の活性化が完了したか否かを判断する判断工程と、
を有することを特徴とする、水素吸蔵合金の活性化方法。
【請求項2】
前記昇温工程で、さらに前記容器内の圧力が高められることを特徴とする、請求項1に記載の水素吸蔵合金の活性化方法。
【請求項3】
水素吸蔵合金を収容した容器と、
前記水素吸蔵合金を昇温可能な昇温手段と、
前記容器へと供給される水素含有ガスが流通する水素流入部と、
前記容器を通過した前記水素含有ガスが流通する水素流出部と、
前記水素流出部を流通する前記水素含有ガスのガス成分を分析可能なガス分析手段と、を備え、
前記昇温手段によって昇温されている前記水素吸蔵合金を収容した前記容器から排出され前記水素流出部を流通する前記ガス成分の濃度と、前記水素吸蔵合金の温度との関係を用いて、前記昇温手段の動作停止、及び、前記容器への前記水素含有ガスの流入停止が判断されることを特徴とする、水素吸蔵合金の活性化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280438(P2009−280438A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133776(P2008−133776)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】