説明

水素吸蔵合金利用型加熱システム

【課題】燃料を加熱する熱源として水素吸蔵合金を用いた加熱システムにおいて、エンジンの廃熱を効率的に利用してエネルギー効率の高い水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムにする。
【解決手段】熱を発生する熱源として水素吸蔵合金32が収容され、フューエルインジェクションレール15に水素吸蔵熱を直接伝熱する水素吸蔵合金加熱器20を設け、水素ガスを貯蔵する水素タンク21と、エンジンの廃熱を水素吸蔵合金加熱器20へ一方向に伝熱するとともに、前記水素吸蔵合金を加熱する伝熱加熱手段34と、水素吸蔵合金加熱器20と水素タンク21の間を接続する水素ガス配管22を設け、水素吸蔵合金加熱器20と水素タンク21の相互の間で移動する水素ガスを流れの方向を制御し、水素吸蔵合金加熱器20での水素ガスの吸蔵、放出状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金利用型加熱システムに係り、特に、寒冷地での自動車エンジンの始動性を高めるための燃料や空気などの加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冬季には、自動車のエンジンが始動し易いように、エンジン本体あるいは燃料をあらかじめ予熱しておくことが行われている。特に、寒冷地では、何らかの手段によりエンジンや燃料を予熱しておくことは必要不可欠である。
【0003】
従来、ディーゼルエンジンでは、グロープラグを用いてエンジンの副燃焼室内の圧縮空気を直接加熱するものなどが知られている。また、特許文献1には、始動時間を短縮するために、副燃焼室の周囲のヘッドジャケットにグロープラグとともに水温検出器を設け、水温が一定以下になると、グロープラグによりヘッドジャケット内の冷却水を予熱し、この冷却水により副燃焼室を暖めることが提案されている。
【0004】
最近では、電気ヒータの替わりに潜熱蓄熱材を用いて燃料を加熱する技術が提案されている(特許文献2)。この特許文献2では、コモンレールなどの燃料供給経路の周囲に潜熱蓄熱材を収容する潜熱蓄熱材収容室を形成し、この潜熱蓄熱材収容室の周囲に冷却水通路を形成している。エンジンの始動時には、トリガーによる発核操作で潜熱蓄熱材の過冷却状態が解除され、その際に発生する凝固熱で燃料が加熱される。エンジンが始動した後は、廃熱で加熱された冷却水を冷却水通路に流し、凝固した蓄熱材を再度溶解させて次回のエンジン始動時に備えることになる。
【0005】
他方、潜熱蓄熱材を用いる替わりに、水素吸蔵合金を応用した蓄熱装置は従来から公知である(例えば、特許文献3)。この蓄熱装置では、燃焼排気ガスの熱エネルギーで水素吸蔵合金を加熱し、放出された水素を水素ガス収納タンクに蓄えられる。熱を利用するときには、水素ガス収容タンクの水素ガスを水素吸蔵合金タンクに送り、水素が吸蔵されるときに熱が発生し、この熱を暖房などに利用するようになっている。
【特許文献1】特開平5−10226号公報
【特許文献2】特開2006−316775号公報
【特許文献3】特許第2573862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来の燃料加熱方式は、熱源に電気ヒータを用いているため、エネルギー変換効率が悪いという問題がある。すなわち、電気ヒータの電源は、バッテリからとることになるが、バッテリの充電は、もともと燃料の熱エネルギーを電気エネルギーに変換したものである。そして、電気を熱エネルギーに再度変えるというように、変換経路が長いため、燃料を出発点とすれば最終的な変換効率は低くなる。さらに、電気ヒータによる加熱方式では、大電流を使用するので、バッテリがあがってしまう虞がある。
【0007】
他方、潜熱蓄熱方式を利用した特許文献2では、潜熱蓄熱材の周囲に形成される冷却水通路にある冷却水に、過冷却解除時の発熱した熱の一部が奪われることにより、熱損失が生じたり、凝固した潜熱蓄熱材を再溶融させるために必要な冷却水の供給や温度を制御するシステムが複雑になるという問題がある。また、従来は、潜熱蓄熱材の過冷却状態を維持したり、加熱が必要な時に過冷却状態が解除されるように、潜熱蓄熱材の状態を制御することが困難であった。さらに、潜熱蓄熱材は経時変化を起こして相分離をすることがあり、長期の使用には向かない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、燃料や空気を加熱する熱源として水素吸蔵合金を利用し、エンジンの廃熱を効率的に利用してエネルギー変換効率の高い水素吸蔵合金利用型加熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、燃料を各インジェクタに分配するフューエルインジェクションレールと、熱を発生する熱源として水素吸蔵合金が収容され、前記フューエルインジェクションレールに水素吸蔵熱を直接伝熱する水素吸蔵合金加熱器と、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、エンジンの廃熱を前記水素吸蔵合金加熱器へ一方向に伝熱するとともに、前記水素吸蔵合金を加熱する伝熱加熱手段と、前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの間を接続する水素ガス配管と、前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの相互の間で移動する水素ガスを流れの方向を制御し、前記水素吸蔵合金加熱器での水素ガスの吸蔵、放出状態を制御する吸蔵・放出制御手段と、からなることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、自動車のエンジンに各種流体を供給する配管と、熱を発生する熱源として水素吸蔵合金が収容され、前記配管に水素吸蔵熱を直接伝熱する水素吸蔵合金加熱器と、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、エンジンの廃熱を前記水素吸蔵合金加熱器へ一方向に伝熱するとともに、前記水素吸蔵合金を加熱する伝熱加熱手段と、前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの間を接続する水素ガス配管と、前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの相互の間で移動する水素ガスを流れの方向を制御し、前記水素吸蔵合金加熱器での水素ガスの吸蔵、放出状態を制御する吸蔵・放出制御手段と、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料や空気を加熱する熱源として水素吸蔵合金を利用し、エンジンの廃熱を効率的に利用してエネルギー変換効率の高い水素吸蔵合金利用型加熱システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による水素吸蔵合金利用型加熱システムの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明を燃料の加熱システムに適用した第1実施形態に適用されるエンジンの構成を示す図である。図1において、参照番号10は、自動車のエンジンを示す。11はインテークマニフォールド、12はエキゾーストマニフォールドを示す。13は燃焼室である。14は点火プラグ、15がフューエルインジェクションレールである。
【0013】
燃料タンク16の燃料は、図示しない燃料ポンプによって圧力を高められて、燃料供給配管17を通じてフューエルインジェクションレール15に供給される。このフューエルインジェクションレール15は、細長い容器からなる本体部を有している。この本体部には複数のインジェクタカップ19が配列されている。このインジェクタカップ19にはインジェクタ18が装着されている。フューエルインジェクションレール15に送られた燃料は、各インジェクタ18に分配されて、インジェクタ18が開くと燃焼室13に噴射される。
【0014】
本実施形態による水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムでは、次のような水素吸蔵合金加熱器20をフューエルインジェクションレール15と組み合わせ、この水素吸蔵合金加熱器20は燃料を加熱する熱源として利用されている。図2に示すように、この水素吸蔵合金加熱器20には、水素ガスが貯蔵されている水素タンク21と水素ガス配管22を介して接続されている。この水素ガス配管22には、水素ガスの流路を開閉するバルブ23と、水素タンク21から水素吸蔵合金加熱器20に水素ガスを強制的に送るポンプ24が設けられている。
【0015】
この実施形態では、エンジン10の始動と水素吸蔵合金加熱器20による燃料加熱操作を連動させるために、制御装置25でバルブ23の開閉操作およびポンプ24の運転を制御する。この場合、スタータモータ26の始動と連動するように、制御装置25は、バルブ23を開き、ポンプ24を起動する。なお、水素吸蔵合金加熱器20には、水素吸蔵合金の温度を検出する温度センサ27が配置されている。また、フューエルインジェクションレール15には、燃料の温度を検出する温度センサ28が設けられている。制御装置25は、後述するように、燃料の温度状況に応じて、加熱操作をするかどうかを自動的に判別する。
【0016】
次に、図2は、本実施形態による水素吸蔵合金加熱器20を示す。この水素吸蔵合金加熱器20はケース30を含む。このケース30は、フューエルインジェクションレール15の長さにほぼ対応した長尺な密閉容器で、内部には、水素吸蔵合金32が充填されている。この場合、インジェクタカップ19は、水素吸蔵合金加熱器20の内部を貫通するようになっている。
【0017】
水素吸蔵合金加熱器20の内部には、サーモサイフォン式のヒートパイプ34が加熱伝熱手段として設けられている。この実施形態では、図1に示すように、このヒートパイプ34は、エンジン10の冷却チャンバー35まで延びていて、エンジン10と熱交換した冷却水の熱を水素吸蔵合金加熱器20に伝熱する。水素吸蔵合金加熱器20は、エンジン10よりも上位に設置されており、ヒートパイプ34は、低位置にあるエンジン10から高位置にある水素吸蔵合金加熱器20に廃熱を伝熱する一方、その反対方向には伝熱され難くなっている。
【0018】
なお、図1では、冷却水を熱源とする構成を示したが、これに限定されるものではなく、エキゾーストマニフォールド12までヒートパイプ34を延ばして、排気ガスの熱を利用するようにしてもよい。
【0019】
本実施形態による水素吸蔵合金式燃料加熱システムは、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
エンジン10を始動させるために、スタータモータ26を起動する。このとき制御装置25は、温度センサ28で燃料の温度を監視している。検出した温度があらかじめ設定されてある温度以下であると、以下のような燃料加熱を行いながらのエンジン始動動作モードに移行する。燃料の温度が設定温度以上であれば、燃料を加熱する必要はないので、通常のエンジン始動になる。
【0020】
そこで、燃料の温度が低く、そのままではエンジン10がなかなか始動しない場合は、次のようにして燃料の加熱処理は自動的に進行する。
【0021】
制御装置25は、スタータモータ26の起動と同時にバルブ23を開くとともに、ポンプ24を起動させる。これにより、水素タンク21から水素ガスが水素吸蔵合金加熱器20に強制的に送られる。水素ガスは、水素吸蔵合金加熱器20に充填されている水素吸蔵合金32に吸蔵され、このときに水素吸蔵熱を発生する。
【0022】
発生した水素吸蔵熱は、フューエルインジェクションレール15の本体およびインジェクタカップ19に直接熱伝導し、フューエルインジェクションレール15内の燃料と水素吸蔵合金加熱器20の間で熱交換が行われる。このような水素吸蔵熱による燃料加熱は、数分間行われる。
【0023】
その後、燃料が十分に予熱されたところで、再度、スタータモータ26が起動されると、エンジン10の燃焼室13には暖められた燃料がインジェクタ18から噴射されるので、厳寒期でもエンジン10は容易に始動することができる。
【0024】
こうしてエンジン10が始動してしまうと、ポンプ24は止められ、水素ガスの供給がなくなるので、水素吸蔵合金32は水素吸蔵作用を停止する。以後、自動車の走行中は、エンジン10からの廃熱を利用して、次回の始動に備えた水素吸蔵合金32の加熱が行われることになる。
【0025】
走行中、エンジン10では冷却水との間で熱交換が行われており、冷却チャンバー35の冷却水の温度は高くなっている。この冷却水がもつ熱エネルギーは、ヒートパイプ34を伝熱して、水素吸蔵合金加熱器20まで伝導してくる。この廃熱をもらって、水素吸蔵合金32は水素ガスを放出することになる。放出した水素ガスを水素タンク21に戻すために、ポンプ24はエンジン10の始動時とは逆転する。これにより、発生した水素ガスは強制的に水素タンク21に戻される。
【0026】
この実施形態では、加熱伝熱手段としては、サーモサイフォン式(重力落下方式)のヒートパイプ34が利用されているので、エンジン10から水素吸蔵合金加熱器20には熱が伝わっても、水素吸蔵合金加熱器20からは外に逃げ難くなっている。これにより、エンジン10を始動するときに発生する水素吸蔵熱は、外に損失されにくく、燃料の効率的な加熱が可能であり、他方、水素吸蔵合金32の加熱についても効率よく熱を伝導させ、両者共に効率良く両立させることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、水素吸蔵合金32の水素吸蔵熱を利用してフューエルインジェクションレール15を加熱し、始動した後は次回の始動に備えて水素吸蔵合金32を加熱して水素ガスを放出させる熱源にエンジン10の廃熱を無駄なく利用しているので、燃料加熱にあたってのエネルギー変換効率に優れ、省エネルギー効果が高い。すなわち、従来のように、バッテリを電源にして、電気ヒータで加熱するのに較べると、エネルギーを無駄なく循環的に利用することができるので、エンジンの始動性を高めると同時に省エネルギーも実現することができる。ちなみに、水素吸蔵合金加熱器20の容量が70ccで、水素吸蔵合金を320グラム充填した場合、発熱容量が20Whの熱源を構成して、始動に十分な加熱を行うことができた。
【0028】
さらに、水素吸蔵合金加熱器20と加熱伝熱手段であるヒートパイプ34との組み合わせは、フューエルインジェクションレール15への適応性が高く、フューエルインジェクションレール15を中心とする燃料加熱システムの構築が容易である。
【0029】
また、ガソリン、エタノール、若しくはこれらの混合燃料が用いられるFFV(Flex Fuel Vehicle)への燃料加熱システムの適用が容易である利点もある。
【0030】
第2実施形態
次に、図3は、本発明による水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムの第2実施形態を示す。
【0031】
この第2実施形態では、水素タンク21と水素吸蔵合金加熱器20の間の圧力差を利用して水素ガスの吸蔵、放出を行うようにしたものである。制御装置25は、次のようにして、水素吸蔵合金32の温度を監視しながら適宜なタイミングでバルブ23を開閉する。
【0032】
エンジン10の始動時に燃料を加熱する時には、水素タンク21の方が水素吸蔵合金加熱器20よりも高い圧力になっているので、バルブ23を開くと、高圧の水素タンク21から低圧の水素吸蔵合金20へ水素ガスが移動する。最終的に、両者の間で圧力が平衡に達するまで、水素ガスの吸蔵が続くことになる。
【0033】
これに対して、走行中に廃熱を利用して水素吸蔵合金32を加熱するときには、放出された水素ガスを水素タンク21に送るために、次のように圧力差を利用することになる。
【0034】
すなわち、バルブ23を閉じた状態にしてから、水素吸蔵合金32の加熱が開始される。このとき、ヒートパイプ34で廃熱を伝熱し水素吸蔵合金32が加熱される。水素吸蔵合金水素32の温度が高くなって水素ガスの放出量が増加していくと、水素吸蔵合金加熱器20側の圧力は次第に高まっていく。
【0035】
そこで、水素吸蔵合金32の温度と、水素吸蔵合金加熱器20の圧力との関係をあらかじめ実験等により把握しておき、水素吸蔵合金加熱器20から水素ガスが水素タンク21に移動することができるような両者の圧力差が生じる温度を設定しておく。
制御装置25は、温度センサ27の出力から水素吸蔵合金32の温度を監視し、設定された温度になったことを検知したら、バルブ23を開く。これにより、水素ガスは、高圧の水素吸蔵合金加熱器20から低圧の水素タンク21に向かって圧力が平衡に達するまで移動する。水素ガスの移動が止まったら、バルブ23は閉じられる。
【0036】
この第2実施形態のように、圧力差を利用して水素ガスを移動させることにより、第1実施形態とは異なり、強制的に水素ガスを移動させるポンプを設ける必要がなく、システムが簡素化するとともに、ポンプの動力とするエネルギーを節約できるので、より一層エネルギー効率のすぐれたシステムにすることができる。
【0037】
以上、本発明に係る燃料加熱システムをフューエルインジェクションレールに適用した実施形態について説明したが、本発明は、ディーゼルエンジンに用いられるコモンレールに対しても同じように適用することができる。
【0038】
第3実施形態
本発明は、燃料を加熱するためだけに限定されずに、エンジンに供給する空気の加熱などの他の流体を加熱するシステムに適用することもできる。
【0039】
そこで、図4にインテークマニホールドに本発明を適用し、燃焼室に供給する空気または混合気を加熱するシステムとして構成した実施形態を示す。
この第3実施形態では、水素吸蔵合金加熱器40は、インテークマニフォールド11において燃焼室13の手前部分を加熱する位置に取り付けられている。この水素吸蔵合金加熱器40は、水素ガスが貯蔵されている水素タンク21と水素ガス配管22を介して接続されている。この水素ガス配管22には、第1実施形態と同様に、水素ガスの流路を開閉するバルブ23と、水素タンク21から水素吸蔵合金加熱器40に水素ガスを強制的に送るポンプ24が設けられている。
【0040】
この第3実施形態では、エンジン10の始動と水素吸蔵合金加熱器40による加熱動作を連動させるために、空気の温度、水素吸蔵合金の温度を検出しながら、第1実施形態と同様に制御装置25でバルブ23の開閉操作およびポンプ24の運転を制御する。
【0041】
エンジン10の始動時には、バルブ23が開き、高圧の水素タンク21から低圧の水素吸蔵合金加熱器40へ水素ガスが移動する。このときに発生する水素吸蔵熱により、燃焼室13の手前位置で空気または混合気が加熱されるので、吸気温度を高めることができる。
【0042】
これに対して、走行中には、冷却チャンバー35の冷却水、この場合、80℃程度に昇温されている冷却水から熱をもらって、ヒートパイプ34で熱を伝熱させて水素吸蔵合金加熱器40の中にある水素吸蔵合金を加熱することができる。加熱により放出された水素ガスは、ポンプ24で水素タンク21に送られる。
【0043】
以上の第3実施形態によれば、バッテリ等の外部エネルギー源に頼ることなく、水素吸蔵合金の水素吸蔵熱を利用してインテークマニフォールド11を加熱して吸気温度を上げ、エンジン10の始動性を高めることができ、始動した後は、エンジン10の廃熱を利用して、次回の始動に備えて水素吸蔵合金を加熱することができる。したがって、第1実施形態、第2実施形態同様に、エンジンの始動性向上にあたって、エネルギー変換効率が高く、省エネルギー効果の高い加熱システムを構築することができる。
【0044】
第4実施形態
次に、図5にインテークマニホールドに本発明を適用し、燃焼室に供給する空気または混合気を加熱するシステムを構成した他の実施形態を示す。
この第4実施形態が第3実施形態と異なる点は、第2実施形態と同じように、水素タンク21と水素吸蔵合金加熱器40の間の圧力差を利用して水素ガスの吸蔵、放出を行うようにしたことにある。その作用は第2実施形態で説明したので省略する。
【0045】
以上の第4実施形態によっても、第3実施形態同様に、水素吸蔵合金の水素吸蔵熱を利用してインテークマニフォールド11を加熱して吸気温度を上げ、エンジン10の始動性を高めることができ、始動した後は、エンジン10の廃熱を利用して、次回の始動に備えて水素吸蔵合金を加熱することができ、エンジンの始動性向上にあたって、エネルギー変換効率が高く、省エネルギー効果の高い加熱システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態による水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムにおける水素吸蔵合金加熱器の説明図である。
【図3】第2実施形態の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システムにおける水素吸蔵合金加熱器の説明図である。
【図4】第3実施形態の水素吸蔵合金利用型流体加熱システムの説明図である。
【図5】第4実施形態の水素吸蔵合金利用型流体加熱システムの説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 エンジン
11 インテークマニフォールド
12 エキゾーストマニフォールド
13 燃焼室
15 フューエルインジェクションレール
16 燃料タンク
17 燃料供給配管
18 インジェクタ
19 インジェクタカップ
20 水素吸蔵合金加熱器
21 水素タンク
22 水素ガス配管
23 バルブ
24 ポンプ
25 制御装置
26 スタータモータ
30 ケース
32 水素吸蔵合金
34 ヒートパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を各インジェクタに分配するフューエルインジェクションレールと、
熱を発生する熱源として水素吸蔵合金が収容され、前記フューエルインジェクションレールに水素吸蔵熱を直接伝熱する水素吸蔵合金加熱器と、
水素ガスを貯蔵する水素タンクと、
エンジンの廃熱を前記水素吸蔵合金加熱器へ一方向に伝熱するとともに、前記水素吸蔵合金を加熱する伝熱加熱手段と、
前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの間を接続する水素ガス配管と、
前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの相互の間で移動する水素ガスを流れの方向を制御し、前記水素吸蔵合金加熱器での水素ガスの吸蔵、放出状態を制御する吸蔵・放出制御手段と、
からなることを特徴とする水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項2】
前記水素吸蔵合金加熱器は、前記フューエルインジェクションレールの本体部に収容され若しくは取り付けられる長尺な容器からなり、前記伝熱加熱手段の加熱部を前記容器の長手方向にそって配置したことを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項3】
前記伝熱加熱手段は、サーモサイフォン式のヒートパイプからなり、低位置にあるエンジンから高位置にある前記水素吸蔵合金加熱器に伝熱することを特徴とする請求項2に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項4】
前記吸蔵・放出制御手段は、
前記水素ガス配管を開閉するバルブと、
水素ガスを前記水素タンクから前記水素吸蔵合金加熱器に強制的に送り込むポンプと、
エンジンの運転と連動させて前記バルブの開閉、前記ポンプの運転を連動させる制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項5】
前記吸蔵・放出制御手段は、
前記水素ガス配管を開閉するバルブと、
前記水素ガスタンクと前記水素吸蔵合金加熱器の間の圧力差を利用した水素ガスの吸蔵、放出を行えるように、水素吸蔵合金の温度を監視しながら適宜なタイミングで前記バルブを開閉する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項6】
前記制御部は、水素吸蔵合金および/またはフューエルインジェクションレール内の燃料の温度を検出し、エンジン始動時の温度に応じて、エンジンの始動と当該加熱システムを連動させることを特徴とする請求項3または4に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項7】
前記フューエルインジェクションレールに替えて、ディーゼルエンジン用のコモンレールを用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項8】
前記燃料には、ガソリン、エタノール、若しくはこれらの混合燃料が用いられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載の水素吸蔵合金利用型燃料加熱システム。
【請求項9】
自動車のエンジンに各種流体を供給する配管と、
熱を発生する熱源として水素吸蔵合金が収容され、前記配管に水素吸蔵熱を直接伝熱する水素吸蔵合金加熱器と、
水素ガスを貯蔵する水素タンクと、
エンジンの廃熱を前記水素吸蔵合金加熱器へ一方向に伝熱するとともに、前記水素吸蔵合金を加熱する伝熱加熱手段と、
前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの間を接続する水素ガス配管と、
前記水素吸蔵合金加熱器と前記水素タンクの相互の間で移動する水素ガスを流れの方向を制御し、前記水素吸蔵合金加熱器での水素ガスの吸蔵、放出状態を制御する吸蔵・放出制御手段と、
からなることを特徴とする水素吸蔵合金利用型流体加熱システム。
【請求項10】
自動車のエンジンに各種流体を供給する配管は、インテークマニフォールドであることを特徴とする請求項9に記載の水素吸蔵合金利用型流体加熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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