説明

水素捕捉材料、調製方法および使用

本発明は、セメント系マトリックス中に少なくとも1種の金属酸化物を含む、水素などの可燃性ガスを捕捉することが可能な材料に関する。本発明はまた、このような材料の調製、またその材料の種々の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素などの可燃性ガス(flammable gases)を除去するための技術分野に属する。
【0002】
より具体的には、本発明は、鉱物質マトリックス中に、被覆された水素ゲッター(getter)を少なくとも1種含む材料を提案しており、この材料は、特に放射性廃棄物の輸送安全性の領域およびその貯蔵の可逆的段階の領域において、水素のリスクを取り扱うためのものである。
【0003】
本発明はまた、このような材料の調製方法、その使用、および可燃性ガスの除去方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
原子力施設(nuclear installations)は、モーター部品、フィルター、金属廃棄物、瓦礫、ガラスなどのきわめて多岐にわたる性質の物体および材料を含む可能性がある、ある量の「技術的廃棄物(technological waste)」を発生する。この廃棄物の中には、紙、木、木綿などのセルロース系有機材料、または、ビニルもしくはポリウレタンの包装用カバー、ブーツ、手袋、およびポリマー材料による多岐にわたる物体などのプラスチック材料の形態の有機材料も見出される。全てのこれらの廃棄物は、水分および有機質液体(油、炭化水素など)などの少量の液体を含有する可能性もある。全てのこれらの廃棄物材料は、原子力施設内にそれらが滞留する間に活性化されたか、または、これらの施設内でそれらが使用される間に、放射性ウランもしくはプルトニウム粉末によって汚染されたかのいずれかの放射性材料である。技術的廃棄物は、処理および貯蔵センターに定期的に排出される。このために、技術的廃棄物は、樽、厨芥ビンもしくはケースなどの容器内で調整され(conditioned)、次いでこれらはコンテナ内に置かれる。
【0005】
技術的廃棄物の輸送および貯蔵は、輸送される材料の性質に関連する特異的な問題を投げかける。実際、前述したように、これらの廃棄物はしばしば、ウランまたはプルトニウムで汚染された、固体有機材料もしくは残留液体の形態の有機材料、またはさらにある量の水分を含有しており、ウランまたはプルトニウムは、これらの材料に放射性を付与する。ここで、ウランおよびプルトニウムは、α粒子の放射体であり、α粒子は特に、有機分子を解離させて、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および窒素などのガス状化合物ならびに可燃性ガスを放出させる性質を有する。「放射線分解(radiolysis)」と呼ばれるこの現象は、プラスチック材料および炭化水素中に含有されるものなどの炭素質および水素化有機化合物の分子の解離によって、または水素の生成を伴う水分子の解離によって起こる。
【0006】
放射線分解による、可燃性ガス、特に水素の生成は、主として、技術的廃棄物を、比較的制約された体積の密閉エンクロージャー(closed enclosure)内に閉じ込める場合に問題となる。実際、これらの放射線分解ガスは、閉じ込められた体積内で放出されて、可燃性ガスが急速に高濃度に到達する恐れがある。
【0007】
この技術的廃棄物を輸送する間、また輸送容量を最適化するため、同一コンテナ内に著しい数の廃棄物容器が置かれ、このことが、廃棄物および容器から漏れ出る可燃性ガス向けにコンテナ内で使用可能な自由空間を少なくしている。さらに、蓋で密閉され、場合によって目地により圧着される廃棄物調整用容器は、ある種の封印(seal)を有する。この場合、可燃性ガスは、それぞれの容器内部に存在する残留自由空間によって形成される、閉じ込められた空間内に優先的に蓄積される。
【0008】
一般に、放射線分解により生成される可燃性ガスは、それらが空気などの他のガスの存在中に置かれる場合、それらの濃度がある限界値、いわゆる「可燃閾値(flammability threshold)(爆発限界)」を超えると、爆発性混合物を形成する。水素の場合、空気中の可燃閾値は、約4%である。したがって、空気中の水素濃度がこの閾値を超えると、熱源または火花によって閉じ込められたエンクロージャー内でこの混合物が発火するのに、または激しい爆燃を生じるのに十分となる恐れがある。
【0009】
種々の研究および観察は、水素化成分を含む放射性材料を収容する密閉エンクロージャー内で、放射線分解により生成される水素などの可燃性ガスの濃度が、数日以内に約4%の値に達することがあり得ることを示している。この状況は、特に、技術的廃棄物材料が、強いα粒子を放射し、また多くの有機分子を含有する場合に該当する。
【0010】
現在、コンテナは、開梱されるまで、かなり長期間閉じたままであることが普通である。この場合、コンテナのエンクロージャー内または廃棄物を満たした容器内で、輸送中生じる衝撃または摩擦に起因する火花が、伝火(inflammation)または爆発の原因となる恐れがある。このような伝火または爆発は、コンテナの積荷全体に広がる恐れがあり、このことは公共高速道路上の重大な事故のリスクとなる。コンテナがその輸送中に、偶発的な火災状況に巻き込まれる場合、同等のリスクが存在する。さらに、事故のリスクは、コンテナを開き、容器を降ろし、またそれらを開く可能性のある最終操作の間、存続する。実際、これらの操作は、多くの取扱い操作を必要とし、次いで、これらの取扱い操作が危険である可能性がある。
【0011】
放射性材料を収容しようとするいかなる密閉エンクロージャーにおいても、水素などの可燃性ガスが蓄積されるリスクを考慮に入れることが特に重要である。したがって、放射線分解により生成される水素などの可燃性ガスの除去を可能にし、それにより水素爆発のリスクを避けるためには、手だてを採る必要がある。
【0012】
放射性廃棄物の輸送中に水素を捕捉することが可能な多くの化合物が提案されている(有機化合物、金属の水素化物および酸化物など)[1]。文献において一般に「ゲッター」と呼ばれるこれらの水素捕捉剤(hydrogen scavengers)の使用の選択は、水素の反応の可逆性、および材料の反応の可逆性によって決まる。ゲッターとの水素の反応を妨げることができるガス状毒物の問題を取り扱うことにも、困難が存在する。
【0013】
放射性廃棄物を輸送するコンテナなどの密閉したエンクロージャーの内部に見出される水素などの可燃性ガスを除去する技術は、本質的に、水素および酸素を再結合させて水とする反応を触媒するゲッター(または、触媒的水素再結合剤)を、エンクロージャー中に導入することに基づいている。水素および酸素の接触点では、水素は、空洞の空気中に存在する酸素と結合して、接触酸化の機構によって水を生成する。特許出願FR 2 874 120 [2]は、密閉エンクロージャー内における、a)固体不活性担体に担持された、エンクロージャーの酸素による水素の酸化反応の触媒、およびb)COのCO2への酸化反応の触媒の使用を記述している。第1の触媒は、パラジウムを含浸させたアルミナの形態が有利であるようであり、また第2の触媒は、CuOおよびMnO2を含む混合物の形態が有利であるようである。
【0014】
白金およびパラジウムなどの種々の触媒と、黒鉛、酸化アルミニウムおよび炭酸バリウムなどの種々の担体とを使用する有機ゲッターの多くの組合せが特許化されている。すなわち、米国特許第5,837,158号および米国特許第6,063,307号は、有機ポリマー、水素化触媒および不活性希釈剤を含む、密閉された空間から水素を除去する組成物を記述している[3、4]。米国特許第7,001,535号は、水素と、水素の接触酸化により生成される水とを除去する組成物であって、有機ポリマー、水素化触媒、およびポリアクリレート吸収液体水を含む組成物を提案している[5]。これらの種々の組成物は、Vacuum Energy, Inc.(USA)により販売されている[6]。一酸化炭素、四塩化炭素などの毒物の処理は、反応性化合物(ゼオライト、HOPCALITE(登録商標))を添加すること[7]、または有機ゲッターをPVCまたはポリスチレンで被覆すること[8]により行われる。この技術の使用は、有機化合物の存在、および放射線照射に対するこれらの感受性によって制限される。
【0015】
金属水素化物に関しては、新規なエネルギー技術の領域内で、水素を貯蔵する多くの化合物が研究されている[9]。ジルコニウム、バナジウム、鉄、アルミニウムおよびニッケル系の合金の使用に関する多くの資料が入手可能である。これらの材料の成形は、標準的な冶金学的技術に基づいている。
【0016】
水素を捕捉するのに、金属酸化物も使用できる[10]。国際出願WO 2006/064289は、2種の金属酸化物の使用、特に酸化パラジウムおよび遷移金属酸化物の使用を記述している[11]。この国際出願において、水素ゲッターは、特にペレットとして示され、この金属酸化物の混合物は、ゼオライトなどの湿気を吸収する材料、およびシリカフュームなどの結合剤をさらに含むことができる。米国特許第6,200,494号は、金属パラジウムと遷移金属酸化物との混合物を提案している[12]。米国特許第5,888,925号は、白金族からの金属の酸化物と、ゼオライト型の乾燥力のあるモレキュラーシーブとを含む水素ゲッターであって、マトリックスを形成するためにシリコーン系エラストマーと混合された水素ゲッターを記述している[13]。しかし、この結合剤は、放射線分解に敏感であるという欠陥を有する。
【0017】
使用できる好ましい金属酸化物の中でも、酸化銀を触媒とした酸化マンガンは、室温から水素と反応する。A.Kozawaによれば、MnO2(90質量%)およびAg2O(10質量%)の混合物は、水素を捕捉する最大能力のための最適混合物であるようである[14]。この反応性混合物の成形については、粉末成形により高さ1cmを有するペレットを得ることが提案された[15]。しかし、このような金属酸化物を含有する具体的な水素ゲッターであって、放射線分解に敏感ではなく、かつ、毒性ガスを処理することができるものは全く提案されていない。
【0018】
米国特許第3,939,006号は、電気化学電池および特に密封ガルバニ電池の分野に属する。この特許は、3種の本質的成分を含む水素吸収材料を記述している:(1)金属酸化物型の、水素と反応する物質、(2)水素の酸化反応の触媒、および(3)ユニット全体として成分(1)および(2)を保持する結合剤。好ましい結合剤は、W/C比0.0875を有するポルトランドセメントである(セメント80gについて水7mlを使用している実施例1を参照)[18]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許出願FR 2874120
【特許文献2】米国特許第5,837,158号
【特許文献3】米国特許第6,063,307号
【特許文献4】米国特許第7,001,535号
【特許文献5】国際出願WO 2006/064289
【特許文献6】米国特許第6,200,494号
【特許文献7】米国特許第5,888,925号
【特許文献8】米国特許第3,939,006号
【特許文献9】米国特許第4,252,666号
【特許文献10】特許出願EP 0900771
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、放射性材料を収容する密閉エンクロージャー内において、または密閉エンクロージャー内でなくても、長期間にわたって可燃性ガスおよび特に水素を除去することができるデバイスへの必要性が存在し、このデバイスは、取扱いおよび調製が容易で、かつ放射線分解に敏感でないものとすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明により、上掲の欠点および技術的問題を少なくとも部分的に改善する方策を見出すことができる。実際に、本発明は、水素などの可燃性ガスを除去するための方法およびデバイスであって、水素を捕捉する化合物(いわゆる「ゲッター」)を、セメント系マトリックス、すなわち、水硬性結合剤もしくは非晶質アルミノケイ酸塩ポリマーに基づくマトリックス中に分散させ、被覆し、かつ/または組み込んで、水素の拡散を可能とし、かつそれにより、その水素がそのゲッターと反応することを可能にする方法およびデバイスを提案する。
【0022】
実際には、マトリックス中の水素ゲッターをコーティングすることは、決して水素などの可燃性ガスに対する水素ゲッターの反応性を改良するものではない。本発明により、鉱物質マトリックスを選択することによって、材料の放射線分解が抑制されるのである。
【0023】
さらに、このセメント系マトリックスは、放射線分解ガス中の水素などの可燃性ガスと同時に存在する酸を中和することができる化学種の貯蔵場所を形成し、これにより酸による水素ゲッターへの毒作用を妨げる。したがって、本発明において適用するセメント系マトリックスは、HClなどの酸性毒性ガスを捕捉する利点をもたらし、この捕捉は化学反応によるものである。無機マトリックスを配合することにより、セメント/水素ゲッター混合物の気孔率を制御し、それにより水素ゲッターへの潜在的な被毒作用を抑制することが可能になる。
【0024】
最後に、本発明の目標材料(material object)は、調製し易く、取扱いが容易であり、かつ、すぐに使用できる材料である。
【0025】
より詳細には、本発明は、セメント系マトリックス中に少なくとも1種の金属酸化物を含む、可燃性ガスを捕捉することが可能な材料を提案する。
【0026】
本発明の目標材料は、有利に水素を捕捉することが可能である。本発明の範囲内で、水素とは水素ガスH2、およびその同位体形態をいう。「水素の同位体形態」とは、少なくとも1個の式21Hの重水素を含み、HDおよびD2などのDにより表される重水素化形態;少なくとも1個の式31Hのトリチウムを含み、HTおよびT2などのTにより表されるトリチウム化形態;ならびに、DTなどの混合形態(すなわち、重水素化もされ、トリチウム化もされた形態)をいう。
【0027】
本発明の目標材料の範囲内において、その金属酸化物の不可逆還元によって水素を捕捉することが可能である、任意の金属酸化物が使用できる。実際、このような水素ゲッターは、加熱により、しかし水素を全く放出させることなく部分的に再生することができる。したがって、この捕捉は不可逆的である。本発明の目標材料において、前記金属酸化物は、前記材料のセメント系マトリックス中において被覆され、分散され、かつ/または組み込まれることが見出されている。本発明の範囲内において適用される金属酸化物は、白金族に属する金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、遷移金属の酸化物、またはこれらの混合物であることが有利である。特に、本発明の範囲内において適用される金属酸化物は、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ラジウム、酸化マンガン、銀により触媒される酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化銀、酸化ジルコニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ここで、「混合物」とは、少なくとも2種の、少なくとも3種の、または少なくとも4種の上述した異なる酸化物の混合物をいう。
【0028】
本発明の特定の用途では、使用する金属酸化物は、銀により触媒される酸化マンガン(MnO2)である。米国特許第4,252,666号[14]において定義されているように、銀により触媒される酸化マンガンは、酸化マンガンと、金属銀、銀に基づく化合物、またはこれらの混合物との混合物である。得られる有利には均一である混合物において、銀は、触媒量、すなわち、酸化マンガンと水素などの可燃性ガスとの間の反応を触媒するのに十分な量で存在する。銀系化合物は、特に、酸化銀、酢酸銀、炭酸銀、クロム酸銀、二クロム酸銀、硝酸銀、窒化銀、過マンガン酸銀、メタリン酸銀、ピロリン酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、塩化銀、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0029】
本発明の最も特定の用途では、使用する金属酸化物は、酸化マンガン(MnO2)と酸化銀(Ag2O)との混合物である。本発明の範囲内で適用するMnO2/Ag2O 混合物において、銀の量は、前記混合物の全重量に対して、有利には、0.5重量%〜30重量%、特に1重量%〜10重量%である。
【0030】
「セメント系マトリックス」とは、本発明の範囲内において、微粉砕材料と水もしくは塩水(saline solution)とを含有する可塑性混合物を硬化させた後に得られる、乾燥条件で固体であり且つ多孔質である材料であって、前記可塑性混合物が、時間が経つと凝結し、また硬化することが可能である材料をいう。この混合物は、「セメント系混合物」または「セメント系組成物」の用語のもとで呼ぶこともできる。当業者に知られている任意の天然または合成のセメント系マトリックスを、本発明の範囲内において使用することができる。
【0031】
本発明の第1の実施形態において、本発明の範囲内で適用するセメント系マトリックスは、セメント系混合物の微粉砕された材料が水和する結果として硬化する、水硬性セメント系マトリックスである。セメント系混合物の微粉砕された材料は、全体としてもしくは部分的に、微粉砕されたクリンカーからなる。「クリンカー」とは、
石灰石、
50%〜60%の範囲のCaO含量を有する石灰石、
普通ボーキサイトまたは赤色ボーキサイトなどのアルミナの供給源、
粘土、および
石膏、硫酸カルシウム半水和物、プラスター、天然硬石膏、またはスルホ石灰質アッシュ(sulfocalcic ashes)などの硫酸塩の供給源
によって構成される群から選択される1種または複数の成分を含む混合物であって、
前記(1種または複数の)成分が、破砕され、均一化され、かつ1,200℃を超える、特に1,300℃を超える、とりわけ1,450℃のオーダーの温度に加熱された混合物をいう。「1,450℃のオーダーの温度」とは、1,450℃±100℃の温度、有利には1,450℃±50℃の温度をいう。高温におけるこのか焼工程は、「クリンカー形成(clinkerization)」と呼ばれる。クリンカー調製後およびその微粉砕前もしくは微粉砕中に、さきに定義した硫酸塩供給源などの少なくとも1種の他の添加剤をクリンカーに添加することができる。
【0032】
好都合には、本発明の範囲内で適用する水硬性セメント系マトリックスは、0.3〜1.5、特に0.4〜1のW/C比を有する。「W/C比」とは、水(または塩水)の量を、セメント(すなわち、全く水または塩水を含まないセメント系混合物に相当する乾燥したセメント系混合物)の量で割った質量比をいう。これらの量は、セメント系マトリックスを配合する時に適用する量である。0.3〜1.5、特に0.4〜1のW/C比は、本発明による材料中においてガスを拡散させるため、したがって可燃性ガスを捕捉するために最適な、水硬性セメント系マトリックス中における気孔の最適量および最適孔径を保証する可能性をもたらすものである。
【0033】
本発明のこの第1の実施形態において、セメント系マトリックスは、ポルトランドセメントまたは混合ポルトランドセメントとすることができる。ポルトランドセメントは、50%〜70%のケイ酸三カルシウム[(CaO)3SiO2]、10%〜25%のケイ酸二カルシウム[(CaO)2SiO2]、5%〜15%のアルミン酸三カルシウム[(CaO)3Al2O3]、5%〜10%の鉄アルミン酸四カルシウム[(CaO)4Al2O3Fe2O3]を有利に含む。このようなポルトランドセメントは、「混合ポルトランドセメント」を得るために、第二の化合物と混合することができ、この場合、石灰石または高炉スラグなどの第二の化合物の量は、前記混合ポルトランドセメントの全重量に対して3重量%超、特に5重量%〜80重量%、とりわけ10重量%〜60重量%である。適用するポルトランドセメントまたは混合ポルトランドセメントは、0.3〜1.5、特に0.4〜1のW/C比を有することが有利である。
【0034】
本発明のこの第1の実施形態において、セメント系マトリックスは、アルミナセメント系マトリックスとすることもでき、すなわち、そのクリンカーは、大部分アルミン酸カルシウムを含む。適用するアルミナセメント系マトリックスは、有利には、0.3〜1.5、特に0.4〜1のW/C比を有する。
【0035】
さらに、本発明のこの第1の実施形態において、セメント系マトリックスは、サルホアルミネート質(sulfo-aluminous)および/またはフェロアルミネート質(ferro-aluminous)セメント系マトリックスとすることもできる。特許出願EP 0900771は、特にサルホアルミネート質およびフェロアルミネート質クリンカーに基づくセメント系混合物を記述している[16]。これらのクリンカーは、急硬性状を有し、さきに定義した、50%と60%の間で変動するCaO含量を有する石灰石などの少なくとも1種の石灰源、少なくとも1種のアルミナ供給源、および少なくとも1種の硫酸塩の供給源を含有する混合物を、1,200℃〜1,350℃の範囲の温度においてクリンカー形成させることによって得られるセメント質結合剤である。サルホアルミネート質クリンカーは、28〜40%の間のAl2O3、3%〜10%のSiO2、36%〜43%のCaO、1%〜3%のFe2O3、および8%〜15%のSO3を含むことが有利である。これに関し、フェロアルミネート質クリンカーは、25%〜30%のAl2O3、6%〜12%のSiO2、36%〜43%のCaO、5%〜12%のFe2O3、および5%〜10%のSO3を含む。適用するサルホアルミネート質および/またはフェロアルミネート質セメント系マトリックスは、有利には、0.3〜1.5、特に0.4〜1のW/C比を有する。
【0036】
本発明の第2の実施形態において、本発明の範囲内で適用するセメント系マトリックスは、ジオポリマー質(geopolymeric)セメント系マトリックスであり、このマトリックスにおいて、硬化は、高pHを有する塩水などの塩水中におけるセメント系混合物の微粉砕材料の溶解/重縮合の結果として起こる。
【0037】
したがって、この第2の実施形態において、ジオポリマー質セメント系マトリックスはジオポリマーである。「ジオポリマー」とは、本発明の範囲内において、非晶質無機アルミノケイ酸塩ポリマーをいう。前記ポリマーは、高度にアルカリ性の溶液によって活性化された、本質的にシリカおよびアルミニウムを含有する反応性材料から得られ、配合物中の固体/溶液質量比は低い。ジオポリマーの構造は、酸素原子を共有するそれらの頂点で結合された、ケイ酸塩(SiO4)およびアルミン酸塩(AlO4)の四面体で構成されるSi-O-Al格子からなる。この格子の内部に、補償カチオン(1個または複数)とも呼ばれる、(1個または複数の)電荷補償カチオンが見出され、それにより錯体AlO4-の負電荷を補償することが可能である。前記(1個または複数の)補償カチオンは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)などのアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)などのアルカリ土類金属、ならびにこれらの混合物からなる群から有利に選択される。本発明の範囲内で適用するジオポリマー質セメント系マトリックスを調製するため使用することができる、本質的にシリカおよびアルミニウムを含有する反応性材料は、非晶質アルミノケイ酸塩を含有する固体供給源とすることが有利である。これらの非晶質アルミノケイ酸塩は、特に、天然アルミノケイ酸塩の鉱物、例えば、イライト、束沸石(stilbite)、カオリナイト、パイロフィライト、紅柱石(andalusite)、ベントナイト、カイヤナイト、ミラライト(milanite)、グロベナイト(grovenite)、アメサイト、コージライト、長石質(feldspath)、アロフェンなど;メタカオリンなどのか焼天然アルミノケイ酸塩の鉱物;純粋なアルミノケイ酸塩に基づく合成ガラス;アルミナセメント;軽石;フライアッシュおよび高炉スラグなどの工業的利用からのか焼された副生成物もしくは残渣(それぞれ石炭の燃焼から得られ、また高炉における鉄鉱石(またはアイアンストーン)の鋳鉄への変換中に得られる);ならびにこれらの混合物から選択される。
【0038】
ジオポリマー形成の分野で「活性化溶液」としても知られている高pHを有する塩水は、シリカ、コロイド状シリカ、およびガラス状シリカからなる群から特に選択されるケイ酸塩成分を含有していてもよい、高度にアルカリ性の溶液である。「高度にアルカリ性」または「高pH」は、pHが9を超える、特に10を超える、とりわけ11を超える、またより特定的には12を超える溶液をいう。
【0039】
高pHの塩水は、イオン溶液もしくは塩の形態の、補償カチオンまたは補償カチオン混合物を含む。したがって、高pHの塩水は、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、ケイ酸カリウム(K2SiO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化セシウム(CsOH)、ならびに、これらの硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩誘導体などの水溶液から特に選択される。
【0040】
本発明の目標材料において、金属酸化物は、前記材料の全質量に対して最高で80質量%の組込み濃度まで、セメント系マトリックス中に組み込まれる。この組込み濃度は、前記材料の全質量に基づいて5質量%〜70質量%、特に10質量%〜50質量%であることが有利である。
【0041】
本発明の目標材料は、求められる用途に応じて、小さい粒径または大きな粒径の種々の形態で実現することができる。したがって、本発明の目標材料は、微粉末、粗粉末、粒状物、顆粒、ペレット、ビーズ、球状物、塊、棒状物、円柱状物、板状物、またはこれらの混合の形態とすることができる。これらの種々の形態は、特に、本発明の目標材料のセメント系マトリックスが硬化する前の可塑性によって得ることができる。
【0042】
本発明は、放射線分解または化学反応によって少なくとも1種の可燃性ガスを生成し得る放射性材料を収容することができる密閉エンクロージャーにも関する。密閉的に封印することができる本発明のエンクロージャーは、上述により定義した少なくとも1種の材料を、さらに収容する。
【0043】
本発明の目標エンクロージャー内に収容することができる放射性材料は、原子炉(nuclear reactor)向けに意図される燃料要素を製造もしくは加工する作業場に由来する、またはこのような原子炉に由来する、前述の技術的廃棄物材料であってよい。本発明の目標物である密閉エンクロージャーは、容器、樽、プレキャストコンクリート(pre-concreted)樽、コンテナ、またはプレキャストコンクリートコンテナとして有利に実現することができる。
【0044】
実際には、放射性材料の輸送に関連する特定の用途において、放射性材料は、一般に、コンテナ内部に固定された容器(または樽)などの密閉エンクロージャー内において調整される。次いで、本発明による材料を、これらの容器内部の有利な位置に設置する。これにより、水素が発生する場所で直接水素を除去することが可能になる。次いで、水素の極く一部だけが、この容器から流出し、コンテナ内の自由空間中に拡散するであろうが、このコンテナ内で、やはりこの自由空間に少量設置した本発明による材料によって、除去され得る。
【0045】
容器が封印されている場合、本発明による材料を、十分な量でこれらの容器の内部だけに置くことを選択することができる。実際、そうすれば、水素は容器内で除去され、コンテナのエンクロージャー内にほんの僅か拡散するだけであるため、コンテナの雰囲気中の水素濃度は常に問題にならないものとなるであろう。
【0046】
本発明による材料を容器中に導入することによって、それらの容器を最後に荷降ろしした後も、継続して水素の蓄積を防止することが可能である点に注目されたい。さらに、これらの容器は、現場で長期間貯蔵されることが意図されており、貯蔵現場で水素除去を継続して確保するために、本発明による材料を、場合により更新することができる。言い換えると、本発明による材料の使用は、輸送中に密閉エンクロージャー内に生じる可燃性ガスを除去することに限定されない。
【0047】
本発明はまた、上述により定義した複合材料の調製方法にも関する。この調製方法は、セメント系混合物中に少なくとも1種の金属酸化物を含有する水素ゲッターを組み込むことからなる工程を含む。
【0048】
特に、本発明による調製方法は、
a)場合により、少なくとも1種の金属酸化物、有利には、上述により定義した金属酸化物を含有する水素ゲッターを調製する工程;
b)工程(a)において場合により調製した水素ゲッターを、セメント系混合物中に組み込む工程
を含む。
【0049】
本発明による方法の工程(a)は、任意選択的なものである。実際、本方法において使用することができる少なくとも1種の金属酸化物を含有する水素ゲッターは、商業的に入手可能な水素ゲッターであってよく、セメント系マトリックスに被覆する前に何らの特別の調製も要しない。
【0050】
別法として、本発明による調製方法は、
a)少なくとも1種の金属酸化物、有利には、上述により定義した金属酸化物を含有する水素ゲッターを調製する工程;
b)工程(a)において調製した水素ゲッターを、セメント系混合物中に組み込む工程
を含むことができる。
【0051】
この場合、当業者が本方法の工程(a)を適用しなければならない場合、すなわち、少なくとも1種の金属酸化物に基づく水素ゲッターを調製しなければならない場合には、当業者は、この調製を容易に実行することができるであろう。
【0052】
すなわち、適用する金属酸化物が、酸化マンガン(MnO2)と酸化銀(Ag2O)との混合物である場合、この方法の工程(a)は、MnO2、有利には活性化された形態のMnO2と、Ag2Oとを混合する工程からなり、この工程は撹拌による。例として、超音波による簡単な撹拌、手動撹拌、ロッド、ブレード、プロペラなどを用いる機械的撹拌機による機械的撹拌、またはこれらの撹拌技術の組合せを挙げることができる。これによって得られる混合物を、水に添加する。これは、粉末の分散を促進するためである。使用する水量は、金属酸化物の混合物に基づいて20重量%〜60重量%、特に30重量%〜50重量%、とりわけ40重量%のオーダーであることが有利である。「40重量%のオーダーで」とは、40重量%±5重量%を意味する。次いで、この全体を、オーブン内で15分〜6時間、特に30分〜4時間、とりわけ2時間のオーダーの期間乾燥させる。「2時間のオーダーで」とは、2時間±30分を意味する。
【0053】
本発明による方法の工程(b)の過程でセメント系混合物に組み込まれる前に、水素ゲッターを、主として金属酸化物からなる粉末および/または集塊物として実現することが有利である。
【0054】
本方法の工程(b)に適用するセメント系混合物は、上述により定義した通りである。したがって、このセメント系混合物は、
i)水、
ii)クリンカー、特に、上述により定義したクリンカー、
iii)硫酸塩の供給源、特に、上述により定義した硫酸塩の供給源、
iv)高pHの塩水、特に、上述により定義した高pHの塩水、
v)非晶質アルミノケイ酸塩を含有する固体供給源、特に、上述により定義した非晶質アルミノケイ酸塩を含有する固体供給源、ならびに
vi)ケイ酸塩成分、特に、上述により定義したケイ酸塩成分
により構成される群から選択される1種または複数の成分を含む。
【0055】
水硬性セメント系マトリックスの場合、(i)、(ii)および(iii)から選択される少なくとも2種の成分の混合物が有利に選択されるが、ジオポリマー質セメント系マトリックスについては、セメント系混合物は(iv)、(v)および(vi)から選択される少なくとも2種の成分を含むであろう。
【0056】
セメント系混合物を構成する成分は、水素ゲッターの組込みの前、または水素ゲッターの組込みと同時に、一緒に混合することができる。セメント系混合物中に水素ゲッターを組み込む際、この工程を撹拌により行うことができる。上述により企図した撹拌を適用する実施形態が、本発明による方法の工程(b)における撹拌にも当てはまる。
【0057】
本発明による方法の工程(b)の後、水素ゲッターが組み込まれたセメント系混合物を、セメント系混合物を硬化させる条件にさらす(工程c))。本方法の工程(c)において、水硬性セメント系混合物またはジオポリマー質セメント系混合物を硬化させるための当業者に知られる任意の技術を使用することができる。
【0058】
この硬化工程は、養生する(curing)工程および/または乾燥する工程からなることが有利である。工程(c)が養生する工程を含む場合、この養生工程は、水素ゲッターがその中に組み込まれているセメント系混合物を取り囲む雰囲気を湿らせる工程、または前記混合物上に不浸透性コーティングを施す工程によって達成することができる。この養生する工程は、10℃〜60℃、特に20℃〜50℃、とりわけ30℃〜40℃の温度下で適用することができ、また1日〜40日、特に5日〜30日、とりわけ10日〜20日の期間継続させることができる。
【0059】
工程(c)が乾燥する工程を含む場合、この乾燥工程は、30℃〜110℃、特に40℃〜90℃、とりわけ50℃〜70℃の温度で達成でき、また6時間〜10日、特に12時間〜5日、とりわけ24時間〜60時間の期間継続させることができる。工程(c)は、上述により定義したとおり、養生する工程に続いて乾燥する工程を含むことが有利である。105℃のオーダー(すなわち105℃±5℃)の温度で乾燥することにより、セメント系マトリックス中の残留水分を処理し、それにより放射線分解の現象を避けることが可能である点に注目されたい。
【0060】
本発明による方法の工程(c)が、上述により定義した養生する工程および乾燥する工程を含む場合、得られる材料は、それを通して捕捉されることとなる(1種または複数の)ガスが(1種または複数の)金属酸化物に接触することができる最適な気孔率を有する。実際には、このような養生工程およびこのような乾燥工程を有する方法によって、最適な拡散経路が得られる。
【0061】
さらに、水素ゲッターがその中に組み込まれているセメント系混合物を硬化させる前に、このセメント系混合物を型枠内に打ち込んで、硬化させた結果として所定の形状がもたらされるようにすることができる。一方、本発明による材料の形状は、本方法の工程(c)の後で、特に、硬化した生成物に、1種または複数の次の処理:切断、微粉砕、破砕、平削りなどを施すことによって得ることができる。
【0062】
本発明は、水素などの可燃性ガスを除去するための、上述により定義した本発明による材料の使用、または、上述により定義した本発明による方法に従って調製することができる材料の使用にも関する。
【0063】
この使用の特定の代替方法において、水素などの可燃性ガスの除去は、その場所(in situ:系内)で達成することができる。すなわち、この代替方法は、少なくとも一片の技術的廃棄物または少なくとも1種の放射性材料を被覆するための、上述により定義した本発明による材料の使用、または、上述により定義した本発明による方法に従って調製できる材料の使用に関する。この技術的廃棄物またはこの放射性材料は、放射線分解または化学反応によって、水素などの可燃性ガスを発生させる恐れがある。その際、前記可燃性ガスを、(1種または複数の)技術的廃棄物または放射性材料を被覆する本発明によるセメント系材料によって、その場所で捕捉することができる。適用することができる技術的廃棄物または放射性材料は、上述により定義した通りである。
【0064】
より詳細には、この代替方法は、上述により定義した工程(b)の後、かつ、上述により定義した工程(c)の前に得られた材料において、少なくとも一片の技術的廃棄物または少なくとも1種の放射性材料を被覆する工程からなる。
【0065】
最後に、本発明は、密閉エンクロージャー内における水素などの可燃性ガスの除去方法であって、前記エンクロージャー内に、上述により定義した本発明による材料を置く工程からなる方法に関する。この方法において、上述により企図した任意の密閉エンクロージャーを使用することができる。
【0066】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照しながら、以下に例示として且つ限定することなく示す実施例を読むことによって、当業者にさらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、水素ゲッター(MnO2/Ag2O)に基づく種々の被覆材料の捕捉容量(trapping capacity)の変化を、時間に対して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
1. 水素ゲッターを有する被覆セメントの調製
水素ゲッターを調製するための金属酸化物は、活性化MnO2(Merck、>90%)およびAg2O(Merck、>99%)である。両化合物を機械的に混合し、この混合物に水を添加し、次いでその全体を、オーブン内で2時間乾燥する[16]。
【0069】
種々の結合剤から、セメント/水素ゲッター被覆材料を調製した。水素ゲッターを有する被覆材料を調製するために使用した3種の結合剤は、以下のとおりである:
ジオポリマー(被覆材料No.1)、
ポルトランドセメントCEM I (被覆材料No.2)、
サルホアルミネート質(被覆材料No.3)。
【0070】
ジオポリマーとして使用した製品は、メタカオリンPieri Premix MK(Construction Products等級)、KOH(Prolabo、98%)、およびSiO2(Tixosil、Degussa)である。
【0071】
ポルトランド/ゲッター被覆材料およびサルホアルミネート質/ゲッター被覆材料を、それぞれ、CEM I 52.5N型のセメント(Lafarge Le Teil)、およびクリンカー(yeelimite、βC2S)と石膏との80/20(重量による)混合物により調製した。
【0072】
種々の被覆材料/ゲッターの組成を、以下のTable 1(表1)に報告する。
【0073】
【表1】

【0074】
被覆材料を練混ぜた後、これらは32℃で14日間そのまま養生し、次いで60℃で48時間乾燥を行った。
【0075】
2. 被覆材料の水素捕捉容量
被覆材料1、2および3の水素捕捉容量を測定するために、純粋水素圧力を追跡する測定を行い、それにより水素捕捉容量を測定することができた。この捕捉容量を、水素ゲッターの質量当りに換算した(図1)。
【0076】
水素ゲッター(MnO2/Ag2O)に基づく種々の被覆材料の捕捉容量を、時間に対して追跡した。それらの結果を図1に示す。MnO2/Ag2O混合物(質量比90/10)の理論容量は、196 cm3/gである[17]。したがって、被覆材料1および2について、セメント系マトリックスによって水素ゲッターを成形したことは、MnO2/Ag2O混合物の水素に対する反応性に影響を及ぼさない。40日後に、水素捕捉容量は120cm3/gを超え、まだ安定化されていない。被覆材料3の水素捕捉反応速度ははるかに遅く、40日後に80cm3/gを超える水素捕捉容量である。
【0077】
3. 結論
セメント系マトリックス中に金属酸化物に基づく水素ゲッターを組み込むことにより、水素に対する反応性を保持しながら、単純化された成形を施すことが可能になる。セメント系マトリックスを使用する主な利点は、放射線分解に対する抵抗性、酸性化学種の中和特性、ならびに、被覆材料の気孔率を制御することによるゲッターの毒性ガス処理性である。
【0078】
(参考文献)
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系マトリックス中に少なくとも1種の金属酸化物を含む、可燃性ガスを捕捉することが可能な材料。
【請求項2】
前記可燃性ガスが水素であることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ラジウム、酸化マンガン、銀により触媒される酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化銀、酸化ジルコニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記金属酸化物が、酸化マンガン(MnO2)と酸化銀(Ag2O)との混合物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記セメント系マトリックスが、水硬性セメント系マトリックスであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記セメント系マトリックスが、ポルトランドセメントまたは混合ポルトランドセメントであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記セメント系マトリックスが、サルホアルミネート質および/またはフェロアルミネート質セメント系マトリックスであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記セメント系マトリックスが、ジオポリマー質セメント系マトリックスであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
放射線分解または化学反応により、少なくとも1種の可燃性ガスを生成し得る放射性材料を収容することが可能な密閉エンクロージャーであって、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1種の材料をさらに収容することを特徴とする密閉エンクロージャー。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の材料の調製方法であって、セメント系混合物中に、少なくとも1種の金属酸化物を含有する水素ゲッターを組み込むことからなる工程を含む方法。
【請求項11】
a)少なくとも1種の金属酸化物を含有する、また有利には、請求項3または4に記載の金属酸化物を含有する水素ゲッターを調製する工程;
b)工程(a)において調製した水素ゲッターを、セメント系混合物中に組み込む工程
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記セメント系混合物が、水、クリンカー、硫酸塩の供給源、高pHを有する塩水、非晶質アルミノケイ酸塩を含有する固体供給源、およびケイ酸塩成分からなる群から選択される1種または複数の成分を含むことを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記工程(b)で得られた前記水素ゲッターが組み込まれている前記セメント系混合物を、そのセメント系マトリックスを硬化させる条件にさらすことを特徴とする、請求項11または12に記載の調製方法。
【請求項14】
前記セメント系マトリックスを硬化させる条件が、10℃〜60℃、特に20℃〜50℃、とりわけ30℃〜40℃の温度下で適用され、1日〜40日、特に5日〜30日、とりわけ10日〜20日の期間継続される、養生工程であることを特徴とする、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
前記セメント系マトリックスを硬化させる条件が、30℃〜110℃、特に40℃〜90℃、とりわけ50℃〜70℃の温度で適用され、6時間〜10日、特に12時間〜5日、とりわけ24時間〜60時間の期間継続される、乾燥工程であることを特徴とする、請求項13または14に記載の調製方法。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか一項に記載の材料、または請求項10から15のいずれか一項に記載の方法によって調製することができる材料の、可燃性ガスを除去するための使用。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一項に記載の材料、または請求項10から15のいずれか一項に記載の方法により調製することができる材料の、少なくとも1片の技術的廃棄物または少なくとも1種の放射性材料を被覆するための使用。
【請求項18】
密閉エンクロージャー内における可燃性ガスの除去方法であって、前記エンクロージャー内に、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料を置く工程からなる方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−511415(P2012−511415A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540086(P2011−540086)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066769
【国際公開番号】WO2010/066811
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】