説明

水素発生方法および水素発生装置

【課題】 水素貯蔵方法、水素発生方法、水素貯蔵装置および水素発生装置を提供する。
目的とする。
【解決手段】 本発明の水素貯蔵方法は、プロチウム化が可能な状態で水素イオンを含むように処理された水を用意し、当該水に水素を含む物質又は、Mgなどの水素を発生させる物質を供給することにより水素を貯蔵する。好ましくは、水素を含む物質は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)である。好ましくは、水は、水素化金属により処理された電離水素水であり、水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つである。そして、本発明の水素発生方法は、このような水のpHを下げる物質を添加することにより水から水素ガスを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵方法、水素発生方法、水素貯蔵装置および水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイナス水素イオンは、還元力をもち、これが体内に摂取されれば、体内で発生された活性酸素(フリーラジカル)を効果的に消滅させることができる。また、水素は、酸素と反応して水となるため、水素は、地球環境に優しいクリーンなエネルギー源としても注目を浴びている。
【0003】
本発明者は、強還元特性を有する磁性セラミックボールを製造する方法(特許文献1)を発案し、このセラミックボールを水中に投入し、セラミックボールのN極から水素の気泡を生じさせることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4218939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素を常温で安定的に貯蔵し、必要に応じて水素を取り出すことができれば、水素の利用範囲は広がり、特に、水素をエネルギー源として活用することができる。
【0006】
従って、本発明は、新規でありかつ革新的な水素貯蔵方法、水素発生方法、水素貯蔵装置および水素発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水素貯蔵方法は、水素がプロチウム化された条件付け水を生成し、当該条件付け水に水素を含む物質、又は水素を発生させる物質を供給することにより水素を貯蔵するものである。好ましくは、前記水素を含む物質は、水素を含むガス、または水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)又は水素化カルシウム(CaH2)、水素化マグネシウム(MgH2)などの水素化金属全てである。水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族または第14族の金属である。また条件付け水は、プロチウム化が可能な水素イオンを含む。
【0008】
本発明に係る水素発生方法は、水素がプロチウム化された条件付け水を生成し、当該条件付け水のpHを下げることで水素ガスを発生させるものである。好ましくは、水素発生方法はさらに、条件付け水に水素を含む物質、又は水素を発生させる物質を供給することにより水素を貯蔵するステップを含む。好ましくはpHを下げる物質は、空気、酸素ガス、または塩酸である。条件付け水は、プロチウム化が可能な水素イオンを含む。好ましくは、水素化カルシウムにより水を処理し、水素化ホウ素ナトリウムを供給することで水素を貯蔵し、塩酸を加えることで水素を発生させる。好ましくは水素化マグネシウムにより水を処理し、水素化ホウ素ナトリウムを供給することで水素を貯蔵し、塩酸を加えることで水素を発生させる。好ましくは水素化カルシウムおよび水素化マグネシウムにより水を処理し、水素化ホウ素ナトリウムを供給することで水素を貯蔵し、塩酸を加えることで水素を発生させる。水素化金属で処理された水に、水素を発生させる物質又は、水素を含むガス、水素を発生させる物質を供給することで、水素を貯蔵し、塩酸を加える事で水素を発生させる。水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つである。
【0009】
本発明に係る水素貯蔵装置は、水素がプロチウム化された条件付け水を収容する収容手段と、収容手段に収容された条件付け水に水素を供給する供給手段とを有する。好ましくは水素を含む物質は、水素を含むガス、又は、マグネシウム(Mg)など、水素を発生させる物質です。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)である。また、条件付け水は、プロチウム化が可能な水素イオンを含む。水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族または第14族の金属である。
【0010】
本発明に係る水素発生装置は、水素がプロチウム化された条件付け水を収容する収容手段と、収容手段に収容された条件付け水のpHを下げる物質を供給する供給手段とを有する。好ましくはpHを下げる物質は、空気、酸素ガス、または塩酸である。また処理された水は、プロチウム化が可能な水素を含む。水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素を安定的に貯蔵することができ、また、水素ガスを安定的に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る水素貯蔵方法を説明するフローである。
【図2】本実施例の条件付けの製造方法を説明するフローである。
【図3】水素のプロチウム化の模式図である。
【図4】原水(水道水)と条件付け水のpHと酸素還元電位(ORP)の時間的変化を示すグラフである。
【図5】水素化カルシウムおよび水素化マグネシウムによってそれぞれ条件付け水のpHとORPと、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを含む水のpHとORPを示す。
【図6】水道水および条件付け水に水素ガスを吹き込んだ場合のpH、ORPおよび溶存水素(ppb)の関係を示す。
【図7】図6で水素ガスを吹き込んだときの水道水と条件付け水の84時間経過後の溶存水素とORPの関係を示す。
【図8】条件付け水の溶存水素のスケールをクローズアップしたグラフである。
【図9】条件付け水に水素ガスを5分、2回吹き込んだときの溶存水素と時間の関係を示すグラフである。
【図10】本実施例に係る水素貯蔵装置の構成例を示す図である。
【図11】本発明の実施例に係る水素発生方法を説明するフローである。
【図12】条件付けした水に酸素ガスを1時間吹き込んだときの溶存水素とORPの関係を示を示す。
【図13】条件付け水のpHを下げたときの溶存水素の変化を示すグラフである。
【図14】条件付け水に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加え、次いで、6N塩酸を加えたときのpHとORPの変化を示す。
【図15】図14のときの溶存水素とORPの変化を示している。
【図16】条件付け水に水素化ホウ素ナトリウムを供給し、その後に6N塩酸を2回投与してpHを下げたときのORPの時間的変化を示す。
【図17】図16のときの溶存水素(水素ガスの発生)の時間的変化を示す。
【図18】水素化ホウ素ナトリウムのみに6N塩酸を添加したときの溶存水素とORPの推移を示すグラフである。
【図19】水素化カルシウムにより条件付けされた水に水素化ホウ素ナトリウムを加え、その後、2度の6N塩酸を加えたときのpHとORPの推移を示すグラフである。
【図20】図19のときの溶存水素とORPの推移を示す。
【図21】水素化マグネシウムにより条件付けされた水に水素化ホウ素ナトリウムを加え、その後に2度の6N塩酸を加えたときのpHとORPの推移を示すグラフである。
【図22】図21のときの溶存水素とORPの推移を示す。
【図23】水道水200mlに、水素化カルシウム0.4gと、水素化マグネシウム0.4gを入れて条件付け水を生成し、その後、500μl、1000μl、10mlの6N塩酸を3回に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図24】図23のときの水素ガスの発生状況を示す。
【図25】図25は、水道水200mlに水素化カルシウム0.8gを溶かし、6N塩酸を2度に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図26】図25のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図27】水道水200mlに水素化マグネシウム0.8gを溶かし、6N塩酸を2度に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図28】図27のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図29】条件付け水に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、酢酸を添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図30】図29のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図31】金属マグネシウムを含む水道水に塩酸を添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図32】図31のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図33】条件付け水に金属マグネシウムと塩酸を添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図34】図33のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図35】水素化マグネシウムで条件付けされた水に金属マグネシウムを添加し、さらに塩酸を添加したときのpHとORPの時間的変化を示す。
【図36】図35のときの溶存水素とORPの時間的変化を示す。
【図37】本発明の実施例に係る水素発生装置の構成例を示す図である。
【図38】本発明の実施例に係る条件付け水の水素貯蔵または水素発生の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る水素貯蔵方法を説明するフローであり、この貯蔵方法は、次のステップを含んで構成される。先ず、水素がプロチウム化が可能な状態で含まれるように処理された水(以下、条件付け水という)を用意し(ステップS101)、次に、条件付け水に水素を含むガスを供給し(ステップS102)、条件付け水に水素を常温にて安定的に貯蔵する(ステップS103)。
【0015】
図2は、条件付け水の製造方法を説明するフローである。ここでは、一例として水素化金属または水素貯蔵金属により条件付け水を生成する方法を説明する。先ず、元素周期律表上に示されているアルカリ金属、アルカリ土金属、第13族そして第14族の金属のいずれか、またはそれらの少なくとも1つの金属を含む物質を用意する(ステップS201)。次に、この物質は、高温で酸化焼成する。(ステップS202)。
【0016】
次に、物質は、高温無酸素状態(水素ガス、または水素ガスと窒素ガスの混合ガスを含む炉内)におかれる(ステップS203)。例えば、上記の炉内の温度を700℃またはそれ以上の温度に保ち一定時間、還元焼成する。次に、物質は、無酸素状態のまま、常温にさます。(ステップS204)。
【0017】
こうして水素化金属または水素化貯蔵金属が生成される(ステップS205)。高温酸化焼成から高温無酸素還元焼成を経て常温無酸素状態の処理を行うことで、炉中の水素ガスHは、H⇔H+Hのようにプラズマ化し、水素化金属すなわちイオン結合性の水素化金属が生成される。この水素化金属が水に浸されたとき、水素化金属の表面でプロチウム化が起こり、マイナス水素イオン(H)を含むアルカリ還元性ミネラルイオン水である、条件付け水、すなわち、電離水素水が生成される(ステップS206)。
【0018】
また、本発明者によって発明された特許第4218939号のセラミックボールや、特許第4404657のサンゴカルシウムを用いて条件付け水を生成することも可能である。セラミックボールやサンゴカルシウムの製造において、高温酸化焼成状態から、高温無酸素還元焼成状態を経て常温無酸素還元状態に戻る工程中に、炉の雰囲気中に含まれる水素ガスHは、H⇔H+Hのようにプラズマ化し、素材中の粘土の中に含まれる珪素が溶けてセラミック化する。サンゴカルシウム粉末中に含まれるCaCOは、CaCO→CaO→CaHと変化し、カルシウムの水素化物(水素化カルシウム=水素化金属の一種であるイオン結合性の水素化金属)ができる。このような条件付け水においても、マイナス水素イオンが発生され得る。
【0019】
図3は、水素のプロチウム化の模式図であり、H⇔2H、H⇔H、H⇔2H、H⇔Hの如く水素原子における荷電変換が起こると考えられる。水素工学の分野では、H⇔H⇔2eの物理化学反応が実験的に確かめられており、水中に置かれた水素化金属の表面では水素のプロチウム化が起こっていることは確実である。よって、水素化金属の構造表面上で、水素のプロチウム化が起こり、H⇔H⇔Hが起こり、水素化金属による処理をした水には、マイナス水素イオン(H)が含まれている。
【0020】
図4は、原水(水道水)と条件付け水とのpHとORP(酸化還元電位)の時間的変化を対比するグラフである。図中、縦軸はpHとORP(mV)、横軸は時間(h)である。原水のpHは、7よりも幾分大きい状態を継続し、ORPは約760mV程度でほぼ一定である。他方、条件付け水では、水素化金属の表面でプロチウム化が生じ、周囲の水のpHを11弱にコントロールし、そしてORPを−260mVにコントロールし、この状態が長時間(グラフでは6時間)にわたって継続される。従って、条件付け水は、原水とは全く異なる水質に変化しており、この条件が作り出されるとき、常温、有酸素状態のアルカリ還元性ミネラルイオン水の中で、マイナス水素イオン(H)がイオンとして常時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0021】
図5は、水素化金属として水素化カルシウムおよび水素化マグネシウムによってそれぞれ条件付け水のpHとORPを示し、比較例として、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを含む水のpHとORPを示す。水素化カルシウムでは、pHが13弱、ORPが約0mVであり、この状態が24時間継続されるのに対し、水酸化カルシウムでは、pHは13弱で同程度であるが、ORPは約300mVである。また、水素化マグネシウムでは、pHが11弱、ORPが−700mV〜−500mV弱の範囲で約24時間継続されるのに対し、水酸化マグネシウムでは、pHはほぼ10であり、ORPは約450mVである。このように、水素化カルシウムや水素化マグネシウムにより処理された条件付け水では、水素のプロチウム化によるマイナス水素イオン(H)がイオンとして常時間安定して存在することができる系が存在し得ることがわかる。
【0022】
再び図1に戻り、水素を含むガスの供給(ステップS102)および水素の貯蔵(ステップS103)について説明する。図6は、水道水および条件付け水に水素ガスを吹き込んだ場合のpH、ORPおよび溶存水素(ppb)の関係を示す。水道水に水素ガスを吹き込めば、それに同期して一時的にORPは下がるが、その後もとのORPに戻る。つまり、原水に水素ガスを吹き込んでも、還元力は長時間維持されない。また、溶存水素もまた一時的に上昇し、ゼロになる。他方、条件付け水に水素ガスを吹き込めば、それに同期してORPは下がるが、その後もORPは、負の電位を維持し、すなわち、マイナス水素イオン(H)がイオンとして安定して存在していることが確認できる。
【0023】
図7は、図6で水素ガスを吹き込んだときの水道水と条件付け水の84時間経過後の溶存水素とORPの関係を示している。水道水では、溶存水素が0になった場合、スターラーで攪拌しても水素ガスが発生することはない。他方、条件付け水では、溶存水素が0になってからスターラーで攪拌し続けると、84時間後に再び水素ガスが放出される。すなわち、条件付け水において水素ガスが吹き込むことで溶存水素が0になった後に水素ガスを発生するということは、水素が条件付け水に、一定期間、常温で安定的に貯蔵され得ることを意味する。図8は、条件付け水の溶存水素のスケールをクローズアップしたグラフであり、約84時間後に、溶存水素0の状態から水素ガスが発生されている。
【0024】
図9は、条件付け水に水素ガスを5分、2回吹き込んだときの溶存水素と時間の関係を示すグラフである。水素ガスを2回吹き込んだ場合、溶存水素が0になってから、148時間後に水素ガスが発生される。水素ガスを1回吹き込んだ場合と比較して、60時間後に水素ガスが放出され始める。すなわち、水素ガスを1回吹き込んだときよりも、より長い時間、水素が安定的に貯蔵されたことを確認することができる。
【0025】
このように、条件付け水では、プロチウム化された水素が、H⇔H+Hのような状態で存在し、そこに水素ガスを吹き込むと、水素ガスはプロチウム化または電離された状態で安定的に貯蔵されると考えられる。また、上記の例では、条件付け水に水素ガスを吹き込むようにしたが、水素ガス以外に、水素を含む物質、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、又は、Mgなどの水素を発生させる物質があってもよい。
【0026】
図10は、水素貯蔵装置の構成例を示す図である。水素貯蔵装置10は、条件付け水を保持する容器12と、水素ガス等の水素を含む物質を保持する容器14と、水素貯蔵タンク20とを含む。条件付け水用容器12は、流量調整弁16を介してパイプなどによって水素貯蔵タンク20に接続され、容器14は、流量調整弁18を介してパイプなどによって水素貯蔵タンク20に接続される。流量調整された条件付け水と流量調整された水素を含む物質が水素貯蔵タンク20に供給され、そこに、水素が貯蔵された条件付け水が保持される。
【0027】
また、図10に示すように、水素貯蔵装置10Aは、水素を含む物質を保持する容器12と、条件付け水/水素貯蔵タンク22とを有する構成であってもよい。この場合、条件付け水が保持されたタンク22に、水素を含む物質又は、Mgなどの水素を発生させる物質が流量調整弁16を介して供給され、タンク22内の条件付け水に水素が貯蔵される。
【0028】
次に、本実施例の水素発生方法について説明する。図11A、11Bは、水素発生方法を説明するフローチャートである。図11Aにおいて、水素貯蔵方法のときと同様に、条件付け水を用意し(ステップS301)、次いで、条件付け水に水素を貯蔵する(ステップS302)。次に、水素が貯蔵された条件付け水に酸素ガスを吹き込み(ステップS303)、条件付け水から水素を発生させる(ステップS304)。
【0029】
上記図7ないし図9で示したように、水素が貯蔵された条件付け水において、スターラーで攪拌を続けると、84時間経過後または148時間経過後に水素ガスが発生される。条件付けされた水の中で、プロチウム化した水素は、H⇔H+Hのような状態になっていると考えられるので、このような水の中のHは、何時でも自由自在に水素分子Hになり得る。そのような水に、一定量の空気または酸素ガスが吹き込まれると、H+H⇒Hの反応を起こさせることができ、溶存酸素ゼロの状態から、H、すなわち水素ガスを放出させることができる。
【0030】
図12は、条件付けした水に酸素ガスを1時間吹き込んだときの溶存水素とORPの関係を示している。酸素ガス(O)を1時間吹き込むと、その直後から水素ガスが継続的に長時間にわたり(図では80時間以上)発生される。また、ORPは、放出されたHの量に比例して徐々に上昇している。
【0031】
また、図11Bのフローチャートに示す水素発生方法では、条件付け水を用意し(ステップS301)、条件付け水に水素を貯蔵し(ステップS302)、次いで条件付け水のpHを下げ(ステップS303)、条件付け水から水素を発生させる(ステップS304)。条件付け水のpHは、水素を貯蔵した後もアルカリ性であるが(図6の例では、pH9前後である)、このpHを下げると、Hが増加され、水素ガスHが発生される。
【0032】
図13は、条件付け水のpHを下げたときの溶存水素の変化を示すグラフである。条件付け水のpHを下げるため、例えば、塩酸(HCl)を条件付け水に加えると、pHは、アルカリ性から酸性に変化する。これと同期して、ORPは、約−260mVから380mV程度に上昇する。さらに、pHが下がると、急激に水素ガスが発生され、水素ガスの発生量は、約20時間を経過したあたりから徐々に減少し、40時間程度にわたり水素ガスの発生が継続される。
【0033】
図14は、条件付け水に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加え、次いで、6N塩酸を加えたときのpHとORPの変化を示し、図15は、このときの溶存水素とORPの変化を示している。水素化金属である水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加えると、条件付け水のORPが約−800mVにまで変化し、それに応答して、図15に示すように溶存水素が上昇する。また、pHは、約12である。この状態が約20時間継続された後に、6N塩酸を加えて条件付け水のpHを下げる。pHは、約12から11強に下がると、これに同期するように水素ガスが一気に発生する。同時に、ORPが約−1000mVまで上昇する。pHが11強に低下された状態が継続している間、水素ガスの発生が継続される。図15では、約100時間強まで水素ガスの発生が続く。
【0034】
図16は、条件付け水に水素化ホウ素ナトリウムを供給し、その後に、6N塩酸を2回投与してpHを下げたときのORPの時間的変化を示し、図17は、そのときの溶存水素(水素ガスの発生)の時間的変化を示している。図17に示すように、2度の6N塩酸の投与に応答して水素ガスが大きく発生し、その溶存水素量は、約1200ppbであり、1度の6N塩酸の投与のときの水素ガスの溶存水素量が700ppb(図15を参照)よりも大きいことが確認された。
【0035】
図18は、同じ条件で水素化ホウ素ナトリウムのみに6N塩酸を添加したときの溶存水素とORPの推移を示すグラフである。この場合、6N塩酸を添加しても、水素ガスは発生しないことが確認された。
【0036】
図19は、水素化カルシウム(CaH)により条件付けされた水に水素化ホウ素ナトリウムを加えし、その後、2度の6N塩酸を加えたときのpHとORPの推移を示すグラフである。6N塩酸は、1度目に500μl、2回目に1000μlを加えている。図20は、このときの溶存水素とORPの推移を示している。ここでも、6N塩酸を加えてpHを下げると、水素ガスが発生し、2度目の6N塩酸を加えたときに水素ガスの発生が急激に増加している。
【0037】
図21は、水素化マグネシウム(MgH)により条件付けされた水に水素化ホウ素ナトリウムを加え、その後に、2度の6N塩酸を加えたときのpHとORPの推移を示すグラフである。図22は、このときの溶存水素とORPの推移を示している。ここでも、6Nの塩酸を添加してpHを下げると、水素ガスが発生し、約10,000ppbの溶存水素を計測した。
【0038】
図23は、水道水200mlに、水素化カルシウム0.4gと、水素化マグネシウム0.4gを入れて条件付け水を生成し、その後、500μl、1000μl、10mlの6N塩酸を3回に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示し、図24は、このときの水素ガスの発生状況を示している。1回目の6N塩酸の添加では、pHの下げは僅かであり、それに応じて水素ガスの発生も僅かである。2回目の6N塩酸の添加によりpHが幾分だけ下がると、水素ガスの発生が増加し始め、3回目でpHが大きく下がると、水素ガスが大量に放出された。
【0039】
図25は、水道水200mlに水素化カルシウム(CaH)0.8gを溶かし、6N塩酸を2度に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示し、図26は、このときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。測定は、溶液の上澄みである。1度目の6N塩酸は、1000μl、2度目は、10mlである。1度目の6N塩酸の添加でpHが下がり、水素ガスが発生し、2度目の6N塩酸の添加でpHが大きく下がり、これに応じて、最大で約9.5ppbの溶存水素量を計測し、また、ORPも上昇した。
【0040】
図27は、水道水200mlに水素化マグネシウム0.8gを溶かし、6N塩酸を2度に分けて添加したときのpHとORPの時間的変化を示し、図28は、このときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。ここでは、1度目、2度目の6N塩酸の添加量は、それぞれ1000μl、10mlである。1度目の6N塩酸の添加でpHが大きく下がり、これに応じて最大で約1100強のppbの水素ガスが発生し、2度目の6N塩酸の添加でも最大で1100強のppbの水素ガスが発生し、その状態が長時間継続された。
【0041】
図29は、条件付け水に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を0.8g入れ、次いで、酢酸を500μl、1000μl入れてpHを低下させたときのpHとORPの時間的変化を示し、図30は、そのときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。水素化ホウ素ナトリウムの添加によりORPが幾分低下するがpH、溶存水素は殆ど変わらない。1度目の酢酸の添加でpHは低下し、これに応答して若干溶存水素が上昇する。2回目の酢酸の添加でpHが大きく低下し、ORPが上昇し、溶存水素も大きく上昇することが観察された。
【0042】
図31は、金属マグネシウムを含む水道水に塩酸を添加したときのpHとORPの時間的変化を示し、図32は、そのときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。1回目の塩酸の添加は、500μl、2回目の塩酸の添加は、10mlである。1回目の塩酸の添加によりpHは大きく低下し、ORPは上昇し、さらに溶存水素が大きく上昇し、大量の水素が発生する。
【0043】
図33は、条件付け水に金属マグネシウムと塩酸を添加し、pHを下げたときのpHとORPの時間的変化を示し、図34は、そのときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。1回目の塩酸の添加は、500μl、2回目の塩酸の添加は、10mlである。図31に示したように、金属マグネシウムと塩酸とが反応することで大量の水素を発生させることができる。条件付けした水に金属マグネシウムを添加し、そこに塩酸を添加すると、金属マグネシウムと塩酸との反応によって発生された水素ガスが条件付け水に貯蔵される。図34に示すように、塩酸を添加したときの溶存水素の量は、図32のときの溶存水素の量と比べてはるかに小さく、このことは、水素が条件付け水に貯蔵されたことを意味する。
【0044】
図35は、水素化マグネシウムで条件付けされた水に金属マグネシウムを添加し、塩酸でpHをさげたときのpHとORPの時間的変化を示し、図36は、そのときの溶存水素とORPの時間的変化を示している。1回目の塩酸の添加は、500μl、2回目の塩酸の添加は、1000μlである。1回目の塩酸の添加によってpHが大きく下がり、ORPが上昇するが、溶存水素はさほど変化せず、塩酸の添加によって発生された水素が条件付け水に貯蔵されている。2回目の塩酸の添加によって、下がったままのpHは、殆ど変化しないが、溶存水素が大きく上昇し、大量の水素ガスが長時間にわたり発生される。
【0045】
図37は、水素発生装置の構成例を示す図である。水素発生装置30は、条件付け水を保持する容器32と、酸素ガスや塩酸等の酸を含む物質を保持する容器34と、水素発生タンク40とを含む。条件付け水用容器32は、流量調整弁36を介してパイプなどによって水素発生タンク40に接続され、容器34は、流量調整弁38を介してパイプなどによって水素発生タンク40に接続される。流量調整された条件付け水と流量調整された酸を含む物質が水素発生タンク40に供給され、そこに、水素が発生される。
【0046】
また、図37に示すように、水素発生装置30Aは、水素を含む物質を保持する容器32と、条件付け水/水素発生タンク42とを有する構成であってもよい。この場合、条件付け水が保持されたタンク42に、酸を含む物質が流量調整弁36を介して供給され、タンク42内の条件付け水から水素が発生される。
【0047】
図38は、本実施例の条件付け水の水素貯蔵または水素発生の状態を説明する図である。条件付け水には、水素がプロチウム化された状態、すなわち、H+Hのイオン化された状態で存在し、条件付け水に、Hガスやその他の水素を含む物質又は、Mgなどの水素を発生させる物質を添加すると、H(水素分子)は、H+Hのイオン化された状態で貯蔵される。他方、条件付け水に、酸素ガス(O)、空気、塩酸、酢酸などの酸を含む物質またはpHを下げる物質を添加すると、H+H⇒Hの反応が促進され、水素ガスが発生する。このように水素化金属を入れた水は、物性が変わり、水素ガスを安定的に貯蔵し、pHを下げることで水素ガスを発生することができる。また、条件付け水は、水素が電離して水の中に溶存された水=電離水素水と言うこともできる。
【0048】
本実施例で説明した水素貯蔵方法、水素発生方法、水素貯蔵装置および水素発生装置は、水素をエネルギー源とする水素電池、水素エンジンなどに利用することができる。本実施例の水素貯蔵および発生は、常温で非常に安定的に水素を貯蔵し発生させることができるため、水素電池、水素エンジンなどにおいて安全に利用することができる。
【0049】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロチウム化された水素を含む水を生成し、
当該水に水素を含む物質を供給することにより水素を貯蔵し、
当該水のpHを下げることで水素ガスを発生させる、水素発生方法。
【請求項2】
プロチウム化された水素を含む水を生成し、
当該水に、水と反応して水素を発生させる物質を供給することにより水素を貯蔵し、
当該水のpHを下げることで水素ガスを発生させる、水素発生方法。
【請求項3】
前記pHを下げる物質は、空気である、請求項1または2に記載の水素発生方法。
【請求項4】
前記pHを下げる物質は、酸素ガスである、請求項1または2に記載の水素発生方法。
【請求項5】
前記pHを下げる物質は、酸を含む物質である、請求項1または2に記載の水素発生方法。
【請求項6】
前記水は、H+Hのイオンを含む、請求項1ないし5いずれか1つに記載の水素発生方法。
【請求項7】
前記水は、水素化金属によって処理された水であり、前記水に水素を含むガスを供給することで水素を貯蔵し、酸を含む物質を加えることで水素を発生させる、請求項1に記載の水素発生方法。
【請求項8】
前記水は、水素化金属によって処理された水であり、前記水に水素化ホウ素ナトリウムを供給することで水素を貯蔵し、酸を含む物質を加えることで水素を発生させる、請求項1に記載の水素発生方法。
【請求項9】
前記水素化金属は、アルカリ金属、アルカリ土金属、第13族および第14族の金属の少なくとも1つである、請求項7または8に記載の水素発生方法。
【請求項10】
プロチウム化された水素を含む水を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された水に水素を含む物質を供給する第1の供給手段と、
前記収容手段に収容された水のpHを下げる物質を供給する第2の供給手段と、
を有する水素発生装置。
【請求項11】
プロチウム化された水素を含む水を収容する収容手段と、
前記収容手段に収容された水に、水と反応して水素を発生させる物質を供給する第1の供給手段と、
前記収容手段に収容された水のpHを下げる物質を供給する第2の供給手段と、
を有する水素発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2013−28534(P2013−28534A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247643(P2012−247643)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2012−523477(P2012−523477)の分割
【原出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(503020781)株式会社TAANE (3)
【Fターム(参考)】