説明

水素製造方法及び水素製造装置

【課題】 エネルギーロスの低減化を図り安価な運転費及び設備費により低コストで水素を製造することができ、又、小規模生産を可能とすることができる水素製造方法及び水素製造装置を得る。
【解決手段】 炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造方法において、原料を収容した反応室内へ燃料の間欠的な燃焼により生じた爆轟による衝撃波を伝播させて、前記反応室内の原料を衝撃圧縮させて高温に加熱することにより、原料と燃焼ガス中の水蒸気または別に供給した水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造方法及び水素製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用の水素製造装置としては、熱分解炉型水素製造装置、スチームリフォーマ等が知られている。
例えば、スチームリフォーマにあっては、原料として天然ガス、プロパン等の炭化水素と水蒸気を反応器内で高温状態の改質触媒に接触させることにより、水素、一酸化炭素等を含有する水素含有ガスたる改質ガスを得て、この改質ガスから水素を分離して得る(特許文献1参照)。
【0003】
これらの水素製造装置にあっては、予め高温状態に維持された反応器内に天然ガス、プロパン等の原料を導入することにより該原料を高温に加熱して反応させて、水素、一酸化炭素等を含有する水素含有ガスを生成させ、該水素含有ガスから水素を分離して製造する。
【特許文献1】特開平5−105407号公報(段落0002、0003参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来の水素製造装置にあっては、次の点で問題を有していた。すなわち、水素製造の反応前に予め反応器内を高温状態としなければならないため、装置の立ち上げ工程や立ち下げ工程等でのエネルギーロスが大きくなり、装置の運転費が高くなってしまう。
また、このように装置の立ち上げから立ち下げまでの間の長時間に亘り反応器内が高温状態に維持されることになるため、耐火物を多用して装置を構成する必要があり、設備費が高くなってしまう。
【0005】
さらに、上述のような装置では、立ち上げ工程や立ち下げ工程等の時間が長くなるため、エネルギーロスが大きくなるだけでなく時間的ロスも大きくなってしまう。このため、一般にこのような装置ではこれらのロスを出来るだけ小さくするために一旦装置を立ち上げて反応器内を高温状態とした後は長時間連続して水素製造が行われるので、小規模生産、或いは、所望時の短時間生産には向かない。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、エネルギーロスの低減化を図り安価な運転費及び設備費により低コストで水素を製造することができ、又、小規模生産を可能とすることができる水素製造方法及び水素製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る水素含有ガス製造方法は、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造するものにおいて、原料を収容した反応室内へ燃料の間欠的な燃焼により生じた爆轟による衝撃波を伝播させて、前記反応室内の原料を衝撃圧縮させて高温に加熱することにより、原料と燃焼ガス中の水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成することを特徴とするものである。
【0008】
この第一の発明においては、燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせて発生した衝撃波が、炭素若しくは炭化水素を含有する原料を収容する反応室内に伝播して前記原料を衝撃圧縮する。急激に圧縮された前記原料は温度が上昇して高温となって、原料と燃焼ガス中の水蒸気が反応して水素含有ガスを生成させる。
なお、ここで、爆轟とは、衝撃波を伴って火炎が超音速で伝播する現象をいう。
【0009】
(2)また、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造方法において、原料と水蒸気を収容した反応室内へ燃料の間欠的な燃焼により生じた爆轟による衝撃波を伝播させて、前記反応室内の原料と水蒸気を衝撃圧縮させて高温に加熱することにより、原料と水蒸気を反応させて水素含有ガスを生成することを特徴とするものである。
【0010】
この第ニの発明においては、燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせて発生した衝撃波が、炭化水素若しくは炭素を含有する原料と水蒸気とを収容する反応室内に伝播して前記原料を衝撃圧縮する。急激に圧縮された前記原料は温度が上昇して高温となって、前記原料と前記水蒸気が反応して水素含有ガスを生成させる。
【0011】
(3)本発明に係る水素含有ガス製造装置は、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造するものであって、燃料を間欠的に着火させる着火室と、該着火室に連通して設けられて着火室で生じた火炎を導入して燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせ衝撃波を発生させる燃焼室と、該燃焼室で発生した衝撃波と燃焼ガスを導入して原料と燃焼ガス中の水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成する反応室と、該反応室に原料を供給する原料供給手段と、前記反応室内の水素含有ガスを外部へ取り出す排出手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
この第三の発明においては、燃焼室からの衝撃波を受ける反応室に、炭素もしくは炭化水素を含有する原料を収容し、燃焼室に連通して設けられた着火室内にて燃料を間欠的に着火させる。燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせることによって衝撃波が生ずる。こうすることにより、衝撃波を前記反応室の導入口から該反応室内へ伝播させて、前記反応室内の原料を衝撃圧縮させて高温に加熱して、燃焼ガス中の水蒸気と原料中の炭素もしくは炭化水素とを反応させて水素含有ガスを生成させ、前記水素含有ガスを前記反応室の外部へ取り出す。
【0013】
(4)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造するものであって、燃料を間欠的に着火させる着火室と、該着火室に連通して設けられて着火室で生じた火炎を導入して燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせ衝撃波を発生させる燃焼室と、該燃焼室で発生した衝撃波を導入して原料と水蒸気を反応させて水素含有ガスを生成する反応室と、該反応室に原料を供給する原料供給手段と、前記反応室に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、前記反応室内の水素含有ガスを外部へ取り出す排出手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
(5)また、前記(3)又は(4)に記載の燃焼室は、反応室側に向けて流路断面積が次第に小さくなっていて収束爆轟を生じさせることを特徴とするものである。
流路断面積が次第に小さくなり収束した燃焼室内では燃焼ガスの衝撃波が収束されて高温高圧が更に高まるので、反応室内の反応効率が格段に高くなる。
【0015】
(6)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、前記(3)〜(5)に記載のものにおいて、予熱された燃焼用空気を着火室に供給する予熱空気供給手段を備えたことを特徴とするものである。
予熱空気供給手段を備えることにより、予熱された燃焼用空気を着火室に供給することができ、空気の反応性が高まり、酸化剤として酸素を用いる必要がなくなるので、運転コストを低くすることができる。また、空気の反応性が向上するので、副生ガス、廃油等の低質燃料を用いることができ、この点でも、運転コストを低くすることができる。
【0016】
(7)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、前記(6)に記載のものにおいて、燃焼室からの排ガスの熱を熱源として空気を予熱するようにしたことを特徴とするものである。
燃焼室からの排ガスの熱を熱源として燃焼用空気を予熱するようにすれば、予熱のための熱源を別途必要とせずとも燃焼ガスの熱、例えば燃焼室の排ガスの熱を有効利用して着火及び燃焼に適した温度とすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0017】
(8)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、前記(3)〜(7)に記載のものにおいて、反応室で生成した水素含有ガスの少なくとも一部を着火室へ帰還させる帰還路を設けたことを特徴とするものである。
第8の発明においては、反応室で生成した水素含有ガスを製品として所定の必要量取り出した後に余剰分を燃料として着火室へ帰還させるようにしたので、前記水素含有ガスを燃料として有効利用でき、燃料費を削減できるので運転費が安価となる。また、炭素もしくは炭化水素と水蒸気との反応により生じた水素含有ガスは主に一酸化炭素と水素とからなるので、水素含有ガスが燃焼して酸素と反応すると、その燃焼ガスの主成分は二酸化炭素と水となる。このような燃焼ガスは、反応室内で原料とともに水素生成反応するので、反応室での反応効率が向上する。
【0018】
(9)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、前記(3)〜(8)に記載のものにおいて、着火室と燃焼室の燃焼排ガスを強制的に排出するためのパージ手段を設けたことを特徴とするものである。
燃焼室内部に高温の燃焼ガスが残留したままでは、次のサイクルで混合気を装入したとたんに着火して逆火し、設備の破損の懸念があるため、サイクルタイムを短縮することができない。その結果、水素含有ガス製造の生産性を高めることができない。
そこで、第9の発明においては、パージ手段を用いてパージガスにより、燃焼ガスを高速で排気し、燃焼室内を置換するようにした。これにより、サイクルタイムを短くしても逆火なく、高速で繰り返し製造する事ができる。
【0019】
(10)また、本発明に係る他の水素含有ガス製造装置は、前記(3)〜(9)に記載のものにおいて、着火室及び燃焼室の内壁温度を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とするものである。
燃焼室内の内壁面温度が混合気の着火温度以上となると、燃焼室に混合気を装入し始めたとたんに逆火して、設備の破損の懸念があるため、望ましくない。このためサイクルタイムを短縮することができず、水素含有ガスの製造効率を高める事ができない。
そこで、第10の発明においては、着火室及び燃焼室の内壁温度を冷却する冷却手段を設けることにより、サイクルタイムを短くしても逆火なく、また、点火不良がなく、高速で繰り返し製造する事ができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水素含有ガス製造方法においては、炭素若しくは炭化水素を含有する原料を収容する反応室内に、衝撃波を伝播させて前記原料と水蒸気を衝撃圧縮することにより、前記原料と水蒸気が急激に高温加熱されて前記原料と前記水蒸気が反応して水素含有ガスを生成するようにしたので、原料と水蒸気の反応に必要十分な熱を短時間で効率よく原料と水蒸気に供給できる。このため、本発明では、反応器内を予め高温とする必要がなく、立ち上げ工程や立ち下げ工程でのエネルギーロスが軽減される。又、装置が立上げから立ち下げまで連続して長時間に亘って高温状態とはならず、反応に必要な時間及び領域だけ高温にするので、エネルギーロスが軽減されるだけでなく時間的ロスも軽減されるので、小規模生産あるいは所望時の短時間生産が可能となる。
【0021】
また、本発明の水素含有ガス製造装置においては、原料と水蒸気の反応に必要十分な熱を短時間で効率よく原料と水蒸気に供給できるため、反応器内を予め高温とする必要がなく立ち上げ工程や立ち下げ工程でのエネルギーロスが軽減されるので、運転費が安価な装置となる。また、立上げから立ち下げまで連続して長時間に亘って装置が高温状態になることはなく、反応に必要な時間及び領域だけ高温になる。したがって、耐火物を多用する必要がなく、設備費が安価な装置となり、更には、エネルギーロスが軽減されるだけでなく時間的ロスも軽減されるので、小規模生産が可能な装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る水素製造装置の構成の説明図である。本実施の形態に係る水素製造装置は、図1に示すように、燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせて衝撃波を発生させる爆轟発生装置1と、爆轟発生装置1で発生した衝撃波を導入して水素含有ガス製造反応を生じさせる反応装置50とを主な構成として備えている。
以下、爆轟発生装置1、反応装置50の詳細についてさらに説明する。
【0023】
<爆轟発生装置>
爆轟発生装置1は、燃料の燃焼により爆轟を生じさせて衝撃波を発生させる爆轟発生部3と、燃料を該爆轟発生部3へ供給する燃料供給装置5と、爆轟発生部3に燃料を燃焼させるための酸化剤としての予熱空気を供給する予熱空気供給装置7とを備えている。
図2は爆轟発生装置1の要部である爆轟発生部3の断面図である。爆轟発生部3は、図2に示すように、燃料及び酸化剤の供給を受けて爆轟波を発生させる着火室9と、着火室9に連通する後述の分散部17及び収束室23からなる燃焼室10とを有している。
着火室9は円筒状に形成され、着火室9の一端部には、燃料を間欠的に着火させる着火装置としての点火栓9aが設けられている。
また、着火室9には、着火室9の軸線方向に延びる螺旋状の金属からなるシェルキンスパイラル9bが設けられている。このシェルキンスパイラル9bは、点火栓9aで燃料に着火されて生じた火炎を加速させることにより爆轟を誘起させる。
なお、着火室9には、図2に示すように、プロパン等の燃料及び燃焼用の酸化剤(空気)が供給される。
【0024】
燃焼室10を構成する本体11は、上本体11Aと下本体11Bとに分割され、シール11Cにより密封状態で、図示しないボルト等で連結されている。
上本体11Aには分散部17が設けられ、この分散部17に前述の着火室9が連通している。分散部17は、上部材19と下部材21によって形成されており、着火室9から半径方向に大きく拡径する円盤状空間17Aと、該円盤状空間17Aの外周部で周方向の複数位置に貫通形成された一次細孔17Bと、該複数の一次細孔17Bが連通する環状空間17Cと、該環状空間17Cの範囲で貫通形成された複数の二次細孔17Dとから構成されている。着火室9、分散部17、及び後述する収束室23には燃料と酸化剤の混合気が供給される。かくして、着火室9の混合気に着火され誘起された爆轟により発生した爆轟波は、円盤状空間17A、一次細孔17B、環状空間17C、そして二次細孔17Dを経て伝播されることにより分散されて次の収束室23へ導入される。
【0025】
収束室23は、下本体11Bの湾曲回転内面と下部材21の下側突出部21Aの外周面との間で形成されており、下方に向けて空間横断面が次第に小さくしかも中央部へ向けて変向するように形成されている。
下部材21の下側突出部21Aの内部空間には、段状ピストン25が上下移動自在に収められている。この段状ピストン25の大径部材25Aの上下空間のそれぞれには、油圧制御装置27からの配管27A、27Bが連通している。
【0026】
段状ピストン25の小径部材の下端部は、テーパ部分を有する弁部25Bを形成していて、下本体11Bの湾曲回転面の中央部に取り付けられた管状弁座体29と協働する。管状弁座体29は、上部に形成された大径の弁座部29Aと、ここから下方に延びる管状部29Bとを有している。弁座部29Aの上面中央には、上記段状ピストン25の下端部に形成されたテーパ部分である弁部25Bが係止するテーパ状の弁座が設けられていて、該弁座からは下方に延びて開口する筒状の噴射孔31が形成され、その出口開口端部31Aで反応装置50に接続されている。また収束室23には燃焼排ガスを排出する排出孔73が設けられている。
【0027】
なお、本実施形態の爆轟発生装置1においては、着火室9及び燃焼室10の周壁部には、着火室9及び燃焼室10の内壁を冷却して所定温度以下に維持するためのジャケット、例えば水冷ジャケット33が形成されている。この水冷ジャケット33は、着火室9及び燃焼室10の内壁の温度を上記燃料の着火温度以下に維持し、着火室9及び燃焼室10の内壁の過昇温による着火室9及び燃焼室10での異常燃焼を防止する。
また、水冷ジャケット33を設けることにより混合気を燃焼室に供給した際に過早着火することがないので、運転のサイクルタイムを短くすることができ、例えば1秒間に数十回の高速で繰り返し運転することができるため、水素製造効率を高めることができる。
【0028】
また、本実施の形態の爆轟発生装置1においては、着火室9にパージ用の高圧水蒸気を供給するようにしている。このようにすることで、着火室9及び燃焼室10内の高温の燃焼排ガスを高速で排出孔73から強制排気し、燃焼室内を水蒸気に置換でき、燃焼室10内の温度を燃料の着火温度以下にするので、混合気を燃焼室に供給した際に過早着火することがない。このため、運転のサイクルタイムを短くすることができ、高速で繰り返し運転することができ、水素製造効率を高めることができる。
【0029】
燃料供給装置5から爆轟発生部3への燃料供給量は制御弁5Aによって調整可能となっている。
また、予熱空気供給装置7は、熱交換器35から約400℃程度の予熱空気を受け該予熱空気を爆轟発生部3へ燃焼用空気として供給する。燃焼用空気を予熱することにより反応性が高くなるので、安価な低質燃料を用いることができ、また爆轟発生部3の小型化が図れる。なお、熱交換器35の熱源としては、図1に示すように、爆轟発生部3から排出される排ガスを用いることが好ましい。なお、酸素を安価に供給することが可能であれば、予熱空気の代わりに酸素を用いてもよいことは言うまでもない。
【0030】
<反応装置>
反応装置50は、衝撃波を導入して水素含有ガス製造反応を行う反応室装置51と、該反応室装置51の入口側に設けられて水素製造反応の原料を該反応室装置51に供給する原料供給装置53と、水蒸気を上記反応室装置51へ供給する水蒸気供給装置55と、反応室装置51の出口側に設けられて反応室装置51内から反応生成ガスの導入を受けるバッファタンク57とを備えている。そして、バッファタンク57には水素を分離するための圧力振動式分離装置(PSA)59が接続されている。
【0031】
原料供給装置53は、制御弁61の開閉制御により反応室装置51への原料の供給量を所定量に制御する。なお、原料供給装置53は、原料として炭化水素を含有せる廃プラスチックや廃油等、あるいは、炭素を含有せる微粉炭、粉コークス、廃活性炭等を上記反応室装置51へ供給する。また、炭化水素を含有せる原料として下水処理汚泥消化ガス、バイオマスガス化ガス、廃棄物熱分解ガス、コークス炉ガスや高炉ガス等製鉄所副生ガス等のガスを供給してもよい。
【0032】
図3は本実施形態にかかる反応室装置51の説明図であり、図3(A)は反応室装置51の軸線に沿う断面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B断面図である。
以下、図3に基づいて反応室装置51を詳細に説明する。
この反応室装置51は、図3(A),(B)に示すように、図3(A)にて横方向に延びる軸線64まわりに回転する回転体65に、周方向の複数位置で、軸線64に平行に延びて回転体65の軸線方向両端にて開口する反応室65Aが形成されている。各反応室65Aは、上述の原料供給装置53から原料の供給を受け、上述の水蒸気供給装置55から水蒸気の供給を受けた後に、上述の爆轟発生装置1から燃焼ガスの衝撃波を導入し、この衝撃波のエネルギーを利用して原料と水蒸気を反応させるための空間である。反応室65Aでは、燃焼ガスの衝撃波によって原料と水蒸気を衝撃圧縮して高温とすることにより、水素含有ガス生成反応を生じさせて、水素含有ガスを生成させる。
【0033】
この回転体65の両端面に対向する位置には、回転体65の回転を許容するよう該端面に対して微小間隙をもって蓋状の開閉部材66,67が非回転でそれぞれ配設されている。この開閉部材66,67と回転体65の端部周面との間はこれらの相対回転を許容しつつシール部材68によってシールされている。また、シールの他の例としてはラビリンスシール、オイルシールまたは水封装置を用いてもよい。
【0034】
供給側(図3(A)にて左側)の開閉部材66には、回転体65の半径方向で互いに対向する位置に、上述の原料供給装置53と水蒸気供給装置55に連通せる一つの供給開口66Aと、上述の爆轟発生部3の出口開口端部31Aと連通する一つの衝撃波導入開口66Bとが形成されている。
【0035】
また、排出側(図3(A)にて右側)の開閉部材67には、図1に示す上記バッファタンク57に連通する一つの排出口67Aが形成されている。該排出口67Aは、反応室65A内の反応生成ガスを排出する排出手段を構成し、また排出口67Aは、図1に見られるように、制御弁67Bにより開閉されるようになっている。上記排出口67Aと、供給開口66A、衝撃波導入開口66Bとの位置関係を以下説明する。
【0036】
上記回転体65は、図3に示されるごとく、軸受等の支持部材69によって回転自在に支持され、駆動手段(図示せず)によって、各反応室65Aの開口が供給開口66Aに順次一致して連通するように、間欠的に回転されるようになっている。すなわち、本実施形態では、上記回転体65には8つの反応室65Aが形成されているので、上記回転体65が45°ずつ間欠回転して、順次各反応室65Aの開口が上記供給開口66Aと一致する。
【0037】
具体的には、上記回転体65の回転により、複数の反応室のうち一つの反応室65Aの開口が供給開口66Aと一致するときには、該一つの反応室65Aと原料供給装置53と水蒸気供給装置55とが上記供給開口66Aを介して連通される。このとき、該供給開口66Aと半径方向で対向する衝撃波導入開口66Bには、上記一つの反応室65Aと半径方向反対側の他の反応室65Aの開口が一致する。その後、上記回転体65が45°ずつ4回、すなわち180°回転したときに、上記衝撃波導入開口66Bと上記一つの反応室65Aが一致して、該一つの反応室65Aと爆轟発生部3の出口開口端部31Aとが衝撃波導入開口66Bを介して連通される。上記180°回転の間に上記一つの反応室65Aの開口が上記供給開口66A及び上記衝撃波導入開口66Bと一致せずに開閉部材66の蓋面(壁面)に対面するときには、該蓋面によって上記一つの反応室65Aの左端開口が閉ざされる。その結果、該一つの反応室65Aと上記原料供給装置53と水蒸気供給装置55及び上記衝撃波噴射口との連通が実質的に遮断される。
【0038】
また、上述のごとく上記一つの反応室65Aの左端開口が衝撃波導入開口66Bと一致するときには、該一つの反応室65Aは排出側で排出口67Aと一致し、図1に示す制御弁67Bを介して上記バッファタンク57と連通可能な状態となる。また、上記一つの反応室65Aが排出口67Aと一致せずに開閉部材67の蓋面に対面するときには、該蓋面によって該反応室65Aの右端開口が実質的に閉ざされる。
【0039】
このように、複数の反応室65Aは、図3からも判るように、回転体65の間欠回転によって、供給側で供給開口66Aと一致しかつ排出側で開閉部材67の蓋面に対面したときの一つの反応室65Aが原料の供給を順次断続的に受ける。そして、原料の供給を受けたその反応室65Aの開口が回転体65の180°回転後に衝撃波導入開口66Bと一致する位置にきたときに、上記図1の制御弁67Bが閉状態のままで、爆轟発生部3からの燃焼ガスの衝撃波が出口開口端部31Aを経て反応室65A内に伝播するようになっている。上記衝撃波により反応室65A内で上記原料と水蒸気が衝撃圧縮されて高温となって、該原料と水蒸気が反応し、水素含有ガスを生成する。その後、上記制御弁67Bが開状態とされて、該反応室65Aから開閉部材67の排出口67Aを経て上記水素含有ガスが排出され、バッファタンク57へ収容される。
なお、本実施形態では反応装置50は上述のごとく構成されているが、特にその形態に限定はない。例えば、反応器は上述のような回転する形式でなくとも非回転であってもよい。このような構成では、反応室の数や形状も任意であり、爆轟発生装置1からの燃焼ガスの衝撃波を受けて原料と水蒸気が瞬時に圧縮されるのに適した反応室を有していればよい。
【0040】
バッファタンク57は、比較的大容量に形成されていて、反応室65Aからの高圧の水素含有ガスを急激に圧力緩和させる。また、バッファタンク57には、バッファタンク57内で圧力変動が緩和された水素含有ガスから水素を分離する水素分離装置(例えば、PSA)59が接続されている。水素分離装置59で分離された水素は、それぞれ適した用途に用いることができる。上記水素分離装置59には、上記水素含有ガスから水素を分離した後の残ガス(主として一酸化炭素)を爆轟発生装置1の燃料として上述の燃料供給装置5に帰還させて有効利用するため、該燃料供給装置5に接続する帰還路71を設けてもよい。
なお、バッファタンク57内の水素含有ガスを上述の燃料供給装置5へ燃料として帰還させて有効利用してもよい。
【0041】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
まず、図2に示す状態で、爆轟発生装置1の着火室9において燃料と予熱空気との混合気の燃焼が行われ、爆轟を生じさせ爆轟波を発生させる。発生した爆轟波は分散部17を経て分散され収束室23へ導入される。段状ピストン25は、この状態では図2に示されるように、油圧制御装置27によって配管27Aからの背圧を受けて、該段状ピストン25の弁部25Bが弁座部29Aを閉じている。
【0042】
分散部17から収束室23に導入された複数の爆轟波は、収束室23内を下方に向けて進行するが、収束室23の断面積が下方に向けて小さくなるために、複数の爆轟波は収束され超高圧の収束爆轟波となる。
収束爆轟波の発生に同期して、油圧制御装置27によって配管27Bから油圧が瞬間的に作用し、この瞬時の圧力により段状ピストン25が上昇し、上記弁部25Bと弁座部29Aとの間に流路が形成される。したがって、収束爆轟波は、この流路から、瞬間的に噴射孔31を進行して出口開口端部31Aから反応室装置51の反応室65Aに伝播される。この動作は一秒間に数回〜数十回行うことが可能である。
なお、収束室23内の燃焼排ガスが反応室側に流入することを防ぐために、収束爆轟波を伝播直後に段状ピストン25を下降させ流路を閉じる。その後、着火室9にパージ用ガスとして高圧水蒸気を送気し、着火室9及び燃焼室10内の燃焼排ガスを排気孔73から排気する。
【0043】
反応装置50側では、原料供給装置53及び水蒸気供給装置55によって反応室65A内に原料及び水蒸気が供給される。そして、すでに原料及び水蒸気の供給を受けている反応室65A内に、開閉部材66の衝撃波導入開口66Bから衝撃波が伝播されると、反応室65A内の上記原料と水蒸気がこの衝撃波によって反応室65Aの排出側の端部(図3にて右端部)に向けて衝撃圧縮されて高温、例えば1500Kとなる。この高温状態のもとで、上記原料中の炭化水素または炭素と水蒸気が反応し、その結果、水素含有ガスが生成される。
炭化水素は一般に化学式C2n4nで表され、このときの反応室65A内で生じる主反応はC2n4n+2nH2O→2nCO+4nH2であり、水素とCOが生成される。また、炭素と水蒸気からは水性ガス反応により水素とCOが生成される。
このような反応を回転体65の間欠的な回転により次々に衝撃波導入開口66Bに連通した各反応室65A内で行い、その都度、水素含有ガスを生成する。
【0044】
反応室65A内で生成された水素含有ガスは、制御弁67Bの開放によりバッファタンク57内に噴出されて一旦収容される。このとき、上記バッファタンク57内に高速噴出された高温の水素含有ガスは断熱のもとで急冷却されるので、逆反応が阻止される。又、バッファタンク57は、大容量となっており、バッファタンク57内へ噴射された高圧の水素含有ガスが一旦収容されることにより、該水素含有ガスの圧力変動が緩和されて安定した低圧となる。このように、本実施形態では、生成時には高温高圧であった水素含有ガスの圧力及び温度をバッファタンク57にて低下させることにより逆反応を阻止して、反応室65A内での水素含有ガスの生成効率を高めている。
【0045】
なお、前述したように図1にて破線で示す帰還路71によって、バッファタンク57内の水素含有ガスを上述の爆轟発生装置1の着火室9へ燃料として帰還させて有効利用することが好ましい。
また、原料として用いる微粉状の廃プラスチック粉や粉コークスの粒径は100μm以下とすると反応が確実に行われるので好ましい。
なお、原料としては、廃プラスチック粉や粉コークスだけでなく、他の炭化水素や炭素を含有する物質を利用可能である。
また、原料として下水処理汚泥消化ガス、バイオマスガス化ガス、廃棄物熱分解ガス、コークス炉ガスや高炉ガス等製鉄所副生ガス等のガス原料を用いると、原料のガス化過程が省略されるので、水素含有ガスの生成効率が向上するので好ましい。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、炭化水素若しくは炭素を含有する原料と水蒸気とを収容する反応室内に、衝撃波が伝播して上記原料と水蒸気を衝撃圧縮することにより、急激に上記原料と水蒸気を高温加熱せしめて、上記原料と上記水蒸気が反応して水素含有ガスを生成させるようにしたので、原料と水蒸気の反応に必要十分な熱を短時間で効率よく原料と水蒸気に供給できる。このため、反応器内を予め高温とする必要がなく、立ち上げ工程や立ち下げ工程でのエネルギーロスが軽減され、運転費が安価となる。
また、装置が立上げから立ち下げまで連続して長時間に亘って高温状態とはならず、反応に必要な時間及び領域だけ高温にするので、耐火物を多用する必要がなく、設備費が安価な装置となり、さらにはエネルギーロスが軽減されるだけでなく時間的ロスも軽減されるので、小規模生産あるいは所望時の短時間生産が可能となる。
【0047】
また、本実施の形態における爆轟発生部3の燃焼室10は、収束した形状を有しており、このような収束した燃焼室内では燃焼ガスの衝撃波が収束されて高温高圧が更に高まるので、反応室内での反応効率が格段に高くなる。
また、本実施の形態においては、予熱空気供給装置7によって予熱された燃焼用空気を着火室9に供給するようにしたので、空気の反応性が高まり、酸化剤として酸素を用いる必要がなくなるので、運転コストを低くすることができる。また、空気の反応性が向上するので、副生ガス、廃油等の低質燃料を用いることができ、この点でも、運転コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水素製造装置の説明図である。
【図2】図1に示した水素製造装置における爆轟発生部を詳細に説明する説明図である。
【図3】図1に示した水素製造装置における反応装置を詳細に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 爆轟発生装置
3 爆轟発生部
5 燃料供給装置
7 予熱空気供給装置
50 反応装置
51 反応室装置
53 原料供給装置
55 水蒸気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造方法において、
原料を収容した反応室内へ燃料の間欠的な燃焼により生じた爆轟による衝撃波を伝播させて、前記反応室内の原料を衝撃圧縮させて高温に加熱することにより、原料と燃焼ガス中の水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成することを特徴とする水素含有ガス製造方法。
【請求項2】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造方法において、
原料と水蒸気を収容した反応室内へ燃料の間欠的な燃焼により生じた爆轟による衝撃波を伝播させて、前記反応室内の原料と水蒸気を衝撃圧縮させて高温に加熱することにより、原料と水蒸気を反応させて水素含有ガスを生成することを特徴とする水素含有ガス製造方法。
【請求項3】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造装置であって、
燃料を間欠的に着火させる着火室と、該着火室に連通して設けられて着火室で生じた火炎を導入して燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせ衝撃波を発生させる燃焼室と、該燃焼室で発生した衝撃波と燃焼ガスを導入して原料と燃焼ガス中の水蒸気とを反応させて水素含有ガスを生成する反応室と、該反応室に原料を供給する原料供給手段と、前記反応室内の水素含有ガスを外部へ取り出す排出手段と、を備えたことを特徴とする水素含有ガス製造装置。
【請求項4】
炭素もしくは炭化水素を含有する原料と水蒸気とを反応させて水素含有ガスを製造する水素含有ガス製造装置であって、
燃料を間欠的に着火させる着火室と、該着火室に連通して設けられて着火室で生じた火炎を導入して燃料の間欠的な燃焼により爆轟を生じさせ衝撃波を発生させる燃焼室と、該燃焼室で発生した衝撃波を導入して原料と水蒸気を反応させて水素含有ガスを生成する反応室と、該反応室に原料を供給する原料供給手段と、前記反応室に水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、前記反応室内の水素含有ガスを外部へ取り出す排出手段と、を備えたことを特徴とする水素含有ガス製造装置。
【請求項5】
燃焼室は、反応室側に向けて流路断面積が次第に小さくなっていて収束爆轟を生じさせることを特徴とする請求項3又は4に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項6】
予熱された燃焼用空気を着火室に供給する予熱空気供給手段を備えたことを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項7】
燃焼室からの排ガスの熱を熱源として空気を予熱するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項8】
反応室で生成した水素含有ガスの少なくとも一部を着火室へ帰還させる帰還路を設けたことを特徴とする請求項3〜7の何れか一項に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項9】
着火室と燃焼室の燃焼排ガスを強制的に排出するためのパージ手段を設けたことを特徴とする請求項3〜8の何れか一項に記載の水素含有ガス製造装置。
【請求項10】
着火室及び燃焼室の内壁温度を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする請求項3〜9の何れか一項に記載の水素含有ガス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−8461(P2006−8461A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189810(P2004−189810)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】