説明

水素透過膜およびその製造方法

【課題】水素透過能に優れ、かつ高い耐久性を有する水素透過膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水素透過相と前記水素透過相を支持する支持相とを具備する水素透過膜において、前記支持相は膜厚方向に対して略平行に配列する複数の孔を有し、前記孔の内部に前記水素透過相が配された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素透過膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題に対する懸念から水素エネルギーの利用に関する研究開発などが盛んに行われており、なかでも水素ガスを燃料に用いる燃料電池の実用化が迫っている。例えば都市ガス、天然ガスまたは石油などを一次エネルギーとするメンブレンリフォーマー方式の燃料電池では、都市ガスなどを改質器および水素精製器として機能するメンブレンリフォーマーに導き、水素ガスを主成分とする改質ガスを生成した後、当該改質ガスに含まれる水素ガスのみを水素透過膜によって分離して取り出している。
【0003】
水素透過膜の水素透過機構を図面を参照して簡単に説明する。図14は、水素透過膜による水素透過機構を説明するための模式図である。図14に示すように、水素透過膜Gの一方の面側と他方の面側との間における水素ガスの圧力差を駆動力として、高圧側から水素分子H2が原子状に解離して水素透過膜G中に侵入(固溶)し、低圧側へ拡散・再結合して再び水素分子H2となって放出される。
【0004】
高圧側に供給される改質ガス中には水素だけでなく未反応の炭化水素ガス(CH4)やCOおよびCO2などの不純物ガスが含まれるが、これらは原子サイズなどの制約から水素透過膜中へは侵入しない。このため、水素透過膜の低圧側からは、理論上純度100%の水素ガスのみが放出される。このような機構を発揮する水素透過膜の材料としては、水素固溶係数および水素拡散係数が高い材料ほど適している。
【0005】
上記のような水素透過膜の作製方法としては、膜厚が薄いほど水素透過能に優れるという観点から、例えばめっき法、真空蒸着法、イオンプレーティング、スパッタリング、減圧プラズマ溶射またはCVD法などの薄膜法により、支持体(基板)上に直接水素透過膜を形成することが従来から行われている(例えば特許文献1〜6)。また、上記基板としては、水素を透過することができる多孔質の基板、例えばニッケルなどの金属多孔体が用いられている(例えば特許文献7〜10)。
【0006】
ところが、上記特許文献1〜10における水素透過膜には、改質器内の高温環境での安定性またはCOもしくはCO2などの不純物を含む改質ガスに対する水素透過性能の安定性の観点から、パラジウム(Pd)やPd合金などのPd系材料が用いられており、Pdは金(Au)よりも希少な貴金属であり、非常に高価かつ入手困難であるため、コスト高になるという問題がある。
【0007】
これに対し、Pd系材料に代わる新たな水素透過膜の材料として、水素透過能がPdより優れるニオブ(Nb)系材料、タンタル(Ta)系材料、バナジウム(V)系材料、または、水素吸蔵合金(MH)系材料などが提案されている。これらは、従来のPdやPd合金と同程度以上の水素透過性能を有する材料である。
【0008】
ここで、Nb系材料を用いた従来技術として、例えば特許文献11および12には、複合相からなり、複合相がNbを固溶したCoTi相とCoを固溶したTiNb相との共晶(CoTi+TiNb)構造、初相として生成するTiNb相が共晶に囲まれている構造、または初相として生成するCoTi相が共晶に囲まれている構造を有し、CoxTiyNb(100-x-y)(ただし、20<x<50原子%、10<y<60原子%である)なる組成を有する複相Co−Ti−Nb系結晶質複相水素透過合金が提案されている。
【特許文献1】特開平5−137979号公報
【特許文献2】特開平10−297906号公報
【特許文献3】特開平11−267477号公報
【特許文献4】特開2002−126477号公報
【特許文献5】特開平5−078810号公報
【特許文献6】特開2003−135943号公報
【特許文献7】特開2000−119002号公報
【特許文献8】特開平05−078810号公報
【特許文献9】特開平05−123548号公報
【特許文献10】特開2002−119834号公報
【特許文献11】特開2005−232491号公報
【特許文献12】特開2006−118035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献11および12は、水素透過性と耐水素脆化性とを有し473K以上で使用可能な結晶質の複相水素透過合金を提供することを意図しているが、水素透過合金を水素透過膜として利用する場合の具体的な態様は開示されておらず、水素透過能および耐久性に優れる水素透過膜をより確実に得るという観点からは、未だ改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記水素透過合金を水素透過膜に適用すべく鋭意検討した結果、当該水素透過合金においてはNb相とNiTi(金属間化合物)相とが層状組織を形成しかつ層状組織粒がランダムな方向を向いていることを見出し、微細組織を制御することができれば水素透過能に優れる水素透過膜を実現し得ると考え、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、水素透過能に優れ、かつ高い耐久性を有する水素透過膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、本発明は、水素透過相(水素透過部)と前記水素透過相を支持する支持相(支持部)とを具備する水素透過膜であって、前記支持相は膜厚方向に対して略平行に配列する複数の孔を有し、前記孔の内部に前記水素透過相が配された構成を有すること、を特徴とする水素透過膜を提供する。
【0013】
ここで、「膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している」とは、水素透過膜の膜厚方向に略平行(すなわち一方向)に水素透過相が延びて配列していることをいう。ただし、水素透過相は水素透過膜の一方の面(第1の面)から他方の面(第1の面に対向する面)にまで連続していてもよく、また、不連続であってもよい。
【0014】
さらに、本発明の水素透過膜は、膜厚方向に略平行(すなわち一方向)に延びて配列していない水素透過相を有していてもよい。水素透過膜の任意の縦断面においてみた場合に、かかる一方向に配列する水素透過相の割合が多いほど水素透過能に優れるため好ましい。
【0015】
例えば、上記複数の孔のうちの少なくとも一部は、水素透過膜の少なくとも一方の面(好ましくは両面)において外部に開放され、水素透過相の端部が水素透過膜の少なくとも一方の面(好ましくは両面)に露出しているのが好ましい。このような構成によれば、水素透過膜の一方の面から他方の面へより確実に水素を移動させることができる。また、例えば、上記複数の孔は部分的に連通し、水素透過相が一方向に配列しつつ隣接する水素透過相同士が部分的につながっていてもよい。
【0016】
また、「支持相が水素透過相を支持する」とは、支持相で構成されたマトリクス内に水素透過相が配されるとともに実質的に固定されていることをいい、したがって、このような構造を採る限りにおいて、本発明に係る水素透過膜における水素透過相および支持相はそれぞれ種々の形状や寸法をとり得る。
【0017】
このような構成によれば、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列していることから当該水素透過膜の膜圧方向に水素をより確実に透過させることができ、水素透過相が支持相によって支持されていることから当該水素透過膜の耐久性をより確実に維持することができる。
【0018】
本発明に係る水素透過膜において、前記水素透過相は水素透過性金属(例えばNb、TaまたはVなど)で構成されている。また、前記支持相は、水素透過相の脆化による水素透過膜の劣化を抑制することのできる材料である金属または金属酸化物(例えばNiTiまたはCoTi、CuまたはAl23など)で構成されている。本発明において、「Nb」とはNb金属およびNb合金を含むNb系材料のことをいい、「Ta」とはTa金属およびTa合金を含むTa系材料のことをいい、「V」とはV金属およびV合金を含むV系材料のことをいう。
【0019】
ここで、上記本発明に係る水素透過膜は、主として、ミクロレベルで水素透過相が支持相によって支持され、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している態様(略平行組織ないしは一軸配向組織)を採る。
【0020】
本発明に係る水素透過膜において、例えば水素透過相がNbなどで構成され、支持相がNiTiなどで構成される場合には、前記水素透過相と前記支持相とが共晶を形成している構成を有すること、が好ましい。この場合、前記水素透過相は初晶Nb相を有していてもよく、また、前記支持相は初晶NiTi相を有していてもよい。
【0021】
上記本発明に係る水素透過膜の第1の態様は、
(1)溶解法により、水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料と、支持相を構成する第2の金属材料と、を含む試料を作製する溶解工程と、
(2)前記試料を再溶融させた後、得られた溶融物を前記第1の金属材料が一方向に凝固するように凝固させ、前記第1の金属材料を含む水素透過相と、前記第2の金属材料を含み前記水素透過相を支持する支持相と、を有する凝固体を作製する一方向凝固工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法(第1の製造方法)により好適に製造することができる。
【0022】
当該第1の製造方法は、前記一方向凝固工程の後、前記一方向に略垂直な方向において前記凝固体を切断する工程を具備してもよい。
また、前記溶解工程をアーク溶解法で行ってもよい。
また、前記一方向凝固工程を光学式浮遊帯域溶融法(Froating Zone melting method)により行ってもよい。
【0023】
ここで、「光学式浮遊帯域溶融法」とは、ハロゲンランプを加熱源として用い、回転楕円体反射鏡により赤外線を集光し、例えば棒状の試料(バルク体)の端部を加熱して溶融帯を形成し、浮遊帯域法によって単結晶の形成する方法をいう。本方法によれば、より確実にミクロレベルで水素透過相が支持相によって支持され、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している態様をより確実に製造することができる。
【0024】
上記本発明に係る水素透過膜は、
(1)水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を含む第1のシートを、支持相を構成する第2の金属材料を含む芯材に捲回して、捲回体を得る捲回工程と、
(2)前記捲回体を、前記第2の金属材料を含む第1の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して一次線材を得る第1の縮径工程と、
(3)前記一次線材複数本を、前記第2の金属材料を含む第2の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して二次線材を得る第2の縮径工程と、
(4)前記二次線材を長さ方向に略垂直な方向に切断する切断工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法(第2の製造方法a)によっても好適に製造することができる。
【0025】
本方法は、いわゆる「ジェリロール法」と呼ばれる超電導線の製造方法を本発明に係る水素透過膜の製造方法に適用したものである。本方法によれば、ミクロレベルで水素透過相が支持相によって支持され、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している態様(第2の態様)をより確実に製造することができる。
【0026】
また、上記本発明に係る水素透過膜は、
水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を、支持相を構成する第2の金属材料で形成された多孔質材料の貫通孔に挿入する挿入工程、を具備すること、を特徴とする製造方法(第2の製造方法b)によって好適に製造することができる。
【0027】
前記挿入工程は例えばめっき法により行うことができ、また、上記第2の製造方法bは、前記挿入工程の後、前記貫通孔の貫通方向に略垂直な方向において前記多孔質材料を切断する切断工程を具備していてもよい。
【0028】
本方法によっても、ミクロレベルで水素透過相が支持相によって支持され、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している態様をより確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、水素透過能に優れ、かつ高い耐久性を有する水素透過膜およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の代表的な実施の形態について説明する。なお、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0031】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係る水素透過膜の一実施の形態を概念的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示す水素透過膜10におけるセル(セル状の相)12の膜厚方向(水素透過膜10の主面の法線方向、すなわち図1における矢印Xの方向)からみた概略図を示し、図3は、図1に示す水素透過膜10の膜厚方向に略垂直な方向におけるセル12の断面(図1におけるY−Y線断面)を示す図である。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態の水素透過膜10はディスク状であって複数のセル12を有し、図2および図3に示すようにセル12は水素透過相(水素透過部)14と水素透過相14を支持する支持相(支持部)16とを具備する。そして、図3に示すように複数の水素透過相14が膜厚方向(図3における矢印Xの方向)に対して略平行に配列している。
【0033】
より具体的には、ミクロレベルで、支持相16で構成されたマトリクス内にロッド状の形状を有する水素透過相14が配されるとともに固定され、水素透過膜10の膜厚方向に略平行(すなわち一方向)に水素透過相14が延びて配列している。また、水素透過相14は例えばNbなどの水素透過性金属で構成され、支持相14は例えばNiTiなどの金属で構成されており、水素透過相14と支持相16とが共晶を形成している。
【0034】
本実施の形態の水素透過膜10は上記のような構成を有していればよく、水素透過能をできる限り向上させるという観点からは、水素透過膜10の主面の面積に対してセル12および水素透過相14の面積が占める割合が大きいほうが好ましい。なお、水素透過膜10においては、本発明の効果を損なわない範囲で、セル12内に初晶Nb相および/または初晶NiTi相が存在してもよい。
【0035】
セル12、水素透過相14および支持相16の面積などの寸法および形状は、後述する製造方法における各種条件に依存するところが多いが、本発明の効果を損なわない範囲で当業者であれば適宜選択することができる。水素透過膜10の主面において、セル12の直径は例えば約100〜500μmであり、水素透過相14の直径は例えば約1〜2μmである。
【0036】
このような本実施の形態によれば、膜厚方向に対して水素透過相14が略平行に配列していることから水素透過膜10の膜圧方向に水素をより確実に透過させることができ、水素透過相14が支持相16によって支持されていることから水素透過膜10の耐久性をより確実に維持することができる。
【0037】
つぎに、上記のような本実施の形態の水素透過膜は、
(1)溶解法により、水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料と、支持相を構成する第2の金属材料と、を含む試料を作製するアーク溶解工程と、
(2)前記試料を再溶融させた後、得られた溶融物を前記第1の金属材料が一方向に凝固するように凝固させ、前記第1の金属材料を含む水素透過相と、前記第2の金属材料を含み前記水素透過相を支持する支持相と、を有する凝固体を作製する一方向凝固工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法(第1の製造方法)により好適に製造することができる。
【0038】
以下に、本実施の形態の水素透過膜10の製造方法を工程ごとに説明する。
まず、工程(1)において、溶解法により、水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料と、支持相を構成する第2の金属材料と、を含む試料を作製する(溶解工程)。例えば溶解法により、水素透過能を有する第1の金属材料(Nb)と、第1の金属材料よりも低い水素透過能を有する第2の金属材料(NiおよびTi)と、を含む例えばロッド状の試料(NbNiTi母合金)を作製する。
【0039】
ここで、上記溶解法としては、例えば第1の金属材料や第2の金属材料の種類に応じて、種々の溶解法を採用することができる。例えばアーク溶解法、高周波誘導加熱溶解法、電気炉溶解法、電子ビーム溶解法、レーザー加熱溶解法などが挙げられる。
【0040】
第1の金属材料は水素透過相14を構成するものであり、第2の金属材料は支持相16を構成するものである。したがって、第1の金属材料および第2の金属材料としては上述した水素透過相14および支持相16の材料を適宜用いることができる。
【0041】
このとき、第1の金属材料と第2の金属材料との重量混合比は、後述する一方向凝固工程において、一方向に配列した水素透過相を含む部分をより確実に形成し得る範囲で設定すればよい。例えばNb−40〜41Ni−40〜40Ti(原子%){例えばNb−40.5Ni−40.5Ti(原子%)およびNb−41Ni−40Ti(原子%)}であればよく、なかでもNb−41Ni−40Ti(原子%)が好ましい。溶解の各種条件については、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。また、溶解工程は、試料に余計な不純物が混入しないように、アルゴンガスやチッ素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0042】
つぎに、工程(2)において、上記工程(1)で得られた試料を再溶融させた後、得られた溶融物を前記第1の金属材料が一方向に凝固するように凝固させ、前記第1の金属材料を含む水素透過相と、前記第2の金属材料を含み前記水素透過相を支持する支持相と、を有する凝固体を作製する(一方向凝固工程)。すなわち、上記試料を再溶融させた後、第1の金属材料(Nb)が一方向に凝固するように凝固させ、第1の金属材料(Nb)を含む水素透過相14と、第2の金属材料(NiおよびTi)を含み水素透過相14を支持する支持相16と、を有する凝固体(NbNiTi合金)を作製する。
【0043】
ここで、上記一方向凝固工程は、例えば第1の金属材料や第2の金属材料の種類に応じて、例えば浮遊帯域溶融法、ブリッジマン法、温度勾配法または急冷凝固法などによって行うことができる。浮遊帯域溶融法としては、光学式浮遊帯域溶融法が挙げられる。「光学式浮遊帯域溶融法」とは、上述のように、ハロゲンランプを加熱源として用い、回転楕円体反射鏡により赤外線を集光し、例えばロッド状のバルク試料の端部を加熱して溶融帯を形成し、浮遊帯域法によって凝固体(一方向凝固材)を形成する方法をいう。
【0044】
以下に、浮遊帯域溶融法のうちの光学式浮遊帯域溶融法についてより具体的に説明する。光学式浮遊帯域溶融法は、ハロゲンランプからの光を惰円体内反射鏡で集光し、これを試料に照射して溶融させるため、非常に小さな均熱帯を形成することができる。したがって、得られる溶融物から種結晶と育成結晶との溶着時における種結晶側の固液界面における温度勾配が大きくなるため、液相量を少なくすることができる。
【0045】
その結果、配列の制御をより確実に行い、第1の金属材料(Nb)が一方向に凝固するように凝固させ、第1の金属材料(Nb)を含む水素透過相14と、第2の金属材料(NiおよびTi)を含み水素透過相14を支持する支持相16と、を有する凝固体を得ることができる。なお、一方向凝固工程も、凝固体に余計な不純物が混入しないように、アルゴンガスやチッ素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0046】
さらには、例えばるつぼを用いる場合のような制約がないために種結晶を任意の形状に作製することができるとともに、任意の径の結晶を得ることもできる。また、種結晶と育成する凝固体を固定する上下のロッドをそれぞれ逆向きに回転させることにより、均一かつ安定な溶融部分を形成することができる。したがって、より確実に第1の金属材料(Nb)が一方向に凝固させることができる。
【0047】
光学式浮遊帯域溶融法を用いた上記凝固体(NbNiTi合金)の作製は、具体的には以下に示すようにして実施する。図4は、本実施の形態の水素透過膜の製造方法における光学式浮遊帯域溶融法に用いる装置の構成を模式的に示した概略断面図である。図4に示す装置は、ハロゲンランプ101と、惰円体内反射鏡102と、石英管103とを具備する。
【0048】
石英管103内には、作製すべき凝固体(NbNiTi合金)と同じ組成(NbとNiとTiとの比)を有する原料である棒状の試料106と、試料106と同一組成の種結晶107と、が配置されている。また、上ロッド104および下ロッド105は、試料106と種結晶107とにそれぞれ接続されており、これらを互いに逆方向または同方向に回転できるようになっている。
【0049】
凝固体(NbNiTi合金)の作製に際しては、石英管103内を予め例えば1.0×10-3Pa以下になるまで排気した後、アルゴンガスを流して不活性雰囲気を形成しておく。ハロゲンランプ101からの光は、惰円体内反射鏡102で反射されて試料106の下端部と種結晶107の上端部に集光し、この部分を溶解させる。その後、下ロッド105を上昇させて試料106に種結晶107を接着させる。
【0050】
そして、上ロッド104と下ロッド105とを同時に降下させることで、試料106から次々と液相が形成され、この液相から次々に一方向凝固が行われ、上述のような特定の構造を有する凝固体(NbNiTi合金)が生成する。このとき、特に凝固速度(成長速度)を制御することにより、より確実に上述のような特定の構造を有する凝固体(NbNiTi合金)が生成させることができる。成長速度はできるだけ低いほうがよく、例えば20mm/h以下であるのが好ましい。
【0051】
上記凝固体を膜状にして得た場合には、当該凝固体をそのまま本実施の形態の水素透過膜10として用いることができるが、上記光学式浮遊帯域溶融法によって得られる凝固体はロッド状であるため、上記一方向凝固工程の後、第1の金属材料(Nb)が配列している上記一方向に略垂直な方向において上記凝固体を切断して、水素透過膜10を得る。また、必要に応じて少なくとも一方の面に、放電加工や研磨などの常法によって表面処理を施してもよい。
【0052】
なお、上述のブリッジマン法または温度勾配法で得られる凝固体の形状は、用いるるつぼの形状によってコントロールすることができるが、いずれもバルク形状である。また、急冷凝固法によって得られる凝固体の場合には、膜状やバルク状とすることができると考えられる。
【0053】
以上のような製造方法によれば、水素透過能および耐久性に優れる本実施の形態の水素透過膜10をより確実に作製することができる。
【0054】
なお、本実施の形態1においては、水素透過相14を構成する第1の金属材料としてNbを用いる場合について説明したが、Nb合金などのNb系材料、TaまたはTa合金などのTa系材料、VまたはV合金などのV系材料であってもよい。また、支持相16を構成する第2の金属材料としてNiTiを用いる場合について説明したが、CoTiであってもよい。
【0055】
[実施の形態2]
図5は、本発明に係る水素透過膜の実施の形態2を概念的に示す正面図である。
図5に示すように、本実施の形態の水素透過膜20はディスク状であって、膜厚方向に略平行に延びる複数の貫通孔22を有する支持相(支持部)26と、貫通孔22に配された水素透過相(水素透過部)24と、を有する。そして、図示しないが、複数の水素透過相24は、水素透過膜20の膜厚方向(水素透過膜20の主面の法線方向、すなわち図5の紙面に略垂直な方向)に対して略平行に配列している。
【0056】
より具体的には、ミクロレベルで、支持相26で構成されたマトリクス内にロッド状の形状を有する水素透過相24が配されるとともに固定され、水素透過膜20の膜厚方向に略平行(すなわち一方向)に水素透過相24が延びて配列している。また、水素透過相24は例えばNbなどの水素透過性金属で構成され、支持相24は例えばCuなどの金属で構成されており、水素透過相24と支持相26とが互いに密接かつ強固に物理的に接続されている。
【0057】
本実施の形態の水素透過膜20は上記のような構成を有していればよく、水素透過能をできる限り向上させるという観点からは、水素透過膜20の主面の法線方向から当該水素透過膜20をみた場合に、水素透過膜20の主面の面積に対して水素透過相24の面積が占める割合が大きいほうが好ましい。
【0058】
したがって、図5においては、水素透過相24を30個有する場合を示しているが、水素透過相24の数は適宜選択することができる。また、水素透過相24および支持相26の面積などの寸法および形状も適宜選択することができる。
【0059】
このような本実施の形態によれば、膜厚方向に対して水素透過相24が略平行に配列していることから水素透過膜20の膜圧方向に水素をより確実に透過させることができ、水素透過相24が支持相26によって支持されていることから水素透過膜20の耐久性をより確実に維持することができる。
【0060】
上記本実施の形態の水素透過膜は、
(1)水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を含む第1のシートを、支持相を構成する第2の金属材料を含む芯材に捲回して、捲回体を得る捲回工程と、
(2)前記捲回体を、前記第2の金属材料を含む第1の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して一次線材を得る第1の縮径工程と、
(3)前記一次線材複数本を、前記第2の金属材料を含む第2の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して二次線材を得る第2の縮径工程と、
(4)前記二次線材を長さ方向に略垂直な方向に切断する切断工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法(第2の製造方法a)によって好適に製造することができる。
【0061】
以下に、本実施の形態の水素透過膜20の製造方法を、図面を参照しながら工程ごとに説明する。ここで、図6〜8は本実施の形態の水素透過膜20の製造方法を説明するための図である。
【0062】
まず、工程(1)において、図6に示すように、水素透過能を有する第1の金属材料(Nb)を含む、例えば2枚の第1のシート24aを、支持相を構成する、例えば第1の金属材料よりも低い水素透過能を有する第2の金属材料(Cu)を含む芯材24bに捲回して、捲回体24cを得る(捲回工程)。
【0063】
ここでは第1のシート24aを2枚用いる場合について図示したが、1枚であっても3枚以上であってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の金属材料からなるシートを介在させてもよい。
【0064】
本実施の形態における第1の金属材料は水素透過能を有するとともに延伸や縮径加工が可能な材料であればよい。また、第2の金属材料は、水素透過相を支持して水素透過相の脆化による水素透過膜の劣化を抑制することができ、延伸や縮径加工が可能な材料であればよい。
【0065】
つぎに、工程(2)において、前記捲回体24cを、第2の金属材料を含む第1の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して一次線材を得る(第1の縮径工程)。すなわち、図7に示すように、上記捲回工程において得られた捲回体24cを、Cu製の第1の筒状体であるパイプ26a内に挿入した後、押出し・伸線などの縮径加工を施して、一次線材24を得る。なお、第1の筒状体を構成する材料は、支持相を構成する材料(第2の金属材料)と同じであればよい。
【0066】
ついで、工程(3)において、上記一次線材複数本を、第2の金属材料を含む第2の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して二次線材を得る(第2の縮径工程)。すなわち、上記工程(2)で得た一次線材24複数本を、例えば図8に示すように伸線によって六角断面形状にし、Cu製の第2の筒状体であるパイプ26b内に挿入した後、押出し・伸線などの縮径加工を施して、二次線材(図示せず。)を得る。なお、第3の金属材料は、第1の金属材料〜第3の金属材料のいずれかと同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
そして、最後に工程(4)において、上記二次線材を長さ方向に略垂直な方向に切断することによって(切断工程)、図5に示す構造を有する本実施の形態の水素透過膜20を得ることができる。
【0068】
以上のような製造方法によれば、水素透過能および耐久性に優れる本実施の形態の水素透過膜20をより確実に作製することができる。
本実施の形態2においては、水素透過相24を構成する第1の金属材料としてNbおよび支持相26を構成する第2の金属材料としてCuからなる水素透過膜について説明したが、第1の金属材料として、Nbの代わりにNb合金などのNb系材料、TaまたはTa合金などのTa系材料、VまたはV合金などのV系材料を用いてもよい。また、第2の金属材料としてNiTiまたはCoTiを用いることも考えられる。
【0069】
以上、本発明の水素透過膜およびその製造方法の代表的な実施の形態について説明したが、これらのみに限定されるものではない。
本発明の水素透過膜は、変形態様として、例えば、水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を、支持相を構成する第2の金属材料で形成された多孔質材料の貫通孔に挿入する挿入工程、によって製造することもできる。
【0070】
ここにおける第1の金属材料および第2の金属材料は、上記実施の形態1および2における第1の金属材料および第2の金属材料と同じであればよい。また、ここにおける第2の金属材料は、より確実に第1の金属材料からなる水素透過相を支持して水素透過相の脆化による水素透過膜の劣化を抑制するという観点からは、ニッケルやアルミナなどのある程度剛性を有する金属を用いるのが好ましい。
【0071】
多孔質材料は、一方向に配列する貫通孔を複数個有するハニカム状であっても膜状であってもシート状であってもよい。厚みを有する場合には、多孔質材料の貫通孔に第1の金属材料を挿入した後に、貫通孔の配列方向に略垂直な方向において切断し、水素透過膜とすればよい。
【0072】
また、上記挿入工程は例えばめっき法により行うことができる。また、前記挿入工程の後、前記貫通孔の貫通方向に略垂直な方向において前記多孔質材料を切断する切断工程を具備していてもよい。
【0073】
このような方法によっても、ミクロレベルで水素透過相が支持相によって支持され、膜厚方向に対して水素透過相が略平行に配列している態様をより確実に製造することができる。
【0074】
以下に、本発明の代表的な実施例について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
《実施例1》
大亜真空(株)製の非消耗アーク溶解炉ACM−S01−Sを用い、高純度のNb、NiおよびTiを用いてアルゴンガス雰囲気下でアーク溶解を行うことにより、Nb−41Ni−40Ti(原子%)の組成を有する棒状の試料を作製した(アーク溶解工程(1))。
【0076】
ここで、得られた試料の断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、粒径数十μm程度のセルのなかに、細かい(Nb+NiTi)共晶のランダムなラメラ状組織が形成されていることが認められた。
【0077】
ついで、アスカル(株)製の光学式浮遊帯域溶融装置FZ−SS35Wを用いて、アルゴンガス雰囲気下、上記試料を15rpm、種結晶を5rpmでそれぞれ逆方向に回転させながら、上記試料を、再溶融させつつ得られた溶融物をNbが一方向に凝固するように、成長速度1.0mm/hで、凝固させ、Nbを含む水素透過相とNiTiを含む支持相とを有する棒状の凝固体を得た(一方向凝固工程(2))。
【0078】
その後、上記凝固体を、ブラザー(株)製の放電加工装置CONT HS−300を用いて放電加工し、エメリー紙(〜#2000)を用いて機械研磨し、さらにアルミナペースト(粒径:1.0μmおよび0.3μm)を用いてバフ研磨を行い、図1に示す構造を有する本発明の水素透過膜1(直径12mm、膜厚0.5〜0.7mm)を作製した。
【0079】
《実施例2》
上記一方向凝固工程(2)における成長速度を2.5mm/hとした以外は、実施例1と同様にして上記試料を凝固させ、Nbを含む水素透過相とNiTiを含む支持相とを有する膜状の凝固体を得、実施例1と同様にして水素透過膜2を得た。
【0080】
[評価試験]
(1)SEM分析
上記のようにして作製した水素透過膜1および2の主面の像(図1における矢印Xの方向からみた像)および縦断面の像(図1におけるY−Y線縦断面図の像)を、日本電子(株)製の走査電子顕微鏡(SEM)JSM−5300を用いて観察した。水素透過膜1の主面の像および縦断面の像を図9および10に示し、水素透過膜2の主面の像および縦断面の像を図11および12に示した。
【0081】
水素透過膜1は、図9に示すように水素透過相(図9における白い部分)と水素透過相を支持する支持相(図9における黒い部分)とが共晶を形成しており、図10に示すように膜厚方向に対して水素透過相(図10における白い部分)がロッド状に略平行に配列していることがわかった。また、図示しないが、セル12(図1参照)の直径は約500μmであり、水素透過相14の直径は約2μmであった。
【0082】
一方、水素透過膜2も、図11に示すように水素透過相(図11における白い部分)と水素透過相を支持する支持相(図11における黒い部分)とが共晶を形成しており、図12に示すように膜厚方向に対して水素透過相(図12における白い部分)がロッド状に略平行に配列していることがわかった。また、図示しないが、セル12(図1参照)の直径は約100μmであり、水素透過相14の直径は小さかった。
【0083】
(2)EDS分析
上記水素透過膜1および2における結晶組織、すなわち水素透過相(図9〜12における白い部分)と水素透過相を支持する支持相(図9〜12における黒い部分)の組成を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により測定した。その結果、水素透過相(図9〜12における白い部分)はNbで構成され、支持相(図9〜12における黒い部分)はNiTiで構成されていることが確認された。
【0084】
(3)水素透過係数の測定
上記水素透過膜1および2それぞれの一方の面に、RFマグネトロンスパッタ法によりPdを被覆し、以下のようにして水素透過膜1および2の以下の方向における水素透過係数を測定した。結果を図13に示した。
すなわち、Pd被覆したディスク状の試料をCuガスケットでシールした。次いで、円盤の両側を油拡散ポンプにより排気して3×10-3Pa以下の圧力にし、その後試料を加熱して673Kにし、そのまま30間分保持した。それから水素ガス(純度99.99999%)を下流側および上流側に、それぞれ0.1および0.2MPa導入し、その後水素透過測定を行った。上流側の水素圧力を0.2MPaから0.97MPaまで増大させ、また、温度は段階的に673Kから523Kまで50K間隔で下げた。一定温度に30分保持してから水素透過試験を開始した。水素透過束J(molH2-2-1)はマスフローメータを用いて測定した。そして、J×L対(Pu0.5−Pd0.5)プロットの傾きから水素透過係数Φを求めた。
【0085】
(a)水素透過膜1において水素透過相が成長して延びている方向A
(図1における矢印Xの方向、すなわち膜厚方向)
(b)水素透過膜2において水素透過相が成長して延びている方向B
(図1における矢印Xの方向、すなわち膜厚方向)
(c)水素透過膜2において前記方向Bに略垂直な方向C
(図1における矢印Yの方向、すなわち水素透過膜2の面方向)
【0086】
図13における(b)および(c)から、水素透過膜において水素透過相が成長して延びている方向B(図1における矢印Xの方向、すなわち膜厚方向)の水素透過係数のほうが、 前記方向Bに略垂直な方向C(図1における矢印Yの方向、すなわち水素透過膜の面方向)の水素透過係数よりも大きく、水素透過係数の水素透過相の配列方向に対する依存性(方位依存性)が確認された。
【0087】
また、図13における(a)および(b)から、セル12(図1参照)の粒径を大きくすることによって、水素透過膜において水素透過相が成長して延びている方向B(図1における矢印Xの方向、すなわち膜厚方向)の水素透過係数がさらに増加すること(673Kで3.42×10-8(molH2-1-1Pa-1))が確認された。すなわち、Nbからなる水素透過相をより確実に一方向に配列することにより、水素透過係数を増大させ得ることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、水素透過能に優れ、かつ高い耐久性を有する水素透過膜およびその製造方法を提供することができる。かかる本発明の水素透過膜は水素ガスの供給に好適に用いることができる。例えば都市ガス、天然ガスまたは石油などを改質器および水素精製器として機能するメンブレンリフォーマーに導き、水素ガスを主成分とする改質ガスを生成した後、当該改質ガスに含まれる水素ガスのみを分離して取り出す際に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る水素透過膜の実施の形態1を概念的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す水素透過膜10におけるセル12の膜厚方向(図1に示す矢印Xの方向)からみた概略図である。
【図3】図1に示す水素透過膜10の膜厚方向に略垂直な方向におけるセル12の断面(図1に示すY−Y線縦断面)を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1の水素透過膜の製造方法における光学式浮遊帯域溶融法に用いる装置の構成を模式的に示した概略断面図である。
【図5】本発明に係る水素透過膜の実施の形態2を概念的に示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る水素透過膜20の製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る水素透過膜20の製造方法を説明するための別の図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る水素透過膜20の製造方法を説明するためのさらに別の図である。
【図9】実施例1において製造した水素透過膜1の主面のSEM像を示す図である。
【図10】実施例1において製造した水素透過膜1の縦断面のSEM像を示す図である。
【図11】実施例2において製造した水素透過膜2の主面のSEM像を示す図である。
【図12】実施例2において製造した水素透過膜2の縦断面のSEM像を示す図である。
【図13】実施例1および2において製造した水素透過膜1および2の水素透過係数を示す図である。
【図14】水素透過膜による水素透過機構を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0090】
10、20・・・水素透過膜、
12・・・セル、
14、24・・・水素透過相、
16、26・・・支持相、
22・・・貫通孔、
24a・・・第1のシート、
24b・・・芯材、
24c・・・捲回体、
26a、26b・・・パイプ、
101・・・ハロゲンランプ、
102・・・惰円体内反射鏡、
103・・・石英管、
104・・・上ロッド、
105・・・下ロッド、
106・・・試料、
107・・・種結晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素透過相と前記水素透過相を支持する支持相とを具備する水素透過膜であって、
前記支持相は膜厚方向に対して略平行に配列する複数の孔を有し、前記孔の内部に前記水素透過相が配された構成を有すること、を特徴とする水素透過膜。
【請求項2】
前記水素透過相は水素透過性金属を含み、前記支持相は金属または金属酸化物を含むこと、を特徴とする請求項1に記載の水素透過膜。
【請求項3】
前記水素透過性金属はNb、TaまたはVを含み、前記金属はNiTi、CoTiまたはCuを含み、前記金属酸化物はAl23を含むこと、を特徴とする請求項2に記載の水素透過膜。
【請求項4】
前記水素透過相と前記支持相とが共晶を形成している構成を有すること、を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の水素透過膜。
【請求項5】
水素透過相と前記水素透過相を支持する支持相とを具備し、膜厚方向に対して前記水素透過相が略平行に配列していること、を特徴とする水素透過膜の製造方法であって、
(1)溶解法により、水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料と、支持相を構成する第2の金属材料と、を含む試料を作製する溶解工程と、
(2)前記試料を再溶融させた後、得られた溶融物を前記第1の金属材料が一方向に凝固するように凝固させ、前記第1の金属材料を含む水素透過相と、前記第2の金属材料を含み前記水素透過相を支持する支持相と、を有する凝固体を作製する一方向凝固工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法。
【請求項6】
前記一方向凝固工程の後、前記一方向に略垂直な方向において前記凝固体を切断する工程を具備すること、を特徴とする請求項5に記載の水素透過膜の製造方法。
【請求項7】
前記溶解工程をアーク溶解法で行うこと、を特徴とする請求項5または6に記載の水素透過膜の製造方法。
【請求項8】
前記一方向凝固工程を光学式浮遊帯域溶融法により行うこと、を特徴とする請求項5〜7のうちのいずれかに記載の水素透過膜の製造方法。
【請求項9】
水素透過相と前記水素透過相を支持する支持相とを具備し、膜厚方向に対して前記水素透過相が略平行に配列していること、を特徴とする水素透過膜の製造方法であって、
(1)水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を含む第1のシートを、支持相を構成する第2の金属材料を含む芯材に捲回して、捲回体を得る捲回工程と、
(2)前記捲回体を、前記第2の金属材料を含む第1の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して一次線材を得る第1の縮径工程と、
(3)前記一次線材複数本を、前記第2の金属材料を含む第2の筒状体の内部に挿入し、縮径加工して二次線材を得る第2の縮径工程と、
(4)前記二次線材を長さ方向に略垂直な方向に切断する切断工程と、
を具備すること、を特徴とする水素透過膜の製造方法。
【請求項10】
水素透過相と前記水素透過相を支持する支持相とを具備し、膜厚方向に対して前記水素透過相が略平行に配列していること、を特徴とする水素透過膜の製造方法であって、
水素透過相を構成する水素透過能を有する第1の金属材料を、支持相を構成する第2の金属材料で形成された多孔質材料の貫通孔に挿入する挿入工程、
を具備すること、を特徴とする、水素透過膜の製造方法。
【請求項11】
前記挿入工程はめっき法により行うこと、を特徴とする請求項10に記載の水素透過膜の製造方法。
【請求項12】
前記挿入工程の後、前記貫通孔の貫通方向に略垂直な方向において前記多孔質材料を切断する切断工程を具備すること、を特徴とする請求項10または11に記載の水素透過膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−68231(P2008−68231A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251101(P2006−251101)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】