説明

水耕栽培装置

【課題】 水耕栽培装置において、簡易な構成により、栽培槽の内部の栽培養液を適時のタイミングで間欠供給及び水位調整すること。
【解決手段】 水耕栽培装置10において、栽培槽11の内部の栽培養液を排出する排水管として、第1と第2の排水管41、42を備え、第1の排水管41による排水レベルである高水位レベルを第2の排水管42による排水レベルである低水位レベルより高く、第1の排水管41の排水流量を第2の排水管42の排水流量より大きく設定するとともに、ポンプ31の運転のオン時の給水管32の給水流量に比して、第1の排水管41の排水流量を大きく、第2の排水管42の排水流量を小さく設定し、ポンプ31の運転をタイマー33によりオン/オフ制御するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニク等の根菜類、又はレタス、みず菜、春菊等の葉菜類等の植物のための水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニンニクスプラウト(ニンニクの若芽)の水耕栽培装置として、特許文献1に記載の如く、栽培槽の上部に、植物を支持した栽培ベッドを配置し、ポンプが圧送する栽培養液を栽培槽の内部に供給する給水管を備えるとともに、栽培槽の内部の栽培養液を排出する排水管を備えてなるものがある。
【0003】
このニンニクスプラウトの水耕栽培装置では、栽培槽の上部に栽培ベッドとなる、網目状を有する栽培カゴを配置し、ニンニク球根を栽培カゴの上に載置し、栽培カゴ上のニンニク球根の根を栽培槽の内部の栽培養液の水中又は栽培養液の上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽の内部の栽培養液を間欠供給及び水位調整することとしている。
【0004】
ニンニク球根の根を栽培養液の上部の空中に位置付けることにより、ニンニク球根の根腐れを防止したり、水不足による適度のストレスを与えることができる。その後、ニンニク球根の根を栽培養液の水中に位置付けることにより、空中の水不足にあったニンニク球根の根に一気に栽培養液を吸収させ、根、若芽、葉の生育を促進させることができる。これにより、ニンニクスプラウトの食味、風味、日持等を良好にし、水耕栽培の生産性が向上するものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4252101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の水耕栽培装置では、栽培槽の内部の栽培養液を間欠供給及び水位調整する手段として、栽培槽に設けた水位センサと、水位センサの検出結果に基づいて作動する制御回路とを有する。制御回路は、ポンプが給水管経由で圧送する栽培養液の給水流量と、排水管に設けた電磁弁が調整する栽培槽からの栽培養液の排出流量とを制御する。従って、それらの構成は複雑である程度高コストにならざるを得ない。
【0007】
本発明の課題は、簡易な構成により、栽培槽の上部の栽培ベッドに支持した植物の生育に合わせて、その根を栽培養液の水中と、栽培養液の上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽の内部の栽培養液を適時のタイミングで間欠供給及び水位調整することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、栽培槽の上部に、植物を支持した栽培ベッドを配置し、ポンプが圧送する栽培養液を栽培槽の内部に供給する給水管を備えるとともに、栽培槽の内部の栽培養液を排出する排水管を備えてなる水耕栽培装置において、栽培槽の内部の栽培養液を排出する排水管として、第1と第2の排水管を備え、第1の排水管による排水レベルである高水位レベルを第2の排水管による排水レベルである低水位レベルより高く、第1の排水管の排水流量を第2の排水管の排水流量より大きく設定するとともに、ポンプの運転のオン時の給水管の給水流量に比して、第1の排水管の排水流量を大きく、第2の排水管の排水流量を小さく設定し、ポンプの運転をタイマーによりオン/オフ制御することにより、ポンプの運転のオンをタイマーが定める高水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を高水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその高水位レベルに設定される栽培養液の水中に位置可能にするとともに、ポンプの運転のオフをタイマーが定める低水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を低水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその低水位レベルに設定される栽培養液の上部の空中に位置可能にするように、栽培槽の内部の栽培養液を間欠供給及び水位調整するようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記高水位形成時間が、ポンプの運転のオフからオンの切換時に、ポンプの給水流量と第2の排水管の排水流量の流量差により、栽培槽の内部の高水位レベルと低水位レベルとの間の蓄水量を除した値である、栽培槽の内部の水位が低水位レベルから高水位レベルに到達する高水位到達時間に、その後の栽培槽の内部の水位を高水位レベルに保つ所望の高水位持続時間を加算して算定されるようにしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記低水位形成時間が、ポンプの運転のオンからオフへの切換時に、第2の排水管の排水流量により、栽培槽の内部の高水位レベルと低水位レベルとの間の蓄水量を除した値である、栽培槽の内部の水位が高水位レベルから低水位レベルに到達する低水位到達時間に、その後の栽培槽の内部の水位を低水位レベルに保つ所望の低水位持続時間を加算して算定されるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記栽培ベッドが、網目状を有する栽培カゴからなるようにしたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記栽培ベッドが、拡縮自在な多孔質環状体からなる栽培ブロックを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)
(a)ポンプの運転をタイマーによりオン/オフ制御することにより、ポンプの運転のオンをタイマーが定める高水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を高水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその高水位レベルに設定される栽培養液の水中に位置可能にするとともに、ポンプの運転のオフをタイマーが定める低水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を低水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその低水位レベルに設定される栽培養液の上部の空中に位置可能にするように、栽培槽の内部の栽培養液を間欠供給及び水位調整する。
【0014】
従って、植物の根を栽培養液の上部の空中に位置付けることにより、根腐れを防止したり、水不足による適度のストレスを与えることができる。その後、植物の根を栽培養液の水中に位置付けることにより、空中の水不足にあった植物の根に一気に栽培養液を吸収させ、根、若芽、葉の生育を促進させることができる。これにより、植物の食味、風味、日持等を良好にし、水耕栽培の生産性を向上できる。
【0015】
このとき、今回栽培される植物や季節に応じて、当該植物の根を栽培養液の水中に位置し続ける最適時間と、栽培養液の上部の空中に位置し続ける最適時間は、それらに対応する高水位形成時間t1と、低水位形成時間t2をタイマーにおいて簡易に設定替えできる。
【0016】
即ち、第1と第2の排水管を備え、ポンプの運転をオン/オフ制御するタイマーを備えるだけの簡易な構成により、植物の生育に合わせて、その根を栽培養液の水中と、栽培養液の上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽の内部の栽培養液を適時のタイミングで間欠供給及び水位調整することができる。
【0017】
(請求項2)
(b)上述(a)でタイマーにより設定される高水位形成時間t1を、栽培槽の設備条件により定まる高水位到達時間t1aと、今回栽培される植物や季節に応じて定める所望の高水位持続時間t1bにより、簡易かつ高精度に算定し、栽培槽の内部の栽培養液を高精度に間欠供給及び水位調整できる。
【0018】
(請求項3)
(c)上述(a)でタイマーにより設定される低水位形成時間t2を、栽培槽の設備条件により定まる低水位到達時間t2aと、今回栽培される植物や季節に応じて定める所望の低水位持続時間t2bにより、簡易かつ高精度に算定し、栽培槽の内部の栽培養液を高精度に間欠供給及び水位調整できる。
【0019】
(請求項4)
(d)栽培ベッドとして、網目状を有する栽培カゴからなるものを用いることにより、ニンニクスプラウト等の根菜類を簡易かつ安定的に栽培できる。
【0020】
(請求項5)
(e)栽培ベッドとして、拡縮自在な多孔質環状体からなる栽培ブロックを有するものを用いることにより、レタス等の葉菜類を簡易かつ安定的に栽培できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は水耕栽培装置を示す模式側断面図である。
【図2】図2は図1の平面図である。
【図3】図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図4は栽培カゴを示す模式斜視図である。
【図5】図5はニンニクスプラウトの栽培例を示す模式図である。
【図6】図6は栽培ベッドを示し、(A)は栽培台を示す模式斜視図、(B)は栽培ブロックを示す模式斜視図、(C)は栽培台の変形例を示す模式断面図である。
【図7】図7はレタスの栽培例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、図2に示す水耕栽培装置10は、床面上に設置される栽培槽11を有する。栽培槽11は例えば硬質プラスチックからなる矩形箱状をなし、栽培槽11の外周壁に囲まれる槽底部から槽内部に立上げられた複数条の立上り部11A〜11Dを備える。両側の立上り部11A、11Bは栽培槽11の長手方向で相対する内壁面に挟まれる全長に渡って延在され、中央の立上り部11C、11Dは栽培槽11の長手方向で相対する内壁面のそれぞれから離隔する一定範囲に渡って延在される。それらの立上り部11A〜11Dの上面は、栽培槽11の外周壁の上面よりわずかに低い位置に設定される。
【0023】
水耕栽培装置10は、栽培槽11の立上り部11A〜11Dの上部に、植物を支持した栽培ベッド20を配置する。栽培ベッド20については後述する。
【0024】
水耕栽培装置10は、栽培槽11の下部の床面上にタンク30を設置してある。タンク30は水、又は植物に有用となる肥料、微生物等を水に混合した養液水等である栽培養液Lを収容する。タンク30は、栽培養液Lを圧送するポンプ31を付帯して備える。
【0025】
水耕栽培装置10は、ポンプ31が圧送する栽培養液Lを栽培槽11の槽内部に供給する給水管32を備える。給水管32の出口は、栽培槽11の槽内部の長手方向の一端側の内壁面と立上り部11C、11Dの各一端部との間の空所に向けて開口している。
【0026】
水耕栽培装置10は、栽培槽11の内部の栽培養液Lを排出する排水管として、例えば硬質プラスチック管からなる第1と第2の2本の排水管41、42を備える。排水管41、42は、栽培槽11の槽内部の長手方向他端側の内壁面と立上り部11C、11Dの各他端部との間の空所において、栽培槽11の槽底部を貫通して配置されている。排水管41、42の上端の入口は栽培槽11の槽底部から槽内部のあるレベルH1、H2にまで起立して開口し、排水管41、42の下端の出口は栽培槽11の下部のタンク30に向けて開口している。
【0027】
尚、水耕栽培装置10は、栽培槽11の槽底部に対する排水管41、42の起立高さ(レベルH1、H2)を自在に調整できる構造を具備することができ、それらのレベルH1、H2を簡易に調整できる。
【0028】
また、水耕栽培装置10にあっては、今回栽培される植物のサイズ(給水量の程度)や根の長さ等に応じて、ポンプ31の吐出量を設定替えし、又は排水管41、42を異なる口径、長さのものに交換することもできる。
【0029】
しかるに、水耕栽培装置10は、栽培槽11の上部の栽培ベッド20に支持した植物の根を栽培養液Lの水中又は栽培養液Lの上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽11の内部の栽培養液Lを間欠供給及び水位調整するため、以下の構成を具備する。
【0030】
(A)栽培槽11の槽底部に対し、第1の排水管41による排水レベルである高水位レベルH1を、第2の排水管42による排水レベルである低水位レベルH2より高く(H1>H2)設定する。
【0031】
(B)第1の排水管41の口径で決まる排水流量Q1を、第2の排水管42の口径で決まる排水流量Q2より大きく(Q1>Q2)設定する。
【0032】
(C)ポンプ31の運転のオン時の給水管32から栽培槽11への給水流量Qpに比して、第1の排水管41の排水流量Q1を大きく(Qp<Q1)、第2の排水管42の排水流量Q2を小さく(Qp>Q2)設定する。
【0033】
(D)ポンプ31の運転をタイマー33によりオン/オフ制御することにより、下記i)、ii)の如くになるように、栽培槽11の内部の栽培養液Lを間欠供給及び水位調整する。
【0034】
i)栽培槽11の内部の水位が下記ii)により低水位レベルH2にある状態(ポンプ31の運転はオフ)から、ポンプ31の運転をオンし、このオンをタイマー33が定める高水位形成時間t1だけ継続することによって、栽培槽11の内部の水位を高水位レベルH1に設定し(高水位レベルに到達させ、更にはその高水位レベルに保つ)、栽培ベッド20上に支持した植物の根をその高水位レベルH1に設定されている栽培養液Lの水中に位置可能にする。植物の根は高水位形成時間t1(特に後述する高水位持続時間t1b)だけ栽培養液Lの水中に位置するものになる。
【0035】
ii)栽培槽11の内部の水位が上記i)により高水位レベルH1にある状態(ポンプ31の運転をオン)から、ポンプ31の運転をオフし、このオフをタイマー33が定める低水位形成時間t2だけ継続することによって、栽培槽11の内部の水位を低水位レベルH2に設定し(低水位レベルに到達させ、更にはその低水位レベルに保つ)、栽培ベッド20上に支持した植物の根を低水位レベルH2に設定されている栽培養液Lの上部の空中に位置可能にする。植物の根は低水位形成時間t2(特に後述する低水位持続時間t2b)だけ栽培養液Lの上部の空中に位置するものになる。
【0036】
ここで、上述i)の高水位形成時間t1は、ポンプ31の運転のオフからオンへの切換時に、高水位到達時間t1aに、所望の高水位持続時間t1bを加算して算定される。高水位到達時間t1aは、水耕栽培装置10の設備条件により定まる値であり、ポンプ31の給水流量Qpと第2の排水管42の排水流量Q2の流量差ΔQにより、栽培槽11の内部の高水位レベルH1と低水位レベルH2との間の蓄水量Aを除した値であって、栽培槽11の内部の水位が低水位レベルH2から高水位レベルH1に到達する時間である。高水位持続時間t1bは、今回栽培される植物や季節に応じて定められる値であり、栽培槽11の内部の水位を高水位レベルH1に保ち続ける時間である。
【0037】
また、上述ii)の低水位形成時間t2は、ポンプ31の運転のオンからオフへの切換時に、低水位到達時間t2aに、所望の低水位持続時間t2bを加算して算定される。低水位到達時間t2aは、水耕栽培装置10の設備条件により定まる値であり、第2の排水管42の排水流量Q2により、栽培槽11の内部の高水位レベルH1と低水位レベルH2との間の蓄水量Aを除した値であって、栽培槽11の内部の水位が高水位レベルH1から低水位レベルH2に到達する時間である。低水位持続時間t2bは、今回栽培される植物や季節に応じて定められる値であり、栽培槽11の内部の水位を低水位レベルH2に保ち続ける時間である。
【0038】
水耕栽培装置10によれば以下の作用効果を奏する。
(a)ポンプ31の運転をタイマー33によりオン/オフ制御することにより、ポンプ31の運転のオンをタイマー33が定める高水位形成時間t1だけ継続することによって栽培槽11の内部の水位を高水位レベルH1に設定し、栽培ベッド20上に支持した植物の根をその高水位レベルH1に設定される栽培養液Lの水中に位置可能にするとともに、ポンプ31の運転のオフをタイマー33が定める低水位形成時間t2だけ継続することによって栽培槽11の内部の水位を低水位レベルH2に設定し、栽培ベッド20上に支持した植物の根をその低水位レベルH2に設定される栽培養液Lの上部の空中に位置可能にするように、栽培槽11の内部の栽培養液Lを間欠供給及び水位調整する。
【0039】
従って、植物の根を栽培養液Lの上部の空中に位置付けることにより、根腐れを防止したり、水不足による適度のストレスを与えることができる。その後、植物の根を栽培養液Lの水中に位置付けることにより、空中の水不足にあった植物の根に一気に栽培養液Lを吸収させ、根、若芽、葉の生育を促進させることができる。これにより、植物の食味、風味、日持等を良好にし、水耕栽培の生産性を向上できる。
【0040】
このとき、今回栽培される植物や季節に応じて、当該植物の根を栽培養液Lの水中に位置し続ける最適時間と、栽培養液Lの上部の空中に位置し続ける最適時間は、それらに対応する高水位形成時間t1と、低水位形成時間t2をタイマー33において簡易に設定替えできる。
【0041】
即ち、第1と第2の排水管41、42を備え、ポンプ31の運転をオン/オフ制御するタイマー33を備えるだけの簡易な構成により、植物の生育に合わせて、その根を栽培養液Lの水中と、栽培養液Lの上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽11の内部の栽培養液Lを適時のタイミングで間欠供給及び水位調整することができる。
【0042】
(b)上述(a)でタイマー33により設定される高水位形成時間t1を、栽培槽11の設備条件により定まる高水位到達時間t1aと、今回栽培される植物や季節に応じて定める所望の高水位持続時間t1bにより、簡易かつ高精度に算定し、栽培槽11の内部の栽培養液Lを高精度に間欠供給及び水位調整できる。
【0043】
(c)上述(a)でタイマー33により設定される低水位形成時間t2を、栽培槽11の設備条件により定まる低水位到達時間t2aと、今回栽培される植物や季節に応じて定める所望の低水位持続時間t2bにより、簡易かつ高精度に算定し、栽培槽11の内部の栽培養液Lを高精度に間欠供給及び水位調整できる。
【0044】
従って、水耕栽培装置10を用いた水耕栽培方法として、下記(1)、(2)を採用できる。
(1)植物の栽培初期段階では、栽培ベッド20上に支持した植物の根の一部が栽培槽11の内部の高水位レベルH1に設定される栽培養液Lの水中に位置するように栽培養液Lを水位調整する。これにより、植物の根の生育を促進できる。
【0045】
(2)植物の生育に合わせ、栽培ベッド20上に支持した植物の根が、栽培槽11の内部の高水位レベルH1に設定される栽培養液Lの水中に位置する水中状態と、栽培養液Lの内部の低水位レベルH2に設定される栽培養液Lの上部の空中に位置する空中状態とを、交互に繰り返し付与されるように、栽培養液Lを間欠供給及び水位調整する。これにより、植物の根、若芽、葉の生育を促進できる。
【0046】
以下、水耕栽培装置10をニンニクスプラウト(根菜類)とレタス(葉菜類)のそれぞれの栽培に用いた具体例について説明する。
(実施例1)
水耕栽培装置10を用いて下記(1)〜(6)により、ニンニクスプラウトを栽培した。
【0047】
尚、水耕栽培装置10において、第1の排水管41を口径50mmのストレート管とし、第2の排水管42を口径25mmのストレート管とした。
【0048】
また、栽培ベッド20として、図4に示した栽培カゴ21を用いた。栽培カゴ21は、例えば硬質プラスチックからなる矩形平板のトレイ状をなし、縦横に区分された複数の区画21Aを有し、各区画21Aのそれぞれに多数の孔21Bを穿設して備えた網目状をなす。栽培カゴ21は、1つの区画21Aに、1つのニンニク球根を載置して使用できる。
【0049】
(1)タイマー33において、高水位形成時間t1を4時間、低水位形成時間t2を2時間に設定する。
【0050】
尚、高水位形成時間t1のうち、前述の高水位到達時間t1aは概ね12分であり、その余が前述の高水位持続時間t1bになる。また、低水位形成時間t2のうち、前述の低水位到達時間t2aは概ね18分であり、その余が前述の低水位持続時間t2bになる。
【0051】
(2)ニンニク1の球根1Aを栽培カゴ21に載置し、この栽培カゴ21を図5(A)に示す如く、栽培槽11の立上り部11A〜11Dの上部に配置した(図1、図5)。
【0052】
(3)タイマー33が、ポンプ31の運転のオンを上述(1)の高水位形成時間t1の4時間だけ継続する。ポンプ31は、タンク30の栽培養液を給水流量Qpで給水管32から栽培槽11に供給し続けるものになる。この間、ポンプ31が栽培槽11に供給する栽培養液は、栽培槽11の内部の水位を第2の排水管42の低水位レベルH2に到達させ、一部を第2の排水管42から排出されるものの、その水位を第1の排水管41の高水位レベルH1に到達させ、その後は所定の高水位持続時間t1bだけ第1の排水管41からのオーバーフローにより排出される。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位がその高水位レベルH1に設定される。
【0053】
このとき、上述(2)で栽培槽11の上部に配置した栽培カゴ21は、図5(A)に示す如く、上述の高水位レベルH1の水面上又は水面の直下に浸水するように設定される。従って、栽培カゴ21上のニンニク1の球根1Aの底部が栽培槽11の内部で高水位レベルH1にある栽培養液Lの水中に位置するものになって栽培養液Lを吸収し、球根1Aの底部から根1Bが水中に伸びて生育開始する。
【0054】
(4)タイマー33は、ポンプ31の運転のオンを上述(3)の高水位形成時間t1の4時間経過後、ポンプ31の運転をオフし、このオフを上述(1)の低水位形成時間t2の2時間継続する。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位は、第1の排水管41の高水位レベルH1から第2の排水管42の低水位レベルH2に到達し、その後は所望の低水位持続時間t2bだけその低水位レベルH2を保つ。
【0055】
このとき、栽培カゴ21上のニンニク1の球根1Aから生育して水中に伸びていた根1Bは、栽培槽11の内部の低水位レベルH2の栽培養液Lの上部の空中に位置するものになり、根腐れを防止されるとともに、水不足による適度のストレスを与えられる。
【0056】
(5)タイマー33は、ポンプ31の運転のオフを上述(4)の低水位形成時間t2の2時間経過後、ポンプ31の運転をオンし、このオンを上述(1)の高水位形成時間t1の4時間継続する。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位は、上述(3)と同様にして、第2の排水管42の低水位レベルH2から第1の排水管41の高水位レベルH1に到達し、その後は所望の高水位持続時間t1bだけその高水位レベルH1を保つ。
【0057】
このとき、栽培カゴ21上のニンニク1の球根1Aの根1Bは、栽培槽11の内部の高水位レベルH1の水中に再び位置するものになり、上述(4)で空中にあったことによるストレスを解消するように栽培養液Lを一気に吸収する。これにより、ニンニク1は急速に若芽1Cの生育を促進され、球根1Aを構成する鱗茎1Dの分離が認められる。
【0058】
(6)その後、上述(4)、(5)の栽培養液Lの間欠供給及び水位調整を繰り返し、ニンニク1の根1Bに上述(4)の空中状態と上述(5)の水中状態とを交互に繰り返し付与することにより、図5(B)に示す如く、ニンニク1のスプラウトを例えば長さ25cm程度まで生育させることができた。
【0059】
このニンニク1のスプラウトは、土壌栽培により得られるスプラウトと比較して軟らかく、味、香りがまろやかであり、かつ栄養価に高いものであった。また、土壌栽培と異なり水耕栽培であることから、得られたニンニクスプラウトは極めて清潔感に優れ、簡単な水洗いにより、そのまま市場に提供することもできた。
【0060】
(実施例2)
水耕栽培装置10を用いて下記(1)〜(6)により、レタスを栽培した。
【0061】
尚、水耕栽培装置10において、第1の排水管41を口径50mmのストレート管とし、第2の排水管42を口径25mmのストレート管とした。
【0062】
また、栽培ベッド20として、図6に示した栽培台22と栽培ブロック23を用いた。栽培台22は、例えば硬質プラスチック板22Aからなり、栽培ブロック23を挿入して保持するための多数の孔22Bを備える。栽培ブロック23は、例えばスポンジ等の拡縮自在な多孔質環状体23Aからなる。多孔質環状体23Aは、中心孔23Bを備えるとともに、周方向の一部に設けたスリット23Cを軸方向の全長に延在したC字断面状をなす。栽培ブロック23は、レタス2の茎2A及び根2Bを多孔質環状体23Aのスリット23Cから中心孔23Bに装填した状態で、環状体23Aを栽培台22の孔22Bに挿入して保持される。栽培ブロック23の中心孔23Bは、レタス2が成長して茎2Aが太くなるに従い弾発的に拡径し、茎2Aの成長を阻害することなく該茎2Aを保持し続ける。
【0063】
尚、栽培台22は、図6(C)に示す如く、以下板22Aの各孔22Bに該板22Aの板厚より長尺の筒状ホルダ22Cを固着して備え、栽培ブロック23の環状体23Aをこの筒状ホルダ22Cに挿入して保持するものでも良い。
【0064】
(1)タイマー33において、高水位形成時間t1を5時間、低水位形成時間t2を30分に設定する。
【0065】
尚、高水位形成時間t1のうち、前述の高水位到達時間t1aは概ね12分であり、その余が前述の高水位持続時間t1bになる。また、低水位形成時間t2のうち、前述の低水位到達時間t2aは概ね18分であり、その余が前述の低水位持続時間t2bになる。
【0066】
(2)レタス2の茎2A及び根2Bを栽培ブロック23に装填し、この栽培ブロック23が挿入された栽培台22を図6(A)に示す如く、栽培槽11の立上り部11A〜11Dの上部に配置した。
【0067】
(3)タイマー33が、ポンプ31の運転のオンを上述(1)の高水位形成時間t1の5時間だけ継続する。ポンプ31は、タンク30の栽培養液を給水流量Qpで給水管32から栽培槽11に供給し続けるものになる。この間、ポンプ31が栽培槽11に供給する栽培養液は、栽培槽11の内部の水位を第2の排水管42の低水位レベルH2に到達させ、一部を第2の排水管42から排出されるものの、その水位を第1の排水管41の高水位レベルH1に到達させ、その後は所定の高水位持続時間t1bだけ第1の排水管41からのオーバーフローにより排出される。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位がその高水位レベルH1に設定される。
【0068】
このとき、上述(2)で栽培槽11の上部に配置した栽培台22に挿入されている栽培ブロック23の下端は、図6(A)に示す如く、上述の高水位レベルH1の水面上又は水面の直下に浸水するように設定される。従って、栽培ブロック23に装填されているレタス2の根2Bが、栽培槽11の内部の高水位レベルH1にある栽培養液Lの水中に位置するものになって栽培養液Lを吸収し、水中に伸びる。
【0069】
(4)タイマー33は、ポンプ31の運転のオンを上述(3)の高水位形成時間t1の5時間経過後、ポンプ31の運転をオフし、このオフを上述(1)の低水位形成時間t2の30分継続する。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位は、第1の排水管41の高水位レベルH1から第2の排水管42の低水位レベルH2に到達し、その後は所望の低水位持続時間t2bだけその低水位レベルH2を保つ。
【0070】
このとき、栽培台22上の栽培ブロック23に装填されているレタス2の根2Bは、栽培槽11の内部の低水位レベルH2の栽培養液Lの上部の空中に位置するものになり、根腐れを防止されるとともに、水不足による適度のストレスを与えられる。
【0071】
(5)タイマー33は、ポンプ31の運転のオフを上述(4)の低水位形成時間t2の30分経過後、ポンプ31の運転をオンし、このオンを上述(1)の高水位形成時間t1の5時間継続する。これにより、栽培槽11の内部の栽培養液Lの水位は、上述(3)と同様にして、第2の排水管42の低水位レベルH2から第1の排水管41の高水位レベルH1に到達し、その後は所望の高水位持続時間t1bだけその高水位レベルH1を保つ。
【0072】
このとき、栽培台22上の栽培ブロック23に装填されているレタス2の根2Bは、栽培槽11の内部の高水位レベルH1の水中に再び位置するものになり、上述(4)で空中にあったことによるストレスを解消するように栽培養液Lを一気に吸収する。これにより、レタス2は急速に葉2Cの生育を促進される。
【0073】
(6)その後、上述(4)、(5)の栽培養液Lの間欠供給及び水位調整を繰り返し、レタス2の根2Bに上述(4)の空中状態と上述(5)の水中状態とを交互に繰り返し付与することにより、図7(B)に示す如く、レタス2を生育させることができた。
【0074】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、水耕栽培装置10は、3本以上の排水管41、42、43…を備え(図2)、それらのうちから2本の例えば排水管41、43を選択し、高い方の排水管41を第1の排水管とし、低い方の排水管43を第2の排水管として用いることができる。選択されなかった排水管42…についてはその上端の入口が閉栓される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、簡易な構成により、栽培槽の上部の栽培ベッドに支持した植物の生育に合わせて、その根を栽培養液の水中と、栽培養液の上部の空中に交互に位置付けるように、栽培槽の内部の栽培養液を適時のタイミングで間欠供給及び水位調整することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 水耕栽培装置
11 栽培槽
20 栽培ベッド
21 栽培カゴ
22 栽培台
23 栽培ブロック
30 タンク
31 ポンプ
32 給水管
33 タイマー
41 第1の排水管
42 第2の排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培槽の上部に、植物を支持した栽培ベッドを配置し、
ポンプが圧送する栽培養液を栽培槽の内部に供給する給水管を備えるとともに、
栽培槽の内部の栽培養液を排出する排水管を備えてなる水耕栽培装置において、
栽培槽の内部の栽培養液を排出する排水管として、第1と第2の排水管を備え、
第1の排水管による排水レベルである高水位レベルを第2の排水管による排水レベルである低水位レベルより高く、第1の排水管の排水流量を第2の排水管の排水流量より大きく設定するとともに、
ポンプの運転のオン時の給水管の給水流量に比して、第1の排水管の排水流量を大きく、第2の排水管の排水流量を小さく設定し、
ポンプの運転をタイマーによりオン/オフ制御することにより、
ポンプの運転のオンをタイマーが定める高水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を高水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその高水位レベルに設定される栽培養液の水中に位置可能にするとともに、
ポンプの運転のオフをタイマーが定める低水位形成時間だけ継続することによって栽培槽の内部の水位を低水位レベルに設定し、栽培ベッド上に支持した植物の根をその低水位レベルに設定される栽培養液の上部の空中に位置可能にするように、
栽培槽の内部の栽培養液を間欠供給及び水位調整することを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記高水位形成時間が、ポンプの運転のオフからオンの切換時に、ポンプの給水流量と第2の排水管の排水流量の流量差により、栽培槽の内部の高水位レベルと低水位レベルとの間の蓄水量を除した値である、栽培槽の内部の水位が低水位レベルから高水位レベルに到達する高水位到達時間に、その後の栽培槽の内部の水位を高水位レベルに保つ所望の高水位持続時間を加算して算定される請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記低水位形成時間が、ポンプの運転のオンからオフへの切換時に、第2の排水管の排水流量により、栽培槽の内部の高水位レベルと低水位レベルとの間の蓄水量を除した値である、栽培槽の内部の水位が高水位レベルから低水位レベルに到達する低水位到達時間に、その後の栽培槽の内部の水位を低水位レベルに保つ所望の低水位持続時間を加算して算定される請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記栽培ベッドが、網目状を有する栽培カゴからなる請求項1〜3のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記栽培ベッドが、拡縮自在な多孔質環状体からなる栽培ブロックを有する請求項1〜3のいずれかに記載の水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−210168(P2012−210168A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76711(P2011−76711)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(503112558)株式会社海洋牧場 (5)
【出願人】(502269882)株式会社不二工芸製作所 (5)
【Fターム(参考)】