説明

水蒸気バリア性フィルムの製造方法及び水蒸気バリア性フィルム

【課題】 本発明の課題は、セロハンおよび酸化セルロースについてそれらの親水性の高さに由来する水蒸気バリア性の低さを解決するために、特定の組成物でそれらの表面を処理することにより、優れた水蒸気バリア性を有するフィルムを提供することにある。
【解決手段】ワックス類(A)とスチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体との重合体(B)とからなる水分散液にスチレン類と(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物(C)を添加して重合することで得られた水性重合体分散液を用いてセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)表面を被覆することで得られる水蒸気バリア性フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリア性の優れるセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルムなどの水蒸気バリア性フィルム及びその製造方法に関し、更に詳しくは親水性が非常に強く水蒸気を透過させやすいセロハンおよび酸化セルロース由来であっても水蒸気透過性が十分に抑制されたフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装や金属部品、電子部品の保護などに関し、内容物の吸湿を防ぐために水蒸気バリア性の優れる素材が多く用いられている。その多くはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどに代表される石油など化石資源に由来する化学製品であるが、近年における資源の有効利用、カーボンニュートラル、生分解性の点から天然由来の物質が注目されている。中でもセルロースは木材、植物、微生物から生産される貯蔵量の最も多い天然高分子であり、その有効利用についての注目度は非常に高い。
【0003】
なかでもセロハンは再生セルロースとしてザンテートから生産され、透明性、扱いやすさ、生産量の点から有効に活用できるセルロース系材料の一つである。しかし、セルロースは親水基である水酸基を多く有しているので親水的であり、水分子の浸透性の高さが問題となる恐れがある。
【0004】
さらにセルロース繊維をN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を触媒として酸化することで得られる酸化セルロースは、グルコース残基の1級アルコールのみを選択的に酸化してカルボン酸(塩)とすることが可能であり、酸化セルロース繊維の酸化度を高めてカルボン酸塩を多く導入することで幅数ナノメートルの微小繊維に容易に解繊されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。この酸化セルロース微小繊維はカルボン酸を多量に有しえること、非常に微細な繊維であること、高結晶性であることから、成形体とした場合に優れた力学特性、光学特性、界面特性他の特性を持つ可能性があり、機能材料、構造材料などへの応用が期待されている。しかしながら、前記材料として使用するためにはセルロースの親水性および酸化反応によって多量に導入されたカルボキシル基に由来する水分子の浸透性の高さがセロハン以上に問題となる恐れがある。
【0005】
以上のようにセルロース繊維を包装用フィルムとして使用する際にはセルロースが本来有する極めて強い親水性に由来する水分子の浸透を抑制し水蒸気バリア性を高めるために、その表面を他の物質で覆うことが必要であり、従来から種々の技術が提案されている。
【0006】
セルロース系部材である紙又は板紙については、ワックスの存在下でビニル系単量体を重合することにより得られた水性分散液を基材である紙又は板紙に塗工することで防湿紙を得る技術が開示されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0007】
また、セルロース系素材の水蒸気バリア性向上については、テトラエトキシシランとEVOHによる表面被覆による方法(例えば、特許文献5参照)が、また、無機酸化物蒸着層とメラミンからなる保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
さらにエポキシ化合物と高分子化促進剤による水蒸気バリア層の形成に関する技術(例えば、特許文献7参照)が、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを含有するセルロールエステルフィルム(例えば、特許文献8参照)が、トリフェニルモノホスフェート化合物及び芳香族ポリオール架橋ポリホスフェート化合物を含むトリアセチルセルロースフィルム(例えば、特許文献9参照)が提案されている。再生セルロース基質に対する無塩素水蒸気バリア層に関する技術が開示されている(例えば、特許文献10参照)。
【0009】
メルトフローレートが6〜20g/10minのエチレン−α,β−不飽和カルボン酸系共重合体からなる層を積層することにより親水性多糖類フィルムに耐湿性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献11参照)。
【0010】
また、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンをフィルムに積層することで優れた水蒸気バリア性が達成されることが既知であるが、塩化物を燃焼させることによる塩素ガスやダイオキシンの発生が問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−132570号公報
【特許文献2】特開平7−258307号公報
【特許文献3】特開平8−188607号公報
【特許文献4】特開2002−138394号公報
【特許文献5】特開2007−290144号公報
【特許文献6】特開2006−44162号公報
【特許文献7】特開2006−235341号公報
【特許文献8】特開2003−12823号公報
【特許文献9】特開2003−221465号公報
【特許文献10】特開平6−23914号公報
【特許文献11】特開2004−74665号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Biomacromolecules、7巻6号、1687−1691頁、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、セロハンおよび酸化セルロースについてそれらの親水性の高さに由来する水蒸気バリア性の低さを解決するために、特定の組成物でそれらの表面を処理することにより、優れた水蒸気バリア性を有するセルロースフィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ワックス類(A)と特定の重合体(B)からなる水分散液に、特定の単量体混合物(C)を添加して重合することで得られた水性重合体分散液を用いてセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルムの表面を被覆することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)ワックス類(A)と、スチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体とを含む単量体の重合体(B)とからなる水分散液に、スチレンと(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物(C)を添加して重合することで得られた水性重合体分散液を用いてセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)表面を被覆することで得られる水蒸気バリア性フィルムの製造方法、
(2)セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)がセロハンフィルムである前記(1)の水蒸気バリア性フィルムの製造方法、
(3)セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)が、触媒としてN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を用いてセルロース長繊維を酸化しさらに解繊処理して得られた酸化セルロース微小繊維からなる、酸化セルロースフィルムである前記(1)の水蒸気バリア性フィルムの製造方法、
(4)前記(1)〜(3)の製造方法によって得られた水蒸気バリア性フィルム、
を提供する。
【発明の効果】
【0016】
防湿・防曇・撥水・防汚性能を有する光学フィルムや包装フィルム等の機能性フィルムなどのフィルム状成形体などとして用いることができ、使用する目的に合わせた任意の形状を取ることが可能である水蒸気バリア性に優れるセロハンフィルム及び酸化セルロースフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ワックス類(A)の説明]
本発明におけるワックス類(A)としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、ポリオレフィン系ワックス、天然ワックスなどが挙げられ、特にパラフィンワックスおよび/またはマイクロクリスタリンワックスが好ましい。また、ワックス類の融点は、30〜80℃であることが好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。
【0018】
[スチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体の重合体(B)の説明]
重合体(B)は、スチレン類、(メタ)アクリレート、カルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体の少なくとも3種類の単量体を重合することによって得られる重合体である。
【0019】
本発明の重合体(B)におけるスチレン類とは、スチレン骨格を有する重合性化合物であり、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどであり、スチレンが好ましい。
【0020】
本発明の重合体(B)における(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートであればよく、CH=CR−COORの一般式で表わされるものが好ましい(ただし、Rは水素又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)。この中でもRが炭素数1〜12のアルキル基である(メタ)アクリレートが特に好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0021】
カルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体としてはそれぞれ以下に示すものがあげられる。
【0022】
本発明の重合体(B)におけるカルボシキル基を有する単量体は、カルボシキル基とビニル基を有する単量体であればよく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等、或いはこれらのカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが例示できる。これら単独、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。これらカルボシキル基を有する単量体の中でもアクリル酸およびその塩の使用が好ましい。
【0023】
本発明の重合体(B)における3級アミノ基を有する単量体は、3級アミノ基とビニル基を有する単量体であればよく、例えば次のものを挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用できる。
(1)(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート:例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等
(2)(ジアルキル)アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:ジメチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等
(3)(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド:ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等
(4)ビニルピリジン
(5)ビニルイミダゾール
これらの中でも、(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(ジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミドの利用が好ましい。
【0024】
3級アミノ基を有する単量体の一部を4級化剤で4級化した4級アンモニウム塩も使用することができる。4級アンモニウム塩を得るにあたって使用する4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、エピクロロヒドリン、アルキレンオキシド、スチレンオキシド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド等のグリシジル基を持つ化合物、及び3−クロロ−2−ヒドロキシアンモニウムクロライド等のエポキシ化合物や有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸、並びにジエチル硫酸を挙げることができる。その中でも、アルキレンオキシド、スチレンオキシドの利用が燃焼廃棄する際の塩素ガスやダイオキシンの発生がないため好ましい。
【0025】
なお、3級アミノ基を有する単量体を重合し、スチレン類と(メタ)アクリレートと3級アミノ基を有する単量体を含む単量体の重合体(B)を得た後、重合体の3級アミノ基をこれらの4級化剤により4級化にすることにより得られた重合体は本発明の重合体(B)の態様に含まれる。また、本発明の効果を害しない、スチレン類、(メタ)アクリレート、並びにカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体と共重合可能な単量体である(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性単量体、ビニルスルホン酸などのカルボキシル基を有しないアニオン性単量体、アリルアミンなどの3級アミノ基を有しないカチオン性単量体を用いることができる。
【0026】
本発明の重合体(B)を構成する各モノマーの使用量は、スチレン類が10〜80質量%の範囲内で、(メタ)アクリレートが10〜70質量%の範囲内で、並びにカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体が10〜60質量%の範囲内で、これらの合計が100質量%と成るように適宜に決定されることが好ましく、スチレン類が30〜60質量%の範囲内で、(メタ)アクリレートが10〜50質量%の範囲内で、並びにカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体が20〜40質量%の範囲内で、これらの合計が100質量%と成るように適宜に決定されることがより好ましい範囲であり、その他共重合可能な単量体は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。前記カルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体が10質量%未満であると得られた水性重合体分散液の分散安定性が悪くなる場合があり、逆にカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体が60質量%を超えると防湿性が阻害される場合がある。
【0027】
本発明の重合体(B)の製造法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の各種公知の方法を採用でき、溶液重合、乳化重合が好ましい。
【0028】
溶液重合による場合には、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等の溶媒を使用できる。
【0029】
乳化重合による場合に使用する乳化剤は特に制限されず、各種の界面活性剤を使用でき、例えば、強化ロジンのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシエチレンモノ及びジスチリルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩等のアニオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノ及びジスチリルフェニルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等の非イオン性界面活性剤が使用でき、これらの単独あるいは二種以上を併用して用いる。その使用量は、全仕込み単量体に対して0.5〜10質量%程度である。ただし、低分子量の乳化剤は水蒸気バリア性を悪化させる恐れもあり、使用しないことが望ましい。
【0030】
前記各重合法で使用する重合開始剤は特に限定されず、過硫酸塩類、過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤等の各種公知のものが使用でき、又、分子量を調整するために公知の連鎖移動剤であるイソプロピルアルコール、四塩化炭素、クメン、チオグリコール酸エステル、アルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等を適宜使用することもできる。
【0031】
また、スチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体との重合体(B)の製造時にワックス類(A)をあらかじめ添加しておくこともできる。
【0032】
スチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体との重合体(B)の分子量は、通常は、重量平均分子量が3000〜50000、より好ましくは、15000〜35000の範囲が塗工適性において有効である。
【0033】
[スチレン類と(メタ)アクリレートを少なくとも含む単量体混合物(C)の説明]
本発明の単量体混合物(C)は、スチレン類と(メタ)アクリレートとを少なくとも含むものであり、その他の共重合可能な単量体を含んでいてもかまわない。
【0034】
本発明の単量体混合物(C)のスチレン類と(メタ)アクリレートは、前記の重合体(B)に用いられる単量体であるスチレン類と(メタ)アクリレートと同じである。
【0035】
本発明の水性重合体分散液おけるスチレン類と(メタ)アクリレートとを少なくとも含む単量体(C)を構成する各モノマーの使用量は、スチレン類が20〜80質量%の範囲内で、(メタ)アクリレートが20〜80質量%の範囲内で単量体(C)が100質量%となるように適宜に選択されるのが好ましく、スチレン類が40〜60質量%の範囲内で、(メタ)アクリレートが40〜60質量%の範囲内で単量体(C)が100質量%となるように適宜に選択されるのが特に好ましく、その他共重合可能な単量体は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0036】
本発明におけるワックス類(A)の使用量は、重合体(B)と単量体混合物(C)の総重量に対して1〜10質量%が好ましい。
【0037】
本発明における重合体(B)とスチレン類と(メタ)アクリレートとを少なくとも含む単量体(C)との配合割合は(B):(C)=60:40〜10:90質量部の範囲が好ましい。
【0038】
本発明における水性重合体分散液の製造法としては、ワックス類(A)と重合体(B)との水分散液中に、又はワックス類(A)と重合体(B)とをホモジナイザー等の乳化機で予め乳化分散させた水分散液中に、あるいは重合体(B)の製造時にワックス類(A)をあらかじめ添加しておいた水分散液中にスチレン類と(メタ)アクリレートとを少なくとも含む単量体(C)を加え、充分に撹拌混合した後、常法に従って重合することにより得られる。
【0039】
前記製造に使用する重合開始剤は特に限定されず、過硫酸塩類、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤などの各種公知のものを使用でき、又、分子量を調整するために公知の各種連鎖移動剤を適宜使用することができる。
【0040】
[セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)の説明]
本発明で使用できるセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルムとしては、セロハンフィルム、酸化セルロースフィルムであり、セルロースエステルフィルム、セルロースエーテルフィルム、硝酸セルロースフィルム、カルボキシメチル化セルロースフィルムなどと複合フィルムを形成するものも含まれる。
【0041】
本発明で使用するセロハンフィルムは主にビスコースからなる溶液から作成された薄膜あるいは薄板状の成型体であれば製造法に特に制限はなく、主な原料がセルロースであれば製造時にフィルムの性質を損ねない限りで添加物を併用していてもかまわない。
【0042】
本発明で使用する酸化セルロースフィルムは、触媒としてN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を用いてセルロース長繊維を酸化し、これにより得られた酸化セルロース繊維を洗浄後に解繊処理した酸化セルロース微小繊維から成るフィルムである。
【0043】
なお、酸化処理を行なっていない未処理のセルロース繊維を「セルロース長繊維」と、セルロース長繊維を酸化しただけの繊維を「酸化セルロース繊維」と、酸化セルロース繊維を解繊処理して得られる微小繊維を「酸化セルロース微小繊維」と略することとする。具体的には、セルロース長繊維および酸化セルロース繊維とは、製紙用に使用されるパルプあるいはリンターの大きさを想定しており、幅10〜40μm、長さ0.5〜4.0mm程度の繊維とする。酸化反応により繊維長と繊維幅は殆ど変化しない。酸化セルロース微小繊維とは、セルロースミクロフィブリルの大きさを想定しており、幅3〜20nm、長さ10μm以下の繊維とする。
【0044】
酸化セルロース微小繊維は触媒としてN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を用いてセルロース長繊維を酸化し、得られた酸化セルロース繊維を解繊することで得られる。
セルロース長繊維としては、木材、綿花等の植物由来、ホヤなどの動物および微生物由来の天然繊維、再生セルロース繊維などを用いることができるが、植物由来の天然繊維が好ましく、植物由来の漂白済み天然繊維がさらに好ましい。また、叩解の度合いが比較的低い(カナディアンスタンダードフリーネスが300以上)セルロース長繊維が、酸化後の保水度の上昇による酸化セルロース繊維の高粘度化が抑制されるため、好ましい。
【0045】
上記酸化セルロース繊維を得るための触媒であるN−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラプロピル−1−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−N−オキシル、4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを挙げることができ、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルが好適である。
【0046】
上記酸化セルロースを得るための触媒であるハロゲン化アルカリ金属塩としては、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなどのハロゲン化リチウム塩、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどのハロゲン化ナトリウム塩、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化カリウム塩を挙げることができ、臭化ナトリウムとヨウ化ナトリウムが好ましく、特に臭化ナトリウムが好適である。
【0047】
上記酸化セルロースを得るための酸化剤としては、塩素、臭素などのハロゲン、次亜塩素酸、次亜臭素酸などの次亜ハロゲン酸、亜塩素酸、亜臭素酸などの亜ハロゲン酸、過塩素酸、過臭素酸などの過ハロゲン酸またはそれらの塩等、目的の酸化物が得られる酸化剤であれば限定しないが、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩が好ましく、特に次亜塩素酸ナトリウムが好適である。
【0048】
酸化反応の方法は、前記非特許文献1に記載されるような公知の方法で行なうことができる。例えば、セルロース長繊維濃度1〜2質量%のセルロース長繊維水分散液に触媒として2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルと臭化ナトリウムを溶解し、セルロース長繊維水分散液を室温で攪拌しつつ所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入し、カルボン酸の生成によって低下するpHを水酸化ナトリウム水溶液でpH10〜11の範囲で調整することによって行なうことができる。
【0049】
酸化反応後の洗浄は、酸化セルロース繊維から触媒および酸化によって生じる酸化剤の還元物を除去することを目的に行なうものであって、前記目的が達成される方法であれば特に制限は無い。例示すれば、フィルター上で酸化セルロース繊維をろ過し、ろ過物を水中で攪拌し、再度ろ過する工程を数回繰り返す方法が挙げられる。
【0050】
解繊処理は、繊維を細く解く処理をいい、例えば、酸化セルロース繊維を水中で、剪断力を与えることで行うことができる。水中で行うと、酸化セルロース繊維は、カルボン酸が解離するpHの範囲内では繊維表面に存在するカルボン酸イオンの静電反撥により比較的弱いエネルギーで微小繊維に解繊され易いため好ましい。また、剪断力を与えるために、高圧ホモジナイザー、ミキサー、衝突型分散装置、二軸混練機等の装置を使用することができる。より具体的には、1質量%濃度の酸化セルロース繊維の水分散液を家庭用ミキサーで数分間処理することで、ゼリー状の酸化セルロース微小繊維の水分散物を得ることができる。
【0051】
また、酸化セルロース微小繊維に含まれるカルボン酸量については、酸化セルロース繊維乾燥重量1gあたり0.5meq以上であり、5.0meq以下であることが好ましい。カルボン酸量が0.5meq未満の場合はセルロース繊維表面に導入されるカルボン酸量が少なくなり、繊維間の静電反撥が不十分となり、解繊されにくくなる場合があるため、酸化セルロース微小繊維を得るために多くのエネルギーが必要となってしまう場合がある。また、逆にカルボン酸量が5.0meqより多い場合、カルボン酸を導入するための反応時間が極めて長時間となり、またそのような酸化セルロースが得られたとしても保水性が高くなり、洗浄が困難になる場合がある。カルボン酸量の定量方法については、TAPPI STANDARD METHOD T237 cm−98に準じた方法や電導度滴定による方法がある。
【0052】
セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)を製造する際には、効果を阻害しない範囲で消泡剤、発泡剤、架橋剤等を添加する事ができる。また、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、フェノール樹脂やポリウレタン樹脂などの樹脂、およびガラス繊維や炭素繊維などの繊維を加え、複合化してセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)とすることができる。
【0053】
乾燥工程については、セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)が均一に乾燥する方法であれば手段は問わず、温風による乾燥、赤外線による乾燥、熱媒を充填した金属板との接触による乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、風乾等の方法をとることができる。ただし、セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)を構成する成分が変質し、それらの効果が阻害されない程度の加熱を行なうことが好ましく、セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)表面の温度が200℃以下に保持される条件での乾燥が好ましい。
【0054】
フィルムの作成方法については特に制限はなく、溶媒に溶解または分散させたセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルムを押し出し加工により得る方法、更に延伸加工する方法、キャスト法、塗工法等が挙げられる。
【0055】
[表面を被覆する方法]
セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルムの表面を被覆する方法としては、塗工が一般的である。
【0056】
[塗工方法の説明]
本発明の水性重合体分散液をセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)に塗工する場合、フィルムへの付着量は要求する品質により決定されるが、塗工濃度は10〜50質量%で塗工されるのが好ましく、その水性重合体分散液の塗工量は1〜25g/mである。本発明における水性重合体分散液を含む塗工液は常法に従って、ロールコーター、ロッドコーター、バーコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、エアドクターコーター、カーテンコーター、ダイコーター、キスコーター、リップコーター、キャピラリーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、浸漬コーティング、キャストコーター、スプレーコーティングなどの各種塗工設備、方法にて塗工、含浸することができる。
【0057】
本発明の水蒸気バリア性フィルムは、防湿・防曇・撥水・防汚性能を有する光学フィルムや包装フィルム等の機能性フィルムなどのフィルム状成形体などとして用いることができ、使用する目的に合わせた任意の形状を取ることが可能である。
【実施例】
【0058】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下において「部」で示すのはいずれも「質量部」を意味する。
【0059】
重合体(B)の製造例1
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた反応容器を用い、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1000部の加熱還流下、単量体としてスチレン400部、2−エチルヘキシルアクリレート300部、98質量%アクリル酸300部、開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド20部の混合物を窒素気流下で3時間かけて滴下し、滴下後に2時間反応させた後に溶媒を加熱留去することで重合体(B)である重合体1を得た。
【0060】
重合体(B)の製造例2〜4
製造例1において、単量体を表1に記載したように変えた以外は製造例1と同様にして重合体2〜4を得た。
【0061】
重合体(B)の製造例5
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた反応容器を用い、溶媒としてトルエン500部、単量体としてスチレン400部、2−エチルヘキシルアクリレート200部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート400部、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル15部を投入し、窒素気流下80℃で保温し、反応液温度が80℃に到達してから1時間後と3時間後にアゾビスイソブチロニトリルをそれぞれ2部ずつ投入して合計5時間反応させた。その後反応液に90%酢酸170部を添加した後イオン交換水を2500部添加し、共沸によりトルエンを留去することで重合体(B)である重合体水分散液(濃度30質量%)を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
表1中の略号の説明
St :スチレン
EHA :2−エチルヘキシルアクリレート
nBA :n−ブチルアクリレート
EA :エチルアクリレート
MMA :メチルメタクリレート
AMSt:α−メチルスチレン
AA :アクリル酸
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0064】
水性重合体分散液の製造例1
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた反応容器を用い、ワックス類(A)としてパラフィンワックス(日本精蝋株式会社製商品名「パラフィンワックス155」)20部、重合体(B)として製造例1の重合体300部を仕込み、25%アンモニア水85部、イオン交換水1410部を仕込んで85℃で4時間加熱攪拌することでワックス分散液を作成し、この分散液を60℃とした後に単量体混合物(C)としてスチレン350部と2−エチルヘキシルアクリレート350部の混合液を投入し、次いで過硫酸アンモニウム2部とメタ重亜硫酸ナトリウム2部を添加して重合を開始して80℃で3時間保持することにより、濃度40質量%の水性重合体分散液1を得た。
【0065】
水性重合体分散液の製造例2
水性重合体分散液の製造例1において、パラフィンワックスの代わりにマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製商品名「Hi−Mic−2045」)を20部使用した以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液2を得た。
【0066】
水性重合体分散液の製造例3
水性重合体分散液の製造例1において、パラフィンワックスの代わりにマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製商品名「Hi−Mic−2065」)を20部使用した以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液3を得た。
【0067】
水性重合体分散液の製造例4
水性重合体分散液の製造例1において、重合体(B)の製造例1の重合体300部の代わりに重合体(B)の製造例2の重合体を300部使用した以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液4を得た。
【0068】
水性重合体分散液の製造例5
水性重合体分散液の製造例1において、重合体(B)の製造例1の重合体300部の代わりに重合体(B)の製造例3の重合体を300部使用した以外は実施例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液4を得た。
【0069】
水性重合体分散液の製造例6
水性重合体分散液の製造例1において、重合体(B)の製造例1の重合体300部の代わりに重合体(B)の製造例4の重合体を300部使用し、25%アンモニア水60部とした以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液6を得た。
【0070】
水性重合体分散液の製造例7
温度計、攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた反応容器を用い、ワックス類(A)としてパラフィンワックス(日本精蝋株式会社製商品名「パラフィンワックス155」)20部、重合体(B)として重合体(B)の製造例5の重合体水分散液1000部、ブチレンオキサイド50部、イオン交換水900部を仕込んで85℃で3時間以上加熱攪拌することでワックス分散液を作成し、この分散液を60℃とした後に単量体混合物(C)としてスチレン180部とエチルヘキシルアクリレート120部の混合液を投入し、次いで過硫酸アンモニウム1部とメタ重亜硫酸ナトリウム1部を添加して重合を開始して80℃で3時間保持することにより、濃度30質量%の水性重合体分散液7を得た。
【0071】
水性重合体分散液の製造例8
水性重合体分散液の製造例1において、単量体混合物(C)としてスチレン300部とn−ブチルアクリレート400部の混合液を投入した以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の水性重合体分散液8を得た。
【0072】
比較例用水性重合体分散液の製造例1
水性重合体分散液の製造例1において、パラフィンワックスを添加しない以外は水性重合体分散液の製造例1と同様にして濃度40質量%の比較例用水性重合体分散液1を得た。
【0073】
実施例1
[セロハンフィルムの処理試験]
市販のセロハンフィルム(厚さ35μm)の片面に対し、イオン交換水で10質量%に希釈した前記のようにして得られた水性重合体分散液1からなる塗工剤水溶液をバーコーター(No.16)で塗工し、循環式乾燥機で110℃、2分間の条件で乾燥した。この方法により、固形分で4g/mの塗工剤が塗工されたセロハンフィルムを得た。
【0074】
実施例2〜8、比較例1
実施例1における水性重合体分散液1を水性重合体分散液2〜8、比較例用水性重合体分散液1に代える以外は実施例1と同様にして、セロハンフィルムを得た。
【0075】
比較例2
実施例1における水性重合体分散液1を用いない以外は実施例1と同様にして、セロハンフィルムを得た。
【0076】
酸化セルロース微小繊維フィルムの処理試験
[酸化セルロースの調製]
カナディアンスタンダードフリーネス700、濃度2.0質量%の針葉樹晒クラフトパルプの水分散液600g(パルプ乾燥重量12g)にTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)0.15gの水溶液と臭化ナトリウム1.5gの水溶液を加え、更にイオン交換水を加えて全量を1000gとした。このパルプ水分散液を室温で攪拌しつつ、塩素濃度8質量%の次亜塩素酸ナトリウム32gを加え、パルプの酸化反応を開始した。酸化反応の進行に伴いpHが徐々に低下するため、2質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してパルプ分散液のpHを10.5に調整した。
2.5時間にpHの低下がほぼ停止したため反応の終点とし、200メッシュのナイロン製ろ布でろ過することで酸化パルプを取り出した。取り出した酸化パルプは1Lのイオン交換水中で攪拌し、200メッシュのナイロン製ろ布でろ過する作業を3回繰り返すことで洗浄し、その後適宜イオン交換水を加えて濃度を2%に調整して保管した。以上の操作により酸化セルロースの2質量%分散液を得た。
【0077】
[酸化セルロース微小繊維の調製]
酸化セルロースの2%分散液150gを家庭用ミキサーに投入し、解繊処理を行った。解繊が進むにつれて酸化セルロース分散液がゲル状になり、ミキサーの羽根が空回りするようになるため、450gのイオン交換水を徐々に追加して解繊処理を続け、最終的に無色透明な濃度0.5質量%の酸化セルロース微小繊維分散液600gを得た。
【0078】
実施例9
[酸化セルロース微小繊維フィルムの調製]
内径9cmのプラスチックシャーレに0.5質量%の酸化セルロース微小繊維分散液を60g投入し、室温で風乾することで厚さ30μmの酸化セルロース微小繊維フィルムを得た。
【0079】
酸化セルロース微小繊維フィルムを純水で10質量%に希釈した水性重合体分散液からなる塗工剤水溶液に5秒浸してすぐ取り出し、循環式乾燥機で110℃、5分間の条件で乾燥した。この方法により、固形分で12g/mの水性重合体分散液が塗工処理された酸化セルロース微小繊維フィルムを得た。
【0080】
実施例10〜16、比較例3
実施例9における水性重合体分散液1を水性重合体分散液2〜8、比較例用水性重合体分散液1に代える以外は実施例9と同様にして、セロハンフィルムを得た。
【0081】
比較例4
実施例9における水性重合体分散液1を用いない以外は実施例1と同様にして、セロハンフィルムを得た。
【0082】
水蒸気透過度の試験方法
前記のようにして得られたフィルムをJIS Z0208に準拠し、カップ法で40℃、90%R.H.における水蒸気透過度を測定した。結果を表2、表3に記載する。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
表2、3中の略号の説明
PW155 :日本精蝋株式会社製パラフィンワックス(商品名パラフィンワックス155)
HM2045 :日本精蝋株式会社製マイクロクリスタリンワックス(商品名Hi−Mic−2045)
HM2065 :日本精蝋株式会社製マイクロクリスタリンワックス(商品名Hi−Mic−2065)
St :スチレン
EHA :2−エチルヘキシルアクリレート
nBA :n−ブチルアクリレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス類(A)と、スチレン類と(メタ)アクリレートとカルボシキル基を有する単量体及び/又は3級アミノ基を有する単量体を含む単量体との重合体(B)とからなる水分散液に、スチレンと(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物(C)を添加して重合することで得られた水性重合体分散液を用いてセロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)表面を被覆することで得られる水蒸気バリア性フィルムの製造方法。
【請求項2】
セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)がセロハンフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリア性フィルムの製造方法。
【請求項3】
セロハンフィルム又は酸化セルロースフィルム(D)が、触媒としてN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を用いてセルロース長繊維を酸化しさらに解繊処理して得られた酸化セルロース微小繊維からなる、酸化セルロースフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリア性フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた水蒸気バリア性フィルム。

【公開番号】特開2010−184984(P2010−184984A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29057(P2009−29057)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテク・先端部材実用化研究開発による委託研究、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】