説明

水蒸気移動制御装置を取り付けるための箱体を検査対象とした気密検査方法及び気密検査装置

【課題】 構造が簡単で、安全性を確保でき、しかも安価なコストで箱体等の気密漏洩場所を確実に発見し特定することができるようにした気密検査技術の提供。
【解決手段】 ドライアイス(D)を収容する発煙容器(2)と、水タンク(3)と、水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるために箱体(K)等に形成された取付け孔(91)と、発煙容器と水タンクとを接続する通水路(4)と、箱体の内部を与圧するポンプ(5)とを備え、発煙容器内に水を供給してドライアイスから発煙させ、その白煙を箱体等の内部に充満させて空気圧で与圧させることにより、気密漏洩場所から白煙を漏洩させ、これを目視により視認することにより気密漏洩場所を発見し特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な膜体とその配列で水蒸気の移動方向を制御することによって結露防止器等として利用される水蒸気移動制御装置を取り付けるための箱体や容器(以下「箱体等」という)を検査対象とした気密検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気移動制御装置は、温度変化によって生じる箱体等の呼吸現象を活用したもので、この呼吸現象に伴って生じる箱体等の内部空気と外気との呼吸過程に介在し、箱体等内の結露予防を行なうものである(特許文献1参照)。
【0003】
前記水蒸気移動制御装置は、箱体等に取り付けられるもので、一方の通気口が箱体等の内部に連通され、他方の通気口が大気に開放され、この二つの通気口間に複数の小室が通気性及び透湿性を有する膜体によって区画形成されている。
そして、各膜体の通気度及び透湿度を使用して、外気と箱体の温度変動速度により、箱体の内部を調湿するように水蒸気の移動を制御するものであった。
なお、この水蒸気移動制御装置は、箱等内への水分の貯留を忌避するフェイルセーフの異常時排水機構を備え、箱体等の安全性向上に寄与する。
【0004】
水蒸気移動制御装置は、箱体の気密保持を前提として機能するもので、即ち、水蒸気移動制御装置を、実際に運用する箱体等(例えば、電気箱)に適用するためには、周囲温度の変化を活用した呼吸現象を活用するために、箱体等の気密性を確保する必要がある。
【0005】
外気との遮断能力(気密性)の必要性は、箱体内の除湿環境が55%RHにある場合に外気が100%RHにあるものと仮定すると、箱体内は外気から45%RHの水蒸気圧で与圧されることになりこの与圧力は20℃近辺では約10〜20cm水柱圧に相当する微弱な圧力変化である。
逆説的な説明では、水蒸気移動制御装置は箱体等に対して閉鎖を確認できればラフな気密性の状態であっても適用できるという大きな特徴がある。一方、大きな通気路(気密漏洩場所)の存在は、箱体等内の空気を攪拌して結露予防を行う機能は得られないので、慎重に対処する必要がある。
【0006】
一般に、電気箱として使用されている箱体等は、扉の建て付け不良や、通線部などに、大きな通気路(気密漏洩場所)が存在していることが多く、水蒸気移動制御装置の確実な効果達成と安全な使用を目的として、気密漏洩場所を特定するための気密検査方法が要求される。
【0007】
本出願人において、水蒸気移動制御装置を取り付ける箱体等の気密状態を確認する気密検査装置について、既に提案している(特許文献2参照)。
【0008】
この気密検査装置は、送気通路から箱体内部に一定圧力の気体を注入しながら、箱体からの排気圧力を測定し、 その排気圧力と注入圧力とを比較して、その排気圧力と注入圧力とがほぼ等しい場合は箱体の気密が保持され、排気圧力が注入圧力よりも低い場合には箱体の気密が漏洩していると認定する装置であった。
【0009】
しかしながら、前記した気密検査装置は、送気通路と排気通路を2重管で形成したプローブを設けたり、エアドライヤを利用した気体注入装置を設けたりするなど、複雑な構造になる。
又、プローブを箱体に接続させる連結構造が、単なる差込みであるため、構造が複雑になるし、検査のコスト性に難があった。
【0010】
又、従来、箱体の気密検査に際し、石鹸水やペースト等を使用して漏洩箇所を発見し特定することが行なわれているが、この方法では石鹸水によって箱体が汚損してしまうし、電気機器の箱体に適用する場合には、水を使用することによる漏電事故を誘発するおそれがあり、慎重に作業する必要があるし、実際的には危険が伴うため好ましくない。
また、洩れ音(気体が洩れるシュシュという音)を頼りに漏洩箇所を発見する方法もあるが、騒音が大きな地区では洩れ音を聞き取ることが極めて困難であり、これも実用的ではない。
【0011】
又、従来、動力式電動エアコンなどの冷媒配管などの洩れ箇所の特定に、ヘリウムガス検出装置(ヘリウムガスディテクター)が用いられている。
このヘリウムガス検出装置を用いた方法では、気密空間内にヘリウムガスを注入して気密空間内部の圧力変化を確認し、圧力減少を生じる洩れ箇所をヘリウムガス検出装置で特定するものであるが、電気作業などの屋外作業では、気密性試験のコストダウンを徹底する必要があり、高価なヘリウムガスの使用には経済的な制約が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開平5−322060号公報
【特許文献2】WO99/66300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、ガスの視覚化やその他の気密漏洩テスト方法は、流体力学や気密漏洩テストなどで活用されている。
【0013】
これらのものには下記のような種類が知られている。
1) ヘリウムガス:検出装置が電気箱の検査内容に比べて高価である。
2) アンモニアガス:外側に発色剤を塗って漏れを検知する。アンモニアは劇薬指定である。
3) 紫外線ランプ照射:蛍光剤を使用して紫外線ランプ照射によりリーク箇所を確認する。蛍光物質の使用は検査時の汚損が明瞭であり、表面汚損の可能性が高く使用しにくい。
4) 超音波:リーク時の固有音波を測定するもので、超音波音源を中に入れてリークする音波を測定する。装置が電気箱の検査内容に比べて高価であり、箱体などへの適用が困難である。
5) 発泡法:密閉状態加圧下で発泡液による泡立ちで漏れを見る方法。検査時の表面汚損が問題になる可能性が高いので、電気機器には使用しにくい。
6) 現象法:検査剤を添加できないときに使用する方法で、漏れの可能性のある部分の外側に検査剤を塗布して使用する。漏れ箇所があると検査剤に含まれる染料が発色する。検査時の表面汚損が問題になる可能性が高いので、電気機器には使用しにくい。
7) エアリーク:気圧を加えるか真空に排気することにより、基準タンク(マスタ)との微差圧変化として検出し、良否の判定をする。エアリークは認識できるが、箱などの漏洩箇所の特定は困難である。
【0014】
また、ガスの視覚化の方法としては、以下のようなものが考えられる。
1) ドライアイス:二酸化炭素を使用するという問題点を除くと、検査時の表面汚損も可能性が低く、有効な手段と考えられる。
2) アンモニア:塩酸による発煙反応を利用する。劇薬を使用するという安全上の問題があり使用は困難である。
3) 水、グリコール、スモークマシン:グリコールによる発煙は発煙性が長時間停留し、視覚化には有効であるが、発煙の結果、グリコールなどの油成分によって、機器の表面汚損などを生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
4) 酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、酸化鉄など:加水発熱物質を使用するもので、いずれも、金属性物質が拡散し、機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
5) 鉛丹、ケイ素鉄、三硫化アンチモンの組成からなる発熱剤:いずれも、金属性物質が拡散し、機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
6) 黄燐(黄燐発煙弾):大気中に放出されると、黄燐は自然燃焼して五酸化二リンを生じる。五酸化二リンは大気中の水蒸気を吸着し白色の煙霧を生成する。消防法で第3類危険物指定であり、未反応性物質は有害と考えられるので使用は不適である。
7) 赤燐(赤燐発煙弾):大気中に放出されると、赤燐は自然燃焼して五酸化二リンを生じる。五酸化二リンは大気中の水蒸気を吸着し白色の煙霧を生成する。消防法で第3類危険物指定であり、未反応性物質は有害と考えられるので使用は不適である。
8) 酸化亜鉛とテトラクロル無水フタル酸の混合:飛しょう体の飛行形跡、着地点がわかるようにする。いずれも、機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
9) 酸化亜鉛と塩化ビニル樹脂の混合:いずれも、機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
10) 流動パラフィン:加熱して、飛行機などの流体解析に使用される。機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
11) 赤色染料、塩素酸カリ、砂糖、不活性バインダ:盗賊行為防止のため貨幣パック。いずれも、機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
12) 塩化チタン:機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
13) エチレングリコール:機器の表面汚損を生じる可能性が高いので、使用は不適と考えられる。
【0015】
上記に挙げたものは、表面汚損や有毒性が問題になるが、唯一、一般に入手が容易であり、毒性が低く、かつ表面汚損の可能性が低い物質は、この中でドライアイスと考えられる。
なお、水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質をドライアイスに代えて使用してもよい。
ただし、ドライアイス(固体炭酸)は、昇華した二酸化炭素は空気を1とすると比重は空気よりも重く約2.33であり、トンネルなどの内部や通気性の悪い建物内などでの検査には不向きである。
このような場合には、コスト高を除外して安全なヘリウムガスを使用すれよいが、ヘリウムガスは空気よりも軽いが充満すれば酸欠の危険があり検査時の使用には注意を払う必要がある。ヘリウムガスは、血中への溶解速度が遅いため、潜水病を防ぐ目的で窒素に置換して代用空気として酸素ボンベに使用されるが、一方、二酸化炭素では、強い急性毒性は少ないものの、使用には注意を必要とする。
【0016】
本発明は、水蒸気移動制御装置を取り付けるための箱体等の気密検査に際し、箱体等の内部で、水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(例えば、ドライアイス)を発煙させて白煙(凍結水蒸気)又は煙状のガスを充満させ、この白煙又は煙状のガスを箱体等の外部から目視によって視認することで、気密漏洩箇所を発見し、特定できるようにすることを目的とする。
従来、ドライアイスの発煙はイベントなどで多く用いられているが、しかしながら、水蒸気移動制御装置を取り付けるための箱体等を対象とした気密性検査には使用されていない。
そこで、本発明では、構造が簡単で、安全性を確保でき、しかも安価なコストで箱体等の気密漏洩場所を確実に発見し特定することができるようにした気密検査技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)の気密検査方法は、
一方の通気口が被検査体である箱体等の内部に連通され、他方の通気口が大気に開放され、前記二つの通気口間に複数の小室が通気性及び透湿性を有する膜体によって区画形成されて、両通気口間での水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるための箱体(K)等を検査対象とした気密検査方法であって、
水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(d)(以下、「反応物質」という)を収容した発煙容器(2)を前記箱体(K)等の内部に設置させ、この発煙容器(2)内に水を供給して前記反応物質(d)から白煙又は煙状のガスを発煙させ、その白煙又は煙状のガスが閉鎖状態の箱体(K)等の内部に充満した状態で箱体(K)等の内部を空気圧で与圧させることにより、箱体(K)等に気密漏洩場所が有る場合には、その気密漏洩場所から前記白煙又は煙状のガスを漏洩させ、その白煙又は煙状のガスの漏洩場所を箱体(K)等の外部から目視により視認することにより、箱体(K)等の気密漏洩場所を発見し特定する構成とした。
【0018】
又、本発明(請求項2)の気密検査方法は、
請求項1記載の気密検査方法において、前記反応物質(d)がドライアイス(D)である構成とした。
【0019】
又、本発明(請求項3)の気密検査装置は、
一方の通気口が被検査体である箱体等の内部に連通され、他方の通気口が大気に開放され、前記二つの通気口間に複数の小室が通気性及び透湿性を有する膜体によって区画形成されて、両通気口間での水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるための箱体(K)等を検査対象とした気密検査装置(A)であって、
反応物質(d)を収容するための発煙容器(2)と、
前記発煙容器(2)に供給する水を収容するための水タンク(3)と、
前記水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるために箱体(K)等に形成された取付け孔(91)と、
前記取付け孔(91)を通して、箱体(K)等の内部に設置した前記発煙容器(2)と前記箱体(K)等の外部に設置した水タンク(3)とを接続する通水路(4)と、
前記箱体(K)の等の内部を空気圧で与圧するためのポンプ(5)とを備えている構成とした。
【0020】
又、本発明(請求項4)の気密検査装置は、
請求項3記載の気密検査装置において、前記反応物質(d)がドライアイス(D)である構成とした。
【0021】
又、本発明(請求項5)の気密検査装置は、
請求項3又は4記載の気密検査装置において、前記発煙容器(2)がオーバーフロー水を受け止めるオーバーフロー容器(21)内に設けられている構成とした。
【0022】
又、本発明(請求項6)の気密検査装置は、
請求項3〜5のいずれかに記載の気密検査装置において、前記水タンク(3)が箱体(K)の等の外面に着脱可能かつ上下移動可能に取り付けられている構成とした。
【0023】
又、本発明(請求項7)の気密検査装置は、
請求項3〜6のいずれかに記載の気密検査装置において、前記ポンプ(5)による送気路(52)に圧力計(6)が設けられている構成とした。
【発明の効果】
【0024】
本発明の気密検査方法(請求項1、2、)及び気密検査装置(請求項3、4)は、箱体等の内部で、反応物質、例えば、ドライアイスを水に接触させることにより、反応物質を発煙させて白煙又は煙状のガスを充満させ、この白煙又は煙状のガスを箱体等の外部から目視によって視認するものであり、簡単な方法、簡単な構造で、安全性を確保でき、しかも安価なコストで箱体等の気密漏洩場所を確実に発見し特定することができる。
【0025】
特に、発煙容器に収容した反応物質を箱体等の内部において発煙させるため、発煙による白煙又は煙状のガスをそのまま箱体等の内部に充満させることができ、白煙又は煙状のガスをチューブ等で箱体等の内部に送る場合の問題である白煙又は煙状のガスの消失がない。
【0026】
又、白煙又は煙状のガスが充満した箱体の内部にポンプにより与圧をかけるため、白煙又は煙状のガスを気密漏洩場所から確実に押し出して漏洩させることができる。
又、ポンプからの送気によって箱体の内部で白煙又は煙状のガスが攪拌され、白煙又は煙状のガスをムラなく箱体の内部に充満させることができる。
【0027】
又、オーバーフロー容器を設けると(請求項3)、発煙容器から水が溢れた場合に、その溢れた水を受け止めることができ、箱体等の内部に水がこぼれるのを防止できる。
【0028】
水タンクを箱体等の外面に着脱可能かつ上下移動可能に取り付けると(請求項4)、この水タンクを上下移動させることで、箱体等の外部からの操作で発煙容器への適量な給水、排水を行なうことができ、作業能率を向上させることができる。
【0029】
ポンプによる送気路に圧力計を設けると(請求項5)、この圧力計によって機密漏洩を確認することができ、白煙又は煙状のガスによる気密漏洩検査と、圧力計による気密漏洩検査との2重検査態勢が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は本発明の気密検査装置の実施例を示す全体図、図2は水蒸気移動制御装置の一例を示す断面図である。
【0031】
本実施例の気密検査装置A(図1に示す)は、水蒸気移動制御装置S(図2に示す)を取り付けるようにした箱体Kの内部の気密状態を検査するためのもので、水蒸気移動制御装置Sを取り付けるために箱体Kの底壁90に形成した取付け穴91を利用して取り付けるようにしている。
箱体Kとしては、例えば、鉄塔やビルの屋上に設置されている電源キュービクル、制御ボックス、スイッチボックス、このほか配電ボックスや一定の閉路を有する空間が内部に形成された箱体等を想定している。
【0032】
前記水蒸気移動制御装置Sは、図2に示すように、3枚の膜体M、M、Mによって2個の小室R、Rが通気口P、Q間に区画形成され、この両通気口P、Q間で水蒸気の移動を制御するものとなっている。なお、前記膜体M、M、Mには、導電性多孔体が近接配置される場合と、配置されない場合とがある。
即ち、一方の通気口Pを外気に開放し、他方の通気口Qを箱体Kの内部に接続する状態にして使用されるもので、前記各膜体M、M、Mの通気度及び透湿度の傾斜を活用して、外気と箱体Kの温度変動速度により、箱体Kの内部を調湿するように水蒸気の移動を制御する。
【0033】
実施例の水蒸気移動制御装置Sは、小室ユニット10と、この小室ユニット10を内部に嵌合した外筒ケーシング11を備えている。
前記小室ユニットは、3枚の膜体M、M、Mによって2個の小室R、Rが内部に形成されている。
そして、前記小室ユニット10が外筒ケーシング11の内部に嵌合され、この外筒ケーシング11の上端部に形成した嵌合部12を箱体Kの底壁90に形成した取付け穴91に外部から嵌合して、その嵌合部12に箱体Kの内部からナット13を螺合させることで水蒸気移動制御装置Sを取り付けるようになっている。
【0034】
次に、気密検査装置Aの構成を説明する。
本実施例の気密検査装置Aは、発煙容器2と、水タンク3と、通水路4と、ポンプ5とを主要な構成としている。
なお、この実施例では、反応物質dとしてドライアイスDを用いた場合で説明する。
【0035】
前記発煙容器2は、内部に反応物質dとしてのドライアイスD(クラッシュドライアイス)を収容するためのもので、オーバーフロー容器21の内部にステー22で一体に取り付けられ、内部に多量の水が供給された場合には、側壁に形成したオーバーフロー孔23から水が越流し、オーバーフロー容器21内に収容されるようになっている。
なお、この発煙容器2は、箱体Kの内部において底壁90上に着脱可能に設置される。
又、発煙容器2の底部を、水に接触しないように隔離した二重底構造に形成し、その底部内部に携帯用カイロ(酸化鉄を利用した携帯カイロ)などを配置し、発煙容器2内の水を加温するようにしてもよい。
【0036】
前記水タンク3は、前記発煙容器2に供給する水を収容するためのもので、外部から水位が確認できるように透明に形成され、箱体Kの外面に着脱可能かつ上下移動可能に取り付けられる。
この実施例では、水タンク3の側面に磁石31を取り付けることで、箱体Kの外面に着脱可能かつ上下移動可能にしている。
【0037】
なお、箱体Kが非磁性体の場合には、箱体Kの側面にスチールプレートを貼り付ければ磁石31を使用できるし、このほか、磁石以外に吸盤を使用できる。
又、水タンク3の上下移動手段として、固定部にスライドを設け、片手で容易にスライドできるようにするスライドと止めネジを設ける。この結果、磁石のスライド移動によって箱外の塗装などが傷つくのを防止することができ、操作が簡便になる。
又、水タンク3の下方に小型熱交換器又はシート型ヒータ等配設させて水タンク3内の水、又は通水路4を形成するチューブ内の水を加温させるようにしてもよい。
この場合、電池駆動で電熱線を発熱させ、寒冷地でもドライアイスDの発煙が容易な温水を供給する。
【0038】
前記水タンク3の容量(Q1)は、前記発煙容器2の容量(Q2)と、オーバーフロー容器21の容量(Q3)を加算した容量(Q2+Q3)よりも小量(Q1)<(Q2+Q3)に形成され、水タンク3内の水の全量を発煙容器2とオーバーフロー容器21で収容可能とし、水がオーバーフロー容器21から箱体Kの内部に溢れこぼれるのを防止している。
【0039】
通水路4は、前記取付け孔91を通して箱体Kの内部に設置した前記発煙容器2と、前記箱体Kの外面に取り付けた水タンク3とを接続するためのものである。
この実施例では、前記取付け孔91にチューブホルダー40をOリング41とナット42により気密に取付け、このチューブホルダー40を利用して通水路4を形成するチューブ等を配管させている。
前記チューブホルダー40に上端面から下端面に至る貫通孔43が形成され、この貫通孔43の下端にチューブ用の接続部材44が気密に取り付けられている。
そして、前記接続部材44の下端口と前記水タンク3の底部とを外部フレキシブルチューブ4aで接続させると共に、前記貫通孔43に挿入した挿通チューブ4bの下端を前記接続部材44の上端口に接続させ、この挿通チューブ4bの上端にL形金属チューブ4cを接続させ、このL形金属チューブ4cの横向き部の先端と前記発煙容器2とを内部フレキシブルチューブ4dで接続させている。
なお、L形金属チューブ4cを用いることで、横向き部45によってチューブの折れ曲がりを防止し、サイホン現象が起きないようにしている。
又、前記外部フレキシブルチューブ4aには、コック弁46が取り付けられている。
又、前記外部フレキシブルチューブ4a、L形金属チューブ4c、内部フレキシブルチューブ4dを保温材でカバーし、チューブ通過時の水温の低下を予防させることもできる。
【0040】
前記ポンプ5は、前記箱体Kの内部を空気圧で与圧するためのもので、手の握り込みにより拡縮して空気を箱体Kの内部に送気するエアバックが用いられている。
前記ポンプ5は、送気管51によって前記チューブホルダー40の貫通孔43に接続され、この貫通孔43の内面と前記銅管4bとの隙間を送気路52として箱体Kの内部に連通されている。
【0041】
又、前記ポンプ5の送気路52に連通するように、圧力計6がチューブホルダー40に取り付けられ、この圧力計6により前記ポンプ5により与圧された箱体K内の圧力を測定することができる。
【0042】
次に、気密検査装置Aによる検査方法を説明する。
気密検査装置Aによる箱体Kの気密検査に際しては、水蒸気移動制御装置Sを取付け穴91から取り外し、この取付け穴91を利用して気密検査装置Aを取り付けるものである。
【0043】
まず、箱体Kの内部に発煙容器2を設置させると共に、箱体Kの外面に磁石31によって水タンク3を取り付ける。
そして、取付け穴91にチューブホルダー40をOリング41とナット42で気密に取付け、このチューブホルダー40の接続部材44に予め取り付けておいた挿通チューブ4bの上端にL形金属チューブ4cを接続させると共に、このL形金属チューブ4cの横向き部45の先端と前記発煙容器2の底部とを内部フレキシブルチューブ4dで接続させ、かつ接続部材44と水タンク3の底部とを外部フレキシブルチューブ4aで接続させることで、外部フレキシブルチューブ4a、接続部材44、挿通チューブ4b、L形金属チューブ4c、内部フレキシブルチューブ4dにより一連に連続した通水路4を形成させる。
【0044】
次に、箱体Kの内部に設置した発煙容器2の喫水線の上限レベルをゴムテープで箱体Kの外面に転写する。
この位置を上限として、箱体Kの外面に取り付けた水タンク3に水又はお湯を注ぐと、通水路4を通して発煙容器2に水が供給される。
このときの水位は、緩やかに上昇するが、前記した箱体Kの外面に転写された発煙容器2の喫水線の上限レベルよりも高く水タンク3を位置させても、あらかじめ計量された水量を、水タンク3に入れることによって、前記発煙容器2の上限の喫水線を上回ることはなく、箱体K内に水が溢れ出す心配はない。
【0045】
箱体Kの気密漏洩場所を特定するために、前述のように水タンク3への水の準備を行った後、発煙容器2内にクラッシュしたドライアイスDを一定量入れる。まだ、この段階では、水タンク3のコック弁46を閉鎖しておく。
【0046】
なお、ドライアイスDの取り扱いに際し、茶漉し様の手持ち容器を用意しておけば、作業時にドライアイスDに直接に手を触れることなく、保管用のクーラーボックスと発煙容器2の間で移送させることができる。
【0047】
次に、箱体Kを閉鎖して、前記コック弁46を開放し、水タンク3を前記上限レベルを超えない位置まで上方にずらすと、通水路4を通して水タンク3から発煙容器2に水が供給され、発煙容器2内で水とドライアイスDが接触して発煙し、多量の白煙(凍結水蒸気)が発生し、箱体Kの内部に充満する。
【0048】
次に、水タンク3のコック弁46を閉鎖したのち、ポンプ5を手動により操作して箱体Kの気密性検査を行うもので、このポンプ5からの送気によって箱体Kの内部が空気圧で与圧され、このとき、箱体Kに気密漏洩場所が有る場合には、その気密漏洩場所から白煙が与圧によって押し出されて漏洩するため、その白煙漏洩場所を箱体Kの外部から目視により視認することにより、箱体Kの気密漏洩場所を発見し特定することができる。
なお、白煙の視認が認められない場合には、機密漏洩がないものと判断する。
【0049】
又、ポンプ5により箱体Kの内部を与圧させたのちは、圧力計6を見て箱体Kに空気の漏洩があるか否かを確認することができる。
このとき、圧力計6の計測値が一定値を示している場合は空気の漏洩がなく気密性が保持され、又、圧力計6の計測値が次第に低下していく場合には、箱体Kのどこかに空気の漏洩が生じて気密性が損なわれていると判断することができる。
【0050】
箱体等(電気箱等)の完全な気密性の確保は、一般的な常法による施工方法では困難である。
水蒸気移動制御装置Sは、この状態{ラフな閉鎖性(気密性)}に対応できる設計になっている。そこで、気密漏洩の速度が一定の基準を満足すれば、閉鎖性テストを合格とする。例えば、約10cm水中で与圧し、10秒で0にならなければ合格とするような方法である。このような僅かな洩れは本検査方法では視認が難しい場合があるが、ガスディテクターの併用などで再検査を行なうこともできる。
【0051】
上記のようにして白煙が漏洩した箇所を特定した後、作業を円滑に行い、箱体単位の作業時間を短縮するために、速やかに発煙を停止する必要がある。
このために、検査者は、箱体Kの外面に取り付けた水タンク3を下方にずらし、その後、水タンク3のコック弁46を開放し、箱体Kの内部に設置した発煙容器2内の水を水タンク3に戻すことで、発煙容器2内での水とドライアイスDの接触がなくなり、発煙を速やかに停止させることができる。
【0052】
この結果、ドライアイスDの使用量を最小限に抑制することができ、作業時間を短縮することができる。
また、箱体Kの外部から発煙容器2内の水位を把握できるので、箱体K内への水の漏出の危険を避けることができ安全である。
【0053】
上記のようにして、気密漏洩場所を発見し特定した後、その気密漏洩場所のシール性の改善補修を行い、その後、前記検査を再度行い、気密漏洩場所の有無を確認する。
【0054】
検査が完了した後は、検査者は発煙容器2内のドライアイスDをクーラーボックスなどに速やかに回収保管し、次の検査作業に向けてドライアイスDの損耗を最小限にする。
また、箱体Kの外で水タンク3を下方に下げることによって、ドライアイスDが入っていた発煙容器2および各チューブ内の水を容易に排水させることができる。
【0055】
なお、実施例では、箱体Kを縦向きにして底壁90上に発煙容器2を設置した例を示したが、箱体の製作時(箱体組み立て時等)には箱体を横倒置きすることがあり、この横倒置き状態では箱体の側壁が底面に位置するため、このような場合には底面に位置する箱体の側壁上に発煙容器2を設置することになる。
【0056】
本発明において、反応物質としては、ドライアイスDに代えて、水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質を使用できるもので、例えば、グリコールと発熱剤として塩化マグネシウムや酸化マグネシウムなどの混合物などによって、グリコール白煙を発生させるような薬剤が開発される可能性があり、このような物質を本発明の反応物質として使用することも可能になる。
【0057】
又、本発明において、発煙容器2内の反応物質dが突沸などや、急激な反応のために飛散しないようにすることを目的として、メッシュ状のカバーを発煙容器2にかぶせることができる。
又、発煙容器2内の反応物質dの反応時の温度変化によって、発煙容器2が急激な温度変化によって、ひび割れ又は割れ破損が生じないように、発煙容器2の素材として耐熱性プロピレン、耐熱ガラスなどを使用してもよい。
又、前記外部フレキシブルチューブ4aは、耐熱性素材を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の気密検査装置の実施例を示す全体図である。
【図2】水蒸気移動制御装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
2 発煙容器
21 オーバーフロー容器
3 水タンク
31 磁石
4 通水路
4a 外部フレキシブルチューブ
4b 挿通チューブ
4c L形金属チューブ
4d 内部フレキシブルチューブ
5 ポンプ
52 送気路
6 圧力計
91 取付け孔
A 気密検査装置
d 反応物質
D ドライアイス
K 箱体
S 水蒸気移動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の通気口が被検査体である箱体等の内部に連通され、他方の通気口が大気に開放され、前記二つの通気口間に複数の小室が通気性及び透湿性を有する膜体によって区画形成されて、両通気口間での水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるための箱体(K)等を検査対象とした気密検査方法であって、
水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(d)を収容した発煙容器(2)を前記箱体(K)等の内部に設置させ、この発煙容器(2)内に水を供給して前記物質(d)から白煙又は煙状のガスを発煙させ、その白煙又は煙状のガスが閉鎖状態の箱体(K)等の内部に充満した状態で箱体(K)等の内部を空気圧で与圧させることにより、箱体(K)等に気密漏洩場所が有る場合には、その気密漏洩場所から前記白煙又は煙状のガスを漏洩させ、その白煙又は煙状のガスの漏洩場所を箱体(K)等の外部から目視により視認することにより、箱体(K)等の気密漏洩場所を発見し特定することを特徴とする気密検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の気密検査方法において、前記水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(d)がドライアイス(D)である気密検査方法。
【請求項3】
一方の通気口が被検査体である箱体等の内部に連通され、他方の通気口が大気に開放され、前記二つの通気口間に複数の小室が通気性及び透湿性を有する膜体によって区画形成されて、両通気口間での水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるための箱体(K)等を検査対象とした気密検査装置(A)であって、
水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(d)を収容するための発煙容器(2)と、
前記発煙容器(2)に供給する水を収容するための水タンク(3)と、
前記水蒸気移動制御装置(S)を取り付けるために箱体(K)等に形成された取付け孔(91)と、
前記取付け孔(91)を通して、箱体(K)等の内部に設置した前記発煙容器(2)と前記箱体(K)等の外部に設置した水タンク(3)とを接続する通水路(4)と、
前記箱体(K)の等の内部を空気圧で与圧するためのポンプ(5)とを備えていることを特徴とする気密検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の気密検査装置において、前記水と反応して表面汚損が懸念されにくい白煙又は煙状のガスを発する物質(d)がドライアイス(D)である気密検査装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の気密検査装置において、前記発煙容器(2)がオーバーフロー水を受け止めるオーバーフロー容器(21)内に設けられている気密検査装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の気密検査装置において、前記水タンク(3)が箱体(K)の等の外面に着脱可能かつ上下移動可能に取り付けられている気密検査装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の気密検査装置において、前記ポンプ(5)による送気路(52)に圧力計(6)が設けられている気密検査装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−224597(P2008−224597A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66814(P2007−66814)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(592013129)株式会社九州山光社 (10)
【Fターム(参考)】