説明

水蒸気透過性収縮可能ファブリック

接着剤付きの又は接着剤なしの外側部の収縮−伸張フィルムおよび内側部の不織布で作られる収縮−伸張可能高分子積層構造。好ましくは、フィルム、不織布及び接着剤は、前記積層体を100%再利用可能にする同じコポリマーを含むポリマー類から得られる。前記フィルム、不織布及び接着剤は、制御された水蒸気透過性に加えて、熱への異なる反応を提供するのに改質されている。この構造は一方向(内側から外側へ)の水蒸気透過性を可能にし、反対方向は可能とせず、包装された物品を乾燥することまたは包装された物品を乾燥したまま保存することができ、腐食による損傷を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月18日に出願された米国仮出願第61/089,742号の利益を請求するPCT国際出願である。上記出願の全ての開示は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
この段落は、本開示に関する背景技術情報を提供するものであり、これは必ずしも先行技術ではない。
【0003】
陸上、海上および航空で輸送される自動車、船舶、軍事および産業装備等の製品は、これらの環境に影響を受けやすい。輸送中これらの製品は輸送用コンテナ内部に置かれるか或いは周囲の環境にさらされる。産業装備、特に軍事車両や装備の場合、深刻な腐食損傷をもたらす長期間にわたる屋外での保管では、保護カバーは必須の製品となる。これら対象物の保護方法は長年にわたり開発されてきており、そしてここに援用される米国特許第5,491,017号;同第5,523,812号;同第5,712,008号,同第6,562,740B1および同第5,736,231号のそれぞれには、輸送中および/または長期間の保管での製品の保護についての広範な背景技術が示されている。しかし、これらの特許において開示されている製品は、湿度および/または結露により生ずる問題を的確に解決するものではない。
【0004】
輸送中または保管中の何れにおいても、保護すべき機器はしばしば結露にさらされる。本来、結露は水蒸気が冷却され、その露点に達した場合に発生する。水蒸気は、対象物の表面が水蒸気の温度よりも低い場合に表面に結露する。結露は、気候温度が自動車や他の対象物の表面温度よりも早く上昇する場合、特に対象物が金属でできている場合に、早朝において特に定期的に生じる。
【0005】
高速道路架橋等の開口梁や、鉄道、空港設備等のインフラおよび開口パイプライン、携帯電話用電波塔等の共用施設およびこれらの部品はすべて、発生する温度の変化により結露の繰り返しにさらされる。
【0006】
ピエール・R・ロバージュによる入門書「腐食の基本」によれば、環境による腐食プロセスのための基本要件は、湿度の限界レベルに曝されるときに金属表面に形成される薄膜電解質の存在であるとされる。湿度の限界レベルは材料に依存するが、殆どの対象物は、相対的に高い湿度環境(沿岸領域)での高い腐食レベルに曝されるが、相対的な湿度が30%以下の場合には、腐食の発生する可能性は低い。金属対象物、自動車または船舶の表面に発生する結露は、100%の相対湿度を表す。表面に結露が発生する時点から温度が均衡点に達する時間までは、その対象物上の相対湿度は100%であり、このため、腐食率が増加して、その表面でカビおよび白カビの成長が可能となる。
【0007】
結露が発生する環境に存在する汚染因子も役割を果たす。例えば、石炭、ディーゼル燃料、ガソリンおよび天然ガス等の硫黄を含む燃料の燃焼によるガス生成物である二酸化硫黄や窒素酸化物もまた、腐食の広がりに大きく貢献する。もしこれらの汚染因子が、包装される前の対象物の表面に既に存在すると、結露が発生すると包装材料の下での腐食率を高めるのに貢献してしまう。
【0008】
フィルムの微細孔が湿度/結露の問題を解決するべく使用されてきているが、この適用はフィルムの物性を損なってしまう。収縮性のフィルムの場合、印加される熱により微細孔が大きくなってしまい、フィルムをより弱くしてしまう。対象物/表面を、腐食を含む環境的障害から保護するためには、包装される対象物の内部での乾燥もまた重要である。乾燥環境をつくり、さらに重要な乾燥環境の維持のためには、包装材が湿度/凝縮した水を保護される表面から取り除くのをできるだけ早く始め、微細孔フィルムを採用した場合にしばしば生じる戻りがないようにするのが好ましい。すべての耐結露の適用においては、包装材が雨等の液体水分を内部に入らないようにするのが好ましい。また、表面から蒸発する水蒸気の量が表面に向かう水蒸気の量よりも多いことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
様々な観点において、ここで開示する包装用品は、フィルムおよびファブリックのラミネーションまたは積層体であり、好ましくは接着剤に接着されるものである。前記フィルムは、制御方向へ高度な水蒸気透過性を有する収縮−伸張フィルムであり、同時に前記ファブリックは、水交絡不織布であることが好ましい。全ての構成部材−前記フィルム、前記不織布および、もし用いられる場合は、前記接着剤は、大部分が同じポリマー、特にエチレンホモポリマー類およびコポリマー類で作られているのが好ましい。また、前記フィルム、前記接着剤および前記不織布は、覆われる対象物へ最良にフィットするために、もし異なる熱反応をもっている場合は有利である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記フィルムは、製造ラインの容量によって、一般的には3、5、7、9またはそれ以上の層が共押出される。幾つかの適用のため、所望のフィルム全体の厚さは約1ミル〜約12ミルまたは3ミル〜9ミル(約76ミクロン〜229ミクロン)であるが、本発明はこれらの数には限定されない。前記フィルムのポリマー構造は、ポリプロピレンおよびHDPE、LDPEおよびLLDPE等のエチレンホモポリマーまたはコポリマー等のポリオレフィンからなるものが最も好ましい。前記フィルムを形成するためのポリマーマトリックスに特定のイオノマー類もまた添加することができる。好適なマトリックスポリマーは、シラン類やチタネート類のような化学基によってさらに改質できるLLDPEとエチレンコポリマー類を含む。好ましい実施形態においては、前記フィルム全体のポリマー成分の少なくとも50重量%がLLDPEである。
【0011】
種々の実施形態において、前記フィルムの水蒸気透過率は、ポリオレフィン(例えばLLDPE)組成物の結晶モホロジーを改質することによって部分的に活性化する特定の脂肪酸塩改質イオノマー類を配合することにより制御される。好適なイオノマー類は、カリウムカチオンで中和され、FAMI−Kまたは指定製品番号AD1099で販売される「K−イオノマー類」と呼ばれるものを含む。好ましくそして一般的には、前記フィルム内で、イオノマー類はポリマー類を50重量%未満作製する。「K−イオノマー類」は、単独または他のイオノマーと混合して使用できる。
【0012】
例えば、本発明のフィルムにおいては、デュポン社の「スマートイオノマー」と呼ばれるスマート防湿技術が利用できる。デュポン社の利用可能な樹脂の製造番号はAD1119である。これらは、ナトリウムにより中和された脂肪酸塩改質イオノマーを含み、デュポン社の材料として米国特許公開第2007/0283652号公報および同第2007/0287012号公報に開示されている。これらの特許公開公報により、ナトリウムにより中和されたイオノマーの有益な記載が提供されており、ここで引用に援用される。
【0013】
前記フィルム構造は好ましくは着色されるものであり、前記フィルム製造時や積層工程および屋外での使用を助けるため、紫外線安定剤と一次および二次酸化防止剤を含む。種々の実施形態においては、前記フィルムは、架橋ポイントを提供するイオノマー類の存在による結果として収縮性を有する。(フィルムを製造するのに一般的なブロー操作などにより)架橋フィルムが伸張され、冷却されると、冷却されたフィルムは、伸張されていない形状に戻ることで熱に反応し、伸縮性を提供する。好ましい実施形態においては、機械方向(MD)と横断方向(CD)の間のフィルムの収縮率は、最大収縮用途で2:1付近である
【0014】
保護する対象物の包装や収縮包装に適切に使用されるフィルムの強度を達成するために、前記フィルムには、下記記載の架橋剤、フィラー、カップラー等がフィルムに配合される。好適なフィルム強度の加工に加えて、フィルムには、フィルムの多層を通じる水蒸気の効率的な透過のために配合される。特に、個々の層の水蒸気透過率は、積層体の不織布の接合面からの距離が増えることにより増加する。下記でさらに詳しく記載するように、この構造は、保護される対象物から取り巻く環境に向かう一方向の水蒸気の流れを提供する。
【0015】
積層体に使用されるホットメルト接着剤は、EVAに基づくか、より好ましくはブロックコポリマー類に基づくものであり、水および紫外線による破壊に対するより良い耐久性のためには完全に飽和したブロックコポリマーが最も好ましい。積層体の接着剤の所望の被覆は、1〜25グラム/平方メートル(gsm)である。これらを含む好ましい接着剤の組成は、2008年5月20日出願の米国特許出願第61/054,728号および2009年1月9日出願の国際出願PCT/US2009/030541号に開示されており、これらの開示は背景情報に有用であり、ここで援用されている。
【0016】
前記ファブリックは不織布であるのが好ましく、適用条件や工程能力により一以上の層を有することができる。多層ファブリックは、異なるサイズの繊維をもつ層から構築されるのが好ましい。積層体が、熱シール、超音波シールまたはそれ自体が溶着するのを可能にするため、前記ファブリックは、ポリエチレンおよびそのコポリマーの様に、前記ファブリックは、フィルムと同じポリマー類を形成するのが好ましい。前記ファブリックの多様な層の繊維は、適用条件による親水性を増減するために、シラン類やチタネート化学作用を使用して改質できる。ファブリックの好適な面積重量は、適用条件にもよるが1平方メートルあたり15〜300グラム(gsm)である。
【0017】
不織布の多数層は、積層体内に組み込まれ、フィルムと接合面で保護される表面または容積からの水蒸気の効率的な吸上または流送を提供する。例えば、保護される面に最も近い(または接触する)ファブリックの層は、第1小デニールの繊維が配合され、効率的な吸上を提供する。他の層は前記第1層よりも親水性を増すように形成され、より親水性の高いファブリック層を通じて徐々に水と水蒸気を保護される物から離間させる一方通行の路を構築する。
【0018】
種々の実施形態では、不織布は、紡毛機内の少なくとも2つの層を下ろし、ファブリックを作製するために続いて繊維をニードルパンチまたは水交絡することで、低デニールのけん縮ポリエチレン繊維から製造される。
【0019】
積層体は、適用のため好適な物性を有する。例えば、船舶の運搬カバーは、非限定的な例示によれば、フィルム厚さが6ミル〜9ミル、不織布が38gsm〜50gsmである。上記に適用するための積層体は1500〜2000psi/ミル(厚さ)の引っ張り強度を有することが望まれる。エルメンドルフ引裂強さは、少なくとも2000グラム〜10000グラムの間であり、2%セカント係数は7500〜12000の間であることが望まれる。
【0020】
水蒸気に起因する損傷から対象物を保護する包装は(すなわち、保護される対象品の周囲の相対湿度を相対的に低く維持するのが要求される場合には)、本製品の水蒸気透過率(wvtr)は、「内側から外側」方向で30グラム/平方メートル/日を下まわらず、「外側から内側」方向で30グラム/平方メートル/日以下であることが好ましい。幾つかの適用においては、積層体の全厚は好ましくは11〜90ミルである。
【0021】
種々の実施形態では、積層体は、柔軟な内部(不織布)と丈夫な外側(フィルム)である収縮−伸張積層包装材として提供されるが、全体では、好適な物性を有する包装/被覆材として形成する柔軟な手触りを提供する。幾つかの実施形態では、水蒸気透過率は、相対湿度レベルで調製される。積層体は、袋物や自動化された袋に二次加工でき、また、限定なき実施形態として、自動車、産業、航空及び軍事製品および部品の保護トレーを提供するために、真空成形あるいは熱成形できる。
【0022】
さらなる適用領域は、ここで示す記載から明かである。この概要の記載と具体例は例示に過ぎず、本開示の範囲に限定するのを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここに記載される図面は、選択された実施形態を例示する目的のためだけであり、可能な全ての実施形態ではなく、また本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0024】
【図1】図1は、本発明に係る包装材の断面図であり、物品の周りで収縮する前の状態を示す。
【0025】
【図2】図2は、図1と同様の断面図であるが、本発明に係る包装材が物品の周囲で収縮した後の状態を示す。
【0026】
【図3】図3は、図2と同様であるが、本発明が図1および図2の包装材で包装された製品の腐食を阻止する方法を示す。
【0027】
【図4】図4は、本発明に係る包装材の製造方法の概略図である。
【0028】
【図5】図5および図6は、それぞれ本発明により製造された材料で包装されたバンおよびオートバイへの転用を示す斜視図である。
【図6】図5および図6は、それぞれ本発明により製造された材料で包装されたバンおよびオートバイへの転用を示す斜視図である。
【0029】
【図7a】図7aは、尺度は必ずしも必要ないが、2つのファブリック層と3つのフィルム層を含む積層体の断面図である。
【0030】
【図7b】図7bは、不織布および共押出フィルムで製造される積層体を通る水の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、好ましくは30グラム/平方メートル/日以上で水蒸気透過性が制御されており、ファブリックに接着する高い物性を有し、選択的であるが好ましくはフィルムとファブリックの間に配置される熱溶融接着剤を有する収縮−伸張フィルムに関する。種々の実施形態においては、輸送または保管される物品の周りの収縮可能なバッグやラップまたは収縮可能なカバーのような製品を作製するために、積層体が熱シール、超音波シールまたはそれ自体が溶着されるか或いは縫製されるために、フィルム、接着剤およびファブリックは全て同じポリマーまたはそのコポリマー類、好ましくはポリオレフィン、最も好ましくは、LLDPE,EVA,EMAおよびイオノマー類等のポリエチレンおよびそのコポリマー類で作製される。一般的な材料からの全ての部材の製造はまた、積層体の再利用可能性を高める。
【0032】
不織布に積層される収縮−伸張フィルムは、熱溶融接着剤の有無に拘わらず、好ましくは各層が異なる熱反応を提供する。収縮−伸張フィルムは熱により収縮が始まるので、積層上の接着剤は軟化し、全接着剤の5%〜40%がその軟化点に達する。この反応は、不織布自体が収縮フィルムから剥離し、その表面と収縮フィルムの間にエアポケットを形成する。与えられる熱に対する異なる反応により、カバーは収縮フィルムから形成されるシェルと、不織布により形成される保護対象方向への柔軟な表面を提供できる。
【0033】
種々の用途においては、保管または搬送される対象の表面を良い状態で何らの欠陥がない状態に保つことが重要である。これは表面をできる限り乾燥した状態に保つのを含む。これらの用途のため、ここで開示される積層体は結露が生じ始めると、表面から水分を除去するように改質された不織布を採用することで、進化した表面の保護を提供する。凝縮した水の静水圧は、吸上作用による水の上昇で流体運動圧に変換されて、水蒸気がフィルム層を通過するまで表面上で行われ続ける。
【0034】
積層体のファブリックは、不織布の繊維に変換できる任意のポリマーまたはコポリマーから作製できる。種々の実施形態においては、フィルムへ積層されるファブリックは、フィルムと同じポリマー類である。この場合、α−オレフィン類、そして特にエチレンホモポリマーとそのコポリマー類に基づくポリマー類を採用するのが適している。ポリエチレン繊維、特に低デニールの繊維に基づくファブリック、特に低デニールの繊維は非常に柔らかく、敏感な保護表面を傷つけないので、様々な適用に有利である。
【0035】
好ましい実施形態の非限定的な実施形態では、図7は、前記フィルム層12と前記ファブリック層18の間の接合面17に接着剤組成物16を有することにより、2つのファブリック層18と3つのフィルム層12が結合して形成された積層体10の概略断面図である。接着剤組成物は、フィルム12とファブリック18の間を断続的に接着する。簡素化のため、フィルムは3層で表し、ファブリックは2層で表す。ここで開示されているように、他の層はファブリックとフィルムの両方が可能である。
【0036】
ファブリック側45は、通常は、保護される対象に向かってしばしば接触して配置される。第1の層18aは、第1デニール寸法の第1の繊維18cを含み、同時にファブリック18の第2の層18bは、第2デニール寸法の第2の繊維18dを含む。好ましい実施形態においては、第1デニール寸法は第2デニール寸法よりも小さい。ここに示すごとく、第2ファブリック層18bは、接合面17に近接している。
【0037】
さらに図7において、第1フィルム層12aは接合面に近接しており、第2フィルム層12bは第1フィルム層12aと近接し接合面からより遠くに位置している。第3フィルム12cは、第2層12bに近接しており、またの名をフィルム12のスキン層または外部層とされる。フィルム層12aとファブリック層18bは接合面17と近接し、それぞれフィルムとファブリックの内部層とされる。層18aと12cは、各フィルムとファブリックの外部層とされる。12bのような層は、中央または中間層とされる。すなわち、フィルムまたはファブリックを分けるには、接合面からの方向が目安となる。
【0038】
図3に示される通常の使用では、水蒸気の形態の水分が、ファブリック側45上の積層体10に入り、矢印50で示す「内側から外側」方向に積層体10を通って進み、積層体10のフィルム側46を通って外部環境へ出る。ファブリック層18aと18bおよびフィルム層12a、12bおよび12c(および、もし存在する場合には、他のフィルムとファブリック層)は、好ましくは、本開示に係る、水蒸気が「外側から内側」方向60に運ばれるのを基本的に阻害するように構成される。いずれにしても、蒸気の正味流れは、保護される表面または容量から外側環境への矢印50の方向である。
【0039】
蒸気流れの要求される方向50は、積層体10の、内部層、内側、内側層−または同様の用語としてファブリック側45と名付けられて表示される。同様に、積層体10のフィルム側46もまた、外部層、外側、外側層等と呼ばれる。
【0040】
図7bは、液状水および蒸気収着、拡散および離脱によるプロセスが、2つの不織布層、断続的な接着層および共押出フィルム層を通じて生じるのを示す。図7bは、各層の正味流量を水蒸気の正方向の流れとして示す。水は、不織布の積層体に侵入し、積層体の各層を通じて保護される環境から運ばれ、最終的には正方向の流れとともに大気に拡散する。図7bでは、Pは積層体の透過係数;Pは積層体内部表面の透過係数;Pは積層体外部表面の透過係数;Cは各層の最初の水の濃度;Cは各層の最後の水の濃度;X=0は各層の開始;そしてX=lは各層の厚みを表す。
【0041】
一実施形態においては、包装材はシート状であり、包装する対象物に接触する第1側面と、使用に際して露出する第1側面の反対側の第2側面をもつ。包装材は水蒸気透過熱可塑性フィルムと、接合面に沿ってフィルムと接触する親水性不織布および、フィルムを不織布に断続的に接着する接合面内のホットメルト接着層を有する。フィルムは、接合面からの距離が増加すると親水性が増す特徴を有する3以上の独立した層をもつ。ファブリックは、デニールが異なる繊維、親水性が異なる繊維または両者により特徴づけられる2以上の独立した層をもつ。種々の実施形態では、包装材は下記の一以上により特徴づけられる:
−フィルムと不織布は、エチレンホモポリマー類および/またはコポリマー類に基づく;
−不織布の繊維の熱変形温度は70°C以上である;
−フィルムは、カリウムイオンで中和された複数のカルボキシレート基を含む;
−フィルムは、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む;
−フィルムは、接合面近傍の接合層を含む複数の共押出層と、シートの外側面を形成するスキン層および接合層とスキン層の間に配される一以上の中間層を含む;
−スキン層の水蒸気透過性と親水性は、接合層のそれらよりも高い;
−フィルムの接合層は炭酸カルシウムを含み、スキン層はカリウムで中和された複数のカルボキシレート基を含む;
−包装材の不織布は、フィルムの接合面近傍の接合層とシートの第1側面を形成する外側層を含む複数の層を有し、ファブリックの外側層の親水性が接合面ファブリック層の親水性よりも低い;
−ファブリックは、独立の層をカーディングすることにより製造され、ファブリックを形成するため繊維を水交絡する;
−不織布は、LLDPEで作られた短繊維を含む;
−繊維は、結晶度の増加のため有核のLLDPEから紡績される;
−繊維は、製造と最終用途のため熱変形温度を増加するナノクレイを含む;
−ファブリックの繊維は、チタネートを含む;および
−不織布は、1.2〜1.5デニールの繊維を含む。
上記特徴のリストは、例示的なものであり限定を意図するものではない。本記載の包装材中の上記で示した一以上の各種の態様を組み合わせることで、他の実施形態が可能である。
【0042】
他の実施形態では、シートが積層体を形成する材料から作製されるシート状の包装用品が提供される。積層体は、第1材料を有し、第1材料は好適な水蒸気透過性を有するシート材の第1側面を形成する収縮−伸張フィルムから作られる。積層体はさらに、第2材料を有し、第2材料はシート材の第2側面を形成するとともに、多層不織布は親水性が異なる複数の層をもつ多層不織布ファブリックを有する。積層体はさらに、第1と第2材料の接合面に配されこれらを接着するホットメルト接着剤を有する。好ましい実施形態では、フィルム、ファブリックおよび接着剤は全てエチレンポリマー類またはコポリマー類を含む。
【0043】
種々の実施形態においては、包装用品は、下記の一以上により特徴づけられる。
−フィルムは、炭酸カルシウムフィラーを有する;
−フィルムは、ポリオレフィンおよび少なくとも一部がカリウムで中和された複数のカルボキシレート基を有するイオノマーを有する;
−フィルムは、接合面近傍の接合層と、接合層に配される一以上の外部層を含む複数の層を有し、前記複数の層は接合面からの距離が増す順に、上記透過性が増す;
−接合面のフィルム層は、ポリエチレン(例えば、LLDPE)および炭酸カルシウムフィラーを有する;
−フィルムの外部層は、少なくとも一部がカリウムで中和された複数のカルボキシレート基をもつポリオレフィン材を有する;
−フィルムの一以上の層は、製品の水蒸気透過率を高める分子ふるいを有する;
−分子ふるいは、フィルムの異なる層の異なるレベルで適用され、水蒸気伝達の方向を決める;
−フィルムの厚さは3ミル〜9ミルである;
−第2材料のファブリックは、異なるサイズの繊維を有する層から作られる;
−不織布の個々の層は、けん縮ステープル繊維を有する;
−不織布の繊維は、チタネートで改質された有核ポリエチレンを有する;
−不織布は、1.2〜1.5デニールの繊維を有する;および
−不織布の層の親水性は、シート材の第2の側から接合面へ増加する。
【0044】
他の実施形態では、ここで開示する不織布を作製するために必要な、紡糸、カーディングおよび他の処置に適した加熱撓みまたは熱変形温度が70°C以上の小さなデニールの寸法(例えば、1〜3デニールまたは0.5〜2デニール)のポリエチレン繊維が提供される。種々の実施形態では、1〜3デニールのポリエチレン繊維は、455kPa負荷でASTM D648で測定される加熱撓み温度が70°以上である。種々の実施形態においては、繊維は、下記の一以上により特徴づけられる。
−繊維は、1〜1.3デニールである;
−繊維は、1.3〜1.7デニールである;
−繊維は、けん縮ステープル繊維状である。
−繊維は、ナノクレイを0.5〜6重量%含み;ナノクレイは任意でチタネート、ジルコネートまたはシランカップリング剤で被覆される;
−不織布は、前記繊維で作られる。
−不織布は2以上の層を有し、第1と第2層が隣接する場合、第1層の繊維は、第2の層の繊維とは異なるデニールである;
−ファブリックは、2以上の層を有し、第1と第2層が隣接する場合、第1層の繊維は、第2層の繊維とは異なる親水性である;
−ファブリックは、多層ファブリックであり、第1層の繊維は第2層の繊維とは、デニールと親水性の両者が異なる;
−ファブリックの層は、高デニールの繊維であり、また高親水性の繊維である;
−不織布の第1の層は1〜1.3デニールの繊維を有し、第2の層は1.3〜1.7デニールの繊維を有する;
−不織布の繊維は、親水性チタネートまたはジルコネートカップリング剤を有する;
−不織布の一以上の層の繊維は、熱変形温度を増加させるナノクレイ粒子を含む;
−多層不織布の高デニール繊維は、親水性チタネート材を含む;
−多層不織布の第1の層は、1〜1.3デニールの繊維と、第2の層は1.3〜1.7デニールの繊維を有し;および少なくとも第2の繊維はチタネートまたはジルコネートカップリング剤を有する;
−繊維は、スパンボンディング法で作製される;
−繊維は、メルトブロー法で作製される;
−繊維は、スパンレース法で作製される;
−不織布は、10〜200グラム/平方メートルの面積重量をもつ;
−上記の態様の不織布の何れかを含む積層体が提供される;
−前記積層体は熱可塑性水蒸気透過フィルムを含み、フィルムとファブリックは、接合面で接着剤組成物により断続的に結合される;
−ファブリックとフィルムの両者が、少なくとも、エチレン単位を50%モル以上有するエチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーが50重量%である積層体が提供される;
−ファブリックとフィルムの両者が、LLDPE50重量%である積層体が提供される。
−2以上の層を有するフィルムであって、接合面近傍の第1層の水蒸気透過率がフィルムの第1の層近傍のフィルムの第2の層の水蒸気透過率より低い積層体が提供される。
−少なくとも一つのフィルム層がエチレンホモポリマーまたはコポリマーを有し、さらに脂肪酸改質イオノマーを有する積層体が提供される;
−積層体のフィルム層において検出されるイオノマーがKイオノマーである;
−積層体のフィルム層において検出されるイオノマーがNaイオノマーである;
【0045】
他の実施形態では、押出蒸気透過フィルムが提供される。前記フィルムは、エチレンホモ−またはコポリマー50〜95重量%、イオノマー組成物5〜45重量%、フィラー10〜40重量%および親水性カップリング剤0.01〜7重量%含む。好ましい実施形態では、前記フィルムは、さらに複数のエポキシ基(メタクリル酸グリシジルのコポリマーおよび他のオレフィンモノマー等)を含むポリマーおよび/または無水マレイン酸がグラフトされたポリマーを有する。存在する場合、これらの付加されるポリマー性物質はフィルム組成物の分散と架橋を提供する。フィルムは、単一層のフィルムまたは、好ましい実施形態においては、3層のフィルムのように多層のフィルムで提供される。多層フィルムは、組成物の上記範囲は全ての層の平均を示し、同時に独立している層は、ここにさらに示す組成をもつ。
【0046】
イオノマー組成物は、複数のカルボキシレート基を有するポリマー性材料を有し、カルボキシレート基の一部はナトリウムまたはカリウムで中和されている。特定の実施形態の場合、イオノマー組成物はE/X/Yコポリマーと、炭素原子が4〜36の一塩基カルボン酸を有する。ここで、Eはエチレン、Xは少なくとも一つのC3−8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、Yは軟化コモノマーであり、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約35重量%であり、Yは0〜約35重量%であり、また、E/X/Yコポリマー内の70%以上の酸性基と有機酸は、ナトリウム、カリウムまたはナトリウムとカリウムの組み合わせから選ばれる金属イオンで中和される。
【0047】
種々の実施形態では、押出蒸気透過フィルムはさらに、下記の一以上により特徴づけられる。
−フィルムは、エチレンポリマーまたはコポリマー50〜80重量%;イオノマー組成物15〜45重量%;フィラー15〜35重量%、およびカップリング剤を0.1〜0.8重量%有する;
−フィルムは、LLDPEで作られる;
−イオノマー組成物では、Xがアクリル酸またはメタクリル酸、Yはアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである;
−親水性カップリング剤はチタネートである;
−フィラーは、一以上の二酸化チタン、炭酸カルシウムまたは混合物である;
−イオノマー組成物は、カリウムで中和されたカルボキシレート基を含有する;
−イオノマー組成物は、ナトリウムで中和されたカルボキシレート基を含有する;
−イオノマー組成物は、ナトリウムとカリウムの混合物で中和されたカルボキシレート基を含有する;
−フィルムの水蒸気透過率は、30グラム/平方メートル/日よりも高い。
−上記記載の複数の共押出層を有する多層フィルムが提供される;
−多層フィルムは、少なくともA−B−Cの3つの層を有し、ここで、C層のイオノマー濃度はB層のイオノマー濃度よりも高く、B層のイオノマー濃度はA層のイオノマー濃度よりも高い;
−多層コンポジットフィルムは着色されている;
−コンポジットフィルムは、A−B−Cの3以上の層を有し、ここで、C層の水蒸気透過率は、B層よりも高く、B層の水蒸気透過率は、A層よりも高い;
−上記各種態様のフィルムまたは多層フィルムが、フィルムとファブリックの間の中間層に位置する接着剤組成物により不織布に接着されている積層体が提供される;
−積層体等のファブリックはポリエチレン繊維を有する;
−ファブリックのエチレン繊維は、1〜3デニールである;
−積層体シートの繊維は、1〜2.5デニールである;
−積層体シートの繊維は、1〜2デニールである;
−積層体シートの繊維は、1〜1.3デニールである;
−積層体シートの繊維は、1.3〜1.7デニールである;
−ファブリックは、2以上の層をもつ;
−ファブリックは、第1層の繊維のデニールが第2層の繊維と異なる2以上の層をもつ;
−ファブリックは、2以上の層をもち、第1層の繊維は第2層の繊維と異なる親水性をもつ;
−積層体は、第1層の繊維は第2層の繊維とデニールおよび親水性の両者が異なる多層ファブリックをもつ;
−積層体は、ファブリックの第1層が1〜1.3デニールの繊維を有し、第2層が1.3〜1.7デニールの繊維を有する多層ファブリックもつ;
−多層ファブリックにおいて二つの異なるデニールの繊維を有し、高いデニールの繊維はまた親水性チタネート材を含む;および
−第1および第2層を有する積層体シートのための提供される多層ファブリックであって、前記第1の層は1〜1.3デニールの繊維を含有し、不織布の第2の層は1.3〜1.7デニールの繊維を含有し、第2の層はさらにチタネートまたはジルコネートカップリング剤を有する;
−熱変形温度を高めるナノクレイを0.5%〜5%有する多層繊維;
【0048】
前に述べたように、上述の実施形態の種々の態様と、ここでのさらに詳しい説明は、好適なファブリック、フィルムおよび積層体を提供するのに組み合わすことができる。本発明の非限定的な異なる態様を以下に記載する:

1.低デニールポリエチレン繊維
【0049】
種々の態様において、ポリエチレン繊維は他のポリマーと比較して柔らかいことから積層体に使用される。これは保護される対象物を傷つけない利点を積層体に与える。しかし、従来のポリエチレン繊維は、不適当な熱変形温度や他の物性を有する傾向があり、一般的に製造には温度安定性を有しておらず、企図する使用には向いていない。特に、従来のポリエチレン繊維は、一般的に紡績中に発生する熱に耐えられない。短繊維は、けん縮ができず、および/またはカーディング工程の温度に耐えることができない。さらに、熱撓み温度が低いため、不織ウェブ形成するための従来のニードルパンチ法または水交絡工程には耐えられない傾向にある。このように、接着点を導入するメルトボンディング法または他のプロセスにより、織布に形成されなければならないが、これらの接着点は敏感な傷をつけてしまい、柔かいポリエチレン繊維を使用する目的にはそぐわない。
【0050】
この欠点は、熱変形温度を高める成分を添加することで解決できる。この場合、繊維は不織布を作製する糸またはフィラメントとして使用できる。前記成分は、酸化および紫外線安定剤およびフィラーとしてナノクレイ;そして一般的にポリマーにおいて使用されるが、今迄ポリエチレン繊維への使用が示されていない公知の核化剤を含む。特に、低デニールポリエチレン繊維(例えば、1〜3デニールの繊維)は、下記を含む溶融物を紡糸(スピナーレットを通じて押出す)ことで製造される。
1) ポリエチレンポリマーまたはコポリマー
2) 下記を含む安定化パッケージ
a) 一次酸化防止剤;
b) 二次酸化防止剤; および/または
c) 例えばHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)などの紫外線安定パッケージ;および
3) 核化剤;および
4) クレイまたはナノクレイ
低デニールポリエチレン繊維は、455kPa負荷でASTM D648で測定される加撓み温度(HDT)が70°C以上であることを特徴とする。
【0051】
一次および二次酸化防止剤と紫外線安定パッケージ(項目2a〜2c)は、紫外線による酸化と損傷に対する保護を提供する。核化剤は結晶化度を制御するのに役立ち、また、これは発見されたものであるが繊維の熱変形温度を制御するのにも役立つ。種々の実施形態では、核化剤は、結晶化度とポリエチレンフィルムの流し込みにおいて核化作用を制御するのに従来使用されているタイプのものから選ばれる。例としては、ミリケン社が販売する「Hyperform:(登録商標)HPN−20Eである。化学的には、HPN−20E核化剤は、カルボン酸塩と呼ばれる。クレイは、アルミノけい酸のような層状物質であり、ポリエチレン内で分散または剥離できる。これは、剥離した薄片は数十Åの序数の寸法をもち、クレイはナノクレイとして援用できるからである。すなわち、ナノクレイは、剥離した粒子のサイズをいう。
【0052】
一次酸化防止剤(またはラジカル除去酸化防止物質とも呼ばれる)は、連鎖停止反応を用いて、酸化を阻止する。種々の実施形態では、これらは反応性OHまたはNH基をもつ。非限定的な例では、ヒンダードフェノール酸化防止剤および二次芳香族アミン酸化防止剤を含む。酸化の抑制は、プロトンを酸化防止剤からポリマー鎖内で形成される遊離基種へ移行することで生じる。プロトン移行の結果であるイオン基は安定しており、ポリマー鎖からプロトンを摘出することはない。
【0053】
二次酸化防止剤(ヒドロペルオキシド分解剤ともいう。)は、ヒドロペルオキシドを非イオン基、非反応性および耐熱性品へ分解する。二次酸化防止剤は、
相乗的な安定効果を得るためにしばしば一次酸化防止剤と組み合わされて使用される。作用として、二次酸化防止剤は、ヒドロペルオキシドが反応性アルコキシラジカルまたはヒドロキシラジカルへ分かれるのを抑制する。一般的に使用される二次酸化防止剤は、有機リン化合物とチオシナージストを含む。チオシナージストは、硫黄系のヒドロペルオキシド分解剤である。非限定的な実施形態は、3,3−チオジプロピン酸のエステルを含む。チオシナージストは、ヒドロペルオキシドと反応し、スルフォキシド類とスルホン類を生じさせる。硫黄系ヒドロペルオキシド分解剤は、ヒンダードフェノール酸化防止剤と組み合わせて使用できる。最も一般的な市販の入手可能なチオシナージストは、ラウリル酸またはステアリン酸に基づくものである。
【0054】
核化剤は、溶融開始から結晶化する温度を増加させる機能を有する組成物または化合物である。核化剤の効果を決定または評価するには、示差走査熱量測定法(DSC)により結晶の発現を測定することができる。ポリエチレン繊維に添加される核化剤の量は、如何なる核化剤もない場合と比較して、溶融物の結晶温度が少なくとも1°C上昇するのに適した量である。すなわち、核化剤の使用から測定可能な上昇は、繊維の熱変形温度の上昇のための代用品となるかまたは代用品と相関する傾向がある。核化剤の最小、最大または最適量は、所望の結果に加えられるレベルの相関関係から個々の事例により決めることができる(すなわち、ポリマーの結晶温度および/または繊維の変形温度の上昇である)。この態様では、配合は個々の化学作用によって決まるのではなく、必要な結晶温度の上昇を提供する化学作用の指数によって決まる。
【0055】
クレイまたはナノクレイのポリエチレン樹脂への取り込みは、組成物の剥離をもたらし、クレイの層は繊維マトリックス全体にわたり均一に分散する組成の剥離をもたらす。ポリエチレン樹脂におけるクレイの剥離は、ナノ複合体と呼ばれるものとなる。ポリマー樹脂における完全な剥離を達成するために、クレイは様々なカップリング・化学剤により前処理され、ポリエチレンと共に相溶化樹脂が使用でき、および/または攪拌、超音波、粉砕などにより、クレイがナノ複合体に分散する。
【0056】
好適なクレイはアルミノけい酸を含み、シート状(積層)構造を有し、様々な形で八面体アルミナA10に結着している四面体珪酸SiOを含む。好適なクレイは、スメクタイトクレイを含み、四面体と八面体の2対1の割合をもつ。スメクタイトクレイの非限定的な例は、モンモリナイトである。このようなクレイでは、層(プレートレット)の厚みは1ナノメートルのオーダーである。分散または剥離した場合、プレートレットのアスペクト比は高く、一般的には100〜1500である。剥離クレイは、一グラム当たり数百平方メートルという非常に広い表面領域をもつ。通常、クレイをポリマーマトリックスと化学的に相溶性にすることが必要とされる。クレイを「親有機性」にする様々なプロセスが知られている。クレイとのイオン交換、およびポリマー分散の使用は、これらのプロセスのうちの二つである。ナノクレイの二つの例は、サザンクレイプロダクツ社製のClosite Na+とClosite15Aである。
【0057】
種々の実施形態では、クレイは、ここでさらに記載するチタネートやジルコネート等のカップリング剤で前処理された後、ポリマー樹脂に分散しまたは剥離する。
【0058】
種々の実施形態では、ポリエチレンマトリックスに混和されるナノクレイは、0.25〜15重量%、0.5〜10重量%、0.5〜9.0重量%、0.5〜6.0重量%または2〜8重量%提供される。プロセス条件は、クレイの層が完全に分離し、個々の層が有機マトリックスの全体にわたり分散される剥離構造を形成するのに選択される。
【0059】
LLDPE繊維型樹脂の非限定的な例は、「ASPUN(登録商標)6835A」または「ASPUN(登録商標)6850A」(メルトフローインデックスが異なるダウケミカル社製の二つの繊維型ポリエチレン)が使用される。繊維樹脂は、繊維に変換される前に、酸化防止剤(例えば、IRGANOX B215)および紫外線安定剤(例えば、TINUVIN 111)を添加して熱撓み温度を高めるよう改質される。熱と紫外線安定のパッケージは、一般的に不織布の繊維を作製する樹脂の1.0重量%以下に形成される。さらに、樹脂は、便宜的にマスターバッチの手段を経て、ミリケン社製「Hyper−Form(登録商標)HPN−20E」等の核化剤を添加して有核化することができる。この段階では、結晶温度を上げるとともに、結果物の繊維の熱撓み温度(HDT)を高めることが認められている。最終的に、モンモリロナイト等のナノクレイは、約1〜15重量%のレベルで、ポリマーマトリックス中で剥離する。これらのパッケージの添加は、繊維のHDTを高めるとともに、積層体の製造や製造後の積層体の両者を適したものにする。すなわち、好適な量の好適な添加剤の使用を通じることにより、熱撓み温度を摂氏で数度高めることができ、70°C以上である最終値が好ましい(例えば、70〜80°C、70〜90°C、または70〜100°C)。
【0060】
任意では、繊維樹脂は、チタネートまたはシラン化学特性により、変換中または積層後の繊維の物性を強化するのに改質される。

2.ポリエチレンのけん縮繊維
【0061】
ポリエチレンで作られるけん縮不連続繊維は、
−スピナレットを通して、上記成分の溶融配合物を押出す;
−押出繊維を、例えばシランで整える;
−繊維を切断およびけん縮し、コイル状繊維にする;および
−けん縮繊維を熱硬化する
ことで調製される。
熱硬化の前に、繊維には低レベルの表面架橋をすることができる。ここで説明する繊維は、ニードルパンチ法または水交絡による不織ウェブの形成に適したけん縮繊維を製造するための、けん縮と熱硬化に耐える好適な熱変形性を有する。

3.不織布
【0062】
ここに記載する積層体に使用する不織布は、水蒸気を接合面に向かって、すなわちファブリックを通じて外部環境へ水蒸気を運搬するのに好適な繊維である。非限定的な例は、ポリエステルおよびアクリル繊維を含む。具体的な実施形態では、不織布は、ポリエチレン繊維から作られる。積層体への使用のために、この開示の早い段階で示したように、ポリエチレン繊維は、熱変形温度を高めるように取り扱われるのが好ましい。
【0063】
一実施形態では、ソフトな払拭の適用のために、柔軟な1〜3デニールのポリエチレン繊維が不織布に製造される。他の実施形態では、積層不織布は積層フィルムとともに積層されて、ここに示す包装用材料を形成する。
【0064】
本発明の不織布は、3.0デニール以下のサイズのマイクロファイバーの繊維を使用し、1.0デニールから2.5デニールまたはこれらのサイズの組合せがより好ましい。任意的に、繊維はここで援用される米国特許第4,838,904号に示す如く、蒸気および/またはガスの流れを助けるため中空とすることができる。
【0065】
本不織布の繊維は、フィラメントまたは不連続繊維として提供される。フィラメント状の繊維は、不織ウェブを提供するためスパンボンディング、メルトブローまたはエアレイドされる。本発明に係る多層不織繊維の作製では、所望の水蒸気透過性と吸上能力を有するファブリックを提供するのに、個々のウェブは共押出されることが可能である。
【0066】
不連続繊維は、通常不織布を作製する次の工程の前でけん縮される。
【0067】
種々の実施形態では、けん縮不連続繊維は、個々の層が親水性と蒸気吸上、液体吸上を有する多数層にカーディングされる。親水性と蒸気透過性についてはここで記載されている。
【0068】
種々の実施形態では、連続するカードは平行(すなわち、同じ角度で、通常は機械の方向で)または異なる角度(例えば、互いに直交して)で置かれる。全てのカードが置かれた後、水交絡、ニードルパンチング等により不織布が作製される。そのほかにも、不連続繊維は瞬間的に紡績できる。もしカードが異なる方向、好ましくは直交する方法で置かれると−例えば第1のカードが機械方向(MD)で置かれ、第2のカードが90°横切る方向(TD)の場合−これはストレッチ用途に好ましい、機械方向でより強いウェブが製造される。
【0069】
上記で改質された好適な高い熱変形温度を提供する繊維は、スパンレイドやメルトブロー等の好適なプロセスでウェブに形成される。一例は、スパンボンド/メルトボンド/スパンボンドウェブ(SMS)である。一実施形態では、繊維は切断され、不連続繊維へとけん縮され、その後カーディングでウェブに形成される。積層不織構造の製造能力に応じて、これらの方法は如何なる組合せも使用できる。ウェブを形成した後に、限定するものではないが、化学結合(ウェットレイド)、ニードルフェルト、ニードルパンチング、超音波パターンボンディング、および水交絡を含むこの分野で知られる多くの方法の一つあるいは組み合わせて不織布は結合される。
【0070】
種々の実施形態においては、不織布は、低デニールけん縮ポリエチレン繊維から、繊維の少なくとも二つの層を置き、その後繊維をニードルパンチまたは水交絡することにより製造される。ファブリックをニードルパンチまたは水交絡により作製することにより、繊維を溶融するどの段階も回避される。幾つかの適用では、これは有利である。なぜなら、繊維の溶融は、繊維が溶融し合体する「接着点」が提供されてしまい、この接着点が積層体により保護される対象物の敏感な表面を傷つけてしまいがちだからである。しかしながら、繊維へのニードルパンチングや水交絡ステップは、繊維組成物の高い熱変形温度や他の物性が要求される困難な条件を目的とすることができる。また、ニードルパンチングやウォータージェットによる最良の交絡加工のためには、繊維はけん縮されるため、今までの従来のポリエチレン繊維には不適切であったさらに高い温度や製造ステップを目的とすることができる。
【0071】
不織布は、好ましくは3層構造や2層構造のような多層構造を有する。適用条件によっては、ここで引用により援用する米国特許第6,696,120B1に記載される如く、多層不織布はスクリム素材により改質できる。種々の実施形態では、多層ファブリックは、個々の層において異なるサイズの繊維を有し、これらの繊維の吸上特性が異なる利点を提供する。特に、低デニール(小さな)繊維は、積層体が保護包装として使用される場合の対象物または体積部分に接触する多層不織布の「底部」層で使用される。より小さいサイズの繊維は、大きな繊維よりも水を早く吸い上げる傾向にある。このより小さなサイズの繊維は、表面においてより早い割合の吸い上を有し、静水圧力を不織布の上方の層に向かって流体運動圧力に変換する。上方の層は一般的に大きい繊維で作られる。万一、液体水分がフィルム内部からフィルム、接着層および不織布接合面の内部に入った場合、接合面における大きい繊維は、高速で水を吸い上げる傾向にないため、表面に向かって水が戻るのが長く掛かる(すなわち、ファブリックを通って戻る)。これは接合面の大きい繊維は早い割合で水を吸い上げる傾向にないからである。液体水分が、保護される表面から離れると、水は不織布、接着層および収縮−伸張フィルムの中間層に存在する。
【0072】
好ましい実施形態では、繊維はファブリックを作るために、少なくとも2つの層の内部に連続して配置される。この2つの層は異なるデニールの繊維を含む。低デニールの繊維は、高デニールの繊維よりも高い毛細管作用を有する。このように、高い毛細管作用の繊維層は、好ましくは使用に際しては、制御が必要な、または水の除去が必要な高相対湿度の側に向かって配置される。
【0073】
繊維がフィラメント状の場合、各層は(例えば、スパンボンディング、メルトブローまたはエアレイド工程により)分離して形成され、積層不織布を形成するため共押出される。不連続繊維では、積層不織布は通常個々の繊維を別々のカードに置き不織布を形成するのに続いて、ニードルパンチングまたは水交絡される。積層不織布を含む種々の実施形態は、ここで繊維の層を参照して記載される。理解すべきことは、適切な場所では、層についての教示は、けん縮不連続繊維から形成されるカードまたはフィラメント繊維から形成される層に委ねられていることである。
【0074】
好ましい実施形態では、第1の層は1.1〜1.3デニールに形成され、第2の層は1.3〜1.7デニールである。適用状況により、多様な面積重量の繊維が各層に提供できる。種々の実施形態では、10〜70g/mが各層に提供される。好ましい実施形態においては、不織繊維は、50g/mの合計面積重量を有する。
【0075】
前述のように、低デニール繊維の一つの機能は、保護すべき表面または体積から水を吸上げて遠ざけることである。第1の層の低デニール繊維により表面から水が吸い上げられると、水は高デニール層に入る。水を保護表面からの通路に存在し続けるために、繊維の第2の層は、低デニールで高い毛細管繊維よりもさらに高い親水性を有するように処理される。このように、水は保護表面(または体積)から離れる方向へ不可逆的に導かれる。
【0076】
好ましい実施形態においては、第2の層の高デニール繊維は、これらを恒久的に親水性なものとするべく、他の成分とともにまたは他の処理で配合される。高度で革新的な分野では、第2の層の繊維は、特異的に親水性のチタネートカップリング剤で配合される。ケンリッチ・ペトロ・ケミカルズ社を通じて可能な親水性チタネートの二つの例としては、LICA38Jと、NZ38Jである。LICA38Jは水溶性を特徴とし;NZ38Jは水溶性であり、濃度は1%と同じかまたはそれ以下である。好適なカップリング剤は、粘着層の欄で説明する下記を含む。
【0077】
好ましい実施形態では、一または両方の層は、繊維を安価とするのに作用し、吸熱部として作用し、また繊維の熱安定性を増加するタルクまたはクレイ等のフィラーを有する。
【0078】
広い意味では、多層不織布は、小デニール繊維の第1の層と、大デニール繊維の第2の層を有し、両方の層の繊維は柔軟性のために1〜2デニールの範囲であるのが好ましい。好ましくは、第2の繊維は、第1の繊維よりも更に恒久的に親水性を有するように処理される。第1の層の低デニール繊維は、第2の層の繊維よりもより高い毛細管作用を有する。不織布は、他の層がファブリックを通じる水蒸気の流れの方向に逆らう影響を有しない限り、任意で第3、第4および他の層を有する。種々の実施形態では、各層は少なくとも保護表面から外部環境への方向で測定される、それよりも前の層と同じ親水性である。このように、多層不織布は湿気のための一方向の通路を提供する。多層不織布はまた、強度のため中間層と呼ばれる層を包含することができる。中間層は、近傍よりも更に高い親水性が必要ではないが、親水性や吸上性に優れた特性を持ち、水や蒸気の流れに悪影響を及ぼすようなものではない。
【0079】
好ましい実施形態では、繊維はマスターバッチ法で作製できる。第1の層のポリエチレン・マスターバッチは、核化剤と、第1および第2酸化防止剤並びにヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を包含する。第2および後続の層は、マスターバッチは前述の親水性チタネートのような親水性を増す種々の剤をさらに包含できる。
【0080】
後に続くファブリック層では、使用される場合、マスターバッチには親水性を供給する化学剤の量が増加される。もし後続の層の親水性化学剤が、第2の層のそれと異なる場合は、各層が親水性を有するのに、または前の層よりも高い親水性を与えるのに十分な化学剤がマスターバッチに提供される。
【0081】
前述の通り、メルトボンディングのような工程は、保護される敏感な表面をより容易に傷つける「接着点」を創作する。したがって、幾つかの実施形態においては、ニードルパンチングや水交絡等の非ボンディングプロセスにより不織布を形成するのが好ましい。
【0082】
繊維により作られるファブリックの繊維または多層ファブリックの単一層の親水性は、確立した方法により決められる。例えば、親水性は、水滴をファブリックの表面に固定した高さから垂らすことで試験される。水滴により表面が濡れるのに要する時間は、ファブリック/繊維の親水性に関する情報を提供し−少ない時間ほど、繊維/ファブリックの親水性が高い。例えば米国特許第4,073,993号に記載されているように、この試験方法の一つは、アメリカ繊維化学者・色彩技術者協会(AATCC)標準試験法39−1971、湿潤性の評価である。この試験では、5秒毎に水滴(15〜20滴/mL)が、ファブリック上3/8インチ(1cm)の高さから落とされる。水滴が落ちる時間からストップウォッチにより計測される。濡れ時間が、ファブリック上の水が鏡面反射力を失う時間として記録される。10滴当たりの平均が計算され、より早い濡れ時間が、高レベルの親水性とされる。便宜的に、濡れテストは多層不織布の両面で行うこともできる。一の側の濡れ時間が他の側よりも早い場合、異なる親水性が表示される。

4.接着剤
【0083】
好ましい実施形態では、積層体は、ファブリック/フィルム接合面に接着剤成分を含む。接着剤は、好ましくは断続的にフィルムとファブリックを接着する。好適な接着剤は、ホットメルト接着剤として知られているものを含む。
【0084】
接着剤成分は、好ましくは、飽和ブロックコポリマーと好適な第1および第2酸化防止剤(繊維の適用と同様)並びに紫外線安定剤に基づく。種々の実施形態では、ファブリックおよびフィルムで使用されるのと同じポリマーが使用され;これにより積層体自体が熱または超音波溶融によりシールされ、さらに再生にも適したものとなる。接着剤成分の粘性は、積層中のポンプ機構に要求される流れに応じて選択されるが(高すぎず、また低すぎず)、低すぎると一旦積層された場合、暑い日に浸出してしまうので低すぎることはない。接着剤はさらに、米国特許第5,705,566号に示す如く、特定の用途が望まれる場合、粘着剤、気化性腐食抑制剤(VCI)および殺生物剤、フィラーおよび顔料により改質することが可能である。用途によっては、疎水性または親水性全構造を与えるために、チタネートおよび/またはジルコネートカップリング剤を添加することもできる。ホットメルト接着剤にチタネートおよび/またはジルコネートカップリング剤を0.01〜3ポリマー重量%添加すると、特にこれらの接着剤および/またはフィラーが、高い負荷での劇的な粘度を高める接着剤を有する場合、これらの粘性(低粘度)をより高めるのに役立つ。
【0085】
本発明の水透過性パッケージに使用される好適な接着剤の配合組成は、係属中の米国特許出願第61/054,728号出願日2008年5月20日および国際出願PCT/US2009/030541号出願日2009年1月9日に開示されており、これらの開示は適切な背景情報を提供するとともに、ここで引用により援用される。種々の実施形態では、接着剤組成物は、1〜30g/m、2〜20g/mまたは4〜15g/mの割合で接合面に適用される。接着剤は、ファブリックとフィルムの間の強い初期接着を提供し、約2週間迄の期間にわたって構築される傾向にある。所望の製品によるが、好適な初期接着強度は、1インチ当たり200〜400グラムであり、最終接着強度は1インチ当たり200〜2,000グラムである。
【0086】
接着剤組成物の配合に用いられる接着ポリマーは、好ましくはホットメルトタイプであり、特に、熱可塑性ポリマーや、ABおよびABAジブロック並びにトリブロックエラストマーの様な熱可塑性エラストマーから選ばれる。接着剤組成物で使用される熱可塑性ポリマーは、最終的な接着剤に粘着性を提供し、溶解や接着剤成分の懸濁液のための媒体を提供する。このため、熱可塑性ポリマーは、粘着性成分により提供される性質を示すビヒクルとして作用し、接着剤組成物とともに連携して最終接着性を提供する。
【0087】
ホットメルト接着剤は、当然であるが、流動性を有する粘性の液体を得るのに加熱される熱可塑性ポリマーから選択される。適用した後、接着剤は基本的に固体となるように冷却される。この接着剤の使用に際しては、通常、接着剤が流体の間、結合される二つの表面が接着される。冷やすと、接着剤は硬化して二つの材料を結合する。
【0088】
接着剤組成物に使用される1種類のポリマーは、ビニル芳香族モノマーや他のゴム状モノマー由来のゴム状ブロックコポリマーである。ビニル芳香族モノマーは、スチレンを含む。ゴム状モノマーは、ブチレン、エチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンその他を含む。ポリマーは、好ましくはABまたはABAポリマーなどのブロックコポリマーの形状が好ましく、ここではAとBは異なる構造のブロックを示す。いくらか不飽和性のブロックコポリマーでは、不飽和を低下または回避するため物質は水素化される。このような組成物は、ブタジエン、スチレンブロックコポリマー、イソプレンスチレンブロックコポリマー、スチレンイソプレンスチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー、スチレンエチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー(SEBS)等を含む。好適なスチレンブロックコポリマーは、例えば、クラトン社の商標名「クラトン」が入手可能である。スチレンブロックは、物理的架橋性として機能する高いTgの別々のドメインへ解離する。二相ネットワークは、ポリマーが相同する温度まで持続する。ブロックコポリマーは、このため幾つかの温度では可塑性であるが、冷却すると、二相形態および弾性的特質が回復する。これにより、または好適な熱可塑性エラストマーの低分子量により、ホットメルトと圧感接着剤に適している低粘性の組成物が提供される。
【0089】
幾つかの実施形態では、接着ポリマーはエチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマー基盤のブロックをもつ。好適な実施形態では、エチレンコポリマーは50モル%よりも多いエチレン単位を含有する。具体的な実施形態では、接着剤はトリブロックABAコポリマーであり、ここでAはエチレンホモポリマーまたはコポリマーブロックであり、Bは、Aとは異なるエチレンコポリマーブロックである。好適な接着剤の例は、ABAトリブロックコポリマーを含み、ここで、Aは高密度ポリエチレン(HDPE)ブロックであり、Bは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)ブロックである。
【0090】
種々の実施形態では、熱可塑性接着剤は、セグメント化コポリマー(または多重ブロックコポリマー)であり、コポリマーは二以上、好ましくは三以上の、セグメントまたはブロックを有し、好ましくは、これらのセグメントまたはブロックは一以上の化学特性または物性が異なる。具体的実施形態では、ブロックは、エチレンと、少なくとも一つの共重合化可能なコモノマーを重合化することで作製される。好適なセグメント化コポリマーとこの作製方法は、アリオラその他の国際公開WO2005/090427に例示されており、この開示はここで引用により援用される。オレフィンブロックコポリマー(OBC)と呼ばれる商業的実施形態は、ダウケミカルカンパニー社により「INFUSE」の商標名で提供される。例えば、D9817.15およびD9807.15のグレードが適当である。
【0091】
エチレンのコポリマーと共重合可能なモノマー基盤のオレフィンブロックポリマーの使用は、接着剤のスチレンを除去する。ここでさらに説明する接着剤が、保護する表面の包装材を積層する接着剤として使用される場合、この接着剤の使用はまた積層される製品のスチレンを除去する。接着剤からのスチレンの除去は、全ての構造をポリオレフィン物質で作ることができるので、積層製品の熱シールを高めるのに有益である。例えば、基盤接着剤がポリエチレンやそのコポリマーで作られている場合、不織布とフィルムがLDPE基盤の場合、全包装用材料をLDPEとすることができる。これが達成されると、包装用材料は、それ自体が容易に熱シールまたは超音波シールできる。このことはさらに、効率的な方法でより小さな包装用材料の作製を可能とする。例えば自動的な包装袋の場合、ここで、包装用材料のシートは袋形状に折りたたむことができ、また袋を形成するためそれ自体の上でシールが可能である。接着剤と積層製品からのスチレンの除去は、特にフィルム、接着剤および不織布が、ポリオレフィン、ポリエチレンなどの単一型ポリマーまたはLDPEなどのエチレンコポリマーを基盤とする場合には、使用後の包装用材料の再生利用可能性を高める。
【0092】
種々の実施形態では、オレフィンブロックポリマーは、マルチブロックコポリマーであり、好ましくは2以上のモノマーの直鎖マルチブロックコポリマーであり、より特別にはエチレンとC3−20オレフィンまたはシクロオレフィンであり、最も特別にはエチレンとC4−20α−オレフィンである。他の実施形態では、ここで記載する組成物に接着剤として有用なオレフィンブロックコポリマーは、セグメント化されたコポリマー(またはマルチブロックコポリマー)である、特にこのようなコポリマーは、ポリマー化した形状のエチレンを備え、二以上および好ましくは三以上の、コモノマー含有度または密度あるいは他の化学的性質または物性が異なるセグメントを有する。具体的な実施形態では、コポリマーは分子量分布または、3.0未満、好ましくは2.8未満の多分散指数M/Mを保有する。種々の実施形態では、セグメント化されたポリマーは、エチレンマルチブロックコポリマーである。
【0093】
「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」の語は、ここで記載する接着剤組成物に用いられ、二以上の化学的に区別可能な領域またはセグメント(「ブロック」という。)を有するポリマーのことをいう。セグメントまたはブロックは直鎖法で連結されるのが好ましく、すなわち、化学的に分化された単位が重合化されたエチレン官能基に関して、懸垂法または移植法ではなく、端部で結合されているポリマーが好ましい。種々の実施形態では、ブロックは、ブロックに取り込まれるコモノマーの量や種類、密度、結晶度、このような組成物のポリマーに寄与する結晶子サイズ、立体規則の形や度合い(イソタクチックまたはシンジオタクチック)、領域規則性または領域不規則性、分枝量、均質性またはその他の化学的または物理的性質が異なる。連続的モノマーの添加またはアニオン重合技術により製造されたコポリマーを含む他のブロックコポリマーと比較して、本発明の組成物における接着剤として有用なオレフィンブロックポリマーは、独特な多分散度(PDIまたはM/M)の分布、ブロック長さ分布および/またはブロック数分布により特徴付けられる。より具体的には、連続プロセスで製造される場合、ポリマーは望ましくは、1.7〜2.9、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチプロセスにおいて製造される場合、ポリマーは望ましくは1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0094】
オレフィンブロックコポリマーは、「エチレンマルチブロックコポリマー」と呼ぶことができる。この語は、エチレンと一以上の共重合可能なコモノマーを有するマルチブロックコポリマーを引用し、ここで、エチレンは、ポリマー内の少なくとも一つのブロックまたはセグメントの複数の重合モノマーユニットを、好ましくは90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、最も好ましくは98モル%を有する。ポリマー全重量に基づくと、エチレンマルチブロックコポマーは、25〜97重量%、好ましくは40〜96重量%、より好ましくは55〜95重量%、最も好ましくは65〜85重量%のエチレン含有量をもつ。
【0095】
オレフィンブロックコポリマーを準備するのに適したモノマーは、エチレンおよびエチレン以外の一以上の共重合可能なモノマーを含む。コモノマーの好適例は、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等の直鎖または分枝α−オレフィンを3〜30、好ましくは3〜20炭素原子含む。その他は、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン等の炭素原子を3〜30、好ましくは3〜20含むシクロオレフィンである。種々の実施形態では、コモノマーは、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1−6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1−7−ノナジエンおよび5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなどのジ−およびポリオレフィンから選ばれる。

VCI微粒子
【0096】
接着剤組成物はまた、接着ポリマー内にカップリング剤に沿って分散するVCI微粒子を含有する。VCI微粒子は、キャリアと少量の気相腐食抑制剤を含む粉末粒子状である。粒子は、使用に際し保護気相を放出するのに適している。好適な気相腐食抑制剤の一例は、揮発性アミンである。非限定的実施形態では、粒子は序数0.1〜約5%のオーダーの揮発アミン腐食抑制剤と約95%〜99.9%の不揮発性物質を含む。種々の実施形態では、不揮発性物質は、キャリアまたは気相腐食抑制剤を接着剤へと運ぶビヒクルとしての役割を果たすキャリアから作製される。好適なキャリアは、カップリング剤を使用する場合に、ここに記載された接着剤組成物のマトリックスを形成する接着剤ポリマーと相溶性のあるキャリアを含む。好適なキャリアは、一般的には粒子状またはパウダー状の無機キャリアを含む。種々の実施形態では、キャリアはポリマーまたは非ポリマーである。キャリアまたはキャリアとVCIの提供者により販売される有標組成物の一部である気相腐食抑制剤を含む微粒子は、非限定的な例によれば、スプレードライで製造することができる。微粒子を「VCIパウダー」とする命名は、結果であるVCI組成物の物理的性質を反映する。種々の実施形態では、キャリアポリマーは、マトリックスと相溶性を有するのであれば、熱可塑性エラストマーまたは他のブロックコポリマーで作製される。再利用可能性のため、ポリマーのキャリアは、大部分がエチレン基盤のポリマーを基盤とすることができる。
【0097】
VCI微粒子の混和は、接着剤組成物へ添加剤を混和する結果となる。VCIは、使用に際して適切な腐食の抑制を提供するのに適当なレベルで接着剤の成分に配合される。一般的に、接着剤の0.1〜20重量%のレベルが殆どの適用において適切である。幾つかの実施形態では、VCI微粒子は、接着剤組成物の約5重量%〜約15重量%のレベルで取り込まれる。添加剤は、気化性腐食抑制剤(VCI)として知られ、周知の添加剤の任意の多数でもよい。添加剤は、ミネソタ州セントポールのコーテック社により販売され、例示ではM−138が特定される。この材料は、粒子形態で可能であり、密封容器に収納されている限り、この材料が気化して放出するのは最小限に抑えられる。
【0098】
気化性腐食抑制剤に加えて、接着層に添加可能であり、包装材料で囲まれたキャビティ内での気化を保護・取り扱う他の材料は、静電気耐性(静電気除去および散逸剤)、酸化防止剤、抗菌剤(製品をバクテリアや他の生物学的汚染物質から保護するもの)、酸中和剤、酸と塩基(pH変化の効果)、芳香性成分、空気に曝されると色が変化して、これにより異物が混入したことを表示する添加剤その他を含む。
【0099】
各種の態様によれば、添加剤は、ファブリックをフィルムに確保し、保護する製品に使用する包装材料を作製するのに使用される熱溶融接着剤に加えられる。添加剤は、包装材料で囲まれたパッケージ内に気体を放出する。気体は、パッケージ内部に囲まれた空気と、保護されるキャビティ内の他の蒸気(例えば湿気)を混ぜる。気体は、保護される製品の表面上で凝縮し、薄いが非常に効果的な腐食抑止相または雰囲気を形成する。さらなる湿気が囲まれたキャビティに入った場合、添加剤により放出された気体は非腐食性気相を形成する。さらに、外側層のフィルムは、抑制剤の大気への吐出を防止するバリアとして作用する。このため、本発明に係る包装材料は、当該材料が使用される製品を取り扱う全ての添加剤が使用され、添加剤が大気雰囲気に吐出されない「一方通行」のエミッタである。
【0100】
ファブリックをフィルム層に結合する接着層に前記添加剤を置くことで、添加剤の量を少なくでき、取扱や在庫が簡素化されることから、コストが低減される。もし添加剤がフィルム層に置かれた場合、添加剤は両方向(材料で囲まれたキャビティ内と大気へと外側の両方に)へ放出するため、実質的により多くの添加剤が必要となる。添加剤を接着層に含ませることで、フィルムは蒸気が大気へ放出するのを防ぐバリアとして作用する。添加剤を不織布内に配置することが可能なので、潜在的に不織布の性質を変え、クッション性、柔らかさ、その他の所望の特性を低減することができる浴を介して不織布は配置される。さらに、もし添加剤がフィルム層または不織布層の何れにも配置された場合、フィルムまたは不織布の別々の量が、使用される各添加剤のために確保されなければならず、添加剤はフィルムまたは不織布が作製される時間から連続して放出されることとなる。しかし、添加剤を接着層に入れることで、添加剤は密封容器に保持され、使用されるまで気化状態への放出が抑制される。添加剤は、ディスペンサに接着剤が置かれる直前に溶融状態で接着剤と混合できる、すなわち、接着剤は、これを通じて接着剤が不織布に供給される供給ステーション近傍の異なる供給ステーションの接着剤層へ直接供給できる。一方、接着剤は、使用前に接着剤が形成されブロック状とされる際に、添加剤と混合することができる。添加剤は接着剤で包まれているため、放出は最小限である。別個のステーションによる供給、またはディスペンサ内に置かれる溶融接着剤との混合の何れによっても、添加剤の変更は直ちに効果を奏し、製造中断を最小とすることができる。
【0101】
VCIは多くの異なる形式に製造できる−パウダー、マスターバッチまたはオイル内で伝達可能である。AADシステムのための好ましい形式はパウダー形式である。パウダー形式で重要な留意すべき二つの事項は、接着剤製造を通じてどの様に均一な混合を達成するか、およびAAD−VCIを持たない接着剤と比較して、積層中の要求される粘性レベルおよび要求される粘着力を失わないようするため接着剤の特性を維持するかである。
【0102】
VCIパウダーと接着剤はバッチ処理で混合できる。バッチ処理中は、接着剤は、ミキサー内に置かれ、ここで説明したチタネートおよび/またはジルコネートカップリング剤を別々に、または予め混合したVCIパウダーは予め決められた割合で−ミキサー内部にゆっくりと置かれる。バッチシステムは許容可能な結果を生み出し、便宜的に二軸押出機等の押出装置内で実行する連続プロセスの使用を通じて、均一性と再生産性が達成されるのを発見した。
【0103】
連続プロセスはまた、試験サンプルの高粘度または低粘度を調製する可変温度での下流積層プロセスの運転の必要性を最小にする、より均一的な粘度の接着剤を生産する。気相腐食抑制剤は、本質的に熱感応性である。温度が上昇すると、大気へのVCI放出が増加する。しがたって積層プロセスにおいてより高い温度が使われると、大気へのVCI損失がより高い割合となる。一般的に積層プロセスは、一定温度で運転するのが通常好ましく、できる限り低い温度が好ましい。
【0104】
上述の通り、ホットメルト接着剤の生産均一性への他のステップおよび、いくらかの粘度特性損失を得るのには、多様なチタニウムおよび/またはジルコニウム(Ti/Zr)カップリング剤を使用する。チタニウムまたはジルコニウムのエステルは、無機フィラー/有機微粒子/繊維と有機ポリマーのような二つの異なる種類をプロトン配位を通じて結合し、あるいは化学的に架橋する。フィラーは改質されて、よりマトリックス樹脂のように作用することから、プロトン配位は可塑化の形態で中断してもよい。溶融混練せん断条件下では、チタネートおよび/またはジルコネートは、空気の細孔および粒子表面からの湿気を除去するのに役立ち、真の連続相の完全な分散と配合をまねき、このためフィラー性能を最適化する。
【0105】
好ましくは、カップリング剤は、チタネート含有化合物、ジルコネート含有化合物およびこれらの混合物からなる化合物の群から選ばれる少なくとも一つの化合物を含む。例は、エチレン性不飽和チタネート含有化合物およびネオアルコキシチタン含有化合物を含む。非限定的な例であり、ケンリッチ・ペトロ・ケミカルズ社より市販されている名称は、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル)ブチル−ジ(ジトリデシル)ホスフィトチタネート(KR55)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオデカノイルチタネート(LICA01)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネート(LICA09)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート(LICA12)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ピロ−ホスフェイトチタネート(LICA38)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(N−エチレンジアミノ)エチルチタネート(LICA44)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(m−アミノ)フェニルチタネート(LICA97)、ネオフェニル(ジアリル)オキシ−トリヒドロキシカプロイルチタネート(LICA99)、およびこれらの混合物である。
【0106】
更なるカップリング剤の例は、エチレン性不飽和ジルコネートとネオアルコキシジルコネート含有化合物を含む。ケンリッチ社の非限定的な例は、(2,2ジアリルオキシメチル)ブチル−ジ(ジトリデシル)ホスファイトジルコネート(KZ55)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオデカノイルジルコネート(NZ01)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート(NZ09)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェイトジルコネート(NZ12)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ピロ−ホスフェイトジルコネート(NZ38)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート(NZ44)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(m−アミノ)フェニルジルコネート(NZ97)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリメタクリルジルコネート(NZ33)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリアクリルジルコネート(NZ39)、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ−ジ−p−アミノベンゾイルジルコネート(NZ37)、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ−ジ(3−メルカプト)プロピオンジルコネート(NZ66A)およびこれらの混合物を含む。
【0107】
例示的なチタネートは、ケンリッチ・ペトロ・ケミカルズ社のLICA38とLICA09を含む。Ti/Zrカップリング剤を使用すると、VCIパウダーとのSEBS等の紫外線安定接着剤の相溶性が増し、要求される最終接着剤の全体の流動特性を達成できる。
【0108】
Ti/Zrカップリング剤は、前述の利点を得るのに適したレベルで接着剤に添加される。種々の実施形態では、VCIに対して、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.4重量%または少なくとも0.5重量%が、添加される。種々の実施形態では、最高5%または最高6%までが使用される。ここで全ての割合はVCI重量に基づく重量である。このため、種々の実施形態では、接着剤はTi/Zrカップリング剤をVCI微粒子の0.1〜6重量%、0.1〜5重量%、0.5〜6重量%または0.5〜5重量%を含む。
【0109】
配合では、Ti/Zrカップリング剤は、VCIに関しての上述の重量比でVCI微粒子とは別に接着剤に添加できる。代替的にまたは追加で、VCIパウダーは最初にカップリング剤に混合でき、「チタネート」または「ジルコネート」VCIと呼ばれる、接着剤に添加される単一成分となる。このため、一実施形態では、VCIパウダーは、VCIパウダーと接着剤とのより良い相溶性を提供するため、Ti/Zrとともに化学特性で0.5重量%から6重量%スプレーされる。チタン化されたVCIパウダーは、下記の例ではVCI(T)と呼ばれる。

タッキファイア
【0110】
種々の実施形態では、接着剤組成物はタッキファイア(また、「粘着性付与剤」とも呼ぶ。)を含む。ホットメルト接着剤にフィラーを添加するのに起因して、基礎接着剤はフィラーを含む他のポリマーと同様、若干物性が失われる。例えば、VCIパウダーがホットメルト接着剤に添加された場合、接着剤は「粘着力」を失う傾向にある。粘着力は、二つの面を結合する「初期粘着性」と、積層体がそのライフサイクルの間何度も剥がれないようにする積層体の寿命のための特性の、両方の特性が積層のためには重要な性質である。粘着性の損失を埋め合わせるための一つの解決策は、積層体に入れられる接着剤の量を、無充填の接着剤で達成されるのと「同様の」結合強度に合わせることである。好適なタッキファイアは、イーストマン・ケミカル社により提供される「レガルレズ1018」である。
【0111】
VCI接着剤が二軸押出法により製造される場合、VCI微粒子とカップリング剤を追加する箇所より下流のスクリュー区域で粘着性付与樹脂を加えることができ、これが好ましい。種々の実施形態では、粘着性付与樹脂は、飽和炭化水素樹脂、水素化合成ポリテルペン、天然水素化テルペン等である。好適な粘着性付与樹脂は、例えば米国特許第5,204,390号に記載されており、これによる開示はここで引用により援用される。更なる好適例は、水素化脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂および水素化誘導体を含む。必要であれば、粘着性付与樹脂の二種以上の混合物も添加できる。他の好適な粘着性付与樹脂は、炭化水素、(例えば、C5−C9)樹脂、ポリテルペン類、およびペンタエリスリトールやグリセロールのロジンエステル類を含む。種々の実施形態では、タッキファイアは、粘性を下げるのに、および/または湿潤を増すのに添加できる。
【0112】
種々の実施形態では、接着剤組成物は、粘着性付与樹脂を接着剤組成物全重量に基づいて約1重量%〜約15重量%、約5重量%〜約10重量%または約5重量%〜約7重量%含有する。特定の実施形態では、組成物を配合するのに使われるベース接着剤は、使用されている入手可能な製品として、特定の割合の粘着性付与樹脂をすでに含んでいる。このような実施形態では、下流側の粘着性付与樹脂の添加は、対応する量によって低減される。
【0113】
粘着性付与樹脂は、接着剤への高すぎる混合度や混和性を避けるために、VCI微粒子の下流に添加されるのが好ましく、また相対的に短時間で相対的に低いせん断で添加されるのが好ましい。タッキファイアが相対的に低い混合は、組成物内の粒子のカプセル化を誘発しタッキファイアのシェルとしての作用を作ると考えられている。これは接着剤(積層プロセスの下流で望まれる)の圧力感度を増大させる傾向にあり、同時に下流プロセスで望まれる粘度を低下し、あるいは少なくとも許容し難い粘度の増強を避ける。一つの態様では、本発明は、粘着性付与剤が添加される前の接着剤よりも低いメルトインデックスまたは粘度の粘着性付与剤(タッキファイア)を有する接着剤により特徴付けられる。

発泡剤
【0114】
接着性組成物には、発泡剤を添加できる。連続するプロセスでは、発泡剤はVIC微粒子およびカップリング剤を加える箇所の下流で添加されるのが好ましい。他の一つの方法として、発泡剤は、積層または接着剤を塗布する間の連続プロセスで接着性組成物に添加できる。
【0115】
発泡剤は、この剤の特徴である、活性化温度に達すると気体分解生成物を生産する活性成分を含む。種々の実施形態では、ここに記載されるいずれの段階でも配合中は活性化せず、接着剤組成物を基盤に適用する積層後の温度で揮発性発泡剤を提供するため分解する発泡剤を使用するのが好ましい。非限定的実施形態では、分解温度が140°C以上、例えば140°Cから150°Cを有する発泡剤が選ばれる。好適な発泡剤は、140〜150°Cの分解温度を有するクロンプトン社により販売されているアゾジカルボンアミド、「セロゲン(登録商標)」である。全ての段階で140°C以下の温度でここに記載される連続プロセスで配合することができ、後に続く積層プロセスで接着剤を作製するため、その後140〜150°Cの温度にさらされる。

微粒子球
【0116】
ここに記載する調合された接着剤はさらに、微粒子球を含むことができる。種々の実施形態では、微粒子球は小球状プラスチック粒子である。これらはガスを封入したポリマーシェルでできている。ガスを内部に有するシェルが加熱されると、内部圧力が増加し、熱可塑性シェルが軟化する。この結果として、微粒子球の体積が増加する。このため微粒子球は、軽量フィラーとして、または発泡剤として使用できる。好適な微粒子球は、これらを含む「エクスパンセル(登録商標)」が入手可能である。微粒子球の使用は、接着剤のかさを増やし、より少ない量の接着剤でより多い領域をカバーするのを可能にする。この結果、微粒子の使用は、接着剤を使用する積層体の最終的な重量を低減する。
【0117】
具体的な実施形態では、ホットメルト接着剤組成物は、熱可塑性コポリマー接着剤、キャリアとさらに気相腐食抑制剤を含むパウダー粒子およびチタネート官能基カップリング剤および/またはジルコネート官能基カップリング剤を含む。組成物は、好ましくは全チタンおよびジルコニウムを元素基準で、約0.01重量%〜約0.5重量%含む。好ましい実施形態では、不揮発性含有物を約95重量%〜約99重量%有し、30μm未満の平均サイズを有する。コポリマー接着剤は、一以上の物理的または化学的特性が異なるブロックを二以上有するマルチブロックコポリマーである。非限定的実施形態では、ブロックは、重合性エチレンと、少なくとも共重合可能なモノマーを重合することにより作られる。代表的な共重合可能なモノマーは、C3−20およびC4−20である。
【0118】
一実施形態では、複数の段階におけるホットメルト接着剤組成物の製造方法が提供される。第1段階では、この方法は、第1のせん断率で混合(攪拌)しながら接着剤を溶融するために、ホットメルト接着剤を120°Cの第1の温度以上にする。この第1段階は、後の段階における更なる処理のための適切な流動パラメータを有する溶融接着剤を提供する。この方法はさらに、第2段階において、第2のせん断率へのせん断の増加と、120°C以下、好ましくは100°C以下、より好ましくは90°C以下への温度の低下を含む。好ましくは、接着剤は、せん段率が第2段階においてより低い温度でも適切な低粘度が維持できるような度合に粘度を低下できるように、せん断感応性である。第3段階では、この製造方法は、120°C以下、好ましくは105°C以下、より好ましくは100°C以下および最も好ましくは90°以下の温度を維持しながら適切なせん断を保ちつつ、接着剤にパウダーを添加する。適切な流動性を提供するために充分なせん断が維持される。せん断された混合物は、接着剤内部のパウダーを分散させるのに十分な間この温度で混合される。有利には、適用されるせん断から妥当な混合および/またはフローが維持される間、混合温度は適度な低温度である。パウダーは、キャリアと気相腐食抑制剤を含む。第3段階とそれに続く段階の温度は、組成物から気相腐食抑制剤が失われるかまたは揮発する温度よりも低く、またチタネートまたはジルコネートカップリング剤が分解しまたは効率を悪化させる温度よりも低いのが好ましい。この温度は105°C以下である。第4段階では、この方法は任意でまた好ましくは、
分散したVCI微粒子を含む接着剤組成物に粘着性付与剤を添加する。第4段階の粘着性付与剤の添加は、直列積層プロセスや他の使用における更なる適用で最高の粘着力を発現させる接着剤へ最良の組合せのため、相対的に低いせん断で短時間適度な低温で行われる。接着剤には、既に述べた如何なる段階においても、接着剤には、限定することのない例で蛍光増白剤、着色剤および抗菌組成物などの接着剤の組成物の一以上の追加化合物を添加することができる。
【0119】
公知の方法よりも優れた他の点は、種々の実施形態におけるこの方法は、さらに第3段階においてVCI粒子に沿って、有機チタネート組成物および有機ジルコネート組成物から選択されるカップリング剤の添加を含むことである。また、有機チタネートと有機ジルコネートの混合物も使用できる。種々の実施形態では、いわゆる「チタン化した」(または「ジルコネート化した」)VCI微粒子が第3段階において接着剤に混合される前に事前に、カップリング剤がVCI微粒子と組み合わされる。他の実施形態では、カップリング剤は、接着剤にVCI微粒子とは別に与えられ、そしてVCIと同じ領域またはVCI添加物の上流または下流の領域で添加できる。有利には、第3段階の相対的に低い温度および高せん断は、接着剤/VCI混合物の効率的な混合または剥離を提供する。
【0120】
この方法におけるこれらの利点は、プロセスの種々の段階における温度を制御することにより提供される。例えば、第1段階では接着剤の融点よりも高い温度、例えば約125°C〜約150°Cの温度で操作するのが好ましい。第4段階では、粘着性付与剤や他の任意の配合成分の化合を促進するのに十分な高い温度で操作するのと同時に、起こりうる気相腐食抑制剤の揮発を回避するため、高すぎる温度で操作するのは好ましくない。好適な実施形態では、この方法は、第4段階では約120°C〜約130°Cの間で行われる。
【0121】
第3段階は、パウダーを接着剤に添加することを含み、これはパウダーを分散させるのに適当なせん断を維持するためのものであり、接着剤の融点に対して低い温度で行われる。好ましい実施形態では、第3段階のパウダーの混合における温度は、100°C以下、好ましくは90°以下である。種々の実施形態では、パウダーを添加してパウダーを接着剤に混合する第3段階の温度は80°C以下である。理解すべきは、この温度が100°C以下または80°C以下等である場合、この温度はまた許容できるメルトフローを達成するのに適当な高さに維持される。このため、温度は、好ましくは50°C以上、または好ましくは少なくとも60°C以上または少なくとも70°以上に維持される。せん断を増すことで流れは低温度に維持され、例えば二軸装置内で、擬塑性またはせん断感応接着材は粘度が低減される。
【0122】
ここに記載する連続するプロセスの種類は、押出装置で実行できる。押出装置内のスクリューの動作は、押出機のバレルに沿った様々な領域または段階での配合と同時に、組成物を混合して運搬する。単一スクリューの押出機が使用できるが、一般的には、二軸スクリュー押出機のような、多軸スクリュー押出機が、接着剤の最も効率的な混合と配合を達成するのに好ましい。共回転スクリュー(噛合であるとないと)が、このような化合のため一般的に使用されている。押出の一般的背景については、プラスチック工業会により出版されたマイケル エル.ベリンズ編第5版「プラスチック・エンジニアリング・ハンドブック」91頁以下に注意が向けられる。
【0123】
特定の実施形態では、二軸スクリュー押出機などの押出機内で接着剤組成物を配合する方法が提供される。一態様では、二軸スクリュー押出機内の連続プロセスの様々な段階を実現すことが含まれる。この方法は、ホットメルト接着剤の溶融と溶融ホットメルト接着剤の押出機のバレルへの導入を含む。ホットメルト接着剤は、好ましくは熱可塑性ブロックコポリマーである。バレルへの導入後、メルトは90°C以下に冷却され、同時に適切なメルトフローを維持するのにバレル内でのせん断が増加される。90°C以下の低温に達すると、90°C以下の温度でチタネートおよび/またはジルコネートカップリング剤がメルトに添加される。また、90°C以下の温度では、気相腐食抑制剤が粒子の形態でメルトに添加される。代わりに、VCI微粒子の第3段階への添加は、チタネートまたはジルコネートカップリング剤で予め被覆することになる。ホットメルト接着剤、気相腐食抑制剤およびチタネートおよび/またはジルコネートカップリング剤は90°C以下の温度で、ホットメルト接着剤内部で粒子が分散するまで混合される(種々の実施形態では、80°C以下である。)。粒子状の気相腐食抑制剤は、好ましくは、非限定例では、キャリアとアミン腐食抑制剤を含むパウダー状で提供される。
【0124】
上述の通り、カップリング剤、接着剤および粒子状気相腐食抑制剤の混合中は温度を90°C以下に維持するのが望ましい。代表的な実施形態では、温度は約50°C〜80°Cの温度に維持される。このため、種々の実施形態では、この方法は、チタネートまたはジルコネートカップリング剤の50°C〜80°Cの温度でのメルトへの添加と、接着剤、気相腐食抑制剤およびカップリング剤の50°C〜80°Cの温度での混合を含む。
【0125】
接着剤の溶融は、120°C〜160°Cの温度で行うのが好ましい。
【0126】
カップリング剤の存在下で、低温での粒子状気相腐食抑制剤の混合および分散を行った後、必要な場合には更なる成分を添加するために温度を上げることができる。非限定的な例では、ホットメルト接着剤内で粒子が分散した後、プロセスは80°C〜130°Cの温度でのせん断の提供と他の成分の添加を続けるのを含む。更なる成分の非限定的な例は、粘着性付与剤、着色剤および抗菌組成物を含む。
【0127】
プロセス中、チタニウムおよびジルコニウムの総容量を元素の、0.05重量%〜5重量%または0.1重量%〜5重量%を提供するレベルで、カップリング剤を添加するのが好ましい。
【0128】
カップリング剤と気相腐食抑制剤(VCI)粒子は、スクリュー押出機に別個に添加するか一度に添加することができる。したがって、一実施形態では、VCIとカップリング剤は別個に添加される。他の実施形態では、カップリング剤とVCIは、押出機に一緒に添加される。具体的な実施形態では、VCIとカップリング剤は、最初に別の段階で組み合わされ、好ましくは90°C以下の温度で、この混合物がその後押出機内のメルトに添加される。カップリング剤とVCI粒子を組み合わせることで、有機チタネートまたは有機ジルコネートカップリング剤が実質的にVCI粒子状の表面に配置される。有利には、ここで記載の押出機プロセスと他のプロセスは、接着剤内の粒子の効率的な分散を提供するためのVCIパウダー粒子の低温での混合または剥離を含み、同時に粒子の質の低下および/または組成物からのアミン腐食抑制剤の早発揮発に導く高温の回避を含む。
【0129】
押出機内で連続プロセスが実施されると、押出分野での公知の技術により、第1、第2、第3および第4段階での各押出領域の温度およびせん断条件が達成されそして制御される。例えば、温度は、従来の手法において押出機の長さに沿って配置されたヒートジャケットによって制御できる。各段階でのせん断条件と混合量および比率は、適切なスクリュー設計と押出機の種々の領域の作動条件を選択することで達成できる。せん断は、ピッチ、高さおよびピークからピークへの距離を含むスクリューネジの設計で決めることができる。また、速度や逆回転(二軸スクリュー押出機)等のスクリュー・パラメータを選択することにより得ることができる。混合とせん断の度合いは、スクリュー設計と作動パラメータの作用である。各段階の混合時間は、これらスクリュー速度、スクリューの設計および各ステップまたは段階が行われる押出機の長さ等のパラメータにより決定される。各段階での相対的な混合および保持時間は、前述のスクリュー設計と作動条件が実施されるバレル長さ(押出機の種々の領域に対応する)で一部が決定される。押出機技術の更なる記載は、「ポリマーの混合と配合」著者マナス・ズロクゾワ−(カール・ハンサー・べーラグ編1994年)や「プラスチックのための機能的フィラー」著者シャントス、(ウィレー編2005年)等の学術論文において提供されており、これらの開示は背景情報として有用であり、ここで引用により援用される。
【0130】
必要に応じて、接着剤にVCIとカップリング剤が添加された後に行われる第4段階で粘着性付与剤を添加することが好ましい。押出機内でこのプロセスが実行されると、押出機の第3段階の「下流」で第4段階が実施される。このため粘着性付与剤が添加されると、他の段階の幾つかと比較して相対的に低いせん断と混合と共に添加されるのが好ましい。低量の混合を達成する一つの方法は、他の段階よりも相対的に短いバレルの長さにおける段階で行うことである。非限定的な例では、低混合で粘着性付与剤を添加する第4段階は、押出機の出口の少し前の押出バレルの端部で行われる。第4段階の混合長さは、混合が始まるバレルの長さにより決まる。説明すると、全バレル長さの5%から25%までの長さを有する領域で第4段階における混合が行われる。これは比較的短い混合時間を提供し、粘着性付与剤から最高の粘着力を発現させるのに好ましい。さらに、第4段階におけるせん断条件は、他の幾つかの段階よりも緩和されている。第4段階でのせん断の量(スクリューパラメータにより決まる)および滞留時間(バレルの長さにより決まる)は、粘着性付与剤の最適な取り込みを達成するのに変化できる。
【0131】
種々の実施形態では、有利な効果は、ここで記載されたように使用される接着剤の利点を通じて達成される。接着剤は、接着性添加剤送出システム(AAD)の一部である。AADシステムは、ここで記載のごとく気相腐食抑制剤(VCI)を含む。接着剤の更なる態様について記載する。
5.フィルム
【0132】
積層体は、上記で説明した不織布に加えて、収縮伸張フィルムをもつ。フィルムは、不織布と結合して保護スペースまたは対象物内から外部大気への水蒸気を搬送するための積層構造を提供する。適切なフィルムは、1日に一平方メートルあたり30グラム以上の水蒸気透過率と、収縮や伸張して包装する保護を提供するのに充分な強さを含む。
【0133】
フィルムは、意図する適用のため適切な厚みで製造される。様々な適用のためには、フィルムは約1ミル〜12ミリの厚みを有する。実際、積層体の強さの大半はフィルムからであり、フィルムの強さは厚みに関連している。収縮フィルムの好ましい範囲は2〜10ミルまたは3〜9ミルであり、伸ばして適用するには、必要な場合には簡単に手で伸ばすことができるよう厚みが薄い方が望ましい。非限定的な例では、伸ばして適用する積層体は、1〜3ミルの厚みまたは約1.5ミルの厚みである。
【0134】
フィルムは単一層とすることができるが、種々の実施形態では、フィルムは少なくとも独立した3層をもつ。好ましい実施形態では、各層は、エチレンコポリマーまたはホモポリマーで形成される。収縮適用のためには、フィルムは後の収縮弾性を有する低弾性・アモルファス・フィルムであることを特徴とする。好適なアモルファス・フィルムは、50%未満の結晶度であることを特徴とし、結晶度は、従来の方法である密度測定法によって測定される。種々の実施形態では、アモルファス・フィルムは、40%、30%、20%および10%未満の結晶度であることを特徴とする。フィルムとファブリックは接合面で合わされ、好ましくは接合面において不連続的な結合を提供するために接着剤結合される。フィルムの中間層(または単一層フィルムの底面)は、ファブリックへの接着性を高めるのにコロナ処理することができる。
【0135】
フィルムの層は、ここで記載の積層体のファブリックと結合される場合、毛細管作用で水分が運ばれ、ファブリックの親水性はフィルムの第1層に引き寄せられ(第1層は、接合面に最も近く、隣接している層と定義される)、包装用材料から水蒸気が脱出するまで、フィルムの第2、第3層へ連続的に吸い込まれる(フィルムの「第2」、「第3」層とは、「第1層」の接合面からの順番であり;第2層は第1層の近傍をいい、第3層は第2層の近傍などをいう)。フィルム構造は、保護される対象物からフィルムを通じて取り囲む状況への水蒸気の「一方通行」を提供する。一つの実装態様では、フィルムの層は中間層からの距離が増すにつれて親水性が増す。
【0136】
フィルムを通る水蒸気の「一方通行」通路は、フィルムを通る水蒸気透過率が他の方向での割合よりも高い場合に表される。代替的にまたは追加して、フィルム層の相対的親水性(すなわち、接合層から外部スキン層への親水性の増加)は、各表面の水の付着や水滴の保留の接触角度等従来の親水性測定により表示される。より高い親水性は、より低い接触角度として測定される。
【0137】
多層フィルムの好ましい構造はA−B−Cであり、フィルムA層は接合面でファブリックに接触し(Aは「第1の層」であり)、またC層は大気に露出している(Cは「スキン層」である)。個々の層の親水性は、C>B>Aの順である。好適な実施形態では、A、BおよびC層(また存在する場合には他の層)は、大部分がポリエチレンまたは大部分がエチレンサブユニットのエチレンコポリマーからできている。
【0138】
フィルム層は、好ましくは炭酸カルシウム(CaCO)と二酸化チタン(TiO)等の粒子状フィラーを含む。充填ポリエチレンフィルムの物性を高めるため、粒子状フィラーが架橋剤手段によりポリエチレンに複合化される。好ましい架橋剤は、上記に説明した接着剤に使用されるごときチタネートカップリング剤である。
【0139】
ポリエチレンフィルムは、相対的に低い水蒸気透過率を有し、また本質的に親水性である。炭酸カルシウムおよび/または親水性チタネートによる二酸化チタンを改質して得た親水性フィラーの添加は、親水性を若干増加させるものの、大部分の適用積層体においては、適切なパフォーマンスのためにより多くの親水性が要求される。
【0140】
このため、ポリエチレンフィルムはまた、ポリエチレンマトリックスに複合化される場合、フィルムの水蒸気透過性を増加させる「イオノマー」と呼ばれる組成物を含む。化学的には、イオノマーは、少なくとも部分的にカリウムまたはナトリウムで中和されたカルボン酸を含む重合体物質である。中和されたエチレン/アクリルポリマーを含む例はまた、中和されたカルボン酸を含む。イオノマー中の中和されたカルボン酸基は、フィルム自体は多孔性ではないものの、フィルムを通る通路に貢献する。
【0141】
前述のように、カップリング剤(例えば、チタネート、ジルコネート、シラン)は粒子状フィラーの一部と、ポリエチレンマトリックスおよび高分子イオノマーの基幹の両者に添加される。
【0142】
このように、フィルムの各層は二以上の「複合化」ポリマーである。好ましい実施形態では、フィルム層内での複合化は、フィルムが示差走査温度測定(DSC)等のテストにおける温度上昇にさらされ、単独の熱力学的に計測された吸熱量の存在により立証される。これについて、複合物は、二つのポリマーを共に持つ化合物である、ポリマーの混合物と考えられている。種々の実施形態では、チタネートはこのカップリング作用を行う。
【0143】
イオノマー、フィラーおよびポリエチレンを結合するのに使用するチタネートは、特に親水性チタネートであることが利点であり革新的なことである。チタネートカップリング剤はまた、結果物としてのフィルムの親水性に貢献する。親水性チタネートの二つの例として、ケンリッチ・ペトロ・ケミカルズ社のLICA38JとNZ38Jが入手可能である。
【0144】
好ましい実施形態では、積層体のフィルムは、収縮して包装した場合に充分な強度を有し、また断裂や穿刺等に耐え得る。通常は、イオノマーフィルムは、収縮伸張や包装用途等の屋外での使用には脆弱過ぎる。しかしながら、このフィルム適用は、少なくとも二つの異なる方法で強化される。
【0145】
始めに、カップリング剤が粒子状フィラーをフィルムの高分子化合物に結合して強度を増加する。そして、フィルムは好ましくは、フィルムの更なる強度とフィルム層間の積層強度を増加するために、架橋剤を含む。好適な架橋剤は、エポキシ基を含むポリマーである。一例としては、「エラヴァロイ(登録商標)」という材料が架橋剤である。この実施形態で使用される「エラヴァロイ(登録商標)」は、エチレンのコポリマーとグリシジルメタクリレートである。「エラヴァロイ(登録商標)」は架橋を提供し、チタネートカップリングと共にフィルムに強度を加える。
【0146】
フィルム層の間の親水性の差は多くの異なる方法で達成できる。例えば、各層の高蒸気透過樹脂の量は多様なものとすることができ、樹脂の高レベルと等しい他の全ては、高親水性を有する層に相当する。個々の層の厚さは多様にでき、薄い層と同じすべてのものは、より高い水蒸気透過率を持つ。層内の親水性/疎水性の添加剤(チタネート等の親水性カップリング剤を処理することで作製される親水性フィラー等)の量は、個々の層やフィルム全体の透過性を異なるものとすることができる。
【0147】
これらのように、第1の側が第2の側よりも低い親水性を有するフィルムが提供される。フィルムの二つの側の親水性の差は、フィルムの反対側の接触角度を試験することにより観察でき;親水性の大きい側は低い接触角度を呈する。フィルムを通過する蒸気の好ましい方向も、両方向でフィルムや積層体を通過する水蒸気透過率の測定と;速度が「内部から外部」方向でより高いことを観察(図7a参照)することから試験できる。
【0148】
フィルムはさらに、水の除去に資する。凝集した水は、保護される表面から吸上られ押しやられ、ファブリック、接着剤およびフィルムの接合層に達した後に、厚いフィルムを通じて最終的には蒸発する。種々の実施形態では、フィルム層は、不織布および/または接着剤組成物に使用されているものと同じポリマーで作製されるのが好ましい。好適な実施形態では、フィルム層は、大部分がLDPE,LLDPE,EMA(無水マレイン酸グラフテッドエチレンコポリマー)、EVA(エチレンビニルアルコールコポリマー)およびイオノマー等のエチレンホモポリマーやコポリマーで作られ、ここでホモポリマーおよびコポリマーは、好ましくはフィルム層のマトリックスを形成する。この構造で使用されるエチレンポリマーおよびコポリマーは、産業界における任意の周知の方法:チーグラー−ナッタ結晶重合、メタロセン触媒重合、バーシポール(登録商標)触媒重合および遊離基重合により作製できる。フィルム構造は、通常、改善された紫外線の遮断のため着色され、加工や外部での長期使用のため、充分な一次および二次酸化防止剤と、紫外線安定剤をもつ。多くの場合、CaCO等のフィラーが、追加添加剤(チタネート、ジルコネート)を運ぶのに使用され、および/または構造性の改良のために添加される。上記の全ての着色料、添加剤、安定剤およびフィラーを混合するマスターバッチは、これらの化学剤をポリマー全体に均一に分散させるのに役立つ。
【0149】
直鎖ポリエチレンは、ブチレン、ヘキセンまたはオクテン等のα−オレフィンとエチレンを共重合して密度を低減し、改良された強靱性や耐衝撃性、穿刺抵抗、密封性や冷寒特性を提供するのに使用できる超低密度ポリエチレン(ULDPE)または低密度ポリエチレン(VLDPE)を作製することにより製造できる。伸張フィルムとしてのLLDPEの使用は、ここで開示を援用する米国特許第5,617,707号と同様な特許により確立されている。ULDPEおよびVLDPEは市販品が入手可能である。幾つかのエチレンコポリマーは酸の改質が可能である。非限定的な例は、エクソン・モービル社のEXCEED(登録商標)(mVLDPE)、ダウケミカルカンパニー社のATTANE(登録商標)(ULDPE)ファミリー、およびプレクサー(登録商標)社の無水改質LLDPE PX3084を含む。文脈における指図がない限り、用語「LLDPE」は、エチレンポリマーファミリーの種々を含み、ULDPE、VLDPEおよびmVLDPEに限定されない。HDPEもフィルム形成に使用できるが、少量でのみ使用すべきであり、さもなければフィルムの大きすぎる結晶度をもたらしてしまい、またフィルムの水蒸気透過率を低めてしまう。
【0150】
LLDPEから作られるマトリックス樹脂は、全フィルム層のポリマー全体の好ましくは50〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%、最も好ましくは60〜85重量%である。このように、フィルムの全体のマトリックスポリマーはエチレンポリマーである。
【0151】
種々の実施形態では、上述のLLDPE組成物に対して、フィルムの外部スキン層は5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは15〜35重量%を用いることができる。
【0152】
LLDPEは全体のフィルム構造のマトリックス樹脂であることが望ましく、また、マスターバッチにより供給される親水性チタネートを添加することで、親水性が提供されることが望ましい。このように,通常は非常に低い水蒸気透過率を有するLLDPEは、(CaCO)のようなフィラーと結合することにより、全体の水透過率を高めるのにも役立つとともに物性を向上させる。

6.イオノマー
【0153】
前述のように、フィルム層は、層を水蒸気に対して透過性とするために、通常はフィルム層をより親水性にするイオノマーを含有する。
【0154】
一態様では、イオノマーは、金属カチオンの中和酸性塩の対を凝縮することにより作製されるイオンドメインを含む。酸基はポリマー鎖に付着しているため、イオンドメインは、固体状の架橋部位として作用し、このため多様なイオノマーの顕著な性質を提供する。このようなイオノマーを含むフィルムはPE−結晶領域、アモルファス領域、および架橋イオンドメインをもつ。
【0155】
一実施形態では、イオノマーは、カルボキシレート基を含むポリマーのアルカリ金属塩である。カルボキシレート基の適切な割合は、最も一般的なアルカリ金属、ナトリウムおよび/またはカリウムで中和される(例示的な方法で、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%迄、または事実上100%中和される)。種々の実施形態では、カルボキシレート基の10〜90%以上または40〜75%が、名目上中和される。
【0156】
好適なポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸無水物または他のα、β−不飽和カルボキシルモノマー類およびコモノマー類の重合に基づくポリマーを含む。コモノマー類は、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン)、(メタ)アクリレートエステル類、アクリロニトリル、スチレンなどを含む。非限定的なポリマーの例は、EAA(エチレンアクリル酸コポリマー)およびEMAA(エチレン−メタクリル酸コポリマー)を含む。
【0157】
脂肪酸塩改質イオノマー(FAMI)と呼ばれるものは、フィルム層内部のポリエチレンとの組合せが、幾つかの例では好ましい。これらの、デュポン社による「プラスチックフィルムおよびシートジャーナル:新たなガス透過性を有する新しいイオノマーの開発」に例として記載されている。カリウムが対イオンの場合、イオノマーはFAMI−Kと見なされる。FAMI−Kイオノマーは、ポリマーと混合するとポリマーに対する高水分透過性に寄与する。この高水蒸気透過性は、親水性カルボン酸カリウムと水分子間の好ましい相互作用の結果である。
【0158】
FAMIの対イオンが、ナトリウム(Na)の場合、イオノマーはFAMI−Naとして把握される。中和されるカチオンの少なくとも50%がナトリウムの場合、水蒸気透過性は、大気中での相対湿度の要素となる。ポリマー混合物は、相対湿度(RH)割合が約50%未満の場合、水バリアとして作用し、約50%より多いまたは60%より多いの場合、RHは通気性ポリマーとして作用する。
【0159】
種々の適合イオノマーのより詳細な記載は、ここで引用により援用する米国特許公開第2007/0287019A1号および同第2007/0283652A1号に示されている。
【0160】
種々の実施形態では、未改質イオノマーは、通常アルカリ金属、より一般的にはナトリウムおよび/またはカリウムで中和された一以上のE/X/Yコポリマーを含む。
【0161】
脂肪酸改質イオノマーは、一以上のE/X/Yコポリマーと、一以上の有機酸またはこれらの塩を、アルカリ金属で改質または中和されたカルボキシレート基の留分とともに含む。
【0162】
E/X/Yコポリマーは、Eはエチレン由来、Xは少なくとも一つのC〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボン酸由来、そしてYは、E/X/YコポリマーのYは軟化コモノマーまたはイオノマーである。Xは、E/X/Yコポリマーの約2〜約35重量%、4〜25重量%または5〜20重量%であり、Yは、E/X/Yコポリマーの0〜約35重量%、約0.1〜約35重量%、または5〜30重量%である。
【0163】
E/X/Yコポリマーは、酸コポリマーまたは「直接」酸コポリマーである。これらは、C〜Cα,β−エチレン性不飽和カルボキシ酸由来の少なくとも一つのモノマーと共重合されたエチレン等のα−オレフィンを含む。酸コポリマーは、E/X/Yコポリマーとして記載でき、ここでEはエチレンで、Xは少なくとも一つのα,β−エチレン性不飽和カルボキシ酸由来、Yは軟化コモノマーである。「軟化」とは、結晶性が破壊されることを意味する(ポリマーは低結晶である)。注目すべきは、Yがポリマーの0重量%であるE/X/Yコポリマーである。これは任意で第三の軟化コモノマーを含むことができる。
【0164】
Xの例は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和酸;および、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルアルコール等のC〜Cアルコール類のエステル類を含むフマル酸およびマレイン酸(マレイン酸半エステル)のモノエステルを含む。
【0165】
Yとして使用される軟化コモノマーの例は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、またはこれらの組合せを含み、ここでアルキル基は1〜8または1〜4の炭素原子をもつ。
高酸性(X)のエチレン酸コポリマーは、米国特許第5,023,674号に開示されている「共溶剤技術」の使用分野における当業者に知られている任意の方法、または低酸性レベルのコポリマーを製造できるより高い圧力を採用することにより製造できる。
【0166】
具体的な酸性コポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーを含む。これらはまた、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソ−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート、エチレン(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートターポリマー、またはこれらの二以上の組合せを含む。他の酸性コポリマーは、エチレン/マレイン酸およびエチレン/マレイン酸モノエステルジポリマー;およびエチレン/マレイン酸モノエステル/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/マレイン酸モノエステル/メチル(メタ)アクリレート、エチレン/マレイン酸モノエステル/エチル(メタ)アクリレートターポリマーまたはこれらの二以上の組合せを含む。
【0167】
未改質イオノマーは、酸性改質イオノマーを準備するため、有機酸またはこれらの塩と混合することができる。あるいは、X/Y/Zポリマーと有機酸は、組合せおよび改質でき、またはアルカリ金属で中和できる。好適なイオノマーは、FAMI−NaおよびFAMI−Kと命名されるこれらを含む。
【0168】
有機酸は、36未満の炭素原子をもつ一塩基性、二塩基性または多塩基性のカルボン酸またはこれらの塩とすることができ、約1〜約50重量%の組成物内に存在することができる。この酸は、C−Cアルキル基、OHおよびORからなる基から独立して選ばれる1〜3の置換基に任意に置き換えることがき、ここで各Rは個々のC−Cアルキル、C−CアルコキシアルキルまたはCOR;および各Rは、個々のHまたはC−Cアルキルである。
【0169】
種々の実施形態では、E/X/Yコポリマーと有機酸内の酸性基の70%以上、80%以上、90%あるいは100%さえ、金属イオンで名目上は中和される。金属がカリウムの場合、結果物のフィルムは、フィルムが曝される相対湿度には依存しない高い水蒸気透過性を有する。対イオンがナトリウム(または少なくともナトリウムイオンが50モル%)の場合、湿潤透過率(および水蒸気透過率)は、環境相対湿度の顕著な作用である。相対湿度が50%より高く上昇した場合、いわゆるFAMI−Naは湿潤透過性が徐々に増加し、高水分伝達物となる。種々の実施形態では、FAMI−Naは約50%RH未満の貧弱な水蒸気透過率であるが、顕著な蒸気伝達物は約60%RHより高い。
【0170】
上記刊行物で記載されたイオノマーの適用とは対照的に、ここで記載される積層体のフィルムは重いゲージであり、より高い抗張力(例えば、5,000psi)と引裂強度(例えば、約3,000g超)が要求される。さらに、積層体のフィルムは、四年以上に至るまでの屋外暴露の耐性が可能なように、通常は、より高い紫外線安定性を要求する。
【0171】
種々の実施形態では、積層体と特にフィルムは、各層で個別的にまたは同じ層で共に、の何れでもFAMI−NaとFAMI−Kイオノマー技術を一体化できる。スキン層で使用できるか、または3層以上の共押出フィルムの場合には、スキン層近傍の層で使用できる。イオノマーの合体は、収縮性に寄与し、特に所望の2:1(MD/CD)収縮率を提供できる。FAMI−NaとFAMI−Kイオノマー、またはこれらの混合物は、好ましくは、非スキン層におけるポリマーの、好ましくは5〜45重量%、10〜40重量%または15〜45重量%で作製される。
【0172】
スキン層上またはスキン層近傍(もし共押出が3層以上の場合)の上では、K−イオノマーは、層の5〜90重量%、10〜80重量%または15〜70重量%とすることができる。
【0173】
水分透過性、収縮および/または2%セカントモジュラスの微調整が要求される幾つかの場合、FAMI−NaとFAMI−Kイオノマーの何れかは、EVAやEMAのような酸改質されたコポリマー類を含むLDPEまたはLDPEコポリマーと代替または混合できる。
【0174】
特定の実施形態では、3以上の独立した層を含むフィルムが提供され、これらの各層は脂肪酸改質イオノマーを含む。脂肪酸改質イオノマーがナトリウムイオンで一部が中和された場合FAMI−Naと呼ばれ;中和カチオンがカリウムの場合イオノマーは、FAMI−Kと呼ばれる。幾つかの実施形態では、個々のフィルム層は、個々のフィルム層内でのイオノマーとして、FAMI−KまたはFAMI−Na、あるいは両者の組合せを含む。これについて、FAMI−Naは高性能蒸気バリアイオノマーと考えられ、湿度反応性の蒸気透過性を提供する。一方、FAMI−Kイオノマーは、相対的湿度条件とは相対的に独立した高水分透過性を提供する。共押出フィルムの何れの層においても湿度反応性イオノマーを使用するのが好ましく、同時に高水分透過性FAMI−K種のイオノマーは、共押出フィルムの中間層にのみ使用するのが好ましい。
【0175】
例示的な実施形態では、第1層が内部で20〜30%の高性能蒸気バリアイオノマー(FAMI−Na)を含む3層のフィルムが提供される。中間フィルム層は、約30重量%の高水分透過性イオノマー(FAMI−K)を含み、第3層は約40重量%の高性能蒸気バリアイオノマーを含む。これは、共押出フィルムの中間層における高水分透過性イオノマーの使用を示す。
【0176】
代替的に、共押出フィルムの3つの層は、それぞれが高性能蒸気バリアイオノマーを含むことができるが、フィルムの接合層から外部層へレベルが増加する。一実施形態では、内部層はイオノマーを30重量%、中間層はイオノマーを40重量%、そして外部層はイオノマーを50重量%含む。他の例示的実施形態では、内部層はイオノマーを20重量%、中間層はイオノマーを30重量%、そして外部層はイオノマーを40重量%含む。
【0177】
三層フィルムの特定の実施形態では、個々の層はほぼ同じ厚みを有しており、フィルムのため約1〜12ミルの好ましい厚みで積み上げられる。他の実施形態では、接合層と外部スキン層は、内部または中間層よりも薄い。非限定的な例では、外部層は、フィルムの厚みのそれぞれ10〜30%で作製され、同時に中間層は40〜80%の厚みで作製される。幾つかの実施形態では、内部層は着色されず、親水性を持たせるため外部層は、チタネート、ジルコネートまたはシランカップリング剤で処理された着色粒子(例えばTiO)を含むため、外部層はより親水性を有する。
【0178】
多層フィルムは、マルチヘッド押出装置から三つ以上の組成物を共押出することで作製できる。押出装置の各スクリューには、多様な重量測定供給装置が提供される。一つの例では、四つの異なる重量測定供給装置が、共押出装置の各スクリューを提供する。第1フィードはイオノマーを含む。第2フィードは、例えばLLDPEのマトリックスポリマーを含む。第3フィーダーはマスターバッチを添加する。マスターバッチは、キャリア樹脂および他の任意の含有成分と共に、フィラー、色素、紫外線パッケージ等の多様な他の含有物を含む。マスターバッチ内の任意の含有成分は、エポキシ官能ポリマーと、ここに記載の無水マレイン酸グラフトポリマーを含む。フィラー粒子は、炭酸カルシウム、二酸化チタンまたは他の適当なフィラーとすることができる。幾つかの実施形態では、フィラー粒子は、マスターバッチに添加される前に、親水性チタネート、ジルコネートまたはシランカップリング剤で被覆される。マスターバッチのキャリア樹脂は、より高いメルトインデックスのLLDPとすることができ、あるいは、もし充分に高いメルトインデックスをもつ場合には、エポキシ官能ポリマーから構成されることができる。第4の重量測定供給装置は、他のマスターバッチを提供することができ、あるいは好適な実施形態においては、エポキシ官能ポリマーを別個に株として与えることができる。
【0179】
同時に第1および第2フィーダーは、フィルム組成物の少なくとも80重量%、好ましくは90重量%を作る材料を提供する。
【0180】
一実施形態では、フィルムの層は、公知のブローフィルム工程で共押出される。溶融フィルム層は、円形金型から浮かび上がり、空気圧により直ちに膨脹する。気泡の外部に外部空気が吹き付けられて、膨張率を制御する。下流では、ニップロールは膨脹した管を喰切り、同時に管はカッターにより管を二つのシートに切り離されて巻き上げロール上に持ち上げられる。この工程により、フィルムは、機械方向(MD)および横方向(TD)に同時に引き延ばすことができる。
【0181】
他の実施形態では、多層フィルムは、注入型内で幅出しすることにより引き延ばされる。多層フィルムは、フィルム型から急冷ロール上を通過する。再加熱後、フィルムは、機械方向にフィルムを引っ張るニップロールを通る。その後フィルムは、伸ばされたフィルムが巻き上げロールに持ち上げられる前に、フィルムを横方向に引き延ばす幅出し工程を通過する。
【0182】
しかしながら、準備され引き延ばされた多層フィルムは、良好な積層強度と耐層間剥離性を有する。積層強度は、フィルム層内で一部に存在するエポキシおよび/または無水マレイン酸官能ポリマー性化合物によるものと考えられている。

7.接着剤、フィラーおよびカップリング剤
【0183】
フィルム層はまた、フィラーを含むことができる。フィラーは多数の多層複合構造であり;これらは通常ポリマー性マトリックス内で小分散層を形成する。これらは一般的に、コストの低減および/または加えられる機械的性質のために使用される。
【0184】
フィルム内のフィラーは、マイカ薄片、ナノ−クレイ、ナノ−チューブ、タルク、ウォラストナイト、発泡剤、微粒子、分子篩およびCaCOによる制限をなしとすることができる。種々の実施形態では、フィルム層は着色される。好適な顔料は、フィルム組成物内でフィラーとしても作用する二酸化チタンのような無機顔料を含む。種々の実施形態では、フィラーは、フィルム全体構造の0〜45重量%、10〜40重量%または15〜35重量%を作製する。
【0185】
分子篩は、気体や液体の吸着材として使用される、精密で均一なサイズの細孔を有する材料である。分子篩の非限定的な例は、クレイ、多孔質ガラス、ゼオライト、活性炭およびアルミノケイ酸鉱物を含む。細孔のサイズは、どの分子が通れ、どの分子が通れないかを決める。水蒸気を運ぶには、約3Å〜4Åの細孔のサイズが好ましい。種々の実施形態では、分子篩は、多層フィルムの個別の層に異なる流送量で組み込まれ、積層製品の外部への方向流量、すなわちファブリックとの接合面からの離間、を作り出す
【0186】
炭酸カルシウムは、剛性を高め、耐衝撃性付与および引裂強度を付与する。CaCOなどのフィラーはまた、「ヒート・シンク」として機能する。これらの添加物は、作り出される組成物の具体的な熱を低減し、続く収縮工程における熱発生の低減を可能にし、内部の不織布と表面の両者を余分な熱による損傷から保護する。
【0187】
フィルム構造に追加された炭酸カルシウムのようなフィラーが、カップリング剤により予め被覆された、または改質されていることが好ましい。好適なシラン、チタネート、およびジルコネートカップリング剤は、本明細書の接着剤の説明において開示されている。シランおよびチタネートなどのカップリング剤は、フィラーとポリマーの相溶性や混和性を高める。これらはまた、ポリマーマトリックス内でのフィラーの高流送量のために生じる、あるいは蒸気透過性を増加するために添加されるイオノマーの存在のために生じる、物性の損失を妨げようとする。
【0188】
チタネートまたはジルコネートが使用される場合、チタネートカップリング剤は、フィラーの0.01〜7重量%、0.05〜3重量%、0.1〜0.5重量%であり、非限定的な実施形態ではポリマーマトリックスの0.01〜7重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、最も好ましくは0.1〜0.8重量%の間である。殆どの適用には、ポリオレフィンに炭酸カルシウムフィラー使用する場合とは異なり、積層フィルムはフィラー粒子のための親水性被覆を有するのが好ましい。(米国ニュージャージー州、ケンリッチ・ペトロ・ケミカルズ社)Lica38Jが、フィラーとポリマーマトリックスの両者に親水性を提供する親水性被覆剤の例である。
【0189】
好ましい実施形態では、フィルムは、いわゆるチタネーテッド顔料粒子を適切なレベル含有するように配合される。例示の実施形態では、上記接着剤組成物の使用で列挙された親水性カップリング剤から選ばれる親水性チタネートまたはジルコネートカップリング剤で、二酸化チタンの粒子は前処理または被覆される。顔料粒子上のカップリング剤の存在は、ポリマーマトリックスへの顔料の混合を助成する。カップリング剤はまた、蒸気透過のために提供されるイオノマーの存在により相対的に弱いフィルム強度の顕著な増加を導く。種々の実施形態では、フィルム組成物は、顔料粒子を被覆することで添加できるよりも、多くのカップリング剤物質(親水性チタネートおよびジルコネートのような)を含む。このような添加物質は、フィルム組成物の配合中のマスターバッチ法により添加できる。
【0190】
具体的な実施形態では、添加カップリング剤は、シランまたはチタネートでCaCO粒子を予め被覆することで提供され−これ以降、チタネートが被覆されたCaCOは、CaCO(T)と定義する−フィルム製造の際に、被覆された炭酸カルシウム粒子を、よりよい分配のためにマスターバッチに配合する。マスターバッチプロセスでは、CaCO(T)は、カップリング剤の初期沸点(IBP)に達しないことが望まれる。したがって、マスターバッチのキャリア樹脂は、使用されるマトリックスポリマーと相溶性であり、またより安全な配合のため低溶融温度であることが望ましい。非限定的な例では、マスターバッチは、CaCO(T)、低溶融ポリオレフィンおよび/または酸改質ポリマーおよびLLDPEまたはそのコポリマーを含む。一例では、初期沸点が104.5°C(220°F)のLICA38Jのようなカップリング剤を搬送するCaCOは、初期融点が72°C(162°F)のイー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー社のエラヴァロイ(登録商標)PTWのような低溶融ポリマーと二軸配合機で混合する。チタネートカップリング剤の初期分散が低溶融ポリマーとともに起こると、温度は、より強く高溶融のポリマー−例えばATTANE4404G−が添加されるより望ましい生産温度まで上げられる。この結果、マスターバッチは、フィラー(CaCO)、カップリング剤(チタネート)、低溶融初期キャリア(エラヴァロイ(登録商標)PTW)および高強度ポリマー(ATTANE 4404G)を有し、全ポリマー性構造の相溶を促進する。マスターバッチメルトインデックスは(MI)は、フィルム製造の際より良い分散のために、マトリックス樹脂のそれより0.5〜2.0上であるのが望ましい。
【0191】
殆どのフィルムは、製造条件においてポリマーを安定に保つ、幾らかの抗酸性および/または紫外線保護化学的性質を要求する。多くの場合、このような化学的性質は、マスターバッチ形式でフィルムに与えられ、ここでマスターバッチは、キャリア樹脂(好適な樹脂はLLDPE,LDPE,HDPEおよびPPを含む)、着色剤(フィルムがカラーの場合)、および上述の酸化防止剤(AO)のような保護化学剤から構成されている。必要に応じ、二つマスターバッチの代わりに一つのマスターバッチが存在するための、マスターバッチを運ぶフィラーとカップリング剤がこのパッケージに添加できる。マスターバッチは、フィルムに使用されるポリマーのメルトインデックス数に近いメルトインデックス数をもつべきである。一例では、メルトインデックスは、マトリックス樹脂を通しての分散を促進するためにマトリックス樹脂よりも0.5〜2.0ポイント高い。マスターバッチは、着色剤、一次および二次酸化防止剤および紫外線安定剤を、好ましくは全構造の1〜15重量%、より好ましくは3〜12重量%、最も好ましくは5〜10重量%である。
【0192】
図1および図2を参照すれば、一般に数字の10で表示される本発明に係る積層体は、加えられる熱に反応する所定の収縮反応性を有する収縮,伸張可能なフィルムからなる、フィルムを含む。ファブリック14は、一般的に数字の16で表示される接着剤層によってフィルム12に固定されている。
【0193】
図3を参照すると、積層体10で覆われる物品19は、それ自体をアノード領域19a(図3に示す如く、負電荷を運ぶ)とカソード領域19b(図3に示す如く、正電荷を運ぶ)とに分ける。錆と腐食は、積層体包装材料で囲まれた嵩の分引っ張られた水分が、これらの領域の間で電荷を運ぶことで起こる。図3に示す実施形態では、積層体10のフィルム12は、接着剤層16内部の気相腐食抑制剤(VCI)が大気に放射するのを防ぐバリアとして作用する。したがって、VCIは、矢印Aで示すように内側へ放射される。積層体10が「一方通行放射」として作用することでVCI添加物を保護し、そして物品19を保護するためだけに使用されるのを確保する。種々の実施形態では積層体10は熱を加えることで物品の周囲で収縮し、これによって物品の周囲で収縮/伸張フィルムが収縮するが、積層体10のファブリック18は、フィルムと物品の間の緩衝材として作用し、収縮/伸張フィルム12が接触することによる損傷から物品を保護する。積層体10が物品の周囲で収縮する際に物品は非常に脆弱であり、起こってしまう殆どの腐食は、物品が最初に包装される際の内部の湿度レベルが最も高い場合に起こる。VCI添加剤は、湿度、酸性度および熱により活性化する。積層体10は、熱を使って物品の周囲で収縮するので、VCIは包装の際に最初に加熱される。したがって、物品の周囲の材料を収縮するための加熱による包装の間、高分量のVCIが放射される。この高分量の抑制剤は、材料内部の水分を相殺する。VCIは物品19上で凝縮し、水分と組み合わさり材料を保護する腐食予防塩を形成する。したがって、VCIによりパッケージ内の水分が相殺した後、全金属表面上に分子保護フィルムが形成される。接着剤層16内のVCIは、より少ないレベルで限られた期間、おそらく二年間程、初期高分量後も係属して放射する。したがって、パッケージ内の水分は、VCIにより継続して相殺される。
【0194】
図4は、積層体10の作製の実施形態である。図4では、ロール20からフィルム12が供給され、ロール22から不織布14が供給される。不織布14は、接着ステーション24を通って提供され、接着ステーションでは、当業者に周知の方法により、リザーバ26内に貯蔵されているホットメルト接着剤が供給ローラー28によって不織布14の上面に薄く塗布される。もし、添加剤がリザーバ26に配置される前に、ホットメルト接着剤に混合されていない場合には、添加剤は、ステーション30から不織布14の上面の接着剤が供給されている箇所とほぼ同じ場所に散布される。添加剤は、公知の方法でリザーバまたはコンテナ32内に保存され、不織布14上に散布される。フィルム12は、接着剤と添加剤と共に不織布14と一緒に案内ロール34を通って接合ステーション36へ提供される。接合ステーション36は、フィルム12または不織布14に実質的な圧力を加えないように、フィルム12が不織布14と接触結合するように調製される。接着剤は、不織布14を濡らさないことが好ましいことから、結合は不織布とフィルム12の少ない割合で行われる。もし添加剤が接着剤と混合される場合、添加剤は、接着性や他の性質に実質的な損失を与えないよう、接着剤に25重量%の濃度まで混入できる。接合ステーション36を通過した後、積層体10はロール38によって捲かれる。
【0195】
図5および図6に示す非限定的な実施形態では、積層体10は、バン40(図5)やオートバイ42(図6)のような特に大きな物を保護するのに適している。
【0196】
収縮可能なファブリックは、また真空形成や熱形成を適用するために改良/設計できる。この適用では、加熱トンネルを通るので積層体のフィルム側を加熱できる。フィルムが適度に軟化されると、金型(またはリバース金型)に引き込まれ、所定の形状を形成するために真空が使用できる。熱形成された積層体は、出荷や保管のために小さな部品を置けるトレー状に形成できる。この適用は、積層体の最終形状が、出荷される製品に不織布側が面するように金型が設計されている場合に最も有効に機能する。この方法は、表面の保護が要求される物品の大量包装および個々の包装の両方に適用できる。高価であり、また搬送中または保管中に腐食し易い、自動車や航空機の部品;または他の乗物の部品は、真空形成パッケージ内で保護できる。もし積層体がVCIを含む接着剤を使用する場合、熱形成パッケージも腐食防護を提供する。
【0197】
包装される製品が、二つの真空形成積層体の間に置かれ、熱シール、超音波シールまたは産業で使用されている他の方法で密封されている場合、熱形成パッケージは、クラムシェルパッケージと同様の方法で360度の保護を提供することができる。
【0198】
種々の実施形態では、予成型カバーファブリックの製造方法は、積層体の加熱と、真空形成における成形を含む。
【0199】
もし包装される製品が、製品に直接真空を引くことで対象物の周りに包装を形成するのが可能であれば−予め作製された金型や、リバース金型を有しない場合−積層体は包装される対象物に直接引き伸ばされる。したがって、更なる取扱や包装を省くことができる。
【0200】
非限定的な適用例は、ディスクブレーキやショック、ミラー等の自動車の部品;宇宙船の部品;ハンドガンその他の小兵器;実験装置;小規模試験装置;顕微鏡;カメラ;医療機器その他を含む。これらの部品や装置を保護する方法は、ここに記載した積層体から例えば熱形成により、部品周囲にパッケージを作製して内部に配置または保管することを含む。
【0201】
積層体は、折りたたんで密封することで袋や自動梱包用の袋を作製することができる。この態様では、収縮可能および/または伸張可能な積層体は、従来のA字型フレームまたは他の加熱バー密封包装装置を通ることで密封することができ、あるいは、超音波または高周波(R/F)シール技術を採用することにより密封できる。積層体が主に単一ポリマー材で作られている場合、バッグの加工は簡素化される。
【0202】
種々の実施形態では、物品は、全周囲または360°をバッグまたは他の包囲体により取り囲み、外部環境から完全に孤立することにより保護される。この実施形態では、積層体は、バッグ内部から外側への一方通行で水蒸気を運び、包装された物品を保管中または運搬中に乾燥する。非限定的な例では、運搬中または保管中に、乾燥のため干し草や他の農作物がこのような袋に封入される。物品の使用準備の際は、積層体バッグは取り除かれ、再使用または再生される。
【0203】
有利には、ここに記載された積層体は、大部分が単一タイプの再利用可能なポリマー材、最も一般的なポリエチレンにより製造されるので、100%再利用が可能である。種々の実施形態では、商業目的で使用される包装材料の再利用の方法が提供される。この方法は、ここで記載される積層体で作製されるトレー、バッグまたは他の包装容器の内部へ保護のために物品を配置・保管し、またはここで記載される収縮または伸張フィルムが、少なくとも部分的に接触するように包装しまたは取り入れることを含む。そして、物品は使用済み積層体を提供するために取り除かれて、使用済み積層体は商業的再生流通経路に導入される。
【0204】
さらなる非限定的な記載を下記実施例に示す。

実施例1−ファイバー
【0205】
ASPUN6850A LLDPE繊維樹脂が、試料製品に選ばれた。紫外線安定性;熱変形温度および結晶温度を改質するため、ASPUN6850Aは、Tinuvin11,Irganox1010およびIrgafos168(チバガイギー社の酸化防止剤および紫外線抑制剤)そしてミリケン社の二つの核化剤(HL3−4およびHPN−20E)を含むマスターバッチ(MB)と混合され、曲げモジュール、熱変形温度(HDT)および再結晶温度を測るために混合された。試験のため、下記の試料が準備された:
【表1】

【表2】

【0206】
下記は、核化剤との初期試験であり;ASPUN6850Aの特性をさらに改質し、マスターバッチを準備するために更なる試験が行われた。マスターバッチは、繊維樹脂と下記の組成物を配合するために作製され使用された。
【表3】

繊維供給者の指示により、1.3〜1.9デニールの繊維が上記組成物から紡糸された。下記の特性が得られ、ここでHDTは1.63インチ(4.14センチ・メートル)に切断された繊維で測定された。
【表4】

【0207】
試験結果によれば、繊維を形成する特性として、PBC0011−3が最良の全体改良を提供した。
【0208】
例1〜8は、不織布へのカーディング可能な繊維を作製するのに使用されるポリエチレン繊維組成物の他の例である。この配合は、ナノクレイを含む。
【表5】

実施例2−不織布
【0209】
例1による繊維は、機械方向のけん縮繊維の二つのカードに重ね合わせることにより不織布に形成される。第1のカード内では、繊維は1.0〜1.3デニールである。第2のカード内では、繊維は1.3〜1.7デニールである。カードは、各カードで10〜70g/mの繊維目付で置かれる。不織ウェブは、水流交絡法で製造される。

実施例3−多層フィルム
【0210】
フィルムの個々の層は、チタネートで処理されたTiO、一次および二次酸化防止剤並びにHALSを含むマスターバッチを使用して作製される。マスターバッチは、8%〜10%の荷重で層の間に添加される。フィルム全体の望ましいマスターバッチの量は、適用に応じて7%〜11%の間である。フィルムの厚さは、6.50ミル〜8.00ミルの間である。各層の率は、接合層は20%、コアまたは中間層は60%、外部スキン層は20%である。フィルムは、ブローアップ比(BUR)が2.6〜2.8のブローフィルム法により製造される。高ブローアップ比は、より高い収縮率を与える。接合層は、積層プロセスにおいて接着力を増すため、48ダインまでコロナ処理される。外部スキン層のダインレベルは、ニュートラルのままである。

フィルムA:
【0211】
フィルム用マスターバッチは、下記の成分と割合で有する:TiOを66.6%;Lica38Jを5.0%;キャリア樹脂を20.4%;および紫外線安定剤/酸化防止剤を8.0%。マスターバッチのための紫外線安定剤/酸化防止剤パッケージは、4(50%)TINUVIN738、2(25%)TINUVIN326および2(25%)IRGANOX B215を含むチバガイギー社の化学剤から作製される。キャリア樹脂は、高メルトインデックスのLLDPEである。必要な場合、キャリア樹脂は、ダウケミカル社のINFUSEなどのブロックコポリマー構造をもつLLDPEとすることができる。フィルムは、上スキン層とコア層の上に10%のマスターバッチを使用して製造される。内部スキン(接合面)層は、TiOを全く含まないクリアマスターバッチをもつ。キャリア樹脂は、混合においてTiOの差で作られる。
【0212】
フィルムの上層は、TiOを含むマスターバッチを10%、プレクサー社のPX3410を30%、そしてAD1099イオノマー樹脂を60%もつ。中間・コア層は、TiOを含むマスターバッチを10%、プレクサー社のPX3410(無水物変性ポリエチレン)を60%、そしてAD1099イオノマー樹脂を30%もつ。接合層は、TiOのないクリアマスターバッチを10%、プレクサー社のPX3410を30%、そしてAD1099イオノマー樹脂を60%もつ。接合層は、48ダインまで処理される。上記の樹脂分布とともに、最終フィルムは、10%のマスターバッチが成分とともに初期テーブル上に提供される。LLDPE48%とマスターバッチ上のキャリア樹脂からのLLDPE3.37%;イオノマー42%、紫外線安定剤/酸化防止剤パッケージ0.8%、着色剤(TiO)5.33%およびチタネート0.5%である。
【0213】
上記フィルム試料は下記の物性をもつ。
【表6】


フィルムB
【0214】
第1のフィルム試料のように、このフィルムも同じ着色マスターバッチを使用する。しかし、この適用ではTiOマスターバッチは、層全体に使用される。このマスターバッチのキャリア樹脂は、ダウケミカル社のINFUSEなどのブロックコポリマーへのものである。マスターバッチの成分は、TiOを33.3;Lica38Jを2.5;INFUSEを60.2;および紫外線安定剤/酸化防止剤4である。
【0215】
フィルムの上層は、上記マスターバッチを20%、ELITE 5500Gを20%およびAD1119(デュポン社の「スマート」イオノマー)を57%、エラヴァロイPTW(エポキシ官能ポリマー)を3%もつ;中間コア層は、上記マスターバッチを20%、ELITE 5500G(ダウ社の強化ポリエチレン)を45%、AD1099(デュポン社の脂肪酸改質イオノマー、カリウム中和)を30%、エラヴァロイPTWを3%もつ;中間層は、上記マスターバッチを20%、ELITE 5500G(ダウ社の強化ポリエチレン)を20%、AD1099(デュポン社の脂肪酸改質イオノマー、カリウム中和)を57%、エラヴァロイPTWを3%もつ。全体的な構造においては、LLDPE48.24%、エラヴァロイPTW3%、イオノマー40.80%、チタネート0.50%、紫外線安定剤/酸化防止剤パッケージ0.8%、および着色剤(TiO)6.66%である。
【0216】
三層フィルムは示差走査熱量法(DSC)により検査される。フィルムは、多重ポリマー構成がフィルム内に存在するにも拘わらず、124.6°Cで溶融解吸熱のシングルピークを表示する。エラヴァロイPTWは、nブチルアクリレート(nBA)とグリシジルメタクリレート(GMA)を含む。DSCは、LLDPE、エラヴァロイPTWおよびイオノマーの間に相溶性があることを示す。曲線は、最初に大きい角度を持つが、一つだけのシャープな融点は一つだけであり、これらの三つの樹脂の混合物から合金が創造されていることを示している。フィルム内の合金材料は、非混和性のポリマー配合を超える改良された物性へ導く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装される対象物に接触する第1側面と、前記第1側面の反対側で露出する第2側面と、を有し、
a.水蒸気透過可能な熱可塑性フィルムと;
b.前記フィルムと接合面に沿って接触する親水性不織布と、;および、
c.前記フィルムと前記不織布を断続的に接着する前記接合面内の熱溶融接着剤と、を有し、
前記フィルムは、前記接合面からの距離が増加するにつれて水蒸気透過率が増加する3以上の独立した層を有し、前記不織布は、異なるデニール繊維、異なる親水性繊維、またはその両者を有する2以上の独立した層を有することを特徴とするシート状の包装材。
【請求項2】
前記フィルムと前記不織布は、エチレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーに基づくものであり、前記不織布の繊維は熱変形温度が70°C以上であることを特徴とする請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記フィルムは、カリウムイオンにより中和される複数のカルボキシレート基を有することを特徴とする請求項2に記載の包装材。
【請求項4】
前記フィルムは、低密度のポリエチレン(LDPE)または直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むことを特徴とする請求項2に記載の包装材。
【請求項5】
前記フィルムは、接合面近傍の接合層と、前記シートの外部層を形成するスキン層と、前記接合層と前記スキン層の間に配置される1以上の中間層を含む複数の共押出層を有することを特徴とする請求項2に記載の包装材。
【請求項6】
前記スキン層の前記水蒸気透過可能性および親水性は、前記接合層よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
前記接合層は炭酸カルシウムを含み、前記スキン層はカリウムが中和された複数のカルボキシレート基を含むことを特徴とする請求項6に記載の包装材。
【請求項8】
前記不織布は、前記フィルムとの接合面近傍の接合層と、前記シートの第1側面を形成する外部層を含む複数の層を有し、外部層の親水性は、接合層の親水性よりも低いことを特徴とする請求項2に記載の包装材。
【請求項9】
前記接合層と前記外部層は、異なるサイズの繊維を含み、前記接合層の繊維の直径は前記外部層の繊維よりも太いことを特徴とする請求項8に記載の包装材。
【請求項10】
前記不織布はLLDPEステープルファイバーを含むことを特徴とする請求項8に記載包装材。
【請求項11】
前記不織布は、1.2〜1.5デニールの繊維を含むことを特徴とする請求項9に記載の包装材。
【請求項12】
シート状の包装用品であって、前記シートが積層体を構築するシート材料から作られ、
前記積層体は、
30グラム/平方メートル/日以上の水蒸気透過性を有する収縮伸張フィルムを含み、前記シート材料の第1側面を形成する第1材料と、
前記シート材料の第2側面を形成し、積層不織布を含み、前記積層不織布は異なる親水性を有する複数の層をもつ第2材料と、および
前記第1材料と前記第2材料との間に配置されこれらを接着する接合層に配置される熱溶融接着剤とを有する第3材料と、を含み、
前記フィルム、前記積層不織布および前記熱溶融接着剤は、エチレンホモポリマー類またはコポリマー類を含むことを特徴とするシート状の包装用品。
【請求項13】
前記フィルムは、炭酸カルシウムフィラーを有することを特徴とする、請求項12に記載の包装用品。
【請求項14】
前記フィルムは、少なくとも一部にカリウムおよび/またはナトリウムにより中和される複数のカルボキシレート基をもつポリオレフィンおよびイオノマ−を含むことを特徴とする請求項12に記載の包装用品。
【請求項15】
前記フィルムは、前記接合面近傍の接合層と、前記接合層の上に配置される一以上の外部層を含む複数の層を有し、
前記複数の層は、前記接合面からの距離を増加するにつれて蒸気透過性が増加していることを特徴とする請求項12に記載の包装用品。
【請求項16】
前記フィルムの厚さは、3ミルから9ミルであることを特徴とする請求項12に記載の包装用品。
【請求項17】
前記不織布は、異なるサイズの繊維から作られていることを特徴とする請求項12に記載の包装用品。
【請求項18】
前記複数の層は、けん縮ステープル繊維を含むことを特徴とする請求項17に記載包装用品。
【請求項19】
前記不織布の前記複数の層の親水性は、前記シート材料の第2側面から接合面へ増加することを特徴とする請求項12に記載の包装用品。
【請求項20】
1〜3デニールのLLDPE繊維であって、前記繊維はナノクレイを1〜6重量%を含み、455kPa負荷でASTM D648で測定される熱変形温度が70°C以上であるLLDPE繊維。
【請求項21】
前記ナノクレイは、チタネート、ジルコネートまたはシランカップリング剤で被覆されていることを特徴とする請求項20に記載のLLDPE繊維。
【請求項22】
請求項20に記載のLLDPE繊維を含むことを特徴とする柔軟拭き取り繊維。
【請求項23】
455kPa負荷でASTM D648で測定される熱変形温度が70°C以上である1〜3デニールのポリエチレン繊維。
【請求項24】
LLDPEを含むことを特徴とする請求項23に記載のポリエチレン繊維。
【請求項25】
1〜1.3デニールであることを特徴とする請求項23に記載のポリエチレン繊維。
【請求項26】
1.3から1.7デニールであることを特徴とする請求項23に記載のポリエチレン繊維。
【請求項27】
けん縮ステープル繊維を含むことを特徴とする請求項23に記載のポリエチレン繊維。
【請求項28】
のナノクレイを1〜6重量%含むことを特徴とする請求項23に記載のポリエチレン繊維。
【請求項29】
請求項23に記載のポリエチレン繊維を含むことを特徴とする不織布。
【請求項30】
2以上の層を含み、第1層の繊維デニールが第2層の繊維デニールと異なり、前記第1層と第2層が隣接していることを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項31】
2以上の層を含み、第1層の繊維の親水性が、第2層の繊維と異なる二以上の層を含むことを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項32】
第1の層は1〜1.3デニールの繊維を含み、第2の層は1.3−1.7デニールの繊維を含むことを特徴とする請求項30に記載の不織布。
【請求項33】
前記第2層の繊維は、チタネートまたはジルコネートカップリング剤をさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の不織布。
【請求項34】
紡糸結合法により作製されることを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項35】
溶融噴霧法により作製されることを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項36】
スパンレース法により作製されることを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項37】
面積重量が1平方メートルあたり10〜200グラムであることを特徴とする請求項29に記載の不織布。
【請求項38】
a)エチレンホモポリマーまたはコポリマー50〜90重量%と
b)Eはエチレンであり、Xは少なくとも一つのC3−8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yは軟化コモノマーであるE/X/Yコポリマーおよび炭素原子を4〜36もつ一塩基性カルボン酸を含むイオノマー組成物であって、E/X/YコポリマーのXは約2〜35重量%、Yは0〜35重量%であり、E/X/Yコポリマー内の酸性基の70%以上と有機酸が金属イオンにより中和されるようになっているイオノマー組成物5〜45重量%と
c)フィラー0〜40重量%と
d)親水性カップリング剤0.01〜7重量%と、を含むことを特徴とする押出蒸気透過性フィルム。
【請求項39】
前記エチレンポリマーまたはコポリマーを50〜85重量%、前記イオノマー組成物を15〜45重量%、フィラーを0〜35重量%および前記カップリング剤を0.1〜0.8重量%含むことを特徴とする請求項38に記載の押出蒸気透過性フィルム。
【請求項40】
前記エチレンホモポリマーまたはコポリマーは、LLDPEを含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項41】
前記エチレンホモポリマーまたはコポリマーは、無水マレイン酸グラフトポリエチレンを含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項42】
エポキシ官能基を有するポリマー性材料をさらに含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項43】
前記親水性カップリング剤は、チタネートであることを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項44】
フィラーは、TiOを含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項45】
フィラーは、CaCOを含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項46】
フィラーは、TiOとCaCOを含むことを特徴とする請求項38に記載のフィルム。
【請求項47】
複数の共押出層を含み、少なくとも一つの層が請求項38に記載の押出フィルムであることを特徴とする多層複合フィルム。
【請求項48】
A−B−Cの少なくとも3つの層を含み、C層内のE/X/Yポリマーの濃度がB層よりも高く、B層内のE/X/Yポリマーの濃度がA層よりも高いことを特徴とする請求項47に記載の複合フィルム。
【請求項49】
着色されていることを特徴とする請求項47に記載の複合フィルム。
【請求項50】
A−B−Cの3以上の層を含み、C層の水蒸気透過率がB層の水蒸気透過率よりも高く、A層の水蒸気透過率よりも高いことを特徴とする請求項47に記載の複合フィルム。
【請求項51】
請求項47に記載の複合フィルムと、不織布と、を含む積層材であり、前記フィルムと不織布の間の接合面が不織布と接着性組成物を含むことを特徴とする積層体。
【請求項52】
請求項1から19のいずれかに記載の層を折りたたむ工程とシール工程を含む袋物の製造方法。
【請求項53】
請求項1から19に記載の層を加熱する工程と変形工程を含む予備成形カバーファブリックの製造方法。
【請求項54】
自動車製品および部品、工業製品および部品、航空宇宙製品および部品、軍事製品および部品から選択される品を保護する方法であって、前記製品および部品は請求項53に係る方法で製造される予備成形カバーファブリックで格納する工程を含む方法。
【請求項55】
保護のために対象物を請求項1〜19のいずれかに記載の積層体で包装する工程と、使用済み積層体を提供する包装から対象物を除去し、および前記使用済み層を商目的再生流通過程に提供する工程と、を含む商取引で使用される保護材料の再生方法。
【請求項56】
請求項1〜19のいずれかに記載の積層体を含む被覆体に農作物を置くことを含む農作物の保護および運搬方法。
【請求項57】
前記農作物は干草梱包形状の農作物であることを特徴とする請求項56に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2012−500143(P2012−500143A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523935(P2011−523935)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/054183
【国際公開番号】WO2010/022066
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(503259521)トランシールド テクノロジー エイエス (1)
【Fターム(参考)】