説明

水解性衛生紙

【課題】吸水性を有し、かつ裏抜け防止性に優れる水解性衛生紙を提供する。
【解決手段】外層の縦方向強度と他の層の縦方向強度の比率が1:2.1〜1:7.5であり、かつ乾燥引張強さの横縦比が1:2.0〜1:3.5である多層構造の水解性衛生紙により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーなどの水解性衛生紙に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーなどの水解性衛生紙は、直接肌に触れるものであることから、消費者から、柔らかさ、ふんわり感、滑らかさ、厚み感等といった官能性に優れるものが要求される。
近年では、温水洗浄便座の普及に伴って、トイレットペーパーにさらなる要求がなされるようになってきた。すなわち、温水洗浄便座においてトイレットペーパーを用いる主目的は、洗浄後の体表面に残った水をぬぐい取ることであるため、温水洗浄便座において使用されるトイレットペーパーでは、特に吸水性が要求されるようになってきた。そして、かかるトイレットペーパーでは、体表面に残った水の全量を吸収し、かつ吸収した水分が裏抜けして拭き手側に届かないことが求められる。
そこで、シートを重ねることによって生ずる空隙を利用することで吸水性を向上させ、1組のシートで必要な機能を果し得る温水洗浄便座に適したトイレットペーパーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−172072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記発明では、水解性衛生紙を重ね合わせると共に、衛生紙にエンボス加工を施して、表面積を拡大することにより、吸水力を確保して吸水性を向上させているが、エンボスの数が増えると、柔らかさや滑らかさが低下して肌触りが悪くなってしまうといった問題が生じる。また、衛生紙表面の柔らかさや滑らかさについての考慮がないため、特に温水洗浄便座を好む排泄部に疾患のある使用者にとって使いづらいという問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸水性を確保するとともに、裏抜け防止を確実に図り、かつ厚み感と柔軟性を与えることができる水解性衛生紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、
2層以上の層構造を有する多層構造の水解性衛生紙であって、
少なくとも一方の外層のJIS P 8113に基づく縦方向引張強さとその層以外のいずれかの層のJIS P 8113に準じた縦方向引張強さとの比率が1:2.1〜1:7.5であり、かつ水解性衛生紙全体としてのJIS P 8113に基づく乾燥引張強さの横方向と縦方向の比率が1:2.0〜1:3.5であることを特徴とする水解性衛生紙である。
【0005】
請求項2記載の発明は、各層の米坪がそれぞれ11〜22g/m2であり、かつ各層の紙厚がそれぞれ60〜200μmである請求項1記載の水解性衛生紙である。
【0006】
請求項3記載の発明は、少なくとも一方の外層の吸水量が150〜400g/m2であり、その層以外のいずれかの層の吸水量が100〜300g/m2である、請求項1または2記載の水解性衛生紙である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、外層において吸収した水分を敏速に内部に閉じ込めた後、外層よりも強度の大きい層で水分を拡散させることができ、水解性衛生紙の厚み感及び吸水性を適正に確保した上で、水分の裏抜けを好適に図ることができる。このメカニズムとして、強度を上げることは、抄紙前段階で原料パルプの叩解を進め、抄紙時にパルプ繊維間結合を促進させることにあり、その結果、繊維間の空隙が少なくなり、水分が通りにくくなる。逆に言えば、強度を下げることは、繊維間の空隙が多くなり、水分が通り易くなることにあるため、水分と直接接触する外層の強度を下げ、まず水分を敏速に内部に閉じ込めた後、外層よりも強度の大きい層で水分を拡散させることができるのである。比率として1:2.1〜1:7.5が好ましく、この下限より小さいと、吸収した水分が内部で拡散し易い反面、水分の拭き取り時に水分が垂直方向に浸透し、手が濡れてしまう恐れがある。上限より大きいと、水分の内部での拡散が進まず、十分に水分を吸収できず、例えばトイレットペーパーの場合、排泄部及びその周辺に水分が残ってしまう恐れがある。さらに水分の拭き取り時に水解性衛生紙自体が崩壊しないよう乾燥引張強さの横方向と縦方向の比率として1:2.0〜1:3.5が好ましい。この下限より小さいと、吸収した水分が内部で拡散し易い反面、水分の拭き取り時に水解性衛生紙が崩壊してしまう恐れがある。上限より大きいと、水分の内部での拡散が進まず、逆流して外層の方へ戻り易くなってしまう。
【0008】
また、請求項2記載の発明のとおり、水解性衛生紙の構成は、各層の米坪がそれぞれ11〜22g/m2であり、かつ各層の紙厚がそれぞれ60〜200μmとするのが望ましい。
【0009】
さらに、請求項3記載の発明のとおり、少なくとも一方の外層の吸水量が150〜400g/m2であり、その層以外のいずれかの層の吸水量が100〜300g/m2であるのが望ましい。
【0010】
本発明の請求項4記載の発明は、少なくとも一方の外層の縦方向の乾燥引張強さが、100〜250cN/25mmであり、かつその層以外の何れかの層の縦方向の乾燥引張強さが、100〜800cN/25mmである請求項1〜3のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、使用時の破れ等の不具合をより好適に防止することができる。
【0012】
請求項5記載の発明は、JIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が80秒以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、例えば、使用後水洗トイレに廃棄しても、敏速に水解し、トイレの詰まりは防止される。
【0014】
請求項6記載の発明は、水平且つ平滑で水が浸透しない場所に水1mlを滴下した後30mm×40mmに広げ、この上にJIS L 0208に規定される絶乾状態の乾燥機中に3分間放置した後の衛生紙を複数枚積み重ね、この積み重ねた衛生紙に水が浸透する前記衛生紙の枚数が20枚以下である、請求項1〜5のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、水分の裏抜けを好適に防止することができる。なお、請求項6における衛生紙の枚数とは、「層」とは異なる概念であり、1プライ=1枚を意味する。従って、例えば、2プライ一組の製品は、一般的に製品としては1枚と数えられることもあるが、請求項6においては二枚として計算する。
【0016】
請求項7記載の発明は、少なくとも一方の外層に柔軟剤が添加されている請求項1〜6のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0017】
請求項7記載の発明によれば、特に柔らかさに優れるものとなり、特に排泄部に疾患のある使用者にとって、患部を傷めることなく好適に水分の拭き取りができるようになる。
【0018】
請求項8記載の発明は、外層以外のいずれかの層に、一過性湿潤紙力剤および/またはカチオン澱粉が添加されている、請求項1〜7のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0019】
請求項8記載の発明によれば、外層以外の少なくともいずれかの層の表面強度が上がるため、紙粉の発生を抑えることができる。
【0020】
請求項9記載の発明は、ラミネートエンボス加工がなされている請求項1〜8のいずれか1項記載の水解性衛生紙である。
【0021】
請求項9記載の発明によれば、厚み感を向上させると共に、表面積を拡大させることにより吸水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水解性衛生紙によると、吸水性を確保するとともに、裏抜け防止を確実に図り、かつ厚み感と柔軟性を与えることができる。また、柔らかくすることができ、さらに柔らかくすることに伴って発生しやすくなる紙粉の発生をも低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
〔構造〕
本発明に係る水解性衛生紙10は、図1及び図2に示すように、3層以上の多層となっている。ここで、注意を要するのは、本発明の「層」とは、いわゆる「プライ」を意味するものではない。つまり、水解性衛生紙10は、図示例のように、例えば、多層抄きのように1プライであっても、図示はしないが、2プライ、3プライ、4プライ又はそれ以上の複数プライであってもよい。この際、各プライは、相互に重なり合う複数の層で構成されていても、各層単独で構成されていてもよい。
本発明に係る水解性衛生紙10は、図1に示すように、一方の外層11以外の少なくともいずれかの層が、図示例では、中層21が、弱サイズ効果を効かせた浸透速度が遅い液透過抑制層となっている。これにより、外層を吸液層とした場合、一方の外層11(例えば表層)に吸収(吸水)された水分Wの裏抜け(他方の外層12(例えば裏層)への抜け)が防止され、水分が手についたりして不衛生であるとの問題が解決される。この際、図2に示すように、中層21,21を2層以上の複数層とし、これらを全て液透過抑制層とすることもできる。なお、本明細書では、水解性衛生紙10の両表面を構成する層を、外層11,12、この外層11,12に挟まれる層を全て中層21と表現している。
【0024】
〔基紙の原料等〕
本発明に係る水解性衛生紙において、基紙の原料は、特に限定されず、適宜の原料を使用することができる。原料として、パルプ繊維を使用する場合、このパルプ繊維(原料パルプ)としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、基紙とする。この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
ただし、吸液層は、セルロース、ヘミセルロース、親水性アセテートセルロース及び親水性不織布の少なくともいずれか1つが原料とされているのが好ましい。
一方、液透過抑制層は、フィルム、撥水性不織布およびアセテートセルロースの少なくともいずれか1つが原料とされているのが好ましい。もっとも、液透過抑制層が、パルプ繊維を原料とする場合も、サイズ剤を、パルプ絶乾質量に対する固形分質量比で0.02〜0.06%含むと好ましいものとなり、0.03〜0.05%含むとより好ましいものとなる。サイズ剤の配合量が、0.02質量%未満であると、液の裏抜けを十分に低減することができなくなる。他方、サイズ剤の配合量が、0.06質量%を超えると、撥水性が強くなり過ぎるとの問題が生じる。
サイズ剤としては、例えば、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸等の中性サイズ剤、けん化天然ロジン、強化ロジン等の酸性サイズ剤などを、使用することができる。
【0025】
〔吸水時間〕
本発明における水解性衛生紙の吸水時間は、JIS P 8111の条件下で、次の方法で測定されるものである。先ずサンプルシートをコップの口に載せ、サンプルの周縁部を輪ゴムでコップの口に固定する。次に、スポイトを用いて水を1滴(5μl)サンプルの上に高さ1cmの位置から落とし、水滴が落下してからサンプル中に完全に吸い込まれるまでの時間をストップウォッチで測定し、吸水時間(秒/1滴)とする。ここで、水滴を真上ではなく斜め(垂直に対して45度の傾斜)から見たときに光が反射しなくなったと判断されたとき、サンプル中に完全に吸い込まれたと判断するものとする。
これに基づいて、外層及び中層を、各々単独で測定した際の吸水時間の比率が1:15〜1:1.5となることが好ましい。一方、外層の吸水時間を1としたとき、中層の吸水時間が15超である場合は、中層での水分吸収が追いつかず拡散の方が主体となり、中層の表面上に水分が留まり、また、外層に逆戻りするため、吸水性を確保するには不十分となってしまう。他方、外層の吸水時間を1としたとき、中層の吸水時間が1.5未満である場合は、水分の垂直方向の浸透が早くなり、他方の外層まで水分が浸透してしまい、裏抜けするおそれがある。
【0026】
〔吸水量〕
吸液層である外層の吸水量が150〜400g/m2となるのが好ましい。なぜなら、150g/m2未満では、外層に水分が留まり、吸水性を確保するには不十分であるからである。また、400g/m2超では、吸水性を確保する上では優れるが、使用時の手の圧力により、水分が逆戻りする恐れがあるためである。
液透過抑制層である中層の吸水量は、100〜300g/m2となるのが好ましい。なぜなら、150g/m2未満では、外層に水分が留まり、吸水性を確保するには不十分であるからである。また、300g/m2超では、吸水性を確保する上では優れるものの、使用時の手の圧力により、水分が逆戻りする恐れがあるためである。
【0027】
〔米坪〕
本発明に係る水解性衛生紙の各層の米坪は、JIS P 8124の米坪測定方法において、11〜22g/m2となるのが好ましい。なぜなら、11g/m2未満では、トイレットペーパーとしての柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、トイレットペーパーとしての強度を適正に確保することができないためである。また、22g/m2超では、トイレットペーパーとして使用するに、硬くなりすぎて、肌触りが悪いものとなるからである。
【0028】
〔紙厚〕
各層の紙厚は、60〜200μmとなるのが好ましい。なぜなら、60μm未満では、トイレットペーパーとしての柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、トイレットペーパーとしての強度を適正に確保することができないためである。また、200μm超では、トイレットペーパーとしては硬すぎて肌触りの悪いものとなり、使用時にゴワツキ感が生じるためである。
なお、紙厚の測定方法としては、JIS P 8111の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料(トイレットペーパー)を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0029】
〔引張強さ〕
本発明に係る水解性衛生紙の引張強さは、JIS P 8113の引張試験方法に基づいて測定される。添加する湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
また、外層以外の少なくともいずれかの層に、抄紙の段階で一過性湿潤紙力剤及び/又はカチオン澱粉を添加することが好ましく、好適には0.5〜8.0kg/トン(パルプトン)添加することが望ましい。一方、8.0kg/トン(パルプトン)を超えると、紙力が強すぎ、使用後水洗トイレに廃棄した際の水解性の阻害要因となる。他方、0.5kg/トン(パルプトン)未満であると、表面強度が悪いため、表面から突出するセルロース繊維が毛羽立ち、結果セルロース繊維の固まりである紙粉が発生しやすくなる。
【0030】
〔水解性〕
本発明に係る水解性衛生紙の水解性は、JIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における結果が80秒以下が好ましい。80秒を超えると、使用後に水洗トイレ等に廃棄しても水解が遅く、排水管に詰まる恐れが生じるからである。
【0031】
〔水分浸透度〕
水解性薄葉紙の水分浸透度は、水平に薄葉紙を複数枚積み重ね、積み重ねた薄葉紙に水分が浸透する枚数が20枚以下であることが好ましい。
ここで、水分浸透度の具体的な測定方法としては、例えば、3枚重ね(3プライ)のトイレットペーパーを1組として、これを順次積み重ねていき、少なくとも10組の積み重ねた試料を用意する。次いで1mlの水をスポイドで計り取り、水平且つ平滑で水が浸透しない試験台の上で30mm×40mmの面積に均一に広げる。広げるには、スポイド自体か、顕微鏡で使用するプレパラートといったガラス片を用いることができ、均一に広げることができればこれら以外のものを使用しても良い。次に錘を用意し、広げた水の上に積み重ねた試料を上から静かに被せ、ほぼ同時に被せた上のほぼ中心に重りを置き、約1秒後錘を離し、水が浸透した紙の枚数を数える。
上記の錘は650gとし、紙に当たる底部の面積が30mm×50mmのものを使用する。置き方として、錘の30mmの辺が、広げた水の30mmの辺に沿うように置き、広げた水を覆うようにする。30mm×50mmの面積は、実使用において温水洗浄便座を用いた後、濡れた排泄部及び排泄部周辺を拭く時に、これら部分に接触する紙の面積を想定したものである。また、650gは排泄後の排泄部及び排泄部周辺をトイレットペーパーで拭き取る際にかかる力を想定したものである。水が浸透する枚数が20枚以下としたのは、実際上、トイレットペーパーを20枚以下になるよう折り重ねて使用されることが多いことからである。裏抜け防止の観点から言えば、15枚以下であることが望ましい。
【0032】
〔ソフトネス〕
本発明に係る水解性衛生紙のソフトネス(JIS L1096 曲げ合成)は、1.5〜3.5gであることが好ましい。なぜなら、1.5g未満では、トイレットペーパーとして柔らかくなりすぎて厚み感の確保が困難となるためである。また、3.5g超では、トイレットペーパーとして硬くなりすぎて肌触りが悪化するためである。
ここで、ソフトネスとは、10cm巾の衛生薄葉紙を端子によって巾5.0mmの隙間に押し込んだときの抵抗値(縦横の平均値)であり、値が小さいほど、柔らかいことを意味する。本明細書でソフトネス は、ハンドルオメータ法(JIS L−1096 E法)によって測定した値をいう。ソフトネスは、例えば、坪量、層の数、層を形成する繊維・フィルム等の種類、融着加工条件などを変化させることにより、調節することができる。
【0033】
〔柔軟剤〕
本発明に係る水解性衛生紙においては、外層に柔軟剤を添加することが好ましい。柔軟剤の例としては、界面活性剤系の柔軟剤であり、その柔軟剤としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系などを用いることができる。特にアルキル燐酸エステル塩が好ましい。
非イオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレートなどの多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。
カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、またはアミンなどをもちいることができる。また、両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、または複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、または複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
これらの柔軟剤のシートへの添加は、内添でも外添でもよい。また、薬液に対して、陰イオン界面活性剤、香料、着色料、防腐剤、酸化防止剤などの副次的添加剤を、1%以下の割合で添加することができる。
柔軟剤を添加することにより、表面の柔らかさや滑らかさが発現し、肌触りがよくなる。特に、排泄部に疾患のある使用者にとって、患部を傷めることなく好適に水分の拭き取りができる。
【0034】
〔一過性湿潤紙力剤〕
一過性湿潤紙力剤は、添加することにより、水分を拭き取り時の水分量程度では表面が粗くなったり破れたりせず、廃棄時の多量の水、例えば水洗トイレでの水流で崩壊させることができる。例えば、TS−20(星光PMC社製) などを用いることができる。
本実施の形態の水解性衛生紙において、少なくとも2プライ以上で、かつ各シートにそれぞれエンボスが付与されてから重ねると、厚み感を向上させるとともに表面積を拡大して吸水性を向上させることが可能となり好適である。なお、より好適にはラミネートエンボス加工が望ましい。
【実施例】
【0035】
本発明の実施例および比較例にかかる3層構造の水解性衛生紙について物性などを測定した。評価項目と結果を表1に示す。なお、各実施例および各比較例は、3枚重ね(3プライ)のトイレットペーパーであり、各プライは単層構造である。
【0036】
【表1】

【0037】
結果は、表1からも明らかなように、実施例1〜4は、吸水性が確保されているにもかかわらず、裏抜け防止も確実に図られている。それに対して、比較例1〜3は、吸水性については、実施例とほぼ同等であるものの、水分浸透度で劣っており裏抜け防止性が図られていない。さらに、実施例1〜4は、柔らかさ(ソフトネス)に優れているとともに、十分な水解性や引張強さ(乾燥および湿潤)も有する。してみると、本発明の水解性衛生紙は、十分な吸水性を有し、しかも、裏抜け防止が確実に図られ、さらに柔らかさを有するものといえる。なお、水解性の値は3回の平均値である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、トイレットペーパーや、使い捨て拭取りシート等の水解性衛生紙のほか、トイレ洗浄用シート等の水解紙にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる水解性衛生紙の断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる水解性衛生紙の他の例の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…水解性衛生紙、11…外層(表層)、12…外層(裏層)、21…内層、W…水分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の層構造を有する多層構造の水解性衛生紙であって、
少なくとも一方の外層のJIS P 8113に基づく縦方向引張強さとその層以外のいずれかの層のJIS P 8113に準じた縦方向引張強さとの比率が1:2.1〜1:7.5であり、かつ水解性衛生紙全体としてのJIS P 8113に基づく乾燥引張強さの横方向と縦方向の比率が1:2.0〜1:3.5であることを特徴とする水解性衛生紙。
【請求項2】
各層の米坪がそれぞれ11〜22g/m2であり、かつ各層の紙厚がそれぞれ60〜200μmである請求項1記載の水解性衛生紙。
【請求項3】
少なくとも一方の外層の吸水量が150〜400g/m2であり、その層以外のいずれかの層の吸水量が100〜300g/m2である、請求項1または2記載の水解性衛生紙。
【請求項4】
少なくとも一方の外層の縦方向の乾燥引張強さが、100〜250cN/25mmであり、かつその層以外の何れかの層の縦方向の乾燥引張強さが、100〜800cN/25mmである請求項1〜3のいずれか1項記載の水解性衛生紙。
【請求項5】
JIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が80秒以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の水解性衛生紙。
【請求項6】
水平且つ平滑で水が浸透しない場所に水1mlを滴下した後30mm×40mmに広げ、この上にJIS L 0208に規定される絶乾状態の乾燥機中に3分間放置した後の衛生紙を複数枚積み重ね、この積み重ねた衛生紙に水が浸透する前記衛生紙の枚数が20枚以下である、請求項1〜5のいずれか1項記載の水解性衛生紙。
【請求項7】
少なくとも一方の外層に柔軟剤が添加されている請求項1〜6のいずれか1項記載の水解性衛生紙。
【請求項8】
外層以外のいずれかの層に、一過性湿潤紙力剤および/またはカチオン澱粉が添加されている、請求項1〜7のいずれか1項記載の水解性衛生紙。
【請求項9】
ラミネートエンボス加工がなされている請求項1〜8のいずれか1項記載の水解性衛生紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−75523(P2007−75523A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270797(P2005−270797)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】