説明

水質改善方法およびその装置

【課題】簡単かつ効果的に貧酸素水塊を解消することができる水質改善方法およびその装置を提供するものである。
【解決手段】本願発明の水質改善方法は、水底に窪地26が形成された水域における成層化された水の密度の鉛直分布36を測定し、該鉛直分布36に基づいて、窪地26内において水平流33が発生するための吸込口3の最適深度を決定し、該最適深度に吸込口3を設置してここから吸い込んだ密度の小さな水を放出手段により放出口4から窪地26内に放出し、該放出された密度の小さな水が窪地26内における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れて窪地の内壁に沿うことにより循環流35を形成することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水質改善方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底に窪地が形成された水域は、窪地の底部と海面に近い上部との海水交換が行われにくいため成層化し易くなっている。この成層化は太陽の照射熱などによる加温により表層水の密度が減少し、中層水および底層水との間に生じる温度差による密度勾配、またはこの温度成層に伴って生じる溶存酸素量の差によって引き起こされている。この窪地などにおける底層水は、日射が届かないため温度が低くて密度が大きく、かつ植物性プランクトンの光合成が停止して酸素の放出が行われないため溶存酸素量がほとんどない貧酸素水塊となっている。この底層の貧酸素水塊が様々な原因によって表層近くまで湧昇すると青潮になるという問題があった。
【0003】
そこで、この青潮の原因となる貧酸素水塊を解消するために、曝気装置によって貧酸素水塊の溶存酸素濃度を高める方法、窪地内の貧酸素水塊を吸い上げて周辺水と入れ替える方法、溶存酸素濃度の高い表層水および中層水を窪地内の貧酸素水塊に送り込む方法などが考えられている。また、その他の方法としては、例えば特開2002−66593号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2002−66593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の曝気装置によって溶存酸素濃度を高める方法は、人工的に大量の酸素供給を行う必要がある他、気泡を含んだ比重の軽い海水は窪地内から出て行ってしまうという問題があった。また周辺水と入れ替える方法は、入れ替える水が底層付近の溶存酸素濃度の低いものに限られるため、貧酸素状態を解消することができなかった。さらに表層水などを窪地内に送り込む方法は、図14に示すように、密度の小さな表層水43が窪地44内に送り込まれると周辺水との混合により密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度になった時点で水平方向に流れて、ほとんどが窪地44内から出て行く代わりに、窪地上端と同程度の周辺水45が送り込まれるため、貧酸素状態を解消することができなかった。
【0005】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単かつ効果的に貧酸素水塊を解消することができる水質改善方法およびその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の水質改善方法は、水底に窪地が形成された水域における成層化された水の密度の鉛直分布を測定し、該鉛直分布に基づいて、窪地内において水平流が発生するための吸込口の最適深度を決定し、該最適深度に吸込口を設置してここから吸い込んだ密度の小さな水を放出手段によって放出口から窪地内に放出し、該放出された密度の小さな水が窪地内における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れて窪地の内壁に沿うことにより循環流を形成することを特徴とする。また密度の鉛直分布は超音波音速計を上下動させて測定することを含む。また吸込口に超音波音速計が設置されたことを含む。また吸込口の最適深度は流向流速計で循環流の形成を確認しつつ決定することを含むものである。
【0007】
本願発明の水質改善方法は成層化された水域をフェンスで囲んで閉鎖域を形成し、該閉鎖域において測定した水の密度の鉛直分布に基づいて、閉鎖域の底層において水平流が発生するための吸込口の最適深度を決定し、該最適深度に吸込口を設置してここから吸い込んだ密度の小さな水を放出手段により放出口から底層に放出し、該放出された密度の小さな水が底層における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れて閉鎖域のフェンスに沿うことにより循環流を形成することを特徴とする。また密度の鉛直分布は超音波音速計を上下動させて測定することを含む。また吸込口に超音波音速計が設置されたことを含む。また吸込口の最適深度は流向流速計で循環流の形成を確認しつつ決定することを含むものである。
【0008】
また水質改善装置は、成層化された水域における密度の鉛直分布に基づいて決定された底層において水平流が発生する深度に設置される上下動自在な吸込口と、該吸込口から装置本体内に吸い込んだ水を底層に放出する放出口と、装置本体内に設置されて吸込口から水を吸い込むとともに、この吸い込んだ水を放出口から底層に放出する吸引放出手段とからなることを特徴とする。また吸込口は蛇腹管または伸縮管で形成されたことを含む。また吸込口は上下方向に複数設置されたバルブであり、これらが電気信号によって自動開閉することを含む。また吸込口に超音波音速計が設置されたことを含む。また装置本体に流向流速計が設置されたことを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
密度の鉛直分布に基づいて、下層において水平流が発生するための吸込口の最適深度が決定できるので、ここから吸い込んだ水を放出口から底層に放出して、窪地内において循環流を形成することにより、貧酸素状態を解消することができる。また水底に窪地が形成されていない、成層化された水域をフェンスで囲んで閉鎖域を形成し、該閉鎖域において測定した水の密度の鉛直分布に基づいて、閉鎖域の底層において水平流が発生するための吸込口の最適深度が決定できるので、ここから吸い込んだ水を放出口から底層に放出して、閉鎖域において循環流を形成することにより、貧酸素状態を解消することができる。また音速と密度との関係に着目して超音波音速計を上下動することにより、成層化された水域の密度の鉛直分布を正確かつ簡単に測定することができる。また超音波音速計を吸引口に設けたことにより、成層化された水域の密度の鉛直分布を正確に測定しながら、下層において水平流が発生する深度に吸込口を設置することができる。また流向流速計で循環流の形成を確認しつつ、吸込口を設置するため、正確な深度に設置することができる。また吸引口を自由に上下動させることができるので、下層において水平流が発生する深度に設置することができ、循環流を確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の水質改善方法および水質改善装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。はじめに水質改善装置の実施の形態について説明し、その後に水質改善装置を使用した水質改善方法の実施の形態について説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0011】
図1は第1の実施の形態の水質改善装置1であり、この水質改善装置1は筒状の装置本体2と、この装置本体2の上部に設けられた吸込口3と、装置本体2の下部に設けられた放出口4と、上記吸込口3から装置本体2内に水を吸い込み、これを放出口4から装置本体2外に放出する吸込放出手段5と、装置本体2を海底6に固定するアンカー7とからなり、該アンカー7がテンドン8で水面上のフロート9に接続されている。
【0012】
装置本体2の上部における吸込口3は蛇腹管10であり、フロート9に設置されたウインチ11からのワイヤー12が接続され、このワイヤー12によって上下に伸び縮みして上下方向の任意の位置に設置され、密度の異なる水を吸い込みできるようになっている。この蛇腹管10の上部には、成層化された水の密度の鉛直分布を測定する超音波音速計13が設置され、これがフロート9のコントローラ14と電気的に接続されており、このコントローラ14にはウインチ11も電気的に接続されている。
【0013】
したがって、超音波音速計13によって成層化された水の密度の鉛直分布が測定されると、これに基づくウインチ11の駆動により蛇腹管10が伸び縮みして吸込口3を最適深度、すなわち循環流を発生させるための深度に設置することができるようになっている。
【0014】
一方、装置本体2の下部に設置された放出口4はラッパ状になっており、その上部にインペラ15と水中モータ16とからなる吸込放出手段5が設置され、この吸込放出手段5もコントローラ14と電気的に接続されている。したがって、水中モータ16によるインペラ15の高速回転によって吸込口3から装置本体2内に水が吸い込まれ、これが放出口4から装置本体2外へ放出される。
【0015】
また装置本体2は下部の連結チェーン17によってアンカー7に接続されて海底6に安定的に設置され、このアンカー7にテンドン8でフロート9が連結されている。このようにフロート9と装置本体2とがアンカー7で固定され、吸込口3のみが蛇腹管10によって上下動するようになっている。このフロート9または装置本体2には、深度ごとの水の流れの方向を確認する流向流速計18が設置され、これによって循環流が形成されているか否かの確認をしながら蛇腹管10を伸び縮みさせて吸込口3が最適深度に設定できるようにしている。
【0016】
したがって、超音波音速計13によって測定された密度の鉛直分布に基づいて吸込口3を最適深度に設置することができるとともに、この最適深度に設置した後も流向流速計18によって循環流が形成されているか否かの確認をしながら吸込口3を移動させて設置位置の修正を行うことができる。
【0017】
また図2は第2の実施の形態の水質改善装置20であり、この水質改善装置20は蛇腹管10が、釣り竿または望遠鏡のように上下に伸び縮みする伸縮管21に代わった以外は第1の実施の形態の水質改善装置1と同じ構成である。この伸縮管21もウインチ11からのワイヤー12が接続され、このワイヤー12によって伸び縮みすることにより、吸込口3が上下方向の任意の位置に設置できるようになっている。
【0018】
また図3は第3の実施の形態の水質改善装置22であり、この水質改善装置22も蛇腹管10が、複数の電磁バルブ23が上下方向に設置された長尺管24に代わったものであり、これ以外は第1の実施の形態の水質改善装置1と同じ構成である。この電磁バルブ23もコントローラ14に電気的に接続されるとともに、ウインチ11のワイヤー12も接続され、超音波音速計13によって測定された密度の鉛直分布に基づいて個別に開閉されて、吸込口3が任意の位置に移動できるようになっている。
【0019】
次に、これらの水質改善装置1、20、22を使用した水質改善方法について説明する。
図4〜図6は第1の実施の形態の水質改善方法であり、水質改善装置1を使用している。これは海底6に大きな窪地26ができたことにより表層(密度が小さくて溶存酸素濃度が高い)27、中層(表層より密度が大きく溶存酸素濃度が低い)28、底層(密度が大きく貧酸素状態)29に成層化された海域が対象であり、窪地26内の貧酸素水塊を改善するものである。この改善方法は表層水30または中層水31を窪地26内の貧酸素水塊に取り込んで循環させることにより、貧酸素状態を解消しようとするものである。
【0020】
これは溶存酸素濃度が高くかつ密度の小さな表層水30または中層水31が密度の大きな底層水32に投入されると、この密度の小さな水30が密度の大きな水32と混合して密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れ、この水平流33を窪地26内で発生させて内壁34に沿わせることにより循環流35を形成しようとするものである。
【0021】
この循環流35を形成するには、吸込口3を最適深度、すなわち水平流33が窪地26内で発生する深度(目標深度)に正確に設置する必要があり、吸込口3を最適深度に正確に設置すると、図4に示すように、上記の方法によって窪地26内において循環流35が発生する。本発明は吸込口3を最適深度に正確に設置する方法を開発したものであり、超音波音速計13を使用した方法を図5の(1)のフローに基づいて説明する。
【0022】
はじめに、成層化された海域で超音波音速計13を上下動させて密度の鉛直分布36を測定する。この測定は、図5の(2)に示すように、超音波音速計13を単独で上下動させて行うこともできるが、図6に示すように、吸込口3に設置した超音波音速計13で行うこともできる。
【0023】
そして、この吸込口3の超音波音速計13で密度の鉛直分布36を所定時間間隔ごとに測定すると、この測定結果をコントローラ14で受信し、これに基づいて密度流シミュレーションを行って暫定的な最適深度を決定するか、密度の鉛直分布の測定結果により、簡便なアルゴリズムをコントローラ14に組み込み、以下の関係を満たす深度−hを決定し、これを暫定的な最適深度とする。
【0024】
そして、図6に示すように、この信号をウインチ11に送信すると、蛇腹管10を伸び縮みさせて表層27または中層28に吸引口3を設置して取水する。この取水は初期状態としての取水であり、その後流速計により循環流の実測を行いながら取水深度の修正をして真の最適深度を決定して、ここに吸引口3を設置する。この吸引口3の設置された箇所は、図4に示すように、窪地26内の目標深度で水平流33が発生して循環流35を形成する深度になる。
[式1]

【0025】
ここに、ρは海水の密度、zは水深方向の深さ、−hは目標深度(水平流を発生させたい深度)、−hoは放水深度、−hは最適深度(この深度で取水すると目標深度で水平流が発生する)、αは単位深度上昇する際に連行される周辺水の割合である。
【0026】
なお、このようなシュミレーションや簡便なアルゴリズム解析を行わないで、流速計による循環流の実測のみにより、取水口を上下させ、修正しながら最適深度を決定することもできる(流速フィードバック方式)。
【0027】
このように吸引口3が最適深度に設置されると、その信号がコントローラ14に送信されて水中モータ16のインペラ15を高速回転させる。そして、このインペラ15の高速回転により吸引口3から表層水30または中層水31が装置本体2内に吸い込まれて放出口4から窪地26内の底層29に放出される。
【0028】
この表層水30または中層水31は溶存酸素濃度が高く密度の小さな水であるため、窪地26内の密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、窪地26の上部において自らの密度と同程度の密度の層に達した時点(目標深度)で水平方向に流れる。このような水の上昇に伴って窪地26の下部には周辺水が流れ込むため、水平流33が窪地26の内壁34に沿って下流して循環流35を形成し、これによって窪地26内の貧酸素水塊が改善される。
【0029】
また図7および図8は超音波音速計13と流向流速計18とを組み合わせた方法を示したものである。この方法は密度の鉛直分布36に基づいて吸引口3を設置する最適深度を決定し、その最適深度に水質改善装置の吸引口3を設置し、この吸引口3から水を吸引して放出口4から窪地26内の底層29に放出するまでは、上記の方法と同じであるが、流向流速計18によって吸込口3の設置深度の補正を行うところが異なっている。
【0030】
すなわち流向流速計18によって水の流れる方向を計測して、循環流35の有無を確認しながら吸込口3を上下動させて最適深度の修正を行うものである。例えば、吸込口3の最適深度が深すぎて循環流35が形成されない場合は、吸込口3を上側に移動させて循環流35が形成されたか否かを確認し、この確認ができるまでこの動作を繰り返す。
【0031】
これとは反対に、吸込口3の最適深度が浅すぎるために循環流35が形成されない場合は、吸込口3を下側に移動させて循環流35が形成されたか否かを確認し、この確認ができるまでこの動作を繰り返す。このように流向流速計18によって循環流35の形成の有無を確認しながら吸込口3の最適深度の修正を行うものである。
【0032】
また図9および図10は、超音波音速計13を使用せずに、流向流速計18のみを使用した方法を示したものである。これは、まず水質改善装置1の吸引口3を所定の深度に設置し、ここから水を吸引して放出口4から窪地内の底層29に放出する。そして、この放出した水の流れを流向流速計18で計測して循環流35の形成の有無を確認する。例えば、吸込口3の最適深度が浅すぎて循環流35が形成されない場合は、吸込口3を下側に移動させて循環流35が形成されたか否かを確認し、この確認ができるまでこの動作を繰り返す。このように吸込口3を表層27から中層28にかけて下げつつ、流向流速計18で循環流35の形成の有無を確認しながら最適深度を決定する。
【0033】
また図11は第2の実施の形態の水質改善装置20を使用したものであり、上記の方法とほとんど同じである。これは蛇腹管10の吸込口3と伸縮管21の吸込口3とがほとんど同じ構成であるから、上記と同じ方法で循環流35を形成して水質改善を図るものである。
【0034】
また図12は第3の実施の形態の水質改善装置22を使用したものであり、吸込口3が電磁バルブ23になったものである。これは吸込口3の移動ではなく、コントローラ14からの信号で電磁バルブ23を個々に開閉して吸込口3の最適深度を変えるものである。
【0035】
この水質改善装置22において超音波音速計13を使用する方法は、上記と同じ方法で測定した密度の鉛直分布36に基づいて最適深度を決定し、ここに位置する電磁バルブ23を開くものであり、この深度に位置する電磁バルブ23がない場合はウインチ11で水質改善装置22自体を上下動させる。
【0036】
また水質改善装置22において超音波音速計13と流向流速計18とを使用する方法は、上記の方法と同じように、流向流速計18によって循環流35の形成の有無を確認しつつ電磁バルブ23の開放位置を変えるものである。例えば、一番上の電磁バルブ23の開放では循環流35の形成の有無が確認できない場合は、この電磁バルブ23を閉じて中間の電磁バルブ23を開いて循環流35の形成の有無を確認するものである。
【0037】
さらに水質改善装置22において流向流速計18のみを使用する方法は、一番上の電磁バルブ23を開いて循環流35の形成の有無を流向流速計18で確認しつつ、最適深度の電磁バルブ23を探すものである。例えば、一番上の電磁バルブ23の深度が浅すぎて循環流35が形成されない場合は、これを閉じて中間の電磁バルブ23を開いて循環流35の形成の有無を確認し、この確認ができるまでこの動作を繰り返す。このよう電磁バルブ23を上から順に開閉して流向流速計18で循環流35の形成の有無を確認しながら最適深度を決定するものであり、上記と同じ方法である。
【0038】
また図13は第2の実施の形態の水質改善方法であり、湾などの閉鎖性海域37が対象になっている。このような閉鎖性海域37は外海水との海水交換が行われ難いため成層化しており、底層29における貧酸素状態を改善するものであり、超音波音速計13を使用した方法により説明する。
【0039】
これは、まず成層化した閉鎖性海域37にフェンス38を平面円形に設置して閉鎖域39を形成する。このフェンス38は船40が航行できる深さに設置され、上部に設置されたフロート41と、下部に設置されたアンカー42とで垂直状に張られている。そして、このようなフェンス38で囲まれた閉鎖域39の中に第1の実施の形態の水質浄化装置1を設置し、これにより底層29に循環流35を形成して貧酸素水塊を解消するものである。
【0040】
これは、上記と同じように、超音波音速計13で成層化された閉鎖域39の密度の鉛直分布36を測定し、この測定結果に基づいて決定した深度に水質浄化装置1の吸引口3を設置する。この吸引口3の設置された箇所は底層29の目標深度において循環流35を形成するための最適深度である。
【0041】
そして、この最適深度に設置された吸引口3から装置本体2内に表層水30または中層水31を吸い込み、これを放出口3から閉鎖域39の底層29に放出する。この表層水30または中層水31は、溶存酸素濃度が高く密度が小さな水であるため、底層における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、フェンス38の上部において自らの密度と同程度の密度の層に達した時点(目標深度)で水平方向に流れる。そして、このような水の上昇に伴ってフェンス38の下部には周辺水が流れ込むため、上記の水平流33はフェンス38に沿って下流して循環流35が形成され、これによってフェンス38で囲まれた閉鎖域39の貧酸素水塊が改善される。
【0042】
この方法においては、超音波音速計13と流向流速計18とを使用する方法、流向流速計18のみを使用する方法も上記と同じであり、さらに、第2および第3の実施の形態の水質浄化装置20、22を使用する方法も上記と同じ方法である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
なお、上記の実施の形態は海を対象にして説明したが、これは海に限定されず、水が停滞して移動の少ない湖沼やダムなどもにも適用されるものである。
【0044】
【図1】第1の実施の形態の水質浄化装置の正面図である。
【図2】第2の実施の形態の水質浄化装置の正面図である。
【図3】第3の実施の形態の水質浄化装置の正面図である。
【図4】水質浄化方法の原理を示した図である。
【図5】第1の実施の形態の水質浄化方法であり、(1)は超音波音速計を使用した水質浄化方法のフロー、(2)は水の密度の鉛直分布図である。
【図6】第1の実施の形態の水質浄化装置を使用した水質浄化方法の正面図である。
【図7】超音波音速計と流向流速計とを使用した水質浄化方法のフロー図である。
【図8】第1の実施の形態の水質浄化装置を使用した水質浄化方法の正面図である。
【図9】流向流速計のみを使用した水質浄化方法のフロー図である。
【図10】第1の実施の形態の水質浄化装置を使用した水質浄化方法の正面図である。
【図11】第2の実施の形態の水質浄化装置を使用した水質浄化方法の正面図である。
【図12】第3の実施の形態の水質浄化装置を使用した水質浄化方法の正面図である。
【図13】第2の実施の形態の水質浄化方法であり、(1)は断面図、(2)は斜視図である。
【図14】従来の水質浄化装置の方法の原理を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1、20、22 水質改善装置
2 装置本体
3 吸込口
4 放出口
5 吸込放出手段
6 海底
7、42 アンカー
8 テンドン
9、41 フロート
10 蛇腹管
11 ウインチ
12 ワイヤー
13 超音波音速計
14 コントローラー
15 インペラ
16 水中モータ
17 連結チェーン
18 流向流速計
21 伸縮管
23 電磁バルブ
24 長尺管
26、44 窪地
27 表層
28 中層
29 底層
30、43 表層水
31 中層水
32 底層水
33 水平流
34 内壁
35 循環流
36 密度の鉛直分布
37 閉鎖性海域
38 フェンス
39 閉鎖域
40 船
45 周辺水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に窪地が形成された水域における成層化された水の密度の鉛直分布を測定し、該鉛直分布に基づいて、窪地内において水平流が発生するための吸込口の最適深度を決定し、該最適深度に吸込口を設置してここから吸い込んだ密度の小さな水を放出手段によって放出口から窪地内に放出し、該放出された密度の小さな水が窪地内における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れて窪地の内壁に沿うことにより循環流を形成することを特徴とする水質改善方法。
【請求項2】
成層化された水域をフェンスで囲んで閉鎖域を形成し、該閉鎖域において測定した水の密度の鉛直分布に基づいて、閉鎖域の底層において水平流が発生するための吸込口の最適深度を決定し、該最適深度に吸込口を設置してここから吸い込んだ密度の小さな水を放出手段によって放出口から底層に放出し、該放出された密度の小さな水が底層における密度の大きな水と混合することにより密度を増加させつつ上昇し、自らの密度と同程度の密度の層に達した時に水平方向に流れて閉鎖域のフェンスに沿うことにより循環流を形成することを特徴とする水質改善方法。
【請求項3】
密度の鉛直分布は超音波音速計を上下動させて測定することを特徴とする請求項1または2に記載の水質改善方法。
【請求項4】
吸込口に超音波音速計が設置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の水質改善方法。
【請求項5】
吸込口の最適深度は流向流速計で循環流の形成を確認しつつ決定することを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載の水質改善方法。
【請求項6】
成層化された水域における密度の鉛直分布に基づいて決定された底層において水平流が発生する深度に設置される上下動自在な吸込口と、該吸込口から装置本体内に吸い込んだ水を底層に放出する放出口と、装置本体内に設置されて吸込口から水を吸い込むとともに、この吸い込んだ水を放出口から底層に放出する吸引放出手段とからなることを特徴とする水質改善装置。
【請求項7】
吸込口は蛇腹管または伸縮管で形成されたことを特徴とする請求項6に記載の水質改善装置。
【請求項8】
吸込口は上下方向に複数設置されたバルブであり、これらが電気信号によって自動開閉することを特徴とする請求項6に記載の水質改善装置。
【請求項9】
吸込口に超音波音速計が設置されたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の水質改善装置。
【請求項10】
装置本体に流向流速計が設置されたことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の水質改善装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−196108(P2007−196108A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16246(P2006−16246)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】