説明

氷の蓄積を防ぐ防氷システムおよび方法

防氷システム(200)が、複合層(214)を含む複合構造を有する構成部品表面(202)を含み、複合層(214)の内部に形成されている少なくとも1つの発熱体(220)を補助し、発熱体(220)は、構成部品表面(202)へ熱伝達するように構成されている。防氷システム(200)は、構成部品表面(202)に隣接して配置されている絶縁要素をさらに含み、絶縁要素は、熱伝達中の熱損失を実質的に防止するのを助けるように構成されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、全般的に、航空機の防氷システムに関し、さらに具体的には、前縁表面上の凍結の蓄積を電気的に防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、通常、吸気口と、ファンと、低圧圧縮機および高圧圧縮機と、燃焼器と、少なくとも1つのタービンとを含む。圧縮機は空気を圧縮し、その空気は燃焼器に経路を通して送られ、そこで燃料と混合される。その混合物は、次いで、高温燃焼ガスを生成するために点火される。燃焼ガスは、タービン(単数または複数)へ経路を通して送られ、タービンは、圧縮機(単数または複数)に動力を供給するために、かつ有効な仕事を生み出して飛行中に航空機を推進させるかまたは発電機などの電気機器に電力を供給するために、燃焼ガスからエネルギーを抽出する。
【0003】
飛行中および/または地上にある間、航空機は、翼、安定板(水平尾翼と垂直尾翼のこと)、方向舵、補助翼、エンジン吸気口、プロペラ、ロータ、胴体等を含む航空機構造のエーロフォイルまたは他の表面上に氷の形成を引き起こす大気条件に遭遇することがある。蓄積氷(accumulating ice)は、除去されないと、航空機に過大な重量を加え、エーロフォイルの形状を変えて、望ましくないかつ/または危険な飛行状態を生じさせる可能性がある。さらに具体的には、エンジンが長時間にわたって氷結条件内で低出力で作動している場合、エンジン内、および露出したエンジン構造の上で、氷の蓄積が著しいものとなる可能性がある。時間の経過につれて、エンジンの継続的作動、低出力作動から高出力作動へのスロットルバースト、および/または乱流もしくは着氷の非対称性に起因する振動により、蓄積した凍結が、高圧圧縮機によって吸い込まれる可能性がある。氷の剥離として既知のそのような状態により、圧縮機吐出温度が急激に低下する可能性がある。圧縮機吐出温度の急激な低下に応答して、高圧圧縮機の後段では修正コア速度が上昇する。この後段修正コア速度の急激な上昇は、コンプレッサストールマージンに悪影響を及ぼす可能性がある。場合によっては、この後段修正コア速度の急激な上昇は、エンジンの発火を引き起こす可能性もある。
【0004】
エンジン内、およびエンジンに隣接する露出表面の上での氷の蓄積を防止するのを助けるために、少なくともいくつかの既知のエンジンは、ガスタービンエンジン支柱上の凍結を低減する除氷システムを含む。いくつかの既知の除氷システムは、空気圧ブーツを使用して、氷を機械的に除去する。そのようなシステムでは、航空機の前縁ゾーンまたは翼または支柱構成部品が、空気などの加圧流体で膨張可能な複数の拡張可能カフで覆われている。膨張時、カフが拡張し、蓄積氷を破壊し、その氷は、次いで、空気流中に分散される。民間航空機およびいくつかの軽量双発航空機または小型ジェット航空機に空気圧ブーツが使用されているが、空気圧縮機および真空システムを必要とするそのシステムは、高価であり、軽量航空機に相当な重量を加える。類似の機械システムは、エーロフォイル表面に取付け可能な、エラストマー製または金属製のクラッドブーツ(clad boot)の内部に配置されている複数の並列した電気反発要素(electro−expulsive element)を使用する。電気インパルスが印加されたとき、その力により、1つの要素をその他の要素から分離する衝撃分離(impulse separation)がもたらされ、この衝撃分離は、薄い着氷を機械的に振り払うのに十分なものである。これら機械システムの各々では、ブーツの動作が翼のエーロフォイル特性に影響を及ぼすため、着陸中または離陸中にブーツを動作させることができない。現在の機械的氷除去システムの重量増加と費用という欠点に加えて、これらシステムの各々は、凍結の程度に目視で注意し、最大限の効果を得るために注意深く始動のタイミングを計ることを要する。さらに、これらシステムはいずれも、防氷システムとしての使用(すなわち、氷の形成を防止すること)に適さない。
【0005】
航空機表面の除氷および/または防氷のための別の一般的な手法には、氷の蓄積に関連する接着力を低減する、かつ/または表面上に集まる水の氷点を下げる、例えばアルコールなどの化学薬品の適用が含まれる。そのようなシステムは、航空機が地上にある間、または飛行中に使用することができる。1つのそのようなシステムは、取り付けられたチタンカフの複数の孔からアルコールを滴下することにより、プロペラおよびロータブレードを含むエーロフォイル表面の前縁上の凍結を防止する。そのような搭載型の化学薬品システムは、動作させるのにコストがかかり、飛行中には化学薬品の有限の供給に依拠する可能性がある。
【0006】
いくつかの既知の防氷システムまたは除氷システムは、氷を熱によって除去すること、または氷の形成を防止することを含む。1つの既知のシステムは、抽気または高温空気をタービン段の1つから迂回させて、エーロフォイル前縁を加熱する。他の既知の熱システムは、航空機の前縁に、またはプロペラもしくはロータブレードに接着された加温パッドに含まれるもの、あるいは航空機の構造部材内に組み込まれるものなど、導電性抵抗発熱体を使用する。この種の加温パッドは、一般に、絶縁性の2つの層の間に挟まれている導電層全体にわたって分散された電線または他の金属発熱体と接触する導電性材料を含む。発熱体のための電気エネルギーは、航空機エンジンの1つまたは複数により駆動される発電源から得られる。電気エネルギーは、継続的に供給されて氷の形成を防止するのに十分な熱を供給するか、または断続的に供給されて蓄積氷を緩める。しかし、そのようなシステムは、通常の航空機速度でエーロフォイル表面の温度を氷点より上に上昇させるかつ/または維持するのに十分なワット数が利用可能である場合にのみ、使用可能である。
【0007】
そのような熱システムのための動作温度を達成するために、電線加温パッド式の防氷システムまたは除氷システムに電力を供給するのに必要な電源は、抵抗加温パッド要素が非効率であるためにかなり大きく、民間航空機用の防氷システムまたは除氷システムとしての適切な代替案ではない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/087589号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様が、複合層を含む複合構造を有する構成部品表面と、複合層の内部に形成されている少なくとも1つの発熱体とを含む防氷システムに関し、発熱体は、構成部品表面へ熱を伝達するように構成されている。
【0010】
別の態様が、少なくとも1つの複合層を有する複合構造を含む空気力学的表面と、複合層の内部に形成されている少なくとも1つの発熱体を有する防氷システムとに関し、発熱体は、空気力学的表面へ熱を伝達するように構成されている。
【0011】
別の態様が、空気力学的表面上の氷の蓄積を実質的に防止する方法に関する。本方法は、少なくとも1つの複合層を含む複合構造を作製するステップと、複合層の内部に少なくとも1つの発熱体を形成するステップと、発熱体を構成して空気力学的表面へ熱を伝達するステップとを含む。
【0012】
本発明の前述の態様に関連して示されている特徴に関して、種々の改良が存在する。また、同様に、付加的な特徴が、本発明の前述の態様に組み込まれている場合もある。これらの改良および付加的な特徴は、個々にまたは任意の組合せで存在してもよい。例えば、本発明の図示の実施形態のいずれかに関連して以下で検討されている種々の特徴が、単独でまたは任意の組合せで、本発明の前述の態様のいずれかに組み込まれてもよい。
【0013】
非限定的かつ非網羅的な実施形態が、別途指定されていない限り、様々な図を通じて類似の参照番号が類似の部分を指す以下の図を参照して記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】例示的ガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】図1に示されているガスタービンエンジンの吸気口部分の斜視図である。
【図3】例示的防氷システムを含む吸気口カウル108の内部の図である。
【図4】例示的防氷システムを含む、図3に示されている外表皮の部分の分解図である。
【図5】図1に示されているエンジンに使用することができる例示的防氷システムの代替的構成の図である。
【図6】図1に示されているエンジンに使用することができる例示的防氷システムの代替的構成の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、タービンエンジン10の部分の横断面図である。本例示的実施形態では、タービンエンジン10は、長手方向中心線軸32を中心に回転可能に結合されているファン組立体16を含む。本例示的実施形態では、ファン組立体16は、タービンエンジン10の前端部33に配置されている。代替的実施形態では、ファン組立体16は、タービンエンジン10の後端部35に配置されている。ファン組立体16は、ナセル組立体12の内部に配置されている複数列のファンブレード19を含む。一実施形態では、ナセル組立体12は、タービンエンジン10の種々の動作構成部品(図示せず)を収容している。
【0016】
本例示的実施形態では、タービンエンジン10はまた、ファン組立体16の下流に配置されているコアエンジン17を含む。コアエンジン17は、圧縮機18と、燃焼器20と、コアロータシャフト26を介して圧縮機18に連結されているタービン22とを含む。
【0017】
作動中、コアエンジン17は、シャフト28を介してファン組立体16に動力を供給するためにガスからエネルギーを抽出するタービン24まで下流に経路を通して送られる燃焼ガスを生成する。
【0018】
図2は、図1に示されているガスタービンエンジン10の吸気口部分100の斜視図である。吸気口部分100の前部102が、外側壁110と内側壁112とを含む略筒状の軸方向に延在している吸気口カウル108の内部に包囲されている、吸気ガイドベーン組立体104とノーズコーン106とを含む。内側壁112は、ガイドベーン組立体104を通ってエンジン圧縮機22(図1に示されている)内に入るエンジン流入空気を方向付ける吸気口ダクト114を形成している。
【0019】
氷結条件下での飛行動作および/または着陸動作中、壁110および112の前縁表面116上に氷ができる傾向がある。氷は、カウル108とノーズコーン106との間の、吸気口ダクト114の形状(すなわち領域)を変え、それにより、流入空気の必要量および流路に悪影響を及ぼす。さらに、氷片が剥離して、内部および外部の下流のエンジン構成部品に損傷を生じさせる可能性がある。
【0020】
図3は、例示的防氷システム200を含む吸気口カウル108の内部の図である。本例示的実施形態では、吸気口カウル108は、空気力学的衝撃荷重中に構造補強をもたらしかつ構造修復のための基礎を提供する発泡要素204を実質的に包囲している外表皮202を含む。さらに具体的には、本例示的実施形態では、発泡要素204は、表皮202の内面206に接着されている。あるいは、発泡要素204は、防氷システム202が本明細書に記載されているように機能することを可能にする任意の方法により、表皮202の内面206に接着されてもよい。本例示的実施形態では、発泡要素204は、本明細書により詳細に記載されている通り、表皮202に絶縁をもたらして、実質的に効率的かつ効果的な熱流が吸気口部分100の前縁を通過することを可能にする。本例示的実施形態では、表皮202は、本明細書により詳細に記載されている通り、積層複合構造である。防氷システム200は、発熱体の温度を上昇させることができる発熱体(図3に図示せず)に電気的に接続されている電源208を含み、電源208は、吸気口カウル108に隣接して配置されている。あるいは、電源208は、防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することを可能にする任意の位置に配置されてもよい。
【0021】
図4は、例示的防氷システム200を含む図3に示されている外表皮202の部分の分解図である。本例示的実施形態では、外表皮202は、編まれた炭素繊維材料210と熱可塑性樹脂212とを含む層状複合マトリックスである。あるいは、複合マトリックスは、黒鉛織物を含むことも、熱硬化樹脂を含むこともできる。複数の複合層214が図4に示されているが、外表皮202は、防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することを可能にする単一複合材料層または任意の数の複合材料層を含むことができる。
【0022】
本例示的実施形態では、防氷システム200は、炭素繊維材料214内に編み込まれた発熱体220を含む。本例示的実施形態では、発熱体220は、電源208(図3に示されている)にそれぞれ電気的に接続されておりかつ編まれたマトリックス210の内部に略均一な配置で延在している複数の導線222を含む。導線222は、編まれたマトリックス織物の内部に略均一に離間されており、本例示的実施形態では、エンジンカウル前縁116(図2に示されている)の周囲に円周方向に配置されている。あるいは、導線は、エンジンカウル108の内部に軸方向に配置されてもよく、または防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することができる任意の構成で配置されてもよい。
【0023】
作業中、発熱体/マトリックス層の組合せ210および220が、使用するために組み立てられたとき、単一複合構造が形成される。さらに具体的には、発熱体220は、氷結条件中に外表皮202に熱を伝達する。そのような構造は、発熱体を吸気口表面に保持するのに必要な固定要素を無くすことにより、部品点数を減少させ、氷結条件下で氷結する傾向がある吸気口部分表面の内側から伝導熱を供給することにより、吸気口部分の内部での熱伝達に関連する効率レベルを最大にする。あるいは、発熱体220は、例えば編まれてかつ/または組にまとめられて、防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することを可能にする任意の離間構成で、編まれたマトリックス210の内部に分配されてもよい。あるいは、発熱体220は、本明細書にさらに詳細に記載されている通り、糸、リボン、複数の導電性粒子、導電性インク、および/または導電性ナノチューブなどの、任意の導電性構成部品であってもよい。代替的実施形態では、図4に示されている通り、発熱体230が、隣接する編まれたマトリックス層234と236との間に分配されてもよい複数の導線232を含む。
【0024】
図5は、図1に示されているエンジン10に使用される例示的防氷システム200の代替的構成である。本明細書に記載されている通り、吸気口カウル108は、本明細書に記載されている外表皮202の内面206に結合されている発泡要素204を含む。図5を具体的に参照すると、本例示的実施形態では、外表皮202は、3次元の編まれた炭素繊維マトリックス250であり、炭素繊維マトリックス250の内部に形成されている発熱体252を含む。さらに具体的には、発熱体252はマトリックス250内に編み込まれているが、あるいは、発熱体252はその中で巻回されてもよい。作業中、発熱体/マトリックス層の組合せ250および252が、使用するために組み立てられたとき、単一複合構造が形成される。本例示的実施形態では、発熱体252は、3次元マトリックス252の内部に略均一な配置で延在している導線254を含む。あるいは、本明細書にさらに詳細に記載されている通り、発熱体252は、糸、リボン、複数の導電性粒子、導電性インク、および/または導電性ナノチューブであってもよい。そのような構造は、図4に示されている複数の複合マトリックス層の使用を排除する。しかし、防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することを可能にする、複数の3次元の編まれた層または任意の数の3次元の複合層が使用されてもよい。
【0025】
図6は、図1に示されているエンジン10に使用される例示的防氷システム200のための代替的構成の斜視図である。本明細書に記載されている通り、吸気口カウル108は、本明細書に記載されている外表皮202の内面206に結合されている発泡要素204を含む。図6を具体的に参照すると、本例示的実施形態では、外表皮202は、図4に示されている層状複合材料であっても、図5に示されている3次元の編まれた炭素繊維マトリックスであってもよく、本明細書に記載されている炭素繊維層の内部に形成されている発熱体260を含む。さらに具体的には、発熱体260は、マトリックス内部に編み込まれている複数の導線262を含むが、あるいは、発熱体は、防氷システム200が本明細書に記載されているように機能することができるように、その中で巻回され、かつ/または変位されてもよい。
【0026】
本例示的実施形態では、導線262が作製中に実質的に支障を来たさないように、すなわち音響孔264の作製中に壊れないように、マトリックス/発熱体の組合せは、形成されている複数の音響孔264を含む。そのような構造により、例えば図2に示されているエンジンカウル前縁116の直後部などの、そのような構造が騒音を低減するのにもまた有益な航空機表面の防氷が可能になる。
【0027】
代替的実施形態では、防氷システム200が、任意の航空機前縁表面上で使用されてもよい。さらに具体的には、例えば図4に示されている発熱体220などの発熱体が、例えば翼前縁、スラット、フラップもしくは他の操縦舵面、尾翼前縁、および/またはエンジンカウル前縁など、氷結条件中に氷結する傾向がある任意の航空機表面の内部で巻回されても、編み込まれても、かつ/または他の方法で形成されてもよい。
【0028】
図2〜図6を参照すると、動作中、電源208は、複合前縁表面の積層構造の内部に埋め込まれている発熱体220、230、252および/または260に電圧を加える。例示的実施形態では、高伝導性発熱体220、230、252および/または260は、構成部品前縁の外面上の凍結を実質的に防止するのに十分な高さまで温度が上昇する。
【0029】
防氷システムの例示的実施形態が、詳細に前述されている。前述の防氷システムは、航空機前縁の外面上の凍結を実質的に防止するのを助ける。氷の蓄積を防止するために、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、航空機前縁表面を画定している複合構造の内部に形成されている発熱体を使用する。そのような構造は、発熱体を吸気口表面に保持するのに必要な固定要素を排除することにより、部品点数を減少させ、氷結条件下で氷結する傾向がある吸気口部分表面の内側から伝導熱を供給することにより、吸気口部分の内部の熱伝達に関連する効率レベルを最大にする。さらに、本明細書に記載されている防氷システムは、発熱体が中に形成されている表皮に構造補強をもたらす。
【0030】
さらに、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、空気圧式防氷システムで認識される欠陥の多くを克服する。空気圧式システムと対比して、本システムでは、構成部品点数および複雑さが低減される。さらに、航空機前縁表面の保全、および防氷システム自体が簡易化される。さらに、本明細書に記載されているシステムおよび方法では、搭載型の空気圧式システムでは必要とされた原料としてのエンジン抽気が必要とされない。したがって、本システムは、空気圧式システムと比較した場合、実質的に高効率である。本システムは、その動作のための電力のみを必要とし、既存のシステムに対する大きな変更および既存のシステムの証明書の更新を必要としない。したがって、エンジン抽気システム、空調システム、ラムエアシステムおよび/またはダクト漏れ検出システムに対する変更を必要とする空気圧式システムと比較して、非経常コストが実質的により低い可能性がある。
【0031】
上記記載は多くの具体的事項を含むが、これらは、本開示の範囲を限定していると見なされるべきではなく、現在好適な実施形態のいくつかを説明しているに過ぎないと見なすべきである。同様に、本開示の精神または範囲から逸脱することのない他の実施形態が考案されてもよい。異なる実施形態の特徴が、組み合わせて使用されてもよい。したがって、本開示の範囲は、上記記載によってではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によってのみ指示され限定される。特許請求の範囲の意味および範囲に含まれる、本明細書に開示されている全ての付加項目、削除項目、および修正項目が、それらにより包含される。
【0032】
本明細書に記載されている装置および方法は、航空機ガスタービンエンジンのための防氷システムの場合において記載されているが、本装置および本方法は航空宇宙用途に限定されないことを理解されたい。同様に、図示のシステム構成部品は、本明細書に記載されている特定の実施形態に限定されず、むしろ、システム構成部品は、本明細書に記載されている他の構成部品とは独立して別個に利用することができる。
【0033】
本明細書に使用されている通り、単数形で記載されておりかつ語「a」または「an」で始まる要素またはステップは、そのような除外が明記されていない限り、複数の要素またはステップを除外しないと理解されるべきである。さらに、本開示の「一実施形態」への言及は、記載された特徴をやはり組み込んでいる付加的な実施形態の存在を除外すると解釈されないものとする。
【0034】
本明細は、例を使用して、最良の形態を含めて本発明を開示し、また、任意のデバイスまたはシステムを作製し使用することおよび任意の援用されている方法を実施することを含めて、当業者が本発明を実施することを可能にしている。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲により定められており、当業者に思い付く他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文言と僅かしか異ならない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10 ガスタービンエンジン
12 ナセル組立体
16 ファン組立体
17 コアエンジン
18 圧縮機
19 ファンブレード
20 燃焼器
22、24 タービン
26 コアロータシャフト
28 シャフト
32 長手方向中心線軸
33 (タービンエンジン10の)前端部
35 (タービンエンジン10の)後端部
100 吸気口部分
102 (吸気口部分100の)前部
104 吸気ガイドベーン組立体
106 ノーズコーン
108 吸気口カウル
110 外側壁
112 内側壁
114 吸気口ダクト
116 (エンジンカウル)前縁
200 防氷システム
202 外表皮
204 発泡要素
206 (外表皮202の)内面
208 電源
210 編まれた炭素繊維材料/編まれたマトリックス
212 熱可塑性樹脂
214 複合層
220、230、252、260 発熱体
222、232、254、262 導線
234、236 編まれたマトリックス層
250 炭素繊維マトリックス
264 音響孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの複合層を含む複合構造を含む構成部品表面と、
前記少なくとも1つの複合層の内部に形成され、前記構成部品表面へ熱を伝達するように構成されている、少なくとも1つの発熱体と
を含む、防氷システム。
【請求項2】
前記構成部品表面に隣接して配置されている絶縁要素をさらに含み、前記絶縁要素が、前記熱伝達中の熱損失を実質的に防止するのを助けるように構成されている、請求項1記載の防氷システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの発熱体が、電線、糸、リボン、複数の導電性粒子、導電性インク、および少なくとも1つの導電性ナノチューブの内の少なくとも1つを含む、請求項1記載の防氷システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの複合層が、
編まれた炭素繊維マトリックスと、
熱可塑性結合剤または熱硬化性結合剤の一方と
を含み、
前記少なくとも1つの発熱体が、前記少なくとも1つの複合層の内部に受容されて、単一複合構造を形成している、
請求項1記載の防氷システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発熱体が、前記少なくとも1つの複合層の内部で巻回されているか、編み込まれているか、または分配されている、請求項1記載の防氷システム。
【請求項6】
前記複合構造が、複数の層を含む積層構造を含み、前記少なくとも1つの発熱体が、前記複数の層の間に受容される、請求項1記載の防氷システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの発熱体に電気的に接続されておりかつ前記少なくとも1つの発熱体の両端間で電圧を供給するように構成されている電源をさらに含む、請求項1記載の防氷システム。
【請求項8】
空気力学的表面であって、
少なくとも1つの複合層を含む複合構造と、
前記少なくとも1つの複合層の内部に形成された少なくとも1つの発熱体を含む防氷システムであり、前記少なくとも1つの発熱体が、空気力学的表面へ熱を伝達するように構成されている、防氷システムと
を含む、空気力学的表面。
【請求項9】
前記空気力学的表面に隣接して配置されている絶縁要素をさらに含み、前記絶縁要素が、前記熱伝達中の熱損失を実質的に防止するのを助けるように構成されている、請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項10】
前記少なくとも1つの発熱体が、電線、糸、リボン、複数の導電性粒子、導電性インク、および少なくとも1つの導電性ナノチューブの内の少なくとも1つを含む、請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項11】
前記少なくとも1つの複合層が、
編まれた炭素繊維マトリックスと、
熱可塑性結合剤または熱硬化性結合剤の一方と
を含み、
前記少なくとも1つの発熱体が、前記少なくとも1つの複合層の内部に受容されて、単一複合構造を形成している、
請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項12】
前記少なくとも1つの発熱体が、前記少なくとも1つの複合層の内部で巻回されているか、編み込まれているか、または分配されている、請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項13】
前記複合構造が、複数の層を含む積層構造を含み、前記少なくとも1つの発熱体が、前記複数の層の間に受容される、請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項14】
前記少なくとも1つの発熱体に電気的に接続されておりかつ前記少なくとも1つの発熱体の両端間で電圧を供給するように構成されている電源をさらに含む、請求項8記載の空気力学的表面。
【請求項15】
空気力学的表面上の氷の蓄積を実質的に防止する方法であって、
少なくとも1つの複合層を含む複合構造を作製するステップと、
前記少なくとも1つの複合層の内部に少なくとも1つの発熱体を形成するステップと、
前記少なくとも1つの発熱体を構成して、前記空気力学的表面に熱を伝達するステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記空気力学的表面に隣接して絶縁要素を配置することにより、前記熱伝達中の熱損失を実質的に防止するステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの発熱体を形成する前記ステップが、電線、糸、リボン、複数の導電性粒子、導電性インク、および少なくとも1つの導電性ナノチューブの内の少なくとも1つから前記少なくとも1つの発熱体を作製するステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
複合構造を作製する前記ステップが、
編まれた炭素繊維マトリックスを設けることにより、単一複合構造を形成するステップであり、前記少なくとも1つの発熱体が、前記少なくとも1つの複合層の内部に受容される、ステップと、
熱可塑性結合剤または熱硬化性結合剤の一方を使用して、前記単一複合構造を強化するステップと
をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
複合構造を作製する前記ステップが、複数の層を含む積層構造を作製するステップをさらに含み、前記少なくとも1つの発熱体が、前記複数の層の間に受容される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの発熱体に電源を電気的に接続するステップをさらに含み、前記電源が、前記少なくとも1つの発熱体の両端間で電圧を供給するように構成されている、請求項15記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−513934(P2012−513934A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543548(P2011−543548)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066997
【国際公開番号】WO2010/074942
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(310022132)エムアールエイ・システムズ・インコーポレイテッド (11)