説明

永久磁石式回転機の製造方法

【課題】永久磁石回転機の回転性能のばらつきを低減するとともに、トルク制御性能に影響を与えずに特に極数成分のコギングトルクを低減するように構成された永久磁石式回転機の製造方法を提供する。
【解決手段】永久磁石2a,12a,22aを有する回転子2,12,22と、複数のコアピースを円環状に並べて配置することによって構成される固定子コア4,14,24と、この固定子コアを有する固定子3,13,23とを備えている2n極3nスロット式の永久磁石式回転機の製造方法において、回転子を、1周回転角360°を永久磁石の極数2nおよび固定子のスロット数3nの最小公倍数で割った角度、回転させる毎に、回転子と固定子との間で流れる磁束の磁束密度分布を等しくするように、2種類のコアピースを組み合せて配置するステップを含む永久磁石式回転機の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コギングトルクを低減させた永久磁石式回転機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの永久磁石式回転機では、コギングトルクと呼ばれるトルク脈動の一種が発生することがある。このコギングトルクは、永久磁石式回転機の回転側の部品である回転子と固定側の部品である固定子との間で流れる磁束の磁束密度が、固定子の回転角度の変化に伴って変化することによって発生する。そのため、このようなコギングトルクの増大によって、永久磁石式回転機の回転制御性能を悪化させる問題や、振動・騒音の問題が生じることとなる。
【0003】
このコギングトルクは、回転子を、1周回転角360°を永久磁石の極数および固定子のスロット数の最小公倍数で割った角度、回転させる毎に発生することがある。このような回転角度毎の周期で発生するコギングトルクの成分は、「理論次数成分」と呼ばれている。
【0004】
例えば、6極9スロット式の永久磁石式回転機では、回転子を、1周回転角360°を極数6およびスロット数9の最小公倍数18で割った値20°(=360°÷18)、回転させる毎に、理論次数成分のコギングトルクが発生することとなる。また、8極12スロット式の永久磁石式回転機では、回転子を、1周回転角360°を極数8およびスロット数12の最小公倍数24で割った値15°(=360°÷24)、回転させる毎に、理論次数成分のコギングトルクが発生することとなる。
【0005】
また、固定子にバラツキがある場合では、非特許文献1で示されるように、コギングトルクは、回転子を、1周回転角360°を永久磁石の極数で割った角度、回転させる毎にも発生することがある。このような回転角度毎の周期で発生するコギングトルクの成分は、「極数成分」と呼ばれている。
【0006】
例えば、6極9スロット式の永久磁石式回転機では、回転子を、1周回転角360°を極数6で割った値60°(=360°÷6)、回転子を回転させる毎に、極数成分のコギングトルクが発生することとなる。また、8極12スロット式の永久磁石式回転機では、回転子を、1周回転角360°を極数8で割った値45°(=360°÷8)、回転させる毎に、極数成分のコギングトルクが発生することとなる。
【0007】
このように極数成分のコギングトルクを低減させる目的で製造される永久磁石式回転機には、特許文献1のように、N相の通電相のうち1相〜N−1相を構成する固定子側にある複数のティースの形状が、他の通電相を構成する複数のティースの形状と異なるように形成されているものがある。
【0008】
また、特許文献1のような固定子には、分割コアが用いられることがあり、この分割コアは、複数のコアピースから構成されている。この複数のコアピースの1つずつが、固定子の1つのティースを構成しており、このような複数のコアピースを円環状に並べることによって、複数のティースを備える分割コアが構成されることとなる。
【0009】
この分割コアは、増産対応のために様々なコアピースを組み合せて製造されることがあり、このような場合、特に、磁気抵抗の異なる2種類のコアピースを組み合わせて、分割コアを製造する必要に迫られることがある。
【特許文献1】特開2006−311738号公報
【非特許文献1】大穀 晃裕、外4名、「PMモータの固定子製造誤差に起因するコギングトルクの発生条件」、電気学会論文誌B、2006年11月1日、第126巻、第8号、p. 1140-1150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のような永久磁石式回転機では、形状変更したティースの形状と他のティースの形状との差異を設けたことによって、各相間で流れる磁束の飽和磁束密度が異なることとなり、永久磁石式回転機のトルク制御性能が影響を受けるおそれがある。
【0011】
また、2種類のコアピースを組み合わせて分割コアを製造する場合、2種類のコアピースの組み合わせによっては、永久磁石回転機の回転性能などにばらつきが発生するおそれがあり、また、極数成分のコギングトルクが発生するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明の課題は、永久磁石回転機の回転性能のばらつきを低減するとともに、トルク制御性能に影響を与えずに特に極数成分のコギングトルクを低減するように構成された永久磁石式回転機の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するために本発明の永久磁石式回転機の製造方法は、永久磁石を有する回転子と、磁気抵抗の異なる2種類のコアピースから構成される複数のコアピースと、該複数のコアピースを円環状に並べて配置することによって構成される固定子コアと、U相、V相およびW相から成る3相の巻線と、該3相の巻線の各相を、それぞれ別々の前記コアピースに巻き付けた前記固定子コアを有する固定子とを備え、前記永久磁石の極数を2nにするとともに、前記永久磁石の周方向に沿ってN極およびS極を交互に配置し、前記固定子のスロット数を3nにするとともに、前記U相巻線を巻き付けたコアピースの1つ、前記V相巻線を巻き付けたコアピースの1つおよび前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つを並べて配置した一群をn個並べて配置し、nの値を2以上の整数としている永久磁石式回転機を製造する方法において、前記回転子を、1周回転角360°を前記永久磁石の極数2nおよび前記固定子のスロット数3nの最小公倍数で割った角度、回転させる毎に、前記回転子と前記固定子との間で流れる磁束の磁束密度分布を等しくするように、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップを含む。
【0014】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む。
【0015】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を9個連続で並べて配置するステップとを含む。
【0016】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの2つとするように組み合せて配置するステップを含む。
【0017】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を6個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む。
【0018】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方と、前記2種類のコアピースの他方とを1つずつ交互に配置するステップとを含む。
【0019】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースのうち一方を3個連続で並べて配置した一群と、前記2種類のコアピースのうち他方を3個連続で並べて配置した一群とを、交互に配置するステップを含む。
【0020】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、3つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、3つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび3つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む。
【0021】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。本発明の永久磁石式回転機の製造方法は、永久磁石を有する回転子と、磁気抵抗の異なる2種類のコアピースから構成される複数のコアピースと、該複数のコアピースを円環状に並べて配置することによって構成される固定子コアと、U相、V相およびW相から成る3相の巻線と、該3相の巻線の各相を、それぞれ別々の前記コアピースに巻き付けた前記固定子コアを有する固定子とを備え、前記永久磁石の極数を2nにするとともに、前記永久磁石の周方向に沿ってN極およびS極を交互に配置し、前記固定子のスロット数を3nにするとともに、前記U相巻線を巻き付けたコアピースの1つ、前記V相巻線を巻き付けたコアピースの1つおよび前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つを並べて配置した一群をn個並べて配置し、nの値を2以上の整数としている永久磁石式回転機を製造する方法において、前記回転子を、1周回転角360°を前記永久磁石の極数2nおよび前記固定子のスロット数3nの最小公倍数で割った角度、回転させる毎に、前記回転子と前記固定子との間で流れる磁束の磁束密度分布を等しくするように、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を9個連続で並べて配置するステップとを含む。そのため、磁気抵抗の異なる前記2種類のコアピースを用いる場合、例えば、2個取り用プレス型で同時に2つのコアピースを製造することに起因して2つのコアピース間にばらつきが生じる場合などに、前記U相のn個のコアピースおよび前記永久磁石の間で流れる磁束の磁束密度分布と、前記V相のn個のコアピースおよび前記永久磁石の間で流れる磁束の磁束密度分布と、前記W相のn個のコアピースおよび前記永久磁石の間で流れる磁束の磁束密度分布との間で、ばらつきを発生し難くすることができる。従って、前記各相間で流れる飽和磁束密度のばらつきが減少することとなり、永久磁石式回転機のトルク制御性能に影響することなく、極数成分のコギングトルクを低減できる。
【0023】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの2つとするように組み合せて配置するステップを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を6個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方と、前記2種類のコアピースの他方とを1つずつ交互に配置するステップとを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースのうち一方を3個連続で並べて配置した一群と、前記2種類のコアピースのうち他方を3個連続で並べて配置した一群とを、交互に配置するステップを含む。そのため、8相12スロット式の永久磁石回転機の態様で、前記固定子側の前記U相、前記V相および前記W相にそれぞれ分配される前記2種類のコアピースの数の比率が等しくなる。そのため、永久磁石回転機を製造に用いられる部品の生産効率を向上させることができるとともに、極数成分のコギングトルクをより確実に低減できる。
【0024】
本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、3つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、3つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび3つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む。本発明の永久磁石式回転機の製造方法では、nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む。そのため、6相9スロット式の永久磁石回転機のようにコアピースの数を削減した態様で、永久磁石回転機のコストダウンを図りながら、極数成分のコギングトルクを確実に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について以下に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における永久磁石式回転機(以下、モータという)1の回転子2および固定子3を示す概略図である。
【0027】
本発明の第1実施形態のモータ1は、8極12スロット式となっており、回転子2と固定子3とを備えている。回転子2は、略リング状に形成される永久磁石2aを備えており、この永久磁石2aは、回転子2の外周に配置されている。この永久磁石2aでは、回転子2の周方向に沿ってN極およびS極が交互に配置されており、永久磁石2aの極数は、8極となっている。すなわち、この永久磁石2aは、4つのN極(N1極,N2極,N3極,N4極)、および4つのS極(S1極,S2極,S3極,S4極)を備えており、4つのN極および4つのS極が、矢印Mで示す反時計回り方向に、N1極,S1極,N2極,S2極,N3極,S3極,N4極,S4極の順に並べて配置されている。回転子2は、リング状の永久磁石2aの外周円中心を通る軸回りに回動可能に構成されている。
【0028】
固定子3は、固定子コア4と、U相巻線、V相巻線およびW相巻線から成る3相の巻線とを備えている。固定子コア4は、リング状に形成されたヨークと、ヨークから固定子コア4の中心方向に向かって突出するように形成された12個のティースとを備えている。さらに、固定子コア4は、分割コアとなっており、12個のコアピースから構成されている。1つのコアピースは、1つのティースを有するように構成されている。
【0029】
12個のコアピースは、回転子2の周囲に沿って円環状に並べて配置されている。また、12個のコアピースは、斜線で示した3個の第1のコアピース4aと、9個の第2のコアピース4bとの2種類から構成されている。第1のコアピース4aおよび第2のコアピース4bは、電磁鋼板を、2個取り用プレス型によって同時に打ち抜いた後に、それぞれ積層させることによって製造されている。そのため、第1のコアピース4aの形状および第2のコアピース4bの形状は、2個取り用プレス型において、それぞれを製造するためのステージの形状ばらつきに依存して、互いにばらついて異なることとなる。
【0030】
これら3個の第1のコアピース4aは、連続で並ぶように組み合せて配置されており、9個の第2のコアピース4bは、連続で並ぶように組み合されて配置されている。従って、第1コアピース4aと第2コアピース4bとの配置については、3個の第1のコアピース4aの一群と、9個の第2のコアピース4bの一群とが、連続で並ぶように配置され、円環状の固定子コア4が構成されることとなる。
【0031】
U相巻線、V相巻線およびW相巻線は、それぞれ別々のコアピースのティースに巻き付けられている。U相巻線を巻き付けたコアピースの1つ、V相巻線を巻き付けたコアピースの1つおよびW相巻線を巻き付けたコアピースの1つを連続で並べて配置した一群が、4個連続で並べて配置されている。
【0032】
U相巻線を1個の第1のコアピース4aのティースに巻き付けることによって、U1相が構成されている。また、U相巻線を3個の第2のコアピース4bのティースに巻き付けることによって、第2のコアピース4bにU2相、U3相およびU4相がそれぞれ構成されている。
【0033】
V相巻線を1個の第1のコアピース4aのティースに巻き付けることによって、V1相が構成されている。また、V相巻線を3個の第2のコアピース4bのティースに巻き付けることによって、V2相、V3相およびV4相がそれぞれ構成されている。
【0034】
W相巻線を1個の第1のコアピース4aのティースに巻き付けることによって、W1相が構成されている。また、W相巻線を3個の第2のコアピース4bのティースに巻き付けることによって、W2相、W3相およびW4相がそれぞれ構成されている。従って、モータ1は12個のスロットを有することとなる。
【0035】
詳細に述べると、4つのU相、4つのV相および4つのW相から成る通電相は、矢印Mで示す反時計回り方向に、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相、U3相、V3相、W3相、U4相、V4相、W4相の順に配置されることとなる。
【0036】
このようなモータ1では、第1のコアピース4aの形状と第2のコアピース4bの形状との間の差異によって、第1のコアピース4aに巻き付けられたU1相、V1相およびW1相の磁気抵抗と、第2のコアピース4bに巻き付けられたU2相、V2相、W2相、U3相、V3相、W3相、U4相、V4相およびW4相の磁気抵抗との間にも、差異が生じることとなる。
【0037】
ここで、モータ1の回転動作時における回転子2と固定子3との位置関係について、図1および図2を用いて説明する。図1では、U1相、U2相、U3相およびU4相の周方向の中央部は、それぞれN1極、N2相、N3相およびN4相の周方向の中央部に対向するように位置している。
【0038】
このような状態で、U1相、U2相、U3相およびU4相のティースの先端部分において、U1相およびN1極の間では磁束A(点線で示す)が流れ、U2相およびN2極の間と、U3相およびN3極の間と、U4相およびN4極の間ではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れる。従って、モータ1の回転子2と固定子3との間では、磁束Aが1箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが3箇所で流れることとなる。
【0039】
8極12スロット式のモータ1では、回転子2を、1周回転角360°を極数8およびスロット数12の最小公倍数24で割った値15°(=360°÷24)、回転させる毎に、理論次数成分のコギングトルクが発生する。回転子2が、図1の状態から、さらに矢印Mで示す反時計回り方向に15°回転した状態を図2に示す。
【0040】
図2では、W1相、W2相、W3相およびW4相の周方向の中央部が、それぞれS1極、S2極、S3極およびS4極の周方向の中央部に対向するように位置している。このような状態で、W1相、W2相、W3相およびW4相のティースの先端部分において、W1相およびS1極の間では磁束A(点線で示す)が流れ、W2相およびS2極の間と、W3相およびS3極の間と、W4相およびS4極の間ではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れる。すなわち、モータ1の回転子2と固定子3との間でもまた、磁束Aが1箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが3箇所で流れることとなる。
【0041】
モータ1は、回転子2の15°毎の回転を繰り返すことによって、連続して回転動作をすることとなる。そのため、回転子2を15°回転させる毎、すなわち、モータ1の理論次数成分のコギングトルクが発生するタイミングでは、回転子2と固定子3との間には、1箇所の磁束Aと3箇所の磁束Bとが流れた状態となり、常に等しい磁束密度分布で磁束が流れることとなる。従って、U相、V相およびW相の磁束密度がそれぞれ異なる場合に発生するような極数成分のコギングトルクが、発生し難くなる。
【0042】
よって、このような第1実施形態のモータ1では、互いに磁気抵抗の異なる第1のコアピース4aおよび第2のコアピース4bを用いる必要がある場合、特に、2個取り用プレス型で同時に第1のコアピース4aおよび第2のコアピース4bを製造することに起因して第1のコアピース4aおよび第2のコアピース4bの間にばらつきが生じる場合に、4つのU相を有するコアピースおよび永久磁石2aの間で流れる磁束の磁束密度分布と、4つのV相を有するコアピースおよび永久磁石2aの間で流れる磁束の磁束密度分布と、4つのW相を有するコアピースおよび永久磁石2aの間で流れる磁束の磁束密度分布との間で、ばらつきを減少させることができる。従って、各相間で流れる磁束の飽和磁束密度のばらつきもまた減少することとなり、モータ1のトルク制御性能に影響することなく、極数成分のコギングトルクを低減できる。
【0043】
ここまで発明の第1実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について以下に説明する。図3は、本発明の第2実施形態におけるモータ11の回転子12および固定子13を示す概略図である。
【0045】
モータ11は、8極12スロット式となっており、回転子12と固定子13とを備えている。回転子12は、第1実施形態の回転子2と同様に構成される永久磁石12aを備えている。
【0046】
固定子13は、固定子コア14と、第1実施形態と同様にU相巻線、V相巻線およびW相巻線から成る3相の巻線とを備えており、固定子コア14もまた、第1実施形態と同様に構成されるヨークおよび12個のティースを備えている。
【0047】
固定子コア4は、分割コアとなっており、12個のコアピースから構成されている。第2実施形態では、これらの12個のコアピースは、斜線で示した6個の第1のコアピース14aと、6個の第2のコアピース14bとの2種類から構成されている。第1のコアピース14aの形状および第2のコアピース14bの形状は、第1実施形態と同様に互いに異なっている。
【0048】
第1コアピース14aと第2コアピース14bとの配置については、6個の第1のコアピース14aが、連続で並ぶように組み合せて配置されており、6個の第2のコアピース14bが、連続で並ぶように組み合せて配置されている。
【0049】
U相巻線、V相巻線およびW相巻線は、第1実施形態と同様に、それぞれ別々のコアピースのティースに巻き付けられており、4つのU相、4つのV相および4つのW相から成る通電相が形成されている。これらの通電相は、矢印Mで示す反時計回り方向に、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相、U3相、V3相、W3相、U4相、V4相、W4相の順に配置されている。
【0050】
第2実施形態では、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相およびW2相が、第1のコアピース14aに形成され、U3相、V3相、W3相、U4相、V4相およびW4相が、第2のコアピース14bに形成されている。
【0051】
そのため、このモータ11では、第1のコアピース14aの形状と第2のコアピース14bの形状との間の差異によって、第1のコアピース14aに巻き付けられたU1相、V1相、W1相、U2相、V2相およびW2相の磁気抵抗と、第2のコアピース14bに巻き付けられたU3相、V3相、W3相、U4相、V4相およびW4相の磁気抵抗との間に、差異が生じることとなる。
【0052】
ここで、モータ11の回転動作時における回転子12と固定子13との位置関係について、図3を用いて説明する。図3では、U1相、U2相、U3相およびU4相の周方向の中央部が、それぞれN1極、N2相、N3相およびN4相の周方向の中央部に対向するように位置している。
【0053】
このような状態で、U1相、U2相、U3相およびU4相のティースの先端部分が、U1相およびN1極の間と、U2相およびN2極の間とではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束A(点線で示す)が流れ、U3相およびN3極の間と、U4相およびN4極の間ではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れる。従って、モータ1の回転子2と固定子3との間では、磁束Aが2箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが2箇所で流れることとなる。
【0054】
第1実施形態と同様に、8極12スロット式のモータ11では、回転子12を15°回転させる毎に、理論次数成分のコギングトルクが発生する。回転子2が、矢印Mで示す反時計回り方向に15°回転した場合、図示はしないが、W1相、W2相、W3相およびW4相のティースの先端部分が、W相巻線に流れる電流によって、N極の磁気を帯びた状態となり、W1相、W2相、W3相およびW4相の周方向の中央部が、それぞれS1極、S2極、S3極およびS4極の周方向の中央部に対向するように位置することとなる。
【0055】
このような状態で、W1相およびS1極の間と、W2相およびS2極の間とでは磁束Aが流れ、W3相およびS3極の間と、W4相およびS4極の間ではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れることとなる。すなわち、モータ1の回転子2と固定子3との間で、磁束Aが2箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが2箇所で流れることとなる。
【0056】
モータ11は、回転子12の15°毎の回転を繰り返すことによって、連続して回転動作をすることとなる。そのため、回転子2を15°回転させる毎、すなわち、モータ11の理論次数成分のコギングトルクが発生するタイミングでは、回転子12と固定子13との間に、2箇所の磁束Aと2箇所の磁束Bとが流れた状態となり、常に等しい磁束密度分布になることとなる。従って、U相、V相およびW相の磁束密度がそれぞれ異なる場合に発生する極数成分のコギングトルクが、発生し難くなる。
【0057】
よって、このような第2実施形態のモータ11によれば、8相12スロット式のモータの態様で、固定子12側のU相、V相およびW相にそれぞれ分配される第1のコアピース14aおよび第2のコアピース14bの数の比率が等しくなる。そのため、モータ11を製造に用いられる部品の生産効率を向上させることができるとともに、極数成分のコギングトルクをより確実に低減することができる。
【0058】
ここまで発明の第2実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0059】
例えば、本発明の第2実施形態における第1変形例として、図4に示されるように、3個連続で並べて配置した第1コアピース14aの一群と、第2コアピース14bを3個連続で並べて配置した一群とが、交互に配置されてもよい。すなわち、第1コアピース14aにU1相、V1相、W1相、U3相、V3相およびW3相が構成され、第2コアピース14bにU2相、V2相、W2相、U4相、V4相およびW4相が構成されてもよい。
【0060】
本発明の第2実施形態における第2変形例として、図5に示されるように、第1コアピース14aと第2コアピース14bとが、1つずつ交互に配置されてもよい。すなわち、第1コアピース14aにU1相、V2相、W1相、U3相、V4相およびW3相が構成され、第2コアピース14bにU2相、V1相、W2相、U4相、V3相およびW4相が構成されてもよい。
【0061】
本発明の第2実施形態における第1変形例および第2変形例によっても、回転子12を15°回転させる毎、すなわち、モータ1の理論次数成分のコギングトルクが発生するタイミングで、回転子2と固定子3との間に、2箇所の磁束Aおよび2箇所の磁束Bが流れた状態となり、常に等しい磁束密度分布で磁束が流れることとなる。そのため、U相、V相およびW相の磁束密度がそれぞれ異なる場合に発生する極数成分のコギングトルクが、発生し難くなる。
【0062】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について以下に説明する。図6は、本発明の第3実施形態におけるモータ21の回転子22および固定子23を示す概略図である。
【0063】
本発明の第3実施形態のモータ21は、6極9スロット式となっており、回転子22と固定子23とを備えている。回転子22は、円柱状に形成されており、円中心を通る回転軸回りで回動可能に構成されている。また、回転子22は、略円筒状に形成される永久磁石22bを備えており、この永久磁石22bは、回転子22の外周に配置されている。この永久磁石22bでは、回転子22の周方向に沿ってN極およびS極が交互に配置されており、永久磁石22bの極数は、6極となっている。すなわち、この永久磁石22bは、3つのN極(N1極,N2極,N3極)、および3つのS極(S1極,S2極,S3極)を備えており、3つのN極および3つのS極が、矢印Mで示す反時計回り方向に、N1極,S1極,N2極,S2極,N3極,S3極の順に並べて配置されている。
【0064】
固定子3は、固定子コア24と、U相巻線、V相巻線およびW相巻線から成る3相の巻線とを備えている。固定子コア24は、円筒状に形成されたヨークと、ヨークから固定子コア24の中心方向に向かって突出するように形成された9個のティースとを備えている。さらに、固定子コア24は、分割コアとなっており、9個のコアピースから構成されている。1つのコアピースは、1つのティースを有するように構成されている。
【0065】
9個のコアピースは、回転子22の周囲に沿って円環状に並べて配置されている。また、9個のコアピースは、斜線で示した3個の第1のコアピース24aと、6個の第2のコアピース24bとの2種類から構成されている。第1のコアピース24aおよび第2のコアピース24bは、第1実施形態と同様に、互いにばらついて異なっている。
【0066】
これら3個の第1のコアピース24aは、連続で並ぶように組み合されて配置されており、6個の第2のコアピース24bは、連続で並ぶように組み合されて配置されている。従って、第1コアピース24aと第2コアピース24bとの配置については、6個の第1のコアピース24aの一群と、6個の第2のコアピース24bの一群とが、連続で並ぶように配置され、円環状の固定子コア4が構成されることとなる。
【0067】
U相巻線、V相巻線およびW相巻線は、それぞれ別々のコアピースのティースに巻き付けられている。U相巻線を巻き付けたコアピースの1つ、V相巻線を巻き付けたコアピースの1つおよびW相巻線を巻き付けたコアピースの1つを並べて配置された一群が、3個連続で並べて配置されている。
【0068】
U相巻線を1個の第1のコアピース24aのティースに巻き付けることによって、U1相が構成されている。また、U相巻線を2個の第2のコアピース24bのティースに巻き付けることによって、第2のコアピース24bにU2相およびU3相がそれぞれ構成されている。
【0069】
V相巻線を1個の第1のコアピース24aのティースに巻き付けることによって、V1相が構成されている。また、V相巻線を3個の第2のコアピース24bのティースに巻き付けることによって、V2相およびV3相がそれぞれ構成されている。
【0070】
W相巻線を1個の第1のコアピース24aのティースに巻き付けることによって、W1相が構成されている。また、W相巻線を2個の第2のコアピース24bのティースに巻き付けることによって、W2相およびW3相がそれぞれ構成されている。従って、モータ21は、9個のスロットを有することとなる。
【0071】
すなわち、3つのU相、3つのV相および3つのW相から成る通電相が、矢印Mで示す反時計回り方向に、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相、U3相、V3相およびW3相の順に配置されることとなる。
【0072】
そのため、このモータ21では、第1のコアピース24aの形状と第2のコアピース24bの形状との間の差異によって、第1のコアピース24aに巻き付けられたU1相、V1相およびW1相の磁気抵抗と、第2のコアピース4bに巻き付けられたU2相、V2相、W2相、U3相、V3相およびW3相の磁気抵抗との間にも、差異が生じることとなる。
【0073】
ここで、モータ21の回転動作時における回転子22と固定子23との位置関係について、図6を用いて説明する。図6では、U1相、U2相およびU3相の周方向の中央部が、それぞれN1極、N2相およびN3相の周方向の中央部に対向するように位置している。
【0074】
このような状態で、U1相、U2相およびU3相のティースの先端部分が、U1相およびN1極の間では磁束A(点線で示す)が流れ、U2相およびN2極の間と、U3相およびN3極の間とではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れる。従って、モータ1の回転子22と固定子23との間では、磁束Aが1箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが2箇所で流れることとなる。
【0075】
この6極9スロット式のモータ21では、回転子22を、1周回転角360°を極数6およびスロット数9の最小公倍数18で割った値20°(=360°÷18)、回転させる毎に、理論次数成分のコギングトルクが発生する。回転子22が、さらに矢印Mで示す反時計回り方向に20°回転した場合、図示はしないが、W1相、W2相およびW3相のティースの先端部分が、W相巻線に流れる電流によって、N極の磁気を帯びた状態となり、W1相、W2相およびW3相の周方向の中央部が、それぞれS1極、S2極およびS3極の周方向の中央部に対向するように位置することとなる。
【0076】
このような状態では、W1相およびS1極の間では磁束Aが流れ、と、W2相およびS2極の間と、W3相およびS3極の間とではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れることとなる。すなわち、モータ21の回転子22と固定子23との間で、磁束Aが1箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが2箇所で流れることとなる。
【0077】
モータ21は、回転子22の20°毎の回転を繰り返すことによって、連続して回転動作をすることとなる。そのため、回転子22を20°回転させる毎、すなわち、モータ21の理論次数成分のコギングトルクが発生するタイミングでは、回転子22と固定子23との間に、1箇所の磁束Aと2箇所の磁束Bとが流れた状態となり、常に等しい磁束密度分布で磁束が流れることとなる。従って、U相、V相およびW相の磁束密度がそれぞれ異なる場合に発生する極数成分のコギングトルクが、発生し難くなる。
【0078】
よって、このような第3実施形態のモータ21によれば、6相9スロット式のモータのようにコアピースの数を削減した態様で、モータのコストダウンを図りながら、極数成分のコギングトルクを確実に低減できる。
【0079】
ここまで発明の第3実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0080】
(比較例)
上述した本発明の実施形態との比較例として、図8に示すようなモータ31を挙げる。図8は、比較例のモータ21の回転子22および固定子23を示す概略図である。
【0081】
図8に示した8極12スロット式のモータ31では、回転子32に設けられた永久磁石32aが、4つのN極(N1極,N2極,N3,N4極)、および4つのS極(S1極,S2極,S3極,S4極)を備え、4つのN極および4つのS極が、反時計回り方向に、N1極、S1極、N2極、S2極、N3極、S3極、N4極、S4極の順に並べて配置されている。
【0082】
固定子33に設けられた固定子コア34は、ヨークから固定子コア34の中心方向に向かって突出する12個のティースを備えている。これらのティースには、U相巻線、V相巻線およびW相巻線からなる3相の巻線が巻きつけられ、反時計回り方向に、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相、U3相、V3相およびW3相の順に通電相が配設されることとなる。
【0083】
固定子コア34は分割コアであり、12個のコアピースから構成され、1つのコアピースが1つのティースを備えている。12個のコアピースは、2個取り用プレス型で作製された2種類のコアピースである第1のコアピース34aおよび第2のコアピース34bから構成されている。第1のコアピース34aは、U2相、V1相、V2相、W1相、W2相およびW4相を有するように配置され、第2のコアピース34bは、U1相、U3相、U4相、V3相、V4相およびW3相を有するように配置されている。
【0084】
ここで、モータ21の回転動作時における回転子22と固定子23との位置関係について、図8および図9を用いて説明する。図8では、U1相、U2相、U3相およびU4相の周方向の中央部が、それぞれN1極、N2相、N3相およびN4相の周方向の中央部に対向するように位置している。
【0085】
このような状態で、U1相、U2相、U3相およびU4相のティースの先端部分が、U2相およびN2極の間で磁束A(点線で示す)が流れ、U1相およびN1極の間と、U3相およびN3極の間と、U4相およびN4極の間とではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れる。従って、モータ31の回転子32と固定子33との間では、磁束Aが1箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが3箇所で流れることとなる。
【0086】
一方で、回転子32が、図8の状態から、さらに反時計回り方向に15°回転し、図9のような状態になった場合、W1相およびS1極の間と、W2相およびS2極の間とでは磁束A(点線で示す)が流れ、W3相およびS3極の間と、W4相およびS4極の間とではそれぞれ同等の磁束密度を有する磁束Bが流れている。すなわち、モータ31の回転子32と固定子33との間では、磁束Aが2箇所で流れ、磁束Aと磁束密度の異なる磁束Bが2箇所で流れることとなる。
【0087】
そのため、比較例のモータ31では、図8における磁束密度の分布と、図9における磁束密度の分布とが異なり、このことは、極数成分のコギングトルクを発生させる要因となる。
【0088】
ここで、比較例のモータ31と、本発明の第1実施形態のモータ1と、第2実施形態のモータ11とで、それぞれ発生するコギングトルクを解析したところ、図7に示すような結果が得られた。
【0089】
図7では、横軸は回転子の回転角度(度)を表し、縦軸はトルク(mN・m)を表している。さらに図7では、第1実施形態のモータ1のコギングトルクCが実線で表され、第2実施形態のモータ11のコギングトルクDが一点鎖線で表され、比較例のモータ31のコギングトルクEが点線で表されている。なお、第2実施形態の第1変形例および第2変形例は、第2実施形態と同様なコギングトルクが発生する結果となったため、図7における比較では省略している。
【0090】
モータ1のコギングトルクCの波形では、各周期のトルクのピークの値が、それぞれ等しくなっている。また、モータ11のコギングトルクDでは、各周期のトルクのピークの値が、それぞれ等しくなっている。モータ1のコギングトルクCの大きさは、モータ11のコギングトルクDの大きさより小さくなっている。
【0091】
これに対して、比較例のモータ31のコギングトルクEの波形では、1周期ピークの値が、モータ11のコギングトルクDの値より大きくなり、その次の半周期ピークの値が、モータ11のコギングトルクDの値より小さくなっている。すなわち、比較例のモータ31では、極数成分のコギングトルクなど次数成分のコギングトルクが発生していることとなる。比較例のモータ31は、このような回転動作を繰り返すこととなる。
【0092】
従って、比較例のモータ31と比較して、本発明の第1実施形態のモータ1および第2実施形態のモータ11では、極数成分のコギングトルクのような次数成分のコギングトルクの発生が抑制される。すなわち、理論次数成分のコギングトルクのみが残ることになり、安定して一定のトルク性能が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態における永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図2】図1の回転子を反時計回り方向に15°回転させた状態を示す概略図である。
【図3】本発明の第2実施形態における永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態の第1変形例における永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態の第2変形例における永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図6】本発明の第3実施形態における永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図7】永久磁石式回転機の回動時における振動を表すグラフである。
【図8】比較例の永久磁石式回転機の回転子および固定子を示す概略図である。
【図9】図8の回転子を反時計回り方向に15°回転させた状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0094】
1,11,21,31 永久磁石式回転機(モータ)
2,12,22,32 回転子
2a,12a,22a,33a 永久磁石
3,13,23,33 固定子
4,14,24,34 固定子コア
4a,14a,24a,34a 第1のコアピース
4b,14b,24b,34b 第2のコアピース

U1,U2,U3,U4 U相
V1,V2,V3,V4 V相
W1,W2,W3,W4 W相
A,B 磁束
C,D,E コギングトルク
M 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有する回転子と、磁気抵抗の異なる2種類のコアピースから構成される複数のコアピースと、該複数のコアピースを円環状に並べて配置することによって構成される固定子コアと、U相、V相およびW相から成る3相の巻線と、
該3相の巻線の各相を、それぞれ別々の前記コアピースに巻き付けた前記固定子コアを有する固定子とを備え、前記永久磁石の極数を2nにするとともに、前記永久磁石の周方向に沿ってN極およびS極を交互に配置し、前記固定子のスロット数を3nにするとともに、前記U相巻線を巻き付けたコアピースの1つ、前記V相巻線を巻き付けたコアピースの1つおよび前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つを並べて配置した一群をn個並べて配置し、nの値を2以上の整数としている永久磁石式回転機を製造する方法において、
前記回転子を、1周回転角360°を前記永久磁石の極数2nおよび前記固定子のスロット数3nの最小公倍数で割った角度、回転させる毎に、前記回転子と前記固定子との間で流れる磁束の磁束密度分布を等しくするように、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップを含む永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項2】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項3】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を9個連続で並べて配置するステップとを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項4】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、4つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つ、4つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち2つおよび4つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの2つとするように組み合せて配置するステップを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項5】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を6個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項6】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方と、前記2種類のコアピースの他方とを1つずつ交互に配置するステップとを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項7】
nの値が4である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースのうち一方を3個連続で並べて配置した一群と、前記2種類のコアピースのうち他方を3個連続で並べて配置した一群とを、交互に配置するステップを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項8】
nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を、3つの前記U相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つ、3つの前記V相巻線を巻き付けたコアピースのうち1つおよび3つの前記W相巻線を巻き付けたコアピースの1つとするように組み合せて配置するステップを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。
【請求項9】
nの値が3である場合に、前記2種類のコアピースを組み合せて配置するステップが、前記2種類のコアピースの一方を3個連続で並べて配置するステップと、前記2種類のコアピースの他方を6個連続で並べて配置するステップとを含む請求項1に記載の永久磁石式回転機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−290982(P2009−290982A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140555(P2008−140555)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】