説明

永久磁石式回転電機および永久磁石式回転電機を備えた車両

【課題】高回転に耐え出力の大きな永久磁石型回転電機を提供する。
【解決手段】永久磁石式回転電機は、回転子の磁極毎に設けられた複数の磁石挿入孔253の周方向の両端部にそれぞれ非磁性部257が形成され、複数の磁石挿入孔253の隣り合う磁石挿入孔の間には、磁石挿入孔の外側の回転子コア部256と、磁石挿入孔の内側の回転子コア部263とを機械的に接続するブリッジ部260が設けられており、磁石挿入孔253に挿入される矩形断面を持つ長尺の永久磁石254の角部が磁石挿入孔のブリッジ部側の面および回転子外側の面と回転子内側の面に接触しないように逃げ部が設けられ、磁石挿入孔のブリッジ部側の面の逃げ部の大きさは、永久磁石の角部で小さくなり、磁石挿入孔の回転子外側の面および磁石挿入孔の回転子内側の面の逃げ部の大きさは、永久磁石の角部で小さくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石式回転電機およびその永久磁石式回転電機を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)などの電動車両の駆動用として用いられる永久磁石式回転電機には、高速回転化が要求されている。特に高速回転域においても高出力が可能な永久磁石式回転電機が望まれている。このため、従来永久磁石式回転電機としては、高速回転時に弱め界磁が可能であり、しかもリラクタンストルクを活用できる補助突極付の埋込型永久磁石式回転電機が多く用いられている。たとえば、特許文献1には高出力化と機械的な高回転化の両立が可能な永久磁石式回転電機の構造が記載されている。
【0003】
このような高速回転に耐える永久磁石式回転電機の回転子には、矩形断面の長尺な永久磁石が挿入される、略矩形断面を持つ磁石挿入孔が磁極毎に設けられている。この磁石挿入孔に永久磁石が挿入され、回転電機が駆動されて回転子が回転すると、遠心力によって、特に永久磁石の角部と接する磁石挿入孔隅部で大きな応力が働く。この応力が大きい場合には、磁石の破損や回転子の破損が生じる可能性がある。
【0004】
特許文献2には、永久磁石の角部がこの永久磁石を挿入する磁石用溝の角部に接触しないように、磁石用溝の角部に、外側に円弧状の膨らみを形成した回転子が記載されている。
特許文献3には、永久磁石を挿入する磁石スロットが磁極毎に複数設けられ、同一の回転子磁極で隣接する磁石スロット間の回転子鉄心部分に狭幅鉄心部と広幅鉄心部が設けられ、この狭幅鉄心部の幅が連続的に変化するように円弧部が設けられた磁石型回転電機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−187189号公報
【特許文献2】特開平09−294344号公報
【特許文献3】特開2002−281700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と3に記載の永久磁石式回転電機の回転子では、磁極毎の複数の磁石挿入孔の隣り合う2つの磁石挿入孔の間にブリッジ部(磁石スロット内鉄心部)が設けられている。このブリッジ部側の磁石挿入孔の隅部が回転子の径方向と周方向の双方向の応力、およびブリッジ部の磁気飽和を考慮した設計となっていなかった。したがって、高速回転に充分対応した永久磁石式回転電機となっていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、固定子と、この固定子に空隙を介して対応配置された回転子とを有する永久磁石式回転電機であって、回転子は、磁極毎に略矩形の断面を持つ複数の磁石挿入孔を備えた回転子コアと、磁石挿入孔にそれぞれ挿入された永久磁石とを備え、回転子の磁極毎に設けられた複数の磁石挿入孔の周方向の両端部にそれぞれ非磁性部が形成され、複数の磁石挿入孔の隣り合う磁石挿入孔の間には、磁石挿入孔の外側の回転子コア部と、磁石挿入孔の内側の回転子コア部とを機械的に接続するブリッジ部が設けられており、磁石挿入孔のブリッジ部側の面と磁石挿入孔の回転子外側の面との間の隅部である第1の隅部および、磁石挿入孔のブリッジ側の面と磁石挿入孔の回転子内側の面との間の隅部である第2の隅部には、それぞれ回転子の周方向と径方向とにそれぞれに膨らんで、磁石挿入孔に挿入される矩形断面を持つ長尺の永久磁石の角部が磁石挿入孔のブリッジ部側の面および回転子外側の面と回転子内側の面に接触しないように逃げ部が設けられ、磁石挿入孔のブリッジ部側の面の逃げ部の大きさは、永久磁石の角部で小さくなり、磁石挿入孔の回転子外側の面および磁石挿入孔の回転子内側の面の逃げ部の大きさは、永久磁石の角部で小さくなるように形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機である。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の永久磁石式回転電機において、非磁性部の外周側の回転子コアの最小幅をW1、ブリッジ部の最小幅をW2、磁石挿入孔の第1の隅部での回転子外周側のコアの最小幅をW3としたときに、W2<W1<W3が成り立つことを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の永久磁石式回転電機において、ブリッジ部の最大幅をW4としたときに、W2<W4<W1<W3が成り立つことを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機において、永久磁石の角部はR形状または平面上の面取りが施されており、磁石挿入孔の第1の隅部および磁石挿入孔の第2の隅部は、それぞれ永久磁石の角部に近接する曲面部と、曲面部に接続され周方向の逃げ部を形成する平面部と、曲面部に接続され径方向逃げ部を形成する平面部とを備えることを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機において、永久磁石の角部はR形状または平面上の面取りが施されており、磁石挿入孔の第1の隅部および磁石挿入孔の第2の隅部は、それぞれ永久磁石の角部に近接する平面部と、平面部に接続され周方向の逃げ部を形成する曲面部と、平面部に接続され径方向逃げ部を形成する曲面部とを備えることを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の永久磁石式回転電機において、曲面部の曲率は、永久磁石のR形状の面取りの曲率より小さいことを特徴とする。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機と、この回転電機を駆動するための電力を供給する電力変換部とを備えることを特徴とする車両の電動駆動装置である。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両の電動駆動装置を備えることを特徴とする車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高回転に耐え出力の大きな永久磁石型回転電機を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による回転電機を搭載したハイブリッド型電気自動車の概略構成を示す図である。
【図2】本発明による回転電機の駆動に用いられる電力変換装置600の回路の概略構成を示す図である。
【図3】本発明による回転電機の第1の実施形態の断面図である。
【図4】図3に示す回転電機の固定子230および回転子250の断面を示す図である。
【図5】リラクタンストルクを説明する図である。
【図6】図4に示す回転電機の固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示した図である。
【図7】図6に示す回転電機の磁石間ブリッジ部260付近を拡大して示した図である。
【図8】図6に示す回転電機の高速回転時の応力分布を、1磁極分の回転子のさらに半分である、1/2磁極分において等応力線を用いて示した図である。
【図9】図6に示す本発明による回転電機の一実施形態の1磁極分において、固定子巻線238に3相交流電力を通電していない時の磁束線の分布を示した図である。
【図10】図6あるいは図7に示す本発明による回転電機の一実施形態の1磁極分において、1つの永久磁石254の角部とその周辺の磁石挿入孔253の隅部をさらに拡大した図である。(a)はこの磁石挿入孔253の隅部の永久磁石254の角部と最も近接して対向する内面を略円弧状の曲面で形成し、これに接続される径方向および周方向の内面を平面とした例である。(b)はこの磁石挿入孔253の隅部の永久磁石254の角部と最も近接して対向する内面を平面曲面で形成し、これに接続される径方向および周方向の内面を略円弧状の曲面とした例である。
【図11】本発明による回転電機の実施形態の変形実施例であり、1磁極毎に3個の永久磁石を設け、それぞれの磁石間に磁石間ブリッジ部260を設けた構成において、固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示した断面図である。
【図12】本発明による回転電機の実施形態のさらにもう1つの変形実施例であり、1磁極毎に2つの磁石挿入孔と、それぞれの磁石挿入孔に2つの永久磁石が挿入され、磁石間ブリッジ部260が2つの磁石挿入孔の間に設けられた構成において、固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示した断面図である。
【図13】本発明による回転電機の実施形態のさらにもう1つの変形実施例であり、一磁極分の2つの永久磁石254をV字型に配置した構成において、固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示した断面図である。
【図14】本発明による回転電機の第2の実施形態であり、図4に示す第1の実施形態の回転子と集中巻きの12極の固定子とから構成される8極12スロットの回転電機において、固定子231および回転子250の断面全体の1/4を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜14を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
本発明による回転電機は、以下に説明するように、高出力化が可能である。そのため、例えば、電気自動車の走行用モータとして好適である。本発明による回転電機は、回転電機のみによって走行する純粋な電気自動車や、エンジンと回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車にも適用できるが、以下ではハイブリッド型の電気自動車を例に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の回転電機を搭載したハイブリッド型電気自動車の概略構成を示す図である。車両100には、エンジン120と第1の回転電機200と第2の回転電機202とバッテリ180とが搭載されている。バッテリ180は、回転電機200、202による駆動力が必要な場合には電力変換装置600を介して回転電機200、202に直流電力を供給し、回生走行時には回転電機200、202から直流電力の交流電力を直流電力に変換してバッテリ180を充電する。バッテリ180と回転電機200、202との間の直流電力の授受は、電力変換装置600を介して行われる。また、図示していないが、車両には低電圧電力(例えば、14ボルト系電力)を供給するバッテリが搭載されており、以下に説明する制御回路に直流電力を供給する。
【0012】
エンジン120および回転電機200、202による回転トルクは、変速機130とデファレンシャルギア160を介して前輪110に伝達される。変速機130は変速機制御装置134により制御され、エンジン120はエンジン制御装置124により制御される。バッテリ180は、バッテリ制御装置184により制御される。変速機制御装置134、エンジン制御装置124、バッテリ制御装置184、電力変換装置600および統合制御装置170は、通信回線174によって接続されている。
【0013】
統合制御装置170は、変速機制御装置134、エンジン制御装置124、電力変換装置600およびバッテリ制御装置184よりも上位の制御装置であり、変速機制御装置134、エンジン制御装置124、電力変換装置600およびバッテリ制御装置184の各状態を表す情報を、通信回線174を介してそれらからそれぞれ受け取る。統合制御装置170は、取得したそれらの情報に基づき各制御装置の制御指令を生成する。生成された制御指令は通信回線174を介してそれぞれの制御装置へ送信される。
【0014】
高電圧のバッテリ180はリチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池などの2次電池で構成され、250ボルトから600ボルト、あるいはそれ以上の高電圧の直流電力を出力する。バッテリ制御装置184は、バッテリ180の充放電状況やバッテリ180を構成する各単位セル電池の状態を、通信回線174を介して統合制御装置170に出力する。
【0015】
統合制御装置170は、バッテリ制御装置184からの情報に基づいてバッテリ180の充電が必要と判断すると、電力変換装置600に発電運転の指示を出す。また、統合制御装置170は、主に、エンジン120および回転電機200、202の出力トルクの管理、エンジン120の出力トルクと回転電機200、202の出力トルクとの総合トルクやトルク分配比の演算処理を行い、その演算処理結果に基づく制御指令を、変速機制御装置134、エンジン制御装置124および電力変換装置600へ送信する。電力変換装置600は、統合制御装置170からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力あるいは発電電力が発生するように回転電機200、202を制御する。
【0016】
電力変換装置600には、回転電機200、202を運転するためのインバータを構成するパワー半導体が設けられている。電力変換装置600は、統合制御装置170からの指令に基づきパワー半導体のスイッチング動作を制御する。このパワー半導体のスイッチング動作により、回転電機200、202は電動機としてあるいは発電機として運転される。
【0017】
回転電機200、202を電動機として運転する場合は、高電圧のバッテリ180からの直流電力が電力変換装置600のインバータの直流端子に供給される。電力変換装置600は、パワー半導体のスイッチング動作を制御して供給された直流電力を3相交流電力に変換し、回転電機200、202に供給する。一方、回転電機200、202を発電機として運転する場合には、回転電機200、202の回転子が外部から加えられる回転トルクで回転駆動され、回転電機200、202の固定子巻線に3相交流電力が発生する。発生した3相交流電力は電力変換装置600で直流電力に変換され、その直流電力が高電圧のバッテリ180に供給されることにより、バッテリ180が充電される。
【0018】
図2は、図1の電力変換装置600の回路図を示す。電力変換装置600には、回転電機200のための第1のインバータ装置と、回転電機202のための第2のインバータ装置とが設けられている。第1のインバータ装置は、パワーモジュール610と、パワーモジュール610の各パワー半導体21のスイッチング動作を制御する第1の駆動回路652と、回転電機200の電流を検知する電流センサ660とを備えている。駆動回路652は駆動回路基板650に設けられている。
【0019】
一方、第2のインバータ装置は、パワーモジュール620と、パワーモジュール620における各パワー半導体21のスイッチング動作を制御する第2の駆動回路656と、回転電機202の電流を検知する電流センサ662とを備えている。駆動回路656は駆動回路基板654に設けられている。制御回路基板646に設けられた制御回路648、コンデンサモジュール630およびコネクタ基板642に実装された送受信回路644は、第1のインバータ装置と第2のインバータ装置とで共通に使用される。
【0020】
パワーモジュール610、620は、それぞれ対応する駆動回路652、656から出力された駆動信号によって動作する。パワーモジュール610、620は、それぞれバッテリ180から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、その電力を対応する回転電機200、202の電機子巻線である固定子巻線に供給する。また、パワーモジュール610、620は、回転電機200、202の固定子巻線に誘起された交流電力を直流に変換し、高電圧バッテリ180に供給する。
【0021】
パワーモジュール610、620は図2に記載のごとく3相ブリッジ回路を備えており、3相に対応した直列回路が、それぞれバッテリ180の正極側と負極側との間に電気的に並列に接続されている。各直列回路は上アームを構成するパワー半導体21と下アームを構成するパワー半導体21とを備え、それらのパワー半導体21は直列に接続されている。パワーモジュール610とパワーモジュール620とは、図2に示す如く回路構成がほぼ同じであり、ここではパワーモジュール610で代表して説明する。
【0022】
本実施の形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)21を用いている。IGBT21は、コレクタ電極、エミッタ電極及びゲート電極の3つの電極を備えている。IGBT21のコレクタ電極とエミッタ電極との間にはダイオード38が電気的に接続されている。ダイオード38は、カソード電極及びアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT21のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT21のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT21のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0023】
なお、スイッチング用パワー半導体素子として、MOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。MOSFETは、ドレイン電極、ソース電極及びゲート電極の3つの電極を備えている。MOSFETの場合には、ソース電極とドレイン電極との間に、ドレイン電極からソース電極に向かう方向が順方向となる寄生ダイオードを備えているので、図2のダイオード38を設ける必要がない。
【0024】
各相のアームは、IGBT21のエミッタ電極とIGBT21のコレクタ電極とが電気的に直列に接続されて構成されている。なお、本実施の形態では、各相の各上下アームのIGBTを1つしか図示していないが、制御する電流容量が大きいので、実際には複数のIGBTが電気的に並列に接続されて構成されている。以下では、説明を簡単にするため、1個のパワー半導体として説明する。
【0025】
図2に示す例では、各相の各上下アームはそれぞれ3個のIGBTによって構成されている。各相の各上アームのIGBT21のコレクタ電極はバッテリ180の正極側に、各相の各下アームのIGBT21のソース電極はバッテリ180の負極側にそれぞれ電気的に接続されている。各相の各アームの中点(上アーム側IGBTのエミッタ電極と下アーム側のIGBTのコレクタ電極との接続部分)は、対応する回転電機200、202の対応する相の電機子巻線(固定子巻線)に電気的に接続されている。
【0026】
駆動回路652、656は、対応するインバータ装置610、620を制御するための駆動部を構成しており、制御回路648から出力された制御信号に基づいて、IGBT21を駆動させるための駆動信号を発生する。それぞれの駆動回路652、656で発生した駆動信号は、対応するパワーモジュール610、620の各パワー半導体素子のゲートにそれぞれ出力される。駆動回路652、656には、各相の各上下アームのゲートに供給する駆動信号を発生する集積回路がそれぞれ6個設けられており、6個の集積回路を1ブロックとして構成されている。
【0027】
制御回路648は各インバータ装置610、620の制御部を構成しており、複数のスイッチング用パワー半導体素子を動作(オン・オフ)させるための制御信号(制御値)を生成するマイクロコンピュータによって構成されている。制御回路648には、上位制御装置からのトルク指令信号(トルク指令値)、電流センサ660、662のセンサ出力、回転電機200、202に搭載された回転センサのセンサ出力が入力される。制御回路648はそれらの入力信号に基づいて制御値を算出し、駆動回路652、656にスイッチングタイミングを制御するための制御信号を出力する。
【0028】
コネクタ基板642に実装された送受信回路644は、電力変換装置600と外部の制御装置との間を電気的に接続するためのもので、図1の通信回線174を介して他の装置と情報の送受信を行う。コンデンサモジュール630は、IGBT21のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制するための平滑回路を構成するもので、第1のパワーモジュール610や第2のパワーモジュール620における直流側の端子に電気的に並列に接続されている。
【0029】
<本発明による回転電機の実施形態>
図3は、図1の回転電機200に用いられる、本発明による回転電機の一実施形態の断面図を示す。なお、回転電機200と回転電機202とはほぼ同じ構造を有しており、以下では回転電機200の構造を代表例として説明する。ただし、以下に示す構造は回転電機200、202の双方に採用されている必要はなく、一方だけに採用されていても良い。
【0030】
ハウジング212の内部には固定子230が支持されており、固定子230は固定子コア232と固定子巻線238とを備えている。固定子コア232の内周側には、回転子250が空隙222を介して回転可能に支持されている。回転子250は、シャフト218に固定された回転子鉄心252と、永久磁石254と、非磁性体のあて板226とを備えている。ハウジング212は軸受216が設けられた一対のエンドブラケット214を有しており、シャフト218はこれらの軸受216により回転自在に支持されている。
【0031】
シャフト218には、回転子250の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ224が設けられている。このレゾルバ224からの出力は、図2に示した制御回路648に取り込まれる。制御回路648は、取り込まれた出力に基づいて制御信号を駆動回路652に出力する。駆動回路652は、その制御信号に基づく駆動信号をパワーモジュール610に出力する。パワーモジュール610は、制御信号に基づきスイッチング動作を行い、バッテリ180から供給される直流電力を3相交流電力に変換する。この3相交流電力は図3に示した固定子巻線238に供給され、回転磁界が固定子230に発生する。3相交流電流の周波数はレゾルバ224の出力値に基づいて制御され、3相交流電流の回転子250の回転位置に対する位相も同じくレゾルバ224の出力値に基づいて制御される。
【0032】
図4は、図3に示す固定子230および回転子250の断面を示す図であり、図3のA−A断面図を示したものである。なお、図4ではハウジング212、シャフト218および固定子巻線238の記載を省略した。なお図5以降でもスロット237の固定子巻線は省略されている。
固定子コア232の内周側には、多数のスロット237とティース236とが全周に渡って均等に配置されている。図4では、スロットおよびティースの全てに符号を付すことはせず、代表して一部のティースとスロットにのみに符号を付した。スロット237内にはスロット絶縁材(図示省略)が設けられ、図3の固定子巻線238を構成するU相、V相、W相の複数の相巻線が装着されている。本実施の形態では、スロット237は等間隔に48個形成されている。
【0033】
また、回転子コア252の外周近傍には、矩形の磁石を挿入するための複数の磁石挿入孔253が周方向に沿って16個配設されている。各磁石挿入孔253は軸方向に沿って形成されており、その磁石挿入孔253には永久磁石254(254a、254b)がそれぞれ埋め込まれ、接着剤などで固定されている。磁石挿入孔253及び永久磁石254はそれぞれ1対で1磁極を形成しており、1対の磁石挿入孔253それぞれの円周方向の幅は、1対の永久磁石254それぞれの円周方向の幅よりも大きく設定されており、永久磁石254の磁極外側の穴空間257は磁気的空隙として機能する。この穴空間257は接着剤を埋め込んでも良いし、成型用樹脂で永久磁石254と一体に固めても良い。永久磁石254は回転子250の界磁極として作用し、本実施の形態では8極構成となっている。
【0034】
永久磁石254の磁化方向は径方向を向いており、界磁極毎に磁化方向の向きが反転している。すなわち、永久磁石254aの固定子側面がN極、軸側の面がS極であったとすれば、永久磁石254bの固定子側面はS極、軸側の面はN極となっている。そして、これらの永久磁石254a、254bがそれぞれ1対で1磁極を成し、円周方向に交互に配置されている。
【0035】
永久磁石254は、磁化した後に磁石挿入孔253に挿入しても良いし、回転子コア252の磁石挿入孔253に挿入した後に強力な磁界を与えて磁化するようにしても良い。ただし、磁化後の永久磁石254は強力な磁石なので、回転子250に永久磁石254を固定する前に磁石を着磁すると、永久磁石254の固定時に回転子コア252との間に強力な吸引力が生じて組み付け作業の妨げとなる。また、永久磁石254の強力な吸引力により、永久磁石254に鉄粉などのごみが付着するおそれがある。そのため、回転電機の生産性を考慮した場合、永久磁石254を回転子コア252に挿入した後に磁化するのが好ましい。
なお、永久磁石254には、ネオジウム系、サマリウム系の焼結磁石やフェライト磁石、ネオジウム系のボンド磁石などを用いることができる。永久磁石254の残留磁束密度はほぼ0.4〜1.3T程度である。
【0036】
3相交流電流を固定子巻線238に流すことで回転磁界が固定子230に発生すると、この回転磁界が回転子250の永久磁石254a、254bに作用してトルクが生じる。このトルクは、永久磁石254から出される磁束のうち各相巻線に鎖交する成分と、各相巻線に流れる交流電流の鎖交磁束に直交する成分の積で表される。ここで、交流電流波形が正弦波形状であると考えれば、鎖交磁束の基本波成分と交流電流の基本波成分の積がトルクの時間平均成分となり、鎖交磁束の高調波成分と交流電流の基本波成分の積がトルクの高調波成分であるトルクリプルとなる。つまり、トルクリプルを低減するには、鎖交磁束の高調波成分を低減すればよい。言い換えれば、鎖交磁束と回転子の回転する角加速度の積が誘起電圧であるから、鎖交磁束の高調波成分を低減することは、誘起電圧の高調波成分を低減することに略等しい。
【0037】
図5はリラクタンストルクを説明する図である。一般に、磁束が磁石中心を通る軸をd軸、磁束が磁石の極間から極間へ流れる軸をq軸と呼ぶ。このとき、磁石の極間中心にある鉄心部分を補助突極部259と呼ぶ。回転子250に設けられた永久磁石254の透磁率は空気とほぼ同じであるため、固定子側から見た場合、d軸部は磁気的に凹んでおり、q軸部は磁気的に凸になっている。そのため、q軸部の鉄心部分は突極と呼ばれる。リラクタンストルクは、このd軸とq軸の磁束の通り易さ(磁気インダクタンス)の差、すなわち、突極比によって生じる。
【0038】
図6は、図4に示す回転電機の固定子230および回転子250の断面図の1磁極分を拡大して示したものである。回転子コア252には、永久磁石254の磁極外側に磁気的空隙257が形成されており、これはコギングトルクや通電時のトルク脈動を低減するために設けられたものである。さらには、磁気的空隙257の径方向の厚さは永久磁石254の径方向の厚さよりも小さく、磁気的空隙257の内周側の回転子コアの部分である磁極端押え部264は永久磁石254の周方向への動きを規制している。また、永久磁石254が挿入される磁石挿入孔253の径方向外側である磁極外側部256では、径方向寸法において磁極端ブリッジ部258の幅W1が最も薄くなるように設定されている。
【0039】
磁極端ブリッジ部258の幅W1を小さくすると、回転子内の磁路に流れる永久磁石からの磁束が減り、より多くの磁束が固定子側に到達するようになり、マグネットトルクを大きくすることができる。従って、磁極端ブリッジ部258の幅W1は、回転子が回転した時の応力に耐えられる程度にできるかぎり小さくすることが好ましい。
【0040】
図7は、図6に示す回転子の磁石間ブリッジ部260(Bで示された領域)を拡大して示したものである。1対の永久磁石254の間には、永久磁石254の外周側にある回転子コアの磁極外側部256と、内周側の回転子コアの磁極内側部263とを機械的に接続するように、磁石間ブリッジ部260が設けられている。さらに、磁石挿入孔253の磁石間ブリッジ部260両端にある4つの隅部には、周方向逃げ部261と、径方向逃げ部262が、永久磁石254が寸法公差上でブリッジ部に最も近づいた場合でも、磁石の角部が回転子コアに接触しないように設定されている。また、その場合において、周方向逃げ部261の厚さT1は、永久磁石254の中央側と、永久磁石254の角部で小さくなり、その間で最大になるように設定されており、径方向逃げ部262の厚さT2は、永久磁石254の中央側と永久磁石254の角部で小さくなり、その間で最大になるように設定されている。さらには、磁石間ブリッジ部260の中央部では、前述の磁気的空隙257の内周側に磁極端押え部264と同様に、永久磁石254の周方向への動きを規制しており、新たな部品を使うことなく組立性を良好にできる。
なお、図7に示す上記4つの隅部の形状は、後述する図10(a)に基づいて記載されている。
【0041】
このような構成をとることで、磁石角部が回転子コアに接触することによる回転子コア252の破壊や変形を防げるだけでなく、磁石間ブリッジ部260の両端に発生する応力集中を低減することができ、回転子250の高速回転が可能となる
【0042】
本実施形態では、周方向逃げ部261と径方向逃げ部262をつなぐ線は、磁石の角R寸法よりも大きなR寸法でつながれているが、後述するように直線と円弧の組み合わせでも同様の効果が得ることができる。
一般的に磁石間ブリッジ部260を設けると、永久磁石254の磁束が磁石間ブリッジ部260を経由して、回転子内で磁束経路が閉じるようになるため、回転子磁極中央部で対向する固定子磁極とカップリングする有効な磁束が減少し、性能が低下してしまう。従って、磁石間ブリッジ部260の最も狭くなる部分の幅W2はできるかぎり小さいことが好ましい。
また、磁石間ブリッジ部260の中央部の幅W4は、上記で説明したようにW2よりやや大きく設定されるが、この幅W4もできるかぎり小さいことが好ましい。磁石間ブリッジ部260の中央部の幅W4が小さいと、2つの隣り合う磁石挿入孔253に挿入された永久磁石がより近接し、磁極中央部での磁束密度の減少が少なくなる。本発明による回転子の構造により、このようなW2とW4の関係が満たされるように設計できる。
【0043】
なお、永久磁石は正確に矩形でなくとも、略矩形であってもよい。この場合は、永久磁石の断面形状に合わせて、磁石挿入孔の断面形状も略矩形とする。永久磁石の形状を矩形から変形することによって、磁束密度分布を変えることも可能である。
【0044】
本実施形態では、磁極端ブリッジ部258の最小幅W1、磁石間ブリッジ部260の最小幅W2、径方向逃げ部262の外周側の回転子コアの幅W3において、W2<W1<W3が成り立つように構成される。このW1、W2、W3の関係は、上記で説明したような特性の回転子の構造とすることで達成されるが、これを以下に説明する。
【0045】
回転子の遠心力による応力は、磁石間ブリッジ部260の回転子外周側根元、すなわち磁石間ブリッジ部260を挟んで2つの隣り合う磁石挿入孔253の回転子外周側の隅部と磁極端ブリッジ部258側で大きくなる。しかし、図6の例では、2つの永久磁石254およびこれを挿入する2つの磁石挿入孔253の間に、回転子コアの磁極外側部256と磁極内側部263とを結合する磁石間ブリッジ部260が設けられているので、てこの原理により磁極端ブリッジ部258での応力が最も大きくなる。
【0046】
従って、磁極端ブリッジ部258の最小幅W1は磁束の漏えいを防ぐためには、性能面のみで考えると薄くして磁気飽和させたほうが望ましいが、上記のように高速回転時の応力集中が大きいので、その応力に耐えうる程度の厚さがまず必要となる。
【0047】
磁石間ブリッジ部260の最小幅W2も、磁極端ブリッジ部258の最小幅W1とほぼ同様ではあるが、上述のように応力集中の度合いが磁極端ブリッジ部258よりも小さいので、W2<W1とできる。一方で、径方向逃げ部262の外周側の回転子コアの幅W3は、永久磁石254の磁束が各相巻線に鎖交する際に経由する磁路であり、飽和しないほうが望ましいため、W3>W1となっている。
なお、上記で説明したように、本発明による回転子の構造により、磁石間ブリッジ部260の中央部分の幅W4をW2より僅かに小さい程度に設定することができる。すなわち、W4<W1<W3となっている。このような構造によって、2つの隣り合う永久磁石間の距離を小さくでき、回転子磁極中央部での磁束密度を高く維持することができる。
【0048】
図8は、図6に示す回転電機の高速回転時の応力分布を、1磁極分の回転子のさらに半分である、1/2磁極分において等応力線を用いて示した1/2磁極モデルである。等応力線が密である磁極端ブリッジ部258、磁石間ブリッジ部260の両端には、ほかの部分に比べ応力が集中しているが、上記のようなW2<W1<W3が成り立つように構成しているため、磁極端ブリッジ部258と磁石間ブリッジ部260の両端で特に局所的に偏ることなく、応力が分散されている。
【0049】
上記で説明した本発明による回転電機の実施形態では、1磁極分の2個の永久磁石254を直線状に並べている。これにより、磁石間ブリッジ部260の両端に発生する応力をほぼ均等にでき、応力集中を避けることができるため、強度面では望ましいものの、永久磁石254を直線上に並べない場合でも、本発明の効果を得ることができる。
【0050】
図9は、図6に示す本発明による回転電機の一実施形態の1磁極分において、固定子巻線238に3相交流電力を通電していないときの磁束線の分布を示したものである。上記で説明したようにW1、W2、W3の大きさが設定され、これらがW2<W1<W3の関係となるように構成されている。このような構成により、磁極端ブリッジ部258と磁石間ブリッジ部260とが、永久磁石254から出る磁束のうち最低限の磁束で飽和し、大部分の磁束が回転子コアの磁極外側部263から固定子コア232とカップリングし、固定子巻線238に鎖交していることがわかる。
【0051】
図10は、図7あるいは図8に示す永久磁石254の1つの角部とこの周辺の磁石挿入孔253の部分を拡大したものである。磁石間ブリッジ部260を挟んでいる2つの磁石挿入孔253の4箇所の隅部はいずれも同様な形状となっているが、内特に代表として図8の永久磁石254の右下の部分を拡大して示している。
永久磁石の角部には、磁気特性に影響が無い程度の大きさのR形状もしくは平面状の面取りが施されている。図10ででは永久磁石の角部をR形状とした例が示してある。このような角部の形状により、この角部に対向する磁石挿入孔の隅部内面の曲がりを緩やかにすることができ、回転子の回転による応力を分散することができる。
【0052】
また、この磁石挿入孔の隅部内面の曲がりを、図10に示すように、部分的に直線と曲線で構成することにより、磁石間ブリッジ部の最大幅W4と、周方向逃げ部261での磁石間ブリッジ部の最小幅W2の差が小さくなるとともに、W2とW4をと小さい値に抑えることができる。
図10(a)に示す例では、永久磁石254の角部に最も近接する磁石挿入孔253の隅部内面が永久磁石254の角部のR形状より緩やかな曲がりの曲面状(図では曲線状に示されている)となっており、これにそれぞれ接続する周方向逃げ部261と径方向逃げ部262の内面が平面(図では直線で示されている)で構成されている。なお、前述の図7では、この磁石挿入孔253の隅部内面の形状を図10(a)に基づいて示している。
図10(b)では、永久磁石254の角部に最も近接する磁石挿入孔253の隅部内面が平面状(図では直線状に示されている)となっており、これにそれぞれ接続する周方向逃げ部261と径方向逃げ部262の内面が略円弧状の曲面(図では曲線で示されている)で構成されている。
【0053】
なお、永久磁石254の角部の面取りを平面で行う場合、この永久磁石254の角部に対向する磁石挿入孔253の隅部を平面とした場合のこの平面の幅は、永久磁石254の角部の平面の幅より大きくする。
同様に、永久磁石254の角部の面取りを曲面で行う場合、この永久磁石254の角部に対向する磁石挿入孔253の隅部を曲面とした場合のこの曲面の幅は、永久磁石254の角部の曲面の幅より大きくするとともに、磁石挿入孔253の隅部の曲面の曲率は永久磁石254の角部の曲面の曲率より小さくする。
【0054】
図11に、本発明による回転電機の変形例であり、1磁極毎に3個の永久磁石を設け、それぞれの磁石が挿入される2つの隣り合う磁石挿入孔の間に磁石間ブリッジ部260を設けた構成において、固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示した断面図を示す。このように、1磁極当たりの永久磁石を複数個として、それぞれの永久磁石の間に設けた構成、すなわち磁石間ブリッジ部260を1磁極あたりに複数個設けた構成としても、本発明の構成とすることで高速回転時の応力を低減することができる。磁石間ブリッジ部260を1磁極あたりに複数個設けることで、永久磁石の外側の回転子コアの部分と永久磁石より回転軸側の回転子コアの部分が堅固に接続されるので、更なる高速回転化も期待できる。
【0055】
図12は、本発明による回転電機のさらにもう1つの変形例において、固定子230および回転子250の1磁極分の拡大図を示す。この変形実施例では、1磁極毎に2つの磁石挿入孔253と、それぞれの磁石挿入孔253に2つの永久磁石254が挿入されている。永久磁石254が1磁極あたりに複数個用いられた場合でも、高速回転時に発生する応力が許容応力を超えていなければ、磁石間ブリッジ部260は必ずしもすべての磁石間に設ける必要はない。また、永久磁石254を複数個に分割することで、永久磁石254の表面に流れる渦電流を低減することができ、発熱低減や効率向上が可能となる。したがって、図12には1つの磁石挿入孔に2つに分割された永久磁石が挿入されているが、3個以上に分割された永久磁石を挿入してもよい。
【0056】
図13は、本発明による回転電機のさらにもう1つの変形実施例を示す。ここでも固定子230および回転子250の1磁極分を拡大して示している。前述したように直線的に並べなくても、複数の永久磁石254をV字型に配置した場合でも、上述した本発明による回転電機の構造を採用することで、上述の実施形態と同様に、高回転で高出力の回転電機が実現できる。
【0057】
図14は、本発明による回転電機の第2の実施形態であり、図4に示す第1の実施形態の回転子と、集中巻きの12極の固定子231とから構成される8極12スロットの回転電機を示す。ここでは固定子231および回転子250の断面の1/4を拡大して示している。固定子230を集中巻にした場合においても、本発明による回転電機の回転子の構造を採用することができ、集中巻きの固定子の回転電機であっても同様の効果が得られる。つまり、本発明は固定子の形態に依存しない。
【0058】
以上の説明は本発明の例であり、本発明はこれらの実施形態や変形例に限定されない。当業者であれば、本発明の特徴を損なわずに様々な変形実施が可能である。とりわけ、上記で説明した2つ以上の磁石挿入孔数と、各々の磁石挿入孔に挿入する永久磁石の数は様々に組み合わせることが可能であり、回転電機の仕様に合わせて適宜決定される。
【符号の説明】
【0059】
100:車両
120:エンジン
180:バッテリ
200、202:回転電機
212:ハウジング
214:ブラケット
230:固定子
231:固定子
232:固定子コア
233:固定子コア
236:ティース
238:固定子巻線
250:回転子
252:回転子コア
253:磁石挿入孔
254:永久磁石
256:回転子コアの磁極外側部
257:磁気的空隙
258:磁極端ブリッジ部
259:補助突極部
260:磁石間ブリッジ部
261:周方向逃げ部
262:径方向逃げ部
263:回転子コアの磁極内側部
264:磁極端押え部
600:電力変換装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子に空隙を介して対応配置された回転子とを有する永久磁石式回転電機であって、
前記回転子は、磁極毎に略矩形の断面を持つ複数の磁石挿入孔を備えた回転子コアと、前記磁石挿入孔にそれぞれ挿入された永久磁石とを備え、
前記回転子の磁極毎に設けられた前記複数の磁石挿入孔の周方向の両端部にそれぞれ非磁性部が形成され、
前記複数の磁石挿入孔の隣り合う磁石挿入孔の間には、前記磁石挿入孔の外側の回転子コア部と、前記磁石挿入孔の内側の回転子コア部とを機械的に接続するブリッジ部が設けられており、
前記磁石挿入孔の前記ブリッジ部側の面と前記磁石挿入孔の前記回転子外側の面との間の隅部である第1の隅部および、前記磁石挿入孔の前記ブリッジ側の面と前記磁石挿入孔の前記回転子内側の面との間の隅部である第2の隅部には、それぞれ前記回転子の周方向と径方向とにそれぞれに膨らんで、前記磁石挿入孔に挿入される矩形断面を持つ長尺の永久磁石の角部が前記磁石挿入孔の前記ブリッジ部側の面および前記回転子外側の面と前記回転子内側の面に接触しないように逃げ部が設けられ、
前記磁石挿入孔の前記ブリッジ部側の面の逃げ部の大きさは、前記永久磁石の角部で小さくなり、前記磁石挿入孔の前記回転子外側の面および前記磁石挿入孔の前記回転子内側の面の逃げ部の大きさは、前記永久磁石の角部で小さくなるように形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石式回転電機において
前記非磁性部の外周側の回転子コアの最小幅をW1、前記ブリッジ部の最小幅をW2、前記磁石挿入孔の第1の隅部での前記回転子外周側のコアの最小幅をW3としたときに、
W2<W1<W3
が成り立つことを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の永久磁石式回転電機において
前記ブリッジ部の最大幅をW4としたときに、
W2<W4<W1<W3
が成り立つことを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機において、
前記永久磁石の角部はR形状または平面上の面取りが施されており、
前記磁石挿入孔の第1の隅部および前記磁石挿入孔の第2の隅部は、それぞれ前記永久磁石の角部に近接する曲面部と、前記曲面部に接続され前記周方向の逃げ部を形成する平面部と、前記曲面部に接続され前記径方向逃げ部を形成する平面部とを備えることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機において、
前記永久磁石の角部はR形状または平面上の面取りが施されており、
前記磁石挿入孔の第1の隅部および前記磁石挿入孔の第2の隅部は、それぞれ前記永久磁石の角部に近接する平面部と、前記平面部に接続され前記周方向の逃げ部を形成する曲面部と、前記平面部に接続され前記径方向逃げ部を形成する曲面部とを備えることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の永久磁石式回転電機において、
前記曲面部の曲率は、前記永久磁石のR形状の面取りの曲率より小さいことを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機と、
この回転電機を駆動するための電力を供給する電力変換部とを備えることを特徴とする車両の電動駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両の電動駆動装置を備えることを特徴とする車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−81302(P2013−81302A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220056(P2011−220056)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】