説明

汗滲み防止布帛の製造方法

【課題】 布帛表面に撥水層を設け、汗滲み防止効果に優れた布帛を合理的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 まず、布帛表面に撥水剤エマルジョンを塗布する。この際、撥水剤エマルジョンが布帛裏面に滲み出さないようにする。撥水剤エマルジョンは、(a)フッ素系撥水化合物、(b)前記フッ素系撥水化合物を架橋させるための架橋剤、(c)ミネラルターペン、(d)非イオン性界面活性剤、(e)水を含有する。撥水剤エマルジョンの粘度は、5000〜12000cps程度に調整される。塗布後、乾燥工程に導入し、フッ素系撥水化合物を架橋硬化させると共に、ミネラルターペン及び水を除去する。撥水剤エマルジョンを塗布する前に、布帛表面に浸透助剤を塗布しておき、撥水剤エマルジョンを塗布しやすくしたり、布帛裏面に滲み出さないようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面から表面に向けて、汗が滲み出しにくい布帛を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラウスやワイシャツを着用した状態で、汗をかくと、その汗がブラウスやワイシャツの外側に滲み出してくることは、よく経験することである。特に、よく汗をかく箇所である脇の下、背中、胸元等の箇所で汗が滲み出す。このような汗の滲み出しは、男性にとっても女性にとっても、恥ずかしいものである。
【0003】
汗の滲み出しを防止するためには、布帛に撥水処理を施せばよい。しかしながら、布帛全体に撥水処理を施したり、又は布帛裏面(肌側となる面)に撥水処理を施すと、汗を布帛が吸収しないため、ベタツキ感が生じ、好ましくない。このため、布帛表面(肌側と反対面)のみに撥水処理を施し、布帛表面に薄い撥水層を設けることが行われている(非特許文献1)。このような布帛は、布帛裏面で汗をよく吸収する一方、布帛表面には汗が滲み出さないため、好ましいものである。
【0004】
非特許文献1には、単に布帛表面のみに薄い撥水層を設けることが記載されているだけで、どのような方法で、このような薄い撥水層を設けるのかについては、全く記載がない。布帛表面にのみ薄い撥水層を設ける方法としては、布帛に浸透しにくい撥水剤溶液を用いればよいと考えられる。具体的には、高粘度の撥水剤溶液を用い、これを布帛表面に塗布すればよいと考えられる。高粘度の撥水剤溶液は、低粘度のものに比べて、布帛裏面に浸透しにくいから、布帛表面にのみ薄い撥水層が形成される。高粘度の撥水剤溶液を調製するためには、カルボキシメチルセルロースやアルギン酸ソーダ等の増粘剤を多量に混合する必要がある。したがって、このような高粘度の撥水剤溶液を用いて得られた撥水層は、増粘剤を多量に含有するものとなっている。
【0005】
増粘剤を多量に含有すると、撥水層を含む布帛の風合いが硬化するため、撥水層形成後に増粘剤を除去する必要がある。しかし、この除去工程において、増粘剤のみを除去することは困難で、撥水剤も除去されてしまうということがあった。すなわち、多量の増粘剤を使用すると、撥水化合物同士や撥水化合物と布帛中の繊維との結合が阻害されており、増粘剤と共に撥水化合物も除去されてしまうのである。したがって、良好な撥水性能を持つ撥水層が得られないというのが実情であった。
【0006】
【非特許文献1】定期刊行物「加工技術」第38巻第10号第30〜32頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者等は、布帛表面に塗布する段階において、撥水剤溶液が高粘度であり、しかも、塗布後においては、撥水剤溶液中の増粘成分が、撥水化合物同士又は撥水化合物と布帛中の繊維との結合を阻害しないような方法を見出すべく、種々検討した。具体的には、このような方法に適した増粘成分を見出すべく、種々検討を行った。その結果、特定成分組成の撥水剤エマルジョンを使用すると、高粘度にでき、しかも撥水化合物の結合反応を阻害しないことを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、布帛表面に、(a)フッ素系撥水化合物、(b)前記フッ素系撥水化合物を架橋させるための架橋剤、(c)ミネラルターペン、(d)非イオン性界面活性剤及び(e)水、を含有する撥水剤エマルジョンを、前記布帛裏面に滲み出さないように塗布した後、乾燥工程を適用して、前記フッ素系撥水化合物を架橋硬化させると共に、前記ミネラルターペン及び前記水を乾燥除去することを特徴とする汗滲み防止布帛の製造方法に関するものである。
【0009】
本発明で使用する撥水剤エマルジョンは、(a)フッ素系撥水化合物、(b)前記フッ素系撥水化合物を架橋させるための架橋剤、(c)ミネラルターペン、(d)非イオン性界面活性剤及び(e)水、を含有するものである。各成分の配合割合は、(a)フッ素系撥水化合物;0.1〜10質量%程度、(b)架橋剤;0.05〜5質量%程度、(c)ミネラルターペン;30〜70質量%程度、(d)非イオン性界面活性剤;0.5〜2質量%程度、(e)水;20〜50質量%程度である。ただし、各成分の総量は100質量%である。
【0010】
(a)フッ素系撥水化合物としては、市販されているものであれば、どのようなものでも使用しうる。代表的にば、パーフルオロアルキルエチルアクリレート共重合体等のフルオロアクリレート系重合体等が使用しうる。本発明において、撥水化合物の中でも、フッ素系のものを使用するのは、ミネラルターペンによって、増粘効果が顕著であり、しかも架橋反応が阻害されにくいからである。
【0011】
(b)架橋剤としては、フッ素系撥水化合物同士や、フッ素系撥水化合物と布帛中の繊維とを結合しうるものであれば、どのようなものでも使用しうる。代表的には、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のイソシアネート系化合物等を使用しうる。
【0012】
(c)ミネラルターペンとしても、市販されているものであれば、どのようなものでも使用することができる。ミネラルターペンは、水と共に使用して、増粘作用を奏するものである。
【0013】
(d)非イオン性界面活性剤としても、従来公知のものであれば、どのようなものでも使用しうる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用しうる。非イオン性界面活性剤は、ミネラルターペンと水とを安定なエマルジョン状に調製する作用を奏するものである。アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤は、フッ素系撥水化合物の撥水性や架橋剤の架橋効果に悪影響を及ぼす恐れがあるため、なるべく、使用しない方が好ましい。
【0014】
(e)水は、非イオン性界面活性剤の界面活性作用によって、ミネラルターペンと混合し、増粘作用を奏するものである。また、撥水剤エマルジョンを適度な粘度の溶液として取り扱うために用いられるものである。
【0015】
以上の(a)〜(e)成分を含有する撥水剤エマルジョンは、任意の方法で調製される。たとえば、水に非イオン性界面活性剤を溶解させ、徐々にミネラルターペンを混合しながら攪拌し、エマルジョンを得る。そして、このエマルジョンに、フッ素系撥水化合物と架橋剤とを混合攪拌し、撥水剤エマルジョンを得ることができる。フッ素系撥水化合物や架橋剤は、エマルジョン又は水溶液等の液体の形態で混合するのが一般的である。また、フッ素系撥水化合物を含有するエマルジョンに、架橋剤と、水、非イオン性界面活性剤及びミネラルターペンからなるエマルジョンとを添加混合し、攪拌して、撥水剤エマルジョンを得ることもできる。なお、本発明で使用する撥水剤エマルジョンには、上記(a)〜(e)成分の他に、染料、顔料、紫外線遮蔽剤、アルコール、エーテル、多糖類等の任意の第三成分を含有させておいてもよい。
【0016】
撥水剤エマルジョンは、水とミネラルターペンとの混合攪拌により、高粘度となっている。具体的には、5000〜13000cpsである。使用する布帛が撥水剤エマルジョンを浸透しやすいものである場合には、比較的高粘度、具体的には10000〜13000cpsにするのが好ましい。また、逆に撥水剤エマルジョンを浸透しにくいものである場合には、比較的低粘度、具体的には、5000〜7000cps程度でよい。なお、撥水剤エマルジョンの粘度は、TVC−5形粘度計(東機産業株式会社製、Model TVC−5 VISCOMETER)で測定されるものである。
【0017】
調製した撥水剤エマルジョンは、布帛表面に塗布される。塗布方法は、従来公知の捺染機等を用いて行えばよい。たとえば、ロータリースクリーン捺染機、グラビアローラー捺染機、キスコーター装置等を用いればよい。塗布時に注意することは、布帛表面にのみ撥水剤エマルジョンが適用され、布帛裏面まで撥水剤エマルジョンが浸透しないようにして、塗布することである。このために、本発明においては、特定成分組成の撥水剤エマルジョンを使用しているのであるが、布帛の種類等によって調整する必要があり、この点は、本明細書中で明らかにされる。なお、塗布量は、最終的に布帛表面に形成される撥水層の厚さが0.03〜0.05mm程度になるようにするのが、好ましい。
【0018】
使用する布帛も、編物や織物等、従来公知のものであれば、どのようなものでも使用しうる。しかしながら、使用する布帛の素材によって、塗布した撥水剤エマルジョンが布帛裏面まで浸透しないように、撥水剤エマルジョンの粘度を調整したり、撥水剤エマルジョン中の撥水化合物の量を調整する必要がある。すなわち、使用する布帛の素材として、コットンやレーヨン等の撥水剤エマルジョンを吸水浸透しやすい親水性糸条を使用した場合と、ポリエステル繊維やアクリル繊維等の撥水剤エマルジョンを吸水浸透しにくい疎水性糸条を使用した場合とでは、撥水剤エマルジョンの種類を変更する必要性が生じることが多い。たとえば、使用する布帛がコットン100%の編物や織物であると、撥水剤エマルジョンを吸水しやすいため、厚み方向に浸透性がよい。したがって、撥水剤エマルジョンとしては比較的高粘度のものを使用し、また、撥水化合物の量も比較的少量にする必要がある。具体的には、撥水剤エマルジョンの粘度を10000〜13000cps程度とし、撥水剤エマルジョン中の撥水化合物の濃度を1〜4質量%程度とするのがよい。また、使用する布帛がポリエステル100%の編物や織物の場合は、撥水剤エマルジョンを吸水しにくいため、厚み方向に浸透性が悪い。したがって、比較的低粘度の撥水剤エマルジョンを使用しうるし、また、撥水化合物の量も比較的多量にしても差し支えない。具体的には、撥水剤エマルジョンの粘度を5000〜7000cps程度とし、撥水剤エマルジョン中の撥水化合物の濃度を5〜8質量%程度としてもよい。また、コットンとポリエステルの混紡布帛等のように、前記したものの中間程度の浸透性を持つものは、その浸透性に応じて、粘度と濃度を決定すればよい。
【0019】
さらに、使用する布帛の浸透性を調整するために、布帛に浸透助剤を付与しておくこともできる。たとえば、浸透性が悪いため、撥水剤エマルジョンを均一に布帛表面に塗布できない場合には、浸透助剤として界面活性剤を布帛に付与しておくのが好ましい。また、浸透性が良すぎるため、撥水剤エマルジョンが布帛裏面まで滲み出してしまう場合には、浸透助剤として、バインダーを布帛に付与しておくのが好ましい。このバインダーによって、撥水剤エマルジョンの浸透を防止するためである。
【0020】
撥水剤エマルジョンを布帛表面に塗布した後、乾燥工程に導入する。乾燥工程は、一般的に、熱風循環コンベヤー式の乾燥機を用いることによって行う。この乾燥工程において、塗布された撥水剤エマルジョン中の水及びミネラルターペンは蒸発する。そして、同時に、フッ素系撥水化合物が架橋剤によって、架橋硬化する。具体的には、フッ素系撥水化合物同士が結合したり、フッ素系撥水化合物と布帛の構成繊維とが結合して、架橋硬化する。すなわち、本発明においては、フッ素系撥水化合物が架橋硬化すると共に、水及びミネラルターペンが蒸発し除去されるので、架橋硬化を阻害することが少なく、また、後工程で水及びミネラルターペンを洗浄除去する必要が少なくなるのである。
【0021】
以上のようにして得られた汗滲み防止布帛は、従来公知の染色仕上げ加工が施されて、製品となる。この汗滲み防止布帛を用いて衣料を縫製する場合には、撥水層が形成されている面(撥水剤エマルジョンが塗布された面)を、衣料の外側(肌側と反対面)に位置するようにして縫製する。衣料の内側(肌側)に撥水層を位置させると、布帛が汗を吸収しにくくなるため、ベタツキ感が生じ、好ましくない。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る汗滲み防止布帛の製造方法は、基本的には、水とミネラルターペンを用いて、撥水剤エマルジョンを高粘度にして、布帛の表面のみに撥水層を設けるものである。水とミネラルターペンは、フッ素系撥水化合物を架橋硬化させるための乾燥工程で、乾燥除去(蒸発除去)されるものであるため、架橋反応を阻害しにくい。また、架橋硬化後に、水及びミネラルターペンを除去するための洗浄工程の必要性が少なくなる。したがって、均一な撥水層が得られ、撥水層に孔が開いたり、亀裂が生じにくくなる。よって、薄くても撥水性能の良好な撥水層が得られるという作用効果を奏する。
【0023】
この結果、本発明に係る方法で得られた布帛を用いて、衣料を縫製すると、衣料表面(衣料の外側)への汗滲みを防止でき、汗滲みが看取されにくいという効果を奏する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。本発明は、特定成分組成の撥水剤エマルジョンを使用すると、高粘度にでき、しかも乾燥工程で増粘成分を自動的に除去できるため、撥水化合物の架橋反応を阻害しないとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0025】
実施例1
コットン糸条(60/2)を用い天竺編組織で編成された、目付150g/m2のニット生地を準備した。前処理として、浸透助剤(古川化学工業株式会社製、商品名「Penezol S−204」)を150g/lの濃度に調整した浸透助剤溶液を、このニット生地にディッピングにより、ピックアップ率100%(150g/m2の付与量となる。)で含浸させ、乾燥して付与した。前処理後、以下の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(125メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。
[撥水剤エマルジョン]
WR Paste SID(古川化学工業株式会社製) 70質量部
フィクサー700(古川化学工業株式会社製) 2質量部
HE−2(自社製) 18質量部
水 10質量部
粘度 10000cps
【0026】
ここで、撥水剤エマルジョンの各成分組成及びその量の説明をすると、以下のとおりである。
[WR Paste SID]
フルオロアクリレート系重合体樹脂 3.3質量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.4質量%
多糖類 0.8質量%
水(30〜60質量%)及びミネラルターペン(30〜60質量%)
95.5質量%
[フィクサー700]
4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン
(界面活性剤を含む) 約30質量%
水 約70質量%
[HE−2]
ミネラルターペン (冬期用) 約62質量%
(夏期用) 約55質量%
ビスコンKM8(新中村化学工業株式会社製、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチ レンアルキルエーテル) 約28質量%
水 (冬期用) 約10質量%
(夏期用) 約17質量%
粘度 約10000cps
【0027】
撥水剤エマルジョンを付与した後、熱風循環コンベアー式乾燥機に導入し、温度160℃で2分間、乾燥した。この結果、ニット生地の表面に、薄い撥水層が形成された汗滲み防止用布帛が得られた。
【0028】
実施例2
浸透助剤による前処理を施さないこと、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機の使用スクリーンを155メッシュのものに変更した他は、実施例1と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。
【0029】
実施例3
コットン糸条(50//)を用い裏鹿の子編組織で編成された、目付200g/m2のニット生地を準備した。前処理として、浸透助剤(日華化学株式会社製、商品名「テキスポートSN−10」)を5g/lの濃度に調整した浸透助剤溶液を、このニット生地にディッピングにより、ピックアップ率100%で含浸させ、乾燥して付与した。前処理後、実施例1で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(105メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例1と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0030】
実施例4
コットン糸条(40/2)を用い裏鹿の子編組織で編成された、目付230g/m2のニット生地を準備した。実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した後、実施例1で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(125メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例1と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0031】
実施例5
コットン糸条(40/2)を用い裏鹿の子編組織で編成された、目付230g/m2のニット生地を準備した。実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した後、以下の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(105メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例1と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
[撥水剤エマルジョン]
WR Paste SID(古川化学工業株式会社製) 100質量部
フィクサー700(古川化学工業株式会社製) 3質量部
粘度 12000cps
【0032】
実施例6
コットン糸条(30/−)を用い表鹿の子編組織で編成された、目付200g/m2のニット生地を準備した。前処理として、浸透助剤(日華化学株式会社製、商品名「テキスポートSN−10」)を5g/lの濃度に調整した浸透助剤溶液を、このニット生地にディッピングにより、ピックアップ率100%で含浸させ、乾燥して付与した。前処理後、実施例1で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(105メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例1と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0033】
実施例7
ポリエステル糸条を用いメッシュ編組織で編成された、目付230g/m2のニット生地を準備した。実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した後、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0034】
実施例8
ポリエステル繊維52質量%とコットン繊維48質量%からなる混紡糸条(40/−)を用い、リバ天竺編組織で編成された、目付190g/m2のニット生地を準備した。実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した後、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0035】
実施例9
コットン糸条(40/2)を用い天竺編組織で編成された、目付260g/m2のニット生地を準備した。このニット生地に、以下の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(155メッシュ使用)にて、ニット生地表面に125g/m2付与した。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 30質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 9質量部
HE−2(自社製) 58質量部
水 3質量部
粘度 6000cps
【0036】
ここで、撥水剤エマルジョンの各成分組成及びその量の説明をすると、以下のとおりである。
[アサヒガードAG7600]
パーフルオロアクリレート系重合体樹脂(界面活性剤を含む) 20質量%
ジプロピレングリコール 4質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 3質量%
水 73質量%
[メイカネートMF]
ジフェニルメタン−ビス−4,4’−メチルエチルケトオキシカルバメート
(界面活性剤を含む) 約30質量%
水 約70質量%
[HE−2]
前記のとおり。
【0037】
撥水剤エマルジョンを付与した後、熱風循環コンベアー式乾燥機に導入し、温度160℃で2分間、乾燥した。この結果、ニット生地の表面に、薄い撥水層が形成された汗滲み防止用布帛が得られた。
【0038】
実施例10
ポリエステル繊維40質量%とコットン繊維60質量%からなる混紡糸条(40/−)を用い、スムース編組織で編成された、目付200g/m2のニット生地を準備した。このニット生地を用いて、実施例9で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、実施例9と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0039】
実施例11
ポリエステル繊維43質量%とコットン繊維57質量%からなる混紡糸条(40/−)を用い、ハニカム編組織で編成された、目付190g/m2のニット生地を得た。このニット生地を用いて、実施例9で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、実施例9と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0040】
実施例12
ポリエステル糸条を用いメッシュ編組織で編成された、目付170g/m2のニット生地を準備した。このニット生地を用いて、実施例9で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、実施例9と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0041】
実施例13
コットン糸条(20/1)を経糸とし、コットン繊維98%質量とウレタン繊維2質量%からなる芯鞘糸条(16/1)とコットン糸条(14/1)を交互に緯糸として、経糸密度100本/インチ、緯糸密度が各糸条共に24本/インチであるサテン組織の織物生地を準備した。この織物生地に、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(155メッシュ使用)にて、織物生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0042】
実施例14
コットン糸条(20/1)を経糸とし、コットン繊維98%質量とウレタン繊維2質量%からなる芯鞘糸条(16/1)とコットン糸条(16/1)を交互に緯糸として、経糸密度100本/インチ、緯糸密度が各糸条共に28本/インチであるツイル組織の織物生地を準備した。この織物生地に、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(155メッシュ使用)にて、織物生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0043】
実施例15
コットン糸条(40/1)を経糸及び緯糸とし、経糸密度130本/インチ、緯糸密度80本/インチであるシュス組織の織物生地を準備した。この織物生地に、実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した。その後、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(155MDLメッシュ使用)にて、織物生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0044】
実施例16
コットン糸条(40/1)を経糸及び緯糸とし、経糸密度130本/インチ、緯糸密度70本/インチであるブロード組織の織物生地を準備した。この織物生地に、実施例1で使用したのと同一の浸透助剤を用い、同一の方法で前処理した。その後、実施例5で使用したのと同一の撥水剤エマルジョンを使用して、一ノ瀬RSXロータリースクリーン捺染機(155MDLメッシュ使用)にて、織物生地表面に125g/m2付与した。その後は、実施例5と同一の方法で汗滲み防止用布帛を得た。
【0045】
実施例17
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用し、スクリーン(1350メッシュ使用)を用いて手作業で、ニット生地表面に240g/m2付与した。その後、乾燥機に入れて、温度160℃で2分間、乾燥した。この結果、ニット生地の表面に、薄い撥水層が形成された汗滲み防止用布帛が得られた。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 1質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 0.3質量部
HE−2(自社製) 77質量部
水 21.7質量部
粘度 8000cps
【0046】
実施例18
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用した以外は、実施例17と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 5質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 1.5質量部
HE−2(自社製) 73質量部
水 20.5質量部
粘度 7500cps
【0047】
比較例1
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用した以外は、実施例17と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。ただし、得られた汗滲み防止用布帛の風合いが硬いので、洗浄処理を行って、カルボキシメチルセルロースを除去した。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 1質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 0.3質量部
カルボキシメチルセルロース 4.0質量部
水 94.7質量部
粘度 15000cps
【0048】
比較例2
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用した以外は、実施例17と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。ただし、得られた汗滲み防止用布帛の風合いが硬いので、洗浄処理を行って、アルギン酸ソーダを除去した。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 1質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 0.3質量部
アルギン酸ソーダ 4.5質量部
水 94.2質量部
粘度 50000cps以上(高粘度のため測定不可)
【0049】
比較例3
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用した以外は、実施例17と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。ただし、得られた汗滲み防止用布帛の風合いが硬いので、洗浄処理を行って、カルボキシメチルセルロースを除去した。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 5質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 1.5質量部
カルボキシメチルセルロース 3.8質量部
水 89.7質量部
粘度 15000cps
【0050】
比較例4
実施例1で使用したニット生地を用い、実施例1と同一の方法で前処理した。その後、以下の撥水剤エマルジョンを使用した以外は、実施例17と同一の方法で、汗滲み防止用布帛を得た。ただし、得られた汗滲み防止用布帛の風合いが硬いので、洗浄処理を行って、アルギン酸ソーダを除去した。
[撥水剤エマルジョン]
アサヒガードAG7600(旭硝子株式会社製) 5質量部
メイカネートMF(明成化学工業株式会社製) 1.5質量部
アルギン酸ソーダ 4.5質量部
水 89.0質量部
粘度 50000cps以上(高粘度のため測定不可)
【0051】
実施例1〜18及び比較例1〜4で得られた各汗滲み防止用布帛について、以下の汗滲み試験及び吸水性試験を行った。その結果を表1に示した。
[汗滲み試験]
汗滲み防止用布帛裏面(撥水剤エマルジョンを塗布した面の反対面)に、水0.025mlをスポイトで滴下し、布帛表面に水が滲み出してきて、変色しているか否かを目視によって、次の基準で判定した。
○・・・ほとんど変色がない。
△・・・変色がある。
×・・・著しく変色がある。
[吸水性試験]
JIS L 1907(2004)に記載の滴下法に準拠し、次の基準で吸水性を評価した。なお、水の滴下は、布帛裏面に行った。
○・・・速やかに吸水する。
△・・・吸水する。
×・・・ほとんど吸水しない。









【0052】
[表1]
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汗滲み試験 吸水性試験
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実施例1 ○ ○
実施例2 ○ ○
実施例3 ○ ○
実施例4 ○ ○
実施例5 ○ ○
実施例6 ○ ○
実施例7 ○ ○
実施例8 ○ ○
実施例9 ○ ○
実施例10 ○ ○
実施例11 ○ ○
実施例12 ○ ○
実施例14 ○ ○
実施例15 ○ ○
実施例16 ○ ○
実施例17 ○ ○
実施例18 ○ ×
比較例1 × ○
比較例2 × ○
比較例3 △ ○
比較例4 × ○
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0053】
実施例1〜16に係る方法は、いずれも、(a)〜(e)成分を含有する撥水剤エマルジョンを用いて、汗滲み防止用布帛を得たものである。この汗滲み防止用布帛は、表1の結果から明らかなように、汗滲み防止効果に優れ、吸水性も良好である。また、実施例17及び18に係る方法も、(a)〜(e)成分を含有する撥水剤エマルジョンを用いて、汗滲み防止用布帛を得たものである。しかし、実施例18に係る方法は、実施例17に係る方法に比べて、フッ素系撥水化合物の量が多いため、布帛の裏面に撥水化合物が浸透しやすくなっており、吸水性が不十分となっている。また、比較例1〜4に係る方法は、いずれも、(c)成分を含有しない撥水エマルジョンを用いているため、洗浄工程が必要となり、これによって撥水層に孔が開いたり、亀裂が生じたりする。したがって、実施例17及び18に係る方法に比べて、汗滲み防止効果の点で劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛表面に、
(a)フッ素系撥水化合物
(b)前記フッ素系撥水化合物を架橋させるための架橋剤
(c)ミネラルターペン
(d)非イオン性界面活性剤
(e)水
を含有する撥水剤エマルジョンを、前記布帛裏面に滲み出さないように塗布した後、乾燥工程を適用して、前記フッ素系撥水化合物を架橋硬化させると共に、前記ミネラルターペン及び前記水を乾燥除去することを特徴とする汗滲み防止布帛の製造方法。
【請求項2】
撥水剤エマルジョンを塗布する前に、布帛表面に浸透助剤を塗布しておく請求項1記載の汗滲み防止布帛の製造方法。
【請求項3】
布帛として親水性糸条で構成された布帛を用い、かつ、撥水剤エマルジョンとして、その粘度が10000〜12000cpsであり、フッ素系撥水剤化合物の濃度が1〜4質量%である撥水剤エマルジョンを用いる請求項1記載の汗滲み防止布帛の製造方法
【請求項4】
布帛として疎水性糸条で構成された布帛を用い、かつ、撥水剤エマルジョンとして、その粘度が5000〜7000cpsであり、フッ素系撥水剤化合物の濃度が5〜8質量%である撥水剤エマルジョンを用いる請求項1記載の汗滲み防止布帛の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法によって得られた汗滲み防止布帛を用い、撥水剤エマルジョンが塗布された布帛表面が、衣料の外側となるように縫製されてなることを特徴とする汗滲み防止衣料。
【請求項6】
(a)フッ素系撥水化合物
(b)前記フッ素系撥水化合物を架橋させるための架橋剤
(c)ミネラルターペン
(d)非イオン性界面活性剤
(e)水
を含有することを特徴とする布帛処理用撥水剤エマルジョン。

【公開番号】特開2007−182636(P2007−182636A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380610(P2005−380610)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(594000402)大阪染工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】